らき☆ロワ @ ウィキ

既知との遭遇

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既知との遭遇 ◆BOMB.pP2l.



暗くて暗くて、そして暗くて冷たい森の中を小さな影が明かりも点けずゆっくりと進んでいた。
サクサクという小さな音を立てながら草を踏み、一見迷い子のようでありながらしかし確かな足取りで。
一切の明かりも見通せぬ深い闇の中に放り込まれてからどれぐらい歩き続けたのだろうか。
それはとても長かったかもしれない。逆にそう感じるだけで本当はとても短かったのかもしれない。
だが、遂には人影は闇を脱する。
それと比べれば遥かに明るく、しかし陽の光と比べればとてもそうとは言えない暗い夜の中へと辿りついた。

闇より抜け出して露になったその姿はやはり小さく、見た目からすれば十に少しの数を足した程度の歳にしか見えない。
それに相応しい幼い顔には静かな表情を湛えており、人目を引く膝裏まで達する長い髪は静かな風に揺られていた。
青い襟の白いセーラー服の少女。誰からか、または誰からよりもこなたと、そう呼ばれる彼女の姿がそこにあった。

歩みを止めた彼女の目の前、深き森を通り抜けたその先にはぽつんと一件の洋館があった。
どこからも道は続いてきておらず、どこにも愛想のよい部分は存在せず、まるでいかにもだと思わせんが為の様な風体。
風に角を削られた赤煉瓦。そこに伝う幾重もの雨だれの後。いつ手入れされたのかも定かではない花壇の成れの果て。

こなたは館より視線を空へと持ち上げてゆき、黒い尖塔の上に突き刺さりそうな位置で輝く月を見上げた。
白くて白くて、そして白くて冷たく心地よい光を振り下ろす丸い月――満月を見る。
それは一瞬だったのか、それとも思いのほか長かったのか、彼女は視線を再び地上へと下ろし瞼をゆっくりと閉じた。

そして、誰にも聞こえない声で何かを呟いた。

止まっていた足が再び歩き始める。
始めからそうだと決まっていたかの様に、運命という糸に手繰り寄せられている様に真っ直ぐと彼女は進み、
館の中と外を隔てる厚く重い扉にその小さな手をかけた。


 ★ ★ ★


パタンと、後ろ手に薄い扉を閉じると泉こなたはふぅとわかりやすく聞こえる大きな溜息をついた。
時間にすればまだ30分にも満たないその間で起きた色々な事柄。
何時の間にかに誘拐されてて、謎の人物達に殺し合いを強要されたと思ったら、次の瞬間には別の場所にいた。
並べてみればそれはもう荒唐無稽と言う他はなかったが、なまじ冷静だった分にかこれが現実だと彼女は強く実感している。

「あー……、よく考えたら制服着てるのもおかしいじゃん」

今更ながらに自分がセーラー服を着ていることに気付き泉こなたはもうひとつ溜息を漏らす。
寝ている間に攫われたなら寝巻き姿であるのが妥当なのだが、そうでないとするならば着せ替えられたのか?
もしこれがあのピエロの様な男の仕業だとすればそれはゾッとする話だった。

「あの瞬間は、逆にこれはドッキリイベントだって思ったんだけどなぁ……」

必要以上に派手派手でそれっぽくはあっても決して本物には見えないピエロの怪人と、いかにも前時代的なデザインの白い怪人。
あまりにも作り物めいた姿だったので、とてもじゃないが見た目通りの悪役の様なものとは思えなかった。
逆に黒服の外人などが銃を振り回していればリアルさに震え上がっていただろうから、それはある意味ありがたくもあったが。


 ★ ★ ★


うら寂れた外観とは異なり、経た年月こそ感じさせるものの手入れの行き届いた館の中をこなたはすいすいと進んでゆく。
どの窓にも厚いカーテンが掛かっていたから外からは気付けなかったが館内は所々に明かりが点されておりそれに不自由はない。
短いプリーツスカートの裾から細い足を伸ばし、一歩一歩に心地よい感触を返す真紅の絨毯の上を歩いてゆく。

