 作:Microsoft Copilot |
| 基本情報 |
| 軌道半径 |
1.19天文単位(AU) |
| 直径 |
約12,500km |
| 質量 |
6.2x10^24kg(地球の約1.04倍) |
| 重力 |
地球の約1.08倍 |
| 平均気温 |
13°C |
| 大気組成 |
窒素:76% 酸素:22% その他ガス:2% |
概要
イドゥニア星系第2惑星イドゥニアは、
イドゥニア星系の第二軌道を占める岩石惑星である。
陸地は複数の大陸に分かれており、人の定住が続く区域と、放棄されたまま推移する区域とが、半球ごとに入り混じる。
地表には多数の主権国家が並立し、
イドゥニア星系連合が惑星全体の調整を引き受けた。
暦
惑星イドゥニアの年号には
パルディステル基準暦が用いられる一方、日々の記録では固有の暦法が併用されており、二つの体系の換算表が公文書の巻末に添えられる。1秒は基準秒の1.08倍に相当し、65秒を重ねた区切りが1分、80分を積んだ幅が1時間を成す。1日は18時間で区切られ、その全長は基準日を二割近く上回る長さで定まっている。1月は常に30日で固定され、13の月を積み上げた390日が1年を構成し、月ごとの日数に長短の別は生じない。月の呼び名は13個の衛星の名称に由来し、第一のヴェルニスから第十三のレナトゥスまでが年の順に並ぶ。1週は5日、1月の30日は6週で割り切れ、月初と週初は常に同じ日付で重なる。年の内側に置かれる季節の区切りは、第四の月の初日と第十一の月の初日を境として定められた。恒星の巡りと390日の暦年との間には僅かな差が積もり、二百年に一度、第十三の月へ補正の一日が加えられる。紀元の起点は国ごとに分かれていたものの、現在はいずれの国も基準暦の年号へ起点を揃えている。時刻の表示には十三進と八十進の混在する目盛りが用いられ、日付は年から日へ向かう順に書き並べられる。換算の煩雑さから、星系連合との往復書簡では基準暦の日付のみを記す慣行が定着した。
衛星
大小あわせて13個の衛星を持つ。共通の平面から外れた軌道を巡り、夜間の照度は基準惑星の水準を大きく上回る。
配列
衛星群は惑星からの距離に応じて内側から外側へ並び、公転の周期も同じ順に長くなっていく。内側の五つを占めるのは、鉄と珪酸塩からなる小さな岩石質の天体であり、外側へ移るにつれて氷や炭素質の物質を厚く抱えた天体が現れる。傾きの角度は天体ごとに散らばっており、数度で収まるものから四十度に届くものまで幅がある。13個すべてが満ちる夜の重なりは数十年に一度で、暦の上では特別な日として扱われている。相互の重力干渉が軌道要素を絶えず揺さぶるうえ、位置の予報には数十年にわたる観測の蓄積が要る。各衛星の位置を織り込んだ潮位の表が港ごとに備えられ、外洋に面した港ほど項目の数は多い。夜間の照度は高い水準に保たれ、日没を過ぎた屋外の作業も灯火を減らしたまま進んでいく。合成された潮汐の作用は惑星の自転を緩やかに減速させ、1日の全長を長い尺度で伸ばし続ける。現在も各国の暦局が参照する基礎の資料は、星間機構期の観測装置が残した軌道の記録である。
ヴェルニス
惑星に最も近い軌道を三日たらずで駆け抜ける岩体であり、直径はおよそ40kmを測る。表層の珪酸塩には鉄の酸化物が濃く混じっており、赤みを帯びた地肌には、公転のたびに向きを変える潮汐の力に耐えかねた亀裂が幾筋も走る。岩体の質量は小さく、他の衛星の軌道へ及ぼす影響は測定の誤差のなかへ埋もれてしまう。惑星に面した側と背いた側の温度差は百度に近く、岩の膨張と収縮が絶え間なく繰り返される。崩れ落ちた岩片は軌道上へ散らばり、幅の狭い塵の輪が公転の経路に沿って長々と延びている。自転の周期は公転と噛み合い、惑星へ向ける面はいつの周回でも同じ半球のままである。表面の重力は基準の千分の一に届く程度で、着地した探査機は係留の索を打ち込んで姿勢を保った。軌道の高度が年ごとにわずかずつ下がるにつれ、潮汐の応力が岩体を砕く時点も近づいている。周期が短く位置の予報も容易な岩体は、地上の観測所において時刻の較正に長く用いられてきた。
