ディスクブレイカー☆フラン 『予言の結末』OPテーマ ふぉれすとぴれお「U.N FLY」
ttp://www.youtube.com/watch?v=jc6Bu8HU9BQ
フラン、チルノ、ナランチャの3人は人里にある慧音の家の前に立った。
フランの手に握られているのは『トト神』。
未来の出来事をマンガという形で映し出すスタンド。
月明かりを頼りに、フランは『トト神」を開く。
白紙のページに、グニャグニャの線で描かれた上手いのだか下手なのか微妙な絵が浮かび上がってくる。
“テストの答案を盗みにやってきた3人。でも慧音の家の門はカギがかかっているぞ。そこで3人は家の周りを調べることにしました”
『トト神』の予言を見た3人は、門から離れ、まず庭の方に回る。
すると、新しい予言が現れてきた。
“おやおや? 庭の縁側にあるふすまが少しだけ開いているぞ? ここからなら入れそうかもしれないと考えて、3人は靴を脱いで家の中に乗り込みました”
予言に従って3人は、靴を脱いで縁側から慧音の家に入り込む。
ちなみに靴は縁側の軒下に隠した。
縁側から家の中に上がると、仏壇のある仏間に出る。
幸い、家主の慧音はいないらしく仏間は暗闇に包まれていた。
そこでフランは『トト神』を広げる。
吸血鬼のフランにとってこれしきの暗闇なんて気にもならない。
「で、なんて書いてあるんだ?」
ひそひそ声でフランの傍に寄るナランチャ。
彼の眼では『トト神』の内容がよく見えない。
「え~と、風呂のお湯を沸かせだって」
フランは『トト神』の予言をそのままに口に出す。
「風呂か。行ってみよう」
そう言ってナランチャは『エアロスミス』のレーダーを出す。
自分を中心に『点』が2つ。
少し離れたところに動かない『点』が1つ。
他には何の反応も無い。
「よし、行けるぞ」
そっとふすまを開け、廊下に出るナランチャ。
続いて足音を殺しながらフランとチルノが廊下に出てくる。
抜き足差し足で廊下を歩き、風呂場まで来る。
「でもよ、何でお風呂沸かさなきゃならねーんだ?」
空の風呂桶を前に、ナランチャはそんなことを小声でぼやく。
「考える暇があったら行動よ」
ナランチャが頭を抱える横でチルノは大量の氷を出した。
ガラガラガラ! と大きな音を立てて風呂桶に大量の氷が放り込まれてくる。
その音を聞いてフランとナランチャの心臓が跳ね上がった。
「バカヤロウお前何やってんだ」
ひそひそ声でナランチャはチルノに耳打ちをする。
「水が無いから氷入れたんじゃん。井戸から持ってくるなんて大変よ」
さも当たり前といった表情を浮かべるチルノ。
「そのせいで慧音先生が動いてんだよ!」
ナランチャのレーダーには、ゆっくりとした動きで3人に近づいてくる1つの点が写っている。
フランはすぐに『トト神』を開いた。
白紙のページに予言が現れてくる。
“ヤバイッ! これはヤバいッ! このままでは慧音に気付かれてしまうッ! 3人は急いで風呂桶に入って蓋を被って隠れました”
3人は予言に従って風呂桶に飛び込み、蓋を被って隠れる。
風呂桶に満たされた氷がフランとナランチャの体を冷やすが、そんなことは気にしない。
今気づかれたら確実に頭突き確定だ。
蓋をされた風呂桶の中、ナランチャのレーダーが薄明かりを放って慧音の接近を知らせる。
近づいてくる慧音の気配。
彼女の存在を示す『点』が停止する。
ガラガラ、と音を立てて風呂場の引き戸が開く。
しばらくの静けさ。
「おかしいな。何かが落ちる音がしたはずなのに……」
事態を不思議がる慧音の声。
