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ディスクブレイカー☆フラン 第十四話

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  ディスクブレイカー☆フラン『動物と妖怪の境界』
OPテーマ Michael Jackson『BAD』
 炎が、フランと鈴仙を取り囲んだ。
「これはヤバいかも……」
 フランは、額に汗を浮かべながら、炎を見る。
「くっ……追い詰めたつもりが追い詰められてたって訳ね。しかも丁寧なことに枯れてない竹を折って火事対策まで済ましているわ」
「でも、火に囲まれてるのはネズミだって同じでしょう? だったら都合がいいわ」
 フランは、レーヴァテインを大きく振るって、炎をはねのけて着地した。
 そしてネズミの姿を探すが、
「いない……ネズミがいないッ!」
 燃える枯れ竹を振り払うと、地面に一か所だけ色の違う所があった。
 フランはしゃがみこんで、その色の違う場所を触れてみる。
 まるでゼリーに触れたかのような感触だった。
「しまった……あのネズミ、地面を『溶かして』掘り進んで逃げたのね!」
 フランは、穴の周囲を見渡した。
 まだ固まり切っていないからそう遠くへは行ってないはずだ。
「しかし……この炎をすべて消すには……」
 炎が苦手な吸血鬼であるフランは、再び飛び上がった。
「やっぱり派手にどっかーんとするしかないでしょ!」
 そして、炎を直視する。
 炎の中に、揺らめく『目』を見つけたフランは、それを引き寄せる。
「ねぇ、今から何をする気なの?」
 鈴仙が、横で集中するフランを見た。
「この炎をぎゅっとしてどっかーん、ってしたら火が消えるかなーって思って」
 フランの返答に、鈴仙は疑問符を浮かべた。
「それって、庭でやった時と同じこと?」
「そういうこと」
 フランの手には、すでに『炎の目』が乗っかっていた。
 それを握りつぶすと、炎は勢いよく爆発した。
「「うわあぁ~ッ!」」
 こんなことになるとは予想もしていなかった二人は、吹っ飛んでいく。
 一方、地中から這い出てきたネズミも、その爆風で吹っ飛んでいく。
「あぶない、あぶない。まさかこんなことになるとは……」
 爆風のあおりを喰らったフランは、竹に捕まることで事なきを得、鈴仙もまた竹に捕まって地面に叩き付けられることを回避した。
 炎を消すことは、結果として成功した。
 消火の方法の一つとして、爆発を起こして周囲の空間の酸素を瞬時に消費させて消す方法がある。
 知らず知らずの内に、フランはこの方法で火を消したのだ。
「ひどい目に遭ったけど、結果オーライかな?」
 服についた煤を払い、フランは立ち上がる。
「いやいや、この爆発でネズミが死んじゃったらどうするのよ」
 鈴仙も立ち上がって、服についた埃を払う。
「鈴仙さん、ネズミなら大丈夫よ。あれを見て……」
 フランは、目の前を指差した。
 鈴仙が目を凝らしてみると、そこには岩を『溶かして』クッションにして事なきを得たネズミの姿が。
 よく見ると、ネズミは目を回している。
「あのネズミ、目を回しているわよ! 今がチャンスね!」
 そう言って、鈴仙は低空飛行でネズミへと向かった。
 もう即興の落とし穴にかかるなんてヘマは犯さない。
「捕まえたぁ!」
 ついに鈴仙はネズミを右手で掴んだ。
 衝撃でネズミは目を覚ますが、
「私の目を見ろォ!」
 鈴仙と目を合わせてしまい、鈴仙お得意の催眠術にかかってしまう。
「これでおとなしくなったわね……」 
 鈴仙は、左手で汗をぬぐい、一息つくと、
「いてっ!」
 鈴仙の右手にネズミが噛みついた。
 彼女は思わず手を離し、ネズミを開放してしまう。
「いてて……ネズミなのになんて精神力なの! 私の催眠術から逃れるなんて……」
 鈴仙はすぐに走るネズミを追いかけ出した。


