目次

概要

ジャンルは、ダークファンタジー×コズミックホラー×アクション。
人間vs人間vs怪異というような内容の作品です。
この作品における「怪異」とは、我々の世界の物理法則や、常識的な生物の概念から逸脱した、異常な存在全般を指す言葉です。単一の種族ではなく、その出自や生態、危険度は多岐にわたります。

世界/都市

緩衝都市 イージス

【概要】
楽園の残骸、未完成の要塞。
国家の南西に位置する、対アビス用の最前線・緩衝都市。内陸の諸都市を守るための「盾」であると同時に、アビスに特化した研究を行う「研究都市」としての側面も持つ。有事の際には切り捨てられることを前提に設計されている。

【成り立ちと景観】
成り立ち: 元々は巨大なリゾート開発が進められていた地域だったが、10年前の「大崩壊」で計画が頓挫。建設途中だった施設群は、S.O.A.主導で対怪異用の防衛拠点として再設計された。そのため、美しいリゾート建築の骨格に、無骨な軍事設備が後付けされた歪な景観を持つ。

景観: 近未来的・近代的な建物が立ち並ぶが、都市全体が常に工事中で、至る所に建設用クレーンが見える「発展途上」の要塞都市である。

【内部構造と社会】
行政区画: 都市は機能ごとに区画分けされている。政府高官や怪異理研の研究者たちが活動する「官庁街」や、傭兵・労働者が集う壁際の「第七工業区画」などが存在する。

社会階層: 区画によって住民の階層が分かれており、中心部と壁際の周縁区では明確な格差が存在する。鳴華がルツを連れて行ったレストランは、官庁街の最も端、通りを一本隔てれば別区画となる「境界線」に位置していた。

【技術的パラドックス】
先進的なインフラ: 「研究都市」であるため、都市の防衛システムや研究設備といったインフラにはS.O.A.主導で先進技術がふんだんに使われている。

旧式の兵士装備: その一方で、最前線に立つ防衛軍の一般兵士の装備は、本土からの供給に頼っており、数世代前の型落ちした旧式装備が普及している。これは、兵士たちが「消耗品」として扱われていることの表れであり、兵士たちの士気低下や、闇市場での装備調達が横行する一因となっている。

【統治形態/軍と研究所による共同統治】
イージスは単なる都市ではなく、国家の最重要防衛拠点です。そのため、通常の市長や議会は存在せず、防衛軍の司令官と怪異理研の支部長による共同統治体制が敷かれていると考えられます。

軍の役割: 都市の防衛、壁の管理、戒厳令の発令など、物理的な安全保障を担当。常に「最悪の事態」を想定し、市民の自由よりも都市の存続を優先する、現実的で非情な判断を下します。

研究所の役割: 怪異の観測、データ分析、アビスに関する研究を担当。都市の存続には「未知の脅威の理解」が不可欠であると考え、時に危険な調査や実験を強行しようとします。
この二つの組織は、「都市を守る」という目的は同じでも、その手段や思想が正反対であるため、水面下で常に対立し、パワーバランスを巡る駆け引きを繰り広げています。

【市民生活と文化/混沌とした情報と自己責任の社会】
イージスの市民生活は、トップダウンで厳しく管理されているわけではありません。むしろ、政府の管理が行き届かない部分が多く、それ故のたくましさと危険性を併せ持っています。

【情報の流れ】
公式情報: 政府や怪異理研が発表する公式ニュースは存在するが、多くの市民はそれをプロパガンダだと見なし、鵜呑みにはしていない。

噂とリーク: 本当の情報は、壁の外から帰還した傭兵や、酒場で口を滑らせた兵士たちからもたらされる、断片的で信憑性の低い「噂」として広まる。第七工業区画の酒場などは、そうした生々しい情報の一大集積地となっている。

闇ネット: 一部の技術者や情報屋の間では、検閲をかいくぐる非合法な情報網(闇ネット)が構築されており、そこでは壁外の未編集戦闘記録や、怪異のデータなどが高額で取引されている。