やがて、引き戸が締まる音がした。
ナランチャの目の前のレーダーは慧音が遠ざかっていくことを知らせている。
その様子をチルノは息をひそめて、フランとナランチャは歯をカタカタ鳴らしながら見つめている。
やがて慧音は元の場所に戻ると、そこから動かなくなった。
そうっとフランは蓋をあげて風呂桶から出てくる。
周囲の安全を確認した後、フランは風呂桶を元の場所に置いた。
続けてナランチャとチルノがゆっくりと音をたてないように風呂桶から出てくる。
「何とかきゅーちは脱したわね」
したり顔を浮かべるチルノ。
隣のナランチャはため息をついた。
「てめーのせいで窮地におちいったんじゃねーか」
ともあれ、まずは風呂を沸かさなくてはならない。
ナランチャは風呂桶いっぱいの氷を眺める。
「どうすんだこれ」
氷を眺めて腕を組むナランチャ。
「私にいい考えがある」
氷を前にフランは捻じれた時計の針を模した杖を取り出した。
「氷は溶かせばいいのよ。禁忌『レーヴァテイン』」
フランの持つ杖は一本の紅い光を放つ剣に変化する。
その紅い剣を風呂桶いっぱいの氷に近づけると、氷は見る見るうちに溶けていく。
フランの持つレーヴァテイン。この剣が放つ紅い光の正体は高温を放つ炎である。
この剣の温度をもってすれば風呂桶いっぱいの氷をちょうどいい具合のお湯に変えるなんてお茶の子さいさい。
あっという間に湯気が立つお風呂が出来上がった。
「「おお~」」
見事、と言わんばかりにチルノとナランチャは風呂桶を眺める。
だがいつまでも喜んではいられない。
ナランチャのレーダーに、新たな反応が現れたのだ。
「やべっ! 誰か来たぞ!」
レーダーには、新しい『点』が出てきて、こちらに近づいている。
やがてその『点』は、慧音の場所を示す『点』の近くで停止する。
更にこの風呂場、隠れる場所が無い。
この窮地を脱すべく、フランは『トト神』を開いた。
“おやおや? 慧音先生に来客だ。でも、これは逆にチャンス! 3人は今の内に風呂場から出て寝室の押し入れに逃げ込みました”
予言をよんだ3人は風呂場から出て、抜き足差し足で寝室に向かい、押し入れを開ける。
開けた途端布団の津波が襲って――来ることはなく、きちんと整理された布団が置いてあった。
「いそげ、いそげ!」
ナランチャがチルノを持ち上げて押し入れに入れ、フランが押し入れに飛び込むのを見た後にナランチャが押し入れの中によじ登る。
そして押し入れのふすまを閉めた。
「ほ、本当にこれで大丈夫なの?」
不安に駆られたチルノが、フランに寄ってくる。
「た、たぶん大丈夫……」
冷や汗を流しながら『トト神』を握りしめるフラン。
ふすま越しに、足音が聞こえてきた。
だが、足音は寝室には近づいてこない。
足音が止まり、引き戸の開く音がした。
「おっ、風呂もう湧いてんじゃん。慧音~、風呂先に入っておくよ~」
風呂場から妹紅の声が飛び出してきた。
どうやら慧音の家に来たのは妹紅のようだ。
「お風呂!? おかしいな。お風呂なんて沸かしたっけ?」
家の奥から慧音の声が出てくる。
「ド忘れしたんじゃないの? じゃ、先に風呂に入ってるからな」
妹紅の声と、水が流れる音がする。
「……そうか。風呂を沸かしたのは妹紅さんを足止めするためか」
風呂を沸かす。一見カンニングとは関係ない行動にはこのような意図が隠されていることを知って、フランは『トト神』の凄さを再確認した。
広げられた『トト神』には、また新たな予言が書き込まれていた。
“妹紅さんは今お風呂に入っているぞ! 今がチャンスだッ! 慧音の書斎へ乗り込めー!”
