次元大介の憂鬱

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次元大介の憂鬱  ◆KKid85tGwY



『六時間でこれだけと思うのか、六時間しか経っていないのにこんなにと思うのか。それは受け取る君たちに任せるよ』

 V.V.のまだ幼さの残る声が、どこからとも無く――強いて言えば天空から周囲一体に響き渡る。
 ダークスーツを身に纏いつばの広いソフト帽を目深に被った痩身の男、次元大介
 半分以上が灰になったタバコを咥え、自宅の廊下を進んでいるような弛緩した足取りで朝焼けの町を歩いていたが
 放送が聞こえてくると足を止め、しばらくはいかにも茫洋とした様子で天を仰いだ。
 そしてコンクリート製のビルの壁を背に座り、大儀そうに地図と名簿を取り出した。

 一見した次元の様子は、まるで今そこが殺し合いの最中である事を忘れたかのように隙だらけに見えるが
 実際は周囲への警戒を全く怠っていない。
 もっとも周囲に人の気配は無いことは察知しているため、すぐに襲撃をされる懸念は少ないが
 それでもどんな罠があるかは分からない。
 それに何より傭兵として、あるいはルパンの相棒として数え切れないほどの修羅場を潜ってきた次元は
 戦場において『絶対』は無い、何が起こるかわからないことを誰よりも熟知している。
 いつでも胸元に差し込んだデリンジャーを抜ける態勢を維持していた。
 弛緩しながら日常的な動きを行いつつ、警戒態勢を保つ。
 修羅場を日常とする者だけが持ち得る所作を、次元は身に付けている。
 しかもそれは、世界最高レベルと言っていいほどの水準でだ。
 世界を股にかけ、あらゆる種類の悪党と戦い泥棒稼業を続けてきたルパン一味。
 危機的状況からの『逃走』と『生存』のスキルに掛けては、恐らく並ぶ者は存在しないであろう。
 だから日常的な何気ない所作でも、警戒態勢を取っていられるのだ。
 そしてそれは今に始めたことではない。
 次元は殺し合いの最初から、食事をしていようと交渉をしていようと1度たりとも周囲への警戒を緩めてはいなかった。
 詩音とロロを相手に交渉をしている時もそうである。
 次元があの時2人の間に入ろうとしたのは、実はそれが最も安全な位置だと判断したからだ。
 まずあの状況でロロ自身がそのまま次元に襲い掛かる懸念は少なかったと言える。
 何故なら詩音のAK-47で牽制されていた、つまりAK-47を恐れていたからだ。
 あの場でロロが下手に次元に仕掛ければ、詩音を刺激する可能性も充分にあった。ロロもそれは避けたかったはずだ。
 そして詩音に殺意が無かった以上、あの状況で最も怖いのは、次の3つのケースである。
 1つはロロが詩音のAK-47を奪い、自分もそのAK-47で撃たれること。
 1つはロロが詩音を襲い、詩音がAK-47で反撃してその流れ弾に当たること。
 もう1つが第三者(あの場合は第四者と言うべきか)から急襲を受けること。
 しかし次元が2人の間に立てば、最初の2つのケースは防ぐことが出来るし
 最後のケースで考えても最も安全な位置と言える。何しろ前後を2人が盾になっている形だからだ。
 つまり次元はいかなる状況でも、『生き残る為のスキル』発揮できる人間なのである。
 当然それはルパンなどにも言えることだ。
 だから次元としては、実はルパンたちの心配はほとんどしていなかったのだが……。

 次元は禁止エリアを告げられると、地図上の該当箇所に指定時間を書き込み
 死亡者を告げられると名簿上の該当者の名前の上から線を引いた。
 やがて放送が終わると、次元は根元まで吸い切ったメンソールをアスファルトの上に投げ捨てた。

「…………16人か……。またずいぶん、派手に死んだもんだな……」

 ソフト帽を頭の上から押し付けるようにしてさらに深く被り、押し殺すような声でごちる。
 6時間で16人。

 こういった形式の殺し合いを他に知らない次元には、このペースが早いのか遅いのか判断のしようが無いが
 単純計算すれば、誰かの優勝にせよ全滅にせよ殺し合いが終わるまでに1日とかからないペースになる。
 幸いルパンと五ェ門は無事だったが、V.V.への手がかりとして目星をつけていたルルーシュは死んでしまった。
 そのルパン達も、今の状況では安泰であるとは到底いえない。
 何しろ、あの銭形が早々に死んでしまったのだ。

