少女祈祷中…
東方紅魔郷
Start
エアNomal
博霊 霊夢
霧雨 魔理沙
エアExtra Character
・死に続ける悪魔
終わりが無く死に続け、DISCやアイテムを使いこなす程度の能力。
移動速度 ☆
攻撃範囲 ☆
攻撃力 ☆ (ただし全て変動有り)
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エアNomal
博霊 霊夢
霧雨 魔理沙
エアExtra Character
・死に続ける悪魔
終わりが無く死に続け、DISCやアイテムを使いこなす程度の能力。
移動速度 ☆
攻撃範囲 ☆
攻撃力 ☆ (ただし全て変動有り)
中年祈祷中…
Stage1 真っ暗な森 ~BGM ほおずきみたいに紅い魂~
「…うーん」
いつものように不意に意識が覚醒する。
どうやらまた死んでしまったらしい。
地面は冷たく少し湿っていて少しだけ心地いい。
かさかさと風に吹かれ音をたてる枯葉の山に手をついて、むくりと体を起こす。
冷たい地面に手をつき姿勢を起こし、ボーっと天を見つめる。別に空が綺麗なわけでもいつか廻り来る朝を待っているわけでもない。
記憶を整理している時の男のいつもの癖だ。
「…ギアッチョだ」
彼の頭におぼろげだった死ぬ前の記憶が少しずつ戻ってくる。
そう、あれは漫画家の頼みで飛び込んだ絵本のような世界の中、どこまで潜れば終わりなのかも分からない世界の確か70階くらいに出てきた高速のスピードスケーターこと暗殺チームのギアッチョに追跡され、成す術も無くブチ割られてしまったのだ。
「舐めやがって、部下なら部下らしくボスを敬うもんだろ。なぁドッピオ…っていないか。
しかし、せっかく集めた装備もアイテムも水の泡か…。逃げまわろうとせずにとっとと帰っとくんだったな。はははは、はは、はぁ…」
空を見上げたまま自嘲気味にそう呟く。
もう何度目だろう。挑み、死に、失うの一連の流れ。百や二百では数え切れないほどの回数それを繰り返してきた。
最初は襲ってきていた悲しみや怒りといった人間らしい感情も麻痺してしまったらしく、今となってはこんな言葉を紡ぐしかできない。
「さて、もう一度あそこまで潜れるかな。まぁできなくてもやるしかないんだがな」
誰に言うわけでもなく一人でまたそう呟き、体重を地面から足へと移動させ、湿った土を踏みしめそのまま立ち上がる。
そこで感じる違和感。
「…ここは?」
目の前にあるのは鬱蒼と茂る草、俺を見下ろすように高くそびえる木々。
いつもなら死んだ場合は御多聞に漏れず、昔彼が泊まったホテルに良く似た一室に送り返されるはずだ。
亀や変な漫画家、吸血鬼と神父、ベッドに地球儀にパソコン、そして今までの冒険の記憶が待つ部屋。
しかし今自分がいるこの場所はそれらのうちのひとつも存在していない。
記憶が鮮明になるにつれ、もやのかかったようだっただった男の頭脳も動き始める。
奇妙だ。
足元の泥交じりの土は、砂漠や迷宮などの幻覚ではないリアルな感覚。
空にも天井は無く、まるで血のように赤い霧の上で煌々と月が、森の中を電燈でも置いたように照らし出していた。
「どうなっているんだ、とうとう終わりなのか?今までの・・・」
ふっと月の光が陰る。と同時に頭の中で警鐘が鳴り響く。
何かが自分を狙っている?