その内容を見て、3人は固まった。
「慧音先生の書斎へ……だと……?」
固まるフラン。
「おいおい、慧音先生は動いてもいねーぞ!」
レーダーのに映る慧音のものらしき『点』を見ながら戸惑うナランチャ。
しかしチルノだけは違った。
「とつげーき!」
押し入れから飛び出したのだ。
「ちょっと! チルノ待って!」
チルノの突然の行動にフランは驚き、チルノを引き留めようと押し入れから出る。
「いや、行くぞ! 慧音先生の『点』が動いているッ! 今しかないッ!」
ナランチャも押し入れから出て、家の中を飛んで慧音の書斎へ向かう。
廊下を飛んでいると、家の中に『何かを切る音』がしてきた。
その音と同時にナランチャのレーダーに映っている慧音の『点』。その近くに大きな『点』が写る。
「この二酸化炭素は……『火』だ……先生が料理しているんだッ!」
驚きながらも声を潜ませるナランチャ。
音もなく飛び続けると、少しだけ戸の開いた書斎が見えてきた。
「ここね……」
フランは戸をあけて、誰もいない書斎に立ち入る。
続いてチルノとナランチャも立ち入る。
書斎の広さは6畳ほど。
本の詰まった本棚に、押しいれ。
掛け軸が吊り下げられ、生け花が置いてある厳格な格式を持った床の間に、
大量の紙が散らばる机。
目標の物は、机の上にあった。
3人とも机の上の紙を1枚ずつ取って、折り畳んでポケットに入れる。
すると、ナランチャのレーダーに変化が起きた。
「やばいッ! 慧音先生が動き始めたッ! この部屋に近づいてきているぞッ!」
ナランチャの声に、2人は戦慄した。
台所から書斎まで隠れ場所の無い一本道。
隠れるなら、この書斎しかない。
フランは、『トト神』を開いた。
書斎に、慧音が立ち入ってきた。
「馬脂は何処だっけな……? 最近手荒れがひどくて困る」
机の引き出しを開けて、馬脂の入ったビンを出す。
ビンのフタを開けて、馬脂を手に塗ろうとするが……
「あ、そういえば前に使い切っちゃったな。新しいのを出さないと」
ビンが空だったのを思い出して押し入れのふすまを開く。
押し入れの中の小箱から新しい馬脂のビンを出して、フタを開いて馬脂を手に塗る。
押し入れを閉じて、新しいビンを机の中に入れて書斎から出ていく。
「……押し入れに隠れなくてよかったな」
ナランチャは床の間の天井、掛け軸を吊り下げている部分を隠すための欄間に隠れていた。
「よげんのちからってすげー」
チルノは床脇の違い棚の下につけられた戸棚の中に隠れていた。
「戸棚の中身が空で助かったわ」
フランは雪見障子の下にある戸棚の中に隠れていた。
ぞろぞろと隠れ場所から出てくる3人。
その顔は安堵の表情だった。
ナランチャのレーダーには、書斎から離れて動かない慧音の姿。
それを確認したナランチャは、書斎の戸を開ける。
「今の内だ。今の内に逃げよう」
3人はそろって書斎から抜け出し、抜き足差し足で仏間へと向かう。
その時である。
「あ~いい湯だった」
妹紅の声が廊下の曲がり角から聞こえてきた。
書斎に戻って隠れる時間も予言を見る時間も無い。
フランの行動は早かった。
ナランチャの前に躍り出て、曲がり角から出てきた妹紅の鳩尾を一発。
何も知らない妹紅は一瞬で白眼を剥いて、フランに倒れ掛かった。
全裸で。
白くて艶々した肌、瞼の落ちた無防備な顔。
お湯の滴る白い髪が床を濡らしている。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい」
フランは謝罪の言葉を念仏のごとく唱えながら全裸の妹紅を引きずって風呂場へ連れて行く。
フランは妹紅を再び湯船に漬けて、のぼせているかのように見えるよう偽装する。
「これでよし、と」
風呂場を後にしてフランは2人の元へ戻る。
廊下には顔を真っ赤にしているナランチャと仏間に行こうとしているチルノがいた。
「……どしたの? ナランチャ」
フランはナランチャの赤い顔を覗き込む。
「い、いやななな何でもない」
赤い顔をぶんぶん横に振るナランチャ。
彼は逃げ込むように仏間へと入っていった。
「……? 変なナランチャ」
