第三回定時放送

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第三回定時放送 ◆Z9iNYeY9a2



儀式を開始してから間もなく18時間が経過しようとしている。
深夜の闇の中から始まったあの会場は一度登った陽が沈み再度夜を迎えようとしていた。
だが、アカギの佇む空間はそんな時間を感じさせることなく、ずっとそれまで佇んでいる風景を維持し続けている。


そんな静寂な空間で瞑想を続けるアカギ。
ディアルガ・パルキアという人間が手にするにはあまりにも強大な力二つを持った彼は、その制御に精神のほぼ全てを振り分ける必要がある。
特にこの空間は特殊だ。殺し合いによる因果収集のため多くの特性を持たせた都合上、もしこのポケモン達が暴走するようなことがあれば容易く会場は崩壊する。
無論万が一に備えた対策こそ施してはあるが、参加者達がそれに乗じて動きを起こすことがあれば儀式そのものの続行が難しくなる。

それ故一人、何者の邪魔も入らない場所でこうして二竜の力を抑え続ける必要があった。
この殺し合いの儀式自体が己の目的成就のためのものであり、加えてアカギ自身元より静寂を愛するものであることからそれほど苦痛とは思わなかった。
しかしアカギの精神はともかく、肉体的な限界はどうしても発生してしまうもの。その一時的な休息を放送と同時に取ることで長時間の瞑想を続けられるようにしている。

(どうして、そこまでして世界を変えようとするの?)

しかし、先に一時的にその瞑想を2竜の力の制御以外のことに使ったことがあった。
ギラティナ捕獲のために少しだけディアルガ・パルキアの力を解放したあの時だ。
それ自体は別に大きな影響を与えるものではない。現にこうして今も力の制御は叶っている。

ただ、それが関係しているのかどうかは分からないがそれ以降、ほんの少しだけ瞑想するアカギの思考に割り込んで語りかけてくる声があった。
無論それで集中力を乱されるようなこともなかったが。

(世界が憎いなら、自分一人だれもいないところにいけばいいだけでしょう?)

それはかつて自分に語りかけてきた言葉と同じもの。
そしてその詰問にはこう答えた。

何故私が世界から逃げるように息を潜めねばならないのだ、と。

世界から心という不完全なものを消し去り、完全な世界を作り出す。それは世界の、そして人間のためにもなる偉業だ。

(あなたは、本気でそう思っているの?)

無論だ。
それを信じて、あのやぶれた世界での敗北後もこうしてあらゆる手段を模索してきたのだから。


あの日。私にとっては大きな起点となった戦い。
やぶれたせかいで名も知らぬ子供に敗北を喫した後。
シロナとその子供がその世界から帰還した後も私は一人、その空間に留まり続けた。

そしてその果てに、偶然とも奇跡とも言うべきあの出来事に巡りあうことができた私はやぶれたせかいから抜け出すこととなった。

やぶれたせかい――時空も空間も歪んだ、不安定な世界。しかしだからこそ偶発的な現象によってその世界を脱した私はそこにたどり着くことができたのかもしれない。

Cの世界、ある世界においてはエデンバイタルとも呼ばれる場所。
万物の根源であり、意識と記憶の集合体。

時空間のどこにでも存在し、干渉するエネルギー・法則。
人が神や精霊と呼び崇めてきたものの本当の姿とでもいうべきもの。

私のいた世界、ポケモンが存在する世界においてその力の一端を与えられた存在が伝承に伝えられし数々の幻のポケモンだったのかもしれない。
そしてその中でも時間・空間というより強大な力を持つものに直に触れた私だからこそ、この場所へと至ることができたのだろう。


そして同時に思った。
この存在はあまりにも忌々しいものだ、と。
人が争い、いがみ合う醜い世界の根源がそこにあったのだから。
世界を維持するために人の世に争いをもたらす根源。この存在を消滅させることができれば、心のない静寂な世界を作ることも可能なのではないか。
だがそこにある記憶を、過去を読み取った私はこれまで私の考えと同じようにこの"神"を殺そうとした者の存在を知り、同時にそれがなされなかった事実を見た。
あの時の子供を連想させるような若者が多く見られたのは何の皮肉だろうか。
先人達に成せなかったことの焼きまわしをしようという考えには至らなかった。

