読書メモ 整理版(第1〜44話)・2/3
関係と出来事/恋愛・見合い・駆け引き
| 項目 | 話数 |
|---|---|
| ぼくの宿痾(37) | 37 |
| 好意(9) | 9 |
| 独り占めしたいくらい(6) | 6 |
| 疑似恋愛のプロっぽくないメンバー(18) | 18 |
| 見合い白紙の提案(14) | 14 |
| 見合い白紙の提案(15) | 15 |
| 謎のモテ期(44) | 44 |
| 手錠(24) | 24 |
| 手錠のあざ(27) | 27 |
| 手錠のような小グロワス(22) | 22 |
| 手錠をかけた理由(25) | 25 |
| 海に生きるお友達(18) | 18 |
| ”お友達”(15) | 15 |
| 「やっぱりなんか違ったの。ごめんね」(42) | 42 |
| あいつら(25) | 25 |
| お友達(2) | 2 |
| お友達(27) | 27 |
| すでに2度お助けしていますから(22) | 22 |
| まことに立派な女性(15) | 15 |
| 不倫からの無理心中(25) | 25 |
| 人間関係(18) | 18 |
| 仲間はずれ(22) | 22 |
| 外人のべっぴんさん(41) | 41 |
| 大きな猫(31) | 31 |
| 愛(39) | 39 |
| 昨日の食事、辛かったですか?(25) | 25 |
| 相手を尊重することの裏返し(36) | 36 |
| 興味を持つということ(22) | 22 |
| 近距離(25) | 25 |
ぼくの宿痾(37)
ぼくは本当の意味で理解不可能な他者の存在を恐れている。結果、結婚の先にある子供の誕生も恐れている。自分のことしか考えられない卑劣な人間だから。卑劣な人間がなせる善はただいなくなることのみ。ぼくが書いている物語の主人公に対し、読者はヒロインと結ばれることを望んでいるだろう。しかし、卑劣な人間にその結末は望めない。ぼくはなやむ。
”ぼくという存在はこのように在る。 ぼくはいつも「ぼく」「ぼく」「ぼく」だ。 ぼくの世界には他者がいない。正確には他者に向ける意識の束がない。本当の意味での理解不可能な他者の「存在」を恐れている。”
”ぼくは子どもを愛することが出来るだろうか。 この歪で、そのくせ量だけは多い自己愛を、子どもに分けてやることができるだろうか。 それとも大好きなチョコレートケーキを独り占めするように、一片も他者に分けてやらないだろうか。 愛を。 それは嫌だ。ぼくはケーキを皆に切り分けてあげたい。そうなりたい。”
※『暗君』59話と全く同じ文章
”ぼくは子どもを愛することが出来るだろうか。 この歪で、そのくせ量だけは多い自己愛を、子どもに分けてやることができるだろうか。 それとも大好きなチョコレートケーキを独り占めするように、一片も他者に分けてやらないだろうか。 愛を。 それは嫌だ。ぼくはケーキを皆に切り分けてあげたい。そうなりたい。”
”ぼくは彼女達にも、恐らく生まれるであろう子どもにも、ケーキを分けてあげられないタイプの人間なんだ。”
”ぼくはフリーライダーだ。 皆の好意を掠め取って、それに乗っかって生きてる。 世の中そんなものだ。むしろ賢い生き方だと思えれば幸せなんだろうけど、生憎ぼくはそうなれなかった。ならば無賃乗車は止めなければならない。”
”凡庸な者は善を為しうる。では、卑劣な者はどのような善を為しうるだろうか。 答えは決まっているね。 居なくなることによって。”
”だけど、その結末はどうやら「皆の望むもの」ではなさそうだ。皆はアントワン3世ぼくが幸せになることを望んでいる。何かを成し遂げ、讃えられ、ヒロイン達と結ばれて幸せに暮らすラストを望んでいる。”
”ぼくという存在はこのように在る。 ぼくはいつも「ぼく」「ぼく」「ぼく」だ。 ぼくの世界には他者がいない。正確には他者に向ける意識の束がない。本当の意味での理解不可能な他者の「存在」を恐れている。”
”ぼくは子どもを愛することが出来るだろうか。 この歪で、そのくせ量だけは多い自己愛を、子どもに分けてやることができるだろうか。 それとも大好きなチョコレートケーキを独り占めするように、一片も他者に分けてやらないだろうか。 愛を。 それは嫌だ。ぼくはケーキを皆に切り分けてあげたい。そうなりたい。”
※『暗君』59話と全く同じ文章
”ぼくは子どもを愛することが出来るだろうか。 この歪で、そのくせ量だけは多い自己愛を、子どもに分けてやることができるだろうか。 それとも大好きなチョコレートケーキを独り占めするように、一片も他者に分けてやらないだろうか。 愛を。 それは嫌だ。ぼくはケーキを皆に切り分けてあげたい。そうなりたい。”
”ぼくは彼女達にも、恐らく生まれるであろう子どもにも、ケーキを分けてあげられないタイプの人間なんだ。”
”ぼくはフリーライダーだ。 皆の好意を掠め取って、それに乗っかって生きてる。 世の中そんなものだ。むしろ賢い生き方だと思えれば幸せなんだろうけど、生憎ぼくはそうなれなかった。ならば無賃乗車は止めなければならない。”
”凡庸な者は善を為しうる。では、卑劣な者はどのような善を為しうるだろうか。 答えは決まっているね。 居なくなることによって。”
