「今この『虫たち』をお前らの周囲に向かわせた! 虫たちの『高速の飛行風圧』は! チョヤッの針を標的に向けて自由自在に飛ばせるッ!」
虫が、チョヤッへと向かう。
それを見て、ジャイロは、顔をこわばらせた。
「そしてオレの秘密を知り終えたなら……」
ミセス・ロビンスンはジャイロを睥睨する。
「くらえッ! このレースでオレの前を走るやつはいねえッ!」
左目から霞のように虫が溢れ出した。
ジョニィと妹紅の顔が凍りつく。
だが、ジャイロの顔は笑っていた。
「じゃあ~基本的にオレと同じ考えだぁ~ッ! 『鉄球』をただ落としただけだと思ったか? じ・め・ん・に! 大切な『鉄球』をよぉ~ッ!」
あざ笑うかのように金歯をきらめかせるジャイロ。
辺りに、何かが振動する音がしはじめた。
さっきまで異常なまでのハイテンションだったミセス・ロビンスンは黙りこみ、辺りを見回す。
その様を見て、
「オレの狙いは正確じゃねーが……回転の振動はそっちへ行っててめぇを取り囲んだ……」
ジャイロは馬を下がらせた。
「とばっちりこねぇよーに離れとっかな」
瞬間、
「どばあああああああああああ」
針の雨が馬上のミセス・ロンビスンに降りかかる。
地面に落ちた鉄球はひとりでにジャイロの手元に戻ってきた。
「さーて、二人ともさっさとここから離れようぜ。また針が飛んで来ないうちにな」
ジャイロは二人の方を見て、にやりと金歯を輝かせる。
その表情はまさに『どや顔』であった。
虫が、チョヤッへと向かう。
それを見て、ジャイロは、顔をこわばらせた。
「そしてオレの秘密を知り終えたなら……」
ミセス・ロビンスンはジャイロを睥睨する。
「くらえッ! このレースでオレの前を走るやつはいねえッ!」
左目から霞のように虫が溢れ出した。
ジョニィと妹紅の顔が凍りつく。
だが、ジャイロの顔は笑っていた。
「じゃあ~基本的にオレと同じ考えだぁ~ッ! 『鉄球』をただ落としただけだと思ったか? じ・め・ん・に! 大切な『鉄球』をよぉ~ッ!」
あざ笑うかのように金歯をきらめかせるジャイロ。
辺りに、何かが振動する音がしはじめた。
さっきまで異常なまでのハイテンションだったミセス・ロビンスンは黙りこみ、辺りを見回す。
その様を見て、
「オレの狙いは正確じゃねーが……回転の振動はそっちへ行っててめぇを取り囲んだ……」
ジャイロは馬を下がらせた。
「とばっちりこねぇよーに離れとっかな」
瞬間、
「どばあああああああああああ」
針の雨が馬上のミセス・ロンビスンに降りかかる。
地面に落ちた鉄球はひとりでにジャイロの手元に戻ってきた。
「さーて、二人ともさっさとここから離れようぜ。また針が飛んで来ないうちにな」
ジャイロは二人の方を見て、にやりと金歯を輝かせる。
その表情はまさに『どや顔』であった。
不死鳥は失敗を恐れない 十二話『麻酔のない話』
三人がキャンプを張った場所は、サボテン地帯から30キロ近く離れた場所であった。
本日の走行距離は約95キロ。
次の水場まで、約50キロ。
夜の砂漠は寒い。
影ができるほどの星明りの下、ジャイロとジョニィはたき火を囲んでいた。
「おい、ジャイロ。交代の時間だ」
近くで周囲を見ていた妹紅が振り返り、ジャイロの肩を叩く。
「あいよ。何か見逃してねぇだろうな?」
「見逃してないわよ。私は夜目がきく方だ」
「ニョホホ。ま、ここからは俺にまかせなさい」
ニョホニョホ笑いながら、ジャイロと妹紅は拳を突き合わせる。
