ステージ情報:国家特別経済許可地区《グラン=アーヴィス》
■ 基本設定
惑星:地球
都市名:グラン=アーヴィス(アーヴィス中央繁華街)
時間帯:深夜(21時頃)
天候:雨天:雨が降りしきる。傘を差す者もいれば、気にせず歩く者もいる。
人口:都市全体:約2,000万人/市街地滞留:約3,000人
機能:AI統治型の経済特区。軍事施設は排除され、民間警備企業が治安維持を担当。
■ 通信・インフラ遮断演出(戦闘開始時)
トリガー:トゥルム=ザーンの“指スナップ”
都市全域が即座に停電。全AI制御・照明・車両が機能停止。
数秒後、ホロ広告が狂気的なトゥルム=ザーンの映像へと変貌。
通信機器が全停止。ネットワーク遮断状態に。
■ 都市構造・町並み設定
イメージモデル:新宿~渋谷をサイバーパンク風に強化
主街道:片側6車線+中央噴水広場。車両放置多数。
高層ビル群:50階超の商業・金融・娯楽ビルが林立。崩壊リスクあり。
スカイデッキ:ガラス製の空中回廊。攻撃や爆発で破壊可。
地下街:大規模ショッピングモールと避難区画。地盤脆弱。
裏路地:狭隘エリア。伏兵・逃走・待避に利用可能。
都市象徴:クロノ・スパイア:500m級の複合型シンボルタワー。商業・AI中枢・観光塔。
■ 都市交通インフラ
鉄道路線:6系統(私鉄・近郊線)
地下鉄:4路線(地下層移動)
高速鉄道:3系統(AI制御)
路線バス:4路線
路面電車:1路線(観光型)
■ 基本設定
惑星:地球
都市名:グラン=アーヴィス(アーヴィス中央繁華街)
時間帯:深夜(21時頃)
天候:雨天:雨が降りしきる。傘を差す者もいれば、気にせず歩く者もいる。
人口:都市全体:約2,000万人/市街地滞留:約3,000人
機能:AI統治型の経済特区。軍事施設は排除され、民間警備企業が治安維持を担当。
■ 通信・インフラ遮断演出(戦闘開始時)
トリガー:トゥルム=ザーンの“指スナップ”
都市全域が即座に停電。全AI制御・照明・車両が機能停止。
数秒後、ホロ広告が狂気的なトゥルム=ザーンの映像へと変貌。
通信機器が全停止。ネットワーク遮断状態に。
■ 都市構造・町並み設定
イメージモデル:新宿~渋谷をサイバーパンク風に強化
主街道:片側6車線+中央噴水広場。車両放置多数。
高層ビル群:50階超の商業・金融・娯楽ビルが林立。崩壊リスクあり。
スカイデッキ:ガラス製の空中回廊。攻撃や爆発で破壊可。
地下街:大規模ショッピングモールと避難区画。地盤脆弱。
裏路地:狭隘エリア。伏兵・逃走・待避に利用可能。
都市象徴:クロノ・スパイア:500m級の複合型シンボルタワー。商業・AI中枢・観光塔。
■ 都市交通インフラ
鉄道路線:6系統(私鉄・近郊線)
地下鉄:4路線(地下層移動)
高速鉄道:3系統(AI制御)
路線バス:4路線
路面電車:1路線(観光型)
■ 民間軍事企業ビル群(助っ人キャラ出現拠点)
クロノ・スパイアを中心に、2km圏内に6棟の高層拠点ビルが放射状に配置。
各企業は異なる専門性を持つPMC(Private Military Company)であり、支援要請、奇襲参加、独自思惑による参戦が可能。
導入で倒壊するビルには含まれない。
クロノ・スパイアを中心に、2km圏内に6棟の高層拠点ビルが放射状に配置。
各企業は異なる専門性を持つPMC(Private Military Company)であり、支援要請、奇襲参加、独自思惑による参戦が可能。
導入で倒壊するビルには含まれない。
1. サイバネティックカタナ
拠点:アラミガ・スパイラル第零棟
義体化と近接戦闘技術を極限まで高めた、白兵戦特化型PMC。