明るさのおかげか先程よりかは幾分か表情は柔和で、そしてどうしてか少しそわそわしているようにも見られる風に。

いくつかの角を曲がり、代わり映えしない背景の中をこなたは黙々と歩く。
廊下の隅にある飾り棚とその上に並べられた皿や壷。壁に掛かった風景画。どれも高価な物かも知れなかったが見向きもせず。
ただどこかを探して、目指しているようなそんな足取りで、そしてそれは少しずつ早くなり……

歩みが後僅かで走りに変わりそうなところで、こなたはようやく目的地の前に到達した。

彼女の目の前にあるあまり大きくない扉には金のプレートが張られており、そこにはただ”W.C”とだけ部屋名が打たれていた。
小さな息を漏らし、軽いノブへと手をかけると、彼女はゆっくり扉を押し開けてゆく。


 ★ ★ ★


「はぁ~~~~~~~~~…………」

突発的なイベントも一通り終えたかと判断すると泉こなたは閉じた便座の上に腰を下ろし改めて大きく息を吐いた。
検め終わった真っ黒なデイパックを膝の上に抱え直し、とりあえずはどうすればいいのかとそんなことを考え始めてみる。

「……殺し合い、か」

殺し合い。
比べれば他のどんな要素よりも重たい言葉である。
それを強制されてるとはいえ実際には本人が能動的である他はなく、受け入れるにしろしないにしろ気は重たかった。

名簿とやらを見てみれば、かがみ達だけでなくゆーちゃんやみなみちゃん、更には黒井先生までと見知った名前が多かった。
第一の前提として死ぬのは嫌だ。勿論、殺すのも真っ平だ。例え相手が知り合いでないとしても。
ましてや友達が自分を殺そうとするなどとは想像したくもなく、みんなともう会えないかも知れないと考えると悲しかった。

「どうしよう……?」

行く当てはない。動き出さなくては何も変わらぬのだとしても、何を目標に何処を目指せばいいのかそれが思いつかない。
こんな寒々しい場所でヒッキーしてても事態は解決しないとそう思っても、理性は冷たく現実を認識してしまう。
それはつまるところ、泉こなたに殺し合いなどはできっこないのだと。


――コツ。と、足音。


ふさぎ込んでいた泉こなたの全身が総毛立ち、緊急事態に心臓が高く高く鳴り始め、恐怖に身体が強張ってゆく。
何時の間にかにレストルームの中に誰かが入ってきていた。
それが誰なのか足音だけでは知る由もない。女性用の場所だから女性かも知れない。もしかしたら自分達の様な子供かもしれない。
けれども、誰かを殺そうとしている者なのかも知れない。

泉こなたは小さな両の掌の中に一丁の回転式拳銃を強く握る。
初めて拳銃を手にした感想はやはり重たいということ。片手で振り回しバンバン当てるなどとはアニメの中だけの話とよく理解できた。
しかし死にたくないのならば撃つしかない。扉の向こう側にいる誰かがこちらを殺そうとしているのならばそれ以外にはない。
せめて開けた場所にいれば、殺されてしまうとしても逃げることに必死になれただろうと、そう考えても最早遅く、
今はただ、狭く冷たい箱の中でその時を、後1分もかからずにやってくるであろうその時までを、ただ息を殺して待つだけ。

何がいけなかったのかそんなことは解らなかったが、こんな時に思い浮かんでくるのはただ後悔ばかりだった。


 ★ ★ ★


それが薄い扉を潜ると、足音は今までとは違うコツ――というはっきりしたものへと変化した。
靴の裏が床に張られた白いタイルを叩く度にコツと、コツコツと静かなそこに音が鳴り響く。
部屋の中には僅かな湿気と濁った水の臭い。薄く赤錆を浮かべた水道管と洗面台に並んだそいつの姿を映さない鏡。
トイレの中への入ってきたそいつは、ゆっくりと広くはない室内を見渡すと喜色を含んだ息を漏らす。
そして、それまでとは真逆に鈍い歩みでそこへと向かい始めた。
入り口から見て一番奥の、一つだけ扉の閉まった――つまりは中に人がいることを表明してしまっている個室へとゆっくり。

もったいぶっているのか、甚振っているのか、それとも大して意味はないのか……コツ、コツ、コツ、と……。


 ★ ★ ★


コツ、コツ、コツ……と、カウントダウンの様に音は刻まれ、そして近づいてくる。
一つ音が鳴る度に心の中の一つの感情が絶望へと塗りつぶされてゆく。
こんなシチュエーション。やってくるのは怪物に違いないと泉こなたは思う。それはお約束であって、また正しいと。

