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幻想郷の奇妙な物語 第拾参話

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shinatuki

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だれでも歓迎! 編集
「勇んで出てきたものの、件の変質者ってどこにいるのかしら?」

 永遠亭を出立してから数十分後、八意永琳は竹林の中で立ち止まり、一人呟いた。

「年甲斐もなく頭に血が上って飛び出てきちゃったわね。てゐに変質者の特徴を聞いておくんだったわ」

 小さな溜息を一つ吐くと、ゆったりとした足取りで歩き始めていた。やはり一旦永遠亭に戻るべきか、そう彼女が考え始めた頃、風が何かを運んできたのだ。
 そよそよと優しく竹林を抜ける風は竹の葉を揺らし、確かにその泣き声も運んできたのだ。永琳に取って聞き覚えのある、いや聞き覚えがあるどころの話ではない。よく知った少女の泣く声なのだ。
 彼女に取って愛らしい弟子であり、家族である少女……。

「この声って……まさか……」

 勘違いであったならばどれほど楽であっただろうか。違って欲しい、そう思いを込めて、泣き声の主の名を呼んだ。

「うどんげ? うどんげなの? 違うと言って頂戴」

 その声を頼りにするかのように泣き声はドンドンと近付いてくる。

「うぅ~」

 竹々の隙間から永琳に助けを求めるかの様に飛び出したその姿は……残念ながら彼女のよく知る鈴仙・優曇華院・イナバ……彼女だった。

「うどんげッ!? ちょっとどうしたのよッ!」
「し、ししょ~」

 その涙と土で汚れた顔に安堵の表情を浮かべ、縋りつくように永琳の胸に飛び込む鈴仙、彼女は優しくそれを受け止める。

「もう大丈夫よ。何があったのかしら?話して」
「うっく、ひっく、妹紅が、妹紅がぁ~」

 頭を優しく撫でながら優しく心地よい音色の声で鈴仙に語りかける。その胸に頭を押し付ければ確かに永琳の鼓動が聞こえる。それに安心して一度は止まった涙が再び溢れ出てくる。
 鈴仙は感じていただろう。彼女が、永琳が師匠で、家族でよかったと……ちょっとアレな所があるけれど、と。
 永琳は彼女の頭を優しく撫でながらもその頭脳を最大回転させていた。霰もない鈴仙の姿、そして輝夜の仇敵である妹紅の名をその口から告げたのだ。そこから推察するに……。

「……把握したわ」

 彼女が出した結論。それは妹紅が可愛らしい鈴仙の姿にその情欲を抑えきれずに襲ったと結論付けたのだッ!だって輝夜(幼女)や鈴仙(幼女)は身贔屓でなく、本当に可愛らしいのだから。
 ああ、実に恐ろしき母の、いや師匠の愛かな。妹紅にそんな趣味はないというのに若干暴走気味な永琳は無理やり理由を付けて解釈をしてしまったのだ。

「おーい鈴仙!」

 まるで計ったかのようなタイミングで妹紅の声が聞こえてきた。しかし間が悪い。鈴仙を心配するその優しい心が災いとなるとは彼女は予想できなかった。
 竹々から姿を現した妹紅の目に飛び込んだのは睨み付ける永琳の視線、鈴仙の無事を確かめることなくたじろぎ、言葉を紡げない。
 その様子が永琳に更なる誤解を抱かせた。
 彼女にしてみれば、自分の姿を見止めるとたじろぐのが不思議でならない。純粋に鈴仙を心配いているのならばその様なことはないはずだ。たじろぐということは、何か口にするのも憚れるようなことを鈴仙にしようと……あるいはしてしまったからではないか。そう考えざるを得ない。
 八意永琳は彼女が思っている以上に頭に血が上り視野が狭まっているのだ。妹紅の様子がおかしいのは、自身が睨み付けたからだということに気が付かない。

