蛮野はかつて、ゴルドドライブという戦士になった経験があった。そしてその時に言ったのだ、「これからはゴルドドライブと呼べ」と
だが愚かな出来損ないの息子も、クリムの寄生先のドライブも、そしてこの世界にいるチェイスも、ゴルドドライブと呼ぶことはなく、最後まで蛮野としか呼ばれる事はなかった。
これに対し蛮野ははっきり言って気に食わなかった。別にしつこく言う程ではない、言及しようと思ったわけではない、ただただ少しだけ自分の命令に従わなかった事が気に食わなかったのだ。
故に蛮野は決めたのだ、かつてのゼインドライバーである今の器の音声データを、己がゴルドゼインであるという事を印象付けさせるものにしようと
学園ではその時間がなく、その上善良な仮面を被っている必要があった。
だがもう今はその必要がない、己の名を、偉大さを全プレイヤーに刻むような音声を聴かせてやろう、そう思いながらドライバーと付属するプログライズキーを改造していたのであった。
『ゴォォォォォォルドゼイィィン!!』
こんな喧しい蛮野の肉声と同じであるプログライズキーの音声をもし或人とイズが聴いたらどう思うだろうか、或人は飲んでいる飲み物を吹き出し、イズはプログライズキーに重大な欠陥が生じたと結論を下すだろう。
ゼインが変身する時と同じく数多の光景が映った光球が複数出現した。だがそれは何れも外郭は黄金色、内部が血を流しているかのように赤く染まっていた。
「変身!!」
『ゴルドライズ!!』
プログライズキーをドライバーに装填し、一つになった光球から発せられる外装が綾小路清隆の肉体を包んでいく。
『GOAT!!GENIUS!!GOLDEN!!
その最中聞こえてくる音声は己の偉大さを、色を、
GOLDZEIN!!!!
名前を知らしめるかのように喧しく
ALL IS MINE』
そして己の醜さを啓示するかのように野望を告げて音声を終えた。
変身を終えてこのロワに新生したゴルドゼイン、その見た目は鎧の形状はゼインから変貌していない、だが全体的に白い部分は金色に、そして水色の部分は禍々しい赤色という、ゴルドドライブがゼインの形状になったものと化していた。
ドライバーとプログライズキーの色を変えたわけではない、ただ変身した時に蛮野の理想の姿になるように設定しただけである、それ故の色が変わっていないドライバーとそれによって変身した大きく色が変わった姿とのミスマッチぶりは際立っていた。
「う“あ”ッ!!」「ダアッ!!」
まず襲い来るはアナザーブレイドが甲高い女声を発しながら、カリュブディスが雄々しい声を発しながら、それぞれ刃と巨大化した拳を振るってくる
「ふんっ!!」
刃を躱すと同時に、拳を右へ弾き飛ばす。それと同時にカリュブディスを何度も殴打し弾き飛ばす
だがそれで視界が開けた瞬間、チノマナコディエンド変身態は持ち前のディエンドライバーで銃撃をしてくる。
「デオズカカ!!」
腕を盾にして防御、だがそれで怯んだ瞬間にジャマトライダーが己のブロイアームズを伸ばしてゴルドゼインを弾き飛ばした。
「くっ…!!」
薄々察した。こいつら相手にこのままではダメだと
ならばカードを使い捨てるしかない
『ブレイド!!』
取り出すは目の前の贋物に一番特攻である英雄の力と
『ギーツ、マグナムブーストフォーム!!』
創世の力を秘めた文字通り神の申し子の力
『執行 ジャッチメントオブゴッド!!!』
かつて己をネットワーク世界の神と称した男が己の身を犠牲に世界を救った英雄の力と女神の息子の力を行使する。
ゴルドゼインの手元に現れるは仮面ライダーブレイド愛用の剣であるブレイラウザーとマグナムシューター40X
「う“う”あ“あ”っ!!」
そして迫りくるはアナザーブレイド、ゴルドゼインは刃をブレイラウザーで受け止めながらマグナムシューターでハチの巣にする。
