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深紅の協奏曲 ―前奏曲は今も続いている 1―

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匿名ユーザー

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――――おいッ!そこの、あぶねぇぞ!!

 何度も味わった。

――――うわあああ!!俺は悪くない!こいつがッ、急にッ!!

 何度も抵抗した。

――――早く避難するんだッ!逃げ遅れるッ!!

 すべてが無駄に終わった。

――――邪魔するんじゃねええええ、そこどけやああぁぁ!!

 精神が壊れてしまえばどれほど楽であっただろうか。

――――何だ、何か巻き込んだのか……?――ッ!!

 それはできなかった。

――――今更一人二人どうということなかろうよ

 鎮魂歌はいつまでも続き、終わることはない。

――――悪いね。ここはそういう『決まり』なの

 そんなバカなことが……オレには、起きている。
 オレは、数えることが不可能と思うほどに『死んだ』。オレはあと何度『死ぬ』のだろうか?
 帝王であったはずの。他はすべてオレ以下だったというのに。

――――逃げなくてもいいよ。どうせ死ぬんだから

 『ヤツ』がオレより上の器だったということなのだろうか?オレは帝王になるにふさわしい身分ではなかったということなのだろうか?
 なんだっていい。今はこの輪廻を止めてほしい。
 もう 死ぬのは     。

――――「    、        。    、そこから先は知りませんけどね。」





「はっ!?ここは……」

 急速に意識が覚醒する。まただ。再び殺される。
 どうなるかわかっているのに、つい周りを確認してしまう。避けられないとわかっているのに、どうしても避ける方法を探してしまう。
 場所は、森。可能性として大きいのは大型動物、自然災害、そして、人間が何かと勘違いして殺してくること。

「おや……誰か、いるのですか?」

 声がかけられ、素早く後ろを振り向く。そこにいたのは『奇妙』と形容するしかない女性。
 見たことのない衣装。黄をメインとした、黒の混じった髪色。美しい輝きを放つ明かり。
 それよりも今の彼に対して大きな意味を持つもの。
 その女性よりも大きな、鉾。

「人間が、こんなところに……どうしたのですか?」

 女性が男に、手を差し伸べた。しかし……

「やめろおおぉ!!オレのそばに近寄るなああーーーーーッ!!!」

 彼女を拒絶する、男の絶叫が森に響く。

「やめろ、近寄るんじゃあないッ! オレを、オレをッ!!」
「どうしたのですか!? 別に私はあなたに危害を加えるわけではありません!!」

 男は拒絶を続け、彼女から離れ続ける。女性は声をかけるが、その必死な形相、あと一歩を踏み込めずにいた。

「オレは、ぐ、うぅ……」
「だ、大丈夫ですか!? 何か、悪いところでも……」

 男は急にうなだれ、地に倒れ伏す。女性は、あわてて介抱に走る。
 男の体に傷はない。何故かはわからないが、気を失ったようだ。その形相は、逃れられぬ恐怖を受け入れたくない、しかし何度も受け入れてしまっている。これほどの苦痛を受けている悲壮な表情は女性―寅丸星―もほとんど見たことはなかった。
 男は倒れる前、わずかに、呟いた。

「死にたくない……ド……」







「うぅん……あれ、ここは……」

 和風の一室で、少年が目を覚ます。

「ここは……どこだろう? ぼくは確かコロッセオでブチャラティを……」

 少年―ドッピオ―は自分にあったことを思い出す。ボスからの指令、セッコの襲撃、ブチャラティを誘導してから、それから……

「それから、えーっと……うぅ、頭が……」
「おや、気が付いたようだね」

 襖のが開き、その奥から少女の声が聞こえた。ネズミの耳を付けたその少女―ナズーリン―は吸い飲みと薬を持って布団へ近づく。

「容態はどうだい? 森の中で倒れていたと聞いたが。外傷はこれといってなかったがね」

 ナズーリンはドッピオの傍らに座り、彼の顔色を見る。問題ない、と判断したのか吸い飲みの中身を湯呑みに移す。
 だが、その説明はドッピオを混乱させるのには十分だった。

「森の中? え、そんなはずはないだろ。ローマの周辺に森なんてないし、そもそもぼくがいたのはコロッセオだぞ。何かあったなら、ケガだって……あ、あれれ?」

 と、自分の体を触ってみるが、確かに外傷はない。
 その様子をふむ、と見続けるナズーリン。しばらくすると、合点がいったかのように口を開いた。

「ははあ、なるほど。これが噂の外来人って者か。この辺りでは見慣れない風貌もしているし、何より雰囲気が違う。よかったね、命蓮寺の近くで発見されて」
「……? は、はぁ……」

 一人で合点がいっても。声には出さないがドッピオの表情にはありありと浮かんでいた。それを読み取って、ナズーリンは続ける。

「どういう経緯かは知らないが、君は元の世界から幻想郷に入り込んだんだ。詳しい説明は体が元通りになってからでいいんじゃあないかな」
「……??」

 飲むといい、と先ほど移し替えた湯呑みをドッピオに差し出す。
 それを飲んで一息つくと、ぱたぱたと外から駆ける音が聞こえる。

「ナズーリン、彼は目覚めたのですか?」

 星が部屋へと駆けつける。その顔は、純粋に彼を心配する表情だった。

「ああ、先ほどね。それにしてもご主人、そんなに病人の前で騒がしくしないでくれ。彼にも悪いし、ご主人にも悪い。焦って動けば、また何か失くしてしまうよ?」
「うっ、でもですね、私の前で急に倒れてしまったので、心配で心配で……」
「えーっと、あのう」

 二人で話が進んでしまい、蚊帳の外になってしまったドッピオが声をかける。

「ぼくにも現状がわからないのですが、とにかく何かを助けていただいたようでありがとうございます。けど、なんて言うかわからないけど自分の体は大丈夫そうなので。ぼくもこんなところで留まっている場合じゃあないんです」

 その言葉に、二人は疑問を浮かべた。

「体は大丈夫って、まだ戻っていないじゃあないか」
「ええ。それに、その姿のままでは力も出ないのでは? もっとも、そんな力を外来人は持っていると驚きましたが……」
「……え? それは、どういう……」

 ドッピオには話が分からない。だが、二人は先を見ていたからこそ理解できている。その調子で続けようとした。

「だって、あなたが倒れ気を失ってからあなたの体が小さく「とぅるるるるるるるるん」え?」

 星の言葉の途中で、ドッピオは奇妙な声を上げる。

「あ、電話……すいません、今の電話ぼく宛だと思うんですけど……とぅるるるるるるるん」
「……何を言っているんだ君は? ここに電話はないし、というか今君が「とぅるるるるるるるん」……おい、話をまじめにしてもらえないか?」
「いや、大真面目ですよ……とにかく、電話とってもらえますか?」

 ドッピオが体を起こし、『電話』を指さす。
 その先は、ナズーリンの尻尾の先にぶら下がっている籠の中―一匹の子ネズミ―だった。

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