アットウィキロゴ
ジョジョの奇妙な東方Project@Wiki
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

ジョジョの奇妙な東方Project@Wiki

悪役幻想奇譚 第十一話

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
吉良たちが炊事場でお茶を淹れている間に、魔理沙は霊夢からいろいろと聞くことにした。

「で、あの変態はいったい誰なんだ?」
「変態?ああ彼のことね」
彼女らの言う『変態』とは、先ほどプッチの変わりに紅茶を淹れると言った人物のことである。
彼を一言で説明するならば『牛』という動物に例えるのが適切であろう。
いや、これはなにも『牛のように雄々しい』といった空気を纏っているからではない。
ただ単純に格好が『牛』なのだ。
「牛の妖怪か?」
「違うわ。人間よ。プッチが一緒に連れて帰ってきたのよ」
不機嫌そうに言った。それはそうだろう犬や猫ならまだかわいいからいいものの、牛のコスプレをした変態なんてつれて来られたらたまったものじゃあない。どうせだったら『牛』そのものを連れてきたほうが食料にもなって家計が助かるというものだ。

さて、『牛』扱いされていることなどつゆ知らないここ炊事場でも、吉良が新しい人物について、つまりはまぁ牛の変態について質問をしていた。

「でだ、君は一体だれなんだい?」
妖怪ならまだ納得できるが人間だとしたら変態だな。
そう聞かれ、男はお湯を注ぎながら返事をした
「オ、オレか?オレは『リキエル』だ!アポロって名前じゃあねぇぞ。間違えんなよ?」
誇らしげに自分の名前を言ったはいいものの、お湯を注いでいる最中に目を離してしまったものだから、熱湯を手にこぼしてしまった。

「あぢぃッ!!」
ビクッ!と身体を縮こまらせたかと思うと、リキエルはその場にしゃがみこんでしまった。
「大丈夫か?」

熱い・・・熱湯をこぼしちまった・・・熱い・・・熱い熱い熱い
やけどしたのか?手を冷やさないと・・・いや、その前に床を拭かないといけない!
いや違う紅茶だ!神父の変わりに紅茶を淹れるんだ。
どれからだ!?
「おい・・・どうした?」
しゃがみこんだまま震えているリキエルを見て、吉良は不安になってきた。
まさかこいつ・・・いきなり暴れ出したりなんてしないだろうな?
しかし吉良の声はパニックになっているリキエルには届いていなかった

えと、まず最初に手の処置をして、違う!床を拭くんだ。それから紅茶を淹れて、ああ違うッ!!紅茶を淹れる前に手の処置をして!違う違う
早くしないと!怒られちまう!どれを・・・うヴぇ・・・く、苦しくなってきた・・・
「く、苦しィィッ!息ができねッ・・・息がッ・・・」
息が・・・できねえェ・・・助けテ・・・神父・・・神父はどこだ

「(なんだこいつは・・・今度はいきなりプッチのほうを見たぞ)おい、こいつ大丈夫か?」
一切行動を起こさないプッチに吉良が聞いたが
「大丈夫だ」の一言を言ったきり、相変わらずプッチは何もしなかった。

神父・・・神父は何もしねえ・・・オレが苦しんでいるのに・・・
違う・・・神父はオレを信頼しているんだ。
まぶたは・・・

降りてねえッ!!平気だ!!

スッと、リキエルは立ち上がった
「いや、驚かせてすまねえ。もう大丈夫だ」
『大丈夫』その言葉通り、先ほどまでパニックになっていた人物とは思えないほどてきぱきとした動きであっという間に床の掃除もやけどした手の処置も、紅茶を淹れてしまった。
その様子を見ていたプッチは満足そうに頷き言った。
「さて、紅茶も淹れれたようだ。あの2人も待っていることだろうからさっさと行こうか?」


「ほらよ紅茶だ」
居候のくせになぜか偉そうに紅茶を食卓に置いた
霊夢が少しイラっとした目を向けたが、そんなことを気にせずにリキエルはさっさと紅茶を飲み始めた。
はじめこそ少し気まずい空気だったが、それでもまあ飲食しながら怒れる人はなかなかいないもので、和やかに会話を交わしていった。
シアーハートアタックから預かっていた手紙を2人に渡し、この1ヶ月で何があったのかを話していき、自然な流れでプッチがその間になにをしていたかについての話題になった。
「ここ最近で起こったことはだいたい話したと思うが・・・プッチ、君はなにをやっていたんだ?戻ってこようと思えばいつでも戻って来れただろう?」
紅茶を啜りながら聞いた。しかし湯のみに紅茶とは。新しい文化というものは新しいもの同士の組み合わせだけで起こるものではないのだな。

