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不死鳥は失敗を恐れない 第十三話

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匿名ユーザー

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「次は、消毒兼止血だな……」
 手から高温の炎を噴出させる妹紅は、容赦無く傷口に手を押し当てる。
 もう少年は叫ばない。
「よーし、こんなもんか。良かったな、少年。毒はあまりまわってないみたいだ」
 そばかすの少年の手に包帯を巻き、妹紅が微笑む。
「ぶくぶくぶく……」
 一方の少年はあまりの痛さに泡を吹いていた。
「ま……まあ、大丈夫だよな?」
 妹紅は笑顔をひきつらせながら、彼のそばにたき火を設ける。

 不死鳥は失敗を恐れない 第13話 『砂漠で生まれたならず者』

 たき火を設け終えると、血に塗れたナイフを指先でつまんで、
「おい、ジャイロ。これを洗ってくれよ」
 ジャイロの足元に放り投げる。
 少年の血にまみれたナイフが、ジャイロの靴に当たる。
「なんで俺がそんなことやらねーといけねーんだよ!」
 ジャイロは怒鳴ってナイフを妹紅のもとへ蹴ってよこす。
 蹴られたナイフはたき火の中に入り込んだ。
「うわ! もうちょっと慎重に蹴れよジャイロ! 焼き鈍しが起こったらどうすんだ!」
 妹紅はごちゃごちゃ言いながら、たき火の中で熱く熱せられるナイフを難なく取り上げる。
「うわぁ……血が焦げ付いてやがる……」
 妹紅は顔をしかめて、ナイフにこびりついている焦げを指ではがす。
「ニョホホ……ざまあみやがれ」
 その様子を見てほくそ笑むジャイロの後ろで、ジョニィは紙を広げた。
「ジャイロ、アイツの名前が参加者名簿にあるぞ。『アンドレ・ブンブーン』って名前だ。ファーストステージで10位に入っている」
「へーっ、虫の羽音みてぇな苗字してる……」
 軽口を言おうとしたジャイロは、足に違和感を覚えた。
 ふと足へ視線を向けると、ブーツの皮が剥がれている。
「オレの……ブーツが?」
 若干の緊張感を覚えるジャイロ。
 視線を妹紅と少年――アンドレへ向ける。
 妹紅が気絶している少年の額をぺちぺちと叩いている。
「ジャイロ、ちょっと聞いてくれ。『ブンブーン』の事だが……」
 ジョニィはジャイロの方へ近づいてファーストステージの順位表を見せる。
「9位が『ベンジャミン・ブンブーン』、11位が『L.A.ブンブーン』。同じ姓だ……三人いるぞ」
 ジャイロはジョニィと一緒になって、順位表を見ると、突然大きな音がした。
 三人は、音の方向を見た。
 馬に乗って、二人の男がこっちに向かってきている。
 一人は毛皮の帽子をかぶり、ゴーグルをつけている。
 もう一人は、フードを被り、顔の下半分が鉄に覆われていた。
 妹紅はすぐにジョニィの方へ駆け寄る。
「アイツらは何なんだ? ジョニィ、知ってるか?」
「僕が知るわけがない! わかることは、アイツら二人がこっちに向かってきているってことだけだ!」
 ジョニィの答えを聞いて、
「ちっ……ハジキを使うのは苦手なんだよな~」
 愚痴りながらも妹紅はウィンチェスターを取り出す。
「ハメられたんだ。チームだよ。あの2騎とそこで転がっている奴は3人チームだ!」
