ディスクブレイカー☆フラン 『東方永夜抄6面で自重出来ていない蓬莱山輝夜その2』
ヘアブラシが、金色の川をすべり落ちた。
白魚のような細い指が、川に入り込み、上から下へと流れてゆく。
「これで良し。でも何でアフロになんか……」
鏡を前にして、フランは煮え切らない表情で髪をまとめていた。
気が付けば永遠亭から紅魔館へとワープ、しかも髪型がアフロに変わっていたのだ。
さっきまでこれは夢だと思っていたが、夢ではない。何らかのスタンド攻撃を受けている。フランの直感が叫んでいた。
一体どんなスタンドなのだろうか。誰がスタンドを使っているのだろうか。
スタンド博士ことディアボロに聞けば分かるかもしれないが、最近ディアボロの出番がない。
今日もディアボロの姿は見えなかったのだ。
幻想郷にたどり着く前に力尽きたか、無縁塚でロードローラーに潰された挙句に妖精に絡まれたか、はたまたヴェネチア・ホテルのベッドでふて寝しているか。
とにかくディアボロの出番はないのだ。無いったら無いのだ。
気を取り直し、フランは藤の籠を持って門を開いた。
以前のように壁を壊して飛び出してもよかったが、帰る度に姉の小言を浴びる羽目になるので最近はやらない。
足元の石畳を蹴って、フランは飛翔した。
夜空に虹をかけてフランは竹林の庵へと向かう。背後で12時を告げる鐘が鳴った。
そうしてフランは妹紅の住む、竹林の庵へとたどり着いたのだ。
庵の前では、妹紅が険しい顔をして壁に背を預けて立っていた。
「……妹紅さんも家にワープしたの?」
「まあね。何が起きたかさっぱりわからないけど」
溜息をついて妹紅は腹いせに玉砂利を蹴り転がす。
「とっとと行くわよ。あのグータラの野望を灰にしてやる」
少しキレ気味の妹紅は飛び上がり、永遠亭へと向かう。
フランもそれについていき、約10分。永遠亭へとたどり着く。
庭にはウサギたちが跳ねていて、2人の姿を見るなり駆け寄ってくる。
「もこうだー」
「ねー、なにしにきたのー?」
「ひめとけんか?」
ウサギたちはぴょんぴょん跳ねながら妹紅の周りに集まる。
相当なついている様子である。
その光景に2人は強烈なデジャヴを覚えた。
「フランが薬を貰いに来たんだよ。あとグータラをぶちのめしに」
抗争へ出向くヤクザじみた表情を浮かべて妹紅は歩を進めた。
ウサギたちはそそくさと道を開けて、2人を通す。
まるでモーゼと紅海であった。
「おお、みんな、かけだぞ! てゐねーさんにほうこくだ!」
「うおお~かけだ~」
「こうらいにんじん5ほん! わたしのぜんざいさんをもこうに!」
「いいですとも!」
騒ぐウサギたちをしり目に、妹紅は玄関を開けた。
「あら? 妹紅さんにフランちゃん。こんな時間にどうしたんですか?」
玄関には、荷物を抱えた鈴仙がいた。
2人はまたしてもデジャヴを感じた。
「ああ、フランが薬を貰いに来たんだよ。あとぐやの奴をぶちのめしに」
年代物のブーツを脱いで、妹紅は廊下を歩き始めた。
「だからってこんな夜遅くに来なくても……」
「こんな時間に空けている方が悪い」
妹紅は鈴仙を手伝わず、まっすぐ輝夜の部屋へと向かう。
「ちょっと居間で待っていてくださいね。すぐに荷物を片付けてきますから」
荷物を持って鈴仙は奥へと向かう。
フランは靴を脱いで居間に上がった。
ソファに座る。テーブルの上にお菓子が置いてあって、一匹のネズミが小さな袋に入ったチョコを開けようと苦戦している。
またしてもデジャヴであった。
「チョロ吉、なにやってんの?」
「お、おおお前なんで俺の名前知ってるんだ!?」
突然自分の名前を呼ばれたネズミことチョロ吉は驚いて飛び上がった。
「いや、忘れたの? 私の事」
「……ああ、何となくだが思い出した!」
そう言っておきながらチョロ吉はフランの事を全く思い出していなかった。
「なにやってんの?」
再び聞かれて、チョロ吉はチョコの袋をフランの前に置く。