「ああ、そういえば霊夢にもまだ話していなかったな(問答無用で怒られたからな)」
プッチもまた紅茶を飲んでくつろいでいる。
「そうだったわね。話しなさいよ」
霊夢が言う
「そうだぜ話せよ」
なぜか偉そうに魔理沙も言う
「わかった離そう」
イラっときたのかプッチは湯のみを魔理沙に放った。
「あッ・・・って空っぽか。今のは『離す』じゃなくって『投げる』だぜ」
とっさにキャッチできたようだが、ぶーぶー文句を垂れている。まあそれはそうか。
「ふん。日本語ハ難シイナ。話すさ。そう怖い顔をするな」

「ふむ、何から話したらいいものか」
話す内容を考えているようだが、どうせくだらない悪さでもしていたのだろう。
「とりあえず自分の行いを順番に懺悔していったらいいんじゃあないのか?」

「悪行前提で話を進めないでくれないか?しかしそうだな。順番に話していったほうが混乱することもないだろう」


「そうだなまずは、殺された後のことから話していこうか」


「吉良吉影、おまえに殺されてすぐ、わたしは小町に会った。・・・逐一報告していくのも面倒なものだな。まあいい。閻魔の仕事以外であっちに行くのは久しぶりだったのでね、少し地獄を見に行くことにした。死んでしまった友に会えるかと期待したがそう都合よく会うことはできなかった」
少し、ほんの少しだけプッチは寂しそうな顔を見せた。

生物は行動を続けているかぎり、周りの環境はたえず変化する。
そして人というのは環境から影響を受けやすいものと思われているが、その生き方までをも変えてしまうような環境に出会うことは稀だ。
特にスタンド使いのような、非日常に慣れてしまっているものとなると、そういった環境に出会う数は少ないに違いない。

地獄へ行ってすぐのことだ。わたしはあることに気付いた。
当然と言ってしまえばそれまでのことかもしれないが、わたしが会った罪人たちはみな例外なく『天国』へと行きたがっていた。

「『天国』へ行きたい」

教戒師をしていた頃も、そういう囚人に会ったことは幾度となくあるが、囚人たちはみな口で言うだけで、本当に『天国』を信じているものはいなかった。
しかしここにいるものたちは心から『天国』へと行きたがっている。
そこでわたしは彼らに力を貸してやることにした

「そう決めたはいいものの、力のある協力者になかなか出会えなくてね、『引力』を求め歩き回っていたところ、彼女に出会った」

「『彼女』?わたしの知っている人物か?」

「ああ、紅魔館の門番だ」

「美鈴か。そういえば日ごろの礼として、あの世への片道切符をプレゼントしてやったことがあったな」

((((それって殺しただけじゃね?))))
みんなそう心の中でつっこんだのは内緒だ。

気を取り直し、プッチは昔‐といっても1ヶ月も経っていないのだが-のことを思い返していた。

ここはいわゆるあの世
 一人の男が腕を組み、何か独り言を言っている

「わたしは・・・かつて全人類を天国へと導こうとした。だが・・・ジョースターの『因縁』に邪魔されてしまった。しかしここにはもうジョースターもエンポリオもいない。すばらしいぞ!ここにはわたしの邪魔をするものはいない。そしてここにいる全ての者たちがッ!!みな『天国』へと行きたがっている!!再びわたしの『使命』を果たすときがきたのだ。君のそう思わないか?なぁ・・・紅魔館の門番よ?」
そう言って男、エンリコ・プッチは振り向いた。

「気付いていたんですかプッチさん」
紅魔館の門番こと美鈴がそこにいた。

「それにしてもいいところで出会ったよ。どうやら死人にDiscを入れてもすぐに消滅するようだったからな。スタンドのDiscを少し失ってしまったのだ。まぁ役に立たない能力だったから問題はないのだがね」
プッチはいつになく嬉しそうに、懐から1枚のDiscを取り出した。

「祝福するべきだと思わないか?門番。これからわたしは、いや、わたしたちは再び人類を『天国』へ導くことができるのだ!喜べ!君もこの崇高なる使命の一端を担えるのだ!さぁ!賛美しろ門番!地獄はなくなり、全ての魂が救われるのだ!新しい世界の幕開けだッ!!」
そしてプッチは手に持っていたDiscを美鈴に向かって投げた。
「え?ちょっとプッチさん!?」
とっさのことに反応できず、Discは美鈴の頭へと吸い込まれていった。
そのことを確認すると、プッチは目をつむり、これから流れてくるであろう音楽を身体全体で味わおうと両腕を左右に広げた。