頭でそう理解するよりも先に男の体が回避行動をとる。
気づいたときには俺は一歩後ろへと下がっていて、彼の立っていた場所には握りこぶし分くらいのクレーターができていた。
「なっ!?」
驚くのも束の間、空気を切る音とともに二発目三発目の攻撃が飛んでくる。
俺は後ろに音の分だけ下がり、攻撃を見る。
襲ってきていたのは完全な球形をした弾、間違いなく男を狙ってきている。
音の数だけ土煙が上がり、地面にクレーターが作られる。つまり攻撃の発生源は、
「上か!!」
攻撃の角度、威力、残った余波。そしてくぐり抜けてきた修羅場の数々によって培われた勘。
それら全てが彼に教える結果。
果たしてそこには数体の奇妙なものが浮いていた。
「あれは…?」
見上げた空には月をバックに数体の何かが浮かんでいる。
何か。逆光などで正体が分からないわけではない。
彼の記憶にも彼の覗いた誰の記憶にも残っていなかったから判断のしようが無いのだ。
大きさは男の身長の三分の一程度。
甲虫類とも猛禽類とも違う色付きの薄い羽を持っている少女達が、空中でスカートをはためかせ男を見下ろしている。その数およそ十体。
何事もなければその幻想的な光景をずっと見ておきたいくらいだ。
呆けたように少女達を見上げている彼に先ほどのように得体の知れない球体が打ち出される。
男は落ち着いて、少しだけ体をずらし飛んでくる玉を避ける。
(不意打ちの時は少々焦った攻撃だが、正面から来るのであれば問題はない。)
しかし玉は絶えることなく彼のほうへと降り注いでくる。右に避ければ右に、左に避ければ左にと確実に避けられる速度で。
まるでそれが当然であるかのように。
バックステップし、距離をとっても結果は同じ。
一定の間隔、一定の速度、そして一定の威力で向かってくる。
彼は直撃を逃れるため、一定の距離を保ちながら冴えてきた頭を回転させる。
一対多数のリンチ状態。空中からの遠距離攻撃。
アイテムは腰に下げている袋の中にあるだろうネアポリスのピッツァ一枚。
場所は足場は悪くないが深く入り組んでいて迷うと脱出すら不可能になるかもしれない森。
絶望的。そんな単語が彼の頭をよぎった。
上空の敵を見つめながら声を殺して静かに笑う。
何度こんな状況に叩き落されたことだろう。
ある時はそのまま足を止め、迫りくる恐怖にただ震えていた。
ある時はがむしゃらに進み、かけがえのない物を失った。
だが、もう迷わない。経験し、学習して、進歩した。
止まることなどできないことがわかった。がむしゃらに突き進んでも生き残れないことも分かった。
必要なのは冷静さと柔軟性。
死を重ねて気づいた、絶望の中に残る無限の可能性。
本物の絶望の前には光はない。ただ落ちていくだけの落とし穴が俺を囲んでいるだけ。
踵を返し森の中へと転進、全力で木々の間を駆ける。
走りながら、今度は声に出して笑う。
今は違う、違うのだ。月は先ほどと同じく怪しく輝き彼の足元がずっと先へと続いていることを示しだしている。
「まだ死なない。まだ、まだ!」
後ろからは依然として地面をえぐる音が聞こえる。少女たちが追ってきているらしい。
そんなことも関係ない。道は目の前にあるのだから。
走り続け、生存の可能性を見つける。
地面に無造作に転がる黄色い円盤。
ここがいつもの迷宮の延長ならいつ見つけてもおかしくない、むしろ絶好のタイミングで見つけたといえるだろう。
減速し、円盤を拾い上げる。
【えんじ色のディスクを手に入れた。】
踵で加速を殺し、頭に拾ったディスクをねじ込みながら今度は迫っている少女たちのほうへと走る。
この行動に、追っていた少女たちも面食らったらしく、瞬間、髪一本ほどの時間ではあったが少女たちは躊躇した。
それだけでいい。髪一本だけで問題ない、いや、彼には十分すぎるほどの時間だ。
それに加え、森の中を追うということで少女たちは木々を避けるために低空でバラバラになっている。
絶好のチャンスがここで男に巡ってきた。
まずは一番近い少女へと肉薄する。
少女は攻撃しようと手を前に出す、が、もう遅い。文字通り手遅れだ。
男は少女の目の前でしゃがみこみ勢いに任せ右の拳を縦一線に振りぬく。
さぁ、反撃開始だ。
男の拳はまるで導かれたように見事に少女の顎を打ち抜く。
勢いそのままに頭の位置を低く落としたまま次の一体へと向かう。
そこでようやく危険だと感づいたらしく、少女たちも反撃と言わんばかりに例の球を打ち出す。
しかし、手はもう打ってある。
【チリペッパーのディスクを防御用に装備した。】
『ノロイんだよォーー!!止まって見えるぜ!!』
彼の内側から黄色いキメラのようなものが飛び出し打ち出された球を全てはじき返す。