「あ、鈴仙は……大丈夫?」
「ええ……おかげさまでね……」
「え? 何? 矢? 変質者でもいるのか?」
 恐る恐る声を振り絞り彼女に何もなかった尋ねた妹紅に、永琳は低くて暗く、そして言葉の端々に殺意を滲ませた返答を妹紅に送りつけたのだ。
 未だ状況がうまく把握できない妹紅はゆっくりと矢を番える永琳に驚きキョロキョロと辺りを見渡すしかなかった。

「変質者? そうね……いるわよ」

 無機質で冷酷な声。妹紅は未だ気付かない。

「うわっ……マジかよ」

 彼女がその変質者が誰を指しているのかに気付いたのは八意永琳の手から矢が離れてからだった。

「痛たた……刺さってるって、矢がッ! え、何? 私なんかしたの?」
「白々しい……」

 妹紅が何を言おうが彼女の弓を引く手は止まらない。
 一本目は確かに妹紅に刺さった。だがそれは不意を突かれたからだ。弾幕ごっこでならした彼女は二本目以降の矢は何とか避けていた。

「だから弓を撃つのを止めてぇ~」

 しかしそれで精一杯、反撃する余裕もなく彼女は転進せざるを得ない。永琳も鈴仙を守り抜くという責務があるが故に妹紅を追撃できないでいた。と言っても彼女の姿が視界から消えるまで矢を射続けていたが。
 何とか永琳の理不尽な攻撃から逃げ切った妹紅は大きな溜息と共にその場に立ち止まり、自身に刺さった矢を抜いた。蓬莱人である彼女に取ってみれば、痛みはあれども急所にでも当たらぬ限り、動くのに差し障りはない。しばらくすればどうせ直ってしまうのだ。
 ぼーっと傷が塞がるのを待ちながら妹紅は考えていた。何かを忘れているような機がするのだ。

「あ、そういえばあの娘ずっと放置しっぱなしだった。大丈夫かなぁ」

 呟きと共に、妹紅は少女の下へと駆け出した。

 一方その頃、忘れ去られていた少女の下へある人物がやってきた。
 その人物が目にしたのは少女ではない・・・・・・彼女のよく知る人物が倒れていたのだ。

「紫?……あら式は裸になってまで紫に抱きつくなんて……取り敢えずムカつくから引き剥がそうっと」

 そこには少女の姿はなく、八雲紫とその式、八雲藍が倒れているだけであった。地面に倒れる彼女たちは仲睦まじく、まるで姉妹か親子のように寄り添い倒れているのだ。
 それを見た彼女は若干の嫉妬心を覚えた。心の赴くまま紫から藍を引き剥がした彼女はあるものを見つけてしまった。
 柔らかく、優しい微笑を携えた表情が能面のように冷たく、そして冷徹なる怒りに満ちていく。

「うんしょっと。あれれ? 紫の頭に包帯が……もしかして紫のきれいな顔に傷をつけたやつが…いる…のね……ユルサナイッ!」

 頭に巻かれた包帯・・・・・・八雲紫は伊達や酔狂でその様なものを頭部に巻いたりなどしない。それを巻くとは彼女自身が傷を負ってしまったと考えるのが最も妥当な結論である。
 だが、一体誰が紫ともあろう強者に、包帯が必要なほどの傷を負わせることができると言うのだろうか。
 汚れることすら厭わず、地面に座り込むとその膝の上に紫の頭を乗せた。彼女の柔らかく金糸を纏った頭を愛おしそうに撫でていると何かが近付いてくる音が聞こえる。

「あれ?あんたは……」

 唐突にやってきた人物、藤原妹紅は彼女の姿を見止めると同時にあたりをキョロキョロと見渡す。彼女からすればとても不自然な行動に見えた。
 彼女の脳裏にあることが浮かんでしまった。目の前の蓬莱人は紫に攻撃をして、追撃の為にここに来たのではなかろうか。
 辺りを何かを探すようにしているのは第三者がいた為、己の目的を悟らせぬようにしているのではないかと。