”だけど、その結末はどうやら「皆の望むもの」ではなさそうだ。皆はアントワン3世ぼくが幸せになることを望んでいる。何かを成し遂げ、讃えられ、ヒロイン達と結ばれて幸せに暮らすラストを望んでいる。”
好意(9)
アナリースから小グロワスを譲られた際のぼくの感情。
”恐怖を感じる。誤魔化しようがないほどの不気味さも。理由の分からない好意ほどに恐ろしいものはない。敵意よりもずっと怖い。敵意は気まぐれに生まれる。身振り手振り、あるいは口調が勘に障る。人はそれだけで他者に憎悪を抱けるようにできてる。お手軽な回路。 一方好意の回路はもっとずっと複雑だ。もちろん顔が好みとかで一目惚れすることはあるけど、それは表層に過ぎない。より正確には勘違いと称するべきだろう。 じゃあ、勘違いで4桁は下らない時計、しかも自身の処女作をプレゼントするようなことがあり得るだろうか。ないね。 だからとても怖い。”(9)
”恐怖を感じる。誤魔化しようがないほどの不気味さも。理由の分からない好意ほどに恐ろしいものはない。敵意よりもずっと怖い。敵意は気まぐれに生まれる。身振り手振り、あるいは口調が勘に障る。人はそれだけで他者に憎悪を抱けるようにできてる。お手軽な回路。 一方好意の回路はもっとずっと複雑だ。もちろん顔が好みとかで一目惚れすることはあるけど、それは表層に過ぎない。より正確には勘違いと称するべきだろう。 じゃあ、勘違いで4桁は下らない時計、しかも自身の処女作をプレゼントするようなことがあり得るだろうか。ないね。 だからとても怖い。”(9)
独り占めしたいくらい(6)
女性陣のほのぼの推しトークを尻目に三沢さんお手製のチョコレートケーキを貪っていたぼくの独白。
疑似恋愛のプロっぽくないメンバー(18)
ショッピングモールエントランスで待ち合わせして、ぼくがブティックに引き連れていった面々。店長は面食らった。
” 青佳はるかさんは上品系ドメブラを纏ったほわっとしたOLだし、茉莉さんはバリキャリ、かつ私服はヴォーグ的お洒落。 知り合ったばかりだけど知子さんは意外にも尖った男受けゼロの服——ライトグレーのスクールユニフォームみたいな縁取り入りの上着に鮮烈な赤いドットのスカート——を着てる。ギャルソンかな? で、アナリースさんはね。濃紺のワイドスラックスにちょっとだけぶかっとしたネイビー開襟シャツ。青系を絶妙な塩梅でグラデーションさせてる。腕まくりもかっこいい。ハリウッドセレブのオフショット感満載。”
” なんだこの人々……。整理しておこう。高嶺の花OL1名、バリキャリ1名、アート系女子大生1名、ハリウッドセレブ1名。 もう隠してもしょうがないね。ルッキズム全開で行く。皆さん凄まじくかわいい。 なんだこれ……。”
” 青佳はるかさんは上品系ドメブラを纏ったほわっとしたOLだし、茉莉さんはバリキャリ、かつ私服はヴォーグ的お洒落。 知り合ったばかりだけど知子さんは意外にも尖った男受けゼロの服——ライトグレーのスクールユニフォームみたいな縁取り入りの上着に鮮烈な赤いドットのスカート——を着てる。ギャルソンかな? で、アナリースさんはね。濃紺のワイドスラックスにちょっとだけぶかっとしたネイビー開襟シャツ。青系を絶妙な塩梅でグラデーションさせてる。腕まくりもかっこいい。ハリウッドセレブのオフショット感満載。”
” なんだこの人々……。整理しておこう。高嶺の花OL1名、バリキャリ1名、アート系女子大生1名、ハリウッドセレブ1名。 もう隠してもしょうがないね。ルッキズム全開で行く。皆さん凄まじくかわいい。 なんだこれ……。”
見合い白紙の提案(14)
茉莉の宿泊を知って翌日18時に押しかけて来た青佳にぼくが告げた。
”「身勝手で本当に申し訳ないけど、お見合いの話は白紙にしたい。——近い将来、私は会社を手放す。つまり、あなたが望むであろう生活を私は提供できない」”(14)
”——ブラウネ! ブラウネ! 何を恐れることがある! 世界の全てがきみを苛もうとも、私が付いている。このサンテネリ王グロワスが!”(14)
” 昨日ぼくはこう言った。幸せと不幸せは個人的な、主観的なものだって。一方で、他者と比較することによって生まれる感情もある。 それは惨めさだ。ぼくは惨めだ。”(14)
”「身勝手で本当に申し訳ないけど、お見合いの話は白紙にしたい。——近い将来、私は会社を手放す。つまり、あなたが望むであろう生活を私は提供できない」”(14)
”——ブラウネ! ブラウネ! 何を恐れることがある! 世界の全てがきみを苛もうとも、私が付いている。このサンテネリ王グロワスが!”(14)
” 昨日ぼくはこう言った。幸せと不幸せは個人的な、主観的なものだって。一方で、他者と比較することによって生まれる感情もある。 それは惨めさだ。ぼくは惨めだ。”(14)
見合い白紙の提案(15)
ぼくが青佳に告げた。
”「身勝手で本当に申し訳ないけど、お見合いの話は白紙にしたい。——近い将来、私は会社を手放す。つまり、あなたが望むであろう生活を私は提供できない」”(15)
”一片の誤魔化しもなく、嘘もなく、卑怯もなく、男がその言葉を告げたとき、それを受け止めた青佳ブラウネの胸骨の狭間、身体に遍く血を送る心臓はその豊かな乳房を食い破り、露わにならんばかりに踊った。 喜びという言葉では表現しようがない。それは大願の成就である。”(15)