不測の事態が二度続き、混乱状態に陥った近くの少女に接近し脇腹に蹴りをかます。
大げさなほど吹き飛び、少女はそのまま右手後方にあった木に衝突。こちらも先ほど同様無事では済まないだろう。
ゆらりと、余裕を持って残りの少女たちのほうを見る。
どうやらあちらも犠牲を出す覚悟を決めたらしい。
二体が彼の腹くらいの高さで特攻、距離は俺まで4メートル弱。
残った六体は彼に向かって弾を打ち出す。こちらは8メートルといったところだろう。
弾であるが、先ほどの追尾弾とは違い、本当にただ規則的にばら撒かれているだけとしか形容の仕様がないものだ。
一目見て分かる。こちらの方が数段タチが悪い。
前述したとおり、ただばら撒いているだけ。速度も遅いし危険度も今は低い。
ただ、『今は』だ。速度については後々も問題はないだろうが、弾は違う。
速度が遅い分弾がその場に溜まり易い。ものの一分もしないうちに目の前には弾のカーテンが出来上がるだろう。
そうなれば避ける避けないの前に生き残れるかすら怪しい。
が、当面の問題はやはり目の前の二体だ。
男は向かってくる二体の方へと歩く。ゆっくりと、しっかりと。
二体と弾のカーテン(弾幕とでも呼ぼうか)も止まることなく彼へと迫ってくる。
少女との距離は少しずつ少しずつ狭まってゆく。
3メートル…2メートル…1メートル…あわや衝突といった所で、堪えきれずに少女達は軌道を変え左右へ分かれようとする。
(命を賭けきれない、か)
しかし仮にも真剣勝負、そんなことを許すはずがない。
男は左方向へと避けた片割れの頭を狙って肘を落とす。
グシャッと嫌な音をたて、速度を緩めることもできずに少女は地面を転がっていく。
その音を聞き、キーキーと耳障りな声を上げながらこちらに向き直り、球を打ち出す右側の少女。
やはり戦い慣れしていないらしい。
「殺し合いの途中で余所見はいけないと思うぞ。」
右方向から聞こえるゴチィィンという痛々しい音。見る必要もない。右側の少女が木に衝突した音だ。
さして驚きはしない、計算どおり事が運ばれたまで。
残りは五体。
【ディアボロのレベルが上がった。】テッテテテッテッテッテッテッテッテッテッテー
問題は弾幕だ。
予想通りというべきか、そこには綺麗な弾のカーテンが出来上がっていた。
あの弾の群れを正面から受ければ、いくら防御用にチリペッパーがあるといえども無傷では済まないだろう。
じゃあどうするべきか?
(簡単だ。正面から受けなければいい。)
初見では綺麗だとも思ったが、よくよく見れば所々荒が目立つ。
旨い事その荒を抜ければ服が破れる程度で済むだろう。
「よし、行くか」
声を出して気合を入れなおし、弾幕へと向かう。
近づいてみれば弾同士の間隔が開いているのががよく分かる。
目の前を弾が通り過ぎたのを確認して一歩目を踏み出す。
するすると目の前を滑るように飛び交う弾、弾、弾。
ある弾は彼の前方で地面に突き刺さり、ある弾は彼の服を破る。髪を散らし、耳を掠め、ディアボロの命を狙う。
しかし致命傷は今のところ無い。
自分を狙ってくる弾だけを最小限の動きとチリペッパーで回避しながら少女たちへと迫っていくディアボロ。
耳につくキーキーという声、敵はもうすぐの所にいるようだ。
ディアボロは地面を思い切り蹴り、少女たちの方へ駆け出す。
弾に当たる心配はもう無い。
弾幕の中に入って彼は気付いたのだ。弾全てがある一定のパターンで動いていることに。
まるで藪を這う蛇のようにうまく弾を避け、ついに弾を撃つ六体の少女たちの目前に到達する。
恐怖でその可愛らしい顔を引きつらせる少女たち。
さぁ、お仕置きの時間だ。
【ディアボロのレベルが上がった。】テッテテテッテッテッテッテッテッテッテッテー
【カエル、フー・ファイターズのディスク(3)、にび色のディスクを手に入れた。】
―思えば、ボスをやっていた時よりも過程を繰り返し始めてからのほうが有意義な時間を過ごしている気がするな。
彼、ディアボロは歩きながらそんなことを考えていた。
―さっきだってそうだ。
判断を間違えればたぶんそこで死ぬ。生きるか死ぬか。まさに乾坤一擲の大勝負。
その大勝負に勝つことが出来た俺は今言い表せない充実感でいっぱいである。
―もしかしたら俺はこうなることを望んでいたのかもしれないな。
また、そんな事も考えながら森の中を一人進んでいく。
もちろん落ちているアイテムの回収は忘れない。
―さて。
歩きながら先ほどから気になっていたことを思い返す。
―ここは何処なのだろう。
いつものように死んだのにいつもとは状況がまったく違っている。
(レクイエムの能力が解除されたのか?)