フロス・ディア
厚い氷の層に覆われた小天体であり、六日ほどかけて惑星の周囲をゆったりと一巡している。直径はおよそ90kmを数えるものの、氷の占める割合が高いために密度は低く、質量の順では中位に落ち着く。表面には帯状の縞が幾重にも刻まれており、縞と縞の間隔は緯度が上がるにつれて狭まる。惑星へ近づく時期には表層の氷が昇華し、細い尾が軌道の後方へ数千キロにわたって延びた。尾を作る水蒸気はやがて散り、一部は惑星の高層大気へ流れ込んで微細な氷の粒に変わる。内部には形成の途中で取り残された空隙が広がり、季節ごとに溶けては再び固まる表層の氷が、古い衝突孔の輪郭を一年ごとにぼかしていく。衝突の衝撃は内部の空隙に吸収され、大きな破砕を免れたまま丸みのある形が保たれてきた。星間機構期には氷の採取を目的とした基地が置かれ、掘削の坑口は今も北半球の斜面に残る。探査の記録では表面温度が摂氏零下百五十度の前後で推移し、季節による変動も小幅で収まった。
ティレーナ
九日周期の巡りは、球の形から大きく崩れた輪郭を持つ直径70kmほどの岩塊が刻む。自転の周期は二時間を割り込んでおり、地上から望む面積が短い間隔で入れ替わる結果、見かけの明るさにも同じ長さの強弱が繰り返し現れる。速い自転は過去の衝突で与えられた角運動量に由来しており、赤道の周囲には放出物の稜が巡る。遠心力は自重に迫る水準まで高まり、赤道部に積もった岩は互いの摩擦だけで繋ぎ止められた。自転の軸に沿った深い溝が表面を幾筋も裂き、溝の底には細かな砂状の物質が溜まっている。探査機の着地は速い回転にことごとく阻まれ、二度の試みはいずれも表面への衝突で終わった。明るさの変動が正確な周期を刻む岩塊は、天体観測の教材として各国の学校で扱われてきた。他の衛星から受ける摂動は小さく、位置の予報には数か月ぶんの観測の記録だけで足りてきた。表面の物質は灰に近い色の珪酸塩を主とし、金属の混じる割合は一割に届く程度である。
オル・ヴァシア
長径と短径の比が凡そ二対一に及ぶ細長い姿を、十四日の公転を通じて絶えず向け替えている。自転軸は軌道面へ倒れ込んだ姿勢を保ち、極域が惑星側を向く時期と赤道が向く時期とは、公転の半周を境として交互に入れ替わる。日射の当たり方が半周ごとに一変し、極域の氷は暖まる季節に昇華して反対の極へ移った。移動した揮発成分は冷えた側で霜となり、表面の反射率は場所ごとに大きな差を生んでいる。長径の方向は潮汐の作用で惑星へ向けられ、わずかな姿勢の揺れが章動として観測に現れた。内部には形成時の亀裂が縦に走り、細長い形は幾筋もの割れ目の並びに沿って保たれてきた。長い側で測った差し渡しはおよそ120kmに達する一方、短い側は60kmほどで収まる。表面の物質は珪酸塩と氷が層を成しており、掘削の試料からも両者の互層が確認された。姿勢の変化が周期的である点を捉え、暦の上では季節の区切りを示す目印に用いられた。
メリーシア
二つの塊が細い頸部で繋がる構造を持ち、接触した二重天体の典型として観測されてきた。合わせた長径はおよそ60kmを数え、十九日の周期を刻む間にも、互いの重力に引かれた塊は接触面をわずかずつ広げており、頸部の径は年を追って太くなった。二つの塊は大きさが近く、質量の比はおよそ六対四の水準で長く釣り合いを保ってきた。自転は十時間ほどをかけて一周し、頸部の周囲には剪断の跡が細い帯状に刻まれている。密度の低さから内部の空隙は体積の三割に達すると見積もられ、瓦礫の寄せ集めに近い構造を持つ。形成の過程では別々の小天体が緩やかな速度で出会い、跳ね返る力を失ったまま結合した。惑星へ近づく時期には潮汐の応力が頸部へ集中し、将来の分離を予測する研究も現れた。表面を覆う暗い岩屑には衝突孔が浅く、その数は隣接する軌道の衛星の水準を大きく下回る。二つの塊が並ぶ姿は望遠鏡でも捉えられ、初期の観測では別々の衛星として記録された。