所属戦力は、全身または部分的にサイバネ手術を受けた戦闘員、高性能な義肢・義眼・神経加速装置を搭載した兵士、ならびに強化外装甲や高周波刀、電磁抜刀機構などの近接特化装備を身に纏う者たちで構成される。
高速機動と精密斬撃を主軸とし、狭所制圧・要人排除・奇襲殲滅を得意とする。
都市型近接戦において極めて危険な、斬撃戦の専門家集団。
拠点:アラミガ・スパイラル第零棟
義体化と近接戦闘技術を極限まで高めた、白兵戦特化型PMC。
所属戦力は、全身または部分的にサイバネ手術を受けた戦闘員、高性能な義肢・義眼・神経加速装置を搭載した兵士、ならびに強化外装甲や高周波刀、電磁抜刀機構などの近接特化装備を身に纏う者たちで構成される。
高速機動と精密斬撃を主軸とし、狭所制圧・要人排除・奇襲殲滅を得意とする。
都市型近接戦において極めて危険な、斬撃戦の専門家集団。
2. フォルト=グラヴィティ
拠点:ニュートンベース09
重力制御兵装と外骨格戦術を運用する、制圧・拘束特化型PMC。
所属戦力は、重力投射装置を背負った兵士、高出力パワードスーツ装着者、重装甲の制圧用外骨格兵、さらに重圧固定アンカーや局所重力場発生装置を運用する支援要員によって構成される。
敵の機動力を奪い、足場や構造物ごと押し潰すような圧殺戦法を得意とする。
真正面から敵陣を踏み砕く、鈍重かつ圧倒的な重装制圧企業。
拠点:ニュートンベース09
重力制御兵装と外骨格戦術を運用する、制圧・拘束特化型PMC。
所属戦力は、重力投射装置を背負った兵士、高出力パワードスーツ装着者、重装甲の制圧用外骨格兵、さらに重圧固定アンカーや局所重力場発生装置を運用する支援要員によって構成される。
敵の機動力を奪い、足場や構造物ごと押し潰すような圧殺戦法を得意とする。
真正面から敵陣を踏み砕く、鈍重かつ圧倒的な重装制圧企業。
3. プロミネンス・ギアワークス
拠点:ソルアークス第5管区
高熱兵器、熱線装備、焼夷兵装の実戦投入を専門とする火力偏重型PMC。
所属戦力は、火炎放射兵、高熱ブレード装備兵、熱線砲・溶断砲運用兵、耐熱処理を施した強化装甲兵、および燃焼剤や加圧燃料を扱う整備班で構成される。
制圧力と破壊力に優れ、市街地戦では一帯を灼き払うほどの面制圧を行う。
敵を排除するだけでなく、戦場環境そのものを灼熱地獄へ変える危険な集団。
拠点:ソルアークス第5管区
高熱兵器、熱線装備、焼夷兵装の実戦投入を専門とする火力偏重型PMC。
所属戦力は、火炎放射兵、高熱ブレード装備兵、熱線砲・溶断砲運用兵、耐熱処理を施した強化装甲兵、および燃焼剤や加圧燃料を扱う整備班で構成される。
制圧力と破壊力に優れ、市街地戦では一帯を灼き払うほどの面制圧を行う。
敵を排除するだけでなく、戦場環境そのものを灼熱地獄へ変える危険な集団。
4. ナイトエラント・ヴァーシス
拠点:ストレイジ・クロウ・フォート
無人機、監視網、制圧ドローン運用を中核とする遠隔戦術型PMC。
所属戦力は、戦闘ドローン管制オペレーター、電子戦要員、遠隔狙撃支援兵、偵察・追跡・爆撃・制圧を担当する多種多様な自律無人機群で構成される。
上空支配と索敵能力に優れ、多数の機体で敵を包囲・分断・追跡し続けることを得意とする。
人員損耗を抑えつつ、戦場全域を機械的に管理・支配する合理主義の強いPMC。
拠点:ストレイジ・クロウ・フォート
無人機、監視網、制圧ドローン運用を中核とする遠隔戦術型PMC。
所属戦力は、戦闘ドローン管制オペレーター、電子戦要員、遠隔狙撃支援兵、偵察・追跡・爆撃・制圧を担当する多種多様な自律無人機群で構成される。