しかし

いつまで経っても音楽が流れる気配は一向にない

「(何かを待つ時は時間の流れを遅く感じるものだが、これはおかしい。妖怪にCDは効果がないのか?)」
「あの・・・プッチさん?」
申し訳なさそうに美鈴が言った
「ん?どうした門番?」

「わたし・・・死んでいますよ?」
気まずい空気が二人の周りを包む

「なんだとッ!!おまえッ!!なぜそれを先に言わない!!」

「言うヒマなんてなかったじゃないですか!!」

「な、なんということだ・・・ヘンデル作『メサイヤ』、ガーディナー指揮、82年録音・・・このわたしの魂を震えさせてくれる名曲が・・・1枚しか持っていないというのに・・・お、落ち着け、素数を数えて落ち着くんだ・・・359、367、373、379、389、397、401・・・」

「あ、あの?私の身体から取り出すことはできないんですか?」

「言っただろう。死んだものへDiscを入れれば消滅してしまうと。生きていると早とちりしてしまったわたしの責任でもあるが、きみの責任でもある。というわけで、わたしに協力してもらうぞ」
転んでもただでは起きない神父であった。

「そんな無茶苦茶な・・・」

「そう嫌そうな顔をするな。これが終わればおまえの復讐を手伝ってやろう。どうだ?どうせ吉良に殺されたのだろう?」
プッチにそう言われ、美鈴はこれまでのことを思い出す

あるときはキラークイーンに爆破され

またあるときはシアーハートアタックに爆破され

またまたあるときは写真の中に閉じ込められ

最終的に口封じのために爆破された・・・

そういったろくでもないことを思い出していると、美鈴はどんどん苛立ってきた。

「あああああああッ!!!」
プッツンしたのかやけくそになったのか、あるいはその両方かわからないが、美鈴が叫んだ。
「わかりました!手伝いますよ!ええ。手伝えばいいんでしょう!?そのかわり後であの男への復讐も手伝ってもらいますからねッ!!構いませんねッ!!」



「ふう。と言うわけで彼女に手伝ってもらえることになった」
プッチはここまで話すと、一息ついた。

「そうか、で?君はわたしに・・・その、『復讐』?の手伝いを本気でするつもりなのか?」
わたしは念のため聞いておくことにした。もしも『本気』ならば何か手を打っておかねばならないからな。

「わたしは無駄なことは嫌いだ。まあいい、続きを話そう」

わたしは美鈴に『天国』への計画を少し話した
少々やけっぱちになっているのは気になったが、向こう見ずな行動が時として人を導く力になると思い、そのままにしておいた。
・・・まあ、正直に言ってしまうと面倒なだけだったのだがね

「これから罪人達を使い天国へと行くのだが、わたしの計画は理解できたかね?」
どこかへと向かいながらプッチが美鈴に言った。

「ええ、大丈夫です。真の勝利者は天国へ到達したものなんでしょう。何度も聞きましたよ」
はぁ・・・カッとしていたとはいえまさかこんなことになるなんて・・・はぁ

「こんにちは神父様」
「やあ、ペイジ。元気ですか?今日は珍しく一人でいるのですね」
プッチさんがにこやかに話しかけていますが、あの愛想のよさを少しは私にも注いでほしいものですよ。まったく。何か話してるようですが、どうしてこの人に人望があるんでしょうか?

「と、言うわけでジョーンズ、プラント、ボーンナムにも伝えておいてくれませんか?」

「ああわかった。任せろ!」

「よろしく頼みましたよ」
プッチさんに何か頼まれてからさっきの人はどこかへと走っていきました。はぁ・・・。

「で、これからどこへ行くのですか?」
「これからようやく天国への作戦を開始する。士気を高める必要があるので少し演説でもさせてもらおうと思っていましてね。まあそう遠くはない場所だからすぐに着くだろう」
やっぱりなんだかぶっきらぼうですね。はぁ・・・。ええい我慢です紅美鈴!これも全ては吉良吉影に復讐するため!
「よし!」

「(そうか・・・そんなにも天国を目指していたのか)」
一人決意を新たにする美鈴を見てプッチは勝手に納得した。

さっきプッチさんが言った通り、しばらく歩くとどんどん人が多くなってきました。
なぜかみなさん希望に満ちた目をしていますね。この神父のことを信頼しているからでしょうね・・・はぁ・・・巻き込まれた私の身にもなって欲しいです。はぁ・・・。

