Ultimate thing(後編)

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Ultimate thing(後編)  ◆EboujAWlRA



シュンという風切り音が聞こえ、斎藤の首筋に熱い痛みが走る。
壬生浪最後の生き残り、斎藤一が最後に聞いた言葉は、どこまでも無機質な機械的な声だった。

ドサリ、と地面に斎藤の頭部が落ちる。
後藤が硬質化させた右腕で切り落としたのだ。
サイトがゴクリと唾を飲む。
あれほど自分を苦しめた斎藤が死んだ、その事実が未だに飲み込めなかったのだ。
だが、後藤はそんなサイトの事情など知った事ではない。
瞬時にサイトとの距離を詰めて右腕を振り下ろす。
サイトはそれを女神の剣で受け止める。
身体が反応したことに、サイトはイケると感じる。
ここはクーガーに後藤を押し付けてルイズ(こなた)と逃げようと考えたのだ。

後藤は攻撃をやめない。
受け止められた女神の剣を邪魔だと判断したのか、長い足を動かしてサイトの手首を蹴り上げる。
重すぎる蹴りがもたらした痺れに、サイトは女神の剣を取りこぼす。
しまった!と思うよりも早く、後藤が女神の剣を蹴り飛ばす。
カランカラン、と音を立てて女神の剣は転がっていく。
ちょうどこなたの足元まで転がり、そこでようやく後藤はこなたの存在に気づいたように目を向ける。

「あ……」
「ルイズ!」

女神の剣をこなたが拾った瞬間、後藤は跳びかかった。
こなたは女神の剣を構えて、偶然か後藤が加減したのかなんとか防御を取ることが出来る。
だが、それだけ。
がら空きになったこなたの腹部に後藤の蹴りが入る。
ただでさえ体重の軽いこなたは空中を回転しながら吹っ飛ばされる。
その際にデイパックも飛んでいき、離れていたサイトの足元にまで届く。
それでいて着地が取れたのは、こなたの運動神経ゆえか女神の剣の加護ゆえか。
後藤にもこなたが直ぐに姿勢を取り直したのは意外だったのか、僅かに追撃が遅れる。

「衝撃のォォォォォ!」

後藤が右腕を振り上げた瞬間、野太い声が響く。

「ファーストブリッドォォ!」

瞬間、吹き飛ばされていたクーガーの蹴りが後藤へと入る。
クーガーは回転前転をしながら着地する。
腹部から血が落ちるが、それを歯を食いしばり懸命に耐えながらこなたへと向き直る。

「こなたさん、こんなのを見ても殺し合いに乗るんですか!?」

クーガーはこなたへ叫びかける。
斎藤の死体を見て、サングラスに感情を隠しながらもこなたへと激情のままに語りかける。

「かがみさんも死にました! 斎藤さんも死にました!
 ですがねえ、二人とも信じるものがありましたよ!
 友達と、人と殺し合いなんて出来ない! 人を傷つける人間は放っておくわけにはいかない!
 お二方ともそれを貫いたんです! それを見て貴方は!」

「でもさ……これはゲームでしょ? あれも強い、強すぎるだけのモンスターなんだよね?
 かがみんとあの人は攻略を間違えたから死んだんでしょ?」

「こなたさん……貴女はまだそんなことをッ!?」

「面白い……」

会話の途中に後藤の横槍が入る。
完全に叩き込んだはずなのにまだ動けるのかと、クーガーは驚愕する。
正確に言うならば、後藤は硬質化、そして伸縮性を持たせた左腕でクーガーの蹴りをガードをしていたのだ。
如何に後藤と言えどもあの蹴りはまともに受けていては無事ではすまない。

刃と化した右腕での攻撃、後藤の基本パターンだ。
クーガーはそれを紙一重に交わして、カウンターの蹴りを叩き込む。
恐らく今までのパターンから言ってダメージは与えられないだろうが、後藤を吹き飛ばすことは出来る。
いや、吹き飛ばすと言うよりも後藤が衝撃を逃がすように左腕でガードしながら後ろへと飛んでいるのだ。

