上田教授のドンと来い!変身!

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上田教授のドンと来い!変身!  ◆eHLwmjPoFQ



普段は、その幻想的な景色により訪れた家族や恋人達を
迎え入れてくれるのであろう場所。

水族館。

だが、其処に人が存在しないというだけでその空間は一転する。
観るものも居らず、音も無く、ただ水槽を漂うだけの魚達は何処か寂しげであり、異質である。

そんな全てが音を失ったかのような世界を全力で疾走する一人の男性。
長身、筋肉質で無駄の無い体格、短く逆立った髪。
日本科学技術大学教授、上田次郎は必死に探していた。

自分の生理的問題を解決できる場所を。

上田が最後に覚えていた記憶。
それは確か次の著作の出版に向けて新たな研究対象を探していた時、
都合よく取材の依頼が舞い込んだ為、これまた都合の良い助手である山田奈緒子
同行させようと思い、彼女の自宅に侵入しようとした所までである。
其処から先は如何しても思い出すことができず、目が覚めれば自分は変な場所に拉致されていた。
自分の近くには誘いに行こうと思っていた当の本人、奈緒子の姿も見かけることができた。
彼女に声をかけようとした時、一歩踏み出そうとした時だ。
あの妙な子供が現れ、自分達に「殺し合いをしろ」と馬鹿げた命令をしてきたのは。
更に、子供は自分たちの首に付けられている首輪に爆弾が仕掛けられていると話し、
デモンストレーションとして目の前で見知らぬ少女の首輪を爆発させた。
だが、その一部始終を見届ける事無く、首輪が爆発した時点で上田は失神していたのだが…

そして、気がつけば上田はまるで人気の感じられない水族館の一画に放り込まれていた。
元来、小心者である上田はまず最初に周囲に自分の他に誰かこの場所に存在しないか確認した。
でなければ、怖くてしょうがないからである。
そんな儚い希望も空しく、この場所に自分一人しか存在していないという事だけを思い知らされると
この水族館という場所は上田にとって不気味な場所へと変化していく。
演出のためか薄暗い照明。
周りを取り囲む水槽。
その中を回遊しているだけの魚の群れ。
時に見え隠れする鮫等の獰猛な魚類の姿は上田に不安感を与えていく。

そして、小心ゆえに募る不安は遂に彼の膀胱を捉えた。

危機的状況の中でも上田のプライドは失禁だけは許さない。
一人で行動する事に暫しの逡巡こそあったものの、彼の膀胱はすでに臨界点を迎えている。
このままでは彼のプライドごと瓦解する瞬間を待つばかりであり、
故に立ち止まっている余裕はすでに無い。
彼は自分の巨大すぎる物体を両手で押さえつけると道標だけを頼りに駆け出した。

広い空間の中、表示される道標は曖昧であり、目的の場所を見出せぬまま迷走を続ける。
とある角を曲がった時に上田は思わず股間を押さえつけていた両手を離しそうになった。
向こう側から歩いてくる誰かの姿が確認できたから。
しかし、注視するまでも無くそれが小柄な子供の姿であると分かると立ち止まることはせず、
というより出来ず、一気にその子供の側まで駆け寄った。
突然、大柄な人物に駆け寄られた所為か、その少女は怯えた様子を見せたが、

「き、君、すまないがこの辺で手洗いを見なかったか!?」

上田の発したこの言葉を聞いた途端、顔を赤らめて俯くと意外とすぐ側にあった手洗いの場所を指差した。

「済まない!」

一言だけ、礼を告げ、上田はすぐに光明へと飛び込んだ。

暫しの開放感と安堵感。
だが、すぐに上田は気づく。
相手が子供だからと油断していたが、そもそも自分をここに連れてきたのも矢張り子供である。
あの少女だって何をしてくるか分かったものではない。
もしかしたら、こうしている間にも出口では恐ろしい準備をし、舌なめずりして待ち受けているかもしれない。
すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られたが、彼の描く放物線は止まらない。
開放感と焦燥と衝動、それらに蝕まれながら動けずに居る。

「あの~…」

少女に声をかけられた。

「ドゥワッ!」

息を呑む。
次に少女は何を自分に告げる気なのか、其処に何が待ち受けているのか上田の想像は止まらない。

「あ、あの!安心してください、私、何もする気はありません。
ただ、お願いしたいことがあるんです。
…だから、できれば早く出てきて欲しいです」

扉の外から最後は恥ずかしそうに告げる少女に
上田は「…あぁ、はい」と自分の状況を再認識し、間抜けに答えた。

「自己紹介をしておこう。私は日本科学技術大学教授上田次郎だ。
…ちなみに私の書いた『ドンと来い!超常現象』は全国で4千…マン…部程売れている。
サインならいつでも歓迎するよ?」

