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悪役幻想奇譚 第四話

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匿名ユーザー

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ここ永遠亭の一室で2人の男が話しあっている。
「そうだったのか、それで気付いたら森にいたのか」一人は『元』暗殺者リゾット
「ああ。ムカつくが今となってはもうどうでもイイ」一人は医者チョコラータ
屋根裏から落ちてすぐに鈴仙が暴れ、病人扱いされて今は治療室にいるためここにはこの2人しかいない。残された2人はこうして他愛のないことを話している。
「それでだチョコラータ、確認するがお前はもう『殺し』はしないんだな?」
少し声のトーンを落として確認するようにリゾットが聞いた。
「ああ。別に罪悪感とか良心の呵責とかそんなのは全くねぇし、今でも平気で殺せるだろうが、もう興味はない。今はただ『殺す』ことよりも『治す』ことのほうが好奇心を満たしてくれるようになっただけだぜ。こっちの世界に来てから・・・まあ話すほどのことでもねえか」天井に目をやり、何かを思い出すようにつぶやいていた。
チョコラータが『殺し』をしなくなった理由がいささか気にはなったが、今は仕事が優先と思い鈴仙のことについて話そうと口を開いた。
「あ~・・・オレの相棒と言ってたあいつのことについてなんだがな、」
ここに住んでいたんだが何か覚えていないか?そう続けるまえにチョコラータが遮って話し出した。
「心配するな。永琳は腕のいい医者だ。ちゃんと治してくれるぜ」
どうやら覚えていないどころか完璧に病人と認識されているようだった。『ちゃんと治す』と言っているし、実際に永琳は腕のいい医者なのだから心配することはないだろうと思っているが・・・治療室から響いてくる叫び声が気になる。(「ヤダバアァァーーーーッ!!!」)・・・・・本当に大丈夫なのだろうか?(「無駄無駄無駄無駄無駄ァアア!!」)・・・本当に治療なのだろうか?(「死にさらせーーーーーーッ!!」)・・・・本当に医者なのだろうか?(「木工ボンドでいいか」)・・・本当に治す気はあるのだろうか?
「ありゃあ統合失調症だな。妄想でここに住んでいたと思い込んでいるんだろう。自分はウサギとか思い込んだりして、ウサギ耳のアクセサリーをつけたりなんかしてな。妄想が激しいようだからイミノジベンジール系のカルピプラミンを投与しておく。今、永琳に診てもらっているが・・・」と、そこまで言ったところで叫び声が止んだ。
「どうやら治療は終わったようだな」
ゆっくりと扉が開き、リゾットの前にやってきたのは・・・
ウサギ特有の長い耳を持ち、