フランも仏間へと入り、縁側から靴を履いて外へ出る。
次々と庭から飛び立って、それぞれの家へと帰っていった。
フランが紅魔館へ戻ると、美鈴が額から血を流して倒れていた。
「……なんまいだーなんまいだー」
血の池に沈む美鈴を一瞥して、フランは紅魔館に入る。
エントランスから階段を下りて地下の図書館へ走りこむ。
「パチュリーッ! ついに手に入れたよーッ!」
快活な声をあげてフランは、図書館の机で本を読むパチュリーの元へ駆け込む。
「おお! 手に入れたか! よくやった」
パチュリーは視線を本からフランに向ける。
フランはすぐに机に向かい、盗んできた答案を広げる。
答案を眺めてパチュリーは目を細めた。
「じゃあ『トト神』は返してもらうわね」
パチュリーが呪文を唱えると、フランの頭から『トト神のDISC』が飛び出して、パチュリーの手元に向かう。
フランはノートと鉛筆を取り出して、答案の書き取りを始めた。
「上手くいったみたいだな」
図書館の奥から琢馬が出てきて、パチュリーの前に本を置く。
「ええ……ちょっと来てくれるかしら?」
急にパチュリーは立ち上がり、本棚の陰に隠れる。
「ん? どうしたんだ?」
パチュリーに言われて琢馬は、本棚の陰まで来る。
本棚の陰では、パチュリーが『トト神のDISC』を装備して『トト神』を開いていた。
「フランがあの後どうなるか気にならない?」
「あ、それ気になる」
パチュリーに誘われて、琢馬は『トト神』を覗き込んだ。
『トト神』の予言はこうだった。
“テストの日、フランとそのお友達は赤点を取りました。なぜならフランたちが抜き取った答案は、昔のテストの物だったからです”
と。
←To be continued... EDテーマ Junichi&JJr「0点チャンピオン」
ttp://www.youtube.com/watch?v=9e8XA7SxMS0
「こ……これはどういうことなの……?」
レミリアは、困惑していた。
無理もない。ドアを開けると廊下ではなく宇宙が広がっていたのだから。
「レミィ~! どこにいるのレミィ~! 声は聞こえど姿は見えず……」
暗闇の世界をおろおろと歩くパチュリー。
「……zzz」
事態に気付かず惰眠をむさぼる美鈴。
「畜生ッ! 悪い予感はしていたんだ……この扉は……ブラックホールだったんだッ!」
吹き荒れる暴風に耐える琢馬。
彼の目の前で開いているドアの先には暗闇が広がっている。
紅魔館に訪れる未曾有の事態。
この危機をフラン達は乗り越えることができるのか!?
次回ッ! ディスクブレイカー☆フラン!
『紅魔館の謎』
乞うご期待!
ttp://www.youtube.com/watch?v=jc6Bu8HU9BQ
フラン、チルノ、ナランチャの3人は人里にある慧音の家の前に立った。
フランの手に握られているのは『トト神』。
未来の出来事をマンガという形で映し出すスタンド。
月明かりを頼りに、フランは『トト神」を開く。
白紙のページに、グニャグニャの線で描かれた上手いのだか下手なのか微妙な絵が浮かび上がってくる。
“テストの答案を盗みにやってきた3人。でも慧音の家の門はカギがかかっているぞ。そこで3人は家の周りを調べることにしました”
『トト神』の予言を見た3人は、門から離れ、まず庭の方に回る。
すると、新しい予言が現れてきた。
“おやおや? 庭の縁側にあるふすまが少しだけ開いているぞ? ここからなら入れそうかもしれないと考えて、3人は靴を脱いで家の中に乗り込みました”
予言に従って3人は、靴を脱いで縁側から慧音の家に入り込む。
ちなみに靴は縁側の軒下に隠した。
縁側から家の中に上がると、仏壇のある仏間に出る。
幸い、家主の慧音はいないらしく仏間は暗闇に包まれていた。
そこでフランは『トト神』を広げる。
吸血鬼のフランにとってこれしきの暗闇なんて気にもならない。
「で、なんて書いてあるんだ?」
ひそひそ声でフランの傍に寄るナランチャ。
彼の眼では『トト神』の内容がよく見えない。
「え~と、風呂のお湯を沸かせだって」
フランは『トト神』の予言をそのままに口に出す。