「さて、竹の花のスケッチを終えたはいいが……今度は爆発音か。」
 緑のバンダナを巻いた青年――岸部露伴はスケッチブックを畳んで立ち上がった。
 彼の周りには竹の花びらが散っている。
「気になるぞ……人気のない竹林で突然の爆発ッ! 凄くッ! 気になるッ!」
 自身の中に沸き立つ衝動に身をゆだね、岸部露伴は走り出す。
 しばらくすると、小さい生き物がこっちに向かって走ってくるんが見えた。
 その後ろには鈴仙と、フランの二人が走っている。
「ちょっとそこの人! ネズミ捕まえてください!」
 鈴仙に言われて、露伴は自分に走り寄る小さな生き物を凝視する。
 確かに、ネズミだ。
 なぜ目の前の面妖な少女はネズミを追いかけているのか?
 その疑問を解決すべく、露伴は指をネズミへ向けた。
「ならばそのネズミを捕まえてやろう。『ヘブンズ・ドアー』! ネズミを本にしろ!」
 形容のできない音がして、ネズミは転ぶ。
「フフフ……どれどれ、どういう経緯でこのネズミが追いかけられている暴いてやろうじゃないか」
 露伴はにやにや笑いながら、ネズミをつまみ上げた。
「はぁ、はぁ、はぁ……やっと追いついた……ありがとうございます」
 息を切らして、鈴仙は露伴の前で止まる。
「ネズミ捕まったー?」
 フランも露伴の近くで止まる。
「君たちはこのネズミを追いかけていたみたいだが、どうだ? ネズミがなんで逃げたか知りたくないかね?」
 二人の前で、露伴は悪戯の成功した子供みたいな笑みを浮かべる。
 二人は、互いに見合わせて、
「「うん」」
 うなづいた。
 露伴は待ってました、と言わんばかりに、ネズミの肌に手をかける。
 すると、ネズミの本のページのようにめくれて、そこに『オレの名はネズミ。名前はまだない』の文字が現れる。
「これ、なんですか?」
 鈴仙は、目を丸くしてネズミを指差す。
「これはね、ネズミの『記憶』さ。ボクは『生き物の記憶を読み書きする程度の能力』を持っている」
 自信満々に露伴は鈴仙の質問に答え、ネズミのページをめくる。
『気が付いたら大けがして寺みたいなとこに倒れてた。もうあのハンバーグみたいな髪形の人間には遭いたくない』
「ふむふむ……仗助の事か?」
 めくる。
『オレはこのまま死ぬかと思ったが、ネズミと同じ雰囲気をした人間が助けてくれた』
「ネズミと同じ雰囲気をした人間……おいおい、そいつは人間じゃないと思うぞ」
 めくる。
『とにかく、ここがどこか確かめたかったから外へ出た。そしたら竹がたくさんある所で迷ってしまった』
「竹がいっぱいある所……ここか」
 めくる。
『とりあえずタケノコを『ラット』で折りながら食べてたら、空にいるトンビに見つかった。攫われる前にでっかい人間の家に隠れた』
「なるほど。永遠亭の事か」
 めくる
『でっかい人間の家で罠にかかった。オレながらマヌケだ。そこで鉄のオリに入れられたがオレの『ラット』で抜け出した。そしたらものすごい数の兎たちに追っかけられた』
「こいつ一度逃げようとしたのか」
 めくる。
「腹が減って動けなくなった所でまた捕まった。今度はヒモでできたオリに入れられたが、これが凄い。齧っても切れないし、『ラット』でも溶かせなかった。だが何回も『ラット』を撃ち込むと切れたから逃げ出せた』
「そうして今に至る……って訳か」
 露伴は、ネズミのページを閉じる。
 ネズミは露伴の手の中でぐったりとしている。
「あの……このネズミ死んだ訳でじゃないですよね……」
 鈴仙は、ネズミを指差した。
「ああ、気絶しているだけだ……それにしても逃げ出した動機が分からないなぁ」
 ネズミを前にして、露伴は腕を組む。
「ネズミが喋ればいいのにね」
 ネズミをつつきながら、フランがつぶやく。
 露伴の耳が、ピクリと動いた。
「それだ。それだよ! 分からないなら喋らせればいいじゃないか!『ヘブンズ・ドアー』ッ!」
 再び、露伴はネズミを指差した。
 そしてネズミのページにこう書きこむ。
『人間の言葉が喋れる』
 と。
 そして露伴はネズミをつつく。
「おい、ネズミ、起きろ」
「むにゃむにゃ……何ッスか?」
 ネズミの声は、意外と高かった。まるで少女の声。
「……ぎゃー!」
 目を覚まして、ネズミは叫んだ。
 目の前に追手が二人もいたからだ。
「ま、ままままだ追ってくるッスか? 一体なんなんッスかあんた達!?」
 ネズミは、後ずさりする。
「まあまあ、落ち着けよ」
 慌てるネズミに、露伴が声をかけてなだめる。
「まずは何で追われているか確認しようじゃないか」
 露伴の言うとおりに、ネズミは今までを思い出す。
「えーっと、なんかネズミっぽい雰囲気した女の子に助けられて、そのあとどっかほっつき歩いていたら竹林に迷い込んで、それでトンビの気配感じてでっかい家に入ったら捕まって……で、逃げだしたらまた捕まって、こうして逃げ出したら何故か人間の言葉話せるようになって……って、ええ~ッ!」
 今までを思い出して、ネズミは驚いた。
「オレ、人間の言葉が話せてる!」
「……それって驚くこと?」
 驚いてばかりのネズミに、フランが冷静なツッコミを入れる。
「とにかく、なんでオレの事を追いかけてくるッスか? オレに何の恨みがあるっていうんスか?」
 ネズミの質問に、鈴仙とフランは顔を見合わせた。
「そりゃ……逃げ出したから?」
 鈴仙は、さも当たり前のように答える。
「だったら、なんで捕まえたッスか?」
 ネズミの質問に、鈴仙は言葉を詰まらせた。
「それも……そうよね。ただのネズミなら追っ払って終わりよね……」
 腕を組み考えにふける鈴仙。
「師匠に聞いてみる必要があるかも」
 鈴仙は、振り返った。
「あんたは、どうするの? 逃げ出した所で、どこに行くか決めてるの?」
 ネズミに背を向けたまま、鈴仙は質問をする。
「うぐ……そういえば忘れてた……」
 ネズミは少し考え事をした後、鈴仙の肩に飛び乗る。
「まあ、話ができるなら師匠も悪い扱いはしないでしょ」
 そう言って、鈴仙は永遠亭の方へと歩き出した。
「これでやっと解決ね……あ、薬取り行かなきゃ」
 フランも、薬を受け取るために鈴仙へついていく。
「面白そうなことになってきたな……いいネタが掴めそうだ」
 純粋な好奇心に突き動かされ、露伴も二人についていくことにした。