”——なんと素晴らしいことでしょう。わたくしはこの方を、殺さずに済む。”(15)
”——楽しく生きましょう! 毎日笑って、毎日踊りましょう!”(15)
”「身勝手で本当に申し訳ないけど、お見合いの話は白紙にしたい。——近い将来、私は会社を手放す。つまり、あなたが望むであろう生活を私は提供できない」”(15)
”一片の誤魔化しもなく、嘘もなく、卑怯もなく、男がその言葉を告げたとき、それを受け止めた青佳ブラウネの胸骨の狭間、身体に遍く血を送る心臓はその豊かな乳房を食い破り、露わにならんばかりに踊った。 喜びという言葉では表現しようがない。それは大願の成就である。”(15)
”——なんと素晴らしいことでしょう。わたくしはこの方を、殺さずに済む。”(15)
”——楽しく生きましょう! 毎日笑って、毎日踊りましょう!”(15)
謎のモテ期(44)
これまでなんとなく付き合って振られるを繰り返したぼく。相手に踏み込まれたくないために関係が深まらない。どうあっても相手を喜ばせることができないゆえに、恋愛について考えるのをやめていた。にもかかわらず周囲に美女のあふれる現状をモテ期と表現。
”ぼくは相手を喜ばせようと望んだ。 でもその行為自体が相手を気味悪がらせることに気づいたとき、それをやめた。 そんな、まことに卑小な人間が、謎のモテ期を迎えようとしている。”
”なんだかラブコメみたいじゃないか。 秘書にバリキャリOL、お嬢様に外国人。”
”ちなみに親友枠の青年もいるよ。すごいね。”
手錠(24)
安っぽいアルミ製と思われるおもちゃの手錠。ぼくの部屋を訪れた茉莉は、ぼくに左手を出すように命令して手錠をはめ、反対側を自分の右手にはめた。(24)「安さの殿堂」みたいなキャッチフレーズの駅前のお店で茉莉が買ってきた。恋仲の男女がちょっとした刺激を求めて使用する小道具的な気配もある。(25)
” 彼女は出会い頭の開口一番、ぼくに言った。「兄さん、左手を出して」「え?」「出してください」”
”それは断固たる口調。 お願いではない。命令だった。 これは新鮮だ。ぼくはもう何年も他人に命令されたことなんかない。”
”ぼくの手のひらにはなにもない。 手指にも。 そして手首にも。 家でも時計を着ける習慣は昨日の夜に止めた。今日のぼくの左腕は先端から付け根まで、生まれた時のままの姿だ。 生の肉だ。 なんならかぶりついてくれてもいいよ。”
”「少し思うところがあって、手を繋ぐことにしました。——兄さん」”
”それは断固たる口調。 お願いではない。命令だった。 これは新鮮だ。ぼくはもう何年も他人に命令されたことなんかない。”
”ぼくの手のひらにはなにもない。 手指にも。 そして手首にも。 家でも時計を着ける習慣は昨日の夜に止めた。今日のぼくの左腕は先端から付け根まで、生まれた時のままの姿だ。 生の肉だ。 なんならかぶりついてくれてもいいよ。”
”「少し思うところがあって、手を繋ぐことにしました。——兄さん」”
手錠のあざ(27)
金曜夜の手錠によるあざ。茉莉は見せつけるかのようにあらわにして夕食会に参加した。
”茉莉の右腕にくっきり残った赤い筋。普通であれば目立たないように長袖を着るか化粧道具で隠すはず。しかし彼女は半袖を着て、一切隠す素振りを見せない。”
”茉莉の右腕にくっきり残った赤い筋。普通であれば目立たないように長袖を着るか化粧道具で隠すはず。しかし彼女は半袖を着て、一切隠す素振りを見せない。”
手錠のような小グロワス(22)
”時計もね、さっきまであんなに好きだったのに、なぜだか色あせてしまった。小(プティ)グロワスもね。さっきまであんなに気に入っていたのに、いまでは世界で一番豪華な手錠のように感じられる。煩わしい。”
手錠をかけた理由(25)
「朝までここに居るために必要」と答える茉莉に、ぼくは嘘を答えた。前話までの独白、部屋からいなくなる、『暗君』プロローグの展開等から考えるに、飛び降りる心算であった可能性は極めて濃厚。
”「何に必要なの、これ。心から疑問なんだけど……」「明日の朝まで、ここに居るために、ですね」「手錠があろうがなかろうがここに居るよ」”
”テンポ良くぼくは即答した。全くの嘘を。でも、それが嘘だと気づかれる心配はない。”
”「それなら問題ありません。手錠があってもなくても」”
”「何に必要なの、これ。心から疑問なんだけど……」「明日の朝まで、ここに居るために、ですね」「手錠があろうがなかろうがここに居るよ」”
”テンポ良くぼくは即答した。全くの嘘を。でも、それが嘘だと気づかれる心配はない。”
”「それなら問題ありません。手錠があってもなくても」”
海に生きるお友達(18)
ブティックへの道すがら、ぼくを囲むようなポジションで歩調を合わせる女性たちに対するぼくの感想。
”ぼくはちょっと無駄な抵抗をした。ほんの少し皆さんと距離をあけて歩こうとね。ほんの少しゆっくり歩いて、皆さんに先を行っていただく。ぼくは先行の女性陣とは無関係な雰囲気を出していく。駄目。不気味なぐらい歩調をシンクロされる。ぼくは意識してゆっくり歩いてるのに、皆さん無意識に(無意識だよね?)合わせてくる。阿吽の呼吸。なんだこれ。銀婚式結婚25周年間近の夫婦かな?”