「風呂か。行ってみよう」
そう言ってナランチャは『エアロスミス』のレーダーを出す。
自分を中心に『点』が2つ。
少し離れたところに動かない『点』が1つ。
他には何の反応も無い。
「よし、行けるぞ」
そっとふすまを開け、廊下に出るナランチャ。
続いて足音を殺しながらフランとチルノが廊下に出てくる。
抜き足差し足で廊下を歩き、風呂場まで来る。
「でもよ、何でお風呂沸かさなきゃならねーんだ?」
空の風呂桶を前に、ナランチャはそんなことを小声でぼやく。
「考える暇があったら行動よ」
ナランチャが頭を抱える横でチルノは大量の氷を出した。
ガラガラガラ! と大きな音を立てて風呂桶に大量の氷が放り込まれてくる。
その音を聞いてフランとナランチャの心臓が跳ね上がった。
「バカヤロウお前何やってんだ」
ひそひそ声でナランチャはチルノに耳打ちをする。
「水が無いから氷入れたんじゃん。井戸から持ってくるなんて大変よ」
さも当たり前といった表情を浮かべるチルノ。
「そのせいで慧音先生が動いてんだよ!」
ナランチャのレーダーには、ゆっくりとした動きで3人に近づいてくる1つの点が写っている。
フランはすぐに『トト神』を開いた。
白紙のページに予言が現れてくる。
“ヤバイッ! これはヤバいッ! このままでは慧音に気付かれてしまうッ! 3人は急いで風呂桶に入って蓋を被って隠れました”
3人は予言に従って風呂桶に飛び込み、蓋を被って隠れる。
風呂桶に満たされた氷がフランとナランチャの体を冷やすが、そんなことは気にしない。
今気づかれたら確実に頭突き確定だ。
蓋をされた風呂桶の中、ナランチャのレーダーが薄明かりを放って慧音の接近を知らせる。
近づいてくる慧音の気配。
彼女の存在を示す『点』が停止する。
ガラガラ、と音を立てて風呂場の引き戸が開く。
しばらくの静けさ。
「おかしいな。何かが落ちる音がしたはずなのに……」
事態を不思議がる慧音の声。
やがて、引き戸が締まる音がした。
ナランチャの目の前のレーダーは慧音が遠ざかっていくことを知らせている。
その様子をチルノは息をひそめて、フランとナランチャは歯をカタカタ鳴らしながら見つめている。
やがて慧音は元の場所に戻ると、そこから動かなくなった。
そうっとフランは蓋をあげて風呂桶から出てくる。
周囲の安全を確認した後、フランは風呂桶を元の場所に置いた。
続けてナランチャとチルノがゆっくりと音をたてないように風呂桶から出てくる。
「何とかきゅーちは脱したわね」
したり顔を浮かべるチルノ。
隣のナランチャはため息をついた。
「てめーのせいで窮地におちいったんじゃねーか」
ともあれ、まずは風呂を沸かさなくてはならない。
ナランチャは風呂桶いっぱいの氷を眺める。
「どうすんだこれ」
氷を眺めて腕を組むナランチャ。
「私にいい考えがある」
氷を前にフランは捻じれた時計の針を模した杖を取り出した。
「氷は溶かせばいいのよ。禁忌『レーヴァテイン』」
フランの持つ杖は一本の紅い光を放つ剣に変化する。
その紅い剣を風呂桶いっぱいの氷に近づけると、氷は見る見るうちに溶けていく。
フランの持つレーヴァテイン。この剣が放つ紅い光の正体は高温を放つ炎である。
この剣の温度をもってすれば風呂桶いっぱいの氷をちょうどいい具合のお湯に変えるなんてお茶の子さいさい。
あっという間に湯気が立つお風呂が出来上がった。
「「おお~」」
見事、と言わんばかりにチルノとナランチャは風呂桶を眺める。
だがいつまでも喜んではいられない。
ナランチャのレーダーに、新たな反応が現れたのだ。
「やべっ! 誰か来たぞ!」
レーダーには、新しい『点』が出てきて、こちらに近づいている。
やがてその『点』は、慧音の場所を示す『点』の近くで停止する。
更にこの風呂場、隠れる場所が無い。
この窮地を脱すべく、フランは『トト神』を開いた。
“おやおや? 慧音先生に来客だ。でも、これは逆にチャンス! 3人は今の内に風呂場から出て寝室の押し入れに逃げ込みました”
予言をよんだ3人は風呂場から出て、抜き足差し足で寝室に向かい、押し入れを開ける。