もし、後藤に致命傷を与えられるとしたら助走を十分に取った上での本気の一撃。
それ以外は、後藤は何食わぬ顔で立ち上がり続けるだろう。

「ルイズ! 一先ず俺のデイパックを持って逃げるんだ!」

サイトもあれで後藤が終わったとは思わない。
まだまだ後藤は立ち上がり、何度も襲いかかってくるだろう。
だからこそまずはこなたを安全な場所に遠ざけておこうと判断したのだ。
今は邪魔者はクーガーだけ、逃げるのは容易いはずだ。

こなたは少しだけ躊躇ったような顔を見せる。
だが、直ぐに女神の剣と斎藤が投げ捨てたサイトのデイパックを抱えて去っていく。
それでいい、とサイトはうなづくが、クーガーはこなたの背中へと向けて声を掛ける。

「こなたさん!」
「おい、おっさん! 今はやることがあるんじゃないか!」
「おっさぁん!?」

クーガーは不満の声を上げるが、サイトは知った事ではないとこなたの置いていったデイパックを漁る。
今のうちに後藤が攻撃を仕掛けてくるかもしれないが、クーガーが防ぐだろうと考えたのだ。
後藤はそれを隙と見たのか、まずサイトへと襲いかかってくる

「おぉっと!」

だが、サイトのの察しの通り、時間をかせぐようにクーガーが後藤の攻撃を受ける。
後藤はサイトなど知った事ではないと言わんばかりにクーガーへと向き直る。
サイトはその間にもデイパックの中から武器を探す。

「これは……!」

サイトがデイパックから見つけたのは、赤い、炎のような赤い剣。
柄を見ただけで分かる、これはかなりの業物。
禍々しさと神々しさが同居したような、人間が作ったとは思えない迫力を感じる剣。
これならば、後藤とも戦える。
そう思い、柄を握り思い切りデイパックの中から引き出し――――


「……えっ?」


その剣の先端を地面へと埋め込ませる。
柄は握っている、だが先端が全く上がらない。
おかしい、と思いながら力を込める。
しかしどんなに力を込めても天津神・ヒノカグツチの力が込められた魔剣・ヒノカグツチは一切として持ち上がらない。

「おいおい……おかしいだろ」
「ヒール・アンド・トュー!」

サイトはそう呟く。
横では後藤がクーガーの蹴りを避け、固く拳を握っているところだ。

「二度も三度も似たような攻撃は食らわん、工夫をしろ」

後藤はそう言って思い切りクーガーの腹部に拳を叩き込む。
完全に攻撃の体勢のままであったクーガーは、傷口に拳を打ち付けられる。
吹き飛ばされた上に、うずくまり簡単に動けない。
その間にも後藤はサイトへと向かっていく。

――――我は魔剣ヒノカグツチ……天津神ヒノカグツチの力が込められし剣なり……

ふと、何処からかサイトでも後藤でもクーガーでもない声が響きだす。
剣の声だ、とサイトは察する。
そう察した瞬間にサイトは剣へと向かって叫ぶ。

「おい! なんで持てないんだよ!」

サイトはそんな後藤の姿が目にはいっていないのか、泣き喚くように声をあげる。
ヒステリックとも取れるほどに、正気ではない。
そして一向に光を出さない左手と、どんなに力を入れても持ちあがらないヒノカグツチを見比べ続ける。
傍から見ているクーガーにも、哀れにすら思えるほどに必死にサイトは叫び続ける。
それはヒノカグツチが持ち上がらないという単純な事実に苛立っているだけではないようだ。
もっと別の、不合格通知から目をそらそうとしている受験生のような、そんな様子。
だがどうしてもその剣を振るうことが出来ない。