「で、ジョニィは背を丸めて何やってるわけ?」
妹紅は、悪戯っぽい笑みを浮かべてジョニィの手の中を覗き込んだ。
コルク。
ジョニィの手にはコルクが握られていた。
彼はそれを親指で何度も弾く。
「ほほう、早速練習か。精が出ますねぇ」
「ま、早く回転を使いこなせるようになりたいからね」
「で、どうなのよ。順調?」
「う~ん……」
ジョニィは唸って、コルクを眼前にかざす。
「『イメージ』はあるんだ……『回転』のイメージはな……」
「と、言うと、どんなイメージ?」
「そうだね……風の中、木の葉がバレエ・ダンサーのようにくるくるって『舞うイメージ』っていうか……」
そういって、ジョニィは再び親指でコルクをはじき始める。
ビシ、ビシッと何回かはじくと、グルグルとコルクが回転を始めた。
「「おおっ!」」
二人は感嘆の声を漏らす。
「「おおおおおおっ」」
回転するコルクはジョニィの腕を駆け上がっていく。
「ま、回っ……ジャイロ!」
ジャイロを呼ぶジョニィ。
慌てるジョニィの肌にぴったり張り付いて駆け上がるコルクは、彼の肩をカタパルトにして空高く飛ぶ。
ジョニィに呼ばれたジャイロは、そっぽを向いていた。
「なんだジャイロ! 見てないのかよ~ッ」
がっかりした表情で、ジョニィはジャイロを呼ぶ。
「今見てくれなかったか? 何で見てないんだ!?」
なおもジャイロはそっぽを向く。
「凄かったんだ! 絶対に回ったぜッ! コルクが! 妹紅も見たよな!」
「うん。すっげー回ってた」
あまりにもジョニィが騒ぎ立てるので、ジャイロはため息をついて振り返った。
「なんで俺が四六時中あんたらを見てないといけないんだ? 本当にそーなのかー? もう一回やって見せろよ」
そう言われたので、ジョニィはコルクを握ろうとして、
「あれ?」
一つのことに気付いた。
コルクが、無い。
「おかしいな……コルクどこに落ちた?」
コルクが見つからず、辺りをきょろきょろと見まわすジョニィ。
それを見て、クスクスと笑う妹紅。
「背後は岩だから、飛び出すはずはない……どこだ? 消えるなんておかしいぞ」
しゃがみこんで、コルクを本格的に探し始めるジョニィ。
そんな彼のフードに、ぽふん、と何かが落ちた。
「ポン?」
思わず上を向くジョニィ。
そこには、馬のケツ。
妹紅は、口を塞いで笑いをこらえはじめた。
「なんだ今の音は……どこにあったんだ?」
ついに背中を探り始めるジョニィ。
それに手を触れた。
「うおっ! ちょっと湿ってる!! 背中落ちてく……!」
そして青ざめた。
「う……ぷっくくく……」
妹紅は笑いを抑えられなくなってきている。
「まさか! 馬のお尻の……ッ!」
「アッハハハハハ!」
ジョニィの挙動に、妹紅は声高らかに笑い始めた。
「二人とも、あそこに誰かいるぞ」
バカをやる二人に、ジャイロが冷や水を浴びせた。
ジャイロが指差す方向には、馬に乗っている選手の人影が。
「まさか夜通しで走る気かな? あいつ」
ジョニィは表情を一変させて、人影を見る。
「考えられねぇな……夜の闇で馬が事故を起こすだけだ」
顔をしかめて、人影を見つめるジャイロ。
「多分こっちに来ているんじゃないか? ほら、火を焚いてるんだし」
笑い転げるのをやめて、妹紅も人影を見る。
「ジョニィ、さっきこのルートは『変な奴ら』ばっかりと言ったよな。二人とも、武器は持ってきてるのか?」
妹紅は、ホルスターに収まっている銃身を切り詰めたウィンチェスターを注視した。