「これさ、中にチョコ入ってるみてーだけど何故か取れないだよ。どうすればいい?」
フランはチョコの袋を手に取ると、両端を引っ張った。
たったそれだけの行動で袋は広がって、チョコはテーブルの上に転がる。
「おお! こうすりゃいいのか! さんきゅー!」
チョコを手に入れることに成功したチョロ吉は大喜びでチョコにかじりつく。
どこまでもデジャヴであった。
「なんか、嫌な予感がする……」
フランはチョコに夢中なチョロ吉を無視して立ち上がった。
さっきから何やら騒がしい。フランは騒ぎの元へと向かうことにする。
「なぜ私の邪魔をする! 私はずっとぐうたらしていたいだけなのに!」
「それはテメーのエゴだろが輝夜! 往生しやがれ!」
廊下では妹紅と輝夜が激しい弾幕戦を繰り広げていた。
光弾が障子を破り、炎が壁を焦がす。
拳と拳がぶつかり合い、蹴りと蹴りがぶつかって衝撃波をまき散らす。
正にルール無用のプロレスめいたファイト!
妹紅のダブルニープレス!
負けじと輝夜はサマーソルトキックからの連環腿で対抗!
空中で妹紅は体勢を立て直し、勢いよく輝夜に左手を握りしめて殴り掛かる!
そのままショルダータックル! ワン・ツー・ジャブ! そして黄金の右ストレート!
「ああーっと! 輝夜選手吹き飛ばされたァーッ!」
てゐがいつの間にか2人の戦いを実況し始めている。
観客はもちろん彼女の配下ともいえるウサギたち。
歓声を受けながら、輝夜は立ち上がった。
「ええい、2度ならずも4度もぶつなんて……父上にもぶたれたことないのに!」
「殴り合いなんていつもの事だろ! 来いよ輝夜。5つの宝なんて捨ててかかってこい!」
「私はあなたと違って戦ってばかりいるわけにはいかないのよ!」
輝夜は叫ぶと、都合よく垂れ下がっているロープを引いた。
妹紅の足元に穴が開いた。
「しまった!」
突然の事態に妹紅は反応できず、穴に落ちていく。
「うわあぁぁぁぁ……」
穴は深く、どこまでも深かった。
「どこまで落ちていくんだあぁぁぁ…………」
暗闇の中上も下もわからず、ただ落ちていくことだけが妹紅には理解できた。
「ふう。長く苦しい戦いだった……」
額の汗を袖で拭い、輝夜は一息ついた。
「これで私の1000年ぐうたら計画を邪魔する者はいなくなった。今頃妹紅は地球の裏側……そこからサンバでも踊りながら私の大願が成就する瞬間をながめていろッ!」
感慨深く頷いて、輝夜はロープを再び引っ張って妹紅の穴を閉じた。
「ふっふっふ……はっはっは!」
高笑いをして輝夜は廊下を後にした。
一部始終を堂々と眺めていたフランには気付いていない。
「あやしいわね」
輝夜の言っていた『1000年ぐうたら計画』という言葉に怪しさを覚えたフランは、輝夜を尾行することにした。
とはいっても、隠れ場所のないこの廊下では抜き足差し足で足音を立てないように歩くことしかできない。だが靴下を履いたフランの足では足音を立てずに歩くことは容易だった。
尾行されていることに本当に気付かず、輝夜は悠々と鼻歌を唄いながら自分の部屋へと向かい、ふすまを開いた。
部屋の中には、大きな機械が鎮座している。
中央に据え付けられた時計。
時計を中心として歯車やプーリ、クランクなどがギコギコと音を立てて動いている。
「さて、この『全自動マンダム巻き戻し機』の最終調整を行わなくては。さっきは妹紅に邪魔されてしまったが、今なら邪魔されずに調整に没頭できる……」
怪しい笑いを浮かべると、輝夜は1枚のスタンドDISCを取り出して、頭に差し込んだ。
彼女が差し込んだのは『マンダムのDISC』。時間を6秒巻き戻す腕時計のスタンド。
ゆっくりとした手つきで、輝夜は腕時計を外して機械の台座に据え付ける。
次に輝夜は、『河童の腕』と呼ばれる宝を引き寄せ、その指先を腕時計のつまみに挟もうとする。
だが、なかなか上手につまむことができない。
「う~む、これがなかなか難しい」
