青虎、闇夜にて、英雄を論ず ◆0RbUzIT0To
雲の合間から薄い月明かりだけが降り注ぐ闇夜の中。
一人の青年は天を仰ぎ、ただ瞳を閉じて静かに考え事をしていた。
青年の手の中には青色をした四角形のカードケース。
支給されたデイパックの中からそれを見つけた瞬間から、青年はそれを手放さない。
強くそのカードケースを握り締めたまま、青年は思考を巡らせていく。
いや、それは思考などという複雑なものではないかもしれない。
何故ならば彼は、自分の身に起こったたった一点の不可思議な現象について考えていたからだ。
その現象とは即ち――何故自分が、ここにこうして立っているのかという事。
一人の青年は天を仰ぎ、ただ瞳を閉じて静かに考え事をしていた。
青年の手の中には青色をした四角形のカードケース。
支給されたデイパックの中からそれを見つけた瞬間から、青年はそれを手放さない。
強くそのカードケースを握り締めたまま、青年は思考を巡らせていく。
いや、それは思考などという複雑なものではないかもしれない。
何故ならば彼は、自分の身に起こったたった一点の不可思議な現象について考えていたからだ。
その現象とは即ち――何故自分が、ここにこうして立っているのかという事。
――自分は死んだはずなのに。
もしも、仮に意識を失いつつも一命を取り留めていたとしても、自分がここにいるのはおかしい。
このように五体満足で歩けるはずがないし、目覚める場所もこんな殺戮の舞台の上などではなく病院のベッドの上のはずだ。
もしかしてあの出来事は全て夢だったのだろうか?
一度はそう思ってみたものの、あの時の痛みは決して夢のそれではなかったと思う。
ならば何故、自分が生きているのか……どれだけ考えても答えは一向に出なかった。
このように五体満足で歩けるはずがないし、目覚める場所もこんな殺戮の舞台の上などではなく病院のベッドの上のはずだ。
もしかしてあの出来事は全て夢だったのだろうか?
一度はそう思ってみたものの、あの時の痛みは決して夢のそれではなかったと思う。
ならば何故、自分が生きているのか……どれだけ考えても答えは一向に出なかった。
小さく溜息を吐きながら、先ほどデイパックの中身を確認した際に見つけた名簿へと視線を向ける。
そこには自分の名前と共に、よく知った三人の名前が連なって並んでいた。
そこには自分の名前と共に、よく知った三人の名前が連なって並んでいた。
「城戸くん達も……いるんだ……」
一人は、自分がかつて抹殺をしようとした能天気な青年。
彼はここに連れてこられてどう思っているのだろうか? ……少なくとも、大人しくしているようなタイプじゃないだろう。
一人は、何度か戦った事もある脱獄囚。
彼は恐らく、こんな状況でも楽しんでいる事だろう。
そして、もう一人――。
彼はここに連れてこられてどう思っているのだろうか? ……少なくとも、大人しくしているようなタイプじゃないだろう。
一人は、何度か戦った事もある脱獄囚。
彼は恐らく、こんな状況でも楽しんでいる事だろう。
そして、もう一人――。
「………」
その名前を睨み付けながら、青年は静かに歯を食いしばった。
クロをシロに変える敏腕弁護士、やけに癪に触る言い回しをする……青年流に言えば、"英雄"とは程遠い存在だった彼。
そんな彼に言われた言葉を思い出し、青年の体は自然と強張る。
クロをシロに変える敏腕弁護士、やけに癪に触る言い回しをする……青年流に言えば、"英雄"とは程遠い存在だった彼。
そんな彼に言われた言葉を思い出し、青年の体は自然と強張る。
――英雄になろうとした時点で、英雄になる条件を失っている。
「ああああああああああああっ!!」
突如声をあげながら、青年は地面に崩れ落ちる。
瞳には涙が浮かび上がり、全身は微かに震えていた。
怒りとも違う、絶望とも違う……彼の心の中にあるもの、それは虚無。
ずっと英雄になろうと思い、英雄になるべく行動をし、英雄に近づこうと努力してきた。
そう、全ては英雄になる為に――。
瞳には涙が浮かび上がり、全身は微かに震えていた。
怒りとも違う、絶望とも違う……彼の心の中にあるもの、それは虚無。
ずっと英雄になろうと思い、英雄になるべく行動をし、英雄に近づこうと努力してきた。
そう、全ては英雄になる為に――。
最初は、ただ師の教えに従いその指示する行動を起こしてきた。
神崎優衣の抹殺――その為にしたくもないアルバイトをこなして彼女に近づこうとした。
しかしその計画は失敗し……だが、すぐに青年は自分を取り戻した。
それはその計画の最中に死んだ、同じ目的の為に行動を共にしていた彼を思い恩師が言っていた言葉。
神崎優衣の抹殺――その為にしたくもないアルバイトをこなして彼女に近づこうとした。
しかしその計画は失敗し……だが、すぐに青年は自分を取り戻した。
それはその計画の最中に死んだ、同じ目的の為に行動を共にしていた彼を思い恩師が言っていた言葉。
"大事な人を失ったからこそ、人は英雄になれる"
そう、確かに恩師はそう言っていたのだ――そして、青年はそれを忠実に守った。