自分の役割は哀れな被害者――少女A。

冷たい手に力をこめ重たい拳銃を扉の方へと構える。
本物は知らなくとも知識ぐらいはある。ゲームはほぼオールジャンルを得意としゲーセンの体感ゲームもそれに漏れない。
だから、ガンシューティングも得意だ。
偽物の銃は重くもないし反動もなかったが、例え本物の銃でも最初の一発ぐらいなら同じ様に狙えるだろうと彼女は思い込む。
無駄な抵抗ぐらいはしてやろうと。


――コツと、扉の向こうで足音が止まった。


扉越しに撃ってしまおうかと思ったが、彼女はしかし躊躇った。
もしかしたらそこにいるのは友達かも知れないし、自分を殺そうとしている人でないのかも知れなかったから。
せめて声だけでも聞いてから――もし相手が怪物であったのなら致命的な、そんな判断を泉こなたはしてしまう。

そして次の瞬間、扉はあっけなく開かれた。

掛けられていた錠の物理的な抵抗など無いが如くに、扉は何者かにより容易く押し開けられる。
最初にミシという木が軋む音。続けて力に負けた錠が変形し差し込んでいた捩子ごと扉から離れて床で高い音を鳴らした。
広がってゆく隙間からその向こう側にいた何者かの姿が少しずつ明らかになってゆく。

最初に見えたのは自分と同じぐらいの長さの髪。
そして、自分が今着ているものと全く同じデザインのセーラー服。
小学生と間違われるぐらいの背丈も一緒で――いや、何もかも鏡写しの様に瓜二つで――


「やぁ、はじめまして泉こなたちゃん☆」


――それが、泉こなたの既知との遭遇の始まりだった。



 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



「とりあえずは、バトルロワイアルの世界にようこそ……かな?」
「はぁ」
「分かり易く言えば、こなたインザワンダーランドかな? ここはキルゼムオールな分、物騒だけどねー」
「……それはいいんですけど、どうして」

――お風呂なんですか? と、泉こなた(以下、こなた)。

彼女と、彼女と同じ姿をした地球破壊爆弾No.V-7(以下、爆弾)と名乗った少女(?)は今は浴室で一緒に湯へと浸かっていた。
トイレで一人鬱になっていたこなたを”何故か”手際よく見つけた爆弾は手短に自己紹介を済ませると、
自分のそっくりさんを見て固まっていた彼女の手を引っ張り、再び真赤な絨毯の上を迷いなく進むとここまで連れて来たのであった。

それはこの館の主人かそれとも婦人が使う為のものなのか、その豪華さにこなたも一瞬呆気に取られる。
床には薄桃色を基調としたモザイクタイル。壁には一枚一枚ごとに別種の花が封入されたガラスタイル。
シャワーヘッドやノズルなどにはふんだんに金色が使用されており、そのどこにでも精巧な意匠が施されている。
派手な他とは対照的に白磁のバスタブは小さめで、それが薔薇の香と湯気が充満する広い部屋の中では逆にとても贅沢に見えた。

と、そんな流れで流れに飲まれるままだったこなたを爆弾はその勢いでお風呂に誘い現在に至る――

「まぁ、裸のつきあいって言葉もあるし?
 いきなりこんな所に引っ張り出されてイミフってのはこっちも同じな訳で……、
 どうせゆっくり今後の身の振り方ってのを考えるなら、鬱々暗いとこでするよりかはこういうのがいいと思ったのだよ」
「まぁ、理には適ってますけど……じゃあ、いっこ質問」
「何かな?」
「どーして見つけられちゃったのかな、と。まぁ、トイレの中ってのがベタなのは認めますけど……後、私を知ってるってことも」
「それは単純に前にも似たようなことがあったからさ。森の中でこの洋館を見つけてねー、ティンときた。
 で、同じところに行ってみれば案の定ってわけ。このお風呂にしてもね。それぞれ多少の誤差はあったわけだけど」
「誤差?」
「そうだねー。まず出会ったのが君だったというのが一番の違いかな。後は、動く甲冑がここにはいなかったりね。
 後は細々したことだよ。館のディティールとかそういうの」
「じゃあ……」
「どうして君のことを――泉こなたのことを知っているのか、でしょ?
 この姿も気になるだろうし……まずはそこらへんから君には認識してもらおうか」