「蓬莱人……貴様の仕業かッ!」

 ひらりひらり、ふわりふわり・・・・・・怒気と共に反魂蝶が一匹、二匹、三匹と竹林を舞い始める。紫の頭を膝の上からそっとどけ、立ち上がる。
 蝶たちは彼女の意思を継ぐかのように紫の側に寄り添う……命を奪うためではない、その身を守るために。

「ちょ、まッ! 何だか知らないがやめろって!」

 妹紅は一度だけ彼女と対峙したことがある。その時に反魂蝶というものを目にした。死という概念の存在しない彼女からすれば恐るに足らないかもしれない。だが死なないとはいえ痛いものは痛い。ましてや甚振られて喜ぶ趣味など持ち合わせていない。
 付け加えて言うならば、彼女は好戦的ではない。避けられる争いは避けるというのが彼女のスタンスである。
 故に、妹紅からすれば戦う理由のない彼女と戦うことは、スペルカードルールがあるとはいえ避けたかった。

「死ねッ!」

 しかし彼女は冷静ではなかった。よくよく考えれば妹紅が紫と敵対する理由がないのだ。その行動も紫を害するためと断定するには些か短絡である。
 だが彼女はそんな簡単なことに気がつけなかった。紫が傷付けられたという事実はそれほど重大且つ、許せない事柄なのだ。
 妹紅が懇切丁寧に事のあらましを説明したとしても彼女はきっとそれを受け入れなかっただろう。

「いや、死ねないって……だからやめッって今カスったカスった! うわ痛ッ!」

 放たれた弾幕は妹紅に激しく襲い掛かる。一見するとスペルカードルールに則った攻撃ではあるが、その弾幕は相手を倒すためではなく、殺すために放たれたのだ。

「え?何?肉が抉れているんですけどー。もしかして弾幕ごっこじゃないんですか、そうですか……助けてけーね!」

 一切の手加減なく、死なぬ相手を殺すために持てる全ての力を篭めて放たれた弾幕はカスるだけで、常人ならば死に到るような傷をもたらす。
 妹紅は泣き言を言いながらも必死に避ける、避ける避ける。グレイズすら許されぬその弾幕を。
 やがてその弾幕の密度が段々と薄くなってくる。持てる全ての力を弾幕に篭めた。その為、彼女の力が息切れをおこしたのだ。
 ああ、ようやくこの攻撃から逃れられる、どうやって説得しようか、と彼女が考え始めると誰かの声が耳に届いた。


「幽々子様~」
「妖夢、ちょうどいい所に来たわね。あの蓬莱人を膾切りになさい」

 一難去ってまた一難。妹紅がウンザリした顔をしている一方で妖夢は一人驚いていた。

「みょん? って紫様じゃないですか!」
「そうよ……あいつが紫を傷つけたのよ」

 幽々子のギリッという歯軋りの音は妹紅の耳にはっきりと聞こえた。誤解を解こうと妹紅の頭はフル回転。

「何とッ! あれ? でも蓬莱人ですよ、死なないんじゃないのですか?」
「二人でやれば大丈夫よ」

 妖夢の当然の疑問を幽々子にぶつけた。だが幽々子の返答はとんでもないものであったので、妹紅はつい口を挟んでしまった。

「ちょ、待てよッ!」
「遺言? 聞いてあげないわ」
「だから違うって。そいつ……あれ? さっきこんな素っ裸の奴いましたっけ? と、兎に角違うんだッ!」

 頭脳をフル回転させても言い訳が思いつかなかったのに口を出したのが運のツキだった。この場に白黒ハッキリしてくれる者がいれば彼女は助かっただろう。

「幽々子様、言い分ぐらい聞いてあげましょうよ。ほら、前に苦手だと言っていませんでしたっけ?」
「妖夢がそう言うのならば……分かったわ。ほらどうしたの、言ってみなさいな」

