ワールドメイトの事典
深見東州の頭のハエ
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「脳内革命、潜在能力開発プログラム、船井幸雄、退行催眠、アムウェイ、法の華三法行、願望達成装置、マルチ商法、波動、成功哲学、そして元オウム信者たち・・・・。それぞれの〈脳内革命〉の現場を覗いてみたら、世紀末日本人の露骨なホンネが見えてきた!
宝島社・別冊宝島304、『洗脳されたい!マインド・ビジネスの天国と地獄』の「あらかじめ裏切られた経営セミナー(溝口敦氏)」より。現在は宝島文庫に入っております。
深見東州の頭のハエ
深見東州氏(旧名は深見青山。本名は半田晴久)が率いるワールドメイト(旧コスモメイト)は⑭菱研(旧⑭ビッグビジネス経営経済研究所)という経営コンサルタント会社を経営している。
九二年、筆者が取材したところ、幹部はこの会社について次のように答えていた。
「(⑭ビッグビジネス経営経済研究所は従業員十人前後。会社員はコスモメイトの会員さんで企業を経営している方、非会員の方、いろいろです。
九一年ロンドンでセミナーを開きましたが、参加したのが約六十社。もちろん深み先生がこういった方々に経営上のアドバイスをしています。
経営には、合理を徹底的に追求しても、残り一厘どうしても超えられない部分というものがつきものでしょう。そこを深見先生が直観、インスピレーションで答えてあげるわけです」
深見東州氏は七八年、杉並区南荻窪に⑭三十鈴(現在は⑭ミスズと改名)を設立している。事業目的は学習塾「三十鈴学園」の経営や健康機具、食品の販売であり、深見氏自身が中小企業の経営者として、それなりに苦労も積んできたのだろう。
だが、彼が会社員に対して、どこまで適切なアドバイスができるかとなると、疑問なしとしない。
というのはワールドメイトは九三年以降、労使紛争と内紛、申告洩れ事件を抱え、自分の頭のハエを追うのに忙しい。まず会員社のお世話どころではないと思われるからである。
九三年の内紛では職員のうち約二十人が解雇され、三十人が自主退職した。
職員たちは同年五月、経営側の団交拒否で労働基準局に訴え、都労委で不当労働行為や未払い賃金に関して話し合いを進め、うち十七人は東京地裁にも不当解雇、地位保全で訴えを起こしている。
元職員のうちリーダー層は尾行され、その自宅には何者かの手で電話盗聴器を仕掛けられるなど不穏な動きもあった。
結局、個の労使紛争はワールドメイト側が解決金六千万円を提示して、同年夏に和解している。
さらに女性職員の二人は深見氏から強制猥褻行為を受けたとして横浜地裁に訴えを起こし、五月の第一回公判には深見氏もその代理人も出席しなかった。
十一月、同裁判は教団側が女性二人に和解金一千百万円を払うことで決着している。
だが、ワールドメイトの難はこれで終わらず、翌九四年には信者による玉ぐし料返還請求訴訟(慰謝料を含め一億円など)が提訴されている。
また東京国税局はワールドメイトに対し脱税の疑いで二回にわたって強制調査を行い、深見氏が一度は東京地検による逮捕を覚悟する自体もあった。
だいたいワールドメイトそのものが宗教利用の企業経営と見られている。始まりをたどれば、深見氏は八四年「コスモコア」を旗揚げし、宗教活動を始めている。
翌八五年、まぎらわしいのだが、同名の有限会社「コスモコア」を設立した(現在は株式会社に改組し、社名はコスモワールド)。
事業内容は占いの企画や仏具の販売である。同社の位置づけは宗教団体ワールドメイトが行うセミナーなどの運営実地を請け負うというのが教団側の言い分だが、東京国税局の見解はまるで逆である。
つまり⑭コスモワールドが事業活動の一部として宗教活動を行ってきた。少なくとも九三年まで宗教団体「ワールドメイト」の活動実体はなかった。
あるようにいうのは所得隠しのためだというのが国税局の認定である。
筆者の取材上の知見によっても、国税局の見方は正しいと思う。九二年当時、⑭ワールドメイトは⑭コスモメイトと名乗っていた(実に改名が多く、まぎらわしい)。
そしてその⑭コスモメイトが同じコスモメイトという名で宗教活動を行っていた。
株式会社にして宗教団体、主宰者は事業家にして宗教リーダーというのは実にミスマッチと思ったものである。八八年、会社は伊豆の大仁町に「皇大神社」を建て、静岡県に宗教法人として認証してくれるよう申請した。
だが、県は今もって認証を下ろしていない。県の見識であり、ワールドメイトの不運である。
当時コスモメイトは二万三千人の信者を有し、信者たちに霊界グッズを商っていた。
いわくアンドロメダ・ウォッチ、聖観音像、社、三宝荒神・三神セット、守護霊団合体パワーのペンダント、地蔵尊、不動明王、邪気が払えるレコードなどである。
これらは収益事業として課税される可能性があるが、「玉ぐし料」などは宗教活動として課税を免れていた。
だが、東京国税局は九六年五月、⑭コスモワールドは八九年から九三年までの五年間に宗教団体「ワールドメイト」を隠れみのに「玉ぐし料」など約六十億円の所得隠しをした
(ワールドメイトの言い分は宗教法人ではなくても、宗教活動を行っている以上“人格なき社団”で、宗教活動に伴う収入は非課税というもの)。
(ワールドメイトの言い分は宗教法人ではなくても、宗教活動を行っている以上“人格なき社団”で、宗教活動に伴う収入は非課税というもの)。