その恩師を殺したのだ。
なのに……それだというのに、かの弁護士は自分では英雄になれないと言う。
その恩師を殺したのだ。
なのに……それだというのに、かの弁護士は自分では英雄になれないと言う。
「どうして……かな……」
青年は忠実に恩師の言うことを守ってきたのだ。
英雄になる為に必死に行動を起こしてきたのだ。
だというのに、それが全て否定された――その行動を行ったからこそ、自分は英雄にはなれないのだと。
その言葉を投げかけられただけで、青年のアイデンティティーは簡単に崩れ去ったのだった。
英雄になる為に必死に行動を起こしてきたのだ。
だというのに、それが全て否定された――その行動を行ったからこそ、自分は英雄にはなれないのだと。
その言葉を投げかけられただけで、青年のアイデンティティーは簡単に崩れ去ったのだった。
その後の事は、おぼろげにしか覚えていない。
ただ――それでもまだ英雄になろうと、仮面ライダーの戦いに勝とうとしていた事は覚えている。
あの時、残っていた仮面ライダーを呼び出してミラーワールドへと舞台を移させ、
その隙にミラーワールドへと向かった彼らの出口となる車を炎上させた。
そしてそのままふらついた足取りで街へと出て――死んだ。
ただ――それでもまだ英雄になろうと、仮面ライダーの戦いに勝とうとしていた事は覚えている。
あの時、残っていた仮面ライダーを呼び出してミラーワールドへと舞台を移させ、
その隙にミラーワールドへと向かった彼らの出口となる車を炎上させた。
そしてそのままふらついた足取りで街へと出て――死んだ。
あの親子を庇ったのは、別に大した理由じゃない。
ただあの親子の後姿が、青年の恩師とその子供の姿に重なって見えたからだ。
……重なって見えた瞬間、青年の体は自然と動いていた。
それほどまでに、青年は恩師を敬愛していたのだ。
ただあの親子の後姿が、青年の恩師とその子供の姿に重なって見えたからだ。
……重なって見えた瞬間、青年の体は自然と動いていた。
それほどまでに、青年は恩師を敬愛していたのだ。
「香川先生……」
ぽつりと、誰に言うでもなく恩師の名を呟く。
しかし、その恩師はもうこの世に存在しないのだ……自分が殺したのだから。
恩師はもう自分に何も教えてくれない、道を指し示してくれない。
しかし、その恩師はもうこの世に存在しないのだ……自分が殺したのだから。
恩師はもう自分に何も教えてくれない、道を指し示してくれない。
「教えてください先生……僕は、どうしたらいいんですか……」
呟きながら、青年は歩き出す。
無防備な姿を晒しながら、森の中へと足を踏み入れる。
無防備な姿を晒しながら、森の中へと足を踏み入れる。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
森の中の茂みで、身を縮ませながら必死に体の震えを抑えている少女がいた。
まだ幼い……恐らく小学生であろうその少女は、しかし、震えながらも涙は流していなかった。
まだ幼い……恐らく小学生であろうその少女は、しかし、震えながらも涙は流していなかった。
「怖くなんてありませんわ……怖くなんて……」
うわ言のように、自身を鼓舞するように小声で呟き前を見据える。
初めて見た人間の死体――しかも、首輪が爆発するなどというグロテスク極まりない死に様。
そして、殺し合いをしろと命じられたこの状況。
首へと手をやれば、そこには冷たい金属製の首輪がつけられている事がわかる。
心の底から沸き上がってくる恐怖心を押さえ込みながら、少女は込み上げてくるものを我慢する。
初めて見た人間の死体――しかも、首輪が爆発するなどというグロテスク極まりない死に様。
そして、殺し合いをしろと命じられたこの状況。
首へと手をやれば、そこには冷たい金属製の首輪がつけられている事がわかる。
心の底から沸き上がってくる恐怖心を押さえ込みながら、少女は込み上げてくるものを我慢する。
本心を言えば、泣き出してしまいたい。
当然だ――こんな状況に放り込まれて、平気でいられるはずがない。
それが年端も行かない少女だというのなら尚更だ。
だが、それでも少女は決して恐怖に駆られて自暴自棄にはなっていなかった。
震える手で掴んでいた名簿に目を向ける。
先ほどから何度も見ていた、それこそ穴が開くほどに。
それほどまでにその名簿の内容は信じがたいものだった……何故なら。
当然だ――こんな状況に放り込まれて、平気でいられるはずがない。
それが年端も行かない少女だというのなら尚更だ。
だが、それでも少女は決して恐怖に駆られて自暴自棄にはなっていなかった。
震える手で掴んでいた名簿に目を向ける。
先ほどから何度も見ていた、それこそ穴が開くほどに。
それほどまでにその名簿の内容は信じがたいものだった……何故なら。
「にーにー……」
ぎゅっとその名簿を抱きながら、沙都子は目を瞑って思いを馳せる。
あの時兄がいなくなってしまったのは、多分に自分が弱すぎたからだろう……。
でも、今は違う。
