また逢いましょう(前編) ◆KKid85tGwY
柊かがみは海岸線の波打ち際から島の景色を眺めながら、地図と見比べていた。
とりあえずの行動方針をつかさ達を捜すと定めたのはいいが、自分の居る位置も分からないのが現状だ。
目前には木々に囲まれた空間に、暗闇の中に薄っすらと大型の公園遊具が幾つか見受けられる所から
そこは地図中央部の島にある、公園だと推測された。
現在位置を割り出した、かがみの次の思考は……。
とりあえずの行動方針をつかさ達を捜すと定めたのはいいが、自分の居る位置も分からないのが現状だ。
目前には木々に囲まれた空間に、暗闇の中に薄っすらと大型の公園遊具が幾つか見受けられる所から
そこは地図中央部の島にある、公園だと推測された。
現在位置を割り出した、かがみの次の思考は……。
(…………寒い!!)
海から上がってまだ幾許も過ぎていないかがみは、当然全身が濡れた状態のままだ。
濡れ鼠の身体が夜の冷気に晒され、全身が震える。
こんな状態のまま動いては、とても体力が持ちそうに無い。
せめて何か身体を拭く物か着替えになる物はないかと、その場でデイパックを漁った。
濡れ鼠の身体が夜の冷気に晒され、全身が震える。
こんな状態のまま動いては、とても体力が持ちそうに無い。
せめて何か身体を拭く物か着替えになる物はないかと、その場でデイパックを漁った。
(そう都合良くタオルや着替えが入ってるとは思えないけど、空飛ぶサーフィンボードが入ってた位だから
意外と何か役に立つ物でも…………あった?)
意外と何か役に立つ物でも…………あった?)
デイパックの中に差し入れた手が、布地の感触を探り当てる。
期待感を高まらせながら、それを勢い良く取り出す。
確かにそれは服だった。
しかしそれがどういった用途の服なのかは、かがみには分からなかった。
胸元から上が無いレオタードに、ひらひらと布が幾つも付いている。
困惑するかがみは服を抜き取る際に落ちた、1枚の紙片を拾い上げる。
服の説明書みたいだ。
そこには
『ファミリーレストラン・エンジェルモートでウェイトレスが着用している制服』
とあった。
期待感を高まらせながら、それを勢い良く取り出す。
確かにそれは服だった。
しかしそれがどういった用途の服なのかは、かがみには分からなかった。
胸元から上が無いレオタードに、ひらひらと布が幾つも付いている。
困惑するかがみは服を抜き取る際に落ちた、1枚の紙片を拾い上げる。
服の説明書みたいだ。
そこには
『ファミリーレストラン・エンジェルモートでウェイトレスが着用している制服』
とあった。
(こんなもん着るファミレスが在るか!!!)
今日もかがみのツッコミのキレは良好だ。
流石に殺し合いの場なので、声に出すのは控えているが。
何れにしろ、誰も聞く者が居ないツッコミ程空しい物は無い。
一呼吸入れた後、かがみはこの服を着てみるか真面目に思案する。
かがみにとってこの服を着るのは、はっきり言って場違いなコスプレでもする様で恥ずかしい。
しかしデイパックの中を探って見ても、他に着る服も無いようだ。
見た所、サイズもかがみが着るにちょうど良い物である。
逡巡している間にも、濡れた服は少しずつでも確実に体力を奪っていく。
(……やっぱり、これ着るしかないようね)
流石に殺し合いの場なので、声に出すのは控えているが。
何れにしろ、誰も聞く者が居ないツッコミ程空しい物は無い。
一呼吸入れた後、かがみはこの服を着てみるか真面目に思案する。
かがみにとってこの服を着るのは、はっきり言って場違いなコスプレでもする様で恥ずかしい。
しかしデイパックの中を探って見ても、他に着る服も無いようだ。
見た所、サイズもかがみが着るにちょうど良い物である。
逡巡している間にも、濡れた服は少しずつでも確実に体力を奪っていく。
(……やっぱり、これ着るしかないようね)
着替えの為、公園を囲む様に在る茂みに入る。
周囲に人が居ないとは確認したが、やはり視界が開けている所での着替えは落ち着かない。
濡れた服を靴と靴下以外は下着まで全て脱いで、エンジェルモートの制服を着込む。
やはり恥ずかしい事この上ないが、先程までの濡れた服による不快感と寒さは大分軽減された。
茂みに隠れたついでに、そこでまだ見ていない支給品を確認する。
食料や水、地図にコンパス、筆記用具やランタンなどサバイバルに必要とされそうな物と
そして説明されていた、武器と思しき物も見付かった。
それは野球に使われる、金属製のバット。
金属の硬さと重みを持ったこの鈍器なら、殴打して人を殺傷する事も可能だろう。
(本当に殺し合いをさせるつもりみたい…………って、私がこんな物を支給されたからって人を殺して回れる訳無いじゃない!!)