カルディス
鉄とニッケルの比率が高い組成が、直径およそ210kmを持つ球体の全体へ行き渡っている。二十五日をかけて軌道を一周するこの球体は、投じられた電波を強く跳ね返す性質を備えており、航法の測位では古くから基準の一つに選ばれてきた。密度は水の七倍を優に超え、13個の衛星のうちで最も重い物質によって組み上がった。表面には磁化した領域が斑に広がり、方位磁針の指す向きは着地の地点ごとに大きく狂った。衝突孔の数は限られ、金属の地殻が衝撃を弾き返した痕だけが浅い凹みとして残っている。起源は分化した原始天体の核に求められ、外側の岩石層は衝突で剥ぎ取られたと見られる。採掘の対象として星間機構期に開発が進み、坑道の網が赤道帯の地下に張り巡らされた。統治の崩壊を経てなお採掘の設備は残され、複数の国家が権益を主張し合う状態が今も続く。惑星から望む姿は小さいものの、金属の表面が日射を鋭く跳ね返し、肉眼でも位置を追える。
リュニア
直径がおよそ3,100kmに達する伴星が、三十二日をかけて惑星の周囲をゆっくりと一巡する。内部は金属の核と岩石の層に分かれており、海面の干満の振幅の大半を単独で決めているほか、大陸の地殻にも周期的なたわみをもたらしている。自転の周期は公転と噛み合い、惑星へ向ける面は形成の初期から同じ半球のまま固定された。表面には玄武岩に似た岩石の満たす広大な海盆が広がり、周囲を高地の山塊が取り囲む。裏側の地殻は表側の二倍近い厚みを持っており、広い海盆の分布も表側へ大きく偏っている。大気はごく希薄であり、日中と夜間とで表面の温度には三百度にも及ぶ開きが生じている。潮汐の相互作用によって軌道は年ごとに数センチずつ外側へ移り、公転の周期も伸び続ける。惑星からの距離が近づく時期には、海面の干満が平時の二倍近くまで振れ、低地の港が浸かった。星間機構期には表面へ大規模な都市が築かれ、現在は無人の構造物が海盆の縁に立ち並ぶ。各国の宇宙機関は観測の拠点をここへ置き、惑星の全球を見渡す監視の網を組み上げた。
ナ・ヴィエラ
公転の周期が内側の巨星と簡単な整数比で噛み合い、二つの天体は同じ方角へ周期的に並ぶ。四十一日で軌道を巡る直径150kmほどの衛星であり、並びの起こる日は暦の上で早くから予測され、航海の日程を組む基準に用いられた。共鳴の関係が軌道の離心率を一定の水準に保ち、公転の周期の変動も小さく抑えられた。内側の巨星から受ける摂動は規則正しく現れ、位置の計算には簡単な式だけで足りている。表面は氷と岩石の混じる物質に覆われ、見かけの明るさは巨星の三分の一の水準で収まる。繰り返される潮汐の加熱によって内部は暖まり、氷の一部が液体の層を成す可能性が唱えられた。極域には割れ目が集中しており、内部から噴き上がった水蒸気の凍りついた堆積が広がる。航海者は二つの天体が並ぶ日を航路の切り替えに用い、外洋を避けた日程を組み立てた。観測の記録は各国の暦局に集められ、周期の微細な変化から共鳴の安定が確かめられた。
ハルヴェス
炭素を含む物質に厚く覆われた表面は、降り注ぐ日射のほとんどを吸収し、熱へ変える。直径はおよそ95kmを保ち、五十二日の周期を刻みながら惑星を巡るものの、曇天の夜には肉眼の視認から外れ、観測は電波の受信に頼る形が続く。反射する日射の割合は数パーセントに落ち込み、13個のうちで最も暗い天体となった。吸収した熱によって表面の温度は昼の側で摂氏零度まで近づき、夜の側では急激に下がる。物質には複雑な有機化合物が含まれており、探査の試料からはアミノ酸に近い分子が検出された。起源を星系の外縁に求める説が有力であり、捕獲の時期は惑星の形成期まで遡るとされた。軌道は円に近く、傾きも小さい点から、捕獲の後に働いた潮汐が形を整えたと見られている。表面の物質は柔らかく、着地した探査機の脚は一メートル近くの深さまで沈み込んでいる。観測の難しさから発見は13個のうちで最も遅れ、軌道の確定にも長い年月が費やされた。