兄が失踪してしまってから、自分は変わったはずだ。
もう兄を頼ってばかりいた幼かった日の自分ではない……。
今度は兄を支えられるほどまでに成長しているはずなのである。
あの時兄がいなくなってしまったのは、多分に自分が弱すぎたからだろう……。
でも、今は違う。
兄が失踪してしまってから、自分は変わったはずだ。
もう兄を頼ってばかりいた幼かった日の自分ではない……。
今度は兄を支えられるほどまでに成長しているはずなのである。
こんな状況では素直に喜べないのは事実である。
だが、だからこそ今は泣き言を言っている場合じゃないのだ。
いつまでも震えていては、兄が失踪する前の自分と同じである。
今度は自分が兄達を助けなければならない……自分は、強くなったのだから。
だが、だからこそ今は泣き言を言っている場合じゃないのだ。
いつまでも震えていては、兄が失踪する前の自分と同じである。
今度は自分が兄達を助けなければならない……自分は、強くなったのだから。
「圭一さん達もいらっしゃる事ですし、皆で力を合わせればきっと……」
そう、それにこの場にいるのは自分と兄の二人だけではない。
いつも自分を支えてくれる、大切な仲間達がいるのだ。
皆で力を合わせれば、こんな殺し合いなんてふざけた舞台から降りる事だって出来るはず。
いつも自分を支えてくれる、大切な仲間達がいるのだ。
皆で力を合わせれば、こんな殺し合いなんてふざけた舞台から降りる事だって出来るはず。
強く握り締めていた名簿をデイパックの中へと押し込むと、それを担いで静かに立ち上がる。
まだ若干震えは残っているが……しかし、いつまでもここにいる訳にもいかない。
まずは森を出て人の集まりそうな場所に向かわねば――と歩みを進めようとしたその時。
まだ若干震えは残っているが……しかし、いつまでもここにいる訳にもいかない。
まずは森を出て人の集まりそうな場所に向かわねば――と歩みを進めようとしたその時。
『ガササッ』
「!?」
背後から、何かが動く音が聞こえた。
ゆっくりと音を立てないように振り返りつつ、目を向ける。
音は茂みの向こうから聞こえてきた。
見通しの悪い森である事に加え、この闇夜では一体何者がそこにいるのかは確認出来ない。
もしかすれば、この森に生息する野生動物の類かもしれないが、さりとてそうだと断定する判断材料も無い。
このまま音を立てずに逃げるか……?
しかし、運動神経には自信があるとはいえ自分はまだ子供だ。
仮に音を立ててしまえば、すぐに追いかけられて捕まえられてしまうだろう。
それに……茂みの向こうにいる者が、この殺し合いをやる気になっている者だという確証も無い。
もしかしたら、自分の探していた仲間かもしれないし、そうだとすればここで離れてしまうのは非常に痛い。
音は茂みの向こうから聞こえてきた。
見通しの悪い森である事に加え、この闇夜では一体何者がそこにいるのかは確認出来ない。
もしかすれば、この森に生息する野生動物の類かもしれないが、さりとてそうだと断定する判断材料も無い。
このまま音を立てずに逃げるか……?
しかし、運動神経には自信があるとはいえ自分はまだ子供だ。
仮に音を立ててしまえば、すぐに追いかけられて捕まえられてしまうだろう。
それに……茂みの向こうにいる者が、この殺し合いをやる気になっている者だという確証も無い。
もしかしたら、自分の探していた仲間かもしれないし、そうだとすればここで離れてしまうのは非常に痛い。
茂みの向こうにいる者は自分の存在には気づいていないらしく、無反応だ。
逃げるべきか否か……難しい選択肢だが、どちらかを選ばなければならないのは事実。
拳をぎゅっと握り締め、少女は短い時間を使って思案をし結論を出した。
デイパックを背中に追い、後ろに下がって見通しの悪い道へと足をかける。
そして、このまま茂みの向こうにいる者へと声をかけようと息を深く吸い込んだ。
もしも相手がやる気になっている者だとしても、この位置取りならば逃げ切れるはずだ。
すぐに自分を追ってきたところで、この見通しの悪い道ならば相手も自分を見失うに決まっている。
何度も自分に言い聞かせるように心中で繰り返しながら、沙都子は自分を落ち着かせるとその口を開いた。
逃げるべきか否か……難しい選択肢だが、どちらかを選ばなければならないのは事実。
拳をぎゅっと握り締め、少女は短い時間を使って思案をし結論を出した。
デイパックを背中に追い、後ろに下がって見通しの悪い道へと足をかける。
そして、このまま茂みの向こうにいる者へと声をかけようと息を深く吸い込んだ。
もしも相手がやる気になっている者だとしても、この位置取りならば逃げ切れるはずだ。
すぐに自分を追ってきたところで、この見通しの悪い道ならば相手も自分を見失うに決まっている。
何度も自分に言い聞かせるように心中で繰り返しながら、沙都子は自分を落ち着かせるとその口を開いた。
「もし! お待ちになって下さいませ!!」
緊張しすぎていたからだろうか、思いがけず大きめの声が出てしまい両手で口を塞ぐ。