かがみは運動が苦手ではないが、野球部員でも無い平均を大きく逸脱する事も無い普通の女子高生だ。
そんなかがみにこのバットは、武器として使いこなすには些か重過ぎる。
最もどんな使い勝手の良い、例えば拳銃やナイフの様な武器を支給されたとしても殺し合いに乗るつもり等無かったが。
(……全く何考えてんのよ。…………まあ、護身用には使えるかもしれないわよね)
身を守る為には、唯一の武器を遊ばせる訳にはいかない。
金属バットを手に握りしめ、脱いだ服を含めた他の荷物をデイパックに仕舞う。
(そうだ、携帯使えるかな?)
かがみは学生服のポケットに入っていた携帯電話の存在を思い出し、それを取り出す。
もし携帯電話が使えれば、警察や家族に助けを呼ぶ事も可能だ。
携帯電話を開き、液晶から漏れる光を慌てて手で被いながら画面を確認した。
そこには『圏外』の文字。
(はあ…………駄目か。まあ、あんまり期待はしてなかったけど)
これだけ大規模な殺し合いを仕組んだ主催者だ。
携帯電話で外と連絡が取れるようにして置く筈が無いと、予想はしていた為
かがみは取り立てて落胆した様子も無く、再び携帯電話を仕舞い込んだ。
周囲に人が居ないとは確認したが、やはり視界が開けている所での着替えは落ち着かない。
濡れた服を靴と靴下以外は下着まで全て脱いで、エンジェルモートの制服を着込む。
やはり恥ずかしい事この上ないが、先程までの濡れた服による不快感と寒さは大分軽減された。
茂みに隠れたついでに、そこでまだ見ていない支給品を確認する。
食料や水、地図にコンパス、筆記用具やランタンなどサバイバルに必要とされそうな物と
そして説明されていた、武器と思しき物も見付かった。
それは野球に使われる、金属製のバット。
金属の硬さと重みを持ったこの鈍器なら、殴打して人を殺傷する事も可能だろう。
(本当に殺し合いをさせるつもりみたい…………って、私がこんな物を支給されたからって人を殺して回れる訳無いじゃない!!)
かがみは運動が苦手ではないが、野球部員でも無い平均を大きく逸脱する事も無い普通の女子高生だ。
そんなかがみにこのバットは、武器として使いこなすには些か重過ぎる。
最もどんな使い勝手の良い、例えば拳銃やナイフの様な武器を支給されたとしても殺し合いに乗るつもり等無かったが。
(……全く何考えてんのよ。…………まあ、護身用には使えるかもしれないわよね)
身を守る為には、唯一の武器を遊ばせる訳にはいかない。
金属バットを手に握りしめ、脱いだ服を含めた他の荷物をデイパックに仕舞う。
(そうだ、携帯使えるかな?)
かがみは学生服のポケットに入っていた携帯電話の存在を思い出し、それを取り出す。
もし携帯電話が使えれば、警察や家族に助けを呼ぶ事も可能だ。
携帯電話を開き、液晶から漏れる光を慌てて手で被いながら画面を確認した。
そこには『圏外』の文字。
(はあ…………駄目か。まあ、あんまり期待はしてなかったけど)
これだけ大規模な殺し合いを仕組んだ主催者だ。
携帯電話で外と連絡が取れるようにして置く筈が無いと、予想はしていた為
かがみは取り立てて落胆した様子も無く、再び携帯電話を仕舞い込んだ。
(……………………泣き声?)
殺し合いの緊張ゆえ、かがみは物音に敏感になっていたのだろう。
常ならば聞こえない様なか細い声。
しかし誰かの嗚咽の声を、かがみの耳は確かに捉えた。
かがみの脳裏に、泣いている妹や級友の姿が浮かび
危険も省みず、嗚咽の声を追う事にした。
常ならば聞こえない様なか細い声。
しかし誰かの嗚咽の声を、かがみの耳は確かに捉えた。
かがみの脳裏に、泣いている妹や級友の姿が浮かび
危険も省みず、嗚咽の声を追う事にした。
公園は遊具や砂場が設置された空間を、樹木や植え込みで覆う形になっている。
樹木や植え込みが上手く視界の通らない茂みを作り、先程の着替えもそこで行った。
その茂みを隠れながら、かがみは公園を散策する。
明かりも無いのでかなり暗いが、目が慣れれば障害物の有無位は問題無く把握出来る。
だから見付かってしまう危険を憂慮し、ランタンは使わないでおく。
樹木や植え込みが上手く視界の通らない茂みを作り、先程の着替えもそこで行った。
その茂みを隠れながら、かがみは公園を散策する。
明かりも無いのでかなり暗いが、目が慣れれば障害物の有無位は問題無く把握出来る。
だから見付かってしまう危険を憂慮し、ランタンは使わないでおく。
声の主は、公園のベンチ近くで見付かった。
かがみと同年代か少し下位の少年が、ベンチに座りもせず地に膝を着いている。
茂みに身を隠しながら様子を窺うかがみは、知人では無かった事に僅かに落胆を覚えるが気を取り直し少年を観察する。
少年は手の部分が大きなカギ爪となった義手の様な物を握り締めたまま、俯いて泣いていた。
殺し合いの渦中で見知らぬ人間に出会ったのに、何故か不思議と警戒心は感じない。
少年の持つ、まるで親に縋り付く子供の様な雰囲気がそうさせているのだろうか?