開けた途端布団の津波が襲って――来ることはなく、きちんと整理された布団が置いてあった。
「いそげ、いそげ!」
ナランチャがチルノを持ち上げて押し入れに入れ、フランが押し入れに飛び込むのを見た後にナランチャが押し入れの中によじ登る。
そして押し入れのふすまを閉めた。
「ほ、本当にこれで大丈夫なの?」
不安に駆られたチルノが、フランに寄ってくる。
「た、たぶん大丈夫……」
冷や汗を流しながら『トト神』を握りしめるフラン。
ふすま越しに、足音が聞こえてきた。
だが、足音は寝室には近づいてこない。
足音が止まり、引き戸の開く音がした。
「おっ、風呂もう湧いてんじゃん。慧音~、風呂先に入っておくよ~」
風呂場から妹紅の声が飛び出してきた。
どうやら慧音の家に来たのは妹紅のようだ。
「お風呂!? おかしいな。お風呂なんて沸かしたっけ?」
家の奥から慧音の声が出てくる。
「ド忘れしたんじゃないの? じゃ、先に風呂に入ってるからな」
妹紅の声と、水が流れる音がする。
「……そうか。風呂を沸かしたのは妹紅さんを足止めするためか」
風呂を沸かす。一見カンニングとは関係ない行動にはこのような意図が隠されていることを知って、フランは『トト神』の凄さを再確認した。
広げられた『トト神』には、また新たな予言が書き込まれていた。
“妹紅さんは今お風呂に入っているぞ! 今がチャンスだッ! 慧音の書斎へ乗り込めー!”
その内容を見て、3人は固まった。
「慧音先生の書斎へ……だと……?」
固まるフラン。
「おいおい、慧音先生は動いてもいねーぞ!」
レーダーのに映る慧音のものらしき『点』を見ながら戸惑うナランチャ。
しかしチルノだけは違った。
「とつげーき!」
押し入れから飛び出したのだ。
「ちょっと! チルノ待って!」
チルノの突然の行動にフランは驚き、チルノを引き留めようと押し入れから出る。
「いや、行くぞ! 慧音先生の『点』が動いているッ! 今しかないッ!」
ナランチャも押し入れから出て、家の中を飛んで慧音の書斎へ向かう。
廊下を飛んでいると、家の中に『何かを切る音』がしてきた。
その音と同時にナランチャのレーダーに映っている慧音の『点』。その近くに大きな『点』が写る。
「この二酸化炭素は……『火』だ……先生が料理しているんだッ!」
驚きながらも声を潜ませるナランチャ。
音もなく飛び続けると、少しだけ戸の開いた書斎が見えてきた。
「ここね……」
フランは戸をあけて、誰もいない書斎に立ち入る。
続いてチルノとナランチャも立ち入る。
書斎の広さは6畳ほど。
本の詰まった本棚に、押しいれ。
掛け軸が吊り下げられ、生け花が置いてある厳格な格式を持った床の間に、
大量の紙が散らばる机。
目標の物は、机の上にあった。
3人とも机の上の紙を1枚ずつ取って、折り畳んでポケットに入れる。
すると、ナランチャのレーダーに変化が起きた。
「やばいッ! 慧音先生が動き始めたッ! この部屋に近づいてきているぞッ!」
ナランチャの声に、2人は戦慄した。
台所から書斎まで隠れ場所の無い一本道。
隠れるなら、この書斎しかない。
フランは、『トト神』を開いた。
書斎に、慧音が立ち入ってきた。
「馬脂は何処だっけな……? 最近手荒れがひどくて困る」
机の引き出しを開けて、馬脂の入ったビンを出す。
ビンのフタを開けて、馬脂を手に塗ろうとするが……
「あ、そういえば前に使い切っちゃったな。新しいのを出さないと」
ビンが空だったのを思い出して押し入れのふすまを開く。
押し入れの中の小箱から新しい馬脂のビンを出して、フタを開いて馬脂を手に塗る。
押し入れを閉じて、新しいビンを机の中に入れて書斎から出ていく。
「……押し入れに隠れなくてよかったな」
ナランチャは床の間の天井、掛け軸を吊り下げている部分を隠すための欄間に隠れていた。
「よげんのちからってすげー」
チルノは床脇の違い棚の下につけられた戸棚の中に隠れていた。
「戸棚の中身が空で助かったわ」
フランは雪見障子の下にある戸棚の中に隠れていた。
ぞろぞろと隠れ場所から出てくる3人。
