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龍聖騎兵


概要

 龍聖騎兵は、王政連合が龍の軍事転用を経て編成した、
騎乗の形式を採る兵科である。星間規模の艦隊と向き合う想定のもと、機動と堅牢の均衡が編成の基準に据えられている。
騎乗の対象となる龍は古典古代から続く系統に属し、星教騎士団が保有する生体兵器の一つとして認知された。


編制

 騎兵と龍を一つの組として登録する方式が採られており、部隊の規模は編成された組の数によって示される。

選抜
 騎兵の候補を選び出す審査では、対面した龍の個体が候補に示す反応の度合いが、初段における判定の材料に置かれる。接触の回数を重ねるうちに組み合わせの可否が定まり、噛み合いの弱い組は別の個体との審査に回される。肉体の側に課される条件として、高機動の状態で加わる加速度に耐える強度が求められており、持久の水準を確かめる試験が長い日数をかけて続く。規定の値を割った候補には原隊への復帰が命じられ、値に届いた者だけが操縦の課程へ進む。騎乗機の操縦に要する適性については、反応の速さと空間の把握を同時に測る課程で判定が下され、結果は段ごとに記録へ落ちる。候補の総数のうち合格に達する人員はわずかで、段を追うごとに残る数は減っていく。審査にあたるのは実戦の配置を退いた騎兵で、判定の基準には龍の世代交代に合わせた調整が加えられてきた。編入の決まった騎兵には組を成す龍の個体が同じ日に割り当てられ、厩舎の区画は騎兵の居室に隣接して用意される。配属の初日から寝起きの時間帯を個体の生活に合わせて組み直す運びとなり、起床の合図は龍の側から出される。

調練
 組を成した龍と騎兵は、地上での接触を反復する工程から訓練に入り、合図の体系を初期の課程で作り込んでいく。飛行の課程に進むと、急激な旋回と加速を伴う機動が繰り返され、騎兵は視界の揺らぎに耐えながら姿勢の指示を出し続ける。連携の精度を測る基準として、指示を出してから龍が動作を起こすまでに生じる遅れの幅が用いられており、幅の縮んだ組から実戦の配置に移る。合図の体系には二つの系統が組まれ、騎乗機の外部音声が途絶えた局面では手綱の張力が主となる。精神の側を鍛える課程も組み込まれており、騎龍を喪失した場面を想定した処置の手順が、繰り返し反復される。手順を身につけた騎兵ならば、動揺の生じた局面でも呼吸の間隔を保ったまま、指示を継いでいける。修了の判定は艦隊を模した標的を相手に行う模擬の交戦で下され、判定を通った組が所属の中隊へ配される。課程を修了した組の間には、言葉による指示を省いた状態でも動作の噛み合う関係が成立している。配属の後も月ごとの飛行が義務づけられており、間隔の空いた組は判定の課程に戻る。

騎龍

 騎乗機の搭載に耐える規模まで龍の体格は達しており、背の中央には座部を据えるための鞍状の隆起が生じている。

生態
 孵化の直後から人の手を入れる方式で龍は育てられ、餌の給与を重ねるうちに個体の警戒は和らいでいく。系統そのものは古典古代の記録に現れており、飼育の技術が世代を重ねながら受け継がれ、繁殖の管理も団の厩舎で続いてきた。体表の鱗には周囲の光を散らす層が備わり、層の角度が変わると輪郭は背景に紛れ、探知の波が返る量も同時に減る。損傷を受けた組織は自ら再生に向かうため、浅い傷であれば交戦の最中に塞がっていき、痕跡は鱗の下に残る。再生に要する時間を決めるのは損傷の深さで、骨格まで届いた傷の場合には、飛行を止めた長い休養が組まれる。主と認めた騎兵の判別は匂いと声の二つで行われ、判別の成立した相手には自ら首を下げる姿勢を取る。見知らぬ人員が近づいた場合には鱗の層が立って威嚇の姿勢に移り、組を成す騎兵の声が入った時点で姿勢は解かれる。寿命が騎兵の現役の期間を上回るため、一頭が複数の代の騎兵と組を結ぶ経過も生じる。成長の段階ごとに与える餌の組成は切り替えられ、出撃の前には摂取の量を抑える調整が入り、身体は軽い状態を保つ。