かがみと同年代か少し下位の少年が、ベンチに座りもせず地に膝を着いている。
茂みに身を隠しながら様子を窺うかがみは、知人では無かった事に僅かに落胆を覚えるが気を取り直し少年を観察する。
少年は手の部分が大きなカギ爪となった義手の様な物を握り締めたまま、俯いて泣いていた。
殺し合いの渦中で見知らぬ人間に出会ったのに、何故か不思議と警戒心は感じない。
少年の持つ、まるで親に縋り付く子供の様な雰囲気がそうさせているのだろうか?
(あの人、外国人かな? 殺し合いには乗っていないみたいだけど……)
危険が無い様だから、接触すれば何か情報を得るなりメリットがあるかも知れない。
それに泣いている人間を放置していくのも気が引ける。
何より、かがみ自身が1人で居る事に心細さを感じていた。
話によっては、自分の人捜しに同行して貰えるかも知れない。
かがみは少年への接触を決意する。
ゴクンと、音が鳴りそうなほど大きく唾を飲み込む。
安全だと踏んではいても、緊張は拭えない。
意を決して、茂みから姿を現そうとした瞬間。
それに泣いている人間を放置していくのも気が引ける。
何より、かがみ自身が1人で居る事に心細さを感じていた。
話によっては、自分の人捜しに同行して貰えるかも知れない。
かがみは少年への接触を決意する。
ゴクンと、音が鳴りそうなほど大きく唾を飲み込む。
安全だと踏んではいても、緊張は拭えない。
意を決して、茂みから姿を現そうとした瞬間。
「…………誰か居るんですか?」
少年から声を掛けられ、かがみは思わずビクッと身体を震わせた。
少年はゆっくりと、かがみの居る茂みに顔を向ける。
涙で目を腫らしてはいてもなお、端正な顔立ちだと窺える。
「私は、殺し合いには乗っていません。どうですか、良ければ私とお話しませんか?」
少年は先程まで泣きはらしていたとは思えない程、澄んだ声でかがみに語り掛ける。
(この人……泣いていた割に、変に落ち着いてるよね……)
かがみは少年の様子に、僅かな違和感を覚える。
(でも、どう見ても悪い人じゃないみたいだし……とにかくここは話をしてみた方が早いか)
しかしそれ以上に、最初に会った人間が殺し合いに乗っていない事に安心を感じた。
やがて、おずおずと茂みから姿を現す。
少年から声を掛けられ、かがみは思わずビクッと身体を震わせた。
少年はゆっくりと、かがみの居る茂みに顔を向ける。
涙で目を腫らしてはいてもなお、端正な顔立ちだと窺える。
「私は、殺し合いには乗っていません。どうですか、良ければ私とお話しませんか?」
少年は先程まで泣きはらしていたとは思えない程、澄んだ声でかがみに語り掛ける。
(この人……泣いていた割に、変に落ち着いてるよね……)
かがみは少年の様子に、僅かな違和感を覚える。
(でも、どう見ても悪い人じゃないみたいだし……とにかくここは話をしてみた方が早いか)
しかしそれ以上に、最初に会った人間が殺し合いに乗っていない事に安心を感じた。
やがて、おずおずと茂みから姿を現す。
◇ ◇ ◇
かがみとミハエルは並んでベンチに座り、互いの情報を交換した。
ミハエルはかがみの思っていた以上に落ち着いていた為、2人の情報交換は滞り無く進んだ。
2人とも殺し合いに乗っていない事。
2人とも殺し合いが始まってから誰にも会ってない事。
2人とも知人が殺し合いに参加している事。
お互いがそれらを確認し終える頃には、2人の雰囲気も幾分打ち解けたものになっていた。
ミハエルはかがみの思っていた以上に落ち着いていた為、2人の情報交換は滞り無く進んだ。
2人とも殺し合いに乗っていない事。
2人とも殺し合いが始まってから誰にも会ってない事。
2人とも知人が殺し合いに参加している事。
お互いがそれらを確認し終える頃には、2人の雰囲気も幾分打ち解けたものになっていた。
「そうですか。最初の会場で殺されたのが貴方の友人で、他に友人や妹さんまでこんな殺し合いに巻き込まれるなんて……」
「……………………」
「……私も妹が居るんだ。今では唯一の肉親で、とても大切にしている。
だから貴方の気持ちが分かるとは言えないけど、貴方が妹を心配しているのは分かるよ」
「……………………」
「……私も妹が居るんだ。今では唯一の肉親で、とても大切にしている。
だから貴方の気持ちが分かるとは言えないけど、貴方が妹を心配しているのは分かるよ」
ミハエルと話す内に、かがみは意識の奥に封印していた小早川ゆたかが殺された記憶を思い出す。
殺し合いが始まった直後は、高空からの落下でそれ所ではなく
それからもつかさ達を捜す事ばかり考え、あえて目を逸らしていた過去。
思い出しただけで、胃の中の物が込み上げそうになる。
自分でさえこうなのだ。こなたやみなみは、どんな気持ちで居るのだろうか?
