ディスクブレイカー☆フラン『してやられた』 OPテーマ 豚乙女『待チ人ハ来ズ。』
「さあて、どうやって脅かしてやろうか……」
傘をぶらぶらと振り回しながら小傘はディアボロの後ろを付け回す。
小傘の前を歩くディアボロには、隙が全くない。
立ち止まり目を閉じて、少し考えてみる。
まずは、さっきと同じように傘の舌で背筋をベロりとなめる作戦。
「う~む、3度目はないような気がする……」
傘の舌を掴まれてそのままジャイアントスイングされる光景が瞼の裏に浮かんだ。
気を取り直して、考え直す。
次は、いつもやっている手段。
「……いや、あれで驚いている人っていたっけ?」
考えてみれば、目の前に躍り出て「おどろけー」とか言って驚かれた記憶がない。
「むむう……どうやってびっくりさせてやろうか……」
移動するディアボロを追い続けるため、足を再び動かそうとする。
足は地面を踏まず、虚空を踏んだ。
「ひゃああああ!」
そのまま小傘は落ちていく。
「ん? さっきの小娘の声が聞こえたような気が……」
ディアボロは振り返るが、そこには何もなかった。
「いたた……こんなところに落とし穴なんてあったっけ……」
しりもちをついた小傘は、周囲を見渡す。
周囲は暗闇に包まれている。
「落とし穴にしてはだいぶ広いわね……」
立ち上がると、目の前に巨大な黒板が現れた。
「ようこそ! 八雲紫の『人を脅かす方法講座』へ!」
黒板の隣には、日傘を持った妙齢の女性が現れる。
小傘、愕然。
「落とし穴に落っこちたと思ったらそこは謎の習い事の教室だった……何を言ってるのかわからないと思うけどあちきも何をされたのかわからなかった……」
小傘は目を白黒させて、八雲紫と名乗る女性を見る。
紫はニコニコと微笑んで小傘を見つめている。
微笑む紫を見て、2、3歩後ろに下がる小傘。
当然の反応と言えば当然の反応である。
「そう怖がらなくて大丈夫よ。この講座は頑張る妖怪さんたちを応援するための物なんだから」
紫は微笑みを崩さない。
が、暗闇の空間に裸電球で照らされた黒板という異様な空間が紫の怪しさを存分に引き出しているので、小傘の恐怖心は煽られるばかりだ。
「あ、あんたは誰なのさ……」
怯えながら、小傘は紫に質問した。
「私は八雲紫。あどけない少女を応援する妖怪よ」
小傘の質問に対し、紫は即答。
「とりあえず座りなさいな。人をびっくりさせる方法を簡単に教えてあげるわ」
そう言って、紫はスキマから学校とかでよく見かける椅子を一つ取り出した。
用意された椅子に、小傘は素直に座る。
「怖いものと言えば、『訳の分からないもの』と相場は決まっています。」
紫は黒板にすらすらと絵を描いてゆく。
驚く人の顔と、もやもやした何かの絵。
「人間は『理解できないもの』を怖がります。つまり、形がある物より形が無いものの方を人間は怖がるのです」
もやもやした絵は人間の絵を取り囲んだ。
人間の絵の表情が青ざめる。
「正体の理解できない攻撃……それが人間を驚かせる肝心な部分なんです」
紫の丁寧な説明に、小傘は赤べこのように首を振る。
「さて、ここでターゲットの確認をしましょう」
紫はスキマを開いた。ディアボロの姿がそこにはある。
「私が即興でプランを立てましたわ。それにしたがってこの人間をぎゃふんと言わせちゃいましょう」
「わ、わちきですか?」
「当たり前に決まってるじゃない。邪魔な見張りはみ~んな眠らせておいたから、存分にやってきなさい」
紫は、小傘の背中を押した。
「だいぶ歩いたな……」
木が並ぶ山道で、ディアボロは一息ついた。
葉の無い木が並ぶ坂道で、ディアボロは三日月を見上げる。
「この調子だと11時頃には神社につくだろうな……」
ディアボロは背伸びをして、深呼吸。
背後から伸びてきた巨大な舌を振り向きもせずひっつかんだ。
「げっ……!」
背後からは慌てるような少女の声。
「3度も同じ手を喰らうか」
そのまま背負い投げの要領でディアボロは掴んでいる舌を振り回す。
途端に、舌が軽くなったような感触がした。
目の前に落ちてきたのは、巨大な舌がくっついている紫色の傘。
「かっ、傘だと!?」
驚愕するディアボロ。
しかしすぐに立ち直り、『ウェザー・リポート』を出す。
背後から飛んできた弾幕は全てディアボロに届く前に蒸発して消える。
ディアボロはすぐに振り向いて『ウェザー・リポート』の拳を振るう。
だが、その拳は虚空に弧をえがくのみ。
「背後じゃ……なかったのか!?」
ディアボロは、度肝を抜かれた。
攻撃が来たのは、確かに背後。しかし背後には誰もいないのだ。
また背後からガサガサと音がする。
ディアボロは再び振り向く。
傘がなくなっていた。
夜の山に足音が響き渡る。
ガサガサ、ガサガサ、ガサガサ……
少女の笑い声がどこからともなく聞こえてくる。
ウフフフ……キャハハハハ!