”動画で見たことないかな。氷河から細切れになった氷の上に、群から取り残されたアザラシが1匹。その周りを大きなシャチが数匹泳いでる。時々波を立て、時折体当たりをして氷を揺らす。かわいいね。アザラシとシャチ、海に生きるお友達同士。皆で遊んでるのかな?”
”ぼくはちょっと無駄な抵抗をした。ほんの少し皆さんと距離をあけて歩こうとね。ほんの少しゆっくり歩いて、皆さんに先を行っていただく。ぼくは先行の女性陣とは無関係な雰囲気を出していく。駄目。不気味なぐらい歩調をシンクロされる。ぼくは意識してゆっくり歩いてるのに、皆さん無意識に(無意識だよね?)合わせてくる。阿吽の呼吸。なんだこれ。銀婚式結婚25周年間近の夫婦かな?”
”動画で見たことないかな。氷河から細切れになった氷の上に、群から取り残されたアザラシが1匹。その周りを大きなシャチが数匹泳いでる。時々波を立て、時折体当たりをして氷を揺らす。かわいいね。アザラシとシャチ、海に生きるお友達同士。皆で遊んでるのかな?”
”お友達”(15)
ブラウネが『この人を見よ』の作者ではないと判断。
”この作品を書いたのは恐らく「お友達」の誰かではなかろうと彼女は確信していた。王の心情に対してこれほどの無理解があろうはずがない。「お友達」であれば。”(15)
”この作品を書いたのは恐らく「お友達」の誰かではなかろうと彼女は確信していた。王の心情に対してこれほどの無理解があろうはずがない。「お友達」であれば。”(15)
「やっぱりなんか違ったの。ごめんね」(42)
ぼくを振った女性の台詞。なお彼女は間を置かずして他の男と付き合い始めた。
”あの体験はぼくに人生の真理を一つ教えてくれた。人は他者そのものを決して見ないという。”
あいつら(25)
”「単純なことだ。おれはグロワス13世じゃない。おまえに理解できるか? 自分が唯一欲しかったもの、唯一創りたかったものは手に入らず、なのに、それに似ているって言われて揶揄われることの意味が分かるか。——確かにおれの独り相撲だ。皆は大人の社交辞令でおれを持てなしてくれたんだな! 分かるよ。だからおれもあそこで喚きはしなかった」「でも、辛かったんですね」「ああ、ああ! 言ってやる。どうせ最後だ。言ってやる。辛かったよ。これでいいか? 辛かった! ——この馬鹿馬鹿しいおもちゃを外せ。もう満足しただろう。帰れ!」”
”それはそれは念が入った仕掛けだ。ここが日本ではなく例のお話の世界で、おれたち皆が登場人物であるかのように振る舞った。錯覚しそうになるほどに。中小企業の無能な3代目が、偉大な小説の主人公——偉大な王であるかのように。”
”それはそれは念が入った仕掛けだ。ここが日本ではなく例のお話の世界で、おれたち皆が登場人物であるかのように振る舞った。錯覚しそうになるほどに。中小企業の無能な3代目が、偉大な小説の主人公——偉大な王であるかのように。”
お友達(2)
ブラウネの競争相手であり友人であった女性たち。みなブラウネより先に世を去った。
”彼の周囲に集った3人のお友達(2)”
”彼の周囲に集った3人のお友達(2)”
お友達(27)
ブラウネによる他の妃の呼称。複雑な感情がこもっている。
””お友達”を、彼女は順に眺めた。 顔かたちに往時の面影は無い。それは自身も同じこと。 だが、明らかにそれは彼女の友達であった。そして競争相手であり、協働相手であり、同じ男を分け合った相手である。つまり家族であった。 サンテネリ王国母后ブラウネの。”
””お友達”を、彼女は順に眺めた。 顔かたちに往時の面影は無い。それは自身も同じこと。 だが、明らかにそれは彼女の友達であった。そして競争相手であり、協働相手であり、同じ男を分け合った相手である。つまり家族であった。 サンテネリ王国母后ブラウネの。”
すでに2度お助けしていますから(22)
ただ一人、ぼく自身のことを見てくれるかと思った茉莉の口から飛び出した言葉。
”「ええ。そうなさってください。すでに2度お助けしていますから。3度目もきっと私が必要になるはずです。——兄さん(陛下)」”
※『暗君』30話「王の委任」に対応。
”すでに二度お助けしていますので、三度目もきっと私が必要になります”
”「ええ。そうなさってください。すでに2度お助けしていますから。3度目もきっと私が必要になるはずです。——兄さん(陛下)」”
※『暗君』30話「王の委任」に対応。
”すでに二度お助けしていますので、三度目もきっと私が必要になります”
まことに立派な女性(15)
”ブラウネ・エン・ルロワはまことに立派な女性である。 個人の意思を捨て、社会が彼女に要請するもの——義務を果たすことを選んだ。 それはつまり、亡き夫グロワス・エネ・エン・ルロワが24の年に為したのと同様の選択であった。”(15)
不倫からの無理心中(25)
手錠をはめられた自身の姿を客観視したぼくの感想。
”つい数分前まで、ぼくは『愛の死』に耳を傾けながらソファーに寝そべっていた。日曜の夕方に。これほどに素晴らしい情景はあるだろうか。望みうる最高の最後だ。それが今や、おもちゃのくせに意外と作りの良さそうな手錠を左手首に嵌められてる。別に良いよ。単体ならそれでも。手錠をぶら下げながら『愛の死』を聴いてやる。 ただね、輪っかのもう片方が妙齢の女性の右腕に繋がってるとなると話は別だ。34の男が28の女と手錠で繋がってるんだ。 もう間違いなく、不倫からの無理心中とかそういうアレじゃないか!完全に痛くない腹を探られるヤツだ。”