じっと傷ついた腹を、そしてにび色に光るディスクを見つめる。
そういうわけではないだろう。
傷はもうそれほど目立たないくらいのものになっている、これもレクイエムの能力の一環だと俺は睨んでいる。
何故か?簡単だ。
人間の自然治癒力を大幅に超えている。一歩踏み出すごとに傷口が塞がっていくのがありありと感じられる程のものだ。
ならば能力の延長か?
きっとその可能性が一番大きいだろう。
(どちらにしろこのダンジョンをクリアすれば分かる、か。)
もう一歩踏み出す。
まだ、出口は見えない。
【真珠色の記憶ディスク、桃色の記憶ディスクを手に入れた。】
…おかしい。いつまで歩いても森の出口が見えない。
かれこれ四十分くらい歩いているだろう。足も棒のようだし腹も減ってきた。
「この辺で、晩飯にするか」
手ごろな岩を見つけ、その上に腰を下ろす。そして、アイテム袋の中からネアポリスのピッツァを取り出しそれを思い切り齧る。
「…これにも飽きたな。もっとうまいものは落ちてないのかな?」
誰に言うでもなくそう呟くディアボロ。すると何故かその呟きに答えが返ってきた。
「おいしそうな者なら目の前にいるよ」
何処からともなく聞こえてくる少女を連想させる声。彼は咀嚼を続けながら答える。
「このディアボロが探しているのは、『者』ではなく『物』だ。
第一人間は食う気になれないだろう」
「そう?主食なんだけどなー」
そう言って月に影を作り姿を現す少女。
白いブラウスに上着を羽織り黒いスカートを穿き赤いリボンを髪につけた金髪の幼女である。
「物騒なことを言うのだな。なりの割には」
「妖怪は人間を食べるものでしょ」
少女はディアボロを見下ろしながら腕を広げ、そう答える。
月明かりを背にした彼女はまるで十字架のようだった。思わず目を細める。
少女は首をかしげながら「どうかしたの?」と上空から問う。
「いや、何。俺の名前は現地語で『悪魔』を意味するからな。とりあえず不吉だな、と」
少女はからからと笑いながら、
「磔にされるのは聖人だよ」と言い俺の真似をするように目を細める幼女。
しかしその目に宿されていたのは先ほどまでの楽しげなものではなく、まるで、そう。
(獲物を狙う肉食獣だな)
彼の思惑をよそに少女は続ける。
「それよりも」「なんだ?」
「そろそろご飯の時間だよね?」 宵闇の妖怪 ルーミア
やはりそう言うことらしい。
「俺はもう腹一杯だ」 【お腹がいっぱいになった。】
「私はお腹ペコペコー」 BGM~妖魔夜行
そういって上空で両手を彼のほうに向けて弾を発射する。
少女の攻撃を避けるためにその場を離れる。
【気をつけろ。このエリアはルーミアに守られているぞ!】
ディアボロの頭のどこかで、誰かがそう叫んだ。
モブキャラを逸した服装、唐突な会話、十中八九彼女が『ルーミア』だろう。