よって重加算税を含め約三十三億円の追徴課税を課すと決めた。
対してワールドメイトは東京地裁に裁判を起こしている。
ワールドメイトの失敗は早いところ宗教法人の認証を取らなかったところにあろうが、深見氏が先見性ゼロと告白するに等しい事件の続発である。
経営相談に乗る側がこの状態では、⑭菱研の会社員といえど、二の足を踏むに違いない。
オウム・拉致・サリン・宗教テロ
上畑 鉄之丞
はじめにオウムありき。坂本弁護士一家拉致事件の真相がようやくほぐれ始めた。これまで何人死んだのか、殺されたのか分かったわけではないし、背後関係も不明だが、プロセスだけはおぼろげながら見えてきた。
オウムの信者たちはハルマゲドン(人類最終戦争)をつくりだそうと、ロシアに近づき利用し、そして、サリンなどの毒ガスや様々な戦争兵器を準備し、そのために多くの人たちの財産を収奪したようである。
数年前、コスモメイトという神道系と称する新興宗教の脱会者の青年たちと会ったことがある。
全員20代なかば、アタッシェケ-スを下げ、パリッと背広を着こなし、一流会社のサラリ-マンといった服装が印象に残っている。
仲間のA氏が突然死したので、過労死の労災補償請求ができないかとの相談で、私のことは新聞記者のひとにきいたとのこと。死亡当時の状況は次のようである。
教祖は41歳の男性。
オウムと同じで、薬局、出版社、書店、占い喫茶など教団のチェ-ン店を手広く経営し、信者の多くはその社員としてこき使われていた。
当時、教祖は統一教会の合同結婚式がマスコミで取り上げられたのに注目、自分たちもと信者を激励、静岡県大仁町の教団神社で某月某日行うことになったという。
教団の書店員で芦屋支部にいたA氏も全国から不足気味の女性信者を輸送するため、関西方面を担当する運転手になった。
結婚式前日に勤務終了後、深夜午前0時半に和歌山から到着した女性2人を乗せて芦屋を出発。阪神・名神・東名を運転して5時半に会場に到着。1時間の仮眠後に境内の清掃をし、午前9時から夕方まで合同結婚式に参加した。
その日の午後8時半に再び女性が同乗し運転、午前3時に芦屋支部到着。仮眠後は午前8時起床、その日午後9時まで神戸でおこなわれた「秘法会・大除霊」なる儀式に参加。
午後11時から深夜までは芦屋の支部総会に出席、その後も午前7時まで徹夜の事務局のスタッフ会議が続く。
そして終了後、突然教祖がゴルフにいくといい出したため、A氏も同行、1時間半かけてゴルフ場に到着、午後4時までプレ-したが、その直後突然倒れ、救急車のなかで死亡している。
4日間のほとんど睡眠をとらず、車の運転、会議、そして運動直後の突然死である。
ながながと経過を書いたが、青年たちによると、A氏は教団関連の書店員として、教祖(社長)の業務命令で連日徹夜作業に従事した過労で死亡したもので、当然労災補償されるべきという。
彼らは、この事件もあって、教祖の人使いの荒っぽいさにいや気がさしたか、労働組合をつくって闘っているという。
全くあぜんとしたものの、私は、まず、どこまでが宗教活動、どこが仕事かを明確にしなければならない、就業規則はあるのか、賃金や賃金規定はどうなっているのか、なにより「会社」は労災保険に加入しているのか、
死亡したA氏の労災請求人は誰かなど乏しい法律知識で質問したものの要領をえない。
死亡したA氏の労災請求人は誰かなど乏しい法律知識で質問したものの要領をえない。
いくら話しても宗教活動と「仕事」は一体であることと、A氏は間違いなく労災で、彼らは教祖との宗教論争での「正義」の代理人だという信念だけがわかった。
私は、気持ちはともかく、今君たちに必要なのは、そんな宗教活動をやめて、まともな仕事に就くことではないかと何度も話したものの、もちろんきかれることはなく彼らは帰っていった。
その後はなんの連絡もないし、A氏の労災がどうなったかも知らない。
当時の新聞は、彼らが、教祖の女性社員(信者)へのセクハラ行為で賠償訴訟を準備しているとも報じていた。
オウムの若い信者たちの行動は彼らとよく似ている。
教団の関連会社が信者をほとんど賃金を払わないノ-ペイ労働者として働かせているところも同じで、青年たちがそうした仕組みに疑問をもたずに教団内の仕事場で働いているのも同じである。
彼らにとっては、教団は会社、教祖は経営者というようなイメ-ジがダブッているようにもみえる。
内容はともかく、彼らの行動は、多くの労働者が企業社会の論理に縛られ、どんなに長時間労働を強いられても、会社人間として従順に生活していることとも共通しているようにみえる。
彼らの関わる宗教の世界は、「大人」たちの社会のミニチュア版のようにみえる。
彼らは、「会社」(教団)のためならなんでもやるのである!
それにしても、彼らが、ソ連崩壊後のロシアに近づいたのにもビックリした!
これは、韓国生まれの統一教会が、アメリカや日本に近づき、政府の要人にとりいったのと同じなのだが、今のロシアが、得るものより、失うもののほうが多いことを彼らは知っていただろうか。
別世界の出来事のようにみていた新興宗教に走る青年たちの問題は、私達の問題でもある。
労働の大切さ、労働の提供と賃金のこと、民主主義や労働者の権利のこと、そして、「いのち、健康、安全」の大切さを、若い人たちに教えようとしない、私たちの社会の問題と思う。