【市民の意識/達観と自己防衛】
市民は、自分たちが危険な最前線都市に住んでいることを(噂レベルで)理解しており、「何が起きてもおかしくない」という一種の達観、あるいは諦念を持っている。
「自分の身は自分で守る」という意識が強く、護身術を習ったり、非合法な装備を買い求めたりする者も少なくない。政府の公式発表よりも、傭兵ギルドが出す「今週のモルヴァ危険度」のような非公式情報の方を信頼している。
独自の文化と娯楽。

英雄崇拝: 圧倒的な力で怪異を討伐するS.O.A.のエースや、伝説的な戦果を上げた傭兵は、市民にとってロックスターやプロアスリートのような崇拝の対象となる。彼らの活躍を描いた(しばしば誇張された)映像作品やVRゲームが人気を博している。

慰霊文化: 常に死が隣にあるため、慰霊の文化が生活に根付いている。都市の各所に戦没者を悼む小さな慰霊碑が建てられたり、若者たちが壁の外で散った兵士の認識票(ドッグタグ)のレプリカをアクセサリーとして身につけたりしている。

【リゾート時代の名残/皮肉なランドマーク】
都市の至る所に、かつてリゾート地だった頃の「残骸」が、皮肉な形で利用されています。
旧『星降りのプロムナード』: 海沿いの夜景が一望できるはずだったお洒落な遊歩道。現在はボーダーウォールの基礎部分に組み込まれ、兵士たちが巡回する殺風景な通路となっています。
旧『アクア・パラダイス』: 巨大なドーム型屋内プールだった施設。その浄水設備と広大な空間を利用し、現在は都市の主要な水耕栽培プラント(食料生産工場)として稼働しています。
旧『カジノ・グランデ』: 豪華絢爛なカジノだった建物。無数のモニターと情報処理設備が設置され、現在はイージス全体の防衛システムを監視する中央司令室として利用されています。



廃墟区画モルヴァ

【概要】
大崩壊が刻んだ爪痕。
10年前に起きた「大崩壊」によって生まれた、広大な廃墟都市 。イージスのボーダーウォールのすぐ外側に広がり、さらに南に位置する「深淵アビス」へと続いている。法も秩序も通用しない無法地帯である。

【景観と雰囲気】
景観: 「The廃墟な都市」と表現される通り、圧倒的なスケールの破壊が広がっている。天を突く超高層ビルは途中でへし折れていたり、大きく傾いていたりと、さながら巨大な墓標のようである 。道路は砕けたコンクリートやねじ曲がった鉄骨で埋め尽くされ、場所によっては水が溜まりぬかるんでいる。
雰囲気: 街全体が霧や粉塵に覆われ、色彩は褪せている。春鳴華が最初に感じたように、「湿った土と錆の匂い」が漂う、停滞と腐敗に満ちた空間である 。建物の崩壊は単なる経年劣化ではなく、暴力的な破壊の痕跡を色濃く残している。

【無法地帯の住人たち】
この複雑で危険な地形は、法を逃れた者たちの格好の隠れ家となっている。
スカベンジャー: 廃墟に残されたものを漁り、時には人を襲って金品を奪う「廃墟の寄生虫」 。土地勘を熟知しており、集団で行動する。
傭兵: 怪異の討伐や物資の輸送、護衛など、金で様々な危険な仕事を請け負う者たち。ルツもその一人である。

【灰被りの市場/アッシュマーケット】
廃墟の心臓。
モルヴァの深部、巨大な高速道路のジャンクション跡の下に存在する闇市場。発電機がネオンを煌めかせ、無数のテントやバラックがひしめき合っている。ここは、スカベンジャーや傭兵たちが集い、情報交換や取引を行う、無法地帯における唯一のオアシス(拠点)である。モルヴァで唯一安全に電気やガスが使用できる場所であるが故に、ここで暮らす難民も多く市場に出入りしている人間誰もが荒くれ者とは限らない。

【無法者たちの社会構造/派閥と掟】
無法地帯とはいえ、そこに住む者たちの間には独自の社会が存在します。
スカベンジャーの派閥: スカベンジャーたちは一枚岩ではなく、縄張りや出自によって複数の派閥(クラン)に分かれて抗争を繰り返しています。それぞれが独自のシンボルカラーやマークを身に着けています。
傭兵の不文律: 傭兵たちの間には、アッシュマーケットを中立地帯とすることや、依頼の横取りをしない、といったいくつかの不文律(暗黙のルール)が存在します。この掟を破った者は、全ての傭兵を敵に回すことになります。