その顔は安堵の表情だった。
ナランチャのレーダーには、書斎から離れて動かない慧音の姿。
それを確認したナランチャは、書斎の戸を開ける。
「今の内だ。今の内に逃げよう」
3人はそろって書斎から抜け出し、抜き足差し足で仏間へと向かう。
その時である。
「あ~いい湯だった」
妹紅の声が廊下の曲がり角から聞こえてきた。
書斎に戻って隠れる時間も予言を見る時間も無い。
フランの行動は早かった。
ナランチャの前に躍り出て、曲がり角から出てきた妹紅の鳩尾を一発。
何も知らない妹紅は一瞬で白眼を剥いて、フランに倒れ掛かった。
全裸で。
白くて艶々した肌、瞼の落ちた無防備な顔。
お湯の滴る白い髪が床を濡らしている。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい」
フランは謝罪の言葉を念仏のごとく唱えながら全裸の妹紅を引きずって風呂場へ連れて行く。
フランは妹紅を再び湯船に漬けて、のぼせているかのように見えるよう偽装する。
「これでよし、と」
風呂場を後にしてフランは2人の元へ戻る。
廊下には顔を真っ赤にしているナランチャと仏間に行こうとしているチルノがいた。
「……どしたの? ナランチャ」
フランはナランチャの赤い顔を覗き込む。
「い、いやななな何でもない」
赤い顔をぶんぶん横に振るナランチャ。
彼は逃げ込むように仏間へと入っていった。
「……? 変なナランチャ」
フランも仏間へと入り、縁側から靴を履いて外へ出る。
次々と庭から飛び立って、それぞれの家へと帰っていった。
フランが紅魔館へ戻ると、美鈴が額から血を流して倒れていた。
「……なんまいだーなんまいだー」
血の池に沈む美鈴を一瞥して、フランは紅魔館に入る。
エントランスから階段を下りて地下の図書館へ走りこむ。
「パチュリーッ! ついに手に入れたよーッ!」
快活な声をあげてフランは、図書館の机で本を読むパチュリーの元へ駆け込む。
「おお! 手に入れたか! よくやった」
パチュリーは視線を本からフランに向ける。
フランはすぐに机に向かい、盗んできた答案を広げる。
答案を眺めてパチュリーは目を細めた。
「じゃあ『トト神』は返してもらうわね」
パチュリーが呪文を唱えると、フランの頭から『トト神のDISC』が飛び出して、パチュリーの手元に向かう。
フランはノートと鉛筆を取り出して、答案の書き取りを始めた。
「上手くいったみたいだな」
図書館の奥から琢馬が出てきて、パチュリーの前に本を置く。
「ええ……ちょっと来てくれるかしら?」
急にパチュリーは立ち上がり、本棚の陰に隠れる。
「ん? どうしたんだ?」
パチュリーに言われて琢馬は、本棚の陰まで来る。
本棚の陰では、パチュリーが『トト神のDISC』を装備して『トト神』を開いていた。
「フランがあの後どうなるか気にならない?」
「あ、それ気になる」
パチュリーに誘われて、琢馬は『トト神』を覗き込んだ。
『トト神』の予言はこうだった。
“テストの日、フランとそのお友達は赤点を取りました。なぜならフランたちが抜き取った答案は、昔のテストの物だったからです”
と。
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ttp://www.youtube.com/watch?v=9e8XA7SxMS0
「こ……これはどういうことなの……?」
レミリアは、困惑していた。
無理もない。ドアを開けると廊下ではなく宇宙が広がっていたのだから。
「レミィ~! どこにいるのレミィ~! 声は聞こえど姿は見えず……」
暗闇の世界をおろおろと歩くパチュリー。
「……zzz」
事態に気付かず惰眠をむさぼる美鈴。
「畜生ッ! 悪い予感はしていたんだ……この扉は……ブラックホールだったんだッ!」
吹き荒れる暴風に耐える琢馬。
彼の目の前で開いているドアの先には暗闇が広がっている。
紅魔館に訪れる未曾有の事態。
この危機をフラン達は乗り越えることができるのか!?
次回ッ! ディスクブレイカー☆フラン!
『紅魔館の謎』
乞うご期待!