『Exceed Charge』
デルタムーバー放たれるは当たった物を捉える白い光弾、だがゴルドゼインは回避しながら
『THUNDER』
ブレイラウザーに雷を纏わせてからそれをデルタに向けて直撃させる。
そしてその雷が周りに伝搬し動きが封じられたタイミングで
『KICK』『THUNDER』『LIGHTNING BLAST』
アンデッドの力を右脚に纏うと同時に高く飛びあがり
「きえええええええええいっ!!」
アナザーブレイドにゴルドゼイン独自のアレンジである回転蹴りを叩き込むと同時に脚から雷を纏った弾丸を発射した(恐らくギーツのカードの効果だろう)、それはアナザーブレイドを貫きながらデルタにダメージを与え続ける。
アナザーライダーを倒す為の方法、それは対象のアナザーライダーと同じ力で倒す事である。ゴルドゼインはラーニングしたジオウのデータからそれを理解して、ブレイドの力を使ったのだ。
勿論本来はそれだけでは倒せる存在ではなかった、何故ならこのアナザーブレイドはブレイドとカリスの力を取り込んでいるからだ。だがゴルドゼインはブレイドだけでなくギーツの力も共に使っていた。故にアナザーブレイドに耐え切る事が出来る攻撃ではなくなっていたのだ。
アナザーブレイドとデルタは盛大に爆発した…その瞬間、デルタはゼインカードへと変換され、アナザーブレイドからは3つのウォッチが排出され、そのうちの一つは簡単に割れて散っていった。
その爆風で相手が怯んでいる隙にゴルドゼインはジャマトライダーに近づき
「貴様の力はもう持っているんだよ!!さっさと消えろぉ!!」
手っ取り早く倒す為、ジャマトライダーの胸倉を掴みながらジャマトバックルを抜き取り
『ゴッドネス パニッシュメントォォォォ!!』
黄金のエネルギーを纏った右腕で殴り飛ばし、素体に戻ってしまっていた執事ジャマトを爆発させた。
「デデコォォォォ!!」
残りはチノマナコディエンド変身態とカリュブディス・ハーキュリーのみ…その時だった
『KAIZIN RIDE ムースファンガイア』
『KAIZIN RIDE イーグルアンデッド』
『KAIZIN RIDE ブレイド』
『KAIZIN RIDE イーグルアンデッド』
『KAIZIN RIDE ブレイド』
戦力の損失を補うかのように2体の怪人と1人の怪人であり仮面ライダーである存在を召喚する
「…やはりその銃もカードの中の存在を召喚できるかぁ」
その為にカードを使っていたのをみたゴルドゼインはどこか喜色をまじえた声を上げた
空から襲い来るイーグルアンデッドを躱した瞬間、カリュブディスは力強く地面を殴りつけていたのだ
「うおっ…!?」
その震動によってゴルドゼインを宙に打ち上げると同時に…カリュブディスはゴルドゼインに焦点を合わせ
「ウオリャアアアアアア!!」
カラミティストライク、この世界においてステインが、やみのせんしが放ってきたデザストの必殺技を模した高速回転もくわえた体当たりをしてきたのだ。
「ぐああっ!!」
仮面ライダーファルシオンの力である不死鳥の翼を纏ながらの一撃はゴルドゼインに大きなダメージを与えながら吹き飛ばしていた
「おのれ…!!ただのNPCの分際で…私をここまで不快にさせるとはっ!!」
支給品の分際でよくそれを言えたものである
というのは置いといてうつ伏せになりながらも立ち上がろうとしているゴルドゼイン、だがカリュブディスはそれをさせる暇もなく大きな花弁状の口を広げ、ゴルドゼインを喰らおうとしてきたのだ。
あわやNPCによってプレイヤーが死ぬ事態が起きるか
『アマゾン 執行 ジャッチメントオブゴッド!!!』
…とは流石にならないようだ
「大―切断!!」