止そう、これ以上気持ちが沈む事を考えるのは。
今はそんな事をしている場合じゃない。
幾らそう考えても、かがみにこれまで何処か曖昧だった殺し合いの実感が増していく。
かがみは何時の間にか自分の肩が、寒さとは違う理由で震えていた事に気づいた。
その肩に、ミハエルは自分へ抱き寄せる様に手が被せる。
殺し合いが始まった直後は、高空からの落下でそれ所ではなく
それからもつかさ達を捜す事ばかり考え、あえて目を逸らしていた過去。
思い出しただけで、胃の中の物が込み上げそうになる。
自分でさえこうなのだ。こなたやみなみは、どんな気持ちで居るのだろうか?
止そう、これ以上気持ちが沈む事を考えるのは。
今はそんな事をしている場合じゃない。
幾らそう考えても、かがみにこれまで何処か曖昧だった殺し合いの実感が増していく。
かがみは何時の間にか自分の肩が、寒さとは違う理由で震えていた事に気づいた。
その肩に、ミハエルは自分へ抱き寄せる様に手が被せる。
「ちょ、ちょっと何すんのよ!?」
突然の事にかがみは取り乱すが、ミハエルは落ち着いた様子のまま話し続けた。
「動揺してるんだね、無理も無い。こんな狂った殺し合いに巻き込まれて、平静で居られる方がおかしい位だ。
でも大丈夫。私が貴方を……いや、貴方だけじゃない。貴方の家族も友人も、殺し合いに巻き込まれた全ての人を救ってみせる!」
かがみはすぐには、ミハエルの言っている意味が飲み込めない。
「す、救うって……?」
ミハエルはかがみの目を、まっすぐ射抜く様に見つめる。
「ああ、私はこんな愚かな殺し合いは絶対に認めない。そして殺し合いを望まない人が犠牲になる様な悲劇を防ぎ、殺し合いそのものを止めてみせる!」
突然の事にかがみは取り乱すが、ミハエルは落ち着いた様子のまま話し続けた。
「動揺してるんだね、無理も無い。こんな狂った殺し合いに巻き込まれて、平静で居られる方がおかしい位だ。
でも大丈夫。私が貴方を……いや、貴方だけじゃない。貴方の家族も友人も、殺し合いに巻き込まれた全ての人を救ってみせる!」
かがみはすぐには、ミハエルの言っている意味が飲み込めない。
「す、救うって……?」
ミハエルはかがみの目を、まっすぐ射抜く様に見つめる。
「ああ、私はこんな愚かな殺し合いは絶対に認めない。そして殺し合いを望まない人が犠牲になる様な悲劇を防ぎ、殺し合いそのものを止めてみせる!」
ミハエルはそう言いながら、今度は思いを馳せる様に遠くへ視線を移す
殺し合いそのものを止めると言う話に、かがみは少なからず衝撃を受けた。
かがみとて殺し合いを肯定するつもりは無かったが、それを打破しようと言う発想は無かった。
何しろ普通の高校生なのだ。具体的な策は勿論、漠然としたアイデアすら浮かばない。
そもそも今の今までつかさ達の事を考えるのに精一杯で、そこまでの展望は無かった。
しかし少しでも考えてみれば、自分がつかさ達と共に生還する為には
殺し合いの打破か、少なくともその枠外への脱出が不可欠だと理解出来る。
そして自分と同年代か年少にしか見えないミハエルが、始まって間もない時間に殺し合い全体を視野に入れ解決しようとしている。
かがみはミハエルに対し、素直に感心した。
もっとも、その事と具体的な策が有るかどうかは当然別問題だが。
殺し合いそのものを止めると言う話に、かがみは少なからず衝撃を受けた。
かがみとて殺し合いを肯定するつもりは無かったが、それを打破しようと言う発想は無かった。
何しろ普通の高校生なのだ。具体的な策は勿論、漠然としたアイデアすら浮かばない。
そもそも今の今までつかさ達の事を考えるのに精一杯で、そこまでの展望は無かった。
しかし少しでも考えてみれば、自分がつかさ達と共に生還する為には
殺し合いの打破か、少なくともその枠外への脱出が不可欠だと理解出来る。
そして自分と同年代か年少にしか見えないミハエルが、始まって間もない時間に殺し合い全体を視野に入れ解決しようとしている。
かがみはミハエルに対し、素直に感心した。
もっとも、その事と具体的な策が有るかどうかは当然別問題だが。
「…………そうね、落ち込んでないでここからどうやって帰るかを考えないとね」
ミハエルは慈しむ様な表情で、再びかがみを見つめた。
「落ち込んだり立ち止まったりする事は悪い事じゃない。人は1人では弱い生き物だ。
私も……同志が居なければ、こんなに落ち着いて貴方と話は出来なかったでしょう」
「どうし?」
「私に、世界で自分の果たすべき役割を教えて下さった方だ。あの人のおかげで、今の私がある
……そう。人は自らの為すべき使命を為せば、それだけで世界は良くなると教えてくれた。
