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ジョジョの奇妙な東方Project@Wiki

東方杜月抄 1

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shinatuki

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stage.1「彼らの町、杜王町」

市立ぶどうが丘高校。初夏の日が差し込み学生食堂の温度は少々高く、夏服の数が目立つ。
小柄で人懐っこい笑みを浮かべた夏服の少年と私服のスウェットにボンタンの不良然とした少年。
彼らを知らないものからすれば恐喝の様にも見える光景。しかし何の事はない、彼らは友人同士なのである。
他人からみれば異様な、しかし彼らにはこれこそが日常なのだ。
「それにしても仗助と未起隆はまだかよォ。昼休みが終わっちまうぞ」
「まだ昼休みは始まったばかりじゃあないか億泰君。」
億泰と呼ばれた少年をたしなめる小柄な少年。対して億泰はニカッと笑みを返す。
「ギジンホウってやつだよギジンホウ。さっき授業で習ったんだよォ」
「比喩だよ億泰君」「ウルセぇーぞ康一ィ!国語の先生になる訳でもねーからイイんだよ!」
間違えた恥ずかしさを誤魔化すためか、億泰は勢いよくうどんをすする。
撥ねる出汁を避けるため康一は僅かに椅子をひく。億泰は備え付けのナプキンで口と服を拭う。
「そういえば冬服はどうしたの?今日は着てないみたいだけど」
「暑ちーしクリーニングに出したぜ。仗助はまだ着てるみてーだがよォ」
噂をすれば影。学食の入口では大柄な少年が辺りを見回している。
「仗助ぇ!こっちだよォ!!」「ちょっ、周りに迷惑だよ」「おぉ悪ぃ悪ぃ」

悪びれない億泰の大声で二人に気づき少年も手を振る。注文のための列に並ぶがかなり目立つ。
精悍な顔つきに長身、改造された詰襟は暑苦しさを感じさせず、理知に輝く瞳に加えて愛想も良く時代遅れともとられる髪型も彼の魅力を引き出している。
少年は学食内の顔見知りと挨拶を交わしながら親子丼と共に二人と同じ机に着く。
「遅っせーよ。もぉ食い終わっちまったぜぇー」「まだ残ってんじゃねぇか」「ヒユだよヒユ。さっき教わったんだよ」
遅れて来た少年は割箸に手を伸ばしながら辺りをみまわす。
「未起隆はまだ来てねーのか?」
二人は仗助の質問に答えようとするがそれよりも早く
「みなさんそろいましたね」
「うッ、ウオォぉーッ!?」
仗助が手を伸ばした割箸立てがほどける。おかしな表現ではあるが事実ほどけた割箸立ては人の形をとりつつある。
「こんにちは。仗助さん、億泰さん、康一さん」
「こんにちはじゃねーよボゲェ!!こんな所でスタンドなんか使ってんじゃねーぞ!」
日常品の突然の変化に心底驚き、椅子ごとひっくり返った億泰が吠える。
仗助と康一も慌てて周りを見渡し、問題が無いと判断したのか先ほどまで割箸立てだった少年に向き合う。
「大丈夫。誰も気づいてないみたいだよ」
「とは言ってもよぉ~、未起隆ぁ……あんまり昼間っから能力使うのはマズイぜ~」
未起隆少年は空いていた椅子に座りカバンから取り出した割箸を仗助に差し出す。
「実は最初に来てまして……ビックリしていただこうと思って隠れてたんですよ」
少しズレた感性を持つ友人に苦笑しつつ、椅子を引き起こす億泰。水を一息で飲み干す。
「頼むぜ未起隆よぉ。そのうちメン・イン・ブラックにつかまんぞぉ」
「なるほど。学生食堂でスタンドを使うとトミー・リー・ジョーンズに捕まる、理解しました。」
未起隆は律儀に頷き、三人は笑うべきかツッコむべきかで頭を悩ませた。
「そう言えば――」
昼休みも半ばが過ぎた頃、カフェオレを飲んでいた康一が切り出す。
「昨日間田さんに聞いたんだけど最近『小道』に誰か入っていったみたいなんだ。」
「『小道』ってあの鈴美さんがいたとこか?」
「うん。何だか『夜に灯りが点いたり』『カーテンに人影が映っていた』んだって」
「本当かよ~?あいつが適当言ってるだけなんじゃねーの?そもそもあそこに電気は通ってねーだろ~」
億泰は疑っているが他の二人はしごく興味を持った様で
「危険な場所ですし『小道』で迷っているならば助けるべきじゃないですか?」
ゼリータイプの飲料をブジュルジュルと吸いながら、穏やかな表情で提案する未起隆。
「そいつがスタンド使いならそいつの意図を確かめねーとな~」
仗助が自らの髪を手櫛で整えながら他の可能性を挙げる。

