(2020.08.07更新)
以下、詳細は[齋藤2020g]を参照のこと。
長野県の茅野市と立科町の境界に位置する白樺湖周辺の一帯は、周辺の霧ヶ峰や八ヶ岳連峰の太古の火山活動によって形成された高原となっており、標高1,300~1,700 m程度の範囲で緩やかなに起伏する地形が広範囲に広がっている。とある縁があり、2018年からこの地に生息している水生甲虫を調べるようになった。この一帯で特徴的なのは、緩やかに起伏する樹林帯の至る所に湧水流があり、林床にミクロな湿地帯が形成されている場所が多いことである。このような環境に、高層湿原に生息するようなアサヒナコマルガムシが多産していることを見出している。尾瀬等の高層湿原は特別保護地区に指定されていて動植物採取禁止となっているのが普通だが、このような微小湿地ならば、個人でも調査可能な場所は相当あると思われる。今後、各地で調査を行えば、水生種に限らず、得難い湿地性昆虫の意外な分布が確認できるかもしれない。
緩やかな林床を蛇行する川とその周辺の微小湿地
写真2枚目は某博物館敷地の端。ここも湿地状になっており、ホソダルマガムシが容易に見つかった。
これまでに見つかった水生甲虫は以下。ヒメドロムシ科は2020年から調査開始。
クビボソコガシラミズムシ Haliplus japonicus Sharp, 1873
堰の上流にできた池で確認。
コツブゲンゴロウ Noterus japonicus Sharp, 1873
堰の上流にできた池で確認。
マメゲンゴロウ Agabus japonicus Sharp, 1873
堰の上流の池の他、標高1700 m超の微小湿地帯で多数確認。どういうわけか、これがいるところではホソクロマメゲンゴロウが見られない。
ホソクロマメゲンゴロウ Platambus optatus (Sharp, 1884)
微小湿地帯に大変多い。微妙に流れがあるところにいる。大門川の流域では極めて普通にいるようで、スキー場ゲレンデの消雪用の井戸の中からも見つかった。
チビゲンゴロウ Hydroglyphus japonicus (Sharp, 1873)
堰の上流にできた池で確認。
チャイロシマチビゲンゴロウ Nebrioporus anchoralis (Sharp, 1884)
堰の上流にできた池で確認。
アサヒナコマルガムシ Anacaena asahinai M. Satô, 1982
微小湿地に多産する。湿地帯の水溜まりをかき混ぜると、本種とキベリヒラタガムシ、ホソダルマガムシが浮いてくる。
キベリヒラタガムシ Enochrus japonicus (Sharp, 1873)
微小湿地に多産する。
クナシリシジミガムシ Laccobius kunashiricus Shatrovskiy, 1984
堰の上流にできた池で確認。
ダルマガムシ属の一種 Hydraena sp. 1
微小湿地でアサヒナコマルガムシと一緒に見つかる。個体数は多い。ホソダルマガムシ Hydraena ripalia Kugelann, 1794と思われるが、この辺で採れる本種は小顎髭先端の暗色が不明瞭の個体が多く、次種も混在している可能性があり、詳細な検討は今後の課題。どういうわけか、採れる個体は♀の方が明らかに多く、♂交尾器の比較がまだできず。
ダルマガムシ属の一種 Hydraena sp. 2
流量の多い渓流で、水没した落ち枝とひたすら拾い上げて表面を調べる作業を3時間続けて発見した個体。1本の落ち枝に2頭付いていた。ホソダルマに似ているが、頭楯の形状が異なる。ホソよりもやや太め。
最終更新:2021年09月17日 09:09