ソヴィラス
近点と遠点とで惑星からの距離が倍近く開く長い軌道を、六十三日かけて一巡している。直径はおよそ180kmを数え、見かけの大きさが周期の内側で目立って変わることから、初期の観測では別々の天体として数え上げられた。離心率の高さは他の衛星から受けた摂動の積み重ねに由来し、値は今も緩やかに増している。近点を通る時期には潮汐の応力が一段と強まり、内部の岩石が擦れ合って熱を生み出す。生じた熱は表面の割れ目から抜けており、噴出した硫黄の化合物が黄色い堆積を積み上げていく。火山に似た活動は13個のうちで唯一確認され、噴出の頻度も近点の通過に同期している。表面の地形は噴出の活動によって絶えず塗り替えられており、古い衝突孔は跡形もなく消えた。遠点へ向かう時期には活動が鎮まる一方、噴出の痕は冷えて硬い層へと変わっていった。硫黄の資源として注目を集めており、採取の計画は複数の国家から繰り返し提出された。
モルテイナ
他の12個と反対の向きに回る運動が、捕獲された天体である何よりの証と受け取られてきた。直径はおよそ55kmで、七十六日の周期を保ちながら軌道面を他天体の面から四十度ほど傾け、起源を星系の外へ求める説が唱えられた。逆行の軌道は潮汐の作用で少しずつ縮み、惑星との距離は世代を追って詰まっていった。現在の速度のまま推移した場合、数千万年の後には大気圏へ落ち込む計算が示されている。表面は氷と岩石が入り混じっており、内側を回る衛星に見られる珪酸塩の比率を大きく下回る。傾いた軌道を巡る関係で、地上から望む高度は季節の推移に沿って大きく上下を繰り返した。逆行する天体を扱う航法の計算式は入り組んでおり、測位の基準からは早くに外された。表面の温度は摂氏零下二百度に近く、揮発性の物質は原始の状態を保ったまま残された。探査の計画は軌道の傾きが障害となり、到達の記録は星間機構期のただ一度で途切れた。
ソ・ムニア
細かな塵の帯が軌道の全周に散っており、九十一日ごとに惑星の同じ側へ巡り戻ってくる。直径およそ35kmの本体から剥がれた岩片が大気へ落ちるたび、地表では規模の大きな流星の群れが観測され、時期は毎年ほぼ同じ日に重なる。本体は密度の低い瓦礫の集合体であり、公転のたびに表層の物質を塵の帯へ供給し続ける。帯の幅は数万キロに達し、内側を回る衛星の軌道と交わる箇所も複数が見つかっている。交差する地点では衝突が繰り返され、生じた微粒子がさらに帯の密度を押し上げてきた。流星の落下は上空の電離層を大きく乱し、長距離の無線通信にも周期的な障害が現れた。各国の通信局は落下の時期を織り込んで運用の計画を組み、中継の経路をあらかじめ切り替える。本体の形はいたって不規則であり、自転の軸も絶えず向きを変え続ける有様が観測されてきた。質量の小さい本体はいずれ塵の帯のなかへ崩れ落ち、やがて姿を消す見通しが立てられた。
レナトゥス
主星の重力が惑星の支配と競り合う遠い縁に、最も外側を回る岩片の軌道は横たわっている。直径はおよそ130kmを保ち、百八日で一巡を終える一方、軌道の要素は長い年月をかけて外側へずれ続け、いずれ系から離れる見通しが立つ。主星から受ける摂動は惑星の引力に迫る強さを持ち、軌道の形は一周ごとに大きく歪む。離心率と傾きは長い周期で振動しており、数千年の尺度で大きな値と小さな値を行き来する。表面は氷が主体であり、岩石の混じる割合は13個のうちで最も低い水準に落ち着いた。自転の遅さは際立っており、一回転に十日近くを費やす岩片の昼夜の温度差は小幅で収まる。惑星からの距離が大きい関係で、地上から望む姿は小さく、見分けには望遠鏡を要する。発見は13個のうちで最も遅く、軌道の確定には二世代にわたる観測の蓄積が費やされた。離脱の時期を巡る計算は各国で食い違い、数十万年から数百万年までの幅で結果が割れている。