”地方の羽振りの良い中小企業(土建系)のぼんくら3代目。34歳独身。もうこの属性だけで犯人は確定。推定無罪の原則? ないよ。”
”つい数分前まで、ぼくは『愛の死』に耳を傾けながらソファーに寝そべっていた。日曜の夕方に。これほどに素晴らしい情景はあるだろうか。望みうる最高の最後だ。それが今や、おもちゃのくせに意外と作りの良さそうな手錠を左手首に嵌められてる。別に良いよ。単体ならそれでも。手錠をぶら下げながら『愛の死』を聴いてやる。 ただね、輪っかのもう片方が妙齢の女性の右腕に繋がってるとなると話は別だ。34の男が28の女と手錠で繋がってるんだ。 もう間違いなく、不倫からの無理心中とかそういうアレじゃないか!完全に痛くない腹を探られるヤツだ。”
”地方の羽振りの良い中小企業(土建系)のぼんくら3代目。34歳独身。もうこの属性だけで犯人は確定。推定無罪の原則? ないよ。”
人間関係(18)
両者が相手に何らかのアクションを行うことで成り立つ。アクションに対して相手からの見返りを期待する。それは幸せな気分であったり、お金であったり。後者であればビジネスとなる。
”人間関係は文字通り「関係」だから、両者が相手に対して何らかのアクションを行うことで成り立つ。
分かりやすい話だよね。どんな行為においても、相手が存在する限り人は見返りを期待している。もちろんそれはお金とか分かりやすいものでなくてもいい。自分を幸せな気分にさせてくれる言葉とかでも問題ない。というか、日常生活ではそっちの方が多いかもしれないね。物理的な何かが求められる場合、それは交流の中でも、よりはっきりとした輪郭を持った行為——ビジネス——になるわけだから。”
”人間関係は文字通り「関係」だから、両者が相手に対して何らかのアクションを行うことで成り立つ。
分かりやすい話だよね。どんな行為においても、相手が存在する限り人は見返りを期待している。もちろんそれはお金とか分かりやすいものでなくてもいい。自分を幸せな気分にさせてくれる言葉とかでも問題ない。というか、日常生活ではそっちの方が多いかもしれないね。物理的な何かが求められる場合、それは交流の中でも、よりはっきりとした輪郭を持った行為——ビジネス——になるわけだから。”
仲間はずれ(22)
ぼくが最も避けたがっていたこと。
外人のべっぴんさん(41)
アメ横の時計屋のオヤジがアナリースを呼んだ。ぼくは国際問題になりかねないとはらはらした。
大きな猫(31)
ぼくがフランス語で話すときのアナリースをたとえていった。大型の猫科の動物。
”日本語を話している時の彼女はなんというか独特のほんわかした雰囲気があるんだ。間とイントネーションなのかな。非母語としては驚くほどに流暢にしゃべるんだけどね。”
” それがね、母語であるフランス語になると空気がガラリと変わる。 高貴な猫がちょっとだけ大きくなるんだ。 しなやかで俊敏で優雅。加えて獰猛に。 不用意に背中を向けると頭から食われるタイプのネコ科の動物。 ライオンの雰囲気が出てくる。 あ、雌の方ね。 雄はあれ、ちょっとだるそうなおじさんっぽさがあるけど、雌はシュッとしてるからね、ライオン。 まぁ、大きな猫と表現できないこともない。”
”日本語を話している時の彼女はなんというか独特のほんわかした雰囲気があるんだ。間とイントネーションなのかな。非母語としては驚くほどに流暢にしゃべるんだけどね。”
” それがね、母語であるフランス語になると空気がガラリと変わる。 高貴な猫がちょっとだけ大きくなるんだ。 しなやかで俊敏で優雅。加えて獰猛に。 不用意に背中を向けると頭から食われるタイプのネコ科の動物。 ライオンの雰囲気が出てくる。 あ、雌の方ね。 雄はあれ、ちょっとだるそうなおじさんっぽさがあるけど、雌はシュッとしてるからね、ライオン。 まぁ、大きな猫と表現できないこともない。”
愛(39)
”人を愛するとはどういうことか、ゾフィがそれを真に知ったのは夫の死後である。”
”不在こそがそれを教えた。愛とは緩やかな、秩序だった、美しい心の交流ではありえない。それは狂乱の妄執であると。対象亡き後の。”
”不在こそがそれを教えた。愛とは緩やかな、秩序だった、美しい心の交流ではありえない。それは狂乱の妄執であると。対象亡き後の。”
昨日の食事、辛かったですか?(25)
嘘ばかり続けるぼくに茉莉が決断的に言う。
”滑らかに回るぼくの口は彼女の突き刺すような視線に縫い付けられた。ほとんど比喩ですらない。それほどに強固な、眼が放つ矢に。”
”「でも兄さん、手が震えていましたね」”
”「私は見間違えません。——これまで何度も見てきましたから」”
”「兄さんは辛かったですか? それとも嬉しかったですか? あのモデルの人がグロワス13世を演じると皆に伝えたとき。彼があの話の原作者だと皆に伝えたとき。——教えてください」”
”滑らかに回るぼくの口は彼女の突き刺すような視線に縫い付けられた。ほとんど比喩ですらない。それほどに強固な、眼が放つ矢に。”
”「でも兄さん、手が震えていましたね」”
”「私は見間違えません。——これまで何度も見てきましたから」”
”「兄さんは辛かったですか? それとも嬉しかったですか? あのモデルの人がグロワス13世を演じると皆に伝えたとき。彼があの話の原作者だと皆に伝えたとき。——教えてください」”
相手を尊重することの裏返し(36)
