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Not Yet

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匿名ユーザー

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Not Yet ◆Z9iNYeY9a2


「行ったようだね、アリスは」




既に視界には何も映らず、聴覚も何も捉えないはずの無の中。
これが死というものなのだろうかということを考えた。

―――これでいいの?

終わりたくなどない。
だが今更何ができるというのだろう?

まどかを守ることも救うこともできず、美国織莉子に敗北したまま命を終えた。
だが、死は絶対に覆ることはない。

魔女となった魔法少女達が決して元に戻ることがなかったように。

――――諦めていいの?

………
いいはずが、ない。
たとえそれが、如何に世界の理に反した想いであったとしても。
それでも、決して諦めることはできない。


だから、ふわふわとした意識の中強く願う。

奇跡。
そんなものにでも縋ってやる。

どれだけ醜悪な想いであっても、どれほど重い罪であったとしても。
まどかのためなら全て背負える。


だから。

(もう少しだけ―――もう少しだけでいい)

この身に、生が欲しい―――――――――!!



己の内に、強く熱い何かが生まれ出て。


その瞬間だった。
右も左も、自分の形すらも分からぬ闇の中で、二つの輝く瞳が映った。

人ではない生物。
巨大な翼と6本の足を持った、まるで魔女のような姿の何か。

醜悪にも思える外見だったのに、その時の私にはとても神々しいものに見えた。


その巨体に、静かに手を伸ばす―――ように感じられる動きをして。

昏い闇の中で、自分すらも保つことができなかったほむらを、さらに深い闇色の何かが包み込んだ。




アリスは去り、生者は一人としていなくなった室内。
黒猫は静かにその体毛を白く変化させる。

瞳は赤く輝き、耳からは別の耳と思しき物体が現れる。

そして背中の円状の模様がパカリと開き、中から取り出されたのはしろがね色に輝く球。

「ふぅ、さすがに窮屈だったよ」

ほむらの死体の傍で球をかざす黒猫、もといキュウべえ。

「少し時間を取られすぎたかな。今からはっきんだまを向こうに転送するのは間に合いそうにないね。
 仕方ない、ここでやるしかないか」

と、キュウべえは球をかざし。

「あとは頼んだよ、アクロマ」

ここではないどこかにいる一人の人間に向けて、そう呟いた。


はっきんだま。
それはディアルガ、パルキアに続くもう一匹の伝説の竜、ギラティナの力の一端が収められたもの。


元々ギラティナの力は世界に歪みが生じた時にそれを世界の裏側から修正する役割を担っている。
その力の断片を会場に配置しておくことで、会場の結界の安定化を促せるというアクロマの仮説の元で参加者の支給品に混ぜられたものだ。

この仮説が問われた段階では、ギラティナ自身を捕獲する術がなかったため、あくまでもその力ははっきんだまを利用することで代用してきたのだ。

しかし。

アクロマの手によって再現された、神々の力をも御する拘束具、あかいくさりが完成し。
そして数時間前に判明した一つの要素によって、ギラティナを捕獲する術が整った。

あとはタイミング。
それを引き起こすために必要な、膨大なエントロピーが発生する瞬間。
ほむらの死によって、それが成り立った。








「アクロマ、来るよ!」
「準備はできています」

バトルロワイヤルの会場ではないどこか。
あるいはあの結界の外、とでも言うべき場所。

その一角に、インキュベーターとアクロマはいた。

見つめる先にあるのは、不安定になり歪みを生じさせる空間に少しずつ開いていく巨大な穴。

そしてその奥から見える、ギラリとこちらを覗く瞳。
戦意を露わに、それは開いた穴へと向かって一直線に入り込み。

――――ピシェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

轟く咆哮と共に、キュウべえとアクロマの目の前の空間に潜り込んできたその巨体。
灰色の体に長い体、6本の足、そして巨大な漆黒の翼を持った異形の生命体。

それはディアルガ、パルキアの伝説が伝えられしシンオウ地方においてもほぼ伝承が残っていないとされたいわば記録から封印されたポケモン。
はんこつポケモン、ギラティナ。

