巡りゆく星たちの中で > セトルラーム共立連邦・経済の極意

ーーーセトルラーム会議棟

セトルラームの中心部にそびえる会議棟は、ガラスと鋼の尖塔が星空を映し、都市の鼓動を象徴していた。尖端が紫がかった空を突き刺し、荘厳な存在感を放つ。最上階の会議室は、バイオルミネッセントパネルの青白い光に浴し、柔らかな輝きを漂わせた。光が天井から床へ滑るように流れ、銀河の星屑が漂うかのようだった。壁一面のホログラムマップは、銀河系の星系や交易路を立体的に映し、光点が脈動する。黒曜石のテーブルに淡い模様が投じられ、夜空の星々が水面に溶け合う光景を思わせた。巨大な窓の外では、セトルラームの都市が広がり、高層ビルの尖端が雲を切り裂く。空中交通の光の帯が流星群のようにビルを縫い、絶え間なく動いた。遠くで輸送ドローンの低音が空気を震わせ、窓ガラスに微細な振動を伝える。イオン化した空気の清涼な香りが漂い、印刷された書類のインクと樹脂の匂いが重なった。会議室の空気が外交の緊張感と期待を静かに煽り、銀河の未来が息づく。

「いやはや、結構、結構。この度の基本合意枠組みはあらゆる分野において双方の発展を促すこと間違いなし。ここまでは順調と言って良いだろう。」ヴァンスはクッションの効いた椅子にゆったり腰掛け、濃紺のスーツの襟を整えた。光沢のある生地が光を受けて輝き、落ち着いた威厳を放つ。満足げな笑みが声に自信を滲ませた。

綾音はテーブルの向かい側でデータパッドを軽く叩き、穏やかに頷いた。「ええ、包括的テクノロジー共有枠組み条約がまとまってよかったです。」データパッドの光が柔らかい影を落とし、都市の遠景が背後に広がった。慎重な楽観さが声に響く。

「そうですね。ないとは思いますけど、帝国に横流しをしないでくださいね。」メレザは身を乗り出し、鋭い視線を投げた。警戒心が言葉に刺すような鋭さを与え、バイオルミネッセントの光が緊張感を際立たせる。

「ああ、そのことなんだがね。もとよりルール違反をするつもりがないのは当然として。帝国の連中は意外にもこの交渉に関心がないらしい。奴ら、これでまたチャンスを大きく損なうことになるだろうな。そろそろ足手まとい……げふんげふん。」ヴァンスは片手を振って受け流す。スーツの袖が空気を切り、静寂に小さな風音が響いた。わざとらしい咳払いが黒曜石のテーブルに反響し、ホログラムマップの光が揺れる。「まあ、あれだ。メレザ殿の懸念するようなことは起こらないから安心したまえ。」

「自分らみたいな国にすらなってない小組織に無関心なのは理解はできますよ。」綾音は小さく肩をすくめ、微かな笑みを浮かべた。データパッドの光が柔らかい影を落とし、窓の外の都市が背後に広がる。

「無論、彼らには彼らなりの理屈と事情があるわけだが。いかんせん先行投資の有益性を理解しておらんでな。後になって、この枠組みに乗ろうとしても私はこう言ってやるつもりだ。手遅れだ。諦めろと。」ヴァンスはテーブルに両手を置き、身を乗り出した。熱を帯びた口調が響き、黒曜石の表面に手の影が落ちる。ホログラムマップの光が輪郭をぼんやり照らした。

「これは驚きました。あなたの口から、そのような評価を聞くことになるとは。」メレザは目を細め、意外そうな表情を浮かべた。ホログラムマップの光が場の空気を揺らし、緊張感を漂わせる。

「まあ、自ら機会を逃す者には、それ相応の対応策というものがある。彼ら自身の傲慢さがいずれ大きな代償を伴うことにはなるだろうが。それはこちらの問題だ。あなた達には関係のないことであるから、本題に戻るとしよう。」ヴァンスは手を振って話を進めた。スーツの袖が空気を切り、静寂に小さな音が響く。

「そうしましょう。」綾音は静かに頷いた。データパッドの光が淡い青を投じ、都市の遠景が背後に広がる。

「当研究所のリラクゼーションエリアはどうだった?最高の技術とサービスを凝縮させた、我が国のテクノロジーは。この数日の間に体験した感想を聞かせてほしい。」ヴァンスは椅子の背にもたれ、窓の外を見やった。紫がかった空の光点が映り、空中交通の低音が微かに響く。