――――我を扱うには、力及ばぬ……早々に立ち去るが良い……

「黙れ! 俺は……俺は、ガンダールブなんだぞ……! ルイズの、虚無の使い魔の、伝説の――――」

その言葉を最期まで言うことはなく、後藤の振るった右腕によってサイトの首と胴体は離された。
ヒノカグツチを固く握ったまま、サイトは動かない。


ガンダールブでない、ただの人間の弱すぎる力では、ヒノカグツチはどうしようもなく重かった。


「二人目、だ」

ポツリと後藤は呟く。
その顔に充実感も嫌悪感もない。
ただ何かを確かめたように頷いているだけだ。

「さて……少しこちらも疲れたが、そちらはどうだ?」
「……」
「疲労しているように見えるがな……しかも、本調子ではないのだろう」

クーガーは考える。
後藤を倒せない手段がないわけではない。
自身の最速の手を使えば、恐らく後藤の息の根を止めることが出来る。
だが、それは諸刃の剣。
クーガーにも多大な、下手をすれば死に至るほどのダメージを与えるほどのデメリットがある。
ここでクーガーが倒れれば、どうなる。
かがみの遺体と立てた約束は、どうなる。
後藤を野放しにするわけにはいかない。
だが、止めるためには命を捨てて戦わなければいけない。
しかも、確実に倒せるわけではない。
クーガーの傷もひどいものだ。
考えれば考えるほど、仕切り直しが良いように思えてくる。
後藤もピンピンしているように見えるが、ダメージは受けているはずだ。
クーガーの蹴り、サイトの斬撃、斎藤の牙突を受けているのだ。

「仕切り直し……だ!」

クーガーはここから立ち去ることにした。
こなたを探し、他のかがみの知り合いも探す。
それを優先したのだ。
ラディカル・グッド・スピードはクーガーをたちまち遠くへと運んでいく。
後藤はそれを眺めるだけ、追うことはしない。
本調子ならば、追うことは出来たかもしれない。
だが、スピードを抑えられている今では追うのは少し辛い。

「速い人間だ……」

後藤はポツリと呟き、腹部に手を当てる。
そこはクーガーの蹴りと、斎藤の横薙ぎが当たった場所。
身体から悲鳴を聞こえるような気がする。
胴体への攻撃は可能な限りガードしてきたが、伝わってきた衝撃が強すぎたようだ。
特にあの牙突なる攻撃と、速すぎるクーガーの蹴り。
何度も食らったあの攻撃が痛い。

「……まあいい。食事と共に休息をとれば良いだけだ」

後藤は斎藤とサイトの死体へと近づき、ふと鼻をひくつかせる。

「だが、煙が邪魔だな……」

僅かに匂う遊園地の煙が後藤の気分を害する。
人間よりも獣に近い後藤は、未だに煙を上げる遊園地の近くでの食事は好まなかった。
後藤は斎藤とサイトの死体を肩に担ぎ、床に落ちた二つの頭部、二本の腕を拾う。
蛮刀は後藤には必要ないので、外そうとするが死後硬直か斎藤の気迫か、固く握った蛮刀は外れない。
腹の減った後藤は一先ず外すことをあきらめ、デイパックの中へと頭部と腕を入れ込む。
そして、脚をブレード状へと変化させる。
二人のデイバックを持っていこうかと思ったが、邪魔だと判断し放っておくことにする。
どうせ人間が食べれるのだからデイパックの中の食料に興味はない。
一先ず教会にでも行き、ゆっくりと食事を取ろう。
こうして後藤は嵐のように現れ、嵐のように去っていった。
バトルロワイアルが始まりまだ日があけていない。
にも関らず、後藤は既に四人もの参加者を手にかけた。
だが、まだ足りない。
まだ後藤は乾いている。