…………そして今この場での私の使命は、あなた達の様な人を救う事だ。同志なら、きっとそう仰ったに違いない」
同志と言う人物の事を話すミハエルは、先程までの落ち着き振りと打って変わりまるで自慢をする子供の様に高揚していた。
その様子に見とれていた自分に気付き、かがみは慌てて顔を背け口を挟む。
「と、とにかく励ましてくれてありがとう。貴方の言う通り、早くこんな殺し合いから抜け出す方法を見付けないとね」
「大丈夫、方法ならもう見当が付いてるよ。後は実行するだけだ」
ミハエルは慈しむ様な表情で、再びかがみを見つめた。
「落ち込んだり立ち止まったりする事は悪い事じゃない。人は1人では弱い生き物だ。
私も……同志が居なければ、こんなに落ち着いて貴方と話は出来なかったでしょう」
「どうし?」
「私に、世界で自分の果たすべき役割を教えて下さった方だ。あの人のおかげで、今の私がある
……そう。人は自らの為すべき使命を為せば、それだけで世界は良くなると教えてくれた。
…………そして今この場での私の使命は、あなた達の様な人を救う事だ。同志なら、きっとそう仰ったに違いない」
同志と言う人物の事を話すミハエルは、先程までの落ち着き振りと打って変わりまるで自慢をする子供の様に高揚していた。
その様子に見とれていた自分に気付き、かがみは慌てて顔を背け口を挟む。
「と、とにかく励ましてくれてありがとう。貴方の言う通り、早くこんな殺し合いから抜け出す方法を見付けないとね」
「大丈夫、方法ならもう見当が付いてるよ。後は実行するだけだ」
かがみは信じられないと言った表情で、目を見開いた。
「本当なの、それ!!? 」
「ハハハ。こんな嘘を付いたって、しょうがないじゃないか?」
具体的な方法が有る。
余りの話の展開に、かがみは喜ぶよりも先に混乱を覚える。
いきなり殺し合いに巻き込まれた事もそうだが、今度はそれがもう解決すると言うのだ。
まるで夢想に浸っている様な心地だった。
かがみを見つめるミハエルの眼の輝きから、迷いや誤魔化しは見られない。
ミハエルの話には何か根拠が有ると思える。
「本当なの、それ!!? 」
「ハハハ。こんな嘘を付いたって、しょうがないじゃないか?」
具体的な方法が有る。
余りの話の展開に、かがみは喜ぶよりも先に混乱を覚える。
いきなり殺し合いに巻き込まれた事もそうだが、今度はそれがもう解決すると言うのだ。
まるで夢想に浸っている様な心地だった。
かがみを見つめるミハエルの眼の輝きから、迷いや誤魔化しは見られない。
ミハエルの話には何か根拠が有ると思える。
(帰れるの!? 皆で? 本当に!!?)
まだ詳しい話も聞いていないのに、かがみは気の高揚を抑えられない。
まさか、こんなに早くこの悪夢から抜け出す糸口を掴めたなんて!
かがみは逸る気持ちも抑え切れず、ミハエルに問い質す。
「そ、それはどんな方法なのよ!?」
まだ詳しい話も聞いていないのに、かがみは気の高揚を抑えられない。
まさか、こんなに早くこの悪夢から抜け出す糸口を掴めたなんて!
かがみは逸る気持ちも抑え切れず、ミハエルに問い質す。
「そ、それはどんな方法なのよ!?」
ミハエルは少し考え込む様な素振りを見せた後
「……そうだね。こうしている間にも貴方の知人をはじめ、多くの人が危険に晒されている事になる。
もう、今からでも動き出すべきだ」
ベンチから立ち上がった。
動き出すって、どういう意味?
かがみがそう聞こうとした矢先、ミハエルがかがみに話し掛ける。
「かがみさん。貴方にも協力して欲しい」
「きょ、協力?」
思わず間の抜けた声を上げるかがみ。
「駄目かな?」
「え、いや…………私に出来る事が有るならいいんだけど。……でも、どうすればの?」
まさか自分が協力を請われるとは思わなかった為、少なからず狼狽するが
かがみに断る理由も無いので、それを了承した。
ミハエルはそんなかがみの様子を見ながら、穏やかに笑みを浮かべる。
「では、まず私が貴方を殺します」
「……そうだね。こうしている間にも貴方の知人をはじめ、多くの人が危険に晒されている事になる。
もう、今からでも動き出すべきだ」
ベンチから立ち上がった。
動き出すって、どういう意味?
かがみがそう聞こうとした矢先、ミハエルがかがみに話し掛ける。
「かがみさん。貴方にも協力して欲しい」
「きょ、協力?」
思わず間の抜けた声を上げるかがみ。
「駄目かな?」
「え、いや…………私に出来る事が有るならいいんだけど。……でも、どうすればの?」
まさか自分が協力を請われるとは思わなかった為、少なからず狼狽するが
かがみに断る理由も無いので、それを了承した。
ミハエルはそんなかがみの様子を見ながら、穏やかに笑みを浮かべる。
「では、まず私が貴方を殺します」
(…………?)