上空支配と索敵能力に優れ、多数の機体で敵を包囲・分断・追跡し続けることを得意とする。
人員損耗を抑えつつ、戦場全域を機械的に管理・支配する合理主義の強いPMC。
5. シンシアス=ガーデン
拠点:ライフフレア・ユニオン研究塔
精神干渉・認識操作・感情誘導技術を扱う、極めて異質なPMC。
所属戦力は、精神感応処置を受けた工作員、洗脳・幻覚・認識阻害装置を扱う技術兵、薬剤・音響・光学機器によって対象の知覚を乱す専門兵、さらに精神耐性を備えた護衛兵で構成される。
正面火力ではなく、混乱・誤認・恐慌・同士討ちを誘発することで戦局を崩壊させる。
肉体ではなく精神から敵を壊す、対人制圧において最も不気味な企業武装勢力の一つ。
拠点:ライフフレア・ユニオン研究塔
精神干渉・認識操作・感情誘導技術を扱う、極めて異質なPMC。
所属戦力は、精神感応処置を受けた工作員、洗脳・幻覚・認識阻害装置を扱う技術兵、薬剤・音響・光学機器によって対象の知覚を乱す専門兵、さらに精神耐性を備えた護衛兵で構成される。
正面火力ではなく、混乱・誤認・恐慌・同士討ちを誘発することで戦局を崩壊させる。
肉体ではなく精神から敵を壊す、対人制圧において最も不気味な企業武装勢力の一つ。
6. ヘルヴァニア・インダストリィ
拠点:シュバルツ・ヴェイル第13塔
異界由来の兵装、未解明エネルギー、現実法則を逸脱した装備を実用化する危険企業。
所属戦力は、異界兵装適合者、呪物・媒介装置の運用者、超常現象への耐性処置を受けた戦闘員、ならびに封印器・召喚器・異常出力兵装を携行する特殊部隊によって構成される。
通常兵器では対処困難な怪異・超常存在への対抗力に優れる反面、運用には大きな危険や代償を伴う。
契約兵器とも呪具兵装ともつかない異質な戦力を振るう、最も黒い噂の絶えないPMC。
拠点:シュバルツ・ヴェイル第13塔
異界由来の兵装、未解明エネルギー、現実法則を逸脱した装備を実用化する危険企業。
所属戦力は、異界兵装適合者、呪物・媒介装置の運用者、超常現象への耐性処置を受けた戦闘員、ならびに封印器・召喚器・異常出力兵装を携行する特殊部隊によって構成される。
通常兵器では対処困難な怪異・超常存在への対抗力に優れる反面、運用には大きな危険や代償を伴う。
契約兵器とも呪具兵装ともつかない異質な戦力を振るう、最も黒い噂の絶えないPMC。
■ 環境ギミック(マップトリガー)
都市停電:指スナップで全域暗転 → 狂気広告へ
崩壊ビル:衝撃・巨体移動で倒壊、地形変化+被害発生
地下街崩落:重圧で地盤抜け。NPC分断+落下演出
電力暴走看板:感電+盲目。近接するほどリスク上昇
狂気映像:精神干渉+混乱状態の演出トリガー
NPC犠牲演出:精神判定トリガー、名声やテンションに影響
■演出における注意点
国家保有の軍事勢力を街から徹底的に排除したため、グラン=アーヴィスには都市防衛機能は存在しない。
都市停電:指スナップで全域暗転 → 狂気広告へ
崩壊ビル:衝撃・巨体移動で倒壊、地形変化+被害発生
地下街崩落:重圧で地盤抜け。NPC分断+落下演出
電力暴走看板:感電+盲目。近接するほどリスク上昇
狂気映像:精神干渉+混乱状態の演出トリガー
NPC犠牲演出:精神判定トリガー、名声やテンションに影響
■演出における注意点
国家保有の軍事勢力を街から徹底的に排除したため、グラン=アーヴィスには都市防衛機能は存在しない。
事件開始導入
――国家特別経済許可地区《グラン=アーヴィス》/深夜21時頃・雨天
雨は、最初から街を冷やしていた。
国家特別経済許可地区《グラン=アーヴィス》。