「技術大国らしいサービスと隅々まで行き届いたスタッフへの教育、素晴らしかったです。時間があるときに下町の方にも行ってみたのですが、そこですら高品質なサービスが提供されてて感服しました。」綾音はデータパッドを置き、都市の光に目を細めた。ビル群を縫う光の帯が視線を捉え、セトルラームの活気が伝わる。

「うむ。気に入ってもらえたのなら良かったよ。そして今後の交渉次第では低コストでそれらのサービスが当たり前のように受けられるようになるからね。そちらの職員の福利厚生にも役立てるというものだ。」ヴァンスは満足そうに頷き、指をテーブルに叩いた。黒曜石の表面に小さな音が響き、部屋の空気が軽く揺れる。

「ここから先の話は経済主体になりそうですね。」メレザは冷静に割り込み、視線を鋭くした。バイオルミネッセントの光が緊張感を高める。

「その通り。技術については、もう想定以上の合意が取れてるからな。」ヴァンスはにやりと笑い、自信を覗かせた。スーツの襟が光を反射し、余裕が際立つ。

「経済.....ですか.....」綾音は声を落とし、ためらいがちに呟いた。データパッドを握る手に緊張が滲み、光が微かな震えを映す。

「おや?経済のことをご存知でない?」ヴァンスは眉を上げ、探った。部屋の光が柔らかい影を落とす。

「いや知ってはいるんですけどね.....うちはまだできたばかりで鉱石とかの惑星資源を売ることくらいしか経済を回せるものがないのです。」綾音は首を振って慎重に答えた。声に確かな意志が響き、都市の光が背後に広がる。

「まあ聞きたまえ。あなた達の経済状況に関しては予め調査をさせてある。失礼ながら経済規模では小国以下といったところだが。私はね。そこに投資をする可能性を見出してるんだ。」ヴァンスは椅子に深く腰掛け、指を組んだ。テーブルの光が手元に淡い模様を描く。

「どういうことですか?」メレザは鋭く聞き返し、姿勢を正した。空気が一瞬引き締まる。

「綾音殿。あなたは我が国に取引材料の一つとして鉱石の売却を検討しているのではないかね?」ヴァンスは穏やかに続け、ホログラムマップの光が淡い青を投じた。

「ええ、もちろん。」綾音は素直に頷き、静かに答えた。データパッドの光が柔らかい影を落とす。

「少なくとも、ソルキアよりは高く売るつもりじゃないかね。ふむ、その様子だとユピトルには断られただろう。」ヴァンスは軽く笑い、余裕を見せた。スーツに光が輝き、自信を放つ。

「それは……」メレザが言葉を遮ろうと口を開きかけた。ホログラムマップの光が揺れる。

「ええ、そんなところです。」綾音は静かに認めた。声に微かな疲れが滲み、データパッドの光が淡い影を落とす。

「となると、概ね差し支えない限りの技術協定が関の山といったところか。それも我が国との提携レベルよりも劣る類のな。まあ、それはいいんだ。聞くが、あなた達は、その鉱石にどの程度の価値を見積もってるのかね?言ってみなさい。」ヴァンスは手を広げ、笑みを浮かべた。窓の外の光が背に淡い輝きを投じる。

「1kgあたり2万ソルキアルムくらいだと思います。」綾音は考え、慎重に答えた。指がデータパッドの縁を撫で、黒曜石のテーブルの光が揺らめく。

「謙虚だな。私なら最低3万ソルキアルムは付けるところだよ。そして、あなたとのこれまでの合意により、そのつもりでいるのだがね。」ヴァンスは目を細め、満足そうに言った。スーツに光が反射し、自信が際立つ。

「さ...3万ソルキア!?」綾音は驚きを隠せず、声を上げた。データパッドを握る手に力がこもり、肩が震える。

「ヴァンス。ふざけないでください。ただではないんでしょ?」メレザは鋭く割り込み、声を強めた。バイオルミネッセントの光が緊張感を高める。

「いいや、最低3万は保障しよう。そして、今後の交渉次第では、それ以上の価値を付けてやらんでもない。興味あるかね?」ヴァンスは落ち着いて答え、椅子の背にもたれた。都市の光が背に輝きを投じる。