 ジャイロが目の前の2騎をにらみ、
「妹紅とジョニィは右の奴を撃てッ! オレは左の奴をやるッ!」
 そう言ってホルスターに吊り下げてある鉄球に手を伸ばすと、足に痛みが走った。
 痛みの根源を見ると、足の甲から何かが飛び出してブーツを切り裂いている。
「なに……!? なんだ? 足が……オレの……」
 ジャイロの身に起きた異変を察知したジョニィが、ジャイロを注視する。
「ジャイロッ! その足はいったいッ!」
 その隣で、妹紅が大声を上げて、
「だぁ~ッ! 二人とも、もう撃つからな!」
 ウィンチェスターを連射する。
 轟音と共に鉛玉と硝煙がばらまかれるが、
「ちくしょう! こんな目に遭うならもっと射撃練習しとけばよかった!」
 一発も当らない。
「ジョニィ、カバーしろ! 速くッ!」
 弾をリロードしつつ、妹紅は二人の方を振り向く。
「それどころじゃない! ジャイロの足の形がおかしいんだ!」
「足の形ィ? 何が起きてんだよ」
 七発目を弾倉に入れた妹紅が、ジャイロの方を見ながら2騎の方へ威嚇射撃をする。
「何が起きてるかだって? んなもんわかるか! 左足の皮膚が鋼のように固くなってる……すっげー痛いし……その上それがどんどん脚の上に登ってきている!」
 ジャイロの足から、血が噴き出してそこから鈍く輝く刃が姿を見せる。
「足の中に何かの塊が入っているみたいだ!」
 それを見て、ジョニィは視線を気絶している少年に向ける。
「そこで泡吹いてるアンドレ・ブンブーンがやったことか? それとも近づいている二人の仕業ってことか?」
 ジョニィを横目に、ジャイロは歯ぎしりをする。
「それは間違いない! だが、何をされたのかわからない!」
 激痛にかられ視線を足に向けると、スネからも刃が出てきている。
「この足で『アイツの治療をした妹紅のナイフ』を蹴った! 何かの毒か……病気みたいなものを感染させられたのか?」
「おい、どんどん近づいてきてやがる! とにかく奴らを何とかしてくれ!」
 妹紅が叫んで、ウィンチェスターのリロードをしようとすると、ひとりでにウィンチェスターがバラバラになった。
「えっ……」
 呆然とした顔で、木のストックだけになったウィンチェスターを見る妹紅。
 その隣では、勝手にばらけるリボルバーを見て呆然とするジョニィ。
 二人が空中に浮かぶ銃の部品を見る。
 それは一人の男に向かって飛んで行った。
「「ジャイロ! 危ない!」」
 銃の部品が、ジャイロの脇腹に当たる。
「おいてめぇら! 何やってんだ!」
 怒鳴るジャイロに、二人は口をそろえて答えた。
 突然、銃が壊れたと。
 弾倉部分の抜けたリボルバーを持つジョニィの顔に、冷や汗が噴き出てくる。
「古い銃なんかじゃないんだ……使ったことだってそんなにない! でも急にバラバラになった……それに、それに……」
 銃を持つジョニィの手が、ジャイロの方へと向く。
「引っ張られていくんだ! 銃が、君の方に!」
 拳銃を持つジョニィの手は、グンッ、とジャイロの方へと引き寄せられている。
 再び、ジャイロは自分の足に激痛が走るのを感じた。
 視線を足に向けると、なんと、銃の部品がめり込んでいる。
「おいっ! ジャイロ、『ナイフ』も君の方に近づいて行ってる!」
 ジョニィの叫びに、ジャイロと妹紅は視線をナイフに向けた。