「ウィンチェスターだ。薬室に入ってる1発と弾倉の6発。あとはよく切れるナイフが一本」
ジャイロに耳打ちをする妹紅。
「ジョニィ、お前はどうだ?」
ジョニィは、バッグの中をあさり始める。
「と、とりあえず銃は持ってきたけど……撃ったことはない……」
がさごそと自分の銃を探していると、ジャイロのバックに肘が当たって、中身が出てくる。
思わず、それを見てしまう。
それは、『紋章』のついた書簡入れだった。
「『紋章』がついた書簡入れ……盗んだのか? 『紋章』ってヨーロッパでは領主とかの許可なしでは持つことが許されない宝だが……」
ジョニィは、書簡入れからはみ出している紙を調べてみる。
どうやら新聞のようだ。
新聞には、
『少年死刑確定。罪状は反逆罪』
『ツェペリ法務官、少年有罪に抗議するも認められず』
『裁判やり直しに五千万ドルが必要』
といった文字が並ぶ。
「おたくは他人の物を盗み見る教育を受けて育ったのか?」
ジャイロの低い声が、ジョニィの耳に刺さった。
振り向くと、ジャイロが立っている。物凄い殺気を撒きながら。
「……べ……別に盗み見たわぜじゃないぜッ! だが、アンタ……何者なんだ! この国の人間じゃないのか?」
見張りに戻ろうとするジャイロに、冷や汗を流しながらジョニィが質問すると、ジャイロは目線だけを彼に向けて、
「開けるのは自分の荷物だけにしとくんだな」
とだけ言った。
「おい、アイツやっぱりこっちに来てるぞ!」
さっきの流れを気まずく思った妹紅が、声を上げて人影を指さした。
「気球も着陸しているようだし、もはや走行妨害ありのルートになったのかもな。奴を絶対に近づかせるな」
ジャイロも、人影を見据えながら、鉄球をなでる。
ジョニィも拳銃を持って、馬に乗る。
人影が、近づいてきた。
「よォーしそこで止まれェェーッ! それ以上こっちに近づくなッ!」
ジャイロは大声で叫び、人影を静止を促す。
しかし、人影はこちらに近づいてくる。
「おめーだよッ! おめーに言ってんだッ! そこで止まれと言ったんだッ!」
怒鳴るジャイロ。
人影が、止まった。
「う……撃たないでくれェ~」
怯えた少年の声を、人影は出した。
「怪しいもんじゃねぇッ! 火が見えたから来たんだよォォ~ッ!」
馬上で慌てる人影。
「アイツ……まだガキじゃないの」
人影を見て、妹紅が一言漏らす。
「……アイツが見えるのか? この暗さで?」
横で拳銃を握るジョニィが、目を丸めて妹紅を見る。
「私は夜目がきくのよ。どれ、アタシが様子見てきてやるよ」
妹紅は勝手に人影へと向かい始める。
と、妹紅の肩をジャイロが掴んだ。
「なんだよ」
妹紅は、ジャイロの顔をにらむ。
「アイツがまだ怪しいか、そうでないかはまだわからねぇぞ」
「大丈夫だって」
怪訝な表情のジャイロ。
対してにやけ気味の妹紅。
彼女はジャイロの手を振り払って、歩き出す。
「どうしたんだ? そんなに慌てて」
妹紅が人影の横に立つ。
馬上の人影は、そばかすが目立つ顔の少年だった。
「噛まれちまったんだよォ~凄くヤバいッ!」
慌てる少年は、左手を差し出す。
左手の指は、明らかにおかしい色に染まって火ぶくれを起こしている。
「何に噛まれたんだ? ガラガラヘビか?」
「毒トカゲだ! 黄色と黒のシマシマの奴ッ!」
「わかった。わかったから落ち着け。まずは馬から降りろ」
妹紅が少年の相手をしているのを、ジョニィとジャイロは遠くから見る。
「ウソの傷かもしれねぇぜ」