「ゴガァ!!」

ギラティナは敵意はそのままに、その口に透き通った、しかしひとたび吐き出されれば多くのものを焼き払うだろう波動を放出せんと構え。

「今だよ!」
「赤い鎖、発射」

しかしそんなギラティナを前にして尚も焦ることなくアクロマは冷静に自分の成すべきことをする。

手に持った機器を操作したその途端、ギラティナの立っていた地面から赤い色の鎖が顕現。
その体をがんじがらめに縛り上げる。

その口腔から吐き出そうとしていた竜の波動はあらぬ方向に吐き出され壁を打ち崩す。
しかしその身に絡みついた鎖は解けることはない。

暴れまわる度に地響きが鳴り、それだけ鎖はギラティナの体を無力化するかのように締め上げる。

「―――――――ギィァアアアアアアアア」

それでも最後の抵抗とでも言うかのように、その体に闇を纏わせて姿を消そうとする。
シャドーダイブをもって鎖を抜け出す、ないし破壊しようとしているのだろう。

だが。

―――――ォォォォォォ

その体が消え去る寸前、遠くから轟くような鳴き声と共にギラティナに向けて膨大なエネルギーが衝突した。

時間が歪んで感じられるようなものと、空間を引き裂かんとするようなものの二つの力。
シャドーダイブを使うために無防備に近い状態を晒していたギラティナにそれを受け止めるだけの態勢を取ることはできず。

そのまま抵抗するように一度吠えた後、地に蹲り沈黙した。

「うまくいって助かったよ。アカギ、感謝するよ」

この場にはいないはずの相手に向けて感謝を述べるキュウべえ。
そしてアクロマは動かぬギラティナへと駆け寄り、あらかじめ設置してあったらしい多くの機材のケーブルを繋いでいく。

「では、後のことは私がやっておきましょう」
「そうだね、それじゃあはっきんだまを回収するとしよう。転移装置、起動頼むよ」
「了解しました」


ギラティナを捕獲する術がなかった理由。
それはインキュベーターが貼った干渉遮断フィールドによるものだった。

このフィールドに守られている間は如何なる干渉も遮断する。
それは例え神のごとき力を備えたギラティナであっても例外ではない。
もしこれを力技で破ろうとするならば、それを遥かに超える力が必要となる。
故にディアルガ、パルキア、そしてはっきんだまの存在を感知したギラティナであっても手出しできない状況にあったのだ。


しかし、これはこちらがわからの干渉も遮断してしまうという不都合があった。
それは回収したエントロピーを分散させないための術であったのだが、もしこれを解除してしまった場合、会場の結界そのものを消すことになってしまう。
結果、ギラティナの干渉を弾く一方でこちらがわからも手出しできないという拮抗した状態が続いていた。

だが、あのガブリアス達の発生させたエントロピーでワームホールを発生させるという現象が発覚したおかげで、会場の結界を消すことなくギラティナをこちら側に呼びこむ術を見出すことができた。

すなわち、ギラティナを通すことができるだけのワームホール。
それを作りうる程の因果を備えた参加者の死と同時に、こちら側にギラティナを呼び寄せる。

それを起こせる者の一人はキュウべえ自身が目をつけていた参加者、暁美ほむら。
あとは彼女が死ぬまで気長に待つつもりだったが、ここで美国織莉子に敗れてくれたのは幸いだった。

全てが順調に進んでいた。





「…私たちを差し置いて何をやってるのかしら?」

そんなキュウべえとアクロマのいる室内に現れたのは一人の少女。
桃色の髪を左右に縛った、中学生くらいの年の女の子。しかし纏っている衣装はまるでどこかの騎士のような姿。


「おや、アーニャかい。どうしたんだい?」

アーニャ・アールストレイム。
シャルルの直接の部下にしてこの殺し合いの儀式の協力者の一人。

「シャルルや私達には何の連絡もなく大きなことをしてるみたいだから、少し様子を見に来ただけよ」
「すまないね。ことは急だったものだから、連絡する暇がなかったんだ」
「少しは互いの連携も意識してくれないと困るわよ。
 あなた達の世界の最終兵器にエントロピーの回収機能を結びつけたのは誰だと思ってるの?」
「そのことには感謝してるよ。だから今回のような時も今後は気を付けるさ。本当だよ」

無表情なまま、悪びれているのか分からぬ表情でそう告げるキュウべえ。

「正直なところ、シャルルは全面的にあなた達の話を信用してるみたいだけど、私としてはまだ懐疑的なのよね。
 あなたの言うエントロピーなんてものが本当に存在してるのかってところとか」
「そこは視覚的に観測できるものじゃないからね、仕方ないよ。
 それでもこの殺し合いで参加者達の行動、そして死を通して回収されていくエントロピーは最終兵器を通して認識できるはずだよ」