「どこだァーッ! どこにいる! 出てこいッ!」
辺りに漂う不気味な雰囲気に耐え切れなくなって、ディアボロは絶叫するように叫んだ。
しかし、何も出てはこなかった。
夜のしじまに、ディアボロの声がむなしく反響する。
頭の中がくらくらする。
「くそっ……なんなんだ一体……」
フラフラとディアボロは木陰に寄りかかり、深く息を吐く。
懐から煙草を取り出し、火をつける。
深呼吸をすると、紫煙が立ち上る。
「ここにきて攻撃か……あの傘はさっきのガキの傘だが……俺はあいつに恨まれるようなことをしたのか!?」
紫煙を吐ききると、再び『ウェザー・リポート』を出現させる。
「姿を現さないようだが……生憎『ウェザー・リポート』で場所を特定できるのでね」
ディアボロは、紫煙を風に流した。
「『ウェザー・リポート』の気流探知……わずかな空気の流れを探すッ!」
紫煙は風に溶けて消え去る。
ディアボロは目を瞑り、『ウェザー・リポート』の感覚を頼る。
流れる風は、葉の無い落葉樹を撫で、緑の絶えない針葉樹をすり抜けてゆく。
草むらをかき分け、岩を舐めて走り抜ける。
「一定した呼吸の生き物が5人だけ……一定した呼吸だけだと!?」
ディアボロはパニックに陥った。
(じゃああの傘の持ち主は何処に行ったというのだ! 半径100メートルまで捜査の腕を伸ばしたんだぞ!)
手が震えて、煙草が指から零れ落ちる。
煙草は辺りに立ちこめる霧に当てられてその儚い火を失ってしまった。
「お……落ち着け……今持っている道具の確認をするんだ……きっと打開策はあるはずだ……」
ディアボロは自分の持ち物を地面に広げた。
『キング・クリムゾンのDISC』
『ウェザー・リポートのDISC』
『エコーズact3のDISC』
『サバイバーのDISC』
『GPボーイ』
『無線機』
『タバコ(残り3本)』
『高級腕時計(電波時計)』
『クォーターピッツァ(冷えてる)』
使えそうなものはこれだけしか無かった。
「くそっ……落ち着け……何かからくりがあるはずだ……」
ディアボロは冷えたピッツァを食べながら、打開策を案じる。
その様を見て大笑いする者たちがいた。
隙間からディアボロのリアクションを観察する紫と小傘だ。
一通り笑い終えると、紫は小傘にサムズアップをする。
「これこれ! この表情が見たかったのよ!」
2人の笑い声だけがディアボロの周囲にこだまする。
不気味、かつ正体のわからない笑い声はディアボロの心の奥深くに刻み込まれ、忘れようのない不気味さをもたらした。
これと言って大きな害を与える訳でもない。
なのにここまで恐怖してしまう。
「クソッ! どこにいやがる……」
目を血走らせてディアボロは小傘の姿を探そうとする。
その様を見ながら、紫はもう一つのスキマを開いた。
「今日はもう帰りなさいな。この辺りは物騒よ」
スキマの先には、人里の光景が写りこむ。
しかし、小傘は首を横に振った。
「いやいや……ここはもうちょっと驚かせて……」
「駄目よ。脅かすのが上手な妖怪は、引き際を心得るものよ。その引き際が、今ってわけ。家に帰りなさい」
小傘はディアボロにちょっかいを出し続けようとするが、紫に諭されて人里へと続くスキマに飛び込んでいった。
「さて、お遊びはここまで。妖怪の山の視察を続けますか……」
そう言って、紫はディアボロの前に一枚の紙を落とした。
ディアボロは、目の前に落ちてきた紙に気付いた。
それを拾ってみる。
紙には、『ドッキリでした☆ゴメンね By7(_)]{@|21』とだけ書かれている。
「ふざけるなアァァーッ!」
ディアボロは激昂して紙を破り捨てた。
踏みつけた。これでも踏みつけてトドメに『キング・クリムゾン』のラッシュをお見舞いして地面にめり込ませる。
荒い息を吐いて、ディアボロは拳を振るうのをやめる。
「誰だよ『7(_)]{@|21』って! 読めねーっつの! オレを馬鹿にしてるのか!」
ディアボロの行き場の無い怒りが辺りにこだまする。
もう一枚、紙が落ちてくる。
「今度は何だ!」
ディアボロはそれを空中でつかみ取り、広げてみる。
「あの傘の子は許してやってくださいorz By7(_)]{@|21』
紙に書かれている内容を見てディアボロは、紙を握りつぶした。
「傘のガキは拳骨で済ましてやるが……あの『7(_)]{@|21』とかいう奴は許しておけんな……」
くしゃくしゃになった紙を投げ捨てて、ディアボロは歩き出した。
博霊神社
夜の境内に、紫は姿を現した。
「こんばんわ~霊夢いる~?」
紫は間の抜けた声で、神社の主の名を呼ぶ。
「いるわよ。妖怪の山の偵察はどうだった?」
紫に呼ばれて、霊夢が社殿の中から出てくる。
「うん。とっても楽しかったわ」