戦闘欲求と生理的欲求、そのどちらもまだ満たされていたわけではない。

行先の教会にも戦闘と食べ物があると良い、後藤はなおそんなことを考えていた。



    ◆   ◆   ◆



詩音が遊園地の騒ぎから逃げ、総合病院までたどり着き息を整えていた。
なんだったのだ、あの後藤とか言う男は。
分からない、精々が詩音の理解を超えていることが分かるぐらいだ。
手を刀のように形を変化させていた、そんなこと人間に出来るはずがない。
あんなのが大勢居るのだろうか、そうだとしたら詩音は考えを改める必要がある。
強い人間ではなくモンスター相手に生き残るのは、知恵が回るとは言えただの人間である仲間では厳しい。
早く、仲間を探さなければ。
そう思い、ゆっくりと深呼吸を何度かし、空を見上げる。
何処に居るだろうか、仲間は。
恐らく、悪知恵の働くあのメンバーならば大胆でいて見つかりづらいところに居るだろう。
悟史は……恐らく沙都子を探している。兄だと言う理由だけで。
そういう人だと思う。
ならそれらしい場所を探す必要がある、詩音がそう考えた瞬間。


「さぁって、とりあえず傷を……っとあらあ?」


黒いサングラスをつけ、ストレイト・クーガーはパンパンと手を叩きながら現れた。
この制服を貸してくれ、詩音に逃げるチャンスを与えてくれた男だ。

「いやー、ご無事でよかったお嬢さん。あ、そう言えばお名前は?
 ひょっとしてつばささん、こゆきさん、まなみさんの誰かだったりしまして?」
「……詩音、園崎 詩音」
「園崎 魅音さんですかー。俺はクーガー、最速の男ストレイト・クーガーです」

魅音、と。詩音はクーガーにそう間違えられて胸にズキッとした痛みが走る。

魅音と詩音。

園崎姉妹には、この二つの名前と姿と存在に様々な因縁を持っている。

詩音の例として、一つ挙げるとするならば。

園崎魅音として、北条悟史と出会ったこととか。


「『詩音』、です。魅音は双子の姉の名前ですから」
「あらら……これはこれは失礼しました」

詩音は同様を隠すように感情を押さえて言葉を発し、クーガーは真後ろが見えるのではないかと程にのぞけかえりながら笑いをこぼす。
だが、そのクーガーの笑いもどこかぎこちない。
クーガーの笑みがぎこちない、その意味をなんとなく詩音も察した。
恐らくあの斎藤と言う男かこなたという少女が死んだのだろう。
そして、目の前で人が死んだことに、その場から逃げる形になってしまったことが僅かに後悔しているのだろう。
恐らく正義漢の強い人間。
こなたは止められず、狂ったような言動をしていた平賀才人を死なせ、好感の持てた斎藤一も死んだ。
なおかつあの後藤と言う化け物を野放しにしている。

「いやあ、ここで会ったところ悪いんですがね。
 俺はちょっと探しびとが居まして、少し応急処置をしてから行かしてもらいますよ」

そう言って、クーガーはサングラスをかけ直す。
そして、朝日の登り始めた外を見つめながら、ポツリと呟く。

「急ぐ理由も出来ましたしね……」

クーガーの脳裏によぎるのは己の中に絶対正義を持った斎藤一の姿。
その志は物騒ではあるが、揺ぎ無い物だった。
そしてその絶対正義に見劣りしない力を持っていた。
過去形で語らなければいけないことが非常に惜しい人物。
そう、そんな人物ですら死んだのだ。
あのモンスターと遭遇して。
後藤、そう名乗ったアレはモンスターと呼ぶに相応しい。
能力が凄まじいからではない、一切の感情の揺れを見せないあの様がモンスターと呼ぶに相応しいのだ。
恐らく斎藤とサイトを殺しただけでは止まらない。

もちろん、全力で後先考えずにやれば負けるつもりはない。
あんな文化の欠片もない生き物に負けなどはしない。

「どうします? どうやら貴方も人をお探しのようですから、一緒に行きますか?」
「……」

詩音は黒いサングラスをかけたクーガーを値踏みするように見る。
体格は良い、髪型はかなり奇抜、何かの制服と思える服を身に纏っている。
僅かに、ストレイト・クーガーについていくメリットはあるのか、考える。
殺し合いには乗っていないだろう。
もし乗っているのならば一人で逃げいている。
そう、一人で逃げいているのだ。
わざわざ詩音を拾う必要など一切ない。