【廃墟のランドマーク】
広大なモルヴァの中には、その特徴から傭兵たちによって名付けられた通称(ランドマーク)が存在します。
『ガラスの海』:超高層ビルが立ち並んでいた商業地区の跡地。崩壊したビルのガラスが高純度の砂となって一帯を覆い尽くし、太陽光を乱反射して美しく輝くが、足を踏み入れれば無数のガラス片で全身が切り刻まれる危険地帯。
『沈黙の高速道路』: 半壊したまま天へと伸びる高速道路。アビスに近いため「音が死んだ空間」の影響が特に強く、風の音すら聞こえない。ここを通過する際は、互いの姿だけが頼りとなる。
『旧地下鉄墓場』:「大崩壊」の際に水没した地下鉄の駅。現在は多くの下級怪異の巣窟となっており、危険だが、漂流物から作られた貴重なパーツが見つかることもあるため、腕利きのスカベンジャーが時折探索に訪れる。



深淵の冥海

【概要】
漂流物の終着点。
国家の最南端に位置する、広大な異常領域。正式名称は「深淵の冥海」だが一般的にはアビスと呼ばれている。
その最大の特徴は、あらゆる世界から、死んだモノたち(生命の死骸や文明の残骸)が「漂流物/聖遺物」として流れ着く**「世界の墓場」**であること。春鳴華が発見した「鍵」も、このアビスから流れ着いたものである。

【景観と雰囲気/死の海岸】
黒い砂浜に無数の鯨や巨大な海洋生物の死骸が打ち上げられ、枯れ木のような巨大な「手」や、骨でできた不気味なトーテムが林立する、悪夢が具現化したかのような場所である。海から数百キロ離れた内陸に、このような「海辺」の光景が広がっていること自体が、この地の異常性を物語っている。
【特性】
無音の空間:アビスの入り口に近づくと、音という物理現象が消失する「音が死んだ空間」が広がっている。
精神への影響:訪れる者のトラウマや恐怖心を読み取り、それを景観として具現化させることで、侵入者の精神を直接蝕む。



蝕地

【概要】
神が夢見る場所。
深淵の冥海とは全く異なる場所に存在する、独立した異常領域。
10年前、S.O.A.が神格級怪異【覇蛇大公】と交戦し、「神殺し」を成し遂げた物語の舞台である。
【特性】
色彩のない世界:白・黒・灰色以外の色彩が存在を許されない、静止した絵画のような光景が広がる 。
生命の燃え殻: 大地は砂ではなく、「何かの生命が、完全に燃え尽きた後の死骸の末端」で構成されている 。
法則の歪み: 計器が狂い、空間が歪曲する。「世界そのものが見ている“夢”の中にいる」と形容されるほど、現実とは異なる法則で支配されている 。

内陸都市群

【概要】
国家の中心と人々の暮らし。
イージスの壁のない北東方面に広がる、巨大な国家の中心部を形成する都市群。怪異理研の本部や政府機関などもここに存在する。森や山、谷といった多様な自然地形を挟みながら、都市が地続きに広がっている。アビスから遠く離れているため、最前線であるイージスとは対照的に、人々の「生活」が営まれている場所である。

【景観と雰囲気/現代レトロなアジア的都市】
雰囲気: 全体的に和や中華的な雰囲気が色濃く漂い、「現代レトロ」とでも言うべき独特の景観を持つ。
景観: 剥き出しの電信柱や壁を這う配線、頭上を覆うように突き出した煌びやかなネオン看板が雑多にひしめき合っている。狭い路地裏に入れば、赤い提灯が灯る飲み屋や、鳥居が佇む小さな祠などが顔を出す、赤・紅・朱といった暖色が似合う景観を持つ。イージスのような計画的に建設された都市とは異なり、長い年月をかけて有機的に発展してきた、猥雑でエネルギッシュな空気が流れている。