軍を持たず、国家の都市防衛機能すら意図的に切り捨てたその街は、無数のホロ広告とガラスの高層ビル、AIに最適化された交通網、そして金の流れだけを正義とする光で成り立っている。
地上には片側六車線の主街道が雨を鈍く照り返し、中央噴水広場を囲うように巨大な商業ビル群が立ち並ぶ。
見上げればスカイデッキが幾重にも空を横切り、見下ろせば地下街へ続く導線が、夜の買い物客や帰路につく人々を飲み込んでいた。
時刻は二十一時頃。
深夜の入口に差しかかった繁華街には、それでもまだ三千人規模の人影があった。
傘を差して早足で行く者。
ネオンの下で立ち止まり、雨宿りがてら談笑する者。
無表情のままホロ端末を見つめる者。
民間警備企業の巡回ドローンが上空を流れ、都市全体は何事もないように動き続けていた。
そう――表面上は。
だが、その雑踏の中にいる一人だけが、気付いてしまった。
人の流れに自然に紛れ、あまりにも完璧に“人間の形”をなぞって立っている存在。
輪郭も、衣服も、佇まいも、歩幅すらも街に溶け込んでいるのに、どうしても何かが違う。
視線を外した瞬間には見失いそうなほど自然でありながら、認識した瞬間にだけ、強烈な異物感が脳髄を引っ掻く。
それは、“人間を真似た何か”だった。
雨粒がその肩を滑り落ちる。
ネオンが濡れた路面から反射し、その顔を一瞬だけ照らした。
その瞬間、そいつはゆっくりとこちらを見た。
見つけ返された、と理解した時にはもう遅い。
トゥルム=ザーンは、ほんの僅かに口元を歪め、静かに言い放つ。
トゥルム=ザーン:
「……ああ、お前は見えてしまったのだな?実に憐れだが、興味深くもある。
この完璧な模倣に、お前だけが“違和”を嗅ぎ取った。称賛をくれてやろう――下等生物にしては···だがな?」
その声が終わるのと、ほぼ同時だった。
周囲の通行人たちが、前触れもなく絶叫した。
男も、女も、若者も、警備員も、買い物客も、雨の中を歩いていた無関係なはずの人々が、一斉に喉を裂くような悲鳴を上げる。
何が起きたのか理解する暇もない。
肉が内側から引き裂かれ、皮膚が破れ、骨格の隙間から銀黒色のワイヤーが噴き出した。
肩口からはフレームがせり上がり、背骨を押し割るように機械骨格が展開し、眼球が弾け飛んだ眼窩には赤いセンサーが灯る。
人間が、人間だったものが、街角のあらゆる場所で悲鳴と共に変形していく。
ギガオートマトン。
それは兵器として現れるのではない。
そこにいた人間の中から“生えてくる”。
つい数秒前まで傘を差していた者が、誰かにメッセージを送っていた者が、恋人と肩を並べて歩いていた者が、雨の歩道に膝をつき、裂け、捻じれ、鋼の異形へと変貌していく。
濡れたアスファルトに血と油が混ざり、火花が走り、狂った金属音が悲鳴に重なる。
その惨劇は地上だけで終わらなかった。
通りの向こう側にそびえていた高層ビルが、突如として輪郭を失う。
ガラス張りの外壁が割れるのではなく、溶ける。
黒い油のような粘性を帯びて崩れ落ち、壁も梁も床も、内部構造ごと液状の闇へと変質していく。
中に取り残された人々は逃げる間もなくその黒に呑まれ、窓際で助けを求めた無数の影は、そのまま沈み、消えた。
一棟。
二棟。
さらに数棟。
アーヴィス中央繁華街の象徴だった高層建築群が、都市災害の常識を外れた仕方で崩壊し、都市そのものが怪物の材料へと組み替えられていく。
黒い油は地面を這い、脈動し、盛り上がり、やがて二つの巨大な異形を形作る。
片方は、都市を呑み込むような質量と歪んだ悪意をまとい、飲み込んだ人間の気配をその内部に濁らせた巨塊。
トゥルム=エメガ。
もう片方は、より鋭利で、より禍々しく、獣じみた輪郭を持ちながら、建造物そのものが生き物へ反転したかのような不快な存在感を放つ巨体。