「ただのエネルギー鉱石にkg当たり3万ソルキア.....いいんだろうか?」綾音は小さく呟き、データパッドを握りしめた。空中交通の光が窓の外で揺らめく。

「なにか、思惑があるはずです。一体、何を考えているのか。用心しましょう。」メレザは低い声で囁き、指がテーブルの縁を叩いた。黒曜石の表面に小さな音が響く。

「話は終わったかね?」ヴァンスは手を叩き、場の空気を変えた。黒曜石のテーブルが振動し、ホログラムマップの光が揺れる。

「え...えぇ。」綾音は慌てて答えた。声に緊張が滲み、データパッドの光が淡い青を投じる。

「うむ。それでは案内しよう。同志技術者諸君!扉を開けよ!」ヴァンスは立ち上がり、重厚な扉を指差した。技術者たちが動き、扉が開く。金属の軋む音が響き、都市の低音と共鳴した。

巨大な円形の装置が姿を現した。表面が脈打つ光を放ち、青と紫のグラデーションが部屋に緊張感を投じる。「これは……なるほど。B.N.Sゲートを取引材料とするのね。」メレザは冷静に言った。装置の光が鋭い反射を生み、場の空気を引き締める。

「まあ、聞きたまえ。君たち、こんな御大層でありふれた装置など、不要だと思うだろう?なにせ、貴方達シナリス星系は、これを超えるかもしれない、いや、超えるであろう高度なポータル技術をお持ちなのだから。」ヴァンスは装置の前に立ち、誇らしげに説明した。スーツの袖が光に映え、空気を切り裂く。

「エリスドライブのことですよね?これならたしかにそうですね。」綾音は穏やかに答え、装置を一瞥した。脈動する光が視線を捉える。

「しかし、現状、あなた達の情報公開のレベルには疑問符がついていてな。それはなぜかって、その隠されたブラックボックス部分の安全性と具体的な軍事転用の可能性だよ。ここまでは、理解できるかね?」ヴァンスは真剣に言い、制御パネルに手を置いた。パネルの光が指先に反応し、振動音が響く。

「たしかにピースギア時代に数回ほど、転移にまつわる事故が発生しました。ですがポータル制御理論により確実な制御を可能としており使い方を間違えなけば問題なく使用できますし、それ以降正常な使い方していた事故は発生しておりません。」綾音は冷静に答え、過去を呼び起こした。声に自信が響き、装置の光が場の空気を照らす。

「まあ、そうだろうな。そうであろうとも。しかし、私達にはそれを確認する術はないし、現状、共立機構のお墨付きというだけで追求を控えているのが正直なところでな。まあまあ、メレザ殿、そう露骨な顔で迫らんでも大丈夫だよ。話を聞いてくれないか。」ヴァンスは軽く笑い、頷いた。スーツの襟が光を反射し、余裕を放つ。

「……続きをどうぞ。」メレザは苛立ちを抑え、声を低くした。指がテーブルの縁を叩き、小さな音が響く。

「でだ、ここからが本題なのだけどね、無論、今の段階で全てを明らかにせよとは言わん。そんなことは100も承知で、私にも分別というものがある。つまり何が言いたいのか。これはね、世界にまたがる重要航路の信用に関わる話になるんだよ。ここまでは理解できたかね?」ヴァンスはホログラムマップを指差した。光点が脈動し、星系間の航路が絡み合う。

「つまり、ポータル技術を信用できないからB.N.Sゲートの改良に例の鉱石を使いたいと、こういうことですか?」綾音は考えを整理し、慎重に答えた。マップの光が視線を引き寄せ、都市の遠景が背後に広がる。

「悪いが、その分析は間違いだよ。これは、そんなゲスい話ではないんだ。まあ信用問題とは言ったけどね。あくまでも現状の話だよ。制限付きのポータル技術をもって、どの程度の航海が認められるのか、この交渉如何によって話の筋が異なってくるのでな。共立世界の地図を、この場で開いてごらん。」ヴァンスは首を振って笑みを浮かべた。光が鋭い輝きを放つ。

ホログラムマップが展開され、航路の線が浮かび上がった。光点が脈動し、銀河の心臓が鼓動するようだ。「開いたね。今一度みてほしいのだが、図上のあらゆる箇所に、線が繋がってるだろう?」ヴァンスは指でマップをなぞり、声を強めた。

「ええ、鉄道網のように繋がってますね。」綾音はマップを見ながら頷いた。声に慎重さが滲む。

「聞くが、あなた達には、そのポータル技術を用いて図上の線をショートカットする術があるだろう。だが、そこが問題なんだ。」ヴァンスは熱を帯び、テーブルを軽く叩いた。黒曜石の表面に音が響き、空気を揺らす。