霊夢の質問に、紫は満面の笑みで答える。
霊夢はお祓い棒を紫に向けて振るった。
傘で華麗にガードされた。
「ツッコミにしてはキレがないわよ。さて、本題ね。妖怪の山は紅魔館と戦闘中。まあ、夜が明ける前には終わるでしょうね」
紫は、簡潔に現在の状況を説明。
それを聞いた霊夢は黙ってうなづいた。
「なら、今が一番いい時期ね。白玉楼の『春水晶』を取りに行くわよ」
霊夢はそれだけを言って、社殿に向かう。
「さて……私も藍を呼ぶとしますか」
紫はスキマを開き、その中へと入っていった。
妖怪の山 守矢神社参道
「おかしいわね……妖怪の気配が全くしないわ」
一方、守矢神社への参拝者を装って石段の参道を歩く咲夜はその足を止めていた。
山が静かすぎるのだ。
いつもなら弾幕を放ってくる妖怪の一人や二人いる筈なのに。
「あのソリッドとかいう男が天狗を引き付けているならば、もっと騒がしくてもいいはずなのに」
咲夜は石段を踏み、再び歩き出す。
幾つも並ぶ鳥居をくぐり続けると、今自分がどこにいるのかが分からなくなってくる。
もうどれだけ歩いてきただろうか。
ふと振り返ってみると、そこには壮大な景色が広がっていた。
「景色はいいけど、楽しんでもいられないわね……」
空を見上げると、音もなく紅魔館の方へ飛んでゆくオンバシラの姿。
「急がなくちゃ」
咲夜は走って石段の参道を駆け上がり始めた。
参道を駆け上がると、そこには軍服を着た早苗が仁王立ちしていた。
早苗は、腰に差した御幣をまるで軍刀を抜くかのように手に取る。
「ここは通さないわよ」
早苗は軍服の襟に手をかけた。
一瞬で軍服は空を舞った。
空を舞う軍服の下には、緑色の巫女服を着た早苗の姿が。
「ねえ、早苗。こうするんだったら最初っから巫女服着といたほうが良かったんじゃない?」
早苗の隣に立つ諏訪子が鳥居に引っかかった軍服を見上げて言う。
「ロマンよ」
早苗は一瞬で諏訪子を論破した。
「それでいいの……? まあ、私は『春水晶』を守りに入りさせていただくわ」
呆れた諏訪子は社殿の中へと入る。
その様を、咲夜はナイフ片手に眺めていた。
「……茶番は終わったかしら?」
咲夜の質問に早苗は首を縦に振る。
すぐに咲夜は手に持つナイフを投げつけた。
早苗は御幣を振ってナイフを落とす。
「正面からの自機狙い弾なんて避けられるか落とされるかの二択ですよ」
続けて早苗は懐から札を取り出して投げる。
咲夜を直接狙うのではなく、咲夜の左右を弾幕で埋めて動きを制限する。
さらに早苗は数枚の札を取り出して、空中に放り投げる。
札は光の弾となり、咲夜をまっすぐと狙う。
しかし咲夜はそれをバックステップで回避。
光の弾は地面へと突き刺さって消える。
咲夜はナイフを取り出して、
「時よ止まれ!」
十八番である時間停止を行った。
灰色の風景の中、咲夜はナイフを早苗に向かって投げつける。
早苗の眼前でナイフは停止した。
「そして時は動き出す……」
咲夜がつぶやくと、世界は色を取り戻し、ナイフは早苗向かって収束していく。
「うおっ! 危なっ!」
早苗はナイフが当たる寸前で全身から霊力を放出。
霊撃である。
無論、このナイフは弾幕ごっこ用なので当たっても刺さることはないし血も出ない。
だが当たると負けであり、無論当たると痛い。
吹き飛ばされたナイフが地面に落ちる。
「ここからが本番です! 秘術『グレイソーマタージ』!」
早苗はスペルカード宣言と共に御幣を振った。
御幣は星を描き、光弾が現れる。
星の形をした光弾は、その形を解き、咲夜へと迫る。
「対抗させてもらうわ。奇術『エターナルミーク』」
咲夜もスペルカード宣言。
光弾がものすごい速度で周囲にばら撒かれる。
光弾と光弾がぶつかり合い、火花が散る。
目も眩むほどの光の中、咲夜は片目をつぶりながらナイフを後ろ手に隠し持つ。
光の嵐が止むと、咲夜はすかさずナイフを投げた。
光にくらんだ右目を閉じて、逆に今までつぶっていた左目を開いてナイフの行方を見る。
早苗の姿は、そこには無かった。
「いない!」
咲夜はたじろいて辺り一片を見渡す。
人のいない境内のみが写る。
「まさか……」
嫌な予感を感じて、上を見た。
そこには御幣を大きく振りかぶった早苗の姿が。
「時よ……」
「愚か者め! 開海『モーゼの奇跡』ッ!」
時を止めようとするも、早苗の御幣が咲夜の額に叩き付けられる方が早かった。
そのまま御幣を振り抜いて、早苗は着地。
同時に衝撃波が辺りに巻き起こり、前後不覚に陥った咲夜を襲う。
衝撃波は玉砂利と共に咲夜を吹き飛ばしてゆく。
「これで背中に『神人』とか『天』とかの文字が浮かんだらパッチリなのになぁ……」
誰もいなくなった境内で一人、早苗は余韻に浸る。