そのことが決め手になったのだろう。
詩音はクーガーの差し伸べてきた手を取った。

「よろしくお願いしますよ、魅音さん」

やはり、名前は間違えたままだったが。

【一日目早朝/G-8 病院付近】
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[装備]:葛西のサングラス@ひぐらしのなく頃に
[所持品]:基本支給品一式、不明支給品(確認済み)0~1
[状態]:身体中に鈍い痛み、腹部に裂傷、疲労(大)
[思考・行動]
1:傷を塞ぐ。
2:かがみと詩音の知り合い(つかさ、みゆき、みなみ)を探す。
3:こなたを正気に戻す。
4:緋村剣心の速さに興味。
[備考]
※総合病院の霊安室にかがみの遺体とデイパック(基本支給品一式、陵桜学園の制服、かがみの下着)
 が安置されています。

【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]AK-47(カラシニコフ銃)@現実、HOLY隊員制服(クーガーの物)@スクライド
[支給品]支給品一式、AK-47のマガジン×9@現実、SEAL(封印)@仮面ライダー龍騎、
     クマのぬいぐるみ@ひぐらしのなく頃に
[状態]疲労(小)、若干恐怖と焦り
[思考・行動]
1:クーガーと行動する。
2:悟史に会う。
3:仲間との合流、沙都子を優先。
[備考]
※皆殺し編、沙都子救出後の綿流し祭の最中からの参戦です


    ◆   ◆   ◆


「いやあ、たまったもんじゃないよホントに」

泉こなたは長い髪を指で軽く梳かしながら、何度も後ろを振り向きつつ北へと向かっていた。
先程のゴトウと名乗ったモンスターのことを思い出す。
こなたが魔王レベルと感じた斎藤を殺し、なお自分の仲間であるサイトをも続いて殺した後藤はさながら大魔王と言ったところか。
ここで最初のこなたなら半ば自暴自棄になるか、ゲームバランスが圧倒的に狂ったこのゲームに怒り狂っていだろう。
だが実はそうではないと、今は分かる。

(ブイツーくんは最初に言ってたよね。
 これは殺し合いだって、最後に一人だけ生き残るんだって。
 つまりとにかく人を殺せばいいってわけじゃないんだ。
 他のプレイヤーが殺し合うのを期待しながらー、私みたいな奴は武器を集めればいいんだ。
 他にもサイトとチームを組むとか、そういうのでも良いかな?)

なんとなく、このゲームの基本攻略法がこなたにも見えてきた。
必ずしもモンスターは倒さなくても良い。
恐らくレベルという概念がなく、基本ステータスは不動で武器依存のゲーム。
強い敵には腹に一物を抱えながらチームを組んで戦う。
とにかく立ち回りが優先されるゲームなのだ。

「さ、じゃあ早速武器屋へ直行ー!
 追い剥ぎスキルは皆にあるみたいだから、それで誰かから奪ってもいいけどねー!」



【一日目早朝/F-8】
【泉こなた@らき☆すた】
[装備]:女神の剣@ヴィオラートのアトリエ
[所持品]:支給品一式、確認済み支給品0~2個、ルイズの眼球、背骨(一個ずつ)
[状態]:健康
[思考・行動]
1:優勝して、白髪の男の子にリセットボタンをもらう。
2:とりあえず一旦休む。


    ◆   ◆   ◆


ロロは辺りを見渡しながら僅かに舌打ちする。
理由は単純、この遊園地に血の臭いがしたからだ。
幼いときよりギアスの力を用いて人を殺し続けたロロには分かるのだ。
血の臭いと、人が死んだ空気。
それを感じ取ったロロは苛立つ。
単に人が死んだことが許せないのではない、ロロはそんな熱血漢でも正義を振りかざす人間でもない。
兄であるルルーシュが危険に会ったかもしれないことと、それを問いただす相手すら居ないことにだ。

やはり次元と会話をしながら動いたことで時間を取ってしまった。
しつこくルルーシュとV.V.の情報を手に入れようと声をかけ続ける次元を煙に巻く方法を考えていることで、歩みが格段に遅くなってしまったのだ。
もしも、早くここに辿りついていたらルルーシュの情報を手にいれることが出来たかもしれないというのに。