そして、そのままの姿勢で静かに茂みの向こうの様子を見た。
歩く音はピタリと止まったが、まだそこに誰かがいる気配は感じる。
手を下ろし、小さく深呼吸をしてから再び沙都子は茂みの向こうへと問いかける。
そして、そのままの姿勢で静かに茂みの向こうの様子を見た。
歩く音はピタリと止まったが、まだそこに誰かがいる気配は感じる。
手を下ろし、小さく深呼吸をしてから再び沙都子は茂みの向こうへと問いかける。
「あ、あなた様のお名前は何と仰るのですか? その……」
本来ならばやる気の有無なりを聞けばよかったのかもしれないが、やはり少女も混乱していたのだろう。
このような状況で真っ先に聞く質問が名前というのはマズかったかもしれないが、それも今更言っては仕方ない事。
出来れば自分の知る名前であって欲しいと思いながら、少女は依然逃げる態勢を取ったまま茂みの奥に耳を傾け――そして、聞いた。
か細く、まるで蚊の鳴くような声ではあるが……その声を。
このような状況で真っ先に聞く質問が名前というのはマズかったかもしれないが、それも今更言っては仕方ない事。
出来れば自分の知る名前であって欲しいと思いながら、少女は依然逃げる態勢を取ったまま茂みの奥に耳を傾け――そして、聞いた。
か細く、まるで蚊の鳴くような声ではあるが……その声を。
「僕は……北条、悟史……」
「……え?」
「……え?」
一瞬、聞き間違えをしたものかと思った。
だってその名は――ずっと探していた人の名前だったから。
名簿を見て、その名がある事を知って――これから見つけようと、意気込んでいたのだ。
それがまさか、こんなにあっさりと見つかるだなんて。
だってその名は――ずっと探していた人の名前だったから。
名簿を見て、その名がある事を知って――これから見つけようと、意気込んでいたのだ。
それがまさか、こんなにあっさりと見つかるだなんて。
「にー……にー……?」
「? 誰……なのかな?」
「わ、私ですわっ! 沙都子ですっ! にーにーッ!!」
「? 誰……なのかな?」
「わ、私ですわっ! 沙都子ですっ! にーにーッ!!」
先ほどまでの恐怖心を忘れたかのように笑みを浮かべ、駆け出す沙都子。
無論、その行く先は先ほどまで自分が逃げ込もうとしていた道ではない。
茂みの先――そこにいる人物の確認する為に、沙都子は走る。
無論、その行く先は先ほどまで自分が逃げ込もうとしていた道ではない。
茂みの先――そこにいる人物の確認する為に、沙都子は走る。
「にーにーっ!!」
声のした方向へと無我夢中で走り、茂みの中を掻き分けてその人を探す。
その時、ふと沙都子の目に人影が映りこんだ。
頭で静止をかける前に、体は自然と動きだす。
その人影をもっと間近で見ようと、その前に躍り出て――気づいた。
その時、ふと沙都子の目に人影が映りこんだ。
頭で静止をかける前に、体は自然と動きだす。
その人影をもっと間近で見ようと、その前に躍り出て――気づいた。
「えっ……?」
「……君は?」
「……君は?」
その人は……沙都子の探していた人物とは、別人である事に。
あまりにも予想外の事に、沙都子の思考は停止する。
何故? 自分は確かに聞いた、兄の名前を。
だというのに、どうして目の前にいるのは兄ではなく全く別人の男なのか。
何故? 自分は確かに聞いた、兄の名前を。
だというのに、どうして目の前にいるのは兄ではなく全く別人の男なのか。
固まっている沙都子を見つつ、しかし沙都子の目の前の男はポーカーフェイスを崩さない。
突然見知らぬ少女に声をかけられた上に、突然その少女が飛び出してきたというのに。
一向に青年は顔色を変えなかった。
突然見知らぬ少女に声をかけられた上に、突然その少女が飛び出してきたというのに。
一向に青年は顔色を変えなかった。
「……ねえ、どうしたの?」
「え……あ……」
「え……あ……」
青年に声をかけられ、ようやく沙都子は気を取り直す。
そうだ、混乱している場合ではない――まずは事情を聞かないと。
何故目の前の青年が兄の名を騙ったのか……それに、この殺し合いに乗っているのかどうかも。
何の武器も持たない自分を襲ってこない所を見ると乗っていない可能性が高いとは思うが、念の為に確認しておいた方がいい。
そうだ、混乱している場合ではない――まずは事情を聞かないと。
何故目の前の青年が兄の名を騙ったのか……それに、この殺し合いに乗っているのかどうかも。
何の武器も持たない自分を襲ってこない所を見ると乗っていない可能性が高いとは思うが、念の為に確認しておいた方がいい。
「あ、あの……ど、どうして北条悟史の名を騙ったのでございますか!?」
「……? どういう事?」
「どういう事もこういう事もございませんわ! ですから――!!」
「……僕は、東條だよ」
「へ?」
「……? どういう事?」
「どういう事もこういう事もございませんわ! ですから――!!」
「……僕は、東條だよ」
「へ?」
一気に捲し立てる沙都子を制し、静かに、矢張り小さな声で告げる青年。
その言葉を聞いて、沙都子は再び沈黙する。 東條――?