 常にルパンを取り逃がしている印象が強い銭形だが、彼は紛れも無く優秀な警察官である。
 そうでなければそもそも、ICPOの中でもルパン専属の捜査官と言っていい立場に居られない。
 仮に双方が正面から本気で命を奪い合うような戦闘となればルパン、次元、五ェ門の何れでも危うい。
 3人がかりでも勝利は難しいほどの相手なのだ。
 ルパンたちが常に逃げ果せるのは、銭形が無能だからではない。ルパン一味の逃走技術が、あらゆる局面で卓越しているからだ。
 その銭形が殺された。
 銭形は自殺をするような人間ではない。事故で死ぬような間抜けでもない。
 あの銭形の命を奪うほどの者が、ここには居るのだ。

 次元は新たなメンソールを咥え、火を点けた。
 発生した煙を、肺まで吸い込む。
 美味い、がやはり物足りない。

「やはり俺にしちゃ、ちょっとばかり甘すぎたぜ……」

 次元は殺し合いが始まってから6時間の、自分の行動を振り返る。
 殺る気のないガキに銃を向けられ主導権を握られて、状況に流され立ち話をしていた。
 その後、違うガキと下らない口げんかをした。
 そしてタバコを探して、カップ焼きそばを賞味していた。
 何とも呑気な話だ。事態は、切迫していたと言うのに。

 必要な作業を終えた次元は、手早く荷物をまとめ立ち上がる。
 もっとも、どれだけ急いだ所でこれからどこに向かえばいいのかの当てなど無いのだが。
 とりあえず、じっとしていても始まらないと歩み出す。
 6時間もあって、碌に情報も集められなかったのだ。
 やはり、これまでのやり方が温過ぎたと言わざるを得ない。
 例えば交渉の場面でも、上手く主導権を握る方法は幾らでもあった。
 銃を向けてきた詩音が相手なら、取り押さえても構わなかったはずだ。
 そしてもし詩音が下手に抵抗してきたのなら、殺すことになっても仕方ない場面ですらあった。
 この殺し合いの場では殺人が必要な場面が出てくるだろう。
 少なくとも次元は必要な殺しを躊躇する人間ではない。

 次元はルパンと五ェ門のことを考える。
 2人は確かに、生存と逃走に類稀なスキルを持っている。
 だが2人とも多分に甘い部分も持っている人間だ。
 2人とも特に女には甘くて弱い。ルパンなど毎度同じ女に騙されているような始末だ。
 だが自分ならば、2人ができない仕事もできるのではないか。
 女子供が相手でも、危険人物なら牽制しあるいは制圧し――あるいは始末する。

 無論、自分から無用な揉め事を起こすつもりは毛頭無い。
 下手に強硬な真似ばかりを繰り返して、周囲に自分が危険人物だと見られては笑い話にもならない。
 誰が危険人物かを判断するのも慎重に行わなければならないだろう。
 ここでは善良な人間を装って背後から襲うような者も、当然現れるだろうから。
 それにロロからスザクは危険人物だと教えられていたりするが、ロロ自身の信用し切れない以上
 この場合、やはり自分でスザクを見極める必要がある。
 ここでは情報が錯綜や虚報が極めて起こり易い上、1度の判断ミスが命取りになる。
 そもそも焦ったために犯したミスで自分が死んでは、本末転倒もいい所だ。
 やはり慎重になるに越したことは無い。

 当座の行動方針は固まった。
 慎重に、しかし早く確実に危険を排除しルパンたちと合流する。
 たとえ血塗られた道を行くことになろうと。

「ルパンのついでに、違うタバコも探すとするか……」

 次元は思う。
 今から進む道はルパン一味の流儀に反することかもしれない。
 それでも自分の信じるやり方でやらして貰う。
 それがお前と、袂を分かつ結果になろうとだ。
 何せ生きて帰らなきゃ、後悔も出来やしないんだからな。
 俺も、お前も。
 そうだろ――――ルパン。

【一日目朝/G-8 北部】
【次元大介@ルパン三世(アニメ)】
[装備]レミントン・デリンジャー(2/2)@バトルロワイアル
[支給品]支給品一式×2、水鉄砲@ひぐらしのなく頃に、庭師の如雨露@ローゼンメイデン、レイピア@現実、
    前原圭一のメモのコピー@ひぐらしのなく頃に、知り合い順名簿のコピー、
    バージニア・メンソール×五箱(六本消費)@バトルロワイアル、
    北条悟史の金属バット@ひぐらしのなく頃に、確認済み支給品0~1個
[状態]健康、満腹
[思考・行動]
1:V.V.を殺して、殺し合いを止める。
2:ルパン達を探す。
3:ロロを完全には信用しないため、ロロから与えられた情報も半信半疑。
4:危険人物には容赦しない。
[備考]
※庭師の如雨露をただの如雨露だと思っています。
※ギアス世界の情勢を知りました(ただしギアスについては知りません)
※ギアス勢の情報を入手しました、スザクのみ危険人物だと教えられています。


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072:Ultimate thing(後編) 次元大介 100:癒えない傷



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