「中継国へ寄らなくなると、経済的に支障が出る。そういうことですか?」綾音は考え、答えた。指がデータパッドの縁を撫で、都市の光が背後に広がる。

「正直それもあるが、本質はもっと根深いところにあってな。我が国へお越し頂く前に多くのゲートを潜ってきただろう?それは安全保障上の理由によるところが最も大きくてね。すべての国が自由に、気ままにジャンプ航法を用いたらどうなると思う?」ヴァンスは真剣に言い、テーブルを叩いた。光が手元に模様を描く。

「不可侵領域やセキュリティ上ワープしてはいけないエリアへのワープが可能ですね。」綾音は冷静に答え、考えを整理した。視線がヴァンスに戻り、光が影を落とす。

「その通り。いつどこで、どんな物体が、どのような活動を行って自国の領域に存在するのか。これをしっかりと把握するからこそ、事故も未然に防げるわけで、ゲート航路を介するのが推奨されてきたわけでな。」ヴァンスは頷き、満足そうに続けた。光が自信を際立たせる。

「まあそうなりますね。」綾音は納得したように言い、視線をマップに戻した。

「あなたの目論見が分かりました。シナリスに設置予定のゲートを自国企業との契約に持っていきたいと。違いますか?」メレザは鋭く割り込み、声を強めた。装置の光が緊張感を高める。

「まあ、それもあるが、この話には続きがあってな。メレザ殿が言うことに補足をするとね、我が国のゲート産業は共立世界の中でもトップクラスのシェアを誇るんだ。そして、ここに先ほど言って聞かせた信用問題というものに関わってくる。」ヴァンスは笑みを浮かべ、話を補足した。装置の光が場の空気を引き締める。

「言わせて頂きますが、ポータル技術はポッと出の概念ではありませんよ。侮らないでね。」メレザは苛立った口調で反論し、テーブルに手を置いた。指が縁を叩き、小さな音が響く。

「まあ聞きたまえ。なにもポータル技術の劣等性を主張したいわけではなくてだな、人の話を聞けと。でな?私が危惧しているのは、現状、ポータル技術の、ブラックボックス部分が問題になるのであって、いたずらに当方の製品と競合させるのは、互いに得策ではない。ここまで言ったら理解してくれるかね?」ヴァンスは落ち着いて答え、穏やかな笑みを保った。窓の外の都市の光が背に淡い輝きを投じる。

「メレザさん、まあ落ち着いて。実は、こちらにも考えがあります。共立機構加盟国内はB.N.Sゲートの改良型で十分として、外銀河探索や非民間用技術として利用したいなと考えてます。」綾音は穏やかに提案し、メレザをなだめた。データパッドを軽く握り、光が場の空気を柔らかくする。

「うむ。外銀河探索については、我が国としても大いに興味をそそられるところでな。いずれ、そうした事業にも取り掛かることになるだろうが、その前に今一度足並みを揃えておく必要がある。まず、あなた達のシナリス星系では是非とも我が国との提携を検討してみてほしい。そのうえで、将来的には可能な限りのポータル技術を活用し、更に利便性を高める方向で考えているわけだが、如何かね?」ヴァンスは興味深そうに頷き、装置を指差した。脈動する光が緊張感を投じる。

「最終的にはその方向には持っていきたいというのはありますが、ご存じのとおり、技術提供に関して慎重にあたらなければならない事情があるので、開示には現状数世紀かかるかと思われます。」綾音は慎重に答え、データパッドを手に取った。都市の光が背後に広がる。

「うん。いずれにせよ、その間は当方との提携によるゲート航路の敷設を続けて頂けたら幸いなのだけどね。」ヴァンスは理解を示し、笑みを浮かべた。スーツの襟が光を反射し、余裕が漂う。

「それに関しては問題ないです。」綾音は即座に答え、頷いた。声に確信が響く。

「素晴らしい。我が国の信用情報格付けを持ち出すまでもなく話が通じるとはな。これで互いに経済的な摩擦を引き起こす必要もなくなった。我々は今この時をもって友好的な互恵関係となれたわけだ。」ヴァンスは満足そうに笑い、部屋の空気を和らげた。ホログラムマップの光が淡い影を落とす。