多角的な発想。これこそが様々な窮地を乗り越えた彼らの『戦い方』なのである。
時間こそ短いが、互いを補い助け合う良い友人関係であると言えるだろう。
そして周りの反応で改めて興味を持ったのか億泰も身を乗り出し
「じゃあよ~、今日の放課後にでも行ってみようぜ~」
「そうだね。じゃあ一度家に帰ってから皆で集まろうか。」
「ああ、やるなら早いほうが良いだろーしよぉ」
「集合場所はオーソン前にしましょうか」
彼らはもちろん警察ではない。どちらかと言うと警察のお世話になる側である。危険に首を突っ込む必要も無い。
理由も違う。亡き祖父への誓い。純粋な善意。唯一人の家族の救済。友人達への助力。見事なまでにバラバラである。
ただその瞳はみな同じく『黄金の意思』にきらめいていた。

話もまとまり昼休み終了の予鈴が鳴る。慌てて食器を戻すために立ち上がった康一が年上の友人を見つける。
「あれ?間田さんだ。でも……」「グレート!女連れだぜ!」「マジかよォ~スゲー美人じゃね~かよォ」
「『小道』のこと聞きたかったけど邪魔しちゃ悪いよね」「どう見ても釣り合ってねーぜ」
「本当に綺麗だね。あんな人ウチの学校にいたっけ?」「転校生か?少なくとも一年じゃねーな」「キンパツですね。」
「なんであんな奴に彼女がいんだよォ~……オレの方がルックスもイケメンなのによ~」「何も泣くこたぁ~ねーだろ億泰よぉ」
「しかし本当に美人だ。おや?彼女おデコにゴミが付いてますね。せっかくの美人が台無しです」
「……」「……」「……グレートだぜ」
「? どうしたんですかみなさん?昼休み終わっちゃいますよ」
楽しそうに二人きりで昼食をとる男に何とも言えない顔になる三人であった。

夕方ではあるが初夏のため日はまだ高い。
「また仗助と未起隆かよ~。また変身してんじゃねーだろ~な」
オーソンから出てきた億泰が呆れたように漏らす。康一も苦笑いしながら返す。
康一も億泰も制服(億泰はボンタンにスウェットではあるが)のままである。
「確かに集合時間はもう過ぎてるね」
「康一君!もうぼくは待てないぞ!アホの仗助は置いて行くことにしよう!!」
「だからなんでオメーが居んだよマンガ家ァ!」
奇妙なヘアバンドを巻いた男は今にも小道に駆け出しそうである。
「フン!そんな面白そうな事をこの岸辺露伴が見逃すはずがないだろ。当然調査にも参加するさ」
「もう少しだけ仗助君を待ちましょうよ、露伴先生」
露伴と呼ばれた男は不満気ながらも少しだけ待つ気になったようである。
億泰はオーソンの袋から取り出した飲料を二人に手渡す。礼を言い受け取る少年と鼻をならし受け取る男。
未だ来る様子のない仗助に露伴がしびれを切らし始めた頃民家の屋根から三人に声がかかる。
「仗助君?何でそんなトコから?」「急いでたからよぉースタンドでショートカットしてきたぜ」
屋根から飛び降りその際のショックをスタンドで和らげる。
「悪ぃ~、また遅れちったぜ」「いいよぉ~。ホレ」
億泰はミルク・ティーとレシートを、仗助は五人分の代金を支払う。
「おい!ウダウダやってるなよ。ぼくはお前らと違ってヒマじゃないんだ。」
「後は未起隆君だけだね」
「あー……未起隆は予定が変わったらしくてな。来れねーってよ」
「そっか……じゃあ四人で行こっか」
仗助はゼリー飲料も受け取ると学ランのポケットにつっこむ。そして彼らは『小道』と向き合う。