寒気を帯びた風が、熱を帯びた境内を冷ましてゆく。
「ふぅ……のどが渇いたわ。お茶でもとってこようかしら」
のどの渇きを潤すために社殿に向かおうとする早苗。
「お茶ならここにありますよ」
背後から声がした。
「あ、そう? ありがと諏訪子さ……」
お茶を受け取ろうとして早苗は振り返る。
ティーセットを持った咲夜がいた。
ダラァ~っと嫌な汗が流れる。
「えっと……さっき吹き飛ばしたはずじゃ……」
「時を止めてやってきました」
ひきつった笑顔を浮かべる早苗に微笑みを浮かべる咲夜。
「そしてここで勝利を完全にモノにするためにある物を使わせていただきます」
早苗の目の前で咲夜はティーセットを消した。
代わりに、一枚のDISCを手に持つ。
「それは最近幻想郷に出回っているという噂の『スタンドDISC』ですか?」
「はい。なんでも時を止めるスタンドらしいです」
「それ、能力被ってるんじゃない?」
「能力はともかく、ものすごい力を持つスタンドらしいですよ」
咲夜はDISCを振り上げる。
「させるかぁ!」
早苗は絶叫と共に腰に差した御幣に手を伸ばし、
「華と散れい!」
そのまま居合抜きの要領で振り上げる。
だが、御幣が咲夜に届くことはなかった。
「な……御幣が動かない……」
早苗は動揺した。
勢いよく振り上げた御幣が突然、空中で静止したのだ。
「なるほど……これが『ザ・ワールド』ですか……」
咲夜の落ち着いた声が、夜の境内に染み渡る。
早苗は咲夜を見た。
咲夜の銀色の髪が、見る見るうちに変色していく。
昼の月みたいな銀色から、夜の月のような金色へと。
それと同時に、御幣を掴む者が姿を現す。
最初に姿を現したのは御幣を掴む手。
御幣を握りしめる手と腕は、鍛え上げられたプロレスラーのように盛り上がった筋肉を持っていた。
はち切れんばかりの筋肉を持つ胴体は、強固な鎧に覆われている。
そして何よりも目を引くのはその巨体。
咲夜の身長よりもはるかに大きい。
これより大きな体を持つ者はこの幻想郷中を探してもいないだろう。
咲夜はその姿を見て確信した。これなら、さっきの一撃を楽に返すことができるだろう。
早苗は、『ザ・ワールド』の存在感に気おされ、御幣を手放して距離を取る。
御幣はそのまま片手で真っ二つに折れてしまう。
「こ、これは危ないかも……」
早苗はさらに二歩、三歩下がる。
その動揺を咲夜は見逃さなかった。
咲夜は『ザ・ワールド』を従えて走り出す。
と、早苗の表情が変化した。
「そういえば、咲夜さん。そこ、あぶないですよ」
突然の早苗の変化に咲夜は立ち止まる。
「主に頭上に注意してください……」
早苗はにやにや笑う。
咲夜は上を見た。
そこには御幣を振りかぶる早苗の姿があった。
「開海『モーゼの奇跡』」
頭上の早苗はスペルカード宣言をし、御幣を思いっきり叩き付けんとする。
咲夜はすぐに『ザ・ワールド』の腕を振るい、降ってくる早苗を止めようとする。
「残念だけど、もうすでに結果が出ちゃってるのよね」
咲夜の正面の早苗は、余裕面でその光景を見ていた。
この時、この戦いを見ている者がいたら誰もがなぜかもう一人いる早苗の負けを予想していただろう。
しかし結果は違った。
上から降ってくる早苗の御幣は『ザ・ワールド』の腕をすり抜け、再び咲夜の額を打ち据えて衝撃波と共に咲夜を吹き飛ばした。
「手に入れたての『スタンドDISC』を使っても何の意味もありません。私の『アンダーワールドのDISC』のように、使い込んでその本質を理解しなくちゃいけないのよ」
早苗は予備の御幣を取り出して、空中で体制を立て直した咲夜を見た。
←To be continued... EDテーマ Barrage Am Ring『黎明に鬨の声を挙げよ』
あとがき
今回のエンディングテーマは『サナエコチヤの常識にとらわれない英会話』にしようかと迷った。
あと、この前ひどい夢を見た。
非想天則で何故か相手の早苗のゲージがマックスでしかもカードの内容が全てモーゼだったという夢。
しかもモーゼをキャンセルしてモーゼを出してくる始末。
どうやって勝てと。
……で、それを元に再現してみました。
早苗+『アンダーワールド』。
咲夜も『ザ・ワールド』を持っていますが『アンダーワールド』で繰り出される『モーゼの奇跡』は『ザ・ワールド』の能力を以てしても防ぎきれませんでした。
なぜなら『アンダーワールド』で再生された『モーゼの奇跡』は命中したという結果が先にあるから。
ジョジョ原作でも除倫達は墜落する飛行機を止めることはできませんでしたからね。
乾に坤に逃げ場なし。
咲夜はどうやってこの状況を打開するのか?
そして通信をたった蓮見琢磨の安否は?
