鱗翅目の中でも系統的に古い仲間。小型の種が多く、種同定や標本作成が難しいので、蛾類採集家からも敬遠されているようであるが、小さいながらも美麗種が多く、幼虫は植物の葉に潜ったり、ポータブルケースを背負って移動したりと、生態的におもしろい種が多い。
参考になる文献
- 那須義次・広渡俊哉・吉安 裕, 2016. 鱗翅類入門. 東海大学出版部.
- 保田淑郎・広渡俊哉・石井 実, 1998. 小蛾類の生物学. 文教出版.
- 昆虫と自然 2003年12月号 特集「ミクロレピの世界」
- 昆虫と自然 2017年07月号 特集「特殊な食性をもつ小蛾類」
- 広渡俊哉 編, 2010. 絵かきむしの生物学. 北隆館.
- Ben Smart, 2018. Micro-Moth Field Tips: A Guide to Finding the Early Stages in Lancashire and Cheshire - A Chronological Guide from January to December.
- イギリスの一地方で見つかる小蛾類の素晴らしいガイド。170種以上の巣・幼虫・成虫をカラー写真で掲載。
- P. Sterling, M. Parsons, R. Lewington, 2018. Field Guide to the Micro-Moths of Great Britain and Ireland.
- これもイギリスの小蛾類の素晴らし過ぎる入門書。野外で同定できるようにすることを目指しており、科への絵解き検索表もあり便利。図版も翅を閉じて留まった状態のイラストなので分かりやすい。
科ごとの特徴まとめ
和名 |
学名 |
特徴 |
備考 |
コバネガ科 |
Micropterigidae |
日本産記録極少。最も原始的な鱗翅類で、被子植物の多様化前の1億8千万年前に登場し、琥珀の化石の中でも発見されている。幼虫はコケ食、腐植質食。成虫の口器には大顎があり、花粉や胞子を食べる。 |
神奈川で記録なし |
スイコバネガ科 |
Eriocraniidae |
日本産種数極少。成虫は大変美麗。幼虫は潜葉性(カバノキ科、ブナ科など)。 |
神奈川で記録なし |
コウモリガ科 |
Hepialidae |
日本産種数極少。 |
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モグリチビガ科 |
Nepticulidae |
主に、ブナ科、バラ科、ヤナギ科、ムクロジ科に寄生する潜葉性。 |
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ヒラタモグリガ科 |
Opostegidae |
幼虫は、枝や幹に潜る。ミノドヒラタモグリガはシラカバ材の害虫。 |
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ツヤコガ科 |
Heliozelidae |
ブドウ科、ミズキ科に寄生する潜葉性。 |
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ヒゲナガガ科 |
Adelidae |
触角が異様に長い。成虫は金属光沢のある美麗種が多い。通常、1齢幼虫は宿主植物の内食者。2齢以降はポータブルケースを作って地上に降り、枯葉等を食べる。 |
神奈川で採集記録は10種。アトボシウスキは三浦半島で目撃のみ。 |
ホソヒゲマガリガ科 |
Prodoxidae |
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マガリガ科 |
Incurvariidae |
日本産種数極少。若齢幼虫は潜葉性、中齢以降はポータブルケースを作って葉の上で生活する、とされるが、詳しい生態は不明。ハンノキマガリガの幼虫は楕円形のケースを作る。 |
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ムモンハモグリガ科 |
Tischeriidae |
ブナ科、バラ科に寄生する潜葉性。 |
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ヒロズコガ科 |
Tineidae |
幼虫がポータブルケースを作る種がいる。8の字型のケースを作ってアリに寄生するマダラマルハヒロズコガが有名。オオヒロズコガ亜科とコクガ亜科に含まれる種はサルノコシカケのような硬いキノコを摂食する菌食性が多い。シイタケオオヒロズコガのような害虫もいる。コクガ類にはコルクや貯穀類を食害する種ももいる。 |
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ミノガ科 |
Psychidae |
言わずと知れたミノムシ類。進化が進んだ種ほど♀の翅や脚が退化し、運動能力を失っている。「進化の袋小路」の好例。 |
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ナガヒゲガ科 |
Amphitheridae |
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チビガ科 |
Bucculatricidae |
日本産23種?宿主はキク科、ブナか、シナノキ科など。幼虫は若齢のみ潜葉性。中齢以降は葉から出て外から葉を食べる。外部に出た幼虫が脱皮する際に「脱皮マユ」を作る。 |
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ホソガ科 |
Gracillariidae |
種数多。幼虫は潜葉性。宿主はブナ科、カバノキ科、バラ科、マメ科など。 |
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アトヒゲコガ科 |
Acrolepiidae |
日本産種数極少。ナガイモコガは、若齢幼虫がナガイモの葉に潜り、中・老齢幼虫は葉の表面に出て摂食する。 |
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ヒルガオハモグリガ科 |
Bedelliidae |
幼虫は潜葉性。宿主はヒルガオ科。 |
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ハモグリガ科 |
Lyonetiidae |
幼虫は潜葉性。宿主はバラ科、ツバキ科など。 |
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クサモグリガ科 |
Elachistidae |
幼虫は潜葉性。宿主はイネ科、カヤツリグサ科など。 |
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カザリバ科 |
Cosmopterigidae |
イネ科に付く潜葉性の種がいる。 |
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キバガ科 |
Gelechiidae |
一部の種が潜葉性。宿主はグミ科、ヒユ科、アカザ科、イネ科など。イスコズチキバガ、ハマニンニクキバガ、グミハモグリガ等。 |
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ハマキガ科 |
Tortricidae |
一部の種が潜葉性。イチイヒメハマキ、トウヒコハマキ等は針葉樹に潜入する。 |
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最終更新:2019年11月10日 19:12