ジャイロは、怪訝な表情を崩さない。
「黄色と黒のシマをしたトカゲと言えば『スポテッド・サラマンダー』っていう種類だ。毒が全身に回れば死ぬ」
ジョニィも拳銃を取り出して、弾を詰める。
一方の妹紅は、少年の手を見ていた。
「ああ~やっぱり毒のところ抉って火で消毒するついでに血清打たないとな~。ガラガラヘビの血清で大丈夫かな~」
多分それは間違っているぞ妹紅。
妹紅は振り返って、
「お~い、ジャイロ。アタシのバッグ取ってよこしてくれ!」
大声でジャイロを呼ぶ。
呼ばれたジャイロは顔をしかめて、
「ったく……俺はパシリじゃねーんだけどよー」
ぶつくさ言いながら妹紅のバッグをひっつかんで投げる。
そのやり取りの間、少年は何をやっていたかというと、
「ありがとう~ありがとう~~ありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとう~」
と、膝立ちになって妹紅を拝んでいたりするのであった。
「ほら、火だ。今から手当てしてやるからな」
妹紅が手のひらから火を出し、そこら辺の枯れ木に火をつける。
「さ~て、それじゃ始め……って」
そう意気込んで、妹紅が振り返ると、少年はベルトを首にかけていた。
「何やってんだてめェェェーッ!」
自殺寸前のマックイイーンを見たエルメェスのごとく、妹紅は叫んだ。
突然の大声に少年は驚き、ベルトを落とす。
「何って……麻酔だよォ~麻酔。今から毒のところだけ抉るんなら痛み止め必要だろう? 俺だけがぶっ飛んだ方法だぜ……」
したり顔でナイフを取り出す少年。
その肩を、妹紅は両手でつかんだ。
「……ガキ、知ってるか?」
「……何を?」
「世界初の手術は、紀元前のインドで行われた……麻酔無しでなッ!」
少年は、今から何をされるのか悟った。
「ヒッ……」
妹紅と少年を取り囲むように、炎が燃え上がる。
「歯を食いしばれ少年……武士道とは死ぬことと見つけたりッ! 一思いに断ち切ってやるッ!」
妹紅の『凄み』に当てられた少年は、すくみ上って動けなくなった。
妹紅の手に握られている『よく切れるナイフ』が炎に煌めいた。
少年の絶叫が夜の砂漠に響き渡った。
←To be continued...
本日の走行距離は約95キロ。
次の水場まで、約50キロ。
夜の砂漠は寒い。
影ができるほどの星明りの下、ジャイロとジョニィはたき火を囲んでいた。
「おい、ジャイロ。交代の時間だ」
近くで周囲を見ていた妹紅が振り返り、ジャイロの肩を叩く。
「あいよ。何か見逃してねぇだろうな?」
「見逃してないわよ。私は夜目がきく方だ」
「ニョホホ。ま、ここからは俺にまかせなさい」
ニョホニョホ笑いながら、ジャイロと妹紅は拳を突き合わせる。
「で、ジョニィは背を丸めて何やってるわけ?」
妹紅は、悪戯っぽい笑みを浮かべてジョニィの手の中を覗き込んだ。
コルク。
ジョニィの手にはコルクが握られていた。
彼はそれを親指で何度も弾く。
「ほほう、早速練習か。精が出ますねぇ」
「ま、早く回転を使いこなせるようになりたいからね」
「で、どうなのよ。順調?」
「う~ん……」
ジョニィは唸って、コルクを眼前にかざす。
「『イメージ』はあるんだ……『回転』のイメージはな……」
「と、言うと、どんなイメージ?」
「そうだね……風の中、木の葉がバレエ・ダンサーのようにくるくるって『舞うイメージ』っていうか……」
そういって、ジョニィは再び親指でコルクをはじき始める。