だからこそその存在の強大さを見極めた私は、この力を利用する形で別の手段を模索することにした。
そしてそのために門を通して多くの平行世界を見た。

ポケモンがいる世界、いない世界。
魔術が存在する世界、神が明確に存在する世界。
様々な法則が存在している別々の世界。
だがそんな中でも人間の醜さだけは変わらなかった。
この集合意識の望みを叶えるかのごとく争いを続ける人間達の姿。

そんな中に、そういった人間の感情を利用して世界を存続させるエネルギーとし活用することで宇宙を存続させようとする者がいることを知る。
インキュベーター。
宇宙の熱力学的死を防ぐため、人間の感情をエネルギーとする手段を生み出した者。
その力を使うことで、新たな世界を作ることができるのではないか。

そう考えた私はインキュベーターへと接触を図った。

インキュベーターの求めるエネルギーを得ることができる手段の可能性。
そのやり取り自体はインキュベーターにとっては損をするものではないということで話を聞かせることには成功した。

さらにそこから、Cの世界を彷徨っていたシャルル・ジ・ブリタニアとの接触にも成功し、各々の目的を果たすことが可能な手段を模索。

インキュベーターは感情エネルギーにも変わる、宇宙の熱力学的死を避けるためのエネルギーを。
シャルルは嘘のない世界を作るための力を。
そして私は、静寂な世界を生み出すことを。

シャルルと私の求めるものは似通ったところがあり、それが彼が接触を図ってきたところに通じていたのかもしれない。

そうしてそのための手段として選んだもの、それがこの殺し合いの儀式だった。
やり方そのものは大して珍しいものでもない。ある世界においては古くから伝わっている蠱毒なる呪術のようなものだ。
ただ、それと異なるのは今回の殺し合いの儀においては最後に残った一人に積み重なった因果のみならず、その過程において生まれ生じた因果からもエネルギーを収集することができるということ。

そして一点に因果を集中させその過程においてもエネルギーを生み出すことができる存在。
その世界における大きな役割を持った者、そしてその関係者を。インキュベーターに言わせれば、一国の王や救世主にも匹敵するといった者達の選別が必要だった。
当初鹿目まどかをその一つに組み込むと伝えた際には反対こそしなかったものの、インキュベーター自身の反応は芳しくはなかったものだ。


その舞台装置として必要な設備もまた、参加した者達と関わる世界のシステムや法則を組み込んだものだ。
それを管理する技術者として、インキュベーターが発見してきたのがアクマロだった。
極限状況におけるポケモンの可能性をあらゆる世界と交じり合わせて調査できる環境をちらつかせれば協力させるのは難しいことでもなかったとか。


当然のことながら、各々が腹に何かを抱えていることは全員が承知の上だ。
だが干渉することはなかった。最終的には自分たちの目的が果たされればそれでいいのだから。

こうして全ての準備を整えた私達は、こうして殺し合いの儀を開始した。
全ては、自身の望む心のない静寂な世界のために。




(そんなに、心が邪魔だというの?)

ああ、その通りだ。

怒り、憎しみ、悲しみ。
多くの醜い感情はこの殺し合いの場にも、いや、彼らの生きた世界にも溢れている。

例えば、ヒトから進化を果たした新人類ともいうべき存在は自身の力に溺れまるで野生の動物かとでも言わんばかりの生存競争などを繰り広げ、多くの血を流している。

例えば、人間の善性を証明しようとするための手段として一人の人間に全ての悪という概念を押し付けた者がいた世界があった。

例えば、ヒトから変質、ある意味では進化したとも言えるかもしれない存在は絶望という感情から魔女などという醜い怪物を生み出している。

もし心がなければ、力に溺れる者も罪を犯す者も、そして絶望の果てに生み出る怪物も存在しない。
そしてそんな世界から連れてきた者達を集めたあの殺し合いの場にも、多くの悲しみや絶望、怒りが渦巻いている。


世界が変われども人が変わらないのであれば、自分が一から作るしかない。
心などという不完全なものの存在しない、静寂で完全な世界を。

そのための儀式。そのための贄だ。


(そう、あなたは結局変われなかったのね。
 止まったままの世界で、ただ一人誰とも心を通わせることもなく、その果てに見つけた答えだというのね)

後ろの女は、何故か哀れみを感じるような口調で語りかける。
だが私は意に介すこともしない。
そもそも死者が今を生きる者を憐れむなど、これほど滑稽なこともない。

(そうね。確かに私にはもう、あなたの心に言葉を届かせることはできない。
だけど、希望は残っているって信じてるから。
クロちゃんやガブリアス、みんなが守ったあの子達が、あなたのその絶望を、きっと打ち破ってくれるって)