かちゃかちゃと騒がしい音を立てて輝夜は機械をいじくる。
その様を見てフランは、目を光らせて口を三日月のように曲げた。完全にいたずらする気の顔である。
猫のように背を曲げて、そろり、そろりと近づく。
靴下と畳がフランの足音を消し、輝夜は機械いじりに夢中なのも相まってフランの気配は完全に消えていた。
ついにフランは輝夜の背後にたどり着く。両手を上げて、
「わ~っ!」
大きな声と共に両手を輝夜の肩に叩き付ける!
「うぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
金属を丸ノコで切断したかのような叫びが永遠亭から飛び出した。
思ったよりも凄まじい輝夜の叫びに、フランは耳をつんざかれて放心状態になってしまった。
「あ、あなたは紅魔館の! どうしてこんなところに!」
振り向いた輝夜の目に入ったのは、目をまわしてダウンしているフランだった。
「もしかして……見られたか?」
目をまわして倒れているフランを、輝夜は舐めるように見つめる。
フランの目がカッ、と見開かれた。
「あーびっくりした」
やれやれと言いたげな動作でフランは立ち上がる。
「で、あなたは何を考えているのかしら?」
立ち直ったフランは、犯人を突き止めた探偵のように輝夜を指差す。
「言えるわけないでしょ。これが時間を巻き戻し続けるスーパーなスタンド機械だなんて……あ」
輝夜、自爆。
フランは無言で『全自動マンダム巻き戻し機』を見つめ、己の持つ『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』で吹き飛ばした。
鼓膜を破らんばかりの爆音が轟く。壊れた機械が天井を破り、天井に開いた穴からドクロをかたどったきのこ雲がもうもうと立ち上がる。
「あ、あああ……あ……」
鉄くずと化した『全自動マンダム巻き戻し機』を前にして、輝夜は崩れ落ちた。
「何故、何故壊したし!」
涙を滝のように流して、輝夜はフランに迫った。
「何でって……時間を巻き戻し続ける機械なんてろくでもないから壊すにきまってんじゃん」
図書館にあるいろんな本を読んできたフランには、時間を巻き戻す機械は大抵ろくでもない事を引き起こすということを知っていた。
だから破壊したのだが、その行動は輝夜にとっては何の説明もなく破壊されたとしか受け取ることができなかった。
しかし、輝夜にはまだチャンスがあった。
うずくまって泣くふりをしながら、輝夜はその手に持つスイッチを押した。
「……はッ!」
気が付くとフランは紅魔館の自室にいた。
またしてもデジャブ。
輝夜がスイッチを押すと同時に自分は自分の部屋にワープ。
2回目の出来事だ。
「う~む、どうなっているのやら……」
頭を掻きながら、今までの事を思い返そうとするが、手にあたった異質な感触で彼女の思考は中断された。
「ん?」
手にさわさわしたものが当たっている。
嫌な予感に駆られて、フランは散らかった部屋の中を必死に探し、手鏡を見つけ出した。
手鏡に映り込むのは、見事なアフロヘアーを湛えた自分の頭。
「うわぁ~ッ!」
フランの悲鳴が、紅魔館地下に轟いた。
ショックを受けて真っ白になるフランの背後では、ガラス細工の時計が12時45分を告げていた。
←To Be continued... EDテーマ Queen『Another One Bites The Dust』
ttp://www.youtube.com/watch?v=rNQRfBAzSzo
ヘアブラシが、金色の川をすべり落ちた。
白魚のような細い指が、川に入り込み、上から下へと流れてゆく。
「これで良し。でも何でアフロになんか……」
鏡を前にして、フランは煮え切らない表情で髪をまとめていた。
気が付けば永遠亭から紅魔館へとワープ、しかも髪型がアフロに変わっていたのだ。
