タナビオン (Tanabion)


「我らは岸辺にて、王の目覚めを待つ者なり」

アビスのほとり「沈黙の岸辺」に集落を築き、10年前に世界を浄化したという『黙示の王』の再臨を待ち望むカルト教団。
アビスを神聖視し、外部からの侵入や調査を一切許さない排他的な武装集団でもある。


概要


名前の由来: ギリシャ語で「死」を意味するThanatos と、「生命」を意味するBios を組み合わせた造語。「死と生」という二つの概念を教義の根幹に置く。


起源 (Origin)


  • 原型: 10年前の「大崩壊」を目撃した者たちが結成した終末思想コミュニティ。彼らはあの大災害を、世界の終わりではなく「黒き水による洗礼」であり、旧世界を浄化する神聖な儀式だったと解釈した。
  • 聖地: 災害の中心地である「アビス」を、新たな世界が生まれる「聖なる子宮」と見なし、そのほとりである「沈黙の岸辺」に集落を築いた。
  • 現在: 10年間で、グレーエリアの絶望した人々や孤児を静かに受け入れ、独自の文化と信仰を持つ一大勢力へと成長した。


教義と目的 (Doctrine & Goal)


信仰対象:『黙示の王』

10年前にアビスを顕現させ、世界を浄化したとされる謎の存在。
王は現在アビスの底で眠りについており、再び目覚め、世界を完全に作り変える「最後の審判」を行う日を待ち望んでいる。

聖遺物と冒涜行為

アビスの岸辺に流れ着く「漂流物」は、王が眠りながらに見る夢の欠片であり、神聖な「聖遺物」だと信じられている。
これを外部の人間が持ち去ることを、最も重い冒涜行為と見なし、命を懸けて阻止しようとする。

沈黙の誓い

彼らの縄張り「沈黙の岸辺」では、不要な言葉を発することは禁じられている。
静寂の中で精神を研ぎ澄まし、アビスの底から響く「王の寝息」(※正体は冥海の鯨の鳴き声のような音)を聞くことこそが、最も重要な修行だとされる。


組織構造


証人

タナビオンの創始者にして頂点に立つ人物。10年前、『黙示の王』の姿を直接その目に焼き付けたと言われる唯一の存在。その正体は謎に包まれている。

守人

タナビオンの武装実行部隊。聖地「沈黙の岸辺」を巡回し、侵入者を実力で排除する。怪異の動きを模倣したかのような、予測不能な戦闘術を身につけている。

聴き手

タナビオンの祭司階級。聖遺物の管理や、アビスの「声」を聞いて神託を得る役割を担う。集団の意思決定に大きな影響力を持つ。

求道者

グレーエリアから受け入れられた新入りの信者たち。共同体での労働や教義の学習を通じて、正式な信徒となる日を目指している。


外見と武装


服装と象徴

  • 服装: アビスの湖水を思わせる、深い藍色のマントを着用。その装いは僧兵を思わせる。顔を漂流物から作った仮面で隠している。
  • 象徴(シンボル): 「涙を流す黒い太陽」。アビスに沈んでいく太陽を図案化したものであり、世界の終わりと新たな始まりを象徴する。信者はこのシンボルを身体のどこかに刺青として刻んでいる。

専用武装:『黒曜の傘刃』(こくようのさんじん)

信徒が常時携帯する、教団のシンボルを模した特殊な形状の傘。
戦闘時には傘の骨組みから黒曜石のような刃が滑り出す機構を持つ、攻防一体の武器となる。
  • 開いた状態では盾となり、回転させることで周囲を切り裂く。
  • 閉じた状態では、複数の刃が束ねられた変則的な槍や剣として使用可能。


特異現象


黒い雨

タナビオンの集団、特に「守人」が現れる時、その周辺では決まって、黒い雨が降る。
彼らはその雨を、自らが差す傘で静かに受け流す。この雨が彼らの力によるものなのか、アビスの自然現象なのかは定かではない。


※物語の核心に触れる可能性のある情報
タナビオンの装備が、一介のカルト教団にしては高度に整っている理由は、裏で支援するパトロンの存在があるため。
その正体は、アビスから産出される未知の資源(聖遺物)の独占を狙う、巨大企業である。
企業はタナビオンに資金と技術を提供し、タナビオンは企業の私設軍隊として、アビスから政府やスカベンジャーを排除する役割を担っている。
最終更新:2025年10月03日 01:13