次回、ディスクブレイカー☆フラン『逃げ場無し!? 反則スレスレの「モーゼリプレイ」!』
お楽しみに。
「さあて、どうやって脅かしてやろうか……」
傘をぶらぶらと振り回しながら小傘はディアボロの後ろを付け回す。
小傘の前を歩くディアボロには、隙が全くない。
立ち止まり目を閉じて、少し考えてみる。
まずは、さっきと同じように傘の舌で背筋をベロりとなめる作戦。
「う~む、3度目はないような気がする……」
傘の舌を掴まれてそのままジャイアントスイングされる光景が瞼の裏に浮かんだ。
気を取り直して、考え直す。
次は、いつもやっている手段。
「……いや、あれで驚いている人っていたっけ?」
考えてみれば、目の前に躍り出て「おどろけー」とか言って驚かれた記憶がない。
「むむう……どうやってびっくりさせてやろうか……」
移動するディアボロを追い続けるため、足を再び動かそうとする。
足は地面を踏まず、虚空を踏んだ。
「ひゃああああ!」
そのまま小傘は落ちていく。
「ん? さっきの小娘の声が聞こえたような気が……」
ディアボロは振り返るが、そこには何もなかった。
「いたた……こんなところに落とし穴なんてあったっけ……」
しりもちをついた小傘は、周囲を見渡す。
周囲は暗闇に包まれている。
「落とし穴にしてはだいぶ広いわね……」
立ち上がると、目の前に巨大な黒板が現れた。
「ようこそ! 八雲紫の『人を脅かす方法講座』へ!」
黒板の隣には、日傘を持った妙齢の女性が現れる。
小傘、愕然。
「落とし穴に落っこちたと思ったらそこは謎の習い事の教室だった……何を言ってるのかわからないと思うけどあちきも何をされたのかわからなかった……」
小傘は目を白黒させて、八雲紫と名乗る女性を見る。
紫はニコニコと微笑んで小傘を見つめている。
微笑む紫を見て、2、3歩後ろに下がる小傘。
当然の反応と言えば当然の反応である。
「そう怖がらなくて大丈夫よ。この講座は頑張る妖怪さんたちを応援するための物なんだから」
紫は微笑みを崩さない。
が、暗闇の空間に裸電球で照らされた黒板という異様な空間が紫の怪しさを存分に引き出しているので、小傘の恐怖心は煽られるばかりだ。
「あ、あんたは誰なのさ……」
怯えながら、小傘は紫に質問した。
「私は八雲紫。あどけない少女を応援する妖怪よ」
小傘の質問に対し、紫は即答。
「とりあえず座りなさいな。人をびっくりさせる方法を簡単に教えてあげるわ」
そう言って、紫はスキマから学校とかでよく見かける椅子を一つ取り出した。
用意された椅子に、小傘は素直に座る。
「怖いものと言えば、『訳の分からないもの』と相場は決まっています。」
紫は黒板にすらすらと絵を描いてゆく。
驚く人の顔と、もやもやした何かの絵。
「人間は『理解できないもの』を怖がります。つまり、形がある物より形が無いものの方を人間は怖がるのです」
もやもやした絵は人間の絵を取り囲んだ。
人間の絵の表情が青ざめる。
「正体の理解できない攻撃……それが人間を驚かせる肝心な部分なんです」
紫の丁寧な説明に、小傘は赤べこのように首を振る。
「さて、ここでターゲットの確認をしましょう」
紫はスキマを開いた。ディアボロの姿がそこにはある。
「私が即興でプランを立てましたわ。それにしたがってこの人間をぎゃふんと言わせちゃいましょう」
「わ、わちきですか?」
「当たり前に決まってるじゃない。邪魔な見張りはみ~んな眠らせておいたから、存分にやってきなさい」
紫は、小傘の背中を押した。
「だいぶ歩いたな……」
木が並ぶ山道で、ディアボロは一息ついた。
葉の無い木が並ぶ坂道で、ディアボロは三日月を見上げる。
「この調子だと11時頃には神社につくだろうな……」
ディアボロは背伸びをして、深呼吸。
背後から伸びてきた巨大な舌を振り向きもせずひっつかんだ。
「げっ……!」
背後からは慌てるような少女の声。
「3度も同じ手を喰らうか」
そのまま背負い投げの要領でディアボロは掴んでいる舌を振り回す。
途端に、舌が軽くなったような感触がした。
目の前に落ちてきたのは、巨大な舌がくっついている紫色の傘。
「かっ、傘だと!?」
驚愕するディアボロ。
しかしすぐに立ち直り、『ウェザー・リポート』を出す。
背後から飛んできた弾幕は全てディアボロに届く前に蒸発して消える。
ディアボロはすぐに振り向いて『ウェザー・リポート』の拳を振るう。
だが、その拳は虚空に弧をえがくのみ。
「背後じゃ……なかったのか!?」
ディアボロは、度肝を抜かれた。
攻撃が来たのは、確かに背後。しかし背後には誰もいないのだ。
また背後からガサガサと音がする。
ディアボロは再び振り向く。
傘がなくなっていた。
夜の山に足音が響き渡る。
ガサガサ、ガサガサ、ガサガサ……
少女の笑い声がどこからともなく聞こえてくる。
ウフフフ……キャハハハハ!
