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不死鳥は失敗を恐れない 第五話

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shinatuki

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「本物だッ! やっぱりオレは最高のラッキー・ガイだったぞッ!」
 森を抜け、ジャイロの三馬身後ろを走るポコロコは絶叫した。
「UOHHHH! 木の幹にブチ当たって体ごと弾かれたら、鞍の上に戻れたぞォ~~ッ!」
 その叫びにジャイロは振り返り、
「どういうことだ……こいつなんなんだ!? 何かの『能力』じゃないとこんな事は出来ないッ!」
 震える歯を噛み締める。
 ポコロコの背後に迫る妹紅も、
「偶然にしては出来すぎだ……本当に『偶然』なのか?」
 眉をひそめる。
 彼女の横を、『4』の文字が書かれた立て看板が通り過ぎた。
 残り4,000メートルを示す看板だ。

  第五話『勝利への試練その三「悪魔の下り坂」』

 ここから先の約2,000メートルは高低差約50メートルの長い下り坂。
 この変化に富んだ坂道には、勾配30°の急な部分もあれば勾配10°の緩やかな所もある。
 言うまでもないが、馬乗りの常として、長い下り坂ではスピードを落として走らなくてはならない。
 著者は一度下り坂を走って降りたが、その際足を痛めてしまった。
 人でさえ走ってしまえば足を痛めてしまう坂道下り。
 馬の体重やスピードなら尚更。痛めるどころか足が潰れてしまって即リタイアだ。
 例外は無い。ここでこらえきれずにスピードを出してしまえば最後、井戸の水を枯らしてしまうように、ここまで走ってきた11,000メートルのエネルギー全てが水泡に帰してしまう。
 坂に潜む悪魔が参加者たちにささやく。
――今スピードを出せば、トップに躍り出ることが出来るぞ。
 と。
 しかしその誘惑に囚われるのは破滅の道。
 ここの鍵はその悪魔の誘惑に囚われず、如何にしてこらえるかが勝負の鍵となる。
 主導権を握るのはジャイロ・ツェペリ。
 彼もまた、悪魔の誘惑に耐え、ゆっくりと力をためている。
 その後ろから、強烈な存在感を放って走る青年が一人。ポコロコ。
 妹紅も、馬をつぶさぬよう慎重に馬を走らせる。
 彼女の背後についている男が、加速した。

「……一人脱落か」
 妹紅はわき目も触れず、ぼそりと呟いて、目の前に全ての神経を集中させる。
 ポコロコもまた、
「焦るな、焦るな。オレは50億分の1のラッキー・ガイだ……あの農場を越えたら何をやってもいい……それまではこらえて、飛ばさずに、力をためて……なんでもやってやるぜ」
 手綱を引いて、勝手に加速しようとする馬を抑える。
 そうやって、このまま坂を走っていようとすると、
「ポコロコ! ナニ甘イコトヤッテンダッ!」
 すぐ横から自分を呼ぶ声がした。
 ポコロコは、声がしてきた方向を向いた。
「『牛』ガイルゼッ! ポコロコ。『牛』ダカラナッ!」
 柵の陰に、何かがいた。
 振り返り、その柵を見ても、何も無い。
「ダカラ何ヤッタッテイインダロウ……!?」
 下から、さっきと同じ声がした。
「オイッ! ヨソ見シテンジャナイゼッ! 落馬ハヨオオォー……森ノ中ナラトモカク、ココデスル事ジャアナイッ!」
 下を見ると、馬の腹に誰かが張り付いている。
 ブリキのバケツに穴を開けたかのような顔が、あった。
 もうちょっとよく見ようと体を傾けると、そこには既に姿はなかった。
「何だァ~? 今変なものが見えたぞ……」
 今見たものが信じられなくなって、
「あんときの落下でオレ、頭打ったのか? い……今のは『幻覚』か?」
 目をこすり、前に集中しようとすると、
「ソウ……オ前ノ『幻覚』サンカモナァ~……ダガ、モウ、ソノ気ナンダロ!?」
 今度は耳元から声が聞こえてきた。
「自分ハ50億分ノ1ノ男ニ間違イハネェッテナ……行ケッテ!」
 幻覚が、耳元でささやく。
「下リ坂ガドーダッテイウンダ? 行キャアイインダヨッ! 信ジロッ!」
 ささやく。
「オマエハ『ラッキー・ガイ』ダッ! 馬ヲ抑エテテ目ノ前ノ奴ニカテルノカアァァ~? 今マデダッテソウダッタンダロ? オ前ハ絶対ニ勝ツッ!」
 ささやきは、激励に変わり、その姿は消えた。
 ポコロコが手元に目を向けると、手の中に染み込んでいく幻の手。
 彼の中に、自信が沸いて来た。
 目つきが、変わった。
「YO! あんた……トップのあんた! その程度かよっ!」
 ポコロコは、眼前を走るジャイロを指差した。
「宣言するぜ。オレに一度抜かれたら……あんたはもうこのポコロコを抜き返すことは出来ないッ!」
 まさしく、それは挑戦状だった。
 ポコロコからジャイロに対する挑戦状だった。
 挑戦状をたたきつけられたジャイロは、振り返ると、金色の歯を輝かせて、
「なんか言ったか~? オレのケツと話をされてもよオォ、おケツじゃ聞こえやしねぇ~」
 不敵に笑う。
「どきなって言いてぇのよォ~~オジンは後ろに下がってなッ!」
 ポコロコは見下すかのようにジャイロを見る。
 次の瞬間、信じられない行動をポコロコは取った。
 目の前で繰り広げられた急展開に、ジョニィは思わず、
「なにィ」
 と口から漏らし、妹紅は、
「嘘……」
 開いた口が塞がらなくなった。
 加速している。ポコロコはこんな状況で加速するという選択肢を取ったのだ。
 彼につられて、一人、二人と馬を加速させる者も出始める。
 それを見ながら、ジャイロ、ジョニィ、妹紅の三人は加速したいという衝動に駆られながらも、それを抑えて馬を制御する。
 愚か。あまりにも愚か。
 ポコロコの馬のひづめの音は自分への葬送行進曲を作曲し始めている。
 妹紅とジャイロの後ろまで迫った二人の騎手が、転倒した。
 やはり脚にくる。
 そして50億分の1のラッキー・ガイでさえこの運命から逃れることは出来なかった。
 馬体が前につんのめる。
 普通ならこの時点で危機を感じ、減速するし、まだこの段階なら間に合う。
 だがポコロコは、
「大丈夫だ。そのまま行けッ!」
 スピードを落とさなかった。
「オレたちは『ラッキー・ガイ』だッ!」
 馬の息が荒くなる。更に前につんのめる。
「平気だッ! オレたちならやれるッ!」
 その結果、
「え?」
 馬は大きなでんぐり返しをして、ポコロコは馬から投げ出された。
 ジャイロはその様を見て、
「ニョホホ。お疲れさンン~♪」
 ニタニタ笑う。
 トップは再びジャイロ。
 飛び散るポコロコの荷物を悠々と避けながら前へ進む。
 坂も終盤、再び勾配が変化するところへと差し掛かると、そこにポコロコの姿があった。
 落馬し、座り尽くしているのかとジャイロは思ったが、その考えは大きく裏切られた。