具合でも悪いのかマスクのようなものをかけ、

鉄球のような大きく力強い肩を持った

「・・・・・・・・・・」

いともたやすくえげつない行為を行ないそうな・・・ウサギみたいな何かだった。

チョコラータはその姿を見て満足げに頷き言った
「うまくいったようだな。それじゃあ治療費だが「ディ、ディー・・・フォー・・・シー・・・?」・・・・」ぼそりとリゾットは頭に浮かんだ言葉を口にした。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
沈黙がしばらく続いた後に、チョコラータは『ウサギみたいな何か』を連れて治療室に戻り、しばらくしてまた部屋にやってきた。
「ありゃあ統合失調症だな」
「ああ・・・そこからやり直すのか・・・」
「・・・」
しばらくの後、今度はきちんと治療をしたのか(そもそも病気でもなんでもないのだが・・・)
「とりあえずクエチアピンを処方しておこう」
の声とともに永琳、てゐ、チョコラータにつれられて、今度は鈴仙が戻ってきた。なにやらやつれているが、いともたやすくえげつないことでもされたのだろうか?
「それじゃあ治療費だが・・・」至極当然のように治療費を請求してくるあたりに腹黒さが見えてくる。
「ああ、いや、だからそいつのことについてなんだがな」彼女がここに住んでいたことをさっさと伝えなければますます厄介なことになってしまう。そう思い、伝えようとした矢先
「大丈夫だ。こういった病気は時間がかかるが根気よく治療すればきちんと治るから心配することはねーぜ」と、いったようにいちいちこちらの話を遮ってくるのだ。本当は気付いてんじゃね?こいつら?
「いや、オレが言いたいのはだな」
「心配することないわ。ウサギ耳もきちんと木工ボンドで補強しておいたから」
「いや、誰もそんなこと心配していないぞ。オレが言いたいのはだな」
「ああそうだ、カルテを作らねーとな」だああ!!なぜこうも人の話を聞かないんだ!?
「いいから聞け、こいつはオレの相棒じゃあない!」お前らの家族だ!そう続けようとしたとき、
「ッ!!」
リゾットの頬に鋭い痛みが走った。理解するのに数秒かかったが、どうやらオレは頬を殴られたらしい。
目の前には怒りと、そしてどこか悲しげな顔をした永琳がいた。
「どんなことになっても、あなたの相棒なんでしょ?家族でしょう!確かにあなたの仕事上、相棒が病気になったら足手まといかもしれない。でも・・・家族であるあなたが彼女を支えてあげなくって、誰が支えるっていうの!!」
リゾットは本来短気な性格ではない。平静さを失えばそれだけ危険が増すことを知っているからだ。だがこれはもはや『任務』ではない。本来チョコラータに危険はないことを確認した時点で彼の『任務』は終了していたのだ。怒ったとしてももう問題はないだろう。
「・・・・・・いや、だからお前らだろ・・・」
だから多少口調がぶっきらぼうになってしまっても仕方ないことだろう。
「(ここまで人の話を聞かないやつらはキレたギアッチョ以来だ。いったん撤収してまた後日手紙で教えてやろうか?)」なんだかもう投げやりにそう思っていたとき
「ッ!!!!」
頬にまた痛みが走った。俺は別に右の頬を殴られたからといってわざわざ左の頬を差し出すような精神はもっちゃあいねえ。もはや話し合いは終わりだ。
「確かに医者だって患者を支えることは出来るわ・・・でもね、大切なのは家族の支援なのよ。医者になんでもかんでも任せっぱなしにしちゃあだめ。見損なったわ・・・リゾット」
もういい。なんだこいつらは?人の顔をパンパン殴りやがって、そういう芸風が売りの芸人か?何度も言うが話し合いは終わりだ・・・パーでだめならグーで攻める。それでダメならチョキをテメーらの目玉に突っ込んでやるぜ!!メーン!!
「だから聞け!こいつはこの永遠亭にいたんだよ!」
「なに!?初診じゃあなかったのか。しかしこんな名前のやつを忘れるものなのか・・・」
「そーそー。こんなデンプンまみれの名前を忘れるわけがないよ!だいたい髪の毛が紫って何?消毒するときに間違ってヨウ素液かぶっちゃったとか?」
患者扱いしている者をこうもからかうってのは医者としてどうなんだ?
「ッ!!」
また殴られたわけではないが、リゾットの背に言いようのない悪寒が走った。
「(これは『殺気』だ。だがオレに向けられているわけじゃあねぇ。誰の殺気かは、まぁ考えるまでもないか)」そう思い、殺気の源であろうヨウ素液を被って紫色に変色したデンプンの塊に目を向けた。
それはユラりと立ち上がり・・・
その真っ赤な眼で対象を見据え・・・
それから・・・
吼えた
「テンメーらいい加減にしろよおおおおおおお!!!誰がデンプンじゃあああああああああ!!!!」
その殺気を感じてさすがの二人もびびった。
「ま、まぁ待てデンプン!病み上がりで怒ったら・・・耳が取れるぜ?」
「そ、そーそー落ち着いてデンプン!髪の毛の色なんてすぐに染められるから!ええと・・ほら?塩素・・・とかで?」
二人の言葉を聞き、ついに鈴仙はプッツンした。

「オラオラオラオラオラオロアロアオラオラオロアオロアロオロ?「(あ、舌噛んだ)」オラオラ!!・・・オラオラオラオラオラオラ!!!オオオオラアアアアア!!!!!」
「ィヤッダバァアアアアア!!!!!!」
「う!!うわらば!!!!」
二人は部屋の壁を突き破り吹っ飛んでいった。
「ふぅ・・・やれやれだわ」
星になった二人を眺め一息ついた時
「ッ!!」
またしてもリゾットの背に悪寒が走った。
「(てゆーか・・・オレの役目って何だ?『殺気』の存在を伝えるだけか?なんだ?『殺気インジケーター』かオレは?)」背中が凍るほど強い殺気を感じたにもかかわらずげんなりしていたリゾットであった。
鈴仙が後ろを振り向くと
そこには慈愛に満ちた笑顔で養豚場の兎を見つめる永琳の姿があった。
「貴女はここに居てくれて構わないわよ」
永琳は鈴仙の肩に手を置いて言った。
「し、師匠・・・」
ドドドドドドドドドドドド
肩に置かれた手に力がこもっていく
      ドドドドドドドドドドドド


         ドドドドドドドドドドドド


「アタシの大切な家族に傷つけやがってからに!!!テメーぶっ殺してやるッ!!!」
「し、師匠オオ!!絵柄変わってますけどおおおおッ!!!」
「やかましい!!さっさと来い!!一生ただ働きじゃ!!」
「ア―――――――――ッ!!!」

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