”思えば彼女が男に関心を持つようになったのはこの姿勢ゆえかもしれない。 彼は自身のために為された行為に敏感であった。どれほど些細なことであっても、真心を感じさせる感謝の言葉を彼女に告げた。”
”書類の中の重要な部分に付箋を貼って渡したとき、彼はその一手間に必ず謝意を示した。青佳からすれば文章を見やすくするためのちょっとした工夫に過ぎない。だが、誰のための工夫であるかを男はしっかりと理解していた。”
”相手を見て尊重しようと望むことは、相手からそう扱われたいと願うことの裏返しでもある。彼は心の中に確かにその願いを秘めている。 だが、立場は彼にそれを許さない。”
”王は敬われ畏れられる。そして利用される。だが決して尊重されない。望むことすら許されない。王であるがゆえに。”
”書類の中の重要な部分に付箋を貼って渡したとき、彼はその一手間に必ず謝意を示した。青佳からすれば文章を見やすくするためのちょっとした工夫に過ぎない。だが、誰のための工夫であるかを男はしっかりと理解していた。”
”相手を見て尊重しようと望むことは、相手からそう扱われたいと願うことの裏返しでもある。彼は心の中に確かにその願いを秘めている。 だが、立場は彼にそれを許さない。”
”王は敬われ畏れられる。そして利用される。だが決して尊重されない。望むことすら許されない。王であるがゆえに。”
興味を持つということ(22)
人にレッテルを張ることでしか人は他者を把握できないが、せめて相手の実体の近似値を探ることがその人に興味を持つということではないか。
”人は結局そのようにしてしか他者を把握できないんだから。ぼくだって同じことをしている。この人は「こういう人だろう」と勝手に決めつけて交流しているからね。だから責めはしないよ。当然のことだ。 ただね、それにしても程度ってものがある。”
”あの人達は誰もぼくの「実体」を望んでくれなかった。決して触れることが出来ない「ぼくそのもの」。理論的に不可能なそれを、理論的に不可能であるがゆえに望まないのは合理的だ。無駄がなくていい。でも「実体」の似姿くらいは探ってほしかった。「この人はたぶんこんな感じの人だろう」って近似値を探ってほしかったし考えてほしかった。それがつまり興味を持つということだ。”
”人は結局そのようにしてしか他者を把握できないんだから。ぼくだって同じことをしている。この人は「こういう人だろう」と勝手に決めつけて交流しているからね。だから責めはしないよ。当然のことだ。 ただね、それにしても程度ってものがある。”
”あの人達は誰もぼくの「実体」を望んでくれなかった。決して触れることが出来ない「ぼくそのもの」。理論的に不可能なそれを、理論的に不可能であるがゆえに望まないのは合理的だ。無駄がなくていい。でも「実体」の似姿くらいは探ってほしかった。「この人はたぶんこんな感じの人だろう」って近似値を探ってほしかったし考えてほしかった。それがつまり興味を持つということだ。”
近距離(25)
” 茉莉さんがじっとぼくの瞳を見つめる。ここまで接近されるのはちょっと記憶にない。ほとんど触れそうなほどに、ぼくたちの眼は近くにある。”
”そう。ぼくたちは子どもじゃない。若者とすら言いづらい年齢に差し掛かりつつある。ぼくは当然として茉莉さんだって。にもかかわらず、彼女はぼくと一緒にソファにはまり込んで、ほとんど触れんばかりの距離でぼくを見ている。息づかいすら聞こえるほど近くに。”
”兄さんは自分で思っているよりだいぶ分かりやすいですよ。”
”そうですか。別にどうでもいいです。そんなこと”
”彼女の右手の爪がぼくの左手甲を軽く引っ掻いた。器用なことをするな……。”
”そう。ぼくたちは子どもじゃない。若者とすら言いづらい年齢に差し掛かりつつある。ぼくは当然として茉莉さんだって。にもかかわらず、彼女はぼくと一緒にソファにはまり込んで、ほとんど触れんばかりの距離でぼくを見ている。息づかいすら聞こえるほど近くに。”
”兄さんは自分で思っているよりだいぶ分かりやすいですよ。”
”そうですか。別にどうでもいいです。そんなこと”
”彼女の右手の爪がぼくの左手甲を軽く引っ掻いた。器用なことをするな……。”
関係と出来事/家事・生活・健康
| 項目 | 話数 |
|---|---|
| ぼくは整理が苦手(24) | 24 |
| 以前の家事代行サービス(35) | 35 |
| 家事代行(5) | 5 |
| 家事代行サービス(35) | 35 |
| デジタル民生委員(37) | 37 |
| 孤独死見守りサービス(35) | 35 |
| 身体に生じた異変(23) | 23 |
| アルコール中毒(25) | 25 |
| アルコール中毒(34) | 34 |
| コンビニ製人間(35) | 35 |
| テレビ(37) | 37 |
| 刃物(31) | 31 |
| 携帯電話(24) | 24 |
| 社長の家の鍵(36) | 36 |
ぼくは整理が苦手(24)
昔から苦手だった部屋の片づけに精を出すぼく。家事代行に部屋の清掃を依頼するのと並行して、断捨離にて部屋の私物をどんどん廃棄。仕事関係の書籍を筆頭に、趣味の書籍も少しずつ手放した結果、私物はほぼなくなってしまった。
”昔から片付けが苦手でね。服は脱ぎ捨てたまま、本は読みさしを放り出して、弁当の空き箱やペットボトルもシンクに積上げていた。”
”このやっかいな状況を、ぼくは二つの手段で解決することにした。
1つ目はお金を使うこと。
