バトルフィーバーJ(Battle Fever J)


放映: 1979年2月3日~1980年1月26日
放映系列: テレビ朝日系列
放映時間: 毎週土曜18:00 - 18:30(JST)
話数: 全52話

概要

1979年の作品。マーベルコミックスグループ(当時)と東映の合作。
アベンジャーズ」を(広い意味で)ベースにした集団ヒーローもの。
「ジャッカー電撃隊」の打ち切りで途絶えた戦隊シリーズのリブートであり、現在のスーパー戦隊の魁。

当時の状況

マーベルは「巨大だがアメコミが入れない市場」であった日本の攻略を狙っていた。そんな中で、(スタン・リーが酷評した)ニコラス・ハモンド版スパイダーマンが日本でヒットしたと聞き、東映と提携してスパイダーマン(東映版)を作成した。スパイダーマン(東映版)のヒットに続き、次の作品として「アベンジャーズ」をベースにした集団ヒーローを企画した。

日本側では、特撮人気が衰退*1。第二次特撮ブームを背負って立った石森(石ノ森)章太郎原作・東映特撮作品も息切れしつつあることが目に見えており、新たな作品のベースとしてマーベルを期待した。

本作品では、好評だった、スパイダーマン(東映版)で確立した、巨大ロボット戦による決戦というコンセプトを踏襲。以後、スーパー戦隊=集団ヒーロー+巨大ロボット戦というフォーマットを築く。

企画

現在公開されている資料から明らかになっているのは、以下の通り。
企画段階では、マーベルの「アベンジャーズ」をベースに、マーベルのキャラクター利用を考えていたようである。
一方、東映側としては「秘密戦隊ゴレンジャー」「ジャッカー電撃隊」のような集団ヒーローのリブートを考えたようである。
従って、マーベルキャラを使うという方針があり、それを踏まえた上で「もう一度、集団ヒーローをやろう」という流れだったようだ。
ミス・アメリカ(マデリーン・ジョイス:「マイナーなキャラクター」と表現されている)」から広げて、「世界各国のヒーローにしようか」という発想。
企画書「キャプテンジャパン」では、ミス・アメリカがベース。胸に自国の国旗をモチーフにしたワッペンをつけているデザインはそのため。
ムック本などで書かれている「ミズ・マーベルキャロル・ダンヴァース)が原型」というのは間違い、という指摘あり。
<問題点>
マーベルは、(おそらく当初の段階で)キャプテン・アメリカが世界各国のキャプテンたちを率いて戦う、というものを想定していた可能性あり。
しかし、同時期にアメリカで制作された、キャプテン・アメリカのテレビ映画制作により、版権を取れなくなった可能性がある。
なお、同時期にマーベルがアメリカでTV映画へのキャラクター利用を進めており、その中にミズ・マーベル(キャロル・ダンヴァース)が提示されていた。
この版権の利用について、ヒューマン・トーチの版権が押さえられて逆にマーベルが使えないという事態が起こっており、ミズ・マーベル(キャロル・ダンヴァース)の版権の利用は控えたのではないかとも推測される。
なお、企画のあったシルバーサーファーのアニメでは、ミズ・マーベルが「スズカ・マユミ」として登場する予定であったようである。

「ミス・アメリカ」以外の他のヒーローは、キャプテン・フランス、キャプテン・ケニヤ、キャプテン・ロシア、キャプテン・ジャパンと想定されていたようである。
マーベル側は、アメリカを代表するキャラクターとして、ミス・アメリカ(マデリーン・ジョイス)あるいはそれに代わるキャラクターがチームを率いることを強く求めた。
しかし最終的に、日本での放送ということであり、日本のキャプテン(後のバトル・ジャパン)がリーダーとなった。
なお、チーム構成をよく見ると、日本の組織に所属し世界各地に「留学」した男性四人(フランス、ケニヤ、コサック、ジャパン:別名「バトルマン」などとCMでは呼称)と、FBIに所属しアメリカから合流する女性ミス・アメリカ(バトルフィーバーJ)に分かれており、第一話でミス・アメリカがチームに合流する。