―ならば彼女を倒せばいいのか。
ディアボロはその拳を握り締める。
先ほどの戦いで鈍っていた勘も冴えてきた。
攻撃方法も先ほどの少女たちよろしく弾幕らしい。
―やってやろうじゃないか。
戦いの火蓋が切って落とされた。
いつものように不意に意識が覚醒する。
どうやらまた死んでしまったらしい。
地面は冷たく少し湿っていて少しだけ心地いい。
かさかさと風に吹かれ音をたてる枯葉の山に手をついて、むくりと体を起こす。
冷たい地面に手をつき姿勢を起こし、ボーっと天を見つめる。別に空が綺麗なわけでもいつか廻り来る朝を待っているわけでもない。
記憶を整理している時の男のいつもの癖だ。
「…ギアッチョだ」
彼の頭におぼろげだった死ぬ前の記憶が少しずつ戻ってくる。
そう、あれは漫画家の頼みで飛び込んだ絵本のような世界の中、どこまで潜れば終わりなのかも分からない世界の確か70階くらいに出てきた高速のスピードスケーターこと暗殺チームのギアッチョに追跡され、成す術も無くブチ割られてしまったのだ。
「舐めやがって、部下なら部下らしくボスを敬うもんだろ。なぁドッピオ…っていないか。
しかし、せっかく集めた装備もアイテムも水の泡か…。逃げまわろうとせずにとっとと帰っとくんだったな。はははは、はは、はぁ…」
空を見上げたまま自嘲気味にそう呟く。
もう何度目だろう。挑み、死に、失うの一連の流れ。百や二百では数え切れないほどの回数それを繰り返してきた。
最初は襲ってきていた悲しみや怒りといった人間らしい感情も麻痺してしまったらしく、今となってはこんな言葉を紡ぐしかできない。
「さて、もう一度あそこまで潜れるかな。まぁできなくてもやるしかないんだがな」
誰に言うわけでもなく一人でまたそう呟き、体重を地面から足へと移動させ、湿った土を踏みしめそのまま立ち上がる。
そこで感じる違和感。
「…ここは?」
目の前にあるのは鬱蒼と茂る草、俺を見下ろすように高くそびえる木々。
いつもなら死んだ場合は御多聞に漏れず、昔彼が泊まったホテルに良く似た一室に送り返されるはずだ。
亀や変な漫画家、吸血鬼と神父、ベッドに地球儀にパソコン、そして今までの冒険の記憶が待つ部屋。
しかし今自分がいるこの場所はそれらのうちのひとつも存在していない。
記憶が鮮明になるにつれ、もやのかかったようだっただった男の頭脳も動き始める。
奇妙だ。
足元の泥交じりの土は、砂漠や迷宮などの幻覚ではないリアルな感覚。
空にも天井は無く、まるで血のように赤い霧の上で煌々と月が、森の中を電燈でも置いたように照らし出していた。
「どうなっているんだ、とうとう終わりなのか?今までの・・・」
ふっと月の光が陰る。と同時に頭の中で警鐘が鳴り響く。
何かが自分を狙っている?