つまり家事を代行するサービスを契約すること。結果水回りは綺麗になったし、リビングに放り出したままの洗濯物もちゃんとタンスにしまわれるようになった。 結果、この家を買う前に見せられたモデルルームみたいな美しさになったんだ。いいことだよ。”
” 2つ目はぼく自身を変革することだ。
今は本当に便利だよね。ネットで「片付け 苦手」とか検索すると細かいライフハックがいっぱい出てくる。その中で気に入ったメソッドの一つは「嫌なことは1回、最小限やればいい」というもの。たとえばゴミを一つでも二つでも捨てたらその日のタスクは終了。翌日もそれだけやればいい。
塵も積もれば山となる。いつしか部屋は綺麗になる。ことわざとは逆に、塵がつもらなくなったんだ。”
”仕事に関わる本は簡単だ。全部捨てれば良い。技術本も自己啓発本も財務系の本も全部。このあたりはサクサク進んだ。我が家にはそういう類いの本はもう一冊も残ってない。”
”家事サービスの場合、ゴミであることが明らかなものは処分してくれるけど、判断できないものには手を付けてくれない。よって「判断できないもの」は自分で捨てていく必要がある。 ぼくにとってそれは音楽のCDであったり本であったり衣類であったり、そういう類いのもの。”
”この種のものには本当に怖い罠が潜んでいる。整理しなければならないはずなのに、ついつい聴き入ってしまうし、ついつい読み込んでしまう。 ぼくも見事にやられた。”
”問題は歴史書とか哲学書、思想書、小説あたりなんだよね。 この家に越してくるときに一度整理したんだけど、あれから何年か経ってまた増殖してしまった。もう一度買い直した本も少なくない。”
”でも、この難敵共をやっつけなければならない。そんなわけで、毎回「今日は1冊か2冊やっつけよう」と決意して、罠にはまって読み出して、ゆっくり時間をかけて減らしてきた。”
”だからもうほんの少ししか残ってないよ。CDも本も。
最近買った『この人を見よ』の小説とマンガ、それに、昔からお気に入りの哲学書が数冊。”
”あとね、本当に恥ずかしいんだけど、ぼくの人生最初で最後の著作もまだあるよ。 タイトルは『リチャードと羊』っていうんだ。”
”さて、まぁこれくらいは良いだろう。”
”残ったのは箱買いしたアルパカの瓶くらい。これは業者さんが綺麗にしてくれる。
時計もちゃんと箱と一緒にまとめておいたよ。売りに出すならどこに持っていくと良いか、売値の相場も込みでメモを書いておいた。例の「小プティグロワス」だけは手抜かり無く持ち主に返すように書き残しておいた。 それ以外の諸々はね、ざっくりとした処分法を簡易的にまとめてある。弁護士さんとはちょっと前から話していたから。立場上の義務として。”
”昔から片付けが苦手でね。服は脱ぎ捨てたまま、本は読みさしを放り出して、弁当の空き箱やペットボトルもシンクに積上げていた。”
”このやっかいな状況を、ぼくは二つの手段で解決することにした。
1つ目はお金を使うこと。
つまり家事を代行するサービスを契約すること。結果水回りは綺麗になったし、リビングに放り出したままの洗濯物もちゃんとタンスにしまわれるようになった。 結果、この家を買う前に見せられたモデルルームみたいな美しさになったんだ。いいことだよ。”
” 2つ目はぼく自身を変革することだ。
今は本当に便利だよね。ネットで「片付け 苦手」とか検索すると細かいライフハックがいっぱい出てくる。その中で気に入ったメソッドの一つは「嫌なことは1回、最小限やればいい」というもの。たとえばゴミを一つでも二つでも捨てたらその日のタスクは終了。翌日もそれだけやればいい。
塵も積もれば山となる。いつしか部屋は綺麗になる。ことわざとは逆に、塵がつもらなくなったんだ。”
”仕事に関わる本は簡単だ。全部捨てれば良い。技術本も自己啓発本も財務系の本も全部。このあたりはサクサク進んだ。我が家にはそういう類いの本はもう一冊も残ってない。”
”家事サービスの場合、ゴミであることが明らかなものは処分してくれるけど、判断できないものには手を付けてくれない。よって「判断できないもの」は自分で捨てていく必要がある。 ぼくにとってそれは音楽のCDであったり本であったり衣類であったり、そういう類いのもの。”
”この種のものには本当に怖い罠が潜んでいる。整理しなければならないはずなのに、ついつい聴き入ってしまうし、ついつい読み込んでしまう。 ぼくも見事にやられた。”
”問題は歴史書とか哲学書、思想書、小説あたりなんだよね。 この家に越してくるときに一度整理したんだけど、あれから何年か経ってまた増殖してしまった。もう一度買い直した本も少なくない。”
”でも、この難敵共をやっつけなければならない。そんなわけで、毎回「今日は1冊か2冊やっつけよう」と決意して、罠にはまって読み出して、ゆっくり時間をかけて減らしてきた。”
”だからもうほんの少ししか残ってないよ。CDも本も。
最近買った『この人を見よ』の小説とマンガ、それに、昔からお気に入りの哲学書が数冊。”
”あとね、本当に恥ずかしいんだけど、ぼくの人生最初で最後の著作もまだあるよ。 タイトルは『リチャードと羊』っていうんだ。”
”さて、まぁこれくらいは良いだろう。”
”残ったのは箱買いしたアルパカの瓶くらい。これは業者さんが綺麗にしてくれる。
時計もちゃんと箱と一緒にまとめておいたよ。売りに出すならどこに持っていくと良いか、売値の相場も込みでメモを書いておいた。例の「小プティグロワス」だけは手抜かり無く持ち主に返すように書き残しておいた。 それ以外の諸々はね、ざっくりとした処分法を簡易的にまとめてある。弁護士さんとはちょっと前から話していたから。立場上の義務として。”