「すこし不穏な単語が聞こえた気はしますが、友好関係を持ててよかったです。」綾音は軽く笑い、穏やかに応じた。データパッドに反射する光が柔らかい輝きを投じる。

「では、話の続きをしよう。最低三万は保障すると言ったな。五万でどうだ?」ヴァンスはテーブルに手を置き、話を進めた。空気が新たな取引の予感でざわめく。

「5万ですか.....」綾音は驚いたように声を上げ、データパッドを握りしめた。肩が震え、光が微かな緊張を映す。

「お待ち下さい。話の筋からして、少なくとも10万で取引すべきでしょう。ゲート航路に関する事業だけでも貴国がどれほどの利益をあげているとお思いで?当機構としては、そこに制限を加えることもできるんですよ。」メレザは強く割り込み、声を張り上げた。装置の光が緊張感を高める。

「ふっかけてくるねえ?6万ならどうだ?」ヴァンスは軽く笑い、挑戦的な口調で応じた。テーブルの光が手元に模様を描く。

「メレザさん大丈夫ですか?」綾音は心配そうに声を低くし、メレザを見た。データパッドの縁を無意識に撫でる。

「ふん。自らの政治生命を賭ける覚悟があるというのなら、やってみるがいい。我が国の外交網と対峙する勇気があるのかね。」ヴァンスは声を荒げ、テーブルを叩いた。黒曜石の表面に音が響き、ホログラムマップの光が揺れる。

「二人ともストップ!!!7万でどうですか?」綾音は慌てて仲裁に入り、声を上げた。声に緊張が震え、光が淡い影を落とす。

「綾音さん。しかし、これではあまりにも、あんまりです。搾取されているようなものですよ。」メレザは不満そうに言い、肩を落とした。指がテーブルの縁を叩き、小さな音が響く。

「人聞きの悪いことを言うでない!その理屈で攻めるならソルキアはどうなるんだ。7万でいいだろう?もう。」ヴァンスは声を張り上げ、笑みを浮かべた。スーツの襟が光を反射し、余裕を放つ。

「自分たちはあくまでもお金儲けでこの鉱石を売っているわけではないんです。もちろん、ピースギアの運営する上での資金は欲しいですがそれ以上は望んでないんです。この鉱石の販売に関してはある意味ある一定水準の国にのみという制限と、共立機構内の技術向上の二つの意味でこの鉱石を輸出してます。ですので正直2万でいいと最初に言ったのはそういうことです。」綾音は落ち着いて説明し、穏やかな口調で続けた。視線が窓の外の都市に漂い、空中交通の光が映る。

「……そうですか。そこまで仰るのであれば。」メレザはため息をつき、渋々頷いた。光が場の空気を柔らかくする。

「綾音殿。もう一度聞くが、この女性は君の足を引っ張っているのではないか?サポート訳として適任なのかね?」ヴァンスは真剣に言い、椅子の背にもたれた。部屋の光が柔らかい影を落とす。

「足を引っ張ってなどおりません。職務は全うしてますし、交渉テーブルの設定もしてもらっています。自分たちのような小組織が貴国のような大国とこうやって交渉できてる時点でメレザさんはすごいと思います。」綾音はきっぱり答え、姿勢を正した。声に確信が響き、データパッドの光が場の空気を照らす。

「ああ、あなたは予想以上に真っ当な人物らしい。もし、この先、帝国に出張る気でいるのなら、そのときは力を貸そう。無論、銀河規模の事業に携わりたいのであれば、協力して事を進めようではないか。」ヴァンスは感心したように笑い、穏やかに続けた。スーツの襟が光を反射し、余裕を漂わせる。

「真っ当?ぜひもございません。貴方の口からそれが聞けるなんて。約束は守ってくださいね。」メレザは皮肉っぽく言い、テーブルの縁を軽く叩いた。小さな音が会議室の空気を揺らす。

「なんでそんなこというん?喧嘩腰しかないのか……」ヴァンスは少しおちゃらけた様子で答え、眉を上げた。窓の外の光が背に淡い輝きを投じる。

「メレザさん疲れてるようなので今度、ピースギア来ません?愚痴でもなんでも聞きますよ。」綾音は小声で囁き、メレザの肩に手を置いた。光が柔らかく映り、都市の遠景が背後に広がる。

「おい。聞こえてるぞ。少しは礼儀を払えよ!泣くぞ!」ヴァンスは耳を澄ませ、わざと大げさに声を上げた。スーツの袖が動きに合わせて揺れ、光が淡い影を落とす。

「あぁ、はいはい。すみませんね。もう本題は終わりですか?じゃあ、もう帰っていいですね。」メレザはため息をつき、疲れたように言い、椅子に座り直した。光が場の空気を柔らかくする。