 突然の出来事に動揺する三人を見て、フードの騎手――ベンジャミン・ブンブーンはほくそ笑んだ。
 その隣で走るゴーグルをつけた騎手――L・A・ブンブーンは、
「アンドレ兄さん動かないよ……しっかりトカゲの毒を消毒できたかなぁ~」
 走りながらべそをかいている。
 その様にベンジャミンはイラつき、
「うるせぇなさっきからてめーは!」
 怒鳴り散らす。
「しかもL・A! いつまでオレのケツにくっついて来てんだ? おめーは奴らのあっち側に回り込めって言っただろッ! 俺らの作戦はよォ、挟み込んで完了だろっ!」
 続けざまに怒鳴る上に、
「本当にすっトロイ野郎だぜ。家を捨てて売春婦になったあのビッチにそっくりだ……!」
 小言まで言う始末。
「ぼ、ぼくらのお母さんはコウノトリだろ? 兄さんが言ってた。コウノトリがぼくらのお母さんだって! ぼくって、コウノトリに似てるの……?」
 L・Aが弱気に反論すると、ベンジャミンは、
「やかましいぞッ! 早く奴らの向こう側に回り込め!」
 怒鳴ってL・Aをの馬に鞭を入れて二手に分かれた。


 血に塗れた片刃のナイフが、ジャイロの方を向く。
 それを見て、ジョニィは一つの事に気付く。
「あのナイフは『鉄』だ……そういえば皮膚にめり込んで行っている銃の部品も『鉄』でできている……もしかして、磁石に『鉄釘』が引き寄せられるように、『鉄』が君に引き寄せられているんじゃないか?」
 ナイフが、完全にジャイロの方を向く。
「血液の中にも『鉄』は存在すると聞く……ヤツら何か『鉄』をしているんじゃないのかッ!」
 ナイフが、ジャイロの方へと飛び出す。
 だが、そのナイフは炎に包まれて落ちてしまった。
「だったら、錆させりゃいい。燃焼させられた鉄は、空中の酸素と結合して錆になるわ」
 妹紅が、二人に錆まみれのねじを見せつけた。
「そして錆まみれの鉄は、磁石に引き寄せられない」
 妹紅が手を放しても、ねじはジャイロの方へ向かわない。
「ふっ……あんがとよ。うりゃああああああ!」
 ジャイロは少し笑って、鉄球をベンジャミンに投げつける。
 飛んでくる鉄球の姿を見たベンジャミンは、鉄球に手をかざした。
 すると、見る見るうちに鉄球は削れていって、 彼の親指と人差し指の間に挟まるほどの大きさになってしまった。
 その光景を見て、三人は絶句した。
「おい、ジョニィ、見たかよ……」
 妹紅は、手を震わせてベンジャミンを指差した。
「ああ。鉄球が空中で無くなった……」
 ジョニィも、目の前の非現実的な出来事に冷や汗が止まらない。
「ジョニィ、鉄球も、鉄球というからには『鉄』なんだろ?」
「ああその通りだ…………でも何をどうしたら鉄が削れるんだ!? 何なんだこいつらはッ!」
 二人が目の前の光景に狼狽していると、目の前をL・Aが横切り、次にベンジャミンが横切る。
 囲まれてしまった。
「こいつらは完全に違う……」
「どういうことだ? 何が違うんだ?」
 妹紅が、ジャイロの方を向く。
「あのミセス・ロビンスン……あんなのとは全然違うッ! 思い出してみろ。アイツは『眼窩に虫を飼ってそれを操っていた』そういうのとは全然別格だ……」
 銃の部品が、彼の足に埋まり、さらに太ももから刃が飛び出る。
「『超越する何か』を身につけてこのレースに参加している」
 その言葉に、妹紅はハッとなった。
 目の前の敵が持つ『超越する何か』。
 思えば、自分もアイツもアイツの従者もその『超越する何か』を持っている。
 例えばそれは不死の体。自分の身に宿す炎。永遠と須臾を見極める力。狂気の瞳。
 敵も、自分とは別だが、よく似たものを持っているということだろうか。
「おい、アイツが目を覚ましたぞ!」
 妹紅の思考は、ジョニィの叫びによって打ち切られた。
 ハッとなってジャイロと妹紅は馬に乗りこもうとする少年――アンドレ・ブンブーンを見た。
 馬に乗りこもうとする彼の背中に、ジャイロと妹紅は一瞬だけ、黒い人型を見た。
 ジャイロは、わが目を疑った。
←To be continued...

  次回予告
魔理沙「魔理沙だぜ。実はこの次回予告以外の出番がないぜ」
霊夢「それは私もよ」
妖夢「出番無いのは私も同じです」
アリス「奇遇ね。私もよ」
上海人形「シャンハーイ」
魔理沙「お前ら…………」
 次回ッ! 不死鳥は失敗を恐れない第14話『超越する何か』 お楽しみにッ!
魔理沙「これが……出番がない奴らの友情ってやつなのか!」
吉良吉影「…………」(←出番ほしくない人)

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