【文化とファッション/伝統と機能の融合】
ファッション: 内陸部に暮らす人々の服装は、伝統衣装とテックウェアの融合が主流である。
和装テック: 着物や羽織などをベースに、機能的な素材のジャケットやブーツなどを組み合わせるスタイル。
中華テック: 旗袍(チーパオ)や長衫(チャンシャン)といった伝統服に、プロテクターや情報端末などを装着するスタイル。春鳴華が白衣の下に着ている旗袍もこれにあたる。
文化的な誇りと安定: 「大崩壊」の直接的な影響を受けなかったからこそ、伝統的な和装や中華服が現代まで色濃く受け継がれており、人々の文化的アイデンティティと歴史の長さを表しています。
備えとしての実用性: 一方で、「大崩壊」以前から怪異は水面下で存在していました。テックウェアの組み合わせは、いつどこで起こるか分からない超常的な脅威に対する、長年の経験から市民の間に根付いた「常に備える」という処世術であり、実用的な自己防衛の意識がファッションに昇華されたものと言えます。


組織

怪異理論研究機構

基本情報

正式名称: 怪異理論研究機構(通称:怪異理研)
設立母体: 政府
役割: 怪異に関連する、あらゆる事象の研究、分析、そして対策を専門とする、国家の最高研究機関。
概要
政府の下部組織の一つであり、軍部、警察とは独立した権限を持つ、怪異専門の研究機関。10年前の「大崩壊」を機に、その存在が一般社会にも広く知られるようになった。しかし、その大崩壊の原因が怪異理研にあるという「噂」も同時に広まっており、市民からは全幅の信頼を得られてはいない。

組織構造と目的

組織構造: 政府を頂点とし、軍部、警察と並列する形で存在する。内部には、春鳴華が所属する「物理学部」や、仙庭千秋が所属する「漂流物保管庫」、そしてアダムがかつて所属していた「生物学部」など、複数の専門部署が存在する。
公的な目的: アビスやモルヴァといった危険地帯の定点観測や、怪異出現時のデータ収集、そして、S.O.A.と連携した怪異の討伐・捕獲を主な任務とする。
腐敗と怠惰: アダムが組織を抜けた理由として「怠惰的で腐敗的な環境」を挙げており、組織内部には、官僚主義や、真理の探求よりも自己保身を優先するような、硬直した側面も存在することが示唆されている。
S.O.A.との関係
共同部隊: 特殊怪異狩猟部隊《S.O.A.》は、怪異理研と軍部の共同部隊という、特殊な立ち位置にある。
指揮権の移行:
平時の調査活動における現場指揮権は、怪異の専門家である怪異理研の研究者側にある 。
しかし、怪異やタナビオンとの戦闘が発生した場合、あるいは研究員の命に危険が及ぶと判断された場合、指揮権は軍部側へ強制的に移行される。

研究倫理とタブー

禁忌の研究: 人間と怪異を融合させるような、非人道的な実験は、組織内における最大のタブーとされている。特に、ルツの存在が関係しているため、この話題は禁句のように扱われている。
秘密裏の研究: その一方で、アビス(冥海)の未知のエネルギーを利用した兵器開発は、一部の部署で秘密裏に進められている。中には、かつて陸が使用した神殺しの剣「シャイロック」のような、規格外兵装の再現を目指している部署も存在する。



防衛軍

基本情報

正式名称: 防衛軍(通称:軍部)
設立母体: 政府
役割: 国家の正規軍。対怪異任務だけでなく、あらゆる脅威から都市を防衛する。

【概要】
政府の下部組織の一つであり、怪異理研、警察とは独立した指揮系統を持つ、国家の正規軍。S.O.A.は、あくまで防衛軍が保有する数ある部隊の中の、一つの特殊部隊という位置づけになる 。

組織構造と任務

国家の防衛: 主な任務は、怪異に限らず、あらゆる外部の脅威の侵攻に対する防衛である。脅威が現れない平時は、主に訓練に勤しんでいる 。
怪異からの市民保護: アビスやモルヴァ以外の地域で、突発的に発生する怪異の脅威から、市民を保護し、救いの手を差し伸べることも、防衛軍の重要な任務の一つである。
警察との分業: 都市全体の一般的な治安維持(対人犯罪など)は、警察の管轄となる。