「技術提携の広範にわたる合意と、革新となる通商提携の話は済ませたな。ああ、もう少し欲を言うなら、あなた達シナリス星系も、いずれは移民を受け入れるのかね?その時は是非とも市場を開放してくれたまえ。双方ともに企業進出させて経済的な安泰を図ろうじゃないか。」ヴァンスは部屋を見渡し、話題を振った。ホログラムマップの光が淡い影を落とし、装置の脈動する光が緊張感を投じる。

「市場開放については現時点では考えてはおりませんが、移民を職員として受け入れたいところではあります。各国での長寿技術、不老技術によって人口が惑星や国家の許容範囲を超えてるのも理解してますから。」綾音は慎重に答え、データパッドを手に取った。指が画面を撫で、都市の光が背後に広がる。

「話が早くて助かるよ。まぁ、ゆっくり検討してくれたまえ。話は以上だが、次の予定地はラヴァンジェかい?」ヴァンスは満足そうに頷き、笑みを浮かべた。テーブルの光が手元に模様を描き、空気が和らぐ。

「えぇ、そのつもりです。」綾音は頷き、穏やかに答えた。データパッドの光が柔らかい輝きを投じる。

「あの国は、あの国で中々難しいぞ。自分たちの魔法技術に絶対の自信を持ってるからな。下手な交渉をしかけるよりは、互いに提携のメリットを優先して確認するのが無難かもしれん。まあ、ある意味での優位性を強調しないほうが良いとだけ、助言しておくよ。」ヴァンスは助言するように言い、窓の外を見やった。都市の光が映り、空中交通の低音が響く。

「助言、ありがとうございます。」綾音は感謝の意を込めて答え、微笑んだ。光が柔らかい反射を描き、都市の遠景が背後に広がる。

「ふむ、先方にも受け入れの準備はあるだろうから、まだ暫くはセトルラームでの滞在になるかもしれんな。楽しんでいくと良い。」ヴァンスは笑顔で締めくくった。バイオルミネッセントパネルの光が柔らかく揺らぐ。

ーーー廊下

会議室を出た後、静かな廊下に足音が響いた。ホログラムの光が薄暗い通路に淡い影を落とし、セトルラームの都市の喧騒が微かに聞こえる。壁は滑らかな金属で覆われ、光ファイバーが星々のように瞬いた。「私は納得してませんから。こんな、あんな男に主導権を取られっぱなしで。こんなの……」メレザは苛立ちを隠さず、声を低くした。肩が緊張で固まり、都市の喧騒が言葉に重みを加える。

「確かに主導権は向こうでしたが、互いにメリットのあるものばかりだったんで大丈夫ですよ。」綾音は穏やかに微笑み、メレザの肩を軽く叩いた。廊下の光が柔らかく映り、都市の遠景が背後に広がる。

「ぷすー!お願いです!あの男のことを信用しないで?あいつは、本当に、本当に、悪党なんだからぁ。」メレザは頬を膨らませ、声を荒げた。拳を握り、廊下の光が緊張感を高める。

「過去になにがあったのかわかりませんが、今回の件はあくまで政治家同士の会話だっただけで個人的には信用してませんよ。」綾音は落ち着いた口調で答え、メレザの手を握った。声に安堵が滲み、廊下の光が柔らかい輝きを投じる。

「えぇ、えぇ。そうしてください。さっきの話だって、もっとこちらに有利な条件で纏められたはずなんです。うぅ~」メレザは悔しそうに呟き、廊下の壁に寄りかかった。肩が緩み、都市の喧騒が遠くで響く。

「あのくらいが落としどころですよ。」綾音は優しく言い、微笑みを浮かべた。光が背に柔らかく映り、都市の遠景が広がる。

「セトルラームの経済に対する自信の程度が、これほど突き抜けているとは……痛恨の判断ミスでした。」メレザは肩を落とし、ため息をついた。都市の鼓動が思考を揺さぶる。

「まさかあの値段で買われるとは思ってなかったですよ。」綾音は軽く笑い、廊下の光を見やった。声に明るさが響く。

「私には強硬でなければならない理由があるんです。その話をするだけでも、おそらくは夜を明かしてしまうでしょうから。今度にしましょう。」メレザは声を落とし、真剣に言った。廊下の光が微かな疲れを映す。

「そうですね。またゆっくりプライベートでピースギア来てくれたらいつでも女子会しましょ?KAEDEも込みで♡」綾音は明るく答え、肩を軽く叩いた。廊下の光が柔らかく映り、都市の喧騒が遠くで響いた。

最終更新:2025年07月14日 01:00