コンビニと薬局の間、地図に載らない幽かな道。迷い込むとナビゲート無しでは出ることの叶わぬ無限回廊。
出口付近までたどり着いても『振り向く』という何気ない動作を引き金に異次元に連れ去られる。
スタンド能力か?そもそも個人の能力なのか?一切が謎に包まれている。
「『夜中に灯りが点いている』と『謎の人影』だったか?じゃあスタンド使いなのか?」
「『灯り』と『人影』が別々の要因なのかも知れないよ」
「どちらにせよ行けばわかるさ。早く行こう康一君」
 ――元気だなぁ、この人――
康一の苦笑いに気付かない露伴を先頭として一行は小道に入っていく。
「そ、そうだ!オメーら大変なことを忘れてんぞォ!!」
億泰がこの世の終わりのような顔をして絶叫する。
「鈴美さんがいねーからオレ達も帰り道がわかんねーじゃねーか!オレが気付いたから良かったもののよぉ」
「億泰君大丈夫だよ。だって――」
「おぉ!さすが康一だぜ!パン屑でも持ってんのかぁ?」
「ぼくと康一君は一度彼女と一緒に脱出したからな。康一君に『以前脱出したルートをたどる』とでも書けばいいだろう」
「そんなことまで出来んのかよぉ……」
話ながらも億泰を先頭とした一列になり油断無く周囲に気を配っている。人通りの無い道を警戒しながらゆっくり進んでいく。

敵の襲撃はないが、予想以上の疲れに精神力の回復を図ろうとすると前触れも無く辺りが暗くなる。
先程まで高かった日が完全に消え、変わりに満月が浮かんでいる。
まるで日没という過程を吹き飛ばしたのかのようである。人工の灯りが無い様はさながらゴーストタウンだ。
いや、一軒だけ灯りが点いている。周りにまともな光源が無い状態では異様な存在感を放っている。
「露骨に怪しーぜ~」
「すいませーん。誰かいませんかー?」
ベルを鳴らしドアを叩き呼びかけるが、返事は無い。
「この『小道』に時間を進ませる能力は無いぞ」
「まず間違いなく中に居る奴の仕業だな」
仗助が先頭に出て玄関のドアノブを捻じ切り、ドアノブを学ランのポケットに放り込む。
「気ぃ張れよぉ~~……こっからが本番だぜ」

仗助を先頭に調査隊は館に踏み込む。
邸内は汚れこそあるが特別壊れている様子は無い。四人は襲撃を警戒して固まり行動する。
「相手の能力の見当がつかねーなー」
「途中経過を相手に悟らせない能力かな」
「時間を早くしたんじゃね~のかぁ~」
「いや、もしかしたらこれは――」
「……何だよぉ、もったいぶらずに言えよぉーマンガ家ァ~」
「露伴先生?」
「ッ!?いないッ!?」
「どー言うこったッ!?何があったッ!?」
「音も無く消えたんだ!オレのザ・ハンドでやられたみてーに!」
「いつやられたんだ!?今野郎は何処に!?」
「何の気配もなかったッ!次は何処からくるんだ!?」
「!! 仗助ぇ!康一ぃ!」
「痛ぇ!何しやがる億や…す……?」
「億泰君がやられたッ!『穴』に落ちていったんだッ!」
「どういうことだ!?床が抜けて地下に落ちたのか!?」
「多分敵のスタンド能力だ!敵は『二人』居たんだッ!」
「康一ィ!離れるんじゃねぇぞ!『穴』に落ちそうになったら互いに支えるんだ!!」

康一からの返事は無かった。

「こんばんわ。月が綺麗な夜ね」
代わりに少女の声が響く。耳に砂糖を流し込むかの様な甘ったるい声だ。
何重にもエコーがかかり音の発生源がわからない。仗助は壁に背をつけ襲撃に備える。
「貴方の正面の部屋よ。早くいらっしゃいな。」
仗助の横に現れたビジョンが扉を殴り飛ばす。轟音とともに撃ち出された扉はしかし、音も無く宙に浮く『穴』に消える。
「あらあらそこは引き戸よ。乱暴な子ね」
「へーそうだったんスかーー。そりゃ気付かなかったぜーー」
閉じきる前の『穴』から一度飲まれた扉が元あった場所に戻っていく。
むしろ細かな傷も無くなり殴られる以前より綺麗になっている。仗助が今度は自ら扉に手をかける。
扉が横にスライドし、二人は対面する。その姿を見て仗助は驚きの表情を浮かべる。
 ――食堂にいたサーフィスのオリジナル?間田のツレか?そんなことより――
美しい少女である。黄金の河の様な長い髪。手入れを欠かさないのか毛先まで乱れ一つ無い。
しなやかなロンググローブも、気品漂う紫のドレスも、随所にあしらわれた紅いリボンも全てが美しい。
息を呑み、存外暢気な自身に苦笑を漏らし少年は改めて少女と向き合う。