門番が先ほどからうつむいているな。恐怖か緊張かは知らないが、それくらいは自分自身で乗り越えてもらわなければ、これからは足手まといになる・・・

また一人、勘違いするプッチであった

しばらく待っていると、どんどん人が集まってきました。
そういえば興奮して寝ていませんでしたね。なんだかとても眠くなってきました。
あ、演説が・・・

Zzz
  Zzz
    Zzz
      Zzz
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?はっ!うっかり寝てしまいました。

ん?プッチさんがこちらを見て何か伝えようとしている・・・
あ、応援演説的なことをしろってことですね。わかりました。


演説をしていたとき、プッチは美鈴が寝ているのに気がついていた。
しかし特に騒いでいるわけでもなかったので放っておいた。

が、演説も終わり士気も高まったので起きてもらわねばならなくなり、ホワイトスネイクを使い軽く小突いて起こした。
美鈴も起きたようでついて来るようにジェスチャーで合図をした。

ふむ。門番も気付いたようだな。少しくらいの昼寝は許してあげましょう。さて、これから忙しくなる。
くるり、と美鈴に背を向け歩き始めたプッチは群衆がざわつき始めたことを感じ取った。

?なにが・・・?

気になって後ろを向くと

さっきまで彼が演説をしていたところに美鈴が立っているのが見えた。

何をするつもりだ・・・門番・・・。
なにかイヤな予感がする・・・

美鈴に『おりてこい』と合図をしたが、

「(なるほど。さっさと済ませろってことですね!)」

寝ぼけた彼女には通じなかったようだ。

美鈴は思いっきり息を吸い込み
そして

叫んだ

「天国へ行きたいか――――ッ!!」

それはもう絶叫にも近かった

「天国へ行きたいか――――ッ!!」

「(こ・・・こいつ、一体なにが・・・)」
ダメだこいつ・・・はやくなんとかしなければ・・・
焦るプッチをよそに同じことを叫び続ける美鈴。
早くやめさせようと焦るプッチだったが、
最初は戸惑っていた群衆もやがて興奮していき

おおおおおおおおおおお!!!
「ッ!?」
爆発でも起きたのか?と、錯覚してしまうほどの群集の雄たけびが響き渡った。

「天国へ行きたいか―――――ッ!!」
     BAAHHHOHHHHHHHHH!!!

「天国へ行きたいか―――――ッ!!」
           SHAAHHAAAAAAAHAHHAAA!!!

「天国へ行きたいか―――――ッ!!」
                 WWWWWWWRRRRRYYYYYY!!!
4度目の雄たけびが終わった後、突如走り出した先頭の集団につづき、その後ぞくぞくと進み出した。

「どうですかプッチさん。見事に士気を爆発させることができましたよ!」
えっへん、と誇らしげに胸を張る美鈴を見て、プッチはしばし呆然としていた。
我に返ったプッチはゴツン、と美鈴の頭を殴った
「痛っ、何するんですか!」
「影響力というものを考えろ。お前のせいで作戦を修正しなくてはならなくなった。少しは考えて動くのだ」
「考えましたよ。2500年前の中国の兵法書『孫子』にだってこうありますよ。『兵は拙速なるを聞くも未だ巧の久しきをみざるなり』。つまりですね、無駄に長引かせるよりもこうやって短期決戦で挑んだほうが勝てるんですよ」
「確かにそうかもしれないがな、まぁいい。今ならまだいくらでも修正できる。だが、これからは少数の戦いになるのだ。そのときはしっかりお前の力も利用させてもらうぞ」
「手伝いはしますよ。ですが今は私たちも急いで進んだほうがいいんじゃないですか?ほら、もう見えなくなってしまいましたよ」
「わかっているしかし・・・」
プッチは少し間を置いて言った