とりあえず、無事に目的を達成できた上田は出口で恥ずかしそうに待っていた
少女と共にゆっくり話ができる場所としてテーブルの備えられたラウンジに場所を移動していた。

「私は由詑かなみって言います。
それで、あの、人を探しているんです。
カズマっていうんですけど」

少女、由詑かなみはその幼い見た目よりも丁寧な態度で自己紹介し、上田に目的を話す。

「ほぅ、それでそのカズマというのはどんな人物なんだい?」

上田は人に会えた安心感からか、若しくは自分を頼りにしている少女に存在感を示す為か、
さっきまでの醜態を忘れているかのごとく冷静に振舞う。
かなみは少し考えたあと、

「えっと、カズ君は甲斐性無しのろくでなしで、凄く喧嘩っ早くて乱暴で
いつも怪我ばっかりしてくるんです。それで、えっと…」

そう答えた。

「そうではなくて、肉体的特長を聞いていたのだが」

少女の答えに上田は苦笑する。
まさか10にも満たないであろう子供に惚気話をされるとは思いもよらなかった。
(最近の子供は矢張り進んでいるな)そんな考えが頭をよぎる。

「あ、あの!惚気とかそういうつもりはなかったんです!
カズ君とはそういう関係じゃないし、それにそんな進んでいる気もないです!」

かなみが頬を赤らめながら必死に食い下がろうとしてくる。
少女の必死な姿に上田は一瞬とある疑問が頭をよぎったがすぐにかき消されてしまった。

「まぁ、この日本科学技術大学教授上田次郎に任せておきなさい。
ドンとこ~い!とね、ハハハハ!」

立ち上がり、胸を鳴らして腕を突き出す。
かなみは当初、きょとんとしていたが自分の頼みが受け入れられたのだと気づくと顔を輝かせて
「ありがとうございます」と丁寧にお辞儀をした。

「さてと、それではかなみちゃん、私達が今すべきことだが置かれている状況の確認だ。
差し当たっては支給されたものの確認だな。」

それだけ言うと、上田はテーブルの上にデイパックをどかりと置き、中身を漁っていく。
出てきたものは他の者にも支給されているという共用品、誰かの使い古しのポラロイドカメラ、
それに黒いカードデッキである。

「…なんだこれは」

一言だけ、呟く。
少女の前で余裕を示そうと思っていたのに支給品のあまりの使えなさについ言葉が漏れてしまった。
上田が呆然としている横で、かなみは支給品の陰に隠れていた紙に気がつき目を通し始める。

「…えっと、らいだーでっきについて?」

かなみの言葉で我を取り戻した上田はかなみから紙を譲り受け、読み通す。
其処に書いてある事は突拍子も無いことであり、
子供の頃に見ていたヒーロー物のドラマががまるでこの世に存在するかのごとく書かれている。
上田は紙に目をやりながら黒いカードデッキを手に取る。
説明ではこれを使うらしい。

「ふん、これを使えば変身できるだって?
馬鹿馬鹿しい、あのガキの遊びに其処まで付き合ってやる義理は俺には無いね」

上田はかなみに読んでいた紙を渡すと不意に立ち上がり、片手でカードデッキをぷらぷらとさせながら
土産物が陳列されているショーウィンドウの前まで歩いていく。

「変身!…なんてな」

ショーウィンドウに映る往年の特撮ヒーロ-のポーズを取った自分の姿。
何のつもりは無い、ただの冗談でそうしたのだが変化はすぐに訪れた。
ガラスに映る自分の鏡像に突然ベルトが巻きつく、
それと共に実際の自分にもベルトが巻きついている。
自分に訪れた予期せぬ変化に驚いた上田がベルトを外そうと腰に手を回したとき、
持っていたカードデッキを誤ってベルトのバックル部に差し込んでしまった。
その瞬間、ガラスに映る自分の姿に何かが重なり合ったと共に不意に身体を違和感が襲う。
何か、急に全身に力が漲ってくる様な感覚である。
自分の姿を確認しようとして正面のウィンドウを見る。
其処には頭部、肩部に角のようなオブジェが付き、
右脛にアンクレットが付いた黒い鎧を着た自分の姿が映りこんでいた。
それらを確認した時、上田は失神した。