ビシ、ビシッと何回かはじくと、グルグルとコルクが回転を始めた。
「「おおっ!」」
二人は感嘆の声を漏らす。
「「おおおおおおっ」」
回転するコルクはジョニィの腕を駆け上がっていく。
「ま、回っ……ジャイロ!」
ジャイロを呼ぶジョニィ。
慌てるジョニィの肌にぴったり張り付いて駆け上がるコルクは、彼の肩をカタパルトにして空高く飛ぶ。
ジョニィに呼ばれたジャイロは、そっぽを向いていた。
「なんだジャイロ! 見てないのかよ~ッ」
がっかりした表情で、ジョニィはジャイロを呼ぶ。
「今見てくれなかったか? 何で見てないんだ!?」
なおもジャイロはそっぽを向く。
「凄かったんだ! 絶対に回ったぜッ! コルクが! 妹紅も見たよな!」
「うん。すっげー回ってた」
あまりにもジョニィが騒ぎ立てるので、ジャイロはため息をついて振り返った。
「なんで俺が四六時中あんたらを見てないといけないんだ? 本当にそーなのかー? もう一回やって見せろよ」
そう言われたので、ジョニィはコルクを握ろうとして、
「あれ?」
一つのことに気付いた。
コルクが、無い。
「おかしいな……コルクどこに落ちた?」
コルクが見つからず、辺りをきょろきょろと見まわすジョニィ。
それを見て、クスクスと笑う妹紅。
「背後は岩だから、飛び出すはずはない……どこだ? 消えるなんておかしいぞ」
しゃがみこんで、コルクを本格的に探し始めるジョニィ。
そんな彼のフードに、ぽふん、と何かが落ちた。
「ポン?」
思わず上を向くジョニィ。
そこには、馬のケツ。
妹紅は、口を塞いで笑いをこらえはじめた。
「なんだ今の音は……どこにあったんだ?」
ついに背中を探り始めるジョニィ。
それに手を触れた。
「うおっ! ちょっと湿ってる!! 背中落ちてく……!」
そして青ざめた。
「う……ぷっくくく……」
妹紅は笑いを抑えられなくなってきている。
「まさか! 馬のお尻の……ッ!」
「アッハハハハハ!」
ジョニィの挙動に、妹紅は声高らかに笑い始めた。
「二人とも、あそこに誰かいるぞ」
バカをやる二人に、ジャイロが冷や水を浴びせた。
ジャイロが指差す方向には、馬に乗っている選手の人影が。
「まさか夜通しで走る気かな? あいつ」
ジョニィは表情を一変させて、人影を見る。
「考えられねぇな……夜の闇で馬が事故を起こすだけだ」
顔をしかめて、人影を見つめるジャイロ。
「多分こっちに来ているんじゃないか? ほら、火を焚いてるんだし」
笑い転げるのをやめて、妹紅も人影を見る。
「ジョニィ、さっきこのルートは『変な奴ら』ばっかりと言ったよな。二人とも、武器は持ってきてるのか?」
妹紅は、ホルスターに収まっている銃身を切り詰めたウィンチェスターを注視した。
「ウィンチェスターだ。薬室に入ってる1発と弾倉の6発。あとはよく切れるナイフが一本」
ジャイロに耳打ちをする妹紅。
「ジョニィ、お前はどうだ?」
ジョニィは、バッグの中をあさり始める。
「と、とりあえず銃は持ってきたけど……撃ったことはない……」
がさごそと自分の銃を探していると、ジャイロのバックに肘が当たって、中身が出てくる。
思わず、それを見てしまう。
それは、『紋章』のついた書簡入れだった。
「『紋章』がついた書簡入れ……盗んだのか? 『紋章』ってヨーロッパでは領主とかの許可なしでは持つことが許されない宝だが……」
ジョニィは、書簡入れからはみ出している紙を調べてみる。
どうやら新聞のようだ。