「血が……まだベトベトだ。ひと足遅かった、ってところか」
「そうみたいですね……死体はないようですが」

事件現場を検分する警察官のように、周囲を見渡しながら二人は歩く。
僅かに歩き、隠すようにポツリと置かれている二つのデイパックに次元とロロの目に入る。
そして、燃えるような赤で染められた剣が地面に突き刺さっている。
ロロは慎重に剣へと近づき、引き抜こうと力を込める。

「くっ……! 深く突き刺さってるのか?」

だが、ロロの腕力では持ち上げることが出来なかった。
その様子を見た次元が近づいてくる。

「どうした、抜けねえのか?」

そう呟きながら、ロロを押しのけるようにして次元は剣の前に立つ。
そして、突き刺さった剣の柄を握り、思い切り引き抜く。

「ふん! ぬんぬんんぬんんん……!!」

次元はがに股に足を開き、中腰の状態で力を込める。
ロロとは違い、長時間力を込めるが一向に引き抜ける気配がない。
それどころかピクリともしない。

ここで諦めても良いが、この剣はなにか次元とロロの心をくすぐる。
次元のお宝を求める心と、ロロの兄を求める心をだ。
直感的に次元はこの剣がお宝だと判断していた。
同じくロロも理論とは別のところで、この剣が強大な力を持っていることを察した。
これをルルーシュの元へと持って行けば、何かしらのプラスとなる。
その時ルルーシュはロロを褒めるだろう。
それを考えると、僅かな浪費ならば裂いても良いと思った。

「こいつは無理だぜ……ったく、どうなってやがったんだ。大して深く刺さってないっていうのによ」

次元は全く抜ける気配のないヒノカグツチを蹴りつける。
ロロとしてはヒノカグツチに興味を抱いていたが、これ以上時間を掛けるのも

――――我は魔剣ヒノカグツチ……天津神ヒノカグツチの力が込められし剣なり……

「……次元さん、なにか言いましたか?」
「坊主じゃねえのか?」

突如響いた声に、ロロと次元は顔を合わせる。
そして、もう一度ロロは剣に手をかけ、思い切り引き抜く。

――――我を引くには力及ばぬ……早々に立ち去られよ……

もう一度、次元とロロは顔を合わせる。
そして二人の頭に、まさか、という考えが過ぎった。
先程の声、それは剣が喋っているのではないか、という考えだ。
あり得ないとは思うが、剣が言っていると解釈すれば意味の通じる言葉ではあるのだ。
次元とロロは興味が惹かれるが、一向に抜ける気配の見せない剣に何時までも気を取られている暇はない。
次元はルパンと五エ門を、ロロはルルーシュを探さなければいけないのだから。

「さぁて、これからどうするかねえ」
「……」

ロロは何を言うでもなくデイパックを背負う。
そして、ロロが次に二個目のデイパックを取る前に次元が拾う。
次元は遠慮も無しにデイパックの口を開けて中身を探り、その中からまずライターを見つけた。
その瞬間、『これはもしや!』と次元の心は期待に染まる。
もはや中身を全てを出す勢いで探っていき、お目当てのものを探り当てる。
それはロロが取った剣よりも、いまの次元にとっては価値のあるもの。
それは煙草。
バージニア・メンソールと言う次元の嗜好からは外れているが、煙草は煙草。
次元は上機嫌に煙草へと口をつける。

「……兄さんどころか人っ子ひとり居ませんね」
「ああ、そうだな」

ふぅー、っと煙を吹かしながら次元は答える。
その目は長い前髪で見えないが、先程よりも浮かれているように見える。
ロロは考える。
これでルルーシュへの手掛り、というよりも目標らしいものもなくなってしまった。

「次元さんはこれからどうするんですか?」
「どうもしねえよ。俺はルパンと五右衛門の野郎を探すだけさ」

本当に美味そうに煙草を口にしながら次元は答える。

(兄さんが何処に居るか分からない以上……ここは手分けして探してみるべきなのかな?)

ロロはふと手元のメモを思い出す。
前原圭一なる人物が書いたメモと次元とは順番が違った名簿。
ルルーシュならば、何かしらの見当をつけるかもしれない。

「次元さん、もし兄さんと出会ったらこのメモを渡してくれますかね」
「……なるほど、別行動を取るってことか。だけどよ、俺がわざわざそんな使いっ走りになる義理はねえよな」
「利益が欲しいんですか」

そういうことだ、と笑って次元は短くなった煙草を吸う。
新しい煙草を出せば良いものを、とロロは思う。

「……V.V.のことを、知っている限り話しますよ」
「話が早くて助かる」
「それにこのメモの情報も兄さんなら察することが出来ます。
 だいたい、僕も貴方の知り合いを探すってことでいいでしょう」
「まー……構わねえな。あくまでついで程度だぜ?」

次元は思ったよりも気楽に返事をする。
煙草を手にいれたからか、それともロロとはそれほど長いコンビを組むつもりはなかったのか。
いずれにせよ、これからはまた手探りでルルーシュを探すことになった

「第三放送前後に……水族館で。会ったらそう伝えてください」
「おうよっと……」

次元は完全に短くなった煙草を地面へと落とし、革靴で踏みつぶす。
そして、もう一本煙草を取り出す。
普段のマールボロとは違う、女性向きの口当たりの良さを重視した物。
たったの五箱では一日半と持たないが、何も無いよりは遥かにマシだ。
次元はバージニア・メンソールを口にする。

「甘いなぁ」

ふぅーっ、と、煙を吐きながら次元はつぶやいた。


【一日目早朝/G-10 南西部】
次元大介ルパン三世(アニメ)】
[装備]レミントン・デリンジャー(2/2)@バトルロワイアル
[支給品]支給品一式×2、水鉄砲@ひぐらしのなく頃に、庭師の如雨露@ローゼンメイデン、レイピア@現実、
    前原圭一のメモのコピー@ひぐらしのなく頃に、知り合い順名簿のコピー、
    バージニア・メンソール×五箱(四本消費)@バトルロワイアル、
    北条悟史の金属バット@ひぐらしのなく頃に、確認済み支給品0~1個
[状態]健康、満腹
[思考・行動]
1:V.V.を殺して、殺し合いを止める。
2:ルパン達を探す。
3:ロロを完全には信用しないため、ロロから与えられた情報も半信半疑。
4:甘いが……美味い。
[備考]
※庭師の如雨露をただの如雨露だと思っています。
※ギアス世界の情勢を知りました(ただしギアスについては知りません)
※ギアス勢の情報を入手しました、スザクのみ危険人物だと教えられています。


ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)】
[装備]サバイバルナイフ@現実
[支給品]支給品一式×2、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、不明支給品0~1
    カツラ@TRICK、カードキー、知り合い順名簿
    三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル
[状態]健康、満腹
[思考・行動]
1:一刻も早くルルーシュと再会する。
2:1を達成後、ルルーシュを守り、脱出を目指しているのなら協力する。
3:ルルーシュの役に立ちそうな参加者は生かすが、邪魔になりそうなら殺す。
4:竜宮レナ、園崎魅音は発見次第殺害、残りのひぐらし勢は警戒。
5:ギアスの使用はできるだけ控える(緊急時は使う)
[備考]
※ルパン勢の情報を入手しました。

※警察署内にはカップ焼きそば@仮面ライダー龍騎がたくさんあります。
※G-10南西部にヒノカグツチ@真・女神転生if…が突き刺さっています。


【ヒノカグツチ@真・女神転生if…】
こなたに支給された、赤い色合いをした最強の剣。
攻撃力255、装備すれば力+5と運+2の効果がある。
男女ともに扱えるが、一定以上の力と体力がなければ持つことは出来ない。


    ◆   ◆   ◆


眠い……眠くてたまらない……

サイトの頭の中に占めていたのはそれだけだった。
妙なほどに頭がボォーっとして、思考が働かない。
ただ体の下に広がる温もりだけを求めていた。

「……さい……なさい!」

故にどこか懐かしい、聞き覚えのある声が聞こえてきても反応しない。
ただただ、温もりだけを求めて……

「起きなさい! このバカ犬!」

しかし、強制的に温もりを取り上げられおまけに頭蓋が潰れるような衝撃に襲われる。

「いってぇ!?」

先程までの眠気は吹っ飛び、ずんずんと頭の旋毛から広がる痛みに目から涙を浮かべる。
だが、次にサイトは愕然とする。
先程までサイトが生まれ故郷である地球らしき場所に居たはずなのに、今は西洋風の一室に居る。
藁を敷いた簡易な布団に寝転びながら、頭を抱える。

「早く準備をしなさい。使い魔がメイジを待たせるんじゃないわ」
「………………ルイズ?」

そこには、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、サイトの正真正銘の『ご主人様』が立っていた。
ネグリジェ姿で、生足を晒して、幼さを残しながらも色っぽい鎖骨を晒して。

「な、なんでその姿で……!?」
「……使い魔にどんな格好を見られても恥ずかしくないわよ」

ルイズは僅かに怒りを顔に染めながら、呆れたような声で答える。
その返答に、おかしい、とサイトは思う。
ルイズはこんな堂々と艶やかな姿を見せはしない。
そうだ、それこそ最初の出会ってばかりの頃ぐらいしか――――。

「……夢?」

サイトの頭によぎる。
もし、今の今までが全部夢だったとしたら。
今までのルイズとの蜜時も、あの殺し合いのことも。
全てが夢だったのか?


「さっさと準備しなさい、使い魔がメイジを待たせるんじゃない!」



――――ガリッ


「ああ、分かってるよ! 俺のご主人様!」

ふと、雨でもない上、室内だというのにサイトの頭に粘ついた異臭を放つ液体が落ちてきた。
だが、サイトは何の反応も示さない。
目の前にいるルイズへと犬のようについていく。
その液体が身体を溶かしていこうと関係ない。
ルイズの五体が溶けきっていようと関係ない。

目玉が飛び落ち、髪が抜け落ち、指がちぎれ、腕の関節がめちゃくちゃに曲がり、舌がなくても。

サイトには関係ない。


――――ポリッ


自身の目もこぼれ落ち始める。
そこでようやくサイトは動揺する。
目がなければルイズを
恐らく脚もなくなるのだろうな、とサイトは思う。
だが、どうでもいいことだ。


――――グシャ、ムシャ


何故なら、サイトの目の前にはルイズが居るのだから。

「ルイズ……」
「なによ」
「やっぱりお前、可愛いよな」



――――ゴクン。


【斎藤一@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 死亡】
【平賀才人@ゼロの使い魔 死亡】

【一日目早朝/F-9 教会】
【後藤@寄生獣
[装備]無し
[支給品]支給品一式、不明支給品0~2(未確認)、ヴァンの蛮刀@ガン×ソード
[状態]疲労(大)、空腹(小)
[思考・行動]
1:食事を取り、少し休憩。
2:強い奴とは戦いたい。
3:泉新一を殺す。
4:田村玲子が本物なら戦ってみたい。
[備考]
参戦時期は市役所戦後。
※後藤は腕を振るう速度が若干、足を硬質化させて走った際の速度が大幅に制限されています。
※E-10 北部に空の寸胴鍋が落ちています。

【ヴァンの蛮刀】
サイトに支給された、ヴァンの愛刀。
単純な剣としてではなく、鞭のようにしならせることが出来る。
ダン・オブ・サースディを呼ぶ際に用いる武器でもある。


時系列順で読む


投下順で読む


072:Ultimate thing(前編) 後藤 087:がるぐる!
泉こなた
平賀才人 GAME OVER
斎藤一
園崎詩音 092:adamant faith
ストレイト・クーガー
068:二人の黒い殺し屋 次元大介 091:次元大介の憂鬱
ロロ・ランペルージ 101:嘘か真実か



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