最終兵器。
それはかつてカロス地方という場所で王が作り上げたもの。
本来は命を落とした一匹のポケモンを蘇らせるために作られたはずのそれは他の誰でもない王自身の手で全てを滅ぼす最悪の兵器へと形を変えていた。
王の悲しみを怒りへと変貌させる。
まるで希望を絶望に変異させるかのように、その想いを移り変わらせて。

ここにあるのはそれと同じ機能を持ったものだ。

動力を多くのポケモンの生体エネルギーとして起動するそれは、曲がりなりにも死者を蘇らせるという奇跡を成し遂げている。
では、ここにさらに純度の高いエネルギーを注ぎ込めば、一体どのような奇跡が起こせるだろうか。

例えばエントロピー。インキュベーター自身が回収することを目的としている、宇宙の熱力学的死を回避するために不可欠なもの。
本来ならばそのようなものを回収する機能など最終兵器にはもたらされてはいない。

だが、ポケモンのいない世界には他にも様々な奇跡を起こしうるものは存在している。
その一つに聖杯、というものがあった。
万能の願望機。如何なる望みも叶えうると言われる奇跡の釜。
セイバーやバーサーカーのようなサーヴァント、そしてイリヤスフィール達のいたような世界にあるものだ。

無論それも本物ではない。あくまでも限りなく本物に近い機能を持った贋作の一つだ。
それを解析し、その魔術的な作りをエデンバイタルの力をもって再現、最終兵器に転用することで今のエントロピー回収装置とすることができたのだ。

「こればっかりは信じられない、というならシャルルのことを疑うのと同義になってしまうけど、それでも君は信用できないかい?」
「…確かにそれもそうね。私が悪かったわ」
「大丈夫さ。最終兵器がエントロピーの回収さえ終えれば、僕達の目的は完遂される。
 今僕達にできるのは、それを確実にするためにこの殺し合いの儀式を達成させることさ」

ピョコ、とアーニャの肩に乗り上がるキュウべえ。
それを特に何の反応をすることもなく、アーニャはただじっと無表情で見つめるだけ。

「回収準備、整いました」

そんな時、アクロマがキュウべえに呼びかける。
はっきんだまを回収する準備が整ったということだ。

肩に乗っていたキュウべえは、反対側から飛び降りてアクロマの足元まで駆け寄る。


「よし、それじゃあ座標を合わせて――――ちょっと待って」

と、アクロマが装置を起動させようとしたその時、何かに気付いたキュウべえが待ったをかけた。


「…まさか、こんなことが起こり得るなんてね」

それは会場内、黒猫に擬態していたキュウべえの目の前。

暁美ほむらの物言わぬはずの躯の胸が、静かに上下している光景があった。

「ソウルジェムを砕かれたはずの彼女がどうして」

そう、暁美ほむらは息を吹き返している。
未だ意識こそないものの、その生命はまだ終わりを告げてはいなかった。

死んだことは紛れもない事実。しかし生き返るような要素が暁美ほむらにあっただろうか――――

「まさか、はっきんだまと暁美ほむらのエントロピーを通したことで、何かしらの現象が起きた、ということなのか?」

原理も何も分からない。ただ分かるのは、これが自分たちにとってイレギュラーな事態であるということ。

「一応彼女も回収して何が起こったのか調べる必要がありそうだ。
 もしはっきんだまが原因で起こった現象だとするなら、何か重要な存在にもなるかもしれない」

もしかすれば彼女自身もっと有用な使い方があるかもしれない。
彼女自身、あるいは彼女に起こった現象自体に。

「アクロマ、はっきんだまと一緒に暁美ほむらの回収もお願いしたい。頼んだよ」

キュウべえの、何もない虚空に対する呟きに反応するかのように空間に小さな歪が生まれ。
やがて暁美ほむらとはっきんだまの姿はその中に掻き消えていった。

「さて、それじゃあこっちはこっちで適当に動くとしようか」



その数分後、一軒の民家から黒猫が一匹飛び出していく。
飛び出した部屋には何もない。
ただ、ほんの僅かに汚れたベッドが残っているだけ。


「はっきんだまからキュウべえ君の作る魔法少女達の持つソウルジェムと同じ反応が検出されています。
 どうやらはっきんだまにこの少女の命とでも呼ぶべきものが収められているようですね」