新聞には、
『少年死刑確定。罪状は反逆罪』
『ツェペリ法務官、少年有罪に抗議するも認められず』
『裁判やり直しに五千万ドルが必要』
といった文字が並ぶ。
「おたくは他人の物を盗み見る教育を受けて育ったのか?」
ジャイロの低い声が、ジョニィの耳に刺さった。
振り向くと、ジャイロが立っている。物凄い殺気を撒きながら。
「……べ……別に盗み見たわぜじゃないぜッ! だが、アンタ……何者なんだ! この国の人間じゃないのか?」
見張りに戻ろうとするジャイロに、冷や汗を流しながらジョニィが質問すると、ジャイロは目線だけを彼に向けて、
「開けるのは自分の荷物だけにしとくんだな」
とだけ言った。
「おい、アイツやっぱりこっちに来てるぞ!」
さっきの流れを気まずく思った妹紅が、声を上げて人影を指さした。
「気球も着陸しているようだし、もはや走行妨害ありのルートになったのかもな。奴を絶対に近づかせるな」
ジャイロも、人影を見据えながら、鉄球をなでる。
ジョニィも拳銃を持って、馬に乗る。
人影が、近づいてきた。
「よォーしそこで止まれェェーッ! それ以上こっちに近づくなッ!」
ジャイロは大声で叫び、人影を静止を促す。
しかし、人影はこちらに近づいてくる。
「おめーだよッ! おめーに言ってんだッ! そこで止まれと言ったんだッ!」
怒鳴るジャイロ。
人影が、止まった。
「う……撃たないでくれェ~」
怯えた少年の声を、人影は出した。
「怪しいもんじゃねぇッ! 火が見えたから来たんだよォォ~ッ!」
馬上で慌てる人影。
「アイツ……まだガキじゃないの」
人影を見て、妹紅が一言漏らす。
「……アイツが見えるのか? この暗さで?」
横で拳銃を握るジョニィが、目を丸めて妹紅を見る。
「私は夜目がきくのよ。どれ、アタシが様子見てきてやるよ」
妹紅は勝手に人影へと向かい始める。
と、妹紅の肩をジャイロが掴んだ。
「なんだよ」
妹紅は、ジャイロの顔をにらむ。
「アイツがまだ怪しいか、そうでないかはまだわからねぇぞ」
「大丈夫だって」
怪訝な表情のジャイロ。
対してにやけ気味の妹紅。
彼女はジャイロの手を振り払って、歩き出す。
「どうしたんだ? そんなに慌てて」
妹紅が人影の横に立つ。
馬上の人影は、そばかすが目立つ顔の少年だった。
「噛まれちまったんだよォ~凄くヤバいッ!」
慌てる少年は、左手を差し出す。
左手の指は、明らかにおかしい色に染まって火ぶくれを起こしている。
「何に噛まれたんだ? ガラガラヘビか?」
「毒トカゲだ! 黄色と黒のシマシマの奴ッ!」
「わかった。わかったから落ち着け。まずは馬から降りろ」
妹紅が少年の相手をしているのを、ジョニィとジャイロは遠くから見る。
「ウソの傷かもしれねぇぜ」
ジャイロは、怪訝な表情を崩さない。
「黄色と黒のシマをしたトカゲと言えば『スポテッド・サラマンダー』っていう種類だ。毒が全身に回れば死ぬ」
ジョニィも拳銃を取り出して、弾を詰める。
一方の妹紅は、少年の手を見ていた。
「ああ~やっぱり毒のところ抉って火で消毒するついでに血清打たないとな~。ガラガラヘビの血清で大丈夫かな~」
多分それは間違っているぞ妹紅。
妹紅は振り返って、
「お~い、ジャイロ。アタシのバッグ取ってよこしてくれ!」
大声でジャイロを呼ぶ。
呼ばれたジャイロは顔をしかめて、
「ったく……俺はパシリじゃねーんだけどよー」
ぶつくさ言いながら妹紅のバッグをひっつかんで投げる。