その言葉を聞いて、沙都子は再び沈黙する。 東條――?
「東條 悟(とうじょう さとる)……それが、僕の名前……だから……」
「嘘……そんな、まさか……」
「嘘……そんな、まさか……」
"とうじょう さとる"と"ほうじょう さとし"とを……聞き間違えたというのだろうか。
確かに、並べてみれば二人の名前はよく似ていた。
東條の声は小さいものだったし、沙都子も心の内でその名前が返ってくる事を期待していたのかもしれない。
故に、聞き間違えてしまったのも仕方の無いと言えるかもしれないが――。
確かに、並べてみれば二人の名前はよく似ていた。
東條の声は小さいものだったし、沙都子も心の内でその名前が返ってくる事を期待していたのかもしれない。
故に、聞き間違えてしまったのも仕方の無いと言えるかもしれないが――。
「こんな……こんな事って……」
沙都子はただその言葉を繰り返しながら、後ずさりをして目を細める。
そうだ、これ程残酷な事があろうものか……。
探していた兄だと思って近づいた相手が、実は全くの別人だったなんて。
知らず知らずの内に涙が込み上げてくるが、無意識の内にそれをどうにかして押し込める。
しかし、それでも悲しみは一向に収まらない。
半ば放心をしている沙都子をやはり無表情で見つめながら、東條は小さく溜息を吐く。
そうだ、これ程残酷な事があろうものか……。
探していた兄だと思って近づいた相手が、実は全くの別人だったなんて。
知らず知らずの内に涙が込み上げてくるが、無意識の内にそれをどうにかして押し込める。
しかし、それでも悲しみは一向に収まらない。
半ば放心をしている沙都子をやはり無表情で見つめながら、東條は小さく溜息を吐く。
それからどれだけの時間が流れたろう……数分か、数十分か。
少女と青年はその間ずっと無言で、見詰め合ったまま一歩も動かずにいた。
しかし、それだけの時間が経過すると、流石に沙都子も少しずつ冷静さを取り戻す。
そして冷えてきた頭で、今の自分の状況のマズさを今更ながらに感じ取った。
相手は見ず知らずの成人男性――もしも今の状態で襲われたならば、間違いなく死んでしまう。
少女と青年はその間ずっと無言で、見詰め合ったまま一歩も動かずにいた。
しかし、それだけの時間が経過すると、流石に沙都子も少しずつ冷静さを取り戻す。
そして冷えてきた頭で、今の自分の状況のマズさを今更ながらに感じ取った。
相手は見ず知らずの成人男性――もしも今の状態で襲われたならば、間違いなく死んでしまう。
少女と青年との間はそれほど離れてはいない。
今更逃げたところで追いつかれるのは見えている。
今更逃げたところで追いつかれるのは見えている。
「あ……あの……もし……」
「何かな……?」
「何かな……?」
大きな音を立てて唾を飲み込んだ後、沙都子は恐る恐るといった様子で青年に問いかける。
一方の青年は少女の事は全くの無関心といった様子で、ポーカーフェイスを崩さずに耳を傾ける。
一方の青年は少女の事は全くの無関心といった様子で、ポーカーフェイスを崩さずに耳を傾ける。
「あ、あなた様はこの殺し合いをする気にはなっておられないんですわよね?」
「…………」
「……あ、あの?」
「…………」
「……あ、あの?」
少女の問いかけに、しかし青年は答えようとしない。
ただ首を少しだけ捻り、手に持っていた青いカードデッキを見つめるのみだ。
それから再び数秒の沈黙があり……そして、ようやく青年は口を開く。
ただ首を少しだけ捻り、手に持っていた青いカードデッキを見つめるのみだ。
それから再び数秒の沈黙があり……そして、ようやく青年は口を開く。
「……どうしたらいいか、わからないんだ」
「え……?」
「先生がいたら……教えてくれると思うけど……先生はもう、いないから……。
英雄へのなり方も……ここでどうしたらいいのかも……」
「え……?」
「先生がいたら……教えてくれると思うけど……先生はもう、いないから……。
英雄へのなり方も……ここでどうしたらいいのかも……」
小さく、か細い声で言葉を淡々と紡いでいく青年。
その声には全く感情がこもっていない事に気づき、沙都子は少しだけ悪寒を感じる。
直感的に、本能が目の前の青年を危険なものだと感じ取っているのだ。
この殺し合いに乗るだとか、乗らないだとか……この青年は全く考えていない。
この青年はただ――どちらでもいいと思っている。
その声には全く感情がこもっていない事に気づき、沙都子は少しだけ悪寒を感じる。
直感的に、本能が目の前の青年を危険なものだと感じ取っているのだ。
この殺し合いに乗るだとか、乗らないだとか……この青年は全く考えていない。
この青年はただ――どちらでもいいと思っている。
「君は……わかるかな……? どうしたら英雄になれるのか……」
「えっ……?」
「えっ……?」
不意に青年から質問をされて戸惑う沙都子。
英雄になる方法? そんな哲学的な話を、何故こんな状況でしなければならないというのだろうか。
目の前の人間が何を考えているのかはわからないが、下手な答えは出来ない。
青年の目は冷たかったが、しかしそれ以上に真剣だった。
もしもここで茶化すような事を言えば青年は間違いなく怒りだし、場合によっては自分を殺すだろう。
唾をごくりと飲み込んで、沙都子は言葉を選びながら話し始める。
英雄になる方法? そんな哲学的な話を、何故こんな状況でしなければならないというのだろうか。
目の前の人間が何を考えているのかはわからないが、下手な答えは出来ない。
青年の目は冷たかったが、しかしそれ以上に真剣だった。
もしもここで茶化すような事を言えば青年は間違いなく怒りだし、場合によっては自分を殺すだろう。