思考が空白で埋まる。
ミハエルが何を言ったのか、上手く理解出来ない。
「私は一応強力な武器を持っているけど、1撃で貴方を殺し損ねたら貴方を苦しめる結果になってしまう。
それに、出来れば貴方を傷つけたくない。だからここは首を絞めて殺す事にしよう」
近付くミハエルの両手を、かがみは他人事の様に目で追っていた。
「大丈夫。最初は苦しいかもしれないけど、すぐに楽になるから……」
ミハエルの指が、ゆっくりとかがみの首に絡まる。
そこで思考が追い付いた。
思考が空白で埋まる。
ミハエルが何を言ったのか、上手く理解出来ない。
「私は一応強力な武器を持っているけど、1撃で貴方を殺し損ねたら貴方を苦しめる結果になってしまう。
それに、出来れば貴方を傷つけたくない。だからここは首を絞めて殺す事にしよう」
近付くミハエルの両手を、かがみは他人事の様に目で追っていた。
「大丈夫。最初は苦しいかもしれないけど、すぐに楽になるから……」
ミハエルの指が、ゆっくりとかがみの首に絡まる。
そこで思考が追い付いた。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ミハエルの手を振り払い、 かがみはベンチから飛び退いた。
その拍子に足がもつれて転ぶが、それに構わずミハエルと距離を取ろうと後ずさる。
「どうしたんだ? 何かあったのか!?」
かがみの取り乱し様に、ミハエルは心配し声を掛ける。
しかし殺そうとした当人にそんな事を言われても、かがみは素直には聞けなかった。
「ど、ど、どうしたんだじゃ無いわよー!! あんた、殺し合いに乗っていたなかったんじゃなかったの!!?」
ミハエルの表情に浮かぶのは、純粋な疑問の色のみ。
かがみが狼狽する理由に、全く思い至らない様子だ。
「乗っていないけど?」
そして再び慈しむ表情に戻り、教え諭す様に語り掛ける。
「そうか、怖いんだね……。大丈夫。怖いのも苦しいのもすぐに終わらせるから、私に任せて」
「任せられるか!!」
「……もしかして、自殺をしたいのか? 確かに、それなら手間が省けるけど……」
「何でそうなる!!?」
ミハエルの手を振り払い、 かがみはベンチから飛び退いた。
その拍子に足がもつれて転ぶが、それに構わずミハエルと距離を取ろうと後ずさる。
「どうしたんだ? 何かあったのか!?」
かがみの取り乱し様に、ミハエルは心配し声を掛ける。
しかし殺そうとした当人にそんな事を言われても、かがみは素直には聞けなかった。
「ど、ど、どうしたんだじゃ無いわよー!! あんた、殺し合いに乗っていたなかったんじゃなかったの!!?」
ミハエルの表情に浮かぶのは、純粋な疑問の色のみ。
かがみが狼狽する理由に、全く思い至らない様子だ。
「乗っていないけど?」
そして再び慈しむ表情に戻り、教え諭す様に語り掛ける。
「そうか、怖いんだね……。大丈夫。怖いのも苦しいのもすぐに終わらせるから、私に任せて」
「任せられるか!!」
「……もしかして、自殺をしたいのか? 確かに、それなら手間が省けるけど……」
「何でそうなる!!?」
分からない。
ミハエルの言い分が、まるで理解出来ない。
さっきまで仲良く話していた相手が、何時の間にか得体の知れない怪物に変わっていた。
今まで経験した事も無い恐怖が、かがみを襲う。
ミハエルはかがみの混乱に構わず、その首に手を伸ばす。
かがみは手に持っていたバットの存在をやっと思い出し
それを横薙ぎに振るって、ミハエルの手を退けた。
ミハエルの言い分が、まるで理解出来ない。
さっきまで仲良く話していた相手が、何時の間にか得体の知れない怪物に変わっていた。
今まで経験した事も無い恐怖が、かがみを襲う。
ミハエルはかがみの混乱に構わず、その首に手を伸ばす。
かがみは手に持っていたバットの存在をやっと思い出し
それを横薙ぎに振るって、ミハエルの手を退けた。
「かがみさん。抵抗されると、貴方を上手く殺せなくなる」
「だ、だから乗ってない奴が、何で殺そうとするんだ!!」
「だから、貴方を殺し合いから救い出す為だ」
「ふざけんな!! あ、あんたが殺そうとしといて、何が殺し合いから救い出すよ!!」
「ああ、私の言い方が悪かったんだね。貴方はここで息絶えるけど、それは決して死ぬ訳ではない」
思わずかがみの手が止まった。
「私は貴方を、決して忘れない。貴方は私の胸の中で、生き続ける。
つまり私が殺し合いに優勝する事で、貴方は私と共に殺し合いから生還する事が出来るんだ。これで納得してくれた?」
「納得するかー!」
やはりまともに聞くべきではなかったと、後悔する。
「だ、だから乗ってない奴が、何で殺そうとするんだ!!」
「だから、貴方を殺し合いから救い出す為だ」
「ふざけんな!! あ、あんたが殺そうとしといて、何が殺し合いから救い出すよ!!」
「ああ、私の言い方が悪かったんだね。貴方はここで息絶えるけど、それは決して死ぬ訳ではない」
思わずかがみの手が止まった。
「私は貴方を、決して忘れない。貴方は私の胸の中で、生き続ける。
つまり私が殺し合いに優勝する事で、貴方は私と共に殺し合いから生還する事が出来るんだ。これで納得してくれた?」
「納得するかー!」