頭でそう理解するよりも先に男の体が回避行動をとる。
気づいたときには俺は一歩後ろへと下がっていて、彼の立っていた場所には握りこぶし分くらいのクレーターができていた。
「なっ!?」
驚くのも束の間、空気を切る音とともに二発目三発目の攻撃が飛んでくる。
俺は後ろに音の分だけ下がり、攻撃を見る。
襲ってきていたのは完全な球形をした弾、間違いなく男を狙ってきている。
音の数だけ土煙が上がり、地面にクレーターが作られる。つまり攻撃の発生源は、
「上か!!」
攻撃の角度、威力、残った余波。そしてくぐり抜けてきた修羅場の数々によって培われた勘。
それら全てが彼に教える結果。
果たしてそこには数体の奇妙なものが浮いていた。
「あれは…?」
見上げた空には月をバックに数体の何かが浮かんでいる。
何か。逆光などで正体が分からないわけではない。
彼の記憶にも彼の覗いた誰の記憶にも残っていなかったから判断のしようが無いのだ。
大きさは男の身長の三分の一程度。
甲虫類とも猛禽類とも違う色付きの薄い羽を持っている少女達が、空中でスカートをはためかせ男を見下ろしている。その数およそ十体。
何事もなければその幻想的な光景をずっと見ておきたいくらいだ。
呆けたように少女達を見上げている彼に先ほどのように得体の知れない球体が打ち出される。
男は落ち着いて、少しだけ体をずらし飛んでくる玉を避ける。
(不意打ちの時は少々焦った攻撃だが、正面から来るのであれば問題はない。)
しかし玉は絶えることなく彼のほうへと降り注いでくる。右に避ければ右に、左に避ければ左にと確実に避けられる速度で。
まるでそれが当然であるかのように。
バックステップし、距離をとっても結果は同じ。
一定の間隔、一定の速度、そして一定の威力で向かってくる。
彼は直撃を逃れるため、一定の距離を保ちながら冴えてきた頭を回転させる。
一対多数のリンチ状態。空中からの遠距離攻撃。
アイテムは腰に下げている袋の中にあるだろうネアポリスのピッツァ一枚。
場所は足場は悪くないが深く入り組んでいて迷うと脱出すら不可能になるかもしれない森。
絶望的。そんな単語が彼の頭をよぎった。
上空の敵を見つめながら声を殺して静かに笑う。
何度こんな状況に叩き落されたことだろう。
ある時はそのまま足を止め、迫りくる恐怖にただ震えていた。
ある時はがむしゃらに進み、かけがえのない物を失った。
だが、もう迷わない。経験し、学習して、進歩した。
止まることなどできないことがわかった。がむしゃらに突き進んでも生き残れないことも分かった。
必要なのは冷静さと柔軟性。
死を重ねて気づいた、絶望の中に残る無限の可能性。
本物の絶望の前には光はない。ただ落ちていくだけの落とし穴が俺を囲んでいるだけ。
踵を返し森の中へと転進、全力で木々の間を駆ける。
走りながら、今度は声に出して笑う。
今は違う、違うのだ。月は先ほどと同じく怪しく輝き彼の足元がずっと先へと続いていることを示しだしている。
「まだ死なない。まだ、まだ!」
後ろからは依然として地面をえぐる音が聞こえる。少女たちが追ってきているらしい。
そんなことも関係ない。道は目の前にあるのだから。
走り続け、生存の可能性を見つける。
地面に無造作に転がる黄色い円盤。
ここがいつもの迷宮の延長ならいつ見つけてもおかしくない、むしろ絶好のタイミングで見つけたといえるだろう。
減速し、円盤を拾い上げる。
【えんじ色のディスクを手に入れた。】
踵で加速を殺し、頭に拾ったディスクをねじ込みながら今度は迫っている少女たちのほうへと走る。
この行動に、追っていた少女たちも面食らったらしく、瞬間、髪一本ほどの時間ではあったが少女たちは躊躇した。
それだけでいい。髪一本だけで問題ない、いや、彼には十分すぎるほどの時間だ。
それに加え、森の中を追うということで少女たちは木々を避けるために低空でバラバラになっている。
絶好のチャンスがここで男に巡ってきた。
まずは一番近い少女へと肉薄する。
少女は攻撃しようと手を前に出す、が、もう遅い。文字通り手遅れだ。
男は少女の目の前でしゃがみこみ勢いに任せ右の拳を縦一線に振りぬく。
さぁ、反撃開始だ。
男の拳はまるで導かれたように見事に少女の顎を打ち抜く。
勢いそのままに頭の位置を低く落としたまま次の一体へと向かう。
そこでようやく危険だと感づいたらしく、少女たちも反撃と言わんばかりに例の球を打ち出す。
しかし、手はもう打ってある。
【チリペッパーのディスクを防御用に装備した。】
『ノロイんだよォーー!!止まって見えるぜ!!』
彼の内側から黄色いキメラのようなものが飛び出し打ち出された球を全てはじき返す。