唾をごくりと飲み込んで、沙都子は言葉を選びながら話し始める。
「え、英雄へのなり方、ですわね? それは……その……ええ、とても難しい問題ですわ。
どうすれば英雄になれるのか……」
「うん、難しいんだ……先生はその方法を教えてくれたけど、それじゃあなれなかったから……」
「あの……差し出がましいようですございますが、一つ質問をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「……うん」
「あなた……えっと、東條さんは、何故英雄になろうと……? あの、率直な疑問でしたので、その……」
「……だって、英雄だと、みんなが好きになってくれるでしょ」
「へ?」
どうすれば英雄になれるのか……」
「うん、難しいんだ……先生はその方法を教えてくれたけど、それじゃあなれなかったから……」
「あの……差し出がましいようですございますが、一つ質問をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「……うん」
「あなた……えっと、東條さんは、何故英雄になろうと……? あの、率直な疑問でしたので、その……」
「……だって、英雄だと、みんなが好きになってくれるでしょ」
「へ?」
思わず間抜けな声が出てしまったが、青年はそんな事は気にも留めずに言葉を続ける。
「先生はね……そんな僕に英雄のなり方を教えてくれたんだ……。
先生がやろうとしていた英雄的行為を、手伝わせてくれたんだよ……僕はそんな先生が好きだったんだ。
だって、そんな英雄的行為をする先生は英雄だったから……」
先生がやろうとしていた英雄的行為を、手伝わせてくれたんだよ……僕はそんな先生が好きだったんだ。
だって、そんな英雄的行為をする先生は英雄だったから……」
恩師の話をする青年の顔には少しだけ笑みが浮かんでいる。
一瞬、ほんの一瞬だけだが、沙都子は目の前にいる青年を酷く幼いものと感じ取った。
青年は本気で思っているのだ、自分が英雄になれると――英雄になれば、皆に好かれるようになると。
一体青年が何故にそのような考えに至ったのかは定かではないが、それは紛れも無い事実。
一瞬、ほんの一瞬だけだが、沙都子は目の前にいる青年を酷く幼いものと感じ取った。
青年は本気で思っているのだ、自分が英雄になれると――英雄になれば、皆に好かれるようになると。
一体青年が何故にそのような考えに至ったのかは定かではないが、それは紛れも無い事実。
さて、ではその事実がわかったところで――どうしたものだろうか。
ここは彼の機嫌を取るような言葉を並べて有耶無耶にし、お引取りを願うべきだろう。
だがしかし――それで本当にいいのだろうか?
このままこの青年を放っておけば、いつ何がきっかけでこの殺し合いに乗ってしまうかもしれない。
そしてその刃が向く先は、自分だけではなく自分の大切な兄や仲間達かもしれないのだ。
それだけは、何としても止めなければならない。
ここは彼の機嫌を取るような言葉を並べて有耶無耶にし、お引取りを願うべきだろう。
だがしかし――それで本当にいいのだろうか?
このままこの青年を放っておけば、いつ何がきっかけでこの殺し合いに乗ってしまうかもしれない。
そしてその刃が向く先は、自分だけではなく自分の大切な兄や仲間達かもしれないのだ。
それだけは、何としても止めなければならない。
「でも、それは……違うのではございませんこと?」
「……どういう事、かな?」
「……どういう事、かな?」
沙都子に話を遮られ、あからさまに憮然とした表情で睨みつける青年。
それに若干の恐怖を感じながらも、沙都子は言葉を続ける。
それに若干の恐怖を感じながらも、沙都子は言葉を続ける。
「英雄になろうとする……その、志は、とても素敵なものだと思いますわ……。
でも……手段と目的を履き違えては、いけないのではございません?」
でも……手段と目的を履き違えては、いけないのではございません?」
青年は、"英雄"になる事を目指している。
愚直なまでに真っ直ぐに、余りにも純粋な思いで目指している。
しかし、それが本当に正しい事なのだろうか? ……少なくとも、沙都子は違うと思う。
英雄とは他者が決める俗称であって、決して本人が目指してなろうとするものではないだろう。
愚直なまでに真っ直ぐに、余りにも純粋な思いで目指している。
しかし、それが本当に正しい事なのだろうか? ……少なくとも、沙都子は違うと思う。
英雄とは他者が決める俗称であって、決して本人が目指してなろうとするものではないだろう。
「英雄となる事を目的とするのでは、その人は英雄になどなれませんわ。
その人が行った事が周囲に認められて、はじめてその人は英雄と呼ばれるのですから」
「……じゃあ、どうしたらいいのかな?」
「それは……」
その人が行った事が周囲に認められて、はじめてその人は英雄と呼ばれるのですから」
「……じゃあ、どうしたらいいのかな?」
「それは……」
彼は英雄になろうと常に思っていた――しかし、沙都子はそれを否定してしまった。
英雄になろうとしても英雄にはなれないのだと、そう言ってしまったのだ。
それはその青年がかつて北岡秀一に言われた言葉と殆ど同じ。
即ち――英雄になろうと思ってしまった段階で、東條悟は英雄にはなれないというもの。
英雄になろうとしても英雄にはなれないのだと、そう言ってしまったのだ。
それはその青年がかつて北岡秀一に言われた言葉と殆ど同じ。
即ち――英雄になろうと思ってしまった段階で、東條悟は英雄にはなれないというもの。
「それじゃあ僕はやっぱり……英雄になれないのかな……? どうして……?