「こんばんわっス。随分と暗い夜っスねー?」
「面白いことができるのね。時間の逆転かしら?」
「さぁ?どうっスかね~?それより仲間は呼ばなくていいんスか?」
「あら。私は一人よ」
会話に違和感を覚えた仗助はクレイジーダイヤモンドを発現させ構えを取らせる。
しかし少女は急に現れた人型に気付いた様子が無い。
 ――スタンド使いじゃねーのか?それとも敢えて目をやらず大物振ってんのか?――
「……間田の知り合いじゃないんスか?」
「誰かしら?ここを教えてくれた暗そうな子かしら。やたらと近づいてきたけど」
「……ロクなことしねーなあいつもよー」
 ――2メートルだ……スタンドが見えねーならやれるぜ――
会話を続けながらもさり気無く距離を詰めていく。

「ツレを開放してくれないっスか?アンタが何もしないならこっちも何もしねーからよぉー」
「ダメよ。貴方たちには仕事があるの」
「バイトは親に禁止されてんスよ」
「大丈夫よ。明るい職場で楽しい仕事よ。何せ夜空で一番明るいもの。お給金は出ないけど」
 ――よし後一歩だ。射程に入るぜ――
「聞いておきたいのだけれど」
「何スか?」
「貴方もう出してるのかしら『スタンド』」
「!?クレイジーダイヤモン――」
踏み出した一歩が地に着かない。仗助の左足が足首まで『穴』に飲み込まれている。

「こっちからは見えないなんて本当にズルいわね『スタンド』って」
「う、ウオォぉーー!?」
「いってらっしゃい。お土産はいらないわ」
仗助の全身が『穴』に飲み込まれる。妖怪少女は最後まで見ず『穴』に背を向ける。
今度の『計画』は半年前のものとは違い彼女のわがままでしかない。今回は幻想郷の者を使うことはできない。
だから外部の者を利用する。イレギュラーならば十分月の民の目を引くだろう。思案する賢者の背に
「ドララララララーーッ!!!」
「っグ!?うぐ!?え?」
少女が振り返ると左手にドアノブを握った仗助が上半身だけを『穴』から出している。
かの大妖も無防備の状態へのスタンドによる渾身の一撃は効いたようで、口元には血が見える。
だが仗助の身体も徐々に『穴』に引きずり込まれていく。しかし仗助は笑みを崩さない。
「油断して怪我してりゃあ世話ねぇっスねーー」
「なるほど、これが『スタンド使い』ね……確かに油断したわ……でも」
話す間にも仗助は肩まで飲まれる。彼の顔に余裕は無く、しかしなお笑んでいる。
「もう油断はしない。直接、私が『スキマ』に叩き落してあげる」
少女の手から光弾が放たれ仗助の持つドアノブを宙空に弾き飛ばす。
支えを失った仗助は『スキマ』に飲み込まれ、仗助から開放されたドアノブは玄関へと飛んでいく。

『スキマ』が完全に閉じたことを確認すると正面に別の『スキマ』を開く。
紫は誰かと話しているらしく二三言葉を口にしては微笑む。
「じゃあ私ももう行くわ。あんまり時間を空けちゃ陽動の意味がなくなるもの」
「……そうよ。『なくしもの』を探しに行くのよ」
「……えぇ?別に構わないけど……行きはともかく帰りは保障できないわよ?」
会話相手の声は紫にだけ聞こえているのか、ともすれば彼女の独り言の様にも見える。
「……そう。じゃあ一度そっちに行くわ」
話がついたのか彼女も『スキマ』に消える。彼女の消失に従い家から灯りが消え『小道』は再び夜に包まれる。

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