S.O.A.と関係

共同部隊: 特殊怪異狩猟部隊《S.O.A.》は、防衛軍と怪異理研の共同部隊という、特殊な立ち位置にある。
指揮権の移行:
平時の調査活動における現場指揮権は、怪異の専門家である怪異理研の研究者側にある 。
しかし、怪異やタナビオンとの戦闘が発生した場合、あるいは研究員の命に危険が及ぶと判断された場合、指揮権は軍部側へ強制的に移行される。

怪異理研との関係

不信感を抱く協力者: 軍内部では、怪異理研を「頼れる専門家集団」と見る意見が7割、「『大崩壊』の元凶かもしれない胡散臭い研究者たち」と見る意見が3割、というのが大勢である。
表面上の協力: 上からの命令で共同任務に就く以上、その不信感を公に口にすることはないが、互いに完全には信用しきれていない、緊張感をはらんだ協力関係にある。

兵装と戦闘

一般兵の装備: 基本は対人・対兵器を想定した、従来の軍隊装備が主流である 。
対怪異装備の標準化: 一般兵でもある程度の対怪異戦闘を想定しており、突発的に出現した怪異への簡易的な対処が可能な、最低限の対怪異装備も支給されている。ただし、これはS.O.A.隊員が使うような最先端装備ではない。

特殊怪異狩猟部隊《S.O.A.》

基本情報

正式名称: 特殊怪異狩猟部隊(通称:S.O.A.)
設立母体: 怪異理研と防衛軍の共同部隊
役割: 怪異の討伐・捕獲、及び、ボーダーウォールの防衛を主任務とする、国家最強の特殊部隊。

概要
怪異理研が保有する専門知識と、防衛軍が保有する戦闘能力を融合させた、対怪異戦闘のエキスパート集団。10年前と現在とでは、その組織の在り方が大きく異なっている。

組織構造と立ち位置

共同部隊: 怪異理研と防衛軍の共同部隊という、極めて特殊な立ち位置にある。これにより、研究機関の知見と、正規軍の戦闘能力の両方を、現場で最大限に活用することが可能となっている。

指揮権の移行:
平時の調査活動における現場指揮権は、怪異の専門家である怪異理研の研究者側にある。
しかし、怪異やタナビオンとの戦闘が発生した場合、あるいは研究員の命に危険が及ぶと判断された場合、指揮権は軍部側へ強制的に移行される。

10年前のS.O.A.

少数精鋭の英雄: 当時のS.O.A.は、明日香、陸、ルツ、コルトといった、それぞれが規格外の能力を持つ「化け物揃い」の、少数精鋭チームだった。彼らの活躍は、今や「神殺し」の伝説として語り継がれている。

役割: 蝕地のような、人知を超えた危険地帯への潜入調査と、神格級怪異との直接戦闘を主任務としていた。

結末: “覇蛇大公”との戦いと、その後の「大崩壊」を経て、チームは事実上解散。明日香と陸は組織を抜け、ルツは行方不明となった。

現在のS.O.A.

再編と軍隊化: 10年前の経験から、組織は大きく方針転換。個々の突出した才能に依存するのではなく、より軍隊的で、規律を重んじる組織へと再編された。
装備の標準化: 蝕地での戦闘データを基に改良された、高性能な装備一式が全部隊員に支給されており、部隊全体の戦力が、高い水準で均一化・安定化されている 。
主な任務: 現在の主な任務は、ボーダーウォールの防衛と、ゲートの警備。壁の内外を出入りする人間を厳しく監視し、怪異の侵入を防ぐ、イージスの「番犬」としての役割を担っている。



タナビオン

基本情報

分類: カルト教団。アビスを崇拝する、排他的な武装集団。
名前の由来: ギリシャ語で「死」を意味するThanatos と、「生命」を意味するBios を組み合わせた造語。「死と生」という二つの概念を教義の根幹に置く。