そう言うと、こなたの姿をした爆弾は彼女ならば決して見せないであろう笑みを浮かべた。
同じ幼い顔でありながらどこか年寄りめいた、賢者かそれとも大嘘つきのようなどちらとも取れるような妖しく優しい笑みを。


 ☆ ☆ ☆


「尋ねるけど、参加者名簿にはもう目を通したかな?」
「一応は」
「その印象は? ズバっと答えてもらいたいなぁ」
「……ぶっちゃけちゃうと、うそ臭いっていうか。……全員が本名って訳じゃないですよね? HNとかそういうのみたいな」
「そうだねぇ~。普通はそう思うよねぇ~。それが正常な考え方だよ。
 じゃあさ、その考えに至った決定的な部分ってどこかな? ちょっと私に教えてみ?」
「えーと、かえるとか? 確実に人の名前じゃないっていうか、そもそもフルネームでもないし。
 後は、涼宮ハルヒとか長門有希とかアニメキャラの名前だし。まぁ、この2人ならギリギリ同姓同名とかでもキョンはさすがに……」

そもそも地球破壊爆弾ってのも人名じゃないですよ。と、こなたは湯の中で爆弾にそう答えた。
同じ湯の中で対する爆弾は、期待していた答えを得られたのか目の前の彼女とは唯一違うところであるその紅い瞳を細める。

「君は私が思っていたよりも冷静だねぇ……なるほど、どうりでそんなに”ソレ”っぽくないわけだ」
「……は?」
「まぁ、これはおいおいとして。
 ちなみに私の名前である地球破壊爆弾No,V-7はPNのようなものだよ。正確じゃないけど一言で表すならこれが近い。
 それで他の名前も同様だとそう判断するのかな? 涼宮ハルヒなんかも同じだと。例えばネトゲの世界の話のように?」
「まぁ、……ああいうのは競争率高いんで私はスペル違いとかぐらいしかキャラ名は取れたことない――」
「ちょっと、待った!」
「……?」
「あの、もっとフランクに喋ってくんない? ほら、かがみとかと一緒の時みたくさー。なんかかたいんだよ~」
「いや、そんなこと急に言われても……初対面だし、状況が状況ですし……」
「ネトゲの中では初対面でも、演技とかできんじゃん」
「そんな……ネトゲは対面じゃないし、そもそもロールプレイっていうか……あれ? もしかしてネトゲの中で私と会ってるとか?」
「あぁ、そういうわけじゃない。私はネトゲほとんど知らないし、君との直接的な接触はこれが始めてさ。
 でもね~。君がもちっと普段通りでないと怒られそうな気がするっていうか……。
 だから、○○○は日常から外れると途端に書きづらくなるんだ。やっぱ○○○だよなツンデレだし。とか言われるっていうか……」
「おっしゃってる意味がさっぱり掴めませんが……」

だぁ! と、叫ぶと爆弾は湯船の中に勢いよく頭まで浸かってしまう。
突然の奇行に驚くこなたの前に残されたのはたゆたう水面から飛び出たあほ毛だけだ。

「………………――――ぷはーっ!」
「なんなんですいきなり?」
「いや気にしないでくれたまえ。色々厳しいなとここまで来て急にそう思っただけだから。
 ……そもそも私も相方いないと厳しいのは同じだよね。まぁ、そういう意味では似た者同士なのかな」
「……?」

ともかくとして。と、爆弾は姿勢を正し再び湯船の端へと背を預ける。
二人が一緒に浸かっているバスタブの全長は大体彼女達の身長と同じくらいで、それぞれの端にそれぞれ寄りかかっている。
狭い湯船の中。爆弾は足を伸ばし。逆にこなたは遠慮してか三角座りの姿勢で。