さっきまでこれは夢だと思っていたが、夢ではない。何らかのスタンド攻撃を受けている。フランの直感が叫んでいた。
一体どんなスタンドなのだろうか。誰がスタンドを使っているのだろうか。
スタンド博士ことディアボロに聞けば分かるかもしれないが、最近ディアボロの出番がない。
今日もディアボロの姿は見えなかったのだ。
幻想郷にたどり着く前に力尽きたか、無縁塚でロードローラーに潰された挙句に妖精に絡まれたか、はたまたヴェネチア・ホテルのベッドでふて寝しているか。
とにかくディアボロの出番はないのだ。無いったら無いのだ。
気を取り直し、フランは藤の籠を持って門を開いた。
以前のように壁を壊して飛び出してもよかったが、帰る度に姉の小言を浴びる羽目になるので最近はやらない。
足元の石畳を蹴って、フランは飛翔した。
夜空に虹をかけてフランは竹林の庵へと向かう。背後で12時を告げる鐘が鳴った。
そうしてフランは妹紅の住む、竹林の庵へとたどり着いたのだ。
庵の前では、妹紅が険しい顔をして壁に背を預けて立っていた。
「……妹紅さんも家にワープしたの?」
「まあね。何が起きたかさっぱりわからないけど」
溜息をついて妹紅は腹いせに玉砂利を蹴り転がす。
「とっとと行くわよ。あのグータラの野望を灰にしてやる」
少しキレ気味の妹紅は飛び上がり、永遠亭へと向かう。
フランもそれについていき、約10分。永遠亭へとたどり着く。
庭にはウサギたちが跳ねていて、2人の姿を見るなり駆け寄ってくる。
「もこうだー」
「ねー、なにしにきたのー?」
「ひめとけんか?」
ウサギたちはぴょんぴょん跳ねながら妹紅の周りに集まる。
相当なついている様子である。
その光景に2人は強烈なデジャヴを覚えた。
「フランが薬を貰いに来たんだよ。あとグータラをぶちのめしに」
抗争へ出向くヤクザじみた表情を浮かべて妹紅は歩を進めた。
ウサギたちはそそくさと道を開けて、2人を通す。
まるでモーゼと紅海であった。
「おお、みんな、かけだぞ! てゐねーさんにほうこくだ!」
「うおお~かけだ~」
「こうらいにんじん5ほん! わたしのぜんざいさんをもこうに!」
「いいですとも!」
騒ぐウサギたちをしり目に、妹紅は玄関を開けた。
「あら? 妹紅さんにフランちゃん。こんな時間にどうしたんですか?」
玄関には、荷物を抱えた鈴仙がいた。
2人はまたしてもデジャヴを感じた。
「ああ、フランが薬を貰いに来たんだよ。あとぐやの奴をぶちのめしに」
年代物のブーツを脱いで、妹紅は廊下を歩き始めた。
「だからってこんな夜遅くに来なくても……」
「こんな時間に空けている方が悪い」
妹紅は鈴仙を手伝わず、まっすぐ輝夜の部屋へと向かう。
「ちょっと居間で待っていてくださいね。すぐに荷物を片付けてきますから」
荷物を持って鈴仙は奥へと向かう。
フランは靴を脱いで居間に上がった。
ソファに座る。テーブルの上にお菓子が置いてあって、一匹のネズミが小さな袋に入ったチョコを開けようと苦戦している。
またしてもデジャヴであった。
「チョロ吉、なにやってんの?」
「お、おおお前なんで俺の名前知ってるんだ!?」
突然自分の名前を呼ばれたネズミことチョロ吉は驚いて飛び上がった。
「いや、忘れたの? 私の事」
「……ああ、何となくだが思い出した!」
そう言っておきながらチョロ吉はフランの事を全く思い出していなかった。
「なにやってんの?」
再び聞かれて、チョロ吉はチョコの袋をフランの前に置く。
「これさ、中にチョコ入ってるみてーだけど何故か取れないだよ。どうすればいい?」
フランはチョコの袋を手に取ると、両端を引っ張った。
たったそれだけの行動で袋は広がって、チョコはテーブルの上に転がる。
「おお! こうすりゃいいのか! さんきゅー!」
チョコを手に入れることに成功したチョロ吉は大喜びでチョコにかじりつく。
どこまでもデジャヴであった。
「なんか、嫌な予感がする……」
フランはチョコに夢中なチョロ吉を無視して立ち上がった。