火力
 攻撃の手段を口腔から放たれる射出体に集約する構成が採られ、三種の様式が体内の別々の器官で作り分けられる。プラズマ・スフィアには高温の球体を形成したうえで射出する過程があり、着弾した装甲を内部の層まで溶かしながら、周囲の構造材に熱を伝えていく。射出の間隔が従うのは体内に蓄えた質量の量で、連続した投射の回数には上限が生じ、消費した分の補充には飼育場での給餌が要る。灼熱の炎は広い範囲を覆う形で吐き出され、密集した小型機の編隊をまとめて焼く一方、噴射の持続は肺の容量で定まる。長く吐き続けた後の射出には立ち上がりの遅れが現れるため、騎兵は噴射の秒数を計りながら合図を送る。バブルビームでは減衰の小さい収束した束が伸び、艦体の装甲を貫いたうえで内部の区画まで達する。束の生成に要する冷却された気嚢の内圧は高度に左右され、空域の下がった位置では圧の確保に時間がかかる。三種の使い分けを決めるのは目標の規模と距離で、騎兵の指示が伝わった時点で器官の側の切り替えが起こる。射出を終えた直後の口腔は温度が上がっており、別の様式に移る場合には短い間隔が挟まる。

装備

 座部を起点として装備の各部は龍の背に配置され、着脱の作業は地上の整備場で行われる。

騎乗機
 龍の背に固定された骨格の内側に人員の区画を収めているのが、騎兵の座乗する機体であり、外形は龍の体格に合わせて作られる。区画の内部では重力制御機構が働いており、旋回と加速で生じる加速度は、搭乗者に届く前の段階で減じられる。操作の主体を担うのは令咏術の行使で、詠唱の句を機体の演算系が受け取ると、指定に応じた作用が機外に現れる。行使の対象は龍の体勢の補正から敵機の拘束まで及び、句の組み合わせを替えると作用の性質そのものが入れ替わる。句の登録数には機体ごとの上限があるため、出撃の前に想定の局面へ合わせた入れ替えが行われる。機体の外周に備わるエネルギーフィールドの発生部は、展開した圏の内側で敵機の電子機器を止め、通信の帯域にも乱れを生じさせる。包囲された編隊が指揮の系統から切り離されると、統制を欠いた機体は個別の判断で退避に移る。発生部の稼働には冷却の工程が伴うことから、圏を張り続けた後には放熱の間隔が挟まる。放熱の途上にある機体では圏の維持が途切れるため、隣接する組が代わりに圏を張って空隙を埋める。

障壁
 蓄積した電力を放出しながら、龍を中心に球状の圏]を押し広げ、圏の内側に組の全体を収めていく。展開の起点は騎乗機の背面に置かれ、境界に触れた攻撃のエネルギーは異次元の側に送られていく。送出を経たエネルギーは異次元の内側で拡散を経て減衰し、元の空間に戻る分が入射の時点を大きく下回る。送出の経路を選ぶ基準は入射の角度で、正面から受けた質量弾も進路を曲げられ、圏の外側へ逸れていく。展開に先立って蓄電の工程が挟まることから、機構の起動から圏が閉じるまでには間隔が生じ、その間の機体は入射を直に受ける。圏の維持が従うのは電力の残量で、残量の下がった段階では境界の厚みが減り、透過する成分が増していく。複数の組が接近した位置に並ぶと隣り合う圏の境界は重なり合い、一枚の面となって艦隊の射線をまとめて受け止める。面を張った状態では消耗が組ごとに分担されており、維持できる時間は単独の展開を上回る。境界の内側には外部の観測を遮る性質があり、圏を張った組の姿は敵の艦隊の表示から消え、照準の更新は途切れる。

戦術

 龍の速度を前提として戦術の骨格は組み立てられており、交戦の距離は接近の側に寄せて設定される。

機動
 交戦の初動において、龍の群は艦隊の周囲に散開したうえで、複数の方向から同時に接近を図っていく。速度の落差を使う運びが基本に置かれ、加速と減速を繰り返す軌道が対空の照準を外し続ける。被弾の危険が高まった位置では翼を畳んで落下に移る機動が選ばれ、落下の途中で姿勢を戻した組が反撃に転じる。散開した組は互いの間隔を保ちながら、標的の側の対応を分散させ、火力の集中を避ける位置を占め続ける。数の多さを利した圧力が敵の判断を遅らせるため、遅れた分だけ味方の射線は通りやすくなり、後続の組は接近の機会を得る。回避と反撃の切り替えは一連の動作として進んでおり、騎兵が指示を出す間隔は、龍の反応の速さに合わせて短く保たれる。艦隊の対空火力が集中した空域からは群の全体が同じ方向に抜け、離脱を終えた位置で再度の散開に入る。群の隊形を組む基準は騎兵の練度に置かれ、先頭の組が針路を示すと後続はその軌跡をなぞる。長い距離の機動では龍の疲弊が進むことから、交戦の空域までは輸送の艦が群を運び、投入は艦の側の射出口から行われる。