「どこだァーッ! どこにいる! 出てこいッ!」
辺りに漂う不気味な雰囲気に耐え切れなくなって、ディアボロは絶叫するように叫んだ。
しかし、何も出てはこなかった。
夜のしじまに、ディアボロの声がむなしく反響する。
頭の中がくらくらする。
「くそっ……なんなんだ一体……」
フラフラとディアボロは木陰に寄りかかり、深く息を吐く。
懐から煙草を取り出し、火をつける。
深呼吸をすると、紫煙が立ち上る。
「ここにきて攻撃か……あの傘はさっきのガキの傘だが……俺はあいつに恨まれるようなことをしたのか!?」
紫煙を吐ききると、再び『ウェザー・リポート』を出現させる。
「姿を現さないようだが……生憎『ウェザー・リポート』で場所を特定できるのでね」
ディアボロは、紫煙を風に流した。
「『ウェザー・リポート』の気流探知……わずかな空気の流れを探すッ!」
紫煙は風に溶けて消え去る。
ディアボロは目を瞑り、『ウェザー・リポート』の感覚を頼る。
流れる風は、葉の無い落葉樹を撫で、緑の絶えない針葉樹をすり抜けてゆく。
草むらをかき分け、岩を舐めて走り抜ける。
「一定した呼吸の生き物が5人だけ……一定した呼吸だけだと!?」
ディアボロはパニックに陥った。
(じゃああの傘の持ち主は何処に行ったというのだ! 半径100メートルまで捜査の腕を伸ばしたんだぞ!)
手が震えて、煙草が指から零れ落ちる。
煙草は辺りに立ちこめる霧に当てられてその儚い火を失ってしまった。
「お……落ち着け……今持っている道具の確認をするんだ……きっと打開策はあるはずだ……」
ディアボロは自分の持ち物を地面に広げた。
『キング・クリムゾンのDISC』
『ウェザー・リポートのDISC』
『エコーズact3のDISC』
『サバイバーのDISC』
『GPボーイ』
『無線機』
『タバコ(残り3本)』
『高級腕時計(電波時計)』
『クォーターピッツァ(冷えてる)』
使えそうなものはこれだけしか無かった。
「くそっ……落ち着け……何かからくりがあるはずだ……」
ディアボロは冷えたピッツァを食べながら、打開策を案じる。
その様を見て大笑いする者たちがいた。
隙間からディアボロのリアクションを観察する紫と小傘だ。
一通り笑い終えると、紫は小傘にサムズアップをする。
「これこれ! この表情が見たかったのよ!」
2人の笑い声だけがディアボロの周囲にこだまする。
不気味、かつ正体のわからない笑い声はディアボロの心の奥深くに刻み込まれ、忘れようのない不気味さをもたらした。
これと言って大きな害を与える訳でもない。
なのにここまで恐怖してしまう。
「クソッ! どこにいやがる……」
目を血走らせてディアボロは小傘の姿を探そうとする。
その様を見ながら、紫はもう一つのスキマを開いた。
「今日はもう帰りなさいな。この辺りは物騒よ」
スキマの先には、人里の光景が写りこむ。
しかし、小傘は首を横に振った。
「いやいや……ここはもうちょっと驚かせて……」
「駄目よ。脅かすのが上手な妖怪は、引き際を心得るものよ。その引き際が、今ってわけ。家に帰りなさい」
小傘はディアボロにちょっかいを出し続けようとするが、紫に諭されて人里へと続くスキマに飛び込んでいった。
「さて、お遊びはここまで。妖怪の山の視察を続けますか……」
そう言って、紫はディアボロの前に一枚の紙を落とした。
ディアボロは、目の前に落ちてきた紙に気付いた。
それを拾ってみる。
紙には、『ドッキリでした☆ゴメンね By7(_)]{@|21』とだけ書かれている。
「ふざけるなアァァーッ!」
ディアボロは激昂して紙を破り捨てた。
踏みつけた。これでも踏みつけてトドメに『キング・クリムゾン』のラッシュをお見舞いして地面にめり込ませる。
荒い息を吐いて、ディアボロは拳を振るうのをやめる。
「誰だよ『7(_)]{@|21』って! 読めねーっつの! オレを馬鹿にしてるのか!」
ディアボロの行き場の無い怒りが辺りにこだまする。
もう一枚、紙が落ちてくる。
「今度は何だ!」
ディアボロはそれを空中でつかみ取り、広げてみる。
「あの傘の子は許してやってくださいorz By7(_)]{@|21』
紙に書かれている内容を見てディアボロは、紙を握りつぶした。
「傘のガキは拳骨で済ましてやるが……あの『7(_)]{@|21』とかいう奴は許しておけんな……」
くしゃくしゃになった紙を投げ捨てて、ディアボロは歩き出した。
博霊神社
夜の境内に、紫は姿を現した。
「こんばんわ~霊夢いる~?」
紫は間の抜けた声で、神社の主の名を呼ぶ。
「いるわよ。妖怪の山の偵察はどうだった?」
紫に呼ばれて、霊夢が社殿の中から出てくる。
「うん。とっても楽しかったわ」
霊夢の質問に、紫は満面の笑みで答える。