地勢
惑星イドゥニアの陸地は複数の大陸に分かれており、水域の広がりが陸塊の総面積を大きく上回るため、大陸間の往来は海路と空路の二系統で成り立つ。大陸の規模には差があり、単独で一つの気候帯を抱える大きさの陸塊から、島嶼の連なりに近い小さな陸塊までが並ぶ。造山の帯は各大陸を貫いており、東西の往来を隔てる山脈が、交通網の骨格を峠の位置によって決めた。山脈の風下側には乾いた高原が横たわり、河川の水源を山地の雪解けに頼る集落が、谷筋に沿って点在する。沿岸部には遠浅の大陸棚が発達し、港湾の適地は棚の縁が陸へ寄る限られた箇所に集中している。大陸の縁には長大な断崖が連なる箇所があり、内陸へ通じる道は河口の平地を遡る形で開かれている。高緯度の陸塊は厚い氷床の下に沈み、岩盤の露出する箇所は海岸線の一部で確認される。大陸の内部には塩湖の連なる盆地が点在し、周囲の地層から採掘される鉱物が工業の原料を成す。地殻の活動は活発で、断層の走る帯には火山列が並び、噴出物の堆積が周辺の土壌を肥やしてきた。陸地のうち居住の続く割合は半ばを下回っており、残余を占める放棄された区域が、各半球の広い面積を塞いでいる。
気候
惑星イドゥニアの気温を左右するのは、主星から届く日射の量と、大気が熱を抱え込む力の釣り合いである。主星の質量は基準となる恒星を僅かに上回り、放つ光量も二割ほど多いが、公転軌道が外側を回るぶん、地表が受け取る日射は基準惑星の水準を一割ほど下回る。地表気圧は基準大気の八割ほどに収まっており、水蒸気の保持量もこれに応じて低く、日中に蓄えられた熱は夜のうちに大部分が宇宙へ逃げていく。自転軸の傾きは浅く、季節による日射量の振れ幅も小さい半面、緯度に沿った気温の勾配は急な傾きを描いた。高緯度の氷冠が中緯度側に張り出した結果、温帯の帯は南北とも幅を狭め、農耕の適地は中緯度の沿岸に集中する。昼と夜が入れ替わる周期は基準日を上回るため、日没から夜明けまでに放射冷却の進む時間が長く取られる。海洋から離れた内陸の高原では、日没からの数時間で二十度を超える気温の低下が生じ、日中の暑熱と夜間の凍結が同じ一日の内に並ぶ。沿岸の平野は海水が熱を抱え込む影響を受けており、日較差は内陸の水準を大きく下回った。内陸の耕作は霜を避けた短い季節に集中しており、灌漑の水路は融雪の時期に合わせて開かれる。
海域
海域の区分は、大陸棚の縁と緯度の二つを基準として引かれ、境界の内側と外側で航行の条件が入れ替わる。
中央海域
中央海域は、大陸群に取り巻かれた水域の総称であり、中西洋と中南洋のほか、中東洋がここに含まれ、航行の条件は三洋を通じてほぼ揃う。大陸に囲まれた内海と、大陸間に横たわる中油海も、波の穏やかさから同じ区分に数えられた。内海は周囲を陸に囲まれて波高が低く、季節を問わず小型船の航行が成り立ってきた水域である。中油海では
イドゥニア中央鉄道の船舶輸送が定期の便を保ち、貨車を積んだ渡航船が対岸の港へ渡る。水温は緯度による差が小さく、赤道下の海面と大陸沿岸の海面とで、年較差の幅がほぼ揃う。生物相は水深の浅い大陸棚の上に集中しており、魚群と甲殻類の漁獲が沿岸諸国の食卓を賄う。遠浅の干潟には固有の貝類が層を成して繁殖し、殻を焼いて得る石灰が建材の原料に回された。
変異キメラの侵入は散発的であり、確認される個体の体長も数メートル程度で推移する。沿岸各国の海軍と鉄道公社の武装艦艇が哨戒を分担し、群れの兆候を捉えた段階で駆除に入るため、被害の多くは破られた漁具の損壊で収まってきた。海底に横たわる星間機構期の沈船からは金属材が引き揚げられ、作業は浅海の範囲で続いている。
外洋