任務
 艦載機の編隊を近距離の格闘に引き込み、数を削っていく工程が、部隊に割り当てられた主要な目標に置かれている。格闘の圏に入った時点で炎の噴射が主要な手段となり、追随してくる小型機は編隊の単位でまとめて焼かれる。艦体を狙う場面では機関の排熱口に射線を集める運びが選ばれ、装甲の厚い正面を避けた経路が組まれる。鱗の擬態を用いた接近が選ばれるのは哨戒の圏を抜ける局面で、探知の網が働き出す前に距離が詰まっていく。奇襲の成立した局面では艦隊の隊列が崩れ、後続の組は隊列の開いた箇所から突入し、内側の区画へ射線を通す。目標の選定は交戦に先立って決まり、変更が生じた場合には、龍の頭部に取り付けた標識の傾きで全体に伝わる。破壊の確認を終えた組は、次の目標に移る前に高度を上げ、隊形を組み直したうえで再度の降下に入る。単独の艦を落とす任務には組の数を抑えた編成が採られ、艦隊への突入には中隊の全体が投入される。戦果の報告は帰投の後に集約され、記録が組ごとの飛行の履歴に加えられて、次の任務の割り当てに反映される。

制約

 交戦の前に運用の限度は見積もられており、見積もりの結果は出撃の可否を決める判断に用いられる。

消耗
 電力の消費が集中するのは防御の圏を張る工程で、連続した展開の可否は蓄積した残量が決め、放出の速さは境界の広さに応じて上がる。張り直しの途上にある機体は入射を直に受ける位置に置かれるため、隣接の組が圏を広げて覆う手順が、交戦の規定に組み込まれている。加速度の処理も消耗の要因に数えられており、重力制御機構が停止した状態では、搭乗者の身体に負荷が直接かかる。旋回の途中で停止が起きた場合、意識を保てる時間は短い。機構の点検は出撃の前後に組み込まれ、部品の交換は飛行の回数を基準として管理され、記録は整備の班が保管する。龍の側も長時間の飛行で疲弊していき、休養を欠いた連続の出撃が翼の動作に遅れを生じさせる。疲弊の度合いは鱗の張りと呼気の温度で測られ、規定の値を割った個体は厩舎での静養に入り、飼育の担当が経過を追う。出撃の間隔を決める材料は組の状態で、消耗の進んだ組は後方の待機に回され、待機の期間は整備の作業に加わる。補給の系統は龍の側と機体の側で別々に組まれており、双方の揃った時点で組は出撃の名簿に戻る。

途絶
 強力なパルス照射を受けると、騎乗機の演算系は動作を止め、防御の圏の展開は、その時点で途切れる。令咏術の行使は句の送出の段階で断たれ、詠唱の途中にあった作用は外部に現れる前に消える。機体の外周の圏も同時に閉じる。通信の回線も同時に落ちることから、組は単独の判断で行動する状態に置かれ、隊形の統制は先頭の組の動きに委ねられる。復旧の手順は演算系の再起動に沿って進み、圏を抜けた位置まで退避した組から順に、機能は元の水準に戻っていく。再起動の間も龍は騎兵の身体の動きを合図として受け取り、手綱の張力だけで機動を続けるため、群は隊列を保ったまま空域を離れる。騎龍を喪失した騎兵の側には、動作の乱れが長く残る。喪失直後は指示の判断に遅れが生じるため、部隊は当該の組を後方に下げたうえ、療養の課程に入れる処置を採る。組の再編には新たな龍との関係を築く課程が要り、復帰までの間隔は選抜の段階に近い長さとなる。再編の課程に入る前に退役を選ぶ騎兵もおり、退役の後は飼育の現場で龍に接する職に移っていく。

儀礼

 騎兵が龍との組を結んだ日には、双方の名を一枚の板に刻む工程が置かれ、板は騎乗機の座部の内側に取り付けられる。取り付けの位置が組の解ける日まで保たれることから、騎兵は搭乗のたびに刻印へ触れてから座部に着く。出撃の前には、騎兵が龍の額に手を当てて呼気を合わせる手順が繰り返されており、由来は飼育の初期に行われた接触にある。意思の疎通を確かめる工程が儀礼の形に定着し、手順を省いた出撃は団の内側で忌まれてきた。戦功を挙げた組の名は団の記録に加えられ、命日には同じ隊列を組んだ騎兵が集まり、追悼の飛行が行われる。飛行の航路は当該の組が最後に通った経路をなぞり、終点に達した編隊は隊形を解いて厩舎に戻る。団員の結びつきは共同の生活を通じて育てられ、食事と休養の場は組の別を越えて共有される。新たに加わった騎兵には先任の騎兵が付き、龍の扱いから機体の整備までが、口伝と手本の反復で伝えられていく。年に一度は団の全体が厩舎の前に並ぶ日が設けられ、龍の頭数と組の数に続けて、退いた龍の名が読み上げられる。

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軍事
最終更新:2026年09月03日 11:41