不測の事態が二度続き、混乱状態に陥った近くの少女に接近し脇腹に蹴りをかます。
大げさなほど吹き飛び、少女はそのまま右手後方にあった木に衝突。こちらも先ほど同様無事では済まないだろう。
ゆらりと、余裕を持って残りの少女たちのほうを見る。
どうやらあちらも犠牲を出す覚悟を決めたらしい。
二体が彼の腹くらいの高さで特攻、距離は俺まで4メートル弱。
残った六体は彼に向かって弾を打ち出す。こちらは8メートルといったところだろう。
弾であるが、先ほどの追尾弾とは違い、本当にただ規則的にばら撒かれているだけとしか形容の仕様がないものだ。
一目見て分かる。こちらの方が数段タチが悪い。
前述したとおり、ただばら撒いているだけ。速度も遅いし危険度も今は低い。
ただ、『今は』だ。速度については後々も問題はないだろうが、弾は違う。
速度が遅い分弾がその場に溜まり易い。ものの一分もしないうちに目の前には弾のカーテンが出来上がるだろう。
そうなれば避ける避けないの前に生き残れるかすら怪しい。
が、当面の問題はやはり目の前の二体だ。
男は向かってくる二体の方へと歩く。ゆっくりと、しっかりと。
二体と弾のカーテン(弾幕とでも呼ぼうか)も止まることなく彼へと迫ってくる。
少女との距離は少しずつ少しずつ狭まってゆく。
3メートル…2メートル…1メートル…あわや衝突といった所で、堪えきれずに少女達は軌道を変え左右へ分かれようとする。
(命を賭けきれない、か)
しかし仮にも真剣勝負、そんなことを許すはずがない。
男は左方向へと避けた片割れの頭を狙って肘を落とす。
グシャッと嫌な音をたて、速度を緩めることもできずに少女は地面を転がっていく。
その音を聞き、キーキーと耳障りな声を上げながらこちらに向き直り、球を打ち出す右側の少女。
やはり戦い慣れしていないらしい。
「殺し合いの途中で余所見はいけないと思うぞ。」
右方向から聞こえるゴチィィンという痛々しい音。見る必要もない。右側の少女が木に衝突した音だ。
さして驚きはしない、計算どおり事が運ばれたまで。
残りは五体。
【ディアボロのレベルが上がった。】テッテテテッテッテッテッテッテッテッテッテー
問題は弾幕だ。
予想通りというべきか、そこには綺麗な弾のカーテンが出来上がっていた。
あの弾の群れを正面から受ければ、いくら防御用にチリペッパーがあるといえども無傷では済まないだろう。
じゃあどうするべきか?
(簡単だ。正面から受けなければいい。)
初見では綺麗だとも思ったが、よくよく見れば所々荒が目立つ。
旨い事その荒を抜ければ服が破れる程度で済むだろう。
「よし、行くか」
声を出して気合を入れなおし、弾幕へと向かう。
近づいてみれば弾同士の間隔が開いているのががよく分かる。
目の前を弾が通り過ぎたのを確認して一歩目を踏み出す。
するすると目の前を滑るように飛び交う弾、弾、弾。
ある弾は彼の前方で地面に突き刺さり、ある弾は彼の服を破る。髪を散らし、耳を掠め、ディアボロの命を狙う。
しかし致命傷は今のところ無い。
自分を狙ってくる弾だけを最小限の動きとチリペッパーで回避しながら少女たちへと迫っていくディアボロ。
耳につくキーキーという声、敵はもうすぐの所にいるようだ。
ディアボロは地面を思い切り蹴り、少女たちの方へ駆け出す。
弾に当たる心配はもう無い。
弾幕の中に入って彼は気付いたのだ。弾全てがある一定のパターンで動いていることに。
まるで藪を這う蛇のようにうまく弾を避け、ついに弾を撃つ六体の少女たちの目前に到達する。
恐怖でその可愛らしい顔を引きつらせる少女たち。
さぁ、お仕置きの時間だ。
【ディアボロのレベルが上がった。】テッテテテッテッテッテッテッテッテッテッテー
【カエル、フー・ファイターズのディスク(3)、にび色のディスクを手に入れた。】
―思えば、ボスをやっていた時よりも過程を繰り返し始めてからのほうが有意義な時間を過ごしている気がするな。
彼、ディアボロは歩きながらそんなことを考えていた。
―さっきだってそうだ。
判断を間違えればたぶんそこで死ぬ。生きるか死ぬか。まさに乾坤一擲の大勝負。
その大勝負に勝つことが出来た俺は今言い表せない充実感でいっぱいである。
―もしかしたら俺はこうなることを望んでいたのかもしれないな。
また、そんな事も考えながら森の中を一人進んでいく。
もちろん落ちているアイテムの回収は忘れない。
―さて。
歩きながら先ほどから気になっていたことを思い返す。
―ここは何処なのだろう。
いつものように死んだのにいつもとは状況がまったく違っている。
(レクイエムの能力が解除されたのか?)