 ラストチャンス。西行寺幽々子たちを説得する為に、身の保身の為に真実をしっかり伝えなければならない。
 妹紅はどもりながらも身の潔白を主張した。

「え、えーとその頭の傷は私じゃなくて、たぶんそこに倒れている男だと……」
「こ、こんな汚物に……私の紫が汚されたの? ああ、紫可哀想に。筍までぶつけられるなんて何があったっていうの」
「筍……あっ」
「みょん!? 何か知っていますね!」

 この場をうまく乗り切らなければいつかのように二人を相手にしなければならない。しかも片方は殺しにかかってくるのだ。

「知らないよ。筍投げたことなんて知らないから……はッ!?」

 自らの失言を悔いてももう遅い。ついうっかり筍を投げた覚えがあることを否定することによって肯定してしまったのだ。
 あわわ、どうしようと慌てふためく妹紅に幽々子は宣告する。

「……死になさい」

 放たれた幾多もの弾幕・・・・・・それは強く、可憐に、無慈悲に妹紅に向かって突撃する。

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁッ!? だから死なないって言っているじゃないか!」

 その言葉は最後の抵抗。蓬莱人は殺せない。だから退いて下さい、妹紅はその様な意味合いを篭めて悲鳴と共に言葉を紡ぐ。

「紫の為なら不可能だって可能にして見せるわ!」
「幽々子様カッコいいです」

 しかしそれもちょっとずれた主従の前では無意味であった。

「う、ううぅーん……グ、グ、グギ」



 男が目覚めようとしていた。
 幽々子の弾幕が着弾する音で目が覚めたのだろうか。いや、その場には妹紅の姿はない。決着がついて幾分かの時が過ぎたのだ。

「幽々子様、こいつ起きそうですよ」
「ハッ!? なんテメェら!」

 男・・・・・・アレッシーは未だ痛みが取れぬのか、顔を歪めたまま、ぐるりと辺りを見渡した。そして気付いた。見知らぬ少女と女の姿に。

「聞きたいことがあるの。紫を傷つけたのは貴方かしら?」
「紫? あぁ、あの女ね。傷つけたっていうか殺しそこ……ねた」

 問われて紫のことを思い出す。思えば彼は彼女には酷い目にあわされた。しかしその意趣返しは確かに出来た。股間は痛むが紫のあの恐怖に歪んだ顔を思い出せばいくらか自尊心が満たされると言うものだ。
 故に嗤った。いや性格には嗤おうとした。その歪んだ嘲笑は即座に恐怖に入れ替わる。

 ひらり、視界の隅に蝶が舞う。
 ふわり、また一匹と蝶が舞い踊る。
 ぞくり、薄暗い竹林に死が満ちる。


「ふふふ、お前みたいな下賎な人間風情が、私の紫を傷つけたですって?」
「あ、ああ」

 声が出ない。いや声を出すことが許されない。今までに味わったことのない死の気配。鈍感なアレッシーでさえそれを感じることが出来るのだ。
 動けない。本能が自らの動きを封じる。
 目が離せない。禍々しく、醜悪で可憐な蝶と戯れる女の姿。

「どうやって?」
「ス、スタンドだ。オレのセト神で力を封じて……」

 抵抗するだけ無意味。圧倒的な力の格差。Dioと比較することが間違っている。アレッシーが感じる恐怖はそれとはまた違う。
 彼が与える恐怖はいわば強者に対する恐怖。対し女が与えるは原初の恐怖。
 気が付けば口が勝手に開いていた。