さっきから何やら騒がしい。フランは騒ぎの元へと向かうことにする。
「なぜ私の邪魔をする! 私はずっとぐうたらしていたいだけなのに!」
「それはテメーのエゴだろが輝夜! 往生しやがれ!」
廊下では妹紅と輝夜が激しい弾幕戦を繰り広げていた。
光弾が障子を破り、炎が壁を焦がす。
拳と拳がぶつかり合い、蹴りと蹴りがぶつかって衝撃波をまき散らす。
正にルール無用のプロレスめいたファイト!
妹紅のダブルニープレス!
負けじと輝夜はサマーソルトキックからの連環腿で対抗!
空中で妹紅は体勢を立て直し、勢いよく輝夜に左手を握りしめて殴り掛かる!
そのままショルダータックル! ワン・ツー・ジャブ! そして黄金の右ストレート!
「ああーっと! 輝夜選手吹き飛ばされたァーッ!」
てゐがいつの間にか2人の戦いを実況し始めている。
観客はもちろん彼女の配下ともいえるウサギたち。
歓声を受けながら、輝夜は立ち上がった。
「ええい、2度ならずも4度もぶつなんて……父上にもぶたれたことないのに!」
「殴り合いなんていつもの事だろ! 来いよ輝夜。5つの宝なんて捨ててかかってこい!」
「私はあなたと違って戦ってばかりいるわけにはいかないのよ!」
輝夜は叫ぶと、都合よく垂れ下がっているロープを引いた。
妹紅の足元に穴が開いた。
「しまった!」
突然の事態に妹紅は反応できず、穴に落ちていく。
「うわあぁぁぁぁ……」
穴は深く、どこまでも深かった。
「どこまで落ちていくんだあぁぁぁ…………」
暗闇の中上も下もわからず、ただ落ちていくことだけが妹紅には理解できた。
「ふう。長く苦しい戦いだった……」
額の汗を袖で拭い、輝夜は一息ついた。
「これで私の1000年ぐうたら計画を邪魔する者はいなくなった。今頃妹紅は地球の裏側……そこからサンバでも踊りながら私の大願が成就する瞬間をながめていろッ!」
感慨深く頷いて、輝夜はロープを再び引っ張って妹紅の穴を閉じた。
「ふっふっふ……はっはっは!」
高笑いをして輝夜は廊下を後にした。
一部始終を堂々と眺めていたフランには気付いていない。
「あやしいわね」
輝夜の言っていた『1000年ぐうたら計画』という言葉に怪しさを覚えたフランは、輝夜を尾行することにした。
とはいっても、隠れ場所のないこの廊下では抜き足差し足で足音を立てないように歩くことしかできない。だが靴下を履いたフランの足では足音を立てずに歩くことは容易だった。
尾行されていることに本当に気付かず、輝夜は悠々と鼻歌を唄いながら自分の部屋へと向かい、ふすまを開いた。
部屋の中には、大きな機械が鎮座している。
中央に据え付けられた時計。
時計を中心として歯車やプーリ、クランクなどがギコギコと音を立てて動いている。
「さて、この『全自動マンダム巻き戻し機』の最終調整を行わなくては。さっきは妹紅に邪魔されてしまったが、今なら邪魔されずに調整に没頭できる……」
怪しい笑いを浮かべると、輝夜は1枚のスタンドDISCを取り出して、頭に差し込んだ。
彼女が差し込んだのは『マンダムのDISC』。時間を6秒巻き戻す腕時計のスタンド。
ゆっくりとした手つきで、輝夜は腕時計を外して機械の台座に据え付ける。
次に輝夜は、『河童の腕』と呼ばれる宝を引き寄せ、その指先を腕時計のつまみに挟もうとする。
だが、なかなか上手につまむことができない。
「う~む、これがなかなか難しい」
かちゃかちゃと騒がしい音を立てて輝夜は機械をいじくる。
その様を見てフランは、目を光らせて口を三日月のように曲げた。完全にいたずらする気の顔である。
猫のように背を曲げて、そろり、そろりと近づく。
靴下と畳がフランの足音を消し、輝夜は機械いじりに夢中なのも相まってフランの気配は完全に消えていた。
ついにフランは輝夜の背後にたどり着く。両手を上げて、
「わ~っ!」
大きな声と共に両手を輝夜の肩に叩き付ける!
「うぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
金属を丸ノコで切断したかのような叫びが永遠亭から飛び出した。
思ったよりも凄まじい輝夜の叫びに、フランは耳をつんざかれて放心状態になってしまった。
「あ、あなたは紅魔館の! どうしてこんなところに!」
振り向いた輝夜の目に入ったのは、目をまわしてダウンしているフランだった。
「もしかして……見られたか?」
目をまわして倒れているフランを、輝夜は舐めるように見つめる。
フランの目がカッ、と見開かれた。
「あーびっくりした」
やれやれと言いたげな動作でフランは立ち上がる。
「で、あなたは何を考えているのかしら?」
立ち直ったフランは、犯人を突き止めた探偵のように輝夜を指差す。
「言えるわけないでしょ。これが時間を巻き戻し続けるスーパーなスタンド機械だなんて……あ」
輝夜、自爆。
フランは無言で『全自動マンダム巻き戻し機』を見つめ、己の持つ『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』で吹き飛ばした。
鼓膜を破らんばかりの爆音が轟く。壊れた機械が天井を破り、天井に開いた穴からドクロをかたどったきのこ雲がもうもうと立ち上がる。
「あ、あああ……あ……」
鉄くずと化した『全自動マンダム巻き戻し機』を前にして、輝夜は崩れ落ちた。
「何故、何故壊したし!」
涙を滝のように流して、輝夜はフランに迫った。
「何でって……時間を巻き戻し続ける機械なんてろくでもないから壊すにきまってんじゃん」
図書館にあるいろんな本を読んできたフランには、時間を巻き戻す機械は大抵ろくでもない事を引き起こすということを知っていた。
だから破壊したのだが、その行動は輝夜にとっては何の説明もなく破壊されたとしか受け取ることができなかった。
しかし、輝夜にはまだチャンスがあった。
うずくまって泣くふりをしながら、輝夜はその手に持つスイッチを押した。
「……はッ!」
気が付くとフランは紅魔館の自室にいた。
またしてもデジャブ。
輝夜がスイッチを押すと同時に自分は自分の部屋にワープ。
2回目の出来事だ。
「う~む、どうなっているのやら……」
頭を掻きながら、今までの事を思い返そうとするが、手にあたった異質な感触で彼女の思考は中断された。
「ん?」
手にさわさわしたものが当たっている。
嫌な予感に駆られて、フランは散らかった部屋の中を必死に探し、手鏡を見つけ出した。
手鏡に映り込むのは、見事なアフロヘアーを湛えた自分の頭。
「うわぁ~ッ!」
フランの悲鳴が、紅魔館地下に轟いた。
ショックを受けて真っ白になるフランの背後では、ガラス細工の時計が12時45分を告げていた。
←To Be continued... EDテーマ Queen『Another One Bites The Dust』
ttp://www.youtube.com/watch?v=rNQRfBAzSzo