「さすがにこれは僕にも想定できなかったよ」

「それで、どうされるのですか?」

「とりあえず念のため拘束しておいた上で、目が覚めるまで待って話を聞いてみようと思う。
 もしかしたら彼女自身に何か使い道があるかもしれない」

「了解しました。では念のためあかいくさりを一部預けておきましょう」

「頼むよ。
 そういえば、ギラティナを呼び寄せた時に何か変わったことはなかったかい?」

「…それがですね。やはりあれほどのポケモンを降臨させたことで会場に張り巡らせた調整機器に強い負荷がかかってしまいまして。
 特に制限装置が一部故障してしまったようなのはまずいですね」

「ふむ…。直せそうかい?」

「次の放送までには予備の装置に切り替えられるはずです」

「じゃあ頼んだよ。儀式の進行に支障をきたす事態が起こらないようにはこっちでも調整しておくから」

「分かりました。お願いしますね」


暁美ほむらに起こった現象。

キュウべえ達はほむらの持つ膨大なエントロピーを媒介として、ギラティナを招き入れ捕獲した。
その存在を文字通り縛り上げることで。

それがほむらとギラティナの間に小さからぬ繋がりを作り出してしまったのだ。
そしてその繋がりを元にあかいくさりがほむらの霧散しかけていた魂そのものも繋ぎ止めた。
今、ほむらの魂ははっきんだまに収められている。ギラティナの力の一端が収まった球はほむらのソウルジェムの代用品となったのだ。

インキュベーターであってもその発生を読むことができなかったのは仕方のないことだろう。
彼自身もエントロピーによって発生しうる奇跡の可能性を全て認識しきれているわけではないのだから。

しかしここで一つ、誰も気付いていないことがある。



ギラティナと深層的な部分において繋がりを持ったほむら。
魂をも留めたそれは、また別の部分においても繋がりをもたらしていた。

それは、ギラティナとの感覚。
視覚、聴覚といった感覚の一部がはっきんだまとの繋がりを通して共有されたこと。
意識を失った彼女の感覚が、ギラティナとも共有されてしまっていたことに誰も気付いていない。

無論意識のないほむらにそれらを認識することがあったかどうかは怪しい。
あるいは目が覚めた時にはほとんどのことを忘れている可能性すらあるだろう。

ただ一つ言えること。

それはじっと地面に横たわるギラティナは、アクロマとキュウべえ、そしてアーニャの会話の一部始終を聞いていたということ。
最終兵器のこと、制限装置の不調のこと、それ以外にも、ギラティナがあかいくさりに拘束されて以降の会話の全てを。

薄く目を開くギラティナの瞳の奥に、一瞬闇色の何かがドクリ、と通り過ぎていったことに、誰も気付いていない。


【暁美ほむら 蘇生(主催者側にて回収)】

【?????/一日目 夕方】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康?、あかいくさりによる拘束
[服装]:見滝原中学校の制服、まどかのリボン@魔法少女まどか☆マギカ
[装備]:はっきんだま(ほむらのソウルジェムの代用品)@ポケットモンスター(ゲーム)、あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:???????
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※はっきんだまにほむらの魂が収められており、現状彼女のソウルジェムの代用品とされています。
ギラティナを制御しているあかいくさりによってその生命が間接的に繋ぎ止められている状態です。
※バトルロワイヤル上においては死亡扱いとなっているため次の放送では名前を呼ばれます。
※ギラティナと感覚が共有されており、キュウべえ達の会話を聞いていた可能性があります。


※バトルロワイヤルの装置には最終兵器@ポケットモンスター(ゲーム)をインキュベーターが改良したものが使われています。
※アクロマがギラティナを捕獲しその力を解析しています。
※現在ロワ会場での一部制限が機能しなくなっている可能性があります。
※会場のどこかを黒猫(キュウべえ)が徘徊しています。

127:少女よ立ち向かえ―進撃の狂戦士 投下順に読む 129:帝王のココロ
時系列順に読む 130:魔法少女は絶望と戦いの果てに
126:憎悪-Badblood mind 暁美ほむら 135:Guilty Girl
美国織莉子 132:虚の中の道標
アリス 138:Saver of Revenger
124:閃光の真実と深淵の影 キュゥべえ 135:Guilty Girl
アクロマ



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