「それって今私に伸びている影かしら?」
「な!?」

 生きたい。人は醜くも生きたがる。生存本能と人括りにすればその説明は容易い。だがそれだけではない。死への恐怖か?それもあるだろう。
 だが哲学的に考える必要性はない。人は誰しもが崇高な考えを持ち歩くわけではない。
 もっと俗に、低俗な欲望が故に醜くも生きたがるのだ。
 例えば・・・・・・自らが築き上げた地位、金、土地・・・・・・それらは死ねば失われる。もし長い時間、苦労をしてそれらを手に入れたとしたらどうであろうか。
 折角苦労して手に入れたものだ。長くそれを味わいたい、それを他人にやりたくないといった独占欲すら生まれるだろう。
 結局はその欲が人を生きようと突き動かすのだ。その結果の是非を問わず。
 アレッシーもまたその例に漏れない。彼の場合は単純に金だ。
 Dioに命じられて承太郎一行を襲ったスタンド使いには大まかに分けて二つある。一つはDioに魅入られ忠誠を誓ったもの、もう一つは単純に金といったもので雇われた人間である。
 アレッシーはもちろん後者だ。そしてDioから少なくない金を貰っていた。
 大抵の人間ならば、折角手に入れた大金を使わずに死ぬとなるとそれを使っていれば、あるいは使わずに死んでたまるかと思うものだ。
 彼もそうだ。折角手に入れた大金を使わずに死にたくないという人間らしい欲望が怯える本能を押さえつけたのだ。それに付け加え、紫に止めをさせないまでも追い詰めたと言う多少の自身もそれを助長させた。

「それでどうなるのかしら?」
「わ、若返る……精神も肉体も……」

 決して勝てない相手への抵抗・・・・・・無意味な抵抗。

「な、何で・・・・・・何もかわらねぇ!」

 何故スタンドの効果が発動しないのか。何故このような目にあわなければならないのか。何故こんな所にいるのだろうか。

「冥土の土産に答えてあげましょうか?私が今の私として在り創めたのは私が死んでからよ」
「何を言って……」

 その言葉はアレッシーに向けての答えではない。では妖夢か。それも違う。

「もう終わっているの。私の存在は終わっているの。私に許された変化は成仏……言い換えれば消滅。輪廻転生が許されるとするならばそこに向かうだけ。
終わってしまった生は過去に戻り生き返ることはない。その時まで未来永劫この姿のまま私は変わらない」
「何を言ってやがる!」

 それは自身の存在、紫の行動の真意への回答。

「これでも貴方を評価してあげているのよ。だから煩わしくとも相手をしてやっているんじゃない」
「ひ、評価しているだって?何かくれるって言うのか?」
「うふふ・・・・・・勿論くれてやるわ」
「何をくれるって言うんだ?」
「死」
「あん?」
「いや死をやるだけでは治まらないわ。紫は変わらぬ姿の私の為に、自分の力を使って出会ったあの頃の姿をずっと保っていたの!生き永らえて蓄積された経験がその容貌に影響を及ぼそうとも、それを最小限に抑えてくれていた。私の為に!」
「ッ!?」

 幽々子は気付いていたのだ。妖怪と雖も流れる時が経験として在り様を仔細であれ変化させる。だが亡霊である彼女は千の年月が経過してもその経験が在り様を変化することはない。もう・・・・・・終わっているのだから。
 例えるなら紫は流れる川の水、幽々子は水溜り。だから紫は川の水を塞き止めた。水が流れぬよう・・・・・・幽々子が永劫に変わらないなら、自らの時を永劫にとめてしまおうと。
 だが所詮流れる川の水。水溜りになることは出来ない。塞き止めた水はいずれ溢れてしまう。
 だから・・・・・溢れ出た水を戻してくれるアレッシーの力に目をつけた。


「死ッ! それすら貴様には生温い! 魂を消滅させてやる! 消えろ! ただ消え去れ!」

 幽々子はそれを理解した。アレッシーの力で紫が何をしようとしていたのか・・・・・・。
 初めて出会い・・・・・・紫は涙を流しながら幽々子を抱きしめて置いて行かないでと言っていた。
 何のことだか分からなかったので同じような言葉を返した。
 目蓋を閉じればその時の情景がつい先ほどのように浮かぶ。