(あなたがなくしてしまった、人を、みんなを信じる心を、私は信じている)


くだらない。

そう心の中で一蹴して振り返ったところで、そこには声の主はいなかった。
あれは一体何だったのか。
自分の心に残っていた思念が生み出した幻聴か、あるいは会場で死んだあの女の霊魂とでもいうものがこの空間を通してこの場所へと迷いこんだのか。
どちらにしろ、もう現れることはないだろうし深く考える必要もあるまい。

「…時間か」

そして同時に、この空間を出るための時間がきたことに気付いた。





「やあ、アカギ。そろそろ放送の時間だね」

足を固く冷たい金属製の床へとつけた時、足元から声が聞こえる。
まるでずっとそこにいたかのように現れた白い獣の姿を冷たい三白眼で見据える。


「キュウべぇか。あのギラティナ捕獲の際連れてきた娘は今はどうしている?」
「今のところは特に何かする様子はないみたいだけど、それがどうかしたのかい?」
「その娘のところに案内しろ」

少しつり上がった目で、しかし感情のこもらぬ表情でキュウべぇにそう命じるアカギ。
無表情だったはずの顔には、その対象に対する興味故だろうか、僅かな動きがあった。


「別に構わないけど、放送はどうするんだい?」
「お前達に任せる。どうせ死者と禁止エリアの発表をするだけのものだ。必ずしも私がやる必要はあるまい」

その言葉に迷いはない。
キュウべぇとしては問題はないのだが、ここで問題があるとするならばアカギ側だろう。
決定した本人が言っている以上構わないはずだが、念のため確認の問いかけをキュウべぇは投げた。

「それはつまり、君の協力者の存在をあの場の皆に知らせることになってしまうわけだけど、もうそれでも構わないということだよね?」
「くどいぞ。誰が行うかはお前たちに一任する」

その言葉を最後に、アカギは早歩きでほむらがいる部屋へと向かっていった。
着いていこうとしたキュウべぇだったが、その歩みからキュウべぇの同行を拒否するかのようなものを感じ足を止めた。

「やれやれ。元々彼自身が執着していたものの一端が近くに来たからって、あまり役割を投げられるのも困るんだけどね。
 まあ現状だとまだ大したことじゃないから構わないけど。
 さてそれじゃあ………、うん、放送は彼女にお願いするとしようかな」



第三回放送の時間となりました。
私は今回の放送においてアカギの代理として放送をさせてもらうことになった者です。
自己紹介は省略させていただきます。

では、まず禁止エリアの発表です。

19時よりB-7。
21時よりF-3。
23時よりC-2。

以上の三箇所です。

次に死亡者の発表となります。

長田結花
北崎
園田真理
海堂直也
C.C.
ロロ・ランペルージ
マオ
夜神総一郎
衛宮士郎
バーサーカー
シロナ
サカキ
タケシ
ミュウツー
暁美ほむら
巴マミ

以上です。

参加者も半数を大きく下回り1/3も目前に迫ってきました。より一層の進行を期待します。

また、追加事項のお知らせです。
今放送終了後より地図に示された浮遊航空艦、アヴァロン・斑鳩の両艦が起動を開始します。
この二つは会場内を自動で移動し一部施設で一定時間停泊した後移動、という動きを繰り返すこととなるでしょう。
停泊施設は地図に記されたものの中で無事なもの、禁止エリアに入っていないものの中からランダムで選ばれます。
この戦艦に搭乗している場合に限り禁止エリアの侵入・通過も可能ですのでご留意ください。

それでは次の放送は6時間後となります。更なる殺し合いの進行を期待しています。


※放送はアーニャ・アールストレイム(マリアンヌ)によって行われました
※放送後、アヴァロン、斑鳩が自動操縦によって移動を開始します。
 移動ルートは現状で形を残しているかつ禁止エリアに抵触していない施設を回っていく形となるでしょう。
 また、それに乗っての移動中に禁止エリアに侵入した場合、艦の中にいる場合に限り刻印は起動しません。


136:堕落天使 投下順に読む 138:Saver of Revenger
時系列順に読む
107:第二回定時放送 アカギ 148:変わりたい少女達の話
135:Guilty Girl キュゥべえ
マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア



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