なお、もしマーベルの主張通りミス・アメリカがリーダーになった場合、マーベルの女性リーダーはすでに出ていた*2ので、おかしくはない。一方、スーパー戦隊では、女性リーダーは1994年の忍者戦隊カクレンジャー*3までまつ必要があり、相当早いことになった可能性があった。

ミス・アメリカの設定とデザイン

現存する企画書「キャプテンジャパン」には「ミス・アメリカ」が登場し、「ミス・アメリカ」は<感電によってパワーを得た>とされており、これは初代ミス・アメリカ(マデリーン)の設定と同じ。
また日本側のスタッフの証言でも、あくまで(「大昔に活躍した」)ミス・アメリカ(=マデリーン・ジョイス)でミズ・マーベル(=キャロル・ダンヴァース)ではなかったということである。
一方、特撮に登場する「ミス・アメリカ」のデザインは、当時のミズ・マーベル(キャロル)の第一期改良版の衣装(長袖のレオタードと顔にマスク)をベースに、色をピンクを主体に変えたものに、ミス・アメリカ(マデリーン・ジョイス)の胸のように、国旗(タイムリー・コミックスのマーク)をデザインした文様を入れたとみえる。なお、この意匠にあわせて残りのキャラクターも胸に国旗をあしらった。
ミス・アメリカのコスチュームだと、タイムリー・コミックスのマークのついたエンジ色のジャージ、長いマント、顔マスクなし、帽子という特徴があるはずで、公開されているコンセプトアートには、マーク以外にはこの特徴が見られない*4

マーベル内の位置づけ

マーベルのマルチバースに入っており、Earth-79203のナンバーを持っている。
理由を推測すると、
アベンジャーズのバリエーション、
②マーベルのキャラクターである「ミス・アメリカ」がいるため、
が考えられる。
なお、続くデンジマン、サンバルカンがこのユニバースに属するかは不明。

また、マーベルは、サバンのマイティー・モーフィング・パワーレンジャーズなどのコミックを、ライセンスものとしてつくっているが、特に東映原作を意識したユニバースは設定していないようである。

ミス・アメリカ(バトルフィーバーJ)」の版権はマーベルが持っていたようで、玩具などは「ミス・アメリカ(バトルフィーバーJ)」を除いた、「四人のバトルマン」で構成されたものが出されたようである。

トリビア

  • 制作が遅れ、肝心のロボットが間に合わず4話まで建造中のシーンを出したりした。
  • 次の提携作として「ムーンナイト」(を基にした「月光騎士」:ムーンナイトの胸の月が黄色で塗られたり、剣を帯びたりするなど「月光仮面」を意識していた様子。アメリカ側では「あれはムーンナイトではないと認識されているらしい」)が予定されていたが、日本版マンガ連載に留まった。また、シルバーサーファーのアニメ、3-Dマンハルクの企画(マンガ連載あり)も進められた。
  • しかし、マーベル側は、「マーベルのキャラクターを持ち込んで日本で同じことをやらせるより、日本の視聴者が見ているものに近い、新しいコンセプトを持ち込んだ方がよい」という結論に到達したらしく、次作「電子戦隊デンジマン」は、(東映側がいうには)「マーベルがソフトになって」日本側の企画がすんなりと通った。
  • マーベルの「アベンジャーズ」の一つのバリエーションと考えると、スーパー戦隊はアベンジャーズにルーツを持つということになる。
  • さすがに東映も「バタ臭い」と思ったらしく、時代劇俳優の東千代之助を隊長に据えることで、和の要素を入れた。


最終更新:2023年04月29日 12:07

*1 前年の1978年は、ウルトラマン、仮面ライダー、戦隊の3特撮シリーズの新作が放映されない年だった

*2 女性リーダーとしては、1975年にストームX-MEN)、1982年にワスプアベンジャーズ)、1987年には黒人女性のモニカ・ランボーアベンジャーズ

*3 鶴姫(「忍者戦隊カクレンジャー(1994年)」、ただし守るべき「姫」として)、ユウリ(「未来戦隊タイムレンジャー(2000年)」、女性の定番色"ピンク"であり実質的リーダーとして)、志葉薫(「侍戦隊シンケンジャー(2009年)」、リーダーの"レッド"として)

*4 案として、背中の半分くらいの短いマントを着けるものはあった