『じゃあ、あなたも私を置いて行かないでね』
『ええ』
『じゃあ約束ね。ほら、涙を拭いて・・・・・・指切りしましょう』


「うわあぁっぁ!」

 目を閉じてはらりはらりと涙を流す幽々子の姿。無防備なその姿。
 生き残る最後のチャンスだとアレッシーは全精気を声と共に振り絞り、自身が持ちうる最大で、彼女たちからすれば矮小な武器を取り出した。

「みょん! この白楼剣に切れぬものはあんましない!」

 拳銃は確かに脅威だ。それは人に取ってである。幽々子はそれを受けて平然としていられただろうか。残念ながらその答えは得ることは出来ない。
 幽々子の怒気に中てられて萎縮してはいた半人前、とは言えでも西行寺幽々子の従者、魂魄妖夢にかかればそんな銃弾を弾くことなど造作もない。



 それから何があったのかを語るものはいない。ただ一つの歴然たる事実だけが残った。
 この日を境にアレッシーの姿を見たものは誰一人いない。




第十参話

さよならアレッシー









 幻想郷マヨヒガ。

 柔らかな夕日がその家には差し込んでいた。
 縁側に腰掛ける女性の膝には2つの頭が乗っていた。女性は時折その頭を愛おしそうに、優しく撫でる。

「むにゅ? 紫様?」
「藍、おはよう」
「おはようございます」

 八雲藍は長い長い夢を見ていたような気がしていた。

「むにゅ」
「あ、橙……」

 藍は橙の姿に自身が紫に膝枕をしてもらっているのだと気付いた。

「頑張ってくれたみたいだし、疲れたのよね」

 紫の言葉が中々頭に入ってこない。

「夕餉の支度をしないといけないわね」

 夢の中で味わった母の温もりと同じ温もりをしばらく堪能したい。

「駄目です。もうちょっとこのままがいいです」
「ふふ、仕方がないわね」

 子供のような我侭だと藍は自覚していた。そんな藍の頭を、紫は我が子のように撫でるのであった。



 それは何の変哲もないマヨイガの有り触れた光景・・・・・・






































 読者諸兄、誰かお忘れではないだろうか。そう彼女である。物語から忘れ去られた彼女が何をしていたかというと・・・・・・



「あのー! メリーさん? タケノコまだですかー?」

 竹林前でそう叫んでいた。













チラシの裏という名のあとがきっぽいもの。作者の独り言。

アレッシーの物語は起承転結の起だったりする。
書きたいネタは承転と言い辛いけどちゃんとあります。結もちゃんとプロットがありますよ?

ゆかりん17歳♪はネタでなくちゃんとした理由があるんですよというのがアレッシーの物語のテーマ。置いて行かないでが老いて行かないでにかかっていたり~
言い換えれば紫は幽々子の嫁……でも承太郎に浮気した話・・・なんか違うな。まぁいいか。

ではまた次回。




NGシーン


アレッシーのスタンド攻撃を受けた幽々子の体には異変が起きていた。

「幽々子様! お体が透けて……」

 そう体が段々と薄くなって消えていくのだ。

「幽々子様!」

 妖夢の叫び虚しく幽々子の体は掻き消えてしまった。

「勝った!東方幼女郷・完!」

 アレッシーの叫びは竹林に響き渡った。


 一方その頃西行妖の根元では地面の土がもこもこと動いていた。何かがもがくようなそんな様相、そしてそこから腕が一本にょきりと生えてきた。
 その腕は土を掻き分け地面からその腕の持ち主が土の中から現れたのだ!
 西行妖はその者が新たに生を受けたことを祝福するかのように満開の花を急激に咲かした。
 土の中から現れた少女、西行寺幽々子によく似た彼女はその花をじっと見詰め、呟いた。
「欝だ。氏のう」

 西行妖はまた枯れた。



「ああ、幽々子様!」

 妖夢がアレッシーと対峙していると虚空から幽々子の姿が薄っすらと現れ、その姿を次第に鮮明にしていった。

「性懲りもなく!」

アレッシーはスタンドを幽々子に向けた。


以下最初に戻る。

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