僕は、英雄にならないといけないのに……」
僕は、英雄にならないといけないのに……」
いつの間にか青年は地べたへとへたり込み、虚ろな瞳を宙に彷徨わせてうわ言のように呟いた。
瞳からは、薄っすらと涙が滴り落ちている。
その姿を見ながら、沙都子はどのような言葉をかけるべきか迷う。
既に青年は動く気力すらも失ったように座り込んでいるが、しかし、沙都子にはどうも彼を放ってはおけなかった。
それは彼が余りにも不安定で、放っていては仲間の命に関わるかもしれないからという点も――あるにはある。
しかし、それと同じくらいに……沙都子はこの青年に同情をしてしまっていたのだ。
瞳からは、薄っすらと涙が滴り落ちている。
その姿を見ながら、沙都子はどのような言葉をかけるべきか迷う。
既に青年は動く気力すらも失ったように座り込んでいるが、しかし、沙都子にはどうも彼を放ってはおけなかった。
それは彼が余りにも不安定で、放っていては仲間の命に関わるかもしれないからという点も――あるにはある。
しかし、それと同じくらいに……沙都子はこの青年に同情をしてしまっていたのだ。
目の前で思い悩んでいる青年の姿が、いつの日か兄が失踪した事に戸惑っていた自分に重なる。
あの時の自分と同じように、青年はいつも共にいてくれた恩師を失って迷っている。
如何にして自分は行動すべきなのか……ずっと頼り続けていた人が突然いなくなった為に、青年には判断がつきかねているのだ。
自分にはあの時周囲に仲間がいた――故に立ち直り、変わる事が出来た。
弱かった自分から、強くなった自分へとなる事が出来たのだ。
しかし、青年には今、他に支えてくれる人がいないのだ……放っておけるはずがない。
あの時の自分と同じように、青年はいつも共にいてくれた恩師を失って迷っている。
如何にして自分は行動すべきなのか……ずっと頼り続けていた人が突然いなくなった為に、青年には判断がつきかねているのだ。
自分にはあの時周囲に仲間がいた――故に立ち直り、変わる事が出来た。
弱かった自分から、強くなった自分へとなる事が出来たのだ。
しかし、青年には今、他に支えてくれる人がいないのだ……放っておけるはずがない。
「東條さん……その……英雄になるというのは、きっと本当に難しい事なのですわ。
ですから、そう簡単に答えなど……出せる訳がありませんわ」
「でも……先生は……いつも答えをくれたよ……」
「ですが、その先生はもうおられないんでございましょう?」
「……うん」
「でしたら、いつまでもそのお方に頼ろうとしていてはいけませんわ。
自分で考えて、強くなっていきませんと……」
ですから、そう簡単に答えなど……出せる訳がありませんわ」
「でも……先生は……いつも答えをくれたよ……」
「ですが、その先生はもうおられないんでございましょう?」
「……うん」
「でしたら、いつまでもそのお方に頼ろうとしていてはいけませんわ。
自分で考えて、強くなっていきませんと……」
言いながら青年の肩を掴み、立ち上がらせようとする。
それに気づいたのか、青年もゆっくりではあるものの自力で立ち上がろうと足を動かした。
それに気づいたのか、青年もゆっくりではあるものの自力で立ち上がろうと足を動かした。
「それに……私一人に英雄になる方法を聞くよりも、もっと他の人のお話を聞いては如何でして?