ゼルファ=ザーン。
街はもう、ただの戦場ですらなかった。
最初からこの場所そのものが、トゥルム=ザーンの遊戯盤だったのだと理解させられる。
そして、トゥルム=ザーンはその中心で、舞台の幕を上げるように、軽く指を鳴らした。
――その瞬間。
グラン=アーヴィス全域が暗転する。
都市全体が即座に停電。
ホロ看板、街路照明、車両制御、信号、ビル管理AI、交通管制、セキュリティシステム。
この経済特区を支えていた全AI制御が一斉に沈黙し、数秒遅れてホロ広告群だけが不気味に再起動する。
そこに映し出されたのは、商品の宣伝でも企業広告でもない。
街中のあらゆる映像面が、狂気じみたトゥルム=ザーンの姿へと塗り替わる。
通信端末は圏外ではない。
もっと悪質な“断絶”だった。
回線そのものが死に、外部との連絡は完全に遮断される。
助けは来ない。
なぜならこの街には、国家の軍事力も、都市防衛機構も、最初から存在しないのだから。
残されたのは、発狂する群衆、変貌したギガオートマトン、崩れ続ける街、そして六つの民間軍事企業ビル群だけ。
救援があるとすれば、それは秩序のためではなく、各社の利益や思惑によってのみ現れる。
雨は、まだ降り続いている。
ネオンの死んだ街で、異形たちの輪郭だけが闇の中に浮かび上がる。
その中心で、トゥルム=ザーンは愉悦に満ちた声で告げる。
トゥルム=ザーン:
「さあ、遊びの時間だ
存分に戯れようじゃないか」
グラン=アーヴィスの夜は、この瞬間をもって終わる。
ここから先は都市災害ではない。
悪意ある知性が、街ひとつを玩具箱として開いた――明確な事件の始まりである。
――国家特別経済許可地区《グラン=アーヴィス》/深夜21時頃・雨天
雨は、最初から街を冷やしていた。
国家特別経済許可地区《グラン=アーヴィス》。
軍を持たず、国家の都市防衛機能すら意図的に切り捨てたその街は、無数のホロ広告とガラスの高層ビル、AIに最適化された交通網、そして金の流れだけを正義とする光で成り立っている。
地上には片側六車線の主街道が雨を鈍く照り返し、中央噴水広場を囲うように巨大な商業ビル群が立ち並ぶ。
見上げればスカイデッキが幾重にも空を横切り、見下ろせば地下街へ続く導線が、夜の買い物客や帰路につく人々を飲み込んでいた。
時刻は二十一時頃。
深夜の入口に差しかかった繁華街には、それでもまだ三千人規模の人影があった。
傘を差して早足で行く者。
ネオンの下で立ち止まり、雨宿りがてら談笑する者。
無表情のままホロ端末を見つめる者。
民間警備企業の巡回ドローンが上空を流れ、都市全体は何事もないように動き続けていた。
そう――表面上は。
だが、その雑踏の中にいる一人だけが、気付いてしまった。
人の流れに自然に紛れ、あまりにも完璧に“人間の形”をなぞって立っている存在。
輪郭も、衣服も、佇まいも、歩幅すらも街に溶け込んでいるのに、どうしても何かが違う。
視線を外した瞬間には見失いそうなほど自然でありながら、認識した瞬間にだけ、強烈な異物感が脳髄を引っ掻く。
それは、“人間を真似た何か”だった。
雨粒がその肩を滑り落ちる。
ネオンが濡れた路面から反射し、その顔を一瞬だけ照らした。
その瞬間、そいつはゆっくりとこちらを見た。
見つけ返された、と理解した時にはもう遅い。
トゥルム=ザーンは、ほんの僅かに口元を歪め、静かに言い放つ。
トゥルム=ザーン:
「……ああ、お前は見えてしまったのだな?実に憐れだが、興味深くもある。
この完璧な模倣に、お前だけが“違和”を嗅ぎ取った。称賛をくれてやろう――下等生物にしては···だがな?」