やはりまともに聞くべきではなかったと、後悔する。
ミハエルの雰囲気から、かがみを騙そうとか弄ぼうとかいう悪意は一切感じ取れない。
それどころか、心からかがみを案じてくれているのが見て取れる。
それがかがみには、どうしょうも無く恐ろしい。
善意を持って、自分を殺そうとしてくる者。
まるで出来の悪い冗談みたいだが、目前に実在するとこれほどおぞましい存在になるとは。
それどころか、心からかがみを案じてくれているのが見て取れる。
それがかがみには、どうしょうも無く恐ろしい。
善意を持って、自分を殺そうとしてくる者。
まるで出来の悪い冗談みたいだが、目前に実在するとこれほどおぞましい存在になるとは。
ミハエルが近付こうとすると、かがみはバットを振るい牽制する。
しかしやはりかがみには、金属バットは少し荷が重い。
かがみはバットを振る度に、その重量に僅かだが身体毎振られる。
「では聞こう。貴方は、何か他に殺し合いからの脱出法に心当たりが有るのか?」
「え!? な、無いわよ。そんなの……」
「代案も出さずに、非難だけされても困るよ。かがみさん……今大事なのは一刻も早く、皆を救い出す為に動く事だ」
振り終わりで身体が泳いだ所で、ミハエルにバットの持ち手を捕まれた。
「かがみさん。貴方には分からないだろうけど、私は世界を救う重大な使命を帯びているんだ」
そして反対の手がかがみの首を捕らえ、地面に押し倒す。
「それは『生誕祭』を行い『幸せの時』を迎えるとても重要な、意義深い使命だ」
かがみの首に体重が乗り、呼吸が困難な状態になる。
「かがみさん。ここで死ぬ事で、貴方は私が使命を果たす為の礎になるんだ。
つまり貴方の命は、多くの人を救う為に使われるんだ。これは素晴らしい事なんだよ」
そんなもん、知るか!! バカ!!!
そう叫びたくても、もう声も出ない。
酸欠で、かがみの顔色は青く変わっていく。
バットを持つ左腕も抑え付けられ、ビクともしない。
苦しみの余り、残った右手が砂利を強く掴む。
視界のミハエルの慈しむ様な顔が、見る見るぼやけていく。
そのミハエルの顔に、砂利を思い切り投げ付けた。
「……っ!」
ミハエルが一瞬怯む。
その左腕を力任せに振って自由にし、ミハエルの脇腹をバットで叩く。
当たったのはバットの真ん中辺りだったが、ダメージは充分に有った様で
ミハエルは後ろに転がりながら、かがみから離れていった。
それを最後まで見届けず、かがみはミハエルに背を向け駆け出した。
しかしやはりかがみには、金属バットは少し荷が重い。
かがみはバットを振る度に、その重量に僅かだが身体毎振られる。
「では聞こう。貴方は、何か他に殺し合いからの脱出法に心当たりが有るのか?」
「え!? な、無いわよ。そんなの……」
「代案も出さずに、非難だけされても困るよ。かがみさん……今大事なのは一刻も早く、皆を救い出す為に動く事だ」
振り終わりで身体が泳いだ所で、ミハエルにバットの持ち手を捕まれた。
「かがみさん。貴方には分からないだろうけど、私は世界を救う重大な使命を帯びているんだ」
そして反対の手がかがみの首を捕らえ、地面に押し倒す。
「それは『生誕祭』を行い『幸せの時』を迎えるとても重要な、意義深い使命だ」
かがみの首に体重が乗り、呼吸が困難な状態になる。
「かがみさん。ここで死ぬ事で、貴方は私が使命を果たす為の礎になるんだ。
つまり貴方の命は、多くの人を救う為に使われるんだ。これは素晴らしい事なんだよ」
そんなもん、知るか!! バカ!!!
そう叫びたくても、もう声も出ない。
酸欠で、かがみの顔色は青く変わっていく。
バットを持つ左腕も抑え付けられ、ビクともしない。
苦しみの余り、残った右手が砂利を強く掴む。
視界のミハエルの慈しむ様な顔が、見る見るぼやけていく。
そのミハエルの顔に、砂利を思い切り投げ付けた。
「……っ!」
ミハエルが一瞬怯む。
その左腕を力任せに振って自由にし、ミハエルの脇腹をバットで叩く。
当たったのはバットの真ん中辺りだったが、ダメージは充分に有った様で
ミハエルは後ろに転がりながら、かがみから離れていった。
それを最後まで見届けず、かがみはミハエルに背を向け駆け出した。
◇ ◇ ◇
ミハエルは目を擦りながら、ベンチ近くで存在を確認していた水道の蛇口を探し当てた。
水で目を洗いながら、ミハエルはデイパックから青いカードデッキを取り出す。
(本当は武器に頼りたくなかったけど…………もう、手段を選んではいられない)
目を洗い終えたミハエルは、締めた金属製の蛇口に
『ナイト』のカードデッキを映した。
水で目を洗いながら、ミハエルはデイパックから青いカードデッキを取り出す。
(本当は武器に頼りたくなかったけど…………もう、手段を選んではいられない)
目を洗い終えたミハエルは、締めた金属製の蛇口に
『ナイト』のカードデッキを映した。
◇ ◇ ◇
呼吸を整えながら恐怖に駆られ、遊歩道を必死に走る。
今のかがみに、後ろを振り返る余裕すらない。
今にも自分に追い縋ろうとするミハエルの幻影に追い立てられ、無我夢中で走る。
しかし目前に海が広がり、流石に足が止めざるを得なかった。
(ど、どっちに逃げれば良いのよ!? ……………………ひっ!!)
