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ディスクブレイカー☆フラン 第十一話

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 ディスクブレイカー☆フラン
 育郎が庭に駆けつけると、そこにはカラフルに染まった妹紅とアフロになった輝夜が立っていた。
 一体どういう戦いがあったのだろうか。
 その疑問を飲み下し、育郎は輝夜に駆け寄る。
「輝夜さん、緊急事態ですよ」
「な……なによ」
 息を切らしながら、輝夜は育郎を見る。
「例のネズミが逃げました」
 輝夜が、固まった。
「……さ、さーて盆栽の様子はどうかしら?」
 輝夜は振り返って歩こうとするが、
「てめーの相手はこのアタシだ」
 妹紅が道をふさぐ。
「妹紅さん、今緊急事態なんで、ちょっとお引き取り願いたいんですけど……」
「駄目だ。輝夜が泣くまで戦うのをやめない」
 怒り心頭の妹紅を前にして、育郎はため息をついた。
 このままだと自分までとばっちりを受けかねない。
 とりあえずこの二人は満足するまで放置しておくことにして、てゐの方へ向かう。
「てゐ、緊急事態なんだ」
「話はさっき聞かせてもらったわ。でもいやよ」
「……なんで?」
「あんなに罠にかからない奴を相手にしても楽しくない」
 またしても育郎はため息をつく。
 だが、その時彼は思い出した。
 ある古いイギリスの伝記にこう書かれていたことを。
『Think about the opposite when things do not go well.』
 つまり、『物事が上手くいかない時は逆に考えるべし』と。
 育郎は、さっきてゐが言ったことを逆手に取った。
「罠にかからないからいいじゃないですか。いかに罠にかけるかが楽しくなる」
 そう言われたてゐは、しばらく考え込んでから、
「そう言われればそうね。あのネズミめ……せっかくだから新作の罠にはめてやる」
 にやにやと策士の笑いを浮かべた。
 そしてラッパを取り出して、それを思いっきり吹く。
 すると、永遠亭中の妖怪兎たちが集まり、一斉に人の形をとる。
「隊長! 今日はなんですかー?」
 妖怪兎の一人が、手を挙げた。
 てゐは、コホンと咳払いをし、
「今日は、残念な知らせがある。例のネズミが逃げた」
 え~っ、という声が庭に広がった。
「またネズミ捕まえるんですか?」
「あの無駄に頭がいいネズミを? そんな無茶な」
「いやだよ~」
 文句たらしまくりの妖怪兎を、てゐは手を広げて止める。
「まあ待て。あの妖怪兎を捕まえた奴は最高級の高麗人参が永琳から授与されるウサ」
 その言葉に、妖怪兎たちは目を輝かせた。
 ざわめく妖怪兎たち。
 その中の一人が、こう言った。
「ところで、賭けの人参はどうなるんですか?」
 てゐは、黙って逃げ出した。
 恐らく、この混乱に乗じて人参を独り占めするつもりだったのだろう。
「隊長をひっ捕らえろー!」
 妖怪兎の副リーダー格の号令により、彼女たちは一斉にてゐを追いかけ始めた。
 その様を見ながら、育郎はひとり、
「駄目だこりゃ」
 と肩をすくめるのであった。
 一方、フラン、鈴仙、永琳の三人は診療室にいた。
「なるほど。フランドールさんはパチュリーが筋肉痛になったから、その薬を貰って来るためにここまで来たのね」
 フランからここに来た理由を聞いた永琳が、カルテにペンを走らせる。
「普段なら今すぐにでも薬を作れるけど……困ったわ」
 ペンを置き、またしても永琳はため息をついた。
「困ったことって、ネズミ?」
 フランの質問に、永琳はうなづく。
「今どこに隠れているか分からないし……どうにかしてこの広い永遠亭の中からあぶり出さないと……」
 思案にふける永琳の横で、鈴仙が何かを思いついた。
「そうだ、師匠。スミレちゃんに聞いたらどうです? 外から来たあの子なら何かいい策があるかも知れないですよ」