 永遠亭に三人と一匹が到着すると、門の前で輝夜が力尽きていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
 そしてその近くで妹紅が両手を上げて雄たけびを上げている。
 鈴仙とネズミとフランはその光景を無視して永遠亭に立ち入る。
「いったい何があったというんだ……?」
 露伴はその様をまじまじと見つめ、鈴仙たちが立ち去るのを見てそそくさとついていった。
「はぁ……やっと抜け出せたよ」
 玄関を開けると、育郎が靴を履いているところだった。
 どうやら、今から鈴仙たちの応援に向かおうとしていたところらしい。
「鈴仙さんにフランさん。ネズミはどうしたんですか?」
 育郎の質問に、鈴仙は自分の肩の上に乗るネズミを見せた。
「よぅ」
 肩の上のネズミは、気さくに声をかける。
「…………」
 育郎は目を丸く見開いて、鈴仙たちを見送った。
「ネズミが喋るなんて、夢じゃないよな……」
 彼は自分の頬を思いっきりつねった。痛かった。
「師匠、例のネズミ連れてきましたよ~」
 鈴仙は扉を開けて、永琳を呼んだ。
 永琳は、待ってましたと言わんばかりに鈴仙に近づく。
「やっと捕まえてくれたのね。助かるわ~」
 そう言って、永琳はネズミを覗き込んだ。
「おい、ナース服。何でオレをあんなせまっ苦しい所に閉じ込めてたんだよ」
 ネズミは、永琳を睨みつける。
「あら、人の言葉を喋れるまでに成長したのね」
 永琳は驚かず、懐から手帳を取り出してメモを取る。
「ネズミの話を聞けよ! な・ん・で! オレを閉じ込めてたんだよッ!」
「そりゃ珍しいからに決まってるでしょ。普通の動物が年若くして力を得るなんて希少なパターンよ」
「おい、そりゃどういう事だよ。一から説明してくれ」
 ネズミは、永琳の話が理解できず、目を白黒させた。
 そう言われた永琳は、コホン、と咳ばらいをした。
「非常に長生きした動物は、時として常識では考えられないような怪しい行動をとるわ」
 その言葉を聞いたネズミは、
「オレそこまで長く生きてねーし」
 と小声でつぶやいた。
「奇妙な行動をとるようになった動物は、尻尾が増えたり、人の言葉をしゃべったりするようになる。それを人間たちは『経立(ふったち)』と呼んでいるわ」
 ネズミのつぶやきを無視して、永琳は続ける。
「いずれ『経立』は人の形を取り、一人前の妖怪になるわ。私は『経立』が妖怪になるまでの経緯を調べてみたくてね。そこに飛び込んできたのがあなたって訳」
「……て言うとあれか? お前さんは好奇心のためにオレを監禁したって訳か?」
「そういう事になるわね」
「あっさりと答えるなァーッ!」
 ネズミは、前足で頭を抱えた。
「と、言う訳であなたが『経立』から立派な妖怪になるまでを観察させてもらえないかしら」
 そんなネズミに向かって、永琳はにっこりと微笑みかける。
「……チーズ。一か月に一回チーズくれて、オレを閉じ込めないなら……ここにいてやらないわけでもない」
 ネズミはぶっきらぼうに答えた。
「うふふ。契約成立ね……あ」
 そこで永琳は、何かを思い出した。
「そういえば名前が必要ね。この永琳が名付け親になってあげる。そうね……」
 永琳は5秒ほど考え込んだ後、人差し指を立てた。
「『チョロ吉』よ。あなたの名前は今からチョロ吉」
「なんじゃそりゃアァァァ!」
 ネズミの魂からの叫びが、永遠亭にこだました。