霊夢はお祓い棒を紫に向けて振るった。
傘で華麗にガードされた。
「ツッコミにしてはキレがないわよ。さて、本題ね。妖怪の山は紅魔館と戦闘中。まあ、夜が明ける前には終わるでしょうね」
紫は、簡潔に現在の状況を説明。
それを聞いた霊夢は黙ってうなづいた。
「なら、今が一番いい時期ね。白玉楼の『春水晶』を取りに行くわよ」
霊夢はそれだけを言って、社殿に向かう。
「さて……私も藍を呼ぶとしますか」
紫はスキマを開き、その中へと入っていった。
妖怪の山 守矢神社参道
「おかしいわね……妖怪の気配が全くしないわ」
一方、守矢神社への参拝者を装って石段の参道を歩く咲夜はその足を止めていた。
山が静かすぎるのだ。
いつもなら弾幕を放ってくる妖怪の一人や二人いる筈なのに。
「あのソリッドとかいう男が天狗を引き付けているならば、もっと騒がしくてもいいはずなのに」
咲夜は石段を踏み、再び歩き出す。
幾つも並ぶ鳥居をくぐり続けると、今自分がどこにいるのかが分からなくなってくる。
もうどれだけ歩いてきただろうか。
ふと振り返ってみると、そこには壮大な景色が広がっていた。
「景色はいいけど、楽しんでもいられないわね……」
空を見上げると、音もなく紅魔館の方へ飛んでゆくオンバシラの姿。
「急がなくちゃ」
咲夜は走って石段の参道を駆け上がり始めた。
参道を駆け上がると、そこには軍服を着た早苗が仁王立ちしていた。
早苗は、腰に差した御幣をまるで軍刀を抜くかのように手に取る。
「ここは通さないわよ」
早苗は軍服の襟に手をかけた。
一瞬で軍服は空を舞った。
空を舞う軍服の下には、緑色の巫女服を着た早苗の姿が。
「ねえ、早苗。こうするんだったら最初っから巫女服着といたほうが良かったんじゃない?」
早苗の隣に立つ諏訪子が鳥居に引っかかった軍服を見上げて言う。
「ロマンよ」
早苗は一瞬で諏訪子を論破した。
「それでいいの……? まあ、私は『春水晶』を守りに入りさせていただくわ」
呆れた諏訪子は社殿の中へと入る。
その様を、咲夜はナイフ片手に眺めていた。
「……茶番は終わったかしら?」
咲夜の質問に早苗は首を縦に振る。
すぐに咲夜は手に持つナイフを投げつけた。
早苗は御幣を振ってナイフを落とす。
「正面からの自機狙い弾なんて避けられるか落とされるかの二択ですよ」
続けて早苗は懐から札を取り出して投げる。
咲夜を直接狙うのではなく、咲夜の左右を弾幕で埋めて動きを制限する。
さらに早苗は数枚の札を取り出して、空中に放り投げる。
札は光の弾となり、咲夜をまっすぐと狙う。
しかし咲夜はそれをバックステップで回避。
光の弾は地面へと突き刺さって消える。
咲夜はナイフを取り出して、
「時よ止まれ!」
十八番である時間停止を行った。
灰色の風景の中、咲夜はナイフを早苗に向かって投げつける。
早苗の眼前でナイフは停止した。
「そして時は動き出す……」
咲夜がつぶやくと、世界は色を取り戻し、ナイフは早苗向かって収束していく。
「うおっ! 危なっ!」
早苗はナイフが当たる寸前で全身から霊力を放出。
霊撃である。
無論、このナイフは弾幕ごっこ用なので当たっても刺さることはないし血も出ない。
だが当たると負けであり、無論当たると痛い。
吹き飛ばされたナイフが地面に落ちる。
「ここからが本番です! 秘術『グレイソーマタージ』!」
早苗はスペルカード宣言と共に御幣を振った。
御幣は星を描き、光弾が現れる。
星の形をした光弾は、その形を解き、咲夜へと迫る。
「対抗させてもらうわ。奇術『エターナルミーク』」
咲夜もスペルカード宣言。
光弾がものすごい速度で周囲にばら撒かれる。
光弾と光弾がぶつかり合い、火花が散る。
目も眩むほどの光の中、咲夜は片目をつぶりながらナイフを後ろ手に隠し持つ。
光の嵐が止むと、咲夜はすかさずナイフを投げた。
光にくらんだ右目を閉じて、逆に今までつぶっていた左目を開いてナイフの行方を見る。
早苗の姿は、そこには無かった。
「いない!」
咲夜はたじろいて辺り一片を見渡す。
人のいない境内のみが写る。
「まさか……」
嫌な予感を感じて、上を見た。
そこには御幣を大きく振りかぶった早苗の姿が。
「時よ……」
「愚か者め! 開海『モーゼの奇跡』ッ!」
時を止めようとするも、早苗の御幣が咲夜の額に叩き付けられる方が早かった。
そのまま御幣を振り抜いて、早苗は着地。
同時に衝撃波が辺りに巻き起こり、前後不覚に陥った咲夜を襲う。
衝撃波は玉砂利と共に咲夜を吹き飛ばしてゆく。
「これで背中に『神人』とか『天』とかの文字が浮かんだらパッチリなのになぁ……」
誰もいなくなった境内で一人、早苗は余韻に浸る。
寒気を帯びた風が、熱を帯びた境内を冷ましてゆく。