 鈴仙が言い終えると、診療室のドアが開いた。
 ドアを開いて入ってきたのは茶色い髪をポニーテールにした勝気そうな少女。
「家からネズミを追い出す手段、知ってるわよ」
「スミレ! いつの間にこの話を聞いてたの?」
 永琳が、スミレの方を向いた。
「聞いていた……と言うより『見た』の方が正しいわね。資料の整理をしていると、ネズミが逃げだしてそれに困っている永琳さんたちの『像』が見えたの」
 スミレと呼ばれた少女は、診療室のベッドに座る。
「家からネズミを追い出す方法の一つに、超音波があるわ。ネズミは約15キロヘルツから20キロヘルツの音波を嫌うの。それを永遠亭の敷地内にばらまけばいいわ」
 簡単にネズミ撃退法を言ってのけるスミレ。
 しかし、帰ってきたのは永琳の青色吐息だった。
「そんな音を出せるものがあればいいんだけどね……」
 そう言いながら、視線を鈴仙に送る。
「……私がそんな声出せると思ったら大違いですよ」
 鈴仙はジト目で視線を返す。
「音なら、あるよ」
 皆が悩む中、フランだけが、さらりと言ってのけた。
「「「……どこに?」」」
 スミレ、永琳、鈴仙は口をそろえてフランに質問する。
 フランは、ポケットから一枚のDISCを取り出す。
「音を操る手回しオルガンのスタンド、『ストレンジ・リレイション』だッ!」
 得意げな顔で、それを頭に差し込むと、フランの手元に手回しオルガンが現れる。
「「「おお!」」」
 三人は、目を皿にしてフランを見つめた。
「で、どうやってその15キロヘルツっていう音を出すの? ド? レ? ミ?」
 そしてキロヘルツという言葉を知らないフランの発言で揃ってひっくり返った。
「アンタの物でしょ! 自分の持っている道具の力ぐらい知っときなさいよ!」
 起き上がりと共にツッコミを入れたのは、鈴仙。
 流石ボケが多いこの永遠亭で一人ツッコミを続けてきただけのことはあった。
「……それで、その手回しオルガンで15キロヘルツの超音波って、出せるの?」
「出し方知らなーい。でも、これの音でガラス割ることができたから出来るかも」
 鈴仙の質問に、しれっと答えるフラン。
「……ちょっと貸してくれる?」
 そう言って、鈴仙はフランから『ストレンジ・リレイション』を渡してもらう。
「案外重くないのね」
 フランから借りた『ストレンジ・リレイション』の重さに感慨しつつ、鈴仙はハンドルに手をかける。
 古びた外見とは裏腹に、ハンドルは抵抗なく回り始めた。
 すると、『ストレンジ・リレイション』は音楽を奏で始める。
「ああ~結構いい音色じゃないの。こう、体がふにゃ~ん、てなって……って、いかんいかん」
 一瞬放心状態になりかけた鈴仙は、急いでハンドルを止める。
「とりあえず師匠。私とフランドールはこれで何ができるか考えておきます。師匠たちは早く姫様たちを……」
 鈴仙は振り向きつつ永琳とスミレの方を向こうとすると、
「どうしたんですか? 育郎さん」
 そこには育郎がいた。
 育郎の表情は、なんだか疲れ気味に見える。
「輝夜さんとてゐの件です」
 疲れ気味の育郎は、これまた疲れた声で言った。
「輝夜さんと妹紅さんの喧嘩は結局止められず、てゐは配下の兎に追われてどこか行きました」
 育郎の言葉に、場の空気が冷えた。
「姫様はとにかく、てゐがいないとなると人手が足りなくなるわね……」
 ついに永琳は目に手のひらを当て、ベッドに寝転んでしまった。
 外では妹紅の怒号と、何かが燃える音や輝夜の悲鳴が絶えず鳴り響いていた。
 もはやこの場の空気は完全に諦めムード一色になっている。
「とりあえず、ここから例のネズミを追い出すところから始めましょうか」
『ストレンジ・リレイション』を抱えた鈴仙が言うと、皆がうなづいた。
 こうして、なんだか煮え切らないテンションの中でネズミ捕獲作戦が開始されたのであった。
←to be continued....

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