大陸棚の縁を越えた沖合は外洋と区分されており、外平洋のほか、大北洋と大南洋がこれに当たる。陸から離れるにつれて生息する生物の体格が段階的に増し、体長数十メートルに達する
変異キメラが群れを成す。船体を直接襲う事例が繰り返された結果、各国の海軍は横断航路の設定を取り下げ、船団は大陸棚に沿った遠回りの沿岸航路を選ぶ。棚の外側へ出た漁船の帰還率は低く、遠洋の漁場は各国とも放棄され、漁は沿岸の水域に集中した。海面の直下には変異キメラの排出する粘性の膜が漂い、船体の推進器に絡んで機関を停止させる。海面に浮かぶ死骸の周りには小型の個体が群がり、通りかかった船は進路の変更を強いられる。深海の熱水噴出孔の周囲には独自の食物連鎖が成り立っており、湧き上がる栄養が巨大な個体の餌場を形づくる。補給の拠点に足る島は僅かで、横断を試みる船は往路の全量を積み込む必要に迫られた。上位個体の目撃も報告されており、遭遇した艦隊が消息を絶つ事態は各地の海域で起きている。軍の遠征計画からも沖合の横断は外され、星系連合の統計は遭難の件数を年ごとに積み上げる。
極海
極海は、南北の氷床に接する高緯度の水域を指す海域であり、季節ごとに前進と後退を繰り返す海氷に応じて、氷縁の位置は年ごとに大きく移り変わった。大気の循環は極を中心に閉じ、外部から流入する熱が氷床の縁で遮られるため、水温は夏の盛りでも氷点の近くに張り付いた。氷の下では外洋の個体を上回る体躯の
変異キメラが越冬しており、氷盤を割って浮上する行動が観測されている。氷の割れ目から立ち上る霧が視界を塞ぐため、接近する個体の姿は船影が触れる距離まで隠れたままとなる。氷丘の崩落と海氷の急激な閉合が重なる時期には、逃げ場を失った船体が分厚い氷に挟まれ、竜骨から折れて沈む。氷床の縁から切り離された氷山は低緯度側へ流れ出し、解けきるまでの間ずっと航路の障害となる。極夜の期間には気温が摂氏零下八十度まで落ち込み、装備に用いる金属は脆く割れて、修理の見込みも失われた。恒久の居留地は皆無であり、観測拠点の設置は幾度も試みられた末に断念され、現在は無人の観測浮標が残るのみである。踏査の記録は星間機構期の探検隊まで遡るものの、統治の崩壊を境として以後の到達例は途絶えた。
滅亡区域
滅亡区域は、
星間文明統一機構の統治期に受けた破壊が地表に固着したまま、人の定住が絶えた地域を指す。統治の影響は全球に広がっており、旧市街の地下には当時の設備が惑星のいたる所で埋もれている。ただし汚染物質の堆積と
変異キメラの密度には濃淡があり、ポラクリア大陸をはじめとする幾つかの大陸では、全域から人が退いた。こうした大陸では市街の躯体が原形をとどめ、産業施設の外壁が風化を受けたまま並ぶ。研究施設の跡地では封じられていた実験体の系統が野生化し、周辺の生態系を組み替えている。星間機構期の動力炉が残る一帯では地熱の分布が乱れ、冬でも雪が溶け落ちる窪地が現れた。大規模な破壊が残したクレーターの底には放射性の堆積物が溜まり、防護装備を備えた隊であっても、滞在は短時間で打ち切られる。区域を貫く旧道は路盤の陥没によって寸断され、踏査の経路は海岸沿いの平坦地に沿って組まれた。変異キメラは内陸の遺構を巣として繁殖し、群れの規模は季節の推移に沿って増減する。居住の続く大陸にも小規模な滅亡区域が点在し、周囲を防壁で仕切った状態で放置されている。
市街難民
市街難民は、都市の居住枠から外れたまま、市街の周縁や廃墟の一角に住み着いた人々を指す。発生の起点は
星間文明統一機構の統治崩壊に遡り、
セクター・イドゥニア大戦の戦後処理で故地を離れた集団が加わったことから、人数は世代を追って積み上がった。生業の中心は遺構からの資材回収に置かれており、回収した機器の部品を都市部の工房へ持ち込むことで日々の食糧を得ている。廃材の再利用に通じた者は配線の系統と動力の規格を読み解き、都市の技術者が扱いを持て余す旧式の装置を復旧させた。都市部との取引はもっぱら現物の交換で成立し、貨幣の受け渡しが起こる場面はまれである。都市の側は難民の技能に頼りながら、居住区の内側での受け入れを制度の外に置いたまま推移した。子どもの教育は年長者の口伝が賄い、読み書きの水準は集団ごとに大きく開いたまま推移した。越冬の時期には廃屋の地下へ潜り、備蓄した燃料で暖を取る集団が各地の市街周縁に現れる。滅亡区域の縁を巡る集団は踏査の案内を請け負い、報酬として工具と保存食を受け取った。