右腕に展開されるはアームカッター、野生に満ちた異質の仮面ライダーの剛力をもって口の中から十字にぶった斬った
脆い内部から斬り裂かれたカリュブディスは限界を迎え爆散、ワンダーライドブックを輩出しながら消えていった。窮地を脱したゴルドゼインは最後の敵であるチノマナコディエンド変身態と召喚された怪人達に向かい合った。
実を言うとこれだけで敵としては過剰戦力である。シンケンジャー6人+クウガをディケイド…もとい門矢士が来るまでブレイド抜きで圧倒していたのだから。
こういう敵に対しゴルドゼインはどうでるか…?それは
『ディエンド 執行 ジャッチメントオブゴッド!!!』
ゴルドゼインの右手に現れるはディエンドライバーと一枚のアタックライドカード、そしてカードをディエンドライバーに差し込んだ。
『ATTACK RIDE INVISIBLE』
その瞬間、ゴルドゼインは姿を消した。
チノマナコディエンド変身態と召喚された存在達は一斉に周囲を見渡す。どこに行ったのかを必死に探して見つけ出そうとする。
『ATTACK RIDE ILLUSION』
音がした先にブレイドが剣を振るったが空振りに終わる
「ヴヴッ…ヴアアアッ!!」
苛立ったチノマナコディエンド変身態は目玉を周囲に大量放出、見えない存在であろうと攻撃するつもりでMAP攻撃をしようとしたのだ。
それでもゴルドゼインは現れなかった…
「攻撃が当たらなくて残念だったな?」
『FINAL ATTACK RIDE DI・DI・DI DIEND!!』
その瞬間、周囲にいた4体のゴルドゼインがチノマナコディエンド変身態達を囲むかのように現れると同時に青緑の光線をぶっ放していた。
不意を突かれた怪人達は避ける事すら出来ず光線の餌食になるという結末しか残されていなかった。
「ヴヴ…ヴァァァ…!!」
罷りなりにもチノマナコディエンド変身態はブレイドの最強フォームであるキングフォームの必殺技、ロイヤルストレートフラッシュを持ちこたえた怪人である。他3体が撃破された攻撃にも耐える事は可能であった。
「…フン、予想以上にタフだな」
耐えきった事に対し少し苛立ちを感じながらディエンドライバーを奪い取り、チノマナコの姿へ強制的に戻すと同時にプログライズキーを押し込もうとするが
「………」
ふと少し考えてそれを中断しとあるカードを取り出す。
「ならば貴様には研究材料になってもらう!!」
『J 執行 ジャッチメントオブゴッド!!!』
ドライバーに装填したのは精霊の力を纏う大自然の守護者の力
そしてその瞬間、ゴルドゼインの肉体を緑色の粒子が
覆う事はなかった
「…やはり普通の状態であの姿になるのは無理か」
普通のJとあの姿の外見の違いは全くない、故に何も手を加えなくてもあの姿になれるかと思ったが…それは不可能だったようだ。
「まぁいい」
右腕にJサインを構えると同時に高く飛ぶ
「くらえっ!!」
精霊の力を纏いながら滑空するような軌道で放たれたドリルライダーキックがダメージで動けていないチノマナコに炸裂する。
「ヴォォォアァァ…!!」
遂に限界を迎えたチノマナコは爆散していった…
「くく…くくくっ…」
クリスタルゲージが晴れ、変身が解除された綾小路清隆はとても似合わない下種な笑みを浮かべていた。
この戦いにおいてゼインカードの消費枚数は5枚、その上カリュブディスから強烈な攻撃を喰らっている。ただのNPCに対しては大きな消費のはず
「ははは…ハーッハッハッハッハァッ!!!」
だがそれに見合った利益は得ていた。そう、この時蛮野に再び幸運が訪れていたのだった。
| 132:壊乱Ⅴ:アウトサイダーズ -Alteration-…狭間に下されし執行② | 投下順 | 132:狩崎博士お許しください! |
| 時系列順 | ||
| 綾小路清隆 | ||
| 蛮野天十郎 |