じっと傷ついた腹を、そしてにび色に光るディスクを見つめる。
そういうわけではないだろう。
傷はもうそれほど目立たないくらいのものになっている、これもレクイエムの能力の一環だと俺は睨んでいる。
何故か?簡単だ。
人間の自然治癒力を大幅に超えている。一歩踏み出すごとに傷口が塞がっていくのがありありと感じられる程のものだ。
ならば能力の延長か?
きっとその可能性が一番大きいだろう。
(どちらにしろこのダンジョンをクリアすれば分かる、か。)
もう一歩踏み出す。
まだ、出口は見えない。
【真珠色の記憶ディスク、桃色の記憶ディスクを手に入れた。】
…おかしい。いつまで歩いても森の出口が見えない。
かれこれ四十分くらい歩いているだろう。足も棒のようだし腹も減ってきた。
「この辺で、晩飯にするか」
手ごろな岩を見つけ、その上に腰を下ろす。そして、アイテム袋の中からネアポリスのピッツァを取り出しそれを思い切り齧る。
「…これにも飽きたな。もっとうまいものは落ちてないのかな?」
誰に言うでもなくそう呟くディアボロ。すると何故かその呟きに答えが返ってきた。
「おいしそうな者なら目の前にいるよ」
何処からともなく聞こえてくる少女を連想させる声。彼は咀嚼を続けながら答える。
「このディアボロが探しているのは、『者』ではなく『物』だ。
第一人間は食う気になれないだろう」
「そう?主食なんだけどなー」
そう言って月に影を作り姿を現す少女。
白いブラウスに上着を羽織り黒いスカートを穿き赤いリボンを髪につけた金髪の幼女である。
「物騒なことを言うのだな。なりの割には」
「妖怪は人間を食べるものでしょ」
少女はディアボロを見下ろしながら腕を広げ、そう答える。
月明かりを背にした彼女はまるで十字架のようだった。思わず目を細める。
少女は首をかしげながら「どうかしたの?」と上空から問う。
「いや、何。俺の名前は現地語で『悪魔』を意味するからな。とりあえず不吉だな、と」
少女はからからと笑いながら、
「磔にされるのは聖人だよ」と言い俺の真似をするように目を細める幼女。
しかしその目に宿されていたのは先ほどまでの楽しげなものではなく、まるで、そう。
(獲物を狙う肉食獣だな)
彼の思惑をよそに少女は続ける。
「それよりも」「なんだ?」
「そろそろご飯の時間だよね?」 宵闇の妖怪 ルーミア
やはりそう言うことらしい。
「俺はもう腹一杯だ」 【お腹がいっぱいになった。】
「私はお腹ペコペコー」 BGM~妖魔夜行
そういって上空で両手を彼のほうに向けて弾を発射する。
少女の攻撃を避けるためにその場を離れる。
【気をつけろ。このエリアはルーミアに守られているぞ!】
ディアボロの頭のどこかで、誰かがそう叫んだ。
モブキャラを逸した服装、唐突な会話、十中八九彼女が『ルーミア』だろう。
―ならば彼女を倒せばいいのか。
ディアボロはその拳を握り締める。
先ほどの戦いで鈍っていた勘も冴えてきた。
攻撃方法も先ほどの少女たちよろしく弾幕らしい。
―やってやろうじゃないか。
戦いの火蓋が切って落とされた。
to be continued…