「単刀直入にもう言っちゃうよ。涼宮ハルヒ。これが本物だと言ったらどうする?」
「はい!?」
「わかってる! フィクションの存在に本物も偽者もないっていいたいんでしょ?
 けれどこの世の中。実はそんなに単純にはできていない。
 これは君自身の存在にも、引いてはこのバトルロワイアルの行く先にもすーっごく関わる(はずの)ことなんだよ」
「…………は、はぁ」
「わかりやすく言っちゃうとだねぇ……つまりは神という存在の肯定かな」
「それはいわゆるゴッドという……?」

ここが不思議の国だとすれば、目の前にいるのはハンプティ・ダンプティだろうかとこなたは思った。
怪しくありながらもなんとも意味深で確信的というか、えもいえぬ存在である。

「例えば、一つの漫画があったとしたらその世界にとっては作者は神様なわけじゃない。
 でも、基本的にその世界で生きている人達はそんな存在のことは知らない。ただ彼らは目の前の現実を生きている。
 こなたちゃんはちゃんと毎日を生きている?」
「は? ……えぇ。毎日アニメ見たりネトゲしたり」
「その現実が漫画やアニメのように途切れ途切れだとは思わないよね。
 昨日の記憶も、一昨日の記憶もまるっと24時間。それ以前のも確かに存在しているはずさ。
 けどね――」


――私から見たら、”泉こなた”ってのは二次元世界の住人なんだよね。


「そ、それって……」
「つまるところ、その次元の存在はそれ以上の次元よりから見える欠落には気づかないってことなんだけど、
 あんまり深刻に受け止めることはないかな。解ったところで特に現実に影響がある訳じゃないしね。
 ただこの先のことも考えると先に説明しておいた方が話は早いと思ったのさ」
「じゃあ、最初に私のことを知ってるって言ってたのも?」
「まぁ、そういうこと。
 君の知り合いのことも大体なら把握しているつもりだよ。
 それで、神様の話に戻るんだけど――」

お風呂からあがろうか。と、そこで爆弾は湯船の中で立ち上がった。
普段より需要はあるさと嘯く己の姿をこなたは鏡越しを除けば初めて客観的に見ることになるのだが、
これからはそんな強くは言えないかもなと心の中でひっそりと思った。


 ☆ ☆ ☆


「でさ、一時は私もこなたちゃんの神様だったことがあるんだよ」

適当に身体を流した後、二人は浴室を出て近くにあった寝室の中で髪を乾かしたりしながら話しを続けていた。
とりあえずは今は頭にタオルを巻いて、二人してデイパックの中にあったチョココロネをついばんでいる。

「私達の作者……さん?」
「まさかー。
 そんな畏れ多い神様なんかじゃないよ。一時っていったでしょ? まぁ、アンオフィシャルな二次創作ってやつだよ」

同人作家さんですか? と、こなたは2つ目のチョココロネを取りながら問う。
いいや素人の手慰みさ。と、爆弾も同じように2つ目のチョココロネを取りながら答えた。

「こなたちゃん。自分のことオフィシャルの存在だと思ってたりする?」
「んな? 違うんですかっ?」
「考えてもみなよー。涼宮ハルヒが殺し合いに参加します。なんて、角川が率先して企画すると思う?」
「あぁ、言われてみれば当たり前かぁ……」
「とはいえ、直前までオフィシャルであった可能性は大だけどね」
「んぐ?」

いくら食べても腹が満たされないのには変わりないなと気づいて、実は吸血鬼である爆弾はパンを食べるのをやめ
代わりにドライヤーをとって髪の毛を下ろして乾かし始める。

「同人であろうとなんだろうとさ。ある以上はアンオフィシャルであろうが存在としての可能性なんだけど、
 ねっこにあるのはどれも元となるオフィシャルな存在でしょう?
 差があるとしたらそこから遠いか近いかってだけでね」

なるほどという風に頷くとこなたも爆弾をならってドライヤーで髪の毛を乾かし始める。
ターボドライヤーの風量は長い髪を乾かすにはよかったが、音もそれなりなので二人は暫く無言でそれに集中していた。


 ☆ ☆ ☆


「もうそろそろ出発できるし、とりあえず今のところ知っててほしい分だけまとめちゃうね。
 ほんとはいつまでもダラダラしてていたいんだけど、殺し合いって現実そのものはどうしようもないし」