「何か聞こえないかね?」
プッチは罪人達が進んでいった方向を見て聞いた

「え?いえ。何も聞こえませんが・・・?」
「そうだ。何も聞こえない。彼らの雄たけびも悲鳴も聞こえない」


プッチや美鈴が言い争っている中、罪人たちはなぜ静まったのか?
少しだけ場面を前に向けてみよう


それは突然のことだった

先頭にいた集団が突如として止まったのだ

「あ・・・ああ・・・あ」

障害をすべて飲み込む津波のような勢いで進軍していた集団が、階段のようなところを前にして止まった
堤防、絶壁、崖、そのようなものに比べたらとても小さな障害だった。

だが、彼らにとっては崖や堤防であったほうが嬉しかっただろう。

「え・・・閻魔だ。閻魔がきやがった・・・ち、ちくしょう。せっかくここまで来れたってのによぉ」

彼らの視線の先には閻魔、四季映姫の姿があった。

その場に膝をつく者

泣きだす者

逃げだす者

その混乱は

やがて絶望となり

奇妙な静けさをもたらした


しかしその静けさは


一人の男によって破られた

「君たちは『犬』かね?」


静けさの中、その声は良く響いた

みなが振り向いた

神父は唐突と語りだした

「最近の動物の研究では・・・教育次第で犬やオームでも文字が読めたり、火を使ったり、果ては芸術を理解することもできるそうだ」

先ほどまで泣いていた者たちも泣き止んでいた
「そうなると。人と動物の違いは何か・・・わかりますか?」
男の声が この場を支配していた

「1967年のことだ。セリグマンという学者が一つの実験を行なった。
犬を『逃げられないケージ』に入れ、ある音を聞かせその直後に電流を流したそうだ。最初は犬も逃げようと努力したが、自分は何をしても『無駄』だということを、繰り返し繰り返し体験し、ついには逃げ出すことを諦めてしまったそうだ。
その後に犬は『逃げられるケージ』に入れられたのだが、音が鳴っても結局『犬』は逃げることはなかった。『学習性無力感』というそうだ」
プッチは声を大きくすることもなく、静かに続ける

「『恐怖を克服すること』これは人にしかできない。犬やオームではそうはいかない」
罪人達は頭をあげ、じっと次の言葉を待った。

「『勇気』だよ。人には『勇気』があるから素晴らしいのだ」
プッチは人を安心させるような声で力強く続けた

「さて、そこでだ。もう一度問いましょう」

「君たちは『犬』かね?」

「それとも『人間』ですか?」

この場はまだ静かだった。
しかし今度の静けさは、諦めたものではなく、闘志を秘めた静けさだった

プッチまだ満足していなかった。
もう一押し。あと一押し何かが必要だと知っていた。
今の闘志を爆発させるには、プッチによってではなく罪人達のなかから声を張り上げるものの登場が必要だと感じていた。
そんなプッチの気持ちに応えるかのように、罪人の中から声が聞こえた。

「オレは生前、2人の女と1人のガキを殺そうとして・・・返り討ちにあった」
一人の男がそう言いながら罪人の中を掻き分けてプッチのところまでやってきた。

「1969年7月アポロ11号のアームストロングが人類で初めて月面に立った歴史的事件。オレは今までそれのどこが偉いのかさっぱりわからなかった」
男は周りを見渡した

「なぜならロケットってのは科学者とか技術者が飛ばすものだろう?人間じゃあなくっても行けるわけだ。現に今までハエだとか犬だとかサルだって宇宙に行っていた」
力強い眼差しをプッチに向け、再び罪人のほうへと振り向いた。

「だがオレは神父に出会ってその意味がわかったんだ。月面に立ったのは人間の『精神』なんだってなッ!人間はあの時地球を越えて成長したんだッ!」

「価値のあるものは『精神の成長』なんだッ!」


「これ、オレのセリフだぜ。カッコいいだろ」
紅茶を飲み終えたリキエルが唐突に言った

「ああ。カッコいいな。だが話の流れをぶった切ったせいで台無しだ」
プッチのやつなかなか話がうまいな。思わず聞き入ってしまったが、このリキエルとか言う男・・・バカなのか?話の流れを切るんじゃあない。

「まあまあ許してやってくれたまえ。ようやく出番がきたのだから」

「でだ?そこからどうなっていくんだい?」
続きを聞こうとしたとき、後ろから声が聞こえた

「それはですね!」

「うおッ!・・・映姫か!?驚かすなよ」
まさかわたしのストーカーをしていたというわけではあるまい。プッチを捕まえに来たのか?

映姫はプッチを捕らえようとするでもなく、こっちに来て座った。
「リキエル、私にもお茶を淹れなさい」
・・・?違うのか?それとも余裕か?

「映姫、君はプッチを捕まえに来たんじゃあないのかい?」
わたしの質問に映姫は『なに言ってんだこいつ?』という表情をみせた

「そんなわけありませんよ。ここに来たのは別の用事です」
どうやらワケありのようだな。まあ話の続きを聞いたらわかるだろう。

「続きを話してくれないか?」
プッチが口を開き、続きを話そうとしたとき、横から映姫の声が聞こえた

「そこから先は私がお話しましょう」





次回予告
突然やってきた映姫。しかし彼女はプッチを捕まえに来たわけではないようだ。
一体なぜ?吉良の心に不安がよぎる。
彼らは何をやっていたのか!?プッチのもたらすものは世界の破滅か救済か!?
そしていよいよプッチと映姫が激突する!
次回 悪役幻想奇譚第十二話
『プッチ神父は天国を見るか?』
お見逃しなく!

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー