危険地帯 ◆ew5bR2RQj.
拡声器を使用してからおよそ一時間。
北条悟史は一歩も移動せず、誰かが来るのを待ち続けていた。
北条悟史は一歩も移動せず、誰かが来るのを待ち続けていた。
(やっぱり……誰も来てくれないのかな)
早朝とはいえ、彼がいる森の中はまだ薄暗い。
その中で孤独に待ち続けるというのは、想像以上に彼の精神を消耗させていた。
その中で孤独に待ち続けるというのは、想像以上に彼の精神を消耗させていた。
(沙都子、大丈夫かな)
彼が思い浮かべるのは唯一の肉親であり最愛の妹、北条沙都子の姿。
自分でさえ、胸が張り裂けそうなほど不安なのだ。
幼い上に女の子ならば、それ以上の不安を抱えているだろう。
叔母夫婦の虐待により、心を壊されてしまっている沙都子であればとくに。
自分でさえ、胸が張り裂けそうなほど不安なのだ。
幼い上に女の子ならば、それ以上の不安を抱えているだろう。
叔母夫婦の虐待により、心を壊されてしまっている沙都子であればとくに。
「…………」
雛見沢で生活していた頃を思い出す。
事の発端は、雛見沢がダムの底に沈められる計画が持ち上がった時。
村人達は団結して反対運動を起こしたが、彼の両親はそれに協力するどころかダム建設に賛成したのだ。
周囲の人々から反感を買うも両親は意見を変えず、村人達とは衝突する日々が続き、
数ヶ月ほど経過しダム建設計画は頓挫したが、その頃には北条家は裏切り者という認識が村中に広まってしまっていた。
故に彼ら兄妹は、俗に言う村八分の影響下で生活を送ることとなったのだ。
事の発端は、雛見沢がダムの底に沈められる計画が持ち上がった時。
村人達は団結して反対運動を起こしたが、彼の両親はそれに協力するどころかダム建設に賛成したのだ。
周囲の人々から反感を買うも両親は意見を変えず、村人達とは衝突する日々が続き、
数ヶ月ほど経過しダム建設計画は頓挫したが、その頃には北条家は裏切り者という認識が村中に広まってしまっていた。
故に彼ら兄妹は、俗に言う村八分の影響下で生活を送ることとなったのだ。
それから一年後。
両親が不慮の事故で死亡して、彼らは叔母夫婦のもとに預けられた。
が、そこでも安寧は訪れない。
彼の両親の影響の余波を受けていた叔母夫婦は、その鬱憤を彼ら兄妹に叩きつけたのだ。
叔父からは暴力を振るわれ、叔母からは嫌味を言われる。
外に出ても村人達から白い目で見られ、無視され続ける。
そんな生活が続き、沙都子の精神は崩壊してしまったのだ。
両親が不慮の事故で死亡して、彼らは叔母夫婦のもとに預けられた。
が、そこでも安寧は訪れない。
彼の両親の影響の余波を受けていた叔母夫婦は、その鬱憤を彼ら兄妹に叩きつけたのだ。
叔父からは暴力を振るわれ、叔母からは嫌味を言われる。
外に出ても村人達から白い目で見られ、無視され続ける。
そんな生活が続き、沙都子の精神は崩壊してしまったのだ。
(もしかしたら……もう!)
幼い上に精神的崩壊した少女など、殺し合いに乗った人間にとっては格好の的。
この瞬間でさえ、彼女は命を狙われているかもしれない。
この瞬間でさえ、彼女は命を狙われているかもしれない。
(やっぱり待ってるだけじゃ駄目だ、沙都子を探さないと)
待っているだけでは、手遅れになりかねない。
そう考えた彼は立ち上がった――――その瞬間。
背後の茂みから、草が擦れる音が響く。
そう考えた彼は立ち上がった――――その瞬間。
背後の茂みから、草が擦れる音が響く。
「誰だ!?」
声を荒げながら振り向く悟史。
そこにいたのは、自らに銃口を向けている少年だった。
そこにいたのは、自らに銃口を向けている少年だった。
「うわぁ!」
響く銃声。
咄嗟に身を屈め、銃弾を回避する悟史。
意識して屈んだのではない、本能がそうさせたのだ。
あと一瞬でも遅れていたら、彼の身体を銃弾が通過していただろう。
咄嗟に身を屈め、銃弾を回避する悟史。
意識して屈んだのではない、本能がそうさせたのだ。
あと一瞬でも遅れていたら、彼の身体を銃弾が通過していただろう。
「そんなに驚かないでほしいなぁ、君の呼び掛けに乗って来たんだから」
隠れる必要がなくなったからか、茂みのなかから出てくる少年。
その様子は腰を抜かしている悟史とは違い、余裕綽々といったものだ。
その様子は腰を抜かしている悟史とは違い、余裕綽々といったものだ。
「さっき誰だと言ったね、僕の名前は織田敏憲っていうんだ、北条悟史くん♪」
少年――――織田敏憲は心底愉快そうに自らの名を名乗る。
「な、なんなんだよ、お前!?」
「イヒヒ、愚民の癖に、高貴な俺に対する言葉遣いが成ってないなぁ」
「イヒヒ、愚民の癖に、高貴な俺に対する言葉遣いが成ってないなぁ」
朝の日差しが強くなってきたおかげで、織田の容姿が鮮明に浮かび上がる。
低身長の体を学生服で包んだ少年の顔は、一言でいえば醜い。
潰れた蛙のように横長い顔には大量のニキビが目立ち、
分厚い唇から成される笑みや言動も相まってか、非常に嫌らしい印象を悟史に与えた。
低身長の体を学生服で包んだ少年の顔は、一言でいえば醜い。
潰れた蛙のように横長い顔には大量のニキビが目立ち、
分厚い唇から成される笑みや言動も相まってか、非常に嫌らしい印象を悟史に与えた。
「それにしてもバカだね、君は。あんなことして誰か来てくれると思ったのかい?」
嘲笑を浮かべながら、悟史を見下す織田。
「来てくれる訳ないだろ! そんなお人好しがいる訳ないだろ!
そんなことも分からなかったのか、この下品なシスコン奴僕がッ!」
そんなことも分からなかったのか、この下品なシスコン奴僕がッ!」
唾を吐き散らしながら、織田は笑い続ける。
「あんなことしたら、むしろ君達のお仲間は危険になるだけだ
下品なお前の下品な仲間達なんて、高貴なこの俺には関係ないけどね
まっ、下品で空っぽなお前の脳味噌じゃ、この程度のことに気付けないのも当たり前ってことか
お前のおかげでお前のお仲間が呑気な連中ってことが分かった、そのことについては感謝してやろう、イヒヒッ!」
下品なお前の下品な仲間達なんて、高貴なこの俺には関係ないけどね
まっ、下品で空っぽなお前の脳味噌じゃ、この程度のことに気付けないのも当たり前ってことか
お前のおかげでお前のお仲間が呑気な連中ってことが分かった、そのことについては感謝してやろう、イヒヒッ!」
「うるさい!」
織田の言葉に怒りを覚えた悟史は、刀を構えて立ち上がろうとする。
が、威嚇射撃を足元に受け、思わず竦んでしまった。
が、威嚇射撃を足元に受け、思わず竦んでしまった。
「下品な奴僕はそうやってすぐキレる、これがゆとり教育の賜物というものか
高貴な俺に楯突こうなんて、イケない奴だなぁ、君は」
高貴な俺に楯突こうなんて、イケない奴だなぁ、君は」
織田は再び拳銃を構え、悟史の顔面に銃口を合わせる。
口端を吊り上げ、嫌らしげに笑みを浮かべながら。
口端を吊り上げ、嫌らしげに笑みを浮かべながら。
「そろそろ終わりの時間だ、恨むのならノータリンな自分を恨みたまえ」
そう最後に告げ、彼は引き金を引いた。
「え!?」
いや、引くはずだった。
実際は引くことが出来なかった。
彼の腕に纏わり付く、緑の宝玉が原因で。
実際は引くことが出来なかった。
彼の腕に纏わり付く、緑の宝玉が原因で。
「一体なにが……」
「そこの貴方! 大丈夫ですか!?」
「そこの貴方! 大丈夫ですか!?」
現状が理解できない悟史の前に、横の森林から二人の人間が飛び出てくる。
一人は悟史と同年代の少年、もう一人はシルクハットが特徴的な少女だ。
一人は悟史と同年代の少年、もう一人はシルクハットが特徴的な少女だ。
「な、なんとか大丈夫です……」
次から次へと現れる登場人物たちに、混乱する悟史。
それでも彼は、現れた二人組に相槌を取った。
それでも彼は、現れた二人組に相槌を取った。
「怪我は……していないようですね」
怪我が無いことを確認し、二人組の一人――――橘あすかは安堵の息を吐く。
「ふぅ……よかった、それに今度はちゃんと拘束する相手を選べたみたいだ」
「うん、さっきの声、間違いないよ」
「うん、さっきの声、間違いないよ」
そう言って二人組のもう一人、蒼星石は織田の方を振り向いた。
「この人がさっき僕を撃ってきた奴だよ、そうだよね、織田敏憲君?」
「なんでお前が……心臓を撃ち抜いてやったのに」
「なんでお前が……心臓を撃ち抜いてやったのに」
幽霊を見るような眼で蒼星石を見る織田。
その視線は、心臓部分に弾痕が残っている服に注がれている。
その視線は、心臓部分に弾痕が残っている服に注がれている。
「ああ、これ? 残念だけど僕は防弾チョッキを着ていたんだ」
あくまで真面目な顔で、蒼星石は告げる。
「下品な有象無象の分際で……」
織田は醜い顔をさらに醜く歪め、蒼星石を睨みつける。
だが蒼星石は視線を逸らし、身動きの取れない織田の視線を躱した。
だが蒼星石は視線を逸らし、身動きの取れない織田の視線を躱した。
「どうしてこの場所が……?」
現れた二人に悟史は疑問を問いかける。
確かに彼は拡声器で呼び掛けを行ったが、Eー7は広い上に大量の木で視界は悪い。
にも関わらず、二人が完璧なタイミングでここを訪れられたのが不思議に感じられた。
確かに彼は拡声器で呼び掛けを行ったが、Eー7は広い上に大量の木で視界は悪い。
にも関わらず、二人が完璧なタイミングでここを訪れられたのが不思議に感じられた。
「簡単な話です。そこの彼が大声で喋ってましたから、それを辿ってきました」
当然のことのように告げるあすかを見て、悟史は納得したように頷く。
もし織田がすぐに悟史を撃っていれば、このような醜態を見せるはめにはならなかっただろう。
織田はバツが悪そうに顔を背け、周囲の森林に視線を移す。
もし織田がすぐに悟史を撃っていれば、このような醜態を見せるはめにはならなかっただろう。
織田はバツが悪そうに顔を背け、周囲の森林に視線を移す。
「ひっ!」
何故かその瞬間、彼の顔面は蒼白に染まり始めた。
「……?」
怪訝な目で織田を見る二人。
その視線の先を見るが、そこには木々が生えているだけだった。
その視線の先を見るが、そこには木々が生えているだけだった。
「あすか君、こいつはこのまま放っておくと危険だよ」
「分かってます、彼にはしばらくの間、気絶しててもらいましょう」
「分かってます、彼にはしばらくの間、気絶しててもらいましょう」
震えだす織田を尻目に、二人は彼の処遇を話し始める。
彼は二度も他者の命を狙ったのだ、放置しておけば同じ行動を繰り返すだろう。
彼は二度も他者の命を狙ったのだ、放置しておけば同じ行動を繰り返すだろう。
「僕のエタニティエイトで眠らせておきます、そうすればしばらくは目覚めないでしょう」
「や、やめて! 俺はただ怖かっただけなんだ! 信じてくれよぉ!」
「や、やめて! 俺はただ怖かっただけなんだ! 信じてくれよぉ!」
涙を流しながら必死の形相で、あすかに懇願する織田。
しかし先ほどの彼の言動を聞いているため、信用することなど到底できなかった。
しかし先ほどの彼の言動を聞いているため、信用することなど到底できなかった。
「それは出来ません、貴方を野放しにするのは危険すぎます
大丈夫です、眠っていてもらうだけですから」
大丈夫です、眠っていてもらうだけですから」
そう言って、眼を瞑るあすか。
その瞬間。
その瞬間。
「あすか君!」
「うおあああぁぁぁッ!」
「うおあああぁぁぁッ!」
蒼星石の声と共に、金髪の男が現れ――――
「がぁッ!?」
――――あすかの頬を、思い切り殴り付けた。
「楽しそうなことやってるようだなぁ、俺も混ぜてくれよ」
突然現れた金髪の男は、舌なめずりをしながら呟く。
一方で殴られたあすかは、頬を抑えながら倒れた身体を起こした。
一方で殴られたあすかは、頬を抑えながら倒れた身体を起こした。
「な、なんですか、貴方は!?」
僅かな恐怖心、そして多大な警戒心を顕にしながら尋ねる。
蒼星石も数歩下がり、見上げるように男を睨みつけた。
蒼星石も数歩下がり、見上げるように男を睨みつけた。
「あぁ? 俺は浅倉だ だがそんなことはどうでもいい、俺と戦え!」
金髪の男――――浅倉は苛立ちを隠そうともせず、野獣のような眼を向ける。
「ひ……ひぃぃぃぃぃぃぃ!」
そんな中、織田は悲鳴をあげながら森の中に逃げ去っていった。
「ま、待て!」
蒼星石が逃げる織田へ手を伸ばすが、もう遅い。
殴られたのが原因であすかの集中力が途切れ、エタニティエイトの拘束が緩まっていたのだ。
殴られたのが原因であすかの集中力が途切れ、エタニティエイトの拘束が緩まっていたのだ。
「あんな奴はどうでもいい! 戦え!」
「戦うことに何の意味があるというのですか!?」
「戦うことに何の意味があるというのですか!?」
吼えるように叫び、戦いを促す浅倉。
あすかは気圧されながらも、反論の言葉を叩きつける。
あすかは気圧されながらも、反論の言葉を叩きつける。
「意味? 戦っているとスッキリする、それだけで十分だろ」
「そ、そんな理由で……まるで野蛮人だ」
「何をゴチャゴチャ言っている、とっとと戦え!」
「戦え戦えって……僕は戦うなんて一言も――――」
「あすか君」
「そ、そんな理由で……まるで野蛮人だ」
「何をゴチャゴチャ言っている、とっとと戦え!」
「戦え戦えって……僕は戦うなんて一言も――――」
「あすか君」
言い合いを続けるあすかを制止するように腕を出し、前へと出る蒼星石。
「この人は狂ってる、いくら話し合いをしても無駄だ」
彼女は他人の夢に介入するという能力の性質上、人の人格を判断する能力には長けている。
毒蛇の如くギラついた眼光は、狂者そのものだ。
そのうえ彼女は、過去に幾度も同じような性質の人物と戦っていた。
毒蛇の如くギラついた眼光は、狂者そのものだ。
そのうえ彼女は、過去に幾度も同じような性質の人物と戦っていた。
(似ている、水銀燈と……)
ローゼンメイデン第一ドールである水銀燈。
彼女もアリスゲームに勝ち抜くために、積極的に他の姉妹に攻撃を仕掛けていた。
その水銀燈に、目の前の浅倉と言う男は酷似している。
いや、凶暴さは浅倉の方が勝っているかもしれない。
彼女もアリスゲームに勝ち抜くために、積極的に他の姉妹に攻撃を仕掛けていた。
その水銀燈に、目の前の浅倉と言う男は酷似している。
いや、凶暴さは浅倉の方が勝っているかもしれない。
「もう、戦うしかないよ」
水銀燈でさえ、説得が通じなかったのだ。
それ以上の凶暴さを持つ浅倉が、牙を収めるわけがないだろう。
それ以上の凶暴さを持つ浅倉が、牙を収めるわけがないだろう。
「分かってるようだな、そっちの小さい奴は。好きだぜ、お前みたいな奴」
嗜虐的な笑みを浮かべながら、蒼星石を見下ろす浅倉。
だが蒼星石はその眼光に射抜かれることはなく、翠と紅の瞳で睨み返した。
だが蒼星石はその眼光に射抜かれることはなく、翠と紅の瞳で睨み返した。
「……分かりました。北条さん、貴方はどこかに隠れていてください!」
「は、はい!」
「は、はい!」
傍で立ち尽くしていた悟史に、この場からの避難を促すあすか。
その声を聞いた悟史は、怯えるように森の中へと走っていく。
その声を聞いた悟史は、怯えるように森の中へと走っていく。
「さぁ、来いよ!」
「気絶させて拘束します、エタニティエイト!」
「気絶させて拘束します、エタニティエイト!」
あすかは右腕を前方に差し出し、自らのアルター、エタニティエイトを進行させる。
八つの宝玉は複雑な軌道を描きながら、浅倉に接近していった。
八つの宝玉は複雑な軌道を描きながら、浅倉に接近していった。
「……あぁ? なんだこれは?」
「これでも……喰らいなさい!」
「これでも……喰らいなさい!」
あすかは浮いている宝玉のうちの一つを、浅倉の額へと飛ばした。
「うおぉ……!?」
苦痛に表情を歪めながら、両手で頭を抑える浅倉。
額に吸い付くように張り付いた宝玉は、頭の割れるような痛みを与える。
だがあくまでそれは副次効果であり、本命は洗脳。
これを受けた者は、自由意志を奪われあすかの操り人形と化す。
この方法ならば最も効率良く、浅倉を気絶させることができると考えたのだ。
額に吸い付くように張り付いた宝玉は、頭の割れるような痛みを与える。
だがあくまでそれは副次効果であり、本命は洗脳。
これを受けた者は、自由意志を奪われあすかの操り人形と化す。
この方法ならば最も効率良く、浅倉を気絶させることができると考えたのだ。
(これで洗脳することに成功すれば……)
祈るように眼を瞑り、集中力を高めるあすか。
しかし、現実は上手くいかない。
しかし、現実は上手くいかない。
「うおぉ……あぁッ!」
浅倉は張り付いた宝玉を強引に引き剥がし、地面に叩きつけたのだ。
「なっ……僕の玉が……ただの人間に!」
「クク……ハハハ! なかなか面白い力を持っているな、お前」
「クク……ハハハ! なかなか面白い力を持っているな、お前」
先刻まで激痛が脳を苛んでいたにも関わらず、浅倉は余裕を崩さない。
相手が未知の力を持っていたことを、心の底から楽しんでいる。
相手が未知の力を持っていたことを、心の底から楽しんでいる。
「だがまだ足りない、こんなんじゃ満足できない、もっと楽しませてくれ」
そう言って、浅倉はズボンのポケットから長方形の物体を取り出す。
「あ、あれは!?」
それは両者にとって見覚えのある物――――カードデッキであった。
「俺の力も見せてやるよ」
カードデッキを前方に掲げ、構えをとる浅倉。
「でも鏡の代わりになる物なんて……まさか!?」
最初こそ驚いたものの、周囲には鏡の代わりになる物など見当たらない。
故にこの場で変身することは不可能と、蒼星石は判断していた。
が、それは早計であった。
一つだけ、浅倉の身体を映す物体がこの場にあったのだ。
故にこの場で変身することは不可能と、蒼星石は判断していた。
が、それは早計であった。
一つだけ、浅倉の身体を映す物体がこの場にあったのだ。
「あすか君、アルターを仕舞って!」
「え?」
「え?」
それは橘あすかの保有するアルター、エタニティエイト。
宝石のように輝く美しい円形のそれは、浅倉の身体を鮮明に映していたのだ。
宝石のように輝く美しい円形のそれは、浅倉の身体を鮮明に映していたのだ。
「変身!」
蒼星石は急いであすかに声をかけるが、もう遅い。
その頃には既に変身を終え、仮面ライダー王蛇となっている浅倉の姿があった。
その頃には既に変身を終え、仮面ライダー王蛇となっている浅倉の姿があった。
「あぁ……」
変身を終えた浅倉は、首を一回転して音を鳴らす。
そして蛇を象った紫色の仮面越しに、二人へと視線を向けた。
そして蛇を象った紫色の仮面越しに、二人へと視線を向けた。
「さぁ……来いよぉ!」
仮面ライダーとなったことで、浅倉の放っていた殺気が数段と高まる。
それはまさに狂蛇に睨まれいるが如くの殺気であった。
それはまさに狂蛇に睨まれいるが如くの殺気であった。
「すいません、まさか僕のアルターを鏡代わりに利用するなんて」
「今は謝ってる場合じゃないよ、僕も変身するから援護をお願い!」
「今は謝ってる場合じゃないよ、僕も変身するから援護をお願い!」
落ち込むあすかを宥めつつ、蒼星石は懐からカードデッキを取り出す。
あすかも彼女の言う通りに宝玉を一つ飛ばし、彼女はそれにデッキを掲げる。
その瞬間、何処からともなくベルトが現れ、蒼星石の腰に装着される。
そのバックルにカードデッキを装填し、一言叫んだ。
あすかも彼女の言う通りに宝玉を一つ飛ばし、彼女はそれにデッキを掲げる。
その瞬間、何処からともなくベルトが現れ、蒼星石の腰に装着される。
そのバックルにカードデッキを装填し、一言叫んだ。
「変身!」
彼女の言葉に呼応し、ベルトが一瞬だけ光を放つ。
次の瞬間には蒼星石は橙色の鎧に、蟹を模した仮面に包まれたライダー。
仮面ライダーシザースへと姿を変えていた。
次の瞬間には蒼星石は橙色の鎧に、蟹を模した仮面に包まれたライダー。
仮面ライダーシザースへと姿を変えていた。
「おぉ、お前もライダーだったのか、ハハ、ツイてるぜ
何故それをお前が持っているかは知らないが……やっとイライラが収まる」
何故それをお前が持っているかは知らないが……やっとイライラが収まる」
僅かな疑問などどうでもいい、戦いが先だ。
そう言いたげな態度で、二人に対峙する浅倉。
そう言いたげな態度で、二人に対峙する浅倉。
「行くよ、あすか君」
「はい!」
「はい!」
覚悟を決め、目の前の強敵と対峙するあすかと蒼星石。
一陣の風が吹き、木々の葉を擦らせた瞬間。
一陣の風が吹き、木々の葉を擦らせた瞬間。
三者は同時に動き始めた。
【一日目早朝/C-7 森】
【北条悟史@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]贄殿遮那@灼眼のシャナ
[所持品]支給品一式 ハリセン@現実、拡声器@現実
[状態]健康、雛見沢症候群L3
[思考・行動]
1:どんなことがあっても沙都子を守る。
2:戦いに巻き込まれないように、森の中に隠れている。
3:詩音って誰?
[備考]
※園崎詩音のことを知りません。
【北条悟史@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]贄殿遮那@灼眼のシャナ
[所持品]支給品一式 ハリセン@現実、拡声器@現実
[状態]健康、雛見沢症候群L3
[思考・行動]
1:どんなことがあっても沙都子を守る。
2:戦いに巻き込まれないように、森の中に隠れている。
3:詩音って誰?
[備考]
※園崎詩音のことを知りません。
【蒼星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]防弾チョッキ@バトルロワイアル、シザースのデッキ@仮面ライダー龍騎
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(確認済み)0~2
[状態]健康、仮面ライダーシザースに変身中。
[思考・行動]
1:自分とあすかの仲間(カズマ、劉鳳、クーガー、かなみ、真紅、翠星石)を集めて脱出する。
2:浅倉を倒す。
3:2を達成後は悟史を保護し、逃げた織田を追いかける。
4:襲ってくる相手は容赦しない。
[備考]
※nのフィールドにいけない事に気づいていません
[装備]防弾チョッキ@バトルロワイアル、シザースのデッキ@仮面ライダー龍騎
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(確認済み)0~2
[状態]健康、仮面ライダーシザースに変身中。
[思考・行動]
1:自分とあすかの仲間(カズマ、劉鳳、クーガー、かなみ、真紅、翠星石)を集めて脱出する。
2:浅倉を倒す。
3:2を達成後は悟史を保護し、逃げた織田を追いかける。
4:襲ってくる相手は容赦しない。
[備考]
※nのフィールドにいけない事に気づいていません
【橘あすか@スクライド(アニメ)】
[装備]エタニティエイト
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(確認済み)0~2
[状態]健康
[思考・行動]
1:自分と蒼星石の仲間(カズマ、劉鳳、クーガー、かなみ、真紅、翠星石)を集めて脱出する(出来ればかなみ優先)
2:浅倉を倒す。
3:2を達成後は悟史を保護し、逃げた織田を追いかける。
4:襲ってくる相手でも、出来れば戦わずに和解したい。
[装備]エタニティエイト
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(確認済み)0~2
[状態]健康
[思考・行動]
1:自分と蒼星石の仲間(カズマ、劉鳳、クーガー、かなみ、真紅、翠星石)を集めて脱出する(出来ればかなみ優先)
2:浅倉を倒す。
3:2を達成後は悟史を保護し、逃げた織田を追いかける。
4:襲ってくる相手でも、出来れば戦わずに和解したい。
【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
[装備]王蛇のデッキ@仮面ライダー龍騎
[所持品]支給品一式×2(浅倉とルルーシュ)、FNブローニング・ハイパワーのマガジン×1(13発)、ランダム支給品(未確認)(2~3)
[状態]全身打撲、仮面ライダー王蛇に変身中。
[思考・行動]
1:北岡秀一を殺す。
2:目の前にいる奴らを殺す。
3:大剣の男(五ェ門)を殺す。
4:全員を殺す。
[装備]王蛇のデッキ@仮面ライダー龍騎
[所持品]支給品一式×2(浅倉とルルーシュ)、FNブローニング・ハイパワーのマガジン×1(13発)、ランダム支給品(未確認)(2~3)
[状態]全身打撲、仮面ライダー王蛇に変身中。
[思考・行動]
1:北岡秀一を殺す。
2:目の前にいる奴らを殺す。
3:大剣の男(五ェ門)を殺す。
4:全員を殺す。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「はぁ……はぁ……ひぃぃい!」
舞台は変わって、森林内。
あすかの拘束を逃れた織田は、無我夢中でここを走り抜けていた。
あすかの拘束を逃れた織田は、無我夢中でここを走り抜けていた。
「ひぃ……うわああぁぁ!」
呼吸は完全に乱れ、額は脂汗だらけ。
情けなく悲鳴を上げるその様子からは、余裕など微塵も感じられなかった。
情けなく悲鳴を上げるその様子からは、余裕など微塵も感じられなかった。
「はぁ、はぁ……うがっ!」
木の枝に足を引っ掛けて、転倒する織田。
膝に鋭い痛みが走るが、それでも彼はひたすら走り続けていた。
膝に鋭い痛みが走るが、それでも彼はひたすら走り続けていた。
「なんで……なんであいつがいるんだよぉ……」
彼がここまで恐怖を感じ、必死に逃げる理由。
それは蒼星石やあすかに拘束されるのを恐れたわけでも、浅倉に本能的な危険を感じたわけでもない。
あの時あすかにミスを指摘され、視線を森の中に逸らした時。
確かに、見たのだ。
それは蒼星石やあすかに拘束されるのを恐れたわけでも、浅倉に本能的な危険を感じたわけでもない。
あの時あすかにミスを指摘され、視線を森の中に逸らした時。
確かに、見たのだ。
かつて自らを殺した男の、桐山和雄の姿を。
「ぜぇ……ぜぇ……いやだ!」
短機関銃で股間を打ち抜かれた光景を思い出し、その時の激痛が蘇る。
もう、あんな体験など二度としたくなかった。
もう、桐山和雄の顔など二度と見たくなかった。
もう、あんな体験など二度としたくなかった。
もう、桐山和雄の顔など二度と見たくなかった。
「なのに……なんでいるんだよぉ!」
なのに、なんでこんなにすぐ会ってしまうのか。
あの機械のように冷たい瞳に再び射抜かれた時、彼の理性は消し飛んだ。
もしあのまま拘束されていたら、間違いなく彼は殺されていただろう。
そう考えると、浅倉威の乱入は幸運だったかもしれない。
いや、幸運だったに違いない。
あの機械のように冷たい瞳に再び射抜かれた時、彼の理性は消し飛んだ。
もしあのまま拘束されていたら、間違いなく彼は殺されていただろう。
そう考えると、浅倉威の乱入は幸運だったかもしれない。
いや、幸運だったに違いない。
(そうだ、運がいいってことは神に選ばれたってことだ
俺は選ばれた人間なんだ! あんな下品な奴僕に二度も殺されるなんて堪ったもんじゃない!)
俺は選ばれた人間なんだ! あんな下品な奴僕に二度も殺されるなんて堪ったもんじゃない!)
僅かだが恐怖が薄れ、思考能力が戻ってくる織田。
(絶対だ……絶対に逃げきってやる!)
脳内に浮かび上がる桐山の顔を掻き消すように、彼は心中で決意した。
【一日目早朝/Cー7 森】
【織田敏憲@バトルロワイアル(漫画)】
[装備]ワルサーP-38(1/9)@ルパン三世
[所持品]支給品一式、ワルサーP-38の弾薬(20/20)@ルパン三世、ランダム支給品(確認済み)0~2
[状態]膝に擦り傷、疲労(中)
[思考・行動]
1:桐山から絶対に逃げ切る。
2:無理の無い範囲で殺せそうな参加者を殺していき、ここから生還する。
※死亡後からの参戦です
※桐山が蒼星石とあすかの同行者であることを知りません。
※どの方向に逃げたかは、次の方にお任せします。
【織田敏憲@バトルロワイアル(漫画)】
[装備]ワルサーP-38(1/9)@ルパン三世
[所持品]支給品一式、ワルサーP-38の弾薬(20/20)@ルパン三世、ランダム支給品(確認済み)0~2
[状態]膝に擦り傷、疲労(中)
[思考・行動]
1:桐山から絶対に逃げ切る。
2:無理の無い範囲で殺せそうな参加者を殺していき、ここから生還する。
※死亡後からの参戦です
※桐山が蒼星石とあすかの同行者であることを知りません。
※どの方向に逃げたかは、次の方にお任せします。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
再び舞台は移り変わり、蒼星石とあすかが浅倉と対峙している場所。
その脇にある木陰で、一人の少年がそれを覗いていた。
その脇にある木陰で、一人の少年がそれを覗いていた。
「…………」
一般的な学生服に、襟足が長いオールバック。
名を桐山和雄と言う。
彼は同行者である二人に、隠れているよう言われていたのだ。
名を桐山和雄と言う。
彼は同行者である二人に、隠れているよう言われていたのだ。
「…………」
だが彼の同行者は知らなかった。
彼が織田敏憲など遥かに上回る危険人物であり、織田を殺害したことがあることを。
彼が織田敏憲など遥かに上回る危険人物であり、織田を殺害したことがあることを。
「…………」
彼は全てを見ていた。
織田敏憲が逃げ去っていく姿も、北条悟史が近くに隠れる姿も、三人の人間が対峙する姿も。
織田敏憲が逃げ去っていく姿も、北条悟史が近くに隠れる姿も、三人の人間が対峙する姿も。
彼は、全てを見ていた。
【一日目早朝/Cー7 森】
【桐山和雄@バトルロワイアル】
[装備]コルトパイソン(4/6)@バトルロワイアル
[所持品]支給品一式、コルトパイソンの弾薬(24/24)、ランダム支給品0~2(確認済み)
[状態]右上腕に刺し傷、治癒力向上(どの程度かは不明)
[思考・行動]
1:遭遇した参加者から情報を聞き出した後、利用出来るなら利用、出来ないなら殺害する。
2:これからどう動くか思考中。
[備考]
※蒼星石、あすかとの情報交換がどこまで進んでいるかは次の方にお任せします。
【桐山和雄@バトルロワイアル】
[装備]コルトパイソン(4/6)@バトルロワイアル
[所持品]支給品一式、コルトパイソンの弾薬(24/24)、ランダム支給品0~2(確認済み)
[状態]右上腕に刺し傷、治癒力向上(どの程度かは不明)
[思考・行動]
1:遭遇した参加者から情報を聞き出した後、利用出来るなら利用、出来ないなら殺害する。
2:これからどう動くか思考中。
[備考]
※蒼星石、あすかとの情報交換がどこまで進んでいるかは次の方にお任せします。
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032:悲劇、決意、そして覚悟 | 北条悟史 | 069:BATTLE ROYALE 世界の終わりまで戦い続ける者たち(前編) |
012:苦労をするのはいつだって良識ある常識人 | 織田敏憲 | |
049:I'll be Back | 浅倉威 | |
034:堕天使の微笑 | 桐山和雄 | |
蒼星石 | ||
橘あすか |