 動いている。動いているのだ。
「どういうことだ……アイツ、動いているぞ……」
 それも歩くというレベルではない。馬のような速さで動いている。
「転倒し、足をつぶしてしまったはずなのに、動いているッ! しかも! ものすごいスピードで!」
 ジャイロは目を見開き、ポコロコを観察する。
 急な坂を下り始めると、ポコロコの全貌が見えてきた。
 牛だ。
 どういう訳か知らないが、ポコロコと彼の馬は牛の死体に乗って坂を滑り降りている。
 その姿を見て、ジャイロは気が動転した。
「こッ……コイツは……このフザけた事態はなんなんだ!?」
 あまりにも非常識な目の前の光景に、目は揺らぎ、
「これは『計算』だッ! 間違いないッ! もうコイツの行動はマヌケを度重なる偶然が助けたなんてレベルじゃないッ!」
 乗馬による汗とは別の汗が吹き出て、
「あらかじめ『知っていなくちゃあ』こんな事は誰にも出来ないッ!」
 ジャイロにとある事を認識させる。
 このレースの『敵』はポコロコ――『おそるべき野郎』だという事を。
「まずいッ! 奴の馬は脚を止めていて100%休んでやがるッ!」
 このままでは農場を越えた時に目の前のの馬は脚を温存したまま平地の直線に向かうことになると直感したジャイロは、ベルトから一つの鉄球を取り出した。
「ルールブックはどういうか知らねぇが……
 鉄球はひとりでに回転をし始め、
「このレースは馬に乗るレースだッ! 『牛の死体』に乗り換えちゃいけねぇぜッ!」
 それを近くの岩場めがけて放つ。
「あの岩の転がりで『牛』に乗っての滑走を止めてもらうことにするか!」
 鉄球が、岩場へと命中すると同時に、鉄球が命中した岩の上に誰かが乗った。
「うっ、バランスが……!」
 この大陸を己の足一つで駆け抜けると宣言した男、サンドマンだった。
 岩が、転げ落ちる。
 しかし時既に遅し。『牛の死体』に岩があたることは無かった。
 目の前を走るサンドマンは凄まじい速度でポコロコを追い抜く。
 農場の建物が近づいてきた。
←to be continued

  次回予告
魔理沙「魔理沙だぜ」
妹紅「Hello. My name is Moko.He is friend's Joni」
ジョニィ「Hello Marisa.The story is heard from Moko. My name is Joni. nice to meet you」
魔理沙「え? あえ? なんて言ってんのこの人?」
妹紅「魔理沙、あんた英語は読めても英語を喋ったりは出来ないのね」
魔理沙「だから、なんて言ってんのこの人?」
妹紅「Joni.Marisa's can't speak English. Could you talk in Japanese?」
ジョニィ「Yhar. さっきは少し意地悪してごめんね。改めまして。僕がジョニィだ」
魔理沙「元から日本語しゃべれるならそうしてくれよ!」
 次回ッ! 不死鳥は失敗を恐れない第六話『最終鬼畜直線2,000メートルを制するのは誰なのか?』お楽しみにッ!
魔理沙「ところでアメリカとか言うところから来たジョニィが何で日本語しゃべれんだ?」
妹紅「それもこれもきっと八雲紫とかいう奴のせいなんだ!」


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