「ふぅ……のどが渇いたわ。お茶でもとってこようかしら」
のどの渇きを潤すために社殿に向かおうとする早苗。
「お茶ならここにありますよ」
背後から声がした。
「あ、そう? ありがと諏訪子さ……」
お茶を受け取ろうとして早苗は振り返る。
ティーセットを持った咲夜がいた。
ダラァ~っと嫌な汗が流れる。
「えっと……さっき吹き飛ばしたはずじゃ……」
「時を止めてやってきました」
ひきつった笑顔を浮かべる早苗に微笑みを浮かべる咲夜。
「そしてここで勝利を完全にモノにするためにある物を使わせていただきます」
早苗の目の前で咲夜はティーセットを消した。
代わりに、一枚のDISCを手に持つ。
「それは最近幻想郷に出回っているという噂の『スタンドDISC』ですか?」
「はい。なんでも時を止めるスタンドらしいです」
「それ、能力被ってるんじゃない?」
「能力はともかく、ものすごい力を持つスタンドらしいですよ」
咲夜はDISCを振り上げる。
「させるかぁ!」
早苗は絶叫と共に腰に差した御幣に手を伸ばし、
「華と散れい!」
そのまま居合抜きの要領で振り上げる。
だが、御幣が咲夜に届くことはなかった。
「な……御幣が動かない……」
早苗は動揺した。
勢いよく振り上げた御幣が突然、空中で静止したのだ。
「なるほど……これが『ザ・ワールド』ですか……」
咲夜の落ち着いた声が、夜の境内に染み渡る。
早苗は咲夜を見た。
咲夜の銀色の髪が、見る見るうちに変色していく。
昼の月みたいな銀色から、夜の月のような金色へと。
それと同時に、御幣を掴む者が姿を現す。
最初に姿を現したのは御幣を掴む手。
御幣を握りしめる手と腕は、鍛え上げられたプロレスラーのように盛り上がった筋肉を持っていた。
はち切れんばかりの筋肉を持つ胴体は、強固な鎧に覆われている。
そして何よりも目を引くのはその巨体。
咲夜の身長よりもはるかに大きい。
これより大きな体を持つ者はこの幻想郷中を探してもいないだろう。
咲夜はその姿を見て確信した。これなら、さっきの一撃を楽に返すことができるだろう。
早苗は、『ザ・ワールド』の存在感に気おされ、御幣を手放して距離を取る。
御幣はそのまま片手で真っ二つに折れてしまう。
「こ、これは危ないかも……」
早苗はさらに二歩、三歩下がる。
その動揺を咲夜は見逃さなかった。
咲夜は『ザ・ワールド』を従えて走り出す。
と、早苗の表情が変化した。
「そういえば、咲夜さん。そこ、あぶないですよ」
突然の早苗の変化に咲夜は立ち止まる。
「主に頭上に注意してください……」
早苗はにやにや笑う。
咲夜は上を見た。
そこには御幣を振りかぶる早苗の姿があった。
「開海『モーゼの奇跡』」
頭上の早苗はスペルカード宣言をし、御幣を思いっきり叩き付けんとする。
咲夜はすぐに『ザ・ワールド』の腕を振るい、降ってくる早苗を止めようとする。
「残念だけど、もうすでに結果が出ちゃってるのよね」
咲夜の正面の早苗は、余裕面でその光景を見ていた。
この時、この戦いを見ている者がいたら誰もがなぜかもう一人いる早苗の負けを予想していただろう。
しかし結果は違った。
上から降ってくる早苗の御幣は『ザ・ワールド』の腕をすり抜け、再び咲夜の額を打ち据えて衝撃波と共に咲夜を吹き飛ばした。
「手に入れたての『スタンドDISC』を使っても何の意味もありません。私の『アンダーワールドのDISC』のように、使い込んでその本質を理解しなくちゃいけないのよ」
早苗は予備の御幣を取り出して、空中で体制を立て直した咲夜を見た。
←To be continued... EDテーマ Barrage Am Ring『黎明に鬨の声を挙げよ』
あとがき
今回のエンディングテーマは『サナエコチヤの常識にとらわれない英会話』にしようかと迷った。
あと、この前ひどい夢を見た。
非想天則で何故か相手の早苗のゲージがマックスでしかもカードの内容が全てモーゼだったという夢。
しかもモーゼをキャンセルしてモーゼを出してくる始末。
どうやって勝てと。
……で、それを元に再現してみました。
早苗+『アンダーワールド』。
咲夜も『ザ・ワールド』を持っていますが『アンダーワールド』で繰り出される『モーゼの奇跡』は『ザ・ワールド』の能力を以てしても防ぎきれませんでした。
なぜなら『アンダーワールド』で再生された『モーゼの奇跡』は命中したという結果が先にあるから。
ジョジョ原作でも除倫達は墜落する飛行機を止めることはできませんでしたからね。
乾に坤に逃げ場なし。
咲夜はどうやってこの状況を打開するのか?
そして通信をたった蓮見琢磨の安否は?
次回、ディスクブレイカー☆フラン『逃げ場無し!? 反則スレスレの「モーゼリプレイ」!』
お楽しみに。