【概要】
10年前に起きた「大崩壊」を目撃した者たちが結成した終末思想コミュニティが原型。彼らはあの大災害を、旧世界を浄化する「黒き水による洗礼」と解釈し、災害の中心地である「アビス」を、新たな世界が生まれる「聖なる子宮」と見なしている。アビスのほとりである「沈黙の岸辺」に頻繁に出没する。

教義と目的

信仰対象:『黙示の王』 10年前にアビスを顕現させ、世界を浄化したとされる謎の存在(正体はルツ)。彼らは王がアビスの底で眠りについており、再び目覚め、「最後の審判」を行う日を待ち望んでいる。
聖遺物と冒涜行為 アビスの岸辺に流れ着く「漂流物」は、王が見る夢の欠片であり、神聖な「聖遺物」だと信じられている。これを外部の人間(特にスカベンジャー)が持ち去ることを、最も重い冒涜行為と見なし、命を懸けて阻止しようとする。
沈黙の誓い 彼らの活動領域では、不要な言葉を発することは禁じられている。静寂の中で精神を研ぎ澄まし、アビスの底から響く「王の寝息」(正体は冥海の鯨の鳴き声のような音)を聞くことこそが、最も重要な修行だとされる。

組織構造

証人: 教団の創始者にして頂点に立つ人物。10年前、『黙示の王』の姿を直接その目に焼き付けたと言われる唯一の存在。その正体は謎に包まれている。
守人: 武装実行部隊。聖地を巡回し、侵入者を実力で排除する。怪異の動きを模倣したかのような、予測不能な戦闘術を身につけている。
聴き手: 祭司階級。聖遺物の管理や、アビスの「声」を聞いて神託を得る役割を担う。袁会長との連絡役も務める。
求道者: モルヴァから受け入れられた新入りの信者たち。
外見と武装
服装と象徴:
服装: アビスの湖水や夜空の様な、深い藍色のマントを着用。その装いは僧兵を思わせる。顔を漂流物から作った仮面で隠している。
象徴(シンボル): 「涙を流す黒い太陽」。世界の終わりと新たな始まりを象徴しており、信者は身体のどこかに刺青として刻んでいる。
専用武装: 『黒曜の傘刃』(こくようのさんじん) 信徒が常時携帯する、教団のシンボルを模した特殊な形状の傘。戦闘時には傘の骨組みから黒曜石のような刃が滑り出す機構を持つ、攻防一体の武器となる。
『羊飼い』(機械人形部隊) タナビオンが保有する、藍色の外套を纏った機械人形の軍勢。遠隔操作か自律行動かは不明だが、極めて高い戦闘能力を持つ。

背後の存在

パトロン: その高度な武装や機械人形部隊は、巨大企業「アズール・ダイナミクス社」の会長である袁 臥龍によって提供されたもの。
共生関係: 袁会長は、タナビオンの狂信的な信仰心を利用し、彼らをアビスから聖遺物を回収し、他者を排除するための「私設軍隊」として扱っている。タナビオン側は、袁会長を「王の目覚めを助ける協力者」として認識している。



アズール・ダイナミクス社

基本情報

名称: アズール・ダイナミクス社
代表: 袁 臥龍(えん がりょう)会長
役割: タナビオンを裏で支援する巨大企業。

【概要】
イージスに本社を置く、巨大複合企業「アズール・ダイナミクス社」は、表向きには「大崩壊後の世界復興をリードする、最先端の総合テクノロジー企業」です。 その事業は、主に以下の三本の柱で構成されています。しかし、その真の目的は、アビスから流れ着く「漂流物(聖遺物)」の独占と、それに秘められた未知のエネルギーや技術の解析・兵器転用にあります。

1. 防衛・セキュリティソリューション事業

表向きの活動: これが、彼らの最も有名で、収益性の高い事業です。ボーダーウォールの維持管理システムの一部や、S.O.A.が使う装備の、さらに高性能なカスタム品、そしてイージス内の重要施設を守るための、高度な監視システムなどを開発・提供しています。彼らは「市民の安全を守る」という大義名分を掲げ、政府や軍部にも深く食い込んでいるのです。
裏の顔(隠れ蓑): この事業は、彼らが「黒曜の傘刃」や機械人形部隊『羊飼い』のような、高度な兵器を開発・保有していても、全く怪しまれないための、完璧な隠れ蓑となっています。タナビオンへの技術提供も、この部門が「新型装備のフィールドテスト」という名目で行っているのかもしれません。