「…え…うえ…さん…うえ…ださん…上田さん!」

誰かに名前を呼ばれている。

(…全く、あいつは私がいないと何もできないのか)

「うるさいぞYOUは、耳元でそんなに叫ばないでも聞こえている」

何故か妙にズキズキと痛む額を押さえながら、起き上がり、声の主の方に向き直る。
声の主。
そこには見慣れた人物の顔はなく、困ったような顔をしたかなみがいた。

「良かった、そんなに傷は深くなかったんですけど、打ち所が悪かったのかと心配だったんです」

段々と意識がはっきりして来た。
先ほど自分が立っていた場所の正面のウィンドウが大きくひび割れているのが見える。
多分、自分が気絶したときにそのまま激突してしまったのだろう、
額に触れた時に巻かれていた包帯がそれを物語っている。
意識がはっきりしてくると同時に自分が発していた言葉にうんざりしてくる。
こんな時に山田の事を真っ先に想像するとは思いもよらなかった。

「あぁ、大丈夫だともかなみちゃん。
それよりも、私にあの時何があったのか君は見ていたのか?」

上田の質問にかなみは更に困惑した表情を浮かべている。
かなみはしばらく考え込んだあと、

「…その事なんです。上田さん、あなたはアルターを知っていますか?」

何かが引っかかっているのだろうか、神妙な表情で逆に上田に質問を返す。

「アルター?何だそれは、『ALTERATION』の事か?
進化とか変化とかいう意味の…」

かなみの質問の意図が読めず、頭を掻きながら先程のガラスの前まで向かう。
ふと、そこで先程の黒いカードデッキが足元に落ちているのに気がつき、拾い上げた。

一瞬、先程の鎧を纏った自分の姿が脳裏をよぎった。

「ヲォウッ!…何だ、今のは!?」

持っていたデッキを思わず取り落とし、頭を振る。

そんな上田の様子を眺めながらかなみは考える。

(上田さんは嘘をついてない、それだけは何とか分かる。
あの自分の姿に本当に驚いている感じだった。
でも、だったら何でアルターの事を知らないんだろう?
それに、私のアルターもいつもよりなんだか漠然としてて強い思いしか分からない)

かなみが戸惑っている間、上田もまた考え込んでいた。

(今のはなんだ?もしかして、さっきのは本当に起こった事なのか?
変身だと?馬鹿な、あり得え無い。第一、質量保存の法則を無視している。
だが、もしあれが、本当におきた事ならこれはノーベル賞モノだぞ?
どうする?上田次郎。なぜベストを尽くさない!?)

足元にあるデッキを再度、手に取る。
これを使用する事は正直怖い。
だから、今、自分にできる事。
それはこのカードデッキは極力使用せずに科学によってその謎を解明する事。
その先にはきっとベストセラーとなった自分の著作が待っている。

拾い上げたカードデッキをズボンのポケットに仕舞いこみ、かなみの元に戻る。
かなみはまだ何かを考えていたのか、上田に肩を叩かれるまで
側まで来ていたことにすら気が付いていなかった。

「いくぞ、カズマって言うのを探すんだろう?
どうやら此処には他には誰もいないようだ、さっさと移動する事にしよう」

上田の方は迷いが吹っ切れたのか意気揚々と歩いていく。
その背中を追いかけながら、かなみは何処かにいるであろう想い人の無事を祈っていた。


【一日目深夜/G-6 水族館】
【上田次郎@TRICK(実写)】
[装備]インペラーのライダーデッキ
[支給品]支給品一式、富竹のポラロイド
[状態]額部に軽い裂傷(処置済み)
[思考・行動]
1.謎のカードデッキの科学的解明(怖いので使用はしない)
2.かなみと共にカズマの捜索
3.山田は…まぁ、どうでもいい

【由詑かなみ@スクライド(アニメ)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、ランダムアイテム(1~3確認済み)
[状態]健康
[思考・行動]
1.上田と共にカズマの捜索
2.アルターが弱まっている事、知らない人物がいる事に疑問

※彼女のアルター能力(ハート・トゥ・ハーツ)は制限されており
相手が強く思っている事しか読む事が出来ず、大まかにしか把握できません。
又、相手に自分の思考を伝える事もできません
※本編終了後のため、自分のアルター能力を理解しています。


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GAME START 上田次郎 050:男なら、ベストを尽くして強くなれ
由詑かなみ



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