美汐ルートにおけるイヴァン死亡時の台詞。
ネイムレスに左胸を撃ち抜かれたその状況に、自分は
ハメられたのだと察する。
上官の
上官には恵まれなかったかと最期まで不敵に苦笑を浮かべながら殺された、潔すぎる死に様。
―――……
アレクサンドルの指示に従い、一人偵察任務を行うイヴァン・ストリゴイの胸には疑念が浮かんでいた。
昨夜の戦闘での
影装使用の消耗が抜けきっておらず、コンディションに不安を抱えながらも、
首筋に突きつけられているような“死の気配”が彼の感覚を一層鋭敏なものにさせていた。
イヴァンにはギアーズと反抗勢力、それ以外の何者かの見えざる手が、今回の戦場には存在しており……
その鍵を握っているものこそ、あの不可解な行動を起こしてきた
ネイムレスではないのか――そんな疑問が浮かび上がっていた。
現状認識のおぼつかないような今の状況。生存だけを優先するなら帰還を選ぶべきであるのだろうが、
「命令に従わんといかんのも、兵隊稼業の辛さかね」
理不尽など日常のこと。返事は常に了解しました。
それが自分達の掟だと……そう割り切って任務を続行しようとする。
だが探査のため一歩を踏み出した瞬間、イヴァンはあっさりと口にした
「―――ああ。やべえ、コレ詰んだわ」
……その言葉通り、的確に急所を撃ち抜かれた彼の身体は崩れ落ちていく。
だが、この結果も彼からすれば当然の結果。
これは死ぬなと感じた認識が外れるわけなどありはしないのだ。
イヴァンの視線の先、廃ビルの一角に形成された
幻像が解かれる。
そこにいたのは、銃口を構えて狙撃体勢を取っているネイムレスと、
その足元に転がされている、緋文字礼の遺体であった。
狙撃を成功させた要因、それを苦々しく思いつつもイヴァンは、
読み合いにおいて己は負けた、
“してやられた”のだとこの結末を受け止める。
そして自分がこうなるに至った「背景」を理解し、戦の鬼は口元を愉快気に吊り上げ、苦笑しながら……
「あぁ、やれやれだ……な」
最期は、ただ見抜けなかった己を戒めて、事切れたのであった。
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そんなイヴァンの骸に、近づく影が一つ──── |
『さようなら、イヴァン・ストリゴイ。まったく、これは私としても本意ではない結果だがね。
大事の前の小事、やはりあまり好きにはなれない言葉だ。
強欲と自覚しているために、切り捨てるのはいつも胸が痛むものだよ』
機械の身体から流れる言葉は、悼みながらもどこか決定的に常人とはズレている。
失われた命をこの声は嘆いていない、価値のある単位が消え去った事を嘆いていた。
だからだろうか……強欲と自称した意思は、その有効単位が単に喪失したままでは終わらせない。
『肉体は余り崩さず検体として保管しておくとしよう。文句はあるまい、これは君の言う戦場の理そのものなのだから』
そのまま、貴重な素材を扱うように徹底的に骨の髄まで彼を解体するに違いない。
そして―――ネイムレスは操者の命令通り、二人の肉体を回収し闇にその姿を潜ませる。
宵闇に包まれたその出来事は、秋月凌駕が知りえることのない真実の裏側。
夜の帳は依然深く、その深奥に位置する男を欠片も舞台へ導かない。
チクタク、チクタク、チクタクと……
時計の針を眺めながら、見えざる何かは喜劇の終わりを眺めているのだった。
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- イヴァンさんは戦争狂って評されたけど、きちんと上官の命令には従ってよくある「うるせぇ!命令なんか知ったことか!」的なことやらんし、別に退役した戦友馬鹿にしたりもしていないからあんまりそういう印象ないんだよな。普通に理想的な兵士だと思う -- 名無しさん (2015-08-27 19:17:59)
- まあ、一応戦い大好きではあるからな -- 名無しさん (2015-08-28 16:10:26)
- ↑↑どっちかというとエヴァンの方が戦争狂っぽいよな。上官撃つし民間人巻き込むし -- 名無しさん (2015-09-20 22:29:43)
- 争い大好きというよりは、争いの中で輝く生命が好きって感じだからなー、イヴァンさん 危ない外見ではあるけれどもその実結構理性的だし -- 名無しさん (2016-07-14 19:02:12)
- こんな風に潔く死ねる人生を送ってみたい -- 名無しさん (2016-11-16 20:27:26)
- ↑どうしてそうなれるように本気を出さねぇんだ!!! -- 名無しさん (2020-12-20 14:00:14)
- が、凱兄ちゃん… -- 名無しさん (2020-12-20 15:46:46)
最終更新:2020年12月20日 15:49