 フランが薬を持って永遠亭から帰ってくる時には、紅魔館の時計は12時を指していた。
「んーっ! 疲れたぁ……」
 フランは背伸びをして、紅魔館の玄関を開く。
「ただいまー! お薬もってきたよー!」
 フランは藤の籠から薬の入った袋を取り出す。
「お待ちしておりました。妹様」
 一瞬で咲夜が姿を現し、藤の籠をフランから受け取る。
「ああ、待って咲夜。パチュリ―には私が薬を届けたいの」
 フランは、そう言って籠を咲夜から取り返すとフランは階段を駆け下りて行った。
EDテーマ ふぉれすとぴれお『彼女が一番少女なのか?』
 


  あとがき。
 やっぱり不死鳥よりもフランの方が長いなぁ……
 ところで、前回のクイズの答え、竹が枯れている理由。
 それは『竹の花が咲いていた』からです。
 竹の花は竹が枯れる前にしか咲きません。
 物語の中ではその竹の枯れる時期だったのです。
 しかし迷いの竹林はすぐに竹が生える土地です。
 竹が枯れようが火事が起きようが翌日には元の竹林になってしまっているのです。

 おまけ 登場人物紹介
  岸部露伴 スタンド名『ヘブンズ・ドアー』『生き物の記憶を読み書きする程度の能力』
 現在『ピンクダークの少年』を執筆している売れっ子漫画家。
 その実は超がつくほどの変人偏屈で何よりもリアリティを愛する男。
 なぜ彼が幻想郷にいるかというと、いろいろあって紫に気に入られ、幻想郷と外の世界を行き来することができるよう取り計らわれたからである。
 ジョジョの中でも指折り数えるほどのチート能力なのに扱いやすいキャラ。
 イメージCVは子安武人。

  チョロ吉 スタンド名『ラット』『あらゆる物を溶かして固める程度の能力』
 いろいろあって大けがして幻想入り。
 一人称は『オレ』だがれっきとしたメス。
 何よりも自由を愛し、狭いところにいるのは好きだが閉じ込められるのは苦手なヤツ。
 永琳からは『スタンド使い』ではなく『経立(ふったち)』と見られている様子。
 ちなみに、彼女を助けた『ネズミの雰囲気を持った人間』というのは他ならぬナズーリンです。
 彼女にとっては人と妖怪の見分けを付けるのはまだ難しいようです。
 イメージCVは沢城みゆき(オコジョさんみたいな感じ)

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