乾かし終わった二人は、柔らかく足の長い絨毯の上で髪を梳きながら話を再開する。

「まずは、私達がもともと何次元の住人だろうと今現在は全員が等しく同じ次元まで落とされているってこと。
 つまりは名簿の中にあったあんな名前やこんな名前はもしかしたらその人本人かもしれないってことになる。
 もっともこれがオフィシャルを望めない以上、完全な本物とは言えないんだろうけどね」
「じゃあ、ハルヒに会えたりするかもしれないんだー」
「そうだね~。そこらへんは神頼みってことになるけど、幸運が導き合わせてくれることを私も望むよ~」

同じ顔の二人は同じ様に笑みを浮かべて、それぞれに思い入れのある涼宮ハルヒへと思いをはせる。
もし知っている通りのハルヒとここで出会えたのならばそれはそれは嬉しいことだろうと。

「でも笑っている場合でもないからね。
 上や下にどれだけ次元があろうとも、”ここ”が私達の現実であることに変わりはないから。
 ここで死ねばそれは本当の死以外の何者でもない。最初に感じた恐怖を忘れちゃあ駄目だよ~」

爆弾の言葉にこなたはこくりと頷く。
あの体育館の様な場所でのこと。そしてそれからのこと。おかしなこと続きだが、しかしそれは現実だとも確かに認識している。
目の前にいるそっくりさんの言うことは輪をかけて不可思議なことであったがその存在こそが証拠だとも思えた。

「さて……ここまで長い前置きを置いたのは私や私の同類。
 そしてこのバトルロワイアルってものに対する説明をするためだったんだけど……」

これ以上長くなっても怒られるし、朝食の時間にでも話すよ。と、爆弾はデイパックを片手に立ち上がった。
すでにデイパックを背中に背負っていたこなたも続き、二人は扉を開けて館の出口へと長い廊下を歩き始める。


 ☆ ☆ ☆


「そういえば、爆弾さんのもらったアイテムって何だったんです?」

そう問うこなたの手には先程トイレの中で握っていた銀色の回転式拳銃があった。
彼女にはこれの他に、件の涼宮ハルヒがつけていた団長腕章と魔法が封じられているらしい紙が与えられていた。

「……あぁ。あるにはあったんだけどね、ゴミばっかだったからすぐに捨てちゃったよ。
 まったくよりにもよってって感じのものばっかでさ。あれは嫌がらせだね」

でもまぁ大丈夫。と、言いながら爆弾は両手の中に虚空より一丁ずつ自動拳銃を取り出した。
情報操作を応用した一種の投影能力であり、それはとあるガンキチ愛用のソード・カトラスという改造拳銃である。

「三次元の人って……」
「ああ、いやいや。後でちゃんと話すけど私自身も由来はありはすれど……まぁ、複雑な状態なのだよ。
 とりあえず、そこそこ強い方だと思うからさ。特にこういう”ラフファイト”だと。
 そこだけ期待して、あんまり三次元の人に変な妄想を抱かないように」

言いながら歩いている内に二人は館のエントランスホールまでたどり着いた。
爆弾からすればすでに通ってきた場所であり、館の中からスタートしたこなたにとっては未知への扉でもある。

「さーて、まずはかがみやつかさちゃん達から探してみようか」
「爆弾さんの同類……っていうか、お仲間さんの方は探さなくていいんですか? さっき、相方って……」
「んー、みんなそれなりに強いからねー。後回しでもいいかなって思ったりしないこともないけど。
 そりゃあ、ロリスキーさんに会いたいってのは正直な気持ちなんだけどさ」
「あれ? その言い方だと、そのロリスキーって人は相方っていうかもしかして……?」
「ご、ごめんなさい。ここのところだけは口を閉ざさせて。……その、色んな意味で、マズイ」
「男か~……♪」

重い扉をそうとは感じさせない勢いで開け放つと、顔を赤く染めた爆弾は脱兎の様に駆け出してゆく。
打ち解けてかそろそろ本来の調子を取り戻してきたこなたはそれをニヤニヤと見送り……はたと気づいて後を追い始めた。



こうして、自前の地図能力でいち早く目標の人物を発見し、誰よりも先に接触することに成功した
地球破壊爆弾No.V-7の『らき☆すた計画』は静かに、ひっそりと始まったのであった――……