そのやり取りの間、少年は何をやっていたかというと、
「ありがとう~ありがとう~~ありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとう~」
と、膝立ちになって妹紅を拝んでいたりするのであった。
「ほら、火だ。今から手当てしてやるからな」
妹紅が手のひらから火を出し、そこら辺の枯れ木に火をつける。
「さ~て、それじゃ始め……って」
そう意気込んで、妹紅が振り返ると、少年はベルトを首にかけていた。
「何やってんだてめェェェーッ!」
自殺寸前のマックイイーンを見たエルメェスのごとく、妹紅は叫んだ。
突然の大声に少年は驚き、ベルトを落とす。
「何って……麻酔だよォ~麻酔。今から毒のところだけ抉るんなら痛み止め必要だろう? 俺だけがぶっ飛んだ方法だぜ……」
したり顔でナイフを取り出す少年。
その肩を、妹紅は両手でつかんだ。
「……ガキ、知ってるか?」
「……何を?」
「世界初の手術は、紀元前のインドで行われた……麻酔無しでなッ!」
少年は、今から何をされるのか悟った。
「ヒッ……」
妹紅と少年を取り囲むように、炎が燃え上がる。
「歯を食いしばれ少年……武士道とは死ぬことと見つけたりッ! 一思いに断ち切ってやるッ!」
妹紅の『凄み』に当てられた少年は、すくみ上って動けなくなった。
妹紅の手に握られている『よく切れるナイフ』が炎に煌めいた。
少年の絶叫が夜の砂漠に響き渡った。
←To be continued...
次回予告
魔理沙「魔理沙だぜ。不死鳥はともかく、フランにも出番がないぜ」
ディアボロ「ディアボロだ。筆者からの扱いがひどいのは気のせいか?」
魔理沙「フランはギャグ作品だからしょうがない」
ディアボロ「ギャグで死んでいいのか!? オレの持ちネタは死ぬだけか!?」
魔理沙「まあ、『永遠に終わることのない程度の能力』だから仕方がないぜ」
ディアボロ「まさか、ゲストを呼んだ張本人がゲストをマスパで消し飛ばしたりしないだろうな……?」
魔理沙「まさか。私自身が手を下すわけが無いぜ」
ディアボロ「というと…………」
魔理沙「本日のもう一人のゲスト、幽香さんの入場だぜ」
次回ッ! 不死鳥は失敗を恐れない第13話 『砂漠で生まれなならず者』 お楽しみにッ!
幽香「なんかアンタの顔、気に入らないからぶっ飛ばすわね」
ディアボロ「オレのそばに近寄るなァァァー!」
魔理沙「流石幽香さん、私にはできないことを平然とやってのけるぜ……」
魔理沙「魔理沙だぜ。不死鳥はともかく、フランにも出番がないぜ」
ディアボロ「ディアボロだ。筆者からの扱いがひどいのは気のせいか?」
魔理沙「フランはギャグ作品だからしょうがない」
ディアボロ「ギャグで死んでいいのか!? オレの持ちネタは死ぬだけか!?」
魔理沙「まあ、『永遠に終わることのない程度の能力』だから仕方がないぜ」
ディアボロ「まさか、ゲストを呼んだ張本人がゲストをマスパで消し飛ばしたりしないだろうな……?」
魔理沙「まさか。私自身が手を下すわけが無いぜ」
ディアボロ「というと…………」
魔理沙「本日のもう一人のゲスト、幽香さんの入場だぜ」
次回ッ! 不死鳥は失敗を恐れない第13話 『砂漠で生まれなならず者』 お楽しみにッ!
幽香「なんかアンタの顔、気に入らないからぶっ飛ばすわね」
ディアボロ「オレのそばに近寄るなァァァー!」
魔理沙「流石幽香さん、私にはできないことを平然とやってのけるぜ……」