かがみの前を巨大な蝙蝠の様な怪物が、風をまいて横切った。
そのまま怪物はかがみの周りを、旋回し続けている。
(何? 何なのこいつ!?)
今のかがみに、後ろを振り返る余裕すらない。
今にも自分に追い縋ろうとするミハエルの幻影に追い立てられ、無我夢中で走る。
しかし目前に海が広がり、流石に足が止めざるを得なかった。
(ど、どっちに逃げれば良いのよ!? ……………………ひっ!!)
かがみの前を巨大な蝙蝠の様な怪物が、風をまいて横切った。
そのまま怪物はかがみの周りを、旋回し続けている。
(何? 何なのこいつ!?)
「かがみさん。どうやら貴方には、私の夢が理解して貰えない様だ」
かがみは自分が息を飲むのが分かった。
最も聞きたくない声が、背後から聞こえて来る。
「……本当に哀しい事だ。でも私は決して、貴方を救うのを諦めはしない。
人が夢に向かって諦めずに努力する事がどれほど大事かを、私は同志に学んだから…………」
振り返ると、銀色を基調にした西洋風の鎧が立っていた。声はそこから聞こえる。
かがみは自分が息を飲むのが分かった。
最も聞きたくない声が、背後から聞こえて来る。
「……本当に哀しい事だ。でも私は決して、貴方を救うのを諦めはしない。
人が夢に向かって諦めずに努力する事がどれほど大事かを、私は同志に学んだから…………」
振り返ると、銀色を基調にした西洋風の鎧が立っていた。声はそこから聞こえる。
逃げられない。
ならばと、バットを両手で構える。
かがみとしては、戦う覚悟を決めた。と言うより、ほとんど破れかぶれの心境だ。
袋小路に追い詰められれば、鼠でも猫に立ち向かう他無い。
ゆっくりと歩み寄って来るミハエルの肩口に、バットを振り下ろした。
まるで巨大な岩でも叩いた様な堅い手応えの後、衝撃で両腕が痺れた。
しかしそれ以上にかがみを驚かせたのは、バットで思い切り殴られたにも拘らずミハエルが小揺るぎもしていない事だ。
「…………かがみさん。これ以上貴方の個人的な我が侭で時間を浪費するのは、もう止めにしないか?」
今度は横からミハエルの頭を殴る。
やはりミハエルは、微動だにしない。
「大丈夫。貴方は私の中で生きるんだ。そうすれば私達は、永遠に『幸せの時』を生きられるのだから…………」
上段から振り下ろそうとしたバットを、ミハエルは片手で苦も無く受け止めた。
そして先刻と同じく、もう片方の手でかがみの首を絞める。
但しその力は、先刻の比では無い。
急激に意識が遠のいていく。
「さよならは言わないよ、かがみさん。これからは私と同じ夢の為に、共に生きていこう…………」
ならばと、バットを両手で構える。
かがみとしては、戦う覚悟を決めた。と言うより、ほとんど破れかぶれの心境だ。
袋小路に追い詰められれば、鼠でも猫に立ち向かう他無い。
ゆっくりと歩み寄って来るミハエルの肩口に、バットを振り下ろした。
まるで巨大な岩でも叩いた様な堅い手応えの後、衝撃で両腕が痺れた。
しかしそれ以上にかがみを驚かせたのは、バットで思い切り殴られたにも拘らずミハエルが小揺るぎもしていない事だ。
「…………かがみさん。これ以上貴方の個人的な我が侭で時間を浪費するのは、もう止めにしないか?」
今度は横からミハエルの頭を殴る。
やはりミハエルは、微動だにしない。
「大丈夫。貴方は私の中で生きるんだ。そうすれば私達は、永遠に『幸せの時』を生きられるのだから…………」
上段から振り下ろそうとしたバットを、ミハエルは片手で苦も無く受け止めた。
そして先刻と同じく、もう片方の手でかがみの首を絞める。
但しその力は、先刻の比では無い。
急激に意識が遠のいていく。
「さよならは言わないよ、かがみさん。これからは私と同じ夢の為に、共に生きていこう…………」
◇ ◇ ◇
「衝撃のぉ――――」
仮面ライダーに変身したミハエルは、以前よりも遥かに鋭敏な聴覚を発揮出来る。
その聴覚が捉えた。遠方から近付く声を。
それは足音を伴って、凄まじい速さで近付いて来る。
まさか人間か?
いや、有り得ない。
人間の脚で出せる速度ではない筈だ。
ではこの足音は何だ?
足音は、轟音へと変化していく。
ミハエルは思わずかがみを放し、振り向いた。
その聴覚が捉えた。遠方から近付く声を。
それは足音を伴って、凄まじい速さで近付いて来る。
まさか人間か?
いや、有り得ない。
人間の脚で出せる速度ではない筈だ。
ではこの足音は何だ?
足音は、轟音へと変化していく。
ミハエルは思わずかがみを放し、振り向いた。
「――――ファーストブリットォォォ!!!」
次の瞬間ミハエルは重力を見失い、視界の天地が逆転していた。
◇ ◇ ◇
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