ちなみに彼らはこの後すぐに合流した。





 【B-4/洋館/1日目-黎明】
 【地球破壊爆弾No.V-7@書き手ロワイアル2nd】
 [状態]:(〓ω〓.)、健康
 [装備]:ソード・カトラス(能力)x2
 [持物]:デイパック、支給品一式
 [方針/行動]
  基本方針:『らき☆すた計画』を成功させる。
  1:「これって何ロワ?」 まずはそれをはっきりさせるために情報収集。
  2:泉こなたを保護する。
  3:こなたや自分の知り合いを見つけ出しパーティに加える。
  4:”涼宮ハルヒ”に会えるのが楽しみ♪
  5:チート関係に関しては空気読む方向で。また簡単に変身しない。

 [備考]
  ※登場時期は「238:trigger」の冒頭辺り。ウッカリデスが死亡するより前です。
  ※嫁はロリスキー一筋です。
  ※『らき☆すた計画』が何かは現在全くもって不明です。
    深遠なる野望があるのかもしれませんが、ただらき☆すたキャラと親睦を深めたいだけかもしれません。
  ※投影したソード・カトラスは弾丸無限のコスモガンですが、撃つほどに体力を消耗します。

 【泉こなた@らき☆すた】
 [状態]:健康
 [装備]:エンフィールドNo.2@アニ2(6/6+予備弾24発)、団長腕章@ニコロワ
 [持物]:デイパック、支給品一式、魔法『フレイム・ボール』inエニグマの紙@漫画ロワ
 [方針/行動]
  基本方針:地球破壊爆弾No.V-7と同行して、何とか事態を解決できないか探ってみる。
  1:自分や爆弾の知り合いを見つけ出して一緒に行動する。
  2:”涼宮ハルヒ”に会えるのが楽しみ♪

 [備考]
  ※登場時期は3年生になってから卒業するまでのうちのどこかです。
  ※地球破壊爆弾No.V-7の話を聞いて、参加者がフィクションを含む多数の世界から集められたものと知りました。



 【明智健吾の考察アイテムセット@アニ2】
 参加者詳細名簿、参加者詳細名簿+、全支給品リスト、携帯電話(全域レーダー付)など情報系アイテムのセット。
 これらに加え、首輪のサンプルや危険人物リスト、考察メモ、等々も付随しており書き手泣かせの最悪のアイテム群である。
 地球破壊爆弾No.V-7(参加者)がこれを引き当てた瞬間に、彼?の手により完全に跡形もなく消滅させられたので、
 その中にあった情報がアニ2のものなのか、それともこのロワでも有効なものだったかは謎。

 【エンフィールドNo.2@アニ2】
 [全長]:260mm [重量]:765g [使用弾薬]:.380エンフィールド弾 [装弾数]:6発
 一見していかにもな年代物の銀色のリボルバー(回転式拳銃)。
 アニ2関連の原作だと、天空の城ラピュタのムスカや、鋼の錬金術師のリザがこれを作中で使用している。
 アニ2内では泉こなたに支給され、彼女はこれが本物であることを知って一時は錯乱していた。

 【団長腕章@ニコロワ】
 涼宮ハルヒの憂鬱よりの出展で、ハルヒがSOS団の団長の証としてつけていた腕章。
 これといった効果はなく、こなた(ニコロワ)曰くコレクション用のアイテムらしい。
 ニコロワでは泉こなたに支給され、彼女はファンサービスという理由でこれを装備し続けていた。

 【魔法『フレイム・ボール』inエニグマの紙@漫画ロワ】
 ゼロのルイズよりの出展で、発動した魔法そのものである。
 出展元の漫画ロワと同じくエニグマの紙(ジョジョ)の中に封入されており、紙を開くまでは飛び出さない。
 中身は名前通りの火球であり高い追尾能力が特徴。威力も普通の人間なら即死してもおかしくないぐらいである。
 漫画ロワでは泉こなたに支給されたが、結局これを彼女が使う場面は訪れなかった。


014:せめて歩ませよ我が外道の道を 投下順 016:knights
033:やろうぜ、バトルロワイアル!~らき☆ロワ編~ 時系列順 025:パロロワクロスマッチ!真・驚きの黒さVS魔女かがみん(代理戦争編)
地球破壊爆弾No.V-7 029:空を見上げる少女達の瞳に映る世界
001:OP 開演 泉こなた



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