2. 次世代エネルギー開発事業

表向きの活動: 大崩壊によって失われた、旧世界のエネルギーインフラに代わる、新たなエネルギー源を研究・開発する部門です。彼らは「アビスから漏れ出す未知のエネルギーを、安全に解析し、クリーンな次世代エネルギーとして実用化する」という、壮大なプロジェクトを公に発表しており、多くの投資家や市民から、期待の星として見られています。
裏の顔(隠れ蓑): 林が怪異理研に接触した際の口実が、まさにこれです。この事業は、彼らが聖遺物(漂流物)、特に、ミミックやギターのような未知のエネルギーを発する物体に異常な執着を見せても、全く不自然に思われないための、完璧な口実となっています。

3. 先端素材・医療研究事業

表向きの活動: モルヴァのような汚染された環境でも使用可能な、特殊な建材や、怪異が持つ未知の生体組織を解析し、難病を治療するための新薬を開発する、といった人道的な研究を行っています。
裏の顔(隠れ蓑): この部門は、彼らがスカベンジャーなどから、非合法なルートで聖遺物(漂流物)を買い集めるための、隠れ蓑です。「研究用の貴重なサンプル」という名目であれば、どんなに奇妙な物体でも、彼らが収集する理由が成り立ちます。

タナビオンとの関係

パトロンと実行部隊: タナビオンの裏の「パトロン」であり、彼らに資金、技術、そして「黒曜の傘刃」や機械人形部隊『羊飼い』といった高度な武装を提供している。
共生関係: 袁会長は、タナビオンの狂信的な信仰心を利用し、彼らをアビスから聖遺物を回収し、政府やスカベンジャーといった他者を排除するための「私設軍隊」として扱っている。タナビオン側は、袁会長を「王の目覚めを助ける協力者」として認識しており、互いの利害が一致した、歪な共生関係にある。

目的と手段

目的: 聖遺物の独占と、その力の解析・兵器化。
手段: 袁会長は、武力行使を最終手段と考える慎重な策略家。まずは、エージェントである林を使い、潜入、諜報、通信傍受といった、水面下での情報収集を徹底する。情報の精度を最大限に高めた上で、最も確実な一手を打つことを信条とする。

主要人物

袁 臥龍(えん がりょう): 会長。表舞台には決して姿を見せず、影から全てを支配する、底知れない野心を持つ黒幕。
林(りん): 袁会長の腹心として動く、極めて優秀な女性エージェント。冷徹かつ的確に任務を遂行する、諜報のプロフェッショナル。

鬼奇壊界 概念地図


   (北)
    ▲
    │
[ 巨大な国家・内陸都市群 ]
(国家の中心部 / 安全圏 / 怪異理研本部などが存在)
(和・中華風の現代レトロな景観と文化を持つ)
    │
    │ ←壁のない境界線:森、雪山、谷などを抜ける交通網で接続
    │
[ 都市イージス ]
(国家南西に位置する最前線・緩衝都市)
(旧リゾート地を再設計した未完成の要塞)
    │
( ボーダーウォールによる防衛線 ) ←都市の西側〜南側を固める
    │
[ 廃墟区画モルヴァ ]
(大崩壊の爪痕 / イージスとアビスの中間に位置する無法地帯)
    │
    │
[ 深淵アビス ]
(国家最南端に位置する異常領域 / 漂流物の終着点)
    │
    ▼
   (南)

【解説】
国家全体で見ると、脅威は南からやってきます。
内陸都市群が安全な本土であり、政治・経済・文化の中心です。
イージスは、その本土を守るために南西の国境に置かれた、巨大な盾(緩衝地帯)です。
イージスの北東側は壁がなく、森や山を越えて本土と繋がっていますが、南西側はボーダーウォールによって固く閉ざされ、その先のモルヴァやアビスと対峙しています。



*

舞台設定

最終更新:2025年10月14日 00:40
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