その声が終わるのと、ほぼ同時だった。
周囲の通行人たちが、前触れもなく絶叫した。
男も、女も、若者も、警備員も、買い物客も、雨の中を歩いていた無関係なはずの人々が、一斉に喉を裂くような悲鳴を上げる。
何が起きたのか理解する暇もない。
肉が内側から引き裂かれ、皮膚が破れ、骨格の隙間から銀黒色のワイヤーが噴き出した。
肩口からはフレームがせり上がり、背骨を押し割るように機械骨格が展開し、眼球が弾け飛んだ眼窩には赤いセンサーが灯る。
人間が、人間だったものが、街角のあらゆる場所で悲鳴と共に変形していく。
ギガオートマトン。
それは兵器として現れるのではない。
そこにいた人間の中から“生えてくる”。
つい数秒前まで傘を差していた者が、誰かにメッセージを送っていた者が、恋人と肩を並べて歩いていた者が、雨の歩道に膝をつき、裂け、捻じれ、鋼の異形へと変貌していく。
濡れたアスファルトに血と油が混ざり、火花が走り、狂った金属音が悲鳴に重なる。
その惨劇は地上だけで終わらなかった。
通りの向こう側にそびえていた高層ビルが、突如として輪郭を失う。
ガラス張りの外壁が割れるのではなく、溶ける。
黒い油のような粘性を帯びて崩れ落ち、壁も梁も床も、内部構造ごと液状の闇へと変質していく。
中に取り残された人々は逃げる間もなくその黒に呑まれ、窓際で助けを求めた無数の影は、そのまま沈み、消えた。
一棟。
二棟。
さらに数棟。
アーヴィス中央繁華街の象徴だった高層建築群が、都市災害の常識を外れた仕方で崩壊し、都市そのものが怪物の材料へと組み替えられていく。
黒い油は地面を這い、脈動し、盛り上がり、やがて二つの巨大な異形を形作る。
片方は、都市を呑み込むような質量と歪んだ悪意をまとい、飲み込んだ人間の気配をその内部に濁らせた巨塊。
トゥルム=エメガ。
もう片方は、より鋭利で、より禍々しく、獣じみた輪郭を持ちながら、建造物そのものが生き物へ反転したかのような不快な存在感を放つ巨体。
ゼルファ=ザーン。
街はもう、ただの戦場ですらなかった。
最初からこの場所そのものが、トゥルム=ザーンの遊戯盤だったのだと理解させられる。
そして、トゥルム=ザーンはその中心で、舞台の幕を上げるように、軽く指を鳴らした。
――その瞬間。
グラン=アーヴィス全域が暗転する。
都市全体が即座に停電。
ホロ看板、街路照明、車両制御、信号、ビル管理AI、交通管制、セキュリティシステム。
この経済特区を支えていた全AI制御が一斉に沈黙し、数秒遅れてホロ広告群だけが不気味に再起動する。
そこに映し出されたのは、商品の宣伝でも企業広告でもない。
街中のあらゆる映像面が、狂気じみたトゥルム=ザーンの姿へと塗り替わる。
通信端末は圏外ではない。
もっと悪質な“断絶”だった。
回線そのものが死に、外部との連絡は完全に遮断される。
助けは来ない。
なぜならこの街には、国家の軍事力も、都市防衛機構も、最初から存在しないのだから。
残されたのは、発狂する群衆、変貌したギガオートマトン、崩れ続ける街、そして六つの民間軍事企業ビル群だけ。
救援があるとすれば、それは秩序のためではなく、各社の利益や思惑によってのみ現れる。
雨は、まだ降り続いている。
ネオンの死んだ街で、異形たちの輪郭だけが闇の中に浮かび上がる。
その中心で、トゥルム=ザーンは愉悦に満ちた声で告げる。
トゥルム=ザーン:
「さあ、遊びの時間だ
存分に戯れようじゃないか」
グラン=アーヴィスの夜は、この瞬間をもって終わる。
ここから先は都市災害ではない。
悪意ある知性が、街ひとつを玩具箱として開いた――明確な事件の始まりである。