お話を聞いていけば、如何にすれば英雄になれるのか……きっと解決の糸口になるものと思いましてよ」
「……色んな人に、話を?」
「ええ、そうですわ」
お話を聞いていけば、如何にすれば英雄になれるのか……きっと解決の糸口になるものと思いましてよ」
「……色んな人に、話を?」
「ええ、そうですわ」
座ってしまったが為に青年のズボンについてしまった泥を払いながら、沙都子は言う。
一方の青年はされるがまま、呆然としたように沙都子の言葉を聞いていた。
どうすればいいのかはまるでわからない……大事な人を殺しても、英雄的行動をしようとしても、仮面ライダーの頂点に立とうとしても、英雄にはなれなかった。
そして、たまたま遭遇した少女に英雄のなり方を聞いても……やはり、明確な答えは出てこなかった。
ならばどうするか……そうだ、他の人に英雄のなり方を聞けばいい。
英雄になろうとした時点で失格だと言われようと――自分には、英雄になる道しか残されていないのだから。
一方の青年はされるがまま、呆然としたように沙都子の言葉を聞いていた。
どうすればいいのかはまるでわからない……大事な人を殺しても、英雄的行動をしようとしても、仮面ライダーの頂点に立とうとしても、英雄にはなれなかった。
そして、たまたま遭遇した少女に英雄のなり方を聞いても……やはり、明確な答えは出てこなかった。
ならばどうするか……そうだ、他の人に英雄のなり方を聞けばいい。
英雄になろうとした時点で失格だと言われようと――自分には、英雄になる道しか残されていないのだから。
「それは……いい考え、かも……」
「そうでございましょう?」
「そうでございましょう?」
青年が小さく呟いた言葉に、少女は笑みを浮かべて答えた。
そうだ、何もまだ全てが終わった訳ではない……。
何も北岡秀一の言ったあの言葉が正しいと決まった訳ではないのだ。
そうだ、何もまだ全てが終わった訳ではない……。
何も北岡秀一の言ったあの言葉が正しいと決まった訳ではないのだ。
沙都子は考えていた、どのようにすればこの青年が立ち直れるのかを。
今、青年は目的を失ってしまっている――否、正しくは目的への道程を失ってしまっているのだ。
だからこそ青年は悩み、自分が如何様に行動をすればいいのかを迷っている。
自分では青年の望むような答えも何も用意は出来ない――しかし。
或いは、他の人物ならば――この青年を納得させる事の出来る答えを持っているのではないだろうか。
今、青年は目的を失ってしまっている――否、正しくは目的への道程を失ってしまっているのだ。
だからこそ青年は悩み、自分が如何様に行動をすればいいのかを迷っている。
自分では青年の望むような答えも何も用意は出来ない――しかし。
或いは、他の人物ならば――この青年を納得させる事の出来る答えを持っているのではないだろうか。
……無論、それは希望的観測でしかない。
そもそもこのような状況において、他人の話を聞こうとする行為自体褒められたものではないだろう。
加えて言えば他人の話を聞いたところで青年の求める答えは返って来ないかもしれない。
しかし、それでも青年の事を考えれば放ってなどおけないし、彼を野放しにしない為にも共に行動をして彼の行動を手伝わなければならない。
多少危険は増えるだろうが――どちらにしろ人探しは自分のしようとしていた事だ。
自分の心をもう一度確認し、納得をすると沙都子は東條の手を引いて森の中を進む。
自分の仲間を探す為に――そして、東條の求める答えを探し出す為に。
そもそもこのような状況において、他人の話を聞こうとする行為自体褒められたものではないだろう。
加えて言えば他人の話を聞いたところで青年の求める答えは返って来ないかもしれない。
しかし、それでも青年の事を考えれば放ってなどおけないし、彼を野放しにしない為にも共に行動をして彼の行動を手伝わなければならない。
多少危険は増えるだろうが――どちらにしろ人探しは自分のしようとしていた事だ。
自分の心をもう一度確認し、納得をすると沙都子は東條の手を引いて森の中を進む。
自分の仲間を探す為に――そして、東條の求める答えを探し出す為に。
――しかし、この時沙都子は知らなかった。
東條がどれだけ危険な人物であるのかという事を。
英雄となる為ならばどれだけ大事な人であろうと殺そうとする冷酷さを持っている人物であるという事を。
何も知らないまま――二人は、森の中を進んでいく。
東條がどれだけ危険な人物であるのかという事を。
英雄となる為ならばどれだけ大事な人であろうと殺そうとする冷酷さを持っている人物であるという事を。
何も知らないまま――二人は、森の中を進んでいく。
【一日目深夜/G-4 森】
【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、ランダム支給品(確認済み)(1~3)
[状態]健康
[思考・行動]
1:東條と共に行動し、自分の仲間や英雄のなり方を知っている人を探す
2:仲間達と一緒にこのゲームを脱出する
【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、ランダム支給品(確認済み)(1~3)
[状態]健康
[思考・行動]
1:東條と共に行動し、自分の仲間や英雄のなり方を知っている人を探す
2:仲間達と一緒にこのゲームを脱出する
【東條悟@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、タイガのデッキ@仮面ライダー龍騎、ランダム支給品(確認済み)(0~1)
[状態]健康
[思考・行動]
1:沙都子と共に行動し、英雄のなり方を知っている人を探す
2:ゲームに乗るか否かは保留、というより余り考えていない
※TV本編死亡後よりの参戦です
[装備]無し
[支給品]支給品一式、タイガのデッキ@仮面ライダー龍騎、ランダム支給品(確認済み)(0~1)
[状態]健康
[思考・行動]
1:沙都子と共に行動し、英雄のなり方を知っている人を探す
2:ゲームに乗るか否かは保留、というより余り考えていない
※TV本編死亡後よりの参戦です
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東條悟 |