自然災害
地殻と大気の急変を伴う三種の現象が広く知られており、被害の記録は星系連合の統計に集約される。
咆哮嵐(Howling Tempest)
高速で回転する風の渦に多数の放電が伴う暴風現象は、大気の急変とともに惑星の各地で発生する。渦が近づくにつれて空は暗転し、青紫の閃光が絶え間なく走り、地表の輪郭は瞬く間に塗り替えられた。市街では屋根材の剥離が続いており、通過の後に残る倒木は森林の樹冠を広く削り取る。放電は塔状の建築を狙って落ち、避雷の導線は基礎の下の岩盤まで深く打ち込まれている。兆候の観測にかかる時間は短く、気圧の急降下を捉えてから到達するまでの猶予は数刻で尽きる。内海の沿岸では風速の伸びが抑えられる一方、外洋に面した海岸線では同じ規模の渦が倍近い風速に達し、防潮の堤が波に洗われる。各国の建築規範は耐風の等級を沿岸と内陸で分け、外洋側の集落は地下の退避所を居住区の直下に備えている。渦が抜けた後の斜面では土砂の崩落が長く続き、植生の回復には数季を要し、耕地の再開は翌年へ持ち越された。地表の起伏が嵐ごとに削られる結果、沿岸の地図は数年ごとに改訂を重ね、旧版の海図は現地の形と食い違う。
毒牙噴出(Venom Geyser)
地表が裂けて超高温の蒸気が噴き上がる噴出現象では、猛毒のガスが鉱物の粒子を巻き込んで拡散し、周囲の岩肌が瞬時に溶け落ちる。噴出孔が開く直前まで地表の起伏は静止しており、動き出してから周囲を呑み込むまでの間隔は短い。地殻には活断層が網の目に走り、断層の運動と共鳴した箇所で開孔が起こる結果、噴出の分布は断層線の走りをそのままなぞる。噴出域の内側では開孔から数秒のうちに退避の機会が絶たれ、生き延びた者の証言は周縁からの目撃に限られる。拡散した粒子は大気と土壌を汚し、植生の枯死に続いて地力の低下が進むため、耕作の再開までには数十年の歳月を要した。滅亡区域の内陸では発生の頻度が高く、居住地の選定は開孔の記録が途切れた一帯を選ぶ形で進められた。噴出の多い地帯では防護服の常備が定着し、高温と腐食に耐える特殊素材が織り込まれている。住民は地殻活動の監視を絶え間なく続け、微弱な震動の記録から次の開孔の位置を推定する。噴出の後に残る孔の周囲では地盤が沈み込むため、耕地の境界は世代ごとに引き直された。
永久氷雪(Eternal Freeze)
内海や河川の水面が一夜で凍りつく氷結現象は、冬季の高気圧が張り出す時期に集中し、数日のうちに水域全体を覆う。気温の急降下に極方向からの冷気の流入が重なると、水温は一挙に氷点下まで落ち込んだ。張った氷は厚く緻密で、通常の砕氷器具では表面を削る程度に終わり、砕くには火薬を用いる。氷の下に取り残された船体は解氷まで動きを止めており、水中の生物相も広い範囲で失われる。沿岸の海運は氷結の期間を通じて停止し、陸路の隊商へ振り替えられた交易の荷の運賃は、解氷を迎えるまで平時の数倍の水準で推移した。氷の厚みが増した年には積荷を載せた荷車が氷上を直に渡り、仮の街道が対岸の集落まで引かれる。住民は氷上を渡る歩行の技術を継承し、氷を割って水路を開く装置を船首に据えることで、越冬の間の往来を保つ。予兆が観測された段階で沿岸各国の観測機関が警報を出し、遠征の隊は日程の組み替えを迫られた。氷が解けた後の水域では塩分の分布が乱れるため、魚群が戻るまでに時間がかかり、漁の再開は初夏にずれ込む。
関連記事
最終更新:2026年08月26日 10:12