以前の家事代行サービス(35)
1年間継続。50代くらいの真面目そうな女性。プロフェッショナル感があった。留守中に来訪。
”ぼくの家を担当してくれた職員さんとお会いしたのは最初の一回くらいかな。50代くらいの、いかにも真面目そうな女性だった。主婦のパートというよりプロフェッショナル感があったね。仕事人、みたいな。”
”ぼくの家を担当してくれた職員さんとお会いしたのは最初の一回くらいかな。50代くらいの、いかにも真面目そうな女性だった。主婦のパートというよりプロフェッショナル感があったね。仕事人、みたいな。”
家事代行(5)
部屋を片付けようとしたぼくが契約した。隅から隅まで掃除してくれるし、ご飯も作ってくれるすごいサービス。
家事代行サービス(35)
解約した。結果、食生活が破綻した。
”当時はちょっと長旅に出ようと計画していたので。色々と整理しておかなければならなかった。月額課金のやつは特に。ああいうの、携帯も含めてだけど、契約者本人がいないと解約が面倒な場合が多いから。さすがに携帯は最後まで必要になるので切れない。必要でないものは大体切った。 それが色々あって出発をちょっと延期した。結果、困ってる。
” ご飯を用意してくれる家事代行サービスはもはやない。 コンビニに行くのはだるい。 赤い液体は頼りになるけど、そろそろ本格的に危険な感じがある。”
”当時はちょっと長旅に出ようと計画していたので。色々と整理しておかなければならなかった。月額課金のやつは特に。ああいうの、携帯も含めてだけど、契約者本人がいないと解約が面倒な場合が多いから。さすがに携帯は最後まで必要になるので切れない。必要でないものは大体切った。 それが色々あって出発をちょっと延期した。結果、困ってる。
” ご飯を用意してくれる家事代行サービスはもはやない。 コンビニに行くのはだるい。 赤い液体は頼りになるけど、そろそろ本格的に危険な感じがある。”
デジタル民生委員(37)
孤独死防止サービスの別名。ぼくがおかしな「病気」をおこさないように監視するサービス。メンバーは「解釈違い」で『この人を見よ』原作者とバトルした過去がある。
”皆さんがボランティアでやってくださってる「孤独死防止サービス」——彼女達はいわゆるデジタル民生委員みたいなもの”
”デジタル民生委員の皆さん、「解釈違い」で原作者とバトルするレベルの熱狂的なファン”
”皆さんがボランティアでやってくださってる「孤独死防止サービス」——彼女達はいわゆるデジタル民生委員みたいなもの”
”デジタル民生委員の皆さん、「解釈違い」で原作者とバトルするレベルの熱狂的なファン”
孤独死見守りサービス(35)
青佳はかわいいという不都合な真実に押し負けたぼくは、青佳によるぼく在宅中の家事代行サービスを受け入れる。容姿に優れると就職に有利。
”青佳さんはぼくの答え——論理的に明白に強いられた——を聞いて満足げに頷く。ちょっと誇らしげに。その様が可愛いのがまた良くない。 冒頭言ったのを覚えているかな。不都合な真実というやつ。 採用側として、ぼくはこの不都合な真実に屈した。”
”青佳さんはぼくの答え——論理的に明白に強いられた——を聞いて満足げに頷く。ちょっと誇らしげに。その様が可愛いのがまた良くない。 冒頭言ったのを覚えているかな。不都合な真実というやつ。 採用側として、ぼくはこの不都合な真実に屈した。”
身体に生じた異変(23)
身体に対する異変と同じく、精神に生じた異変もまた、日常生活を困難なものとする。
”身体に生じた異変は日常生活をいささか困難なものにする。足の骨を折れば、普段何気なく登る短い階段さえ一つの試練と化す。腕の筋を痛めれば、平静難なく持つ茶碗すら耐えがたい鉛の球に成り代わる。 身体と同様、精神に生じるものもまた同様の問題を引き起こすだろう。”
”身体に生じた異変は日常生活をいささか困難なものにする。足の骨を折れば、普段何気なく登る短い階段さえ一つの試練と化す。腕の筋を痛めれば、平静難なく持つ茶碗すら耐えがたい鉛の球に成り代わる。 身体と同様、精神に生じるものもまた同様の問題を引き起こすだろう。”
アルコール中毒(25)
社長、だいぶ体調の程度が悪くなっている。
”最近稀にだけど腕に震えが出ることがある。それを気づかせてくれたのは愛しのアルパカ氏だ。最初はグラスに入れて飲んでたんだけど、手が妙にぶるぶる震えて零してしまった。”
”解決策は簡単だった。瓶から直接飲めばいい。”
”まぁ端的に言えばアルコール中毒なのかな。本当のところはよく分からないけど、イメージ的にそんな雰囲気がある。お酒が切れて手が震えるとかマンガでよく見るから。”
”最近稀にだけど腕に震えが出ることがある。それを気づかせてくれたのは愛しのアルパカ氏だ。最初はグラスに入れて飲んでたんだけど、手が妙にぶるぶる震えて零してしまった。”
”解決策は簡単だった。瓶から直接飲めばいい。”
”まぁ端的に言えばアルコール中毒なのかな。本当のところはよく分からないけど、イメージ的にそんな雰囲気がある。お酒が切れて手が震えるとかマンガでよく見るから。”
アルコール中毒(34)
手が震えて酒が止められない。診断が必要では。
”さて、ぼくは食事をしなければならない。 南米原産のもふもふした生き物の血をすするという、極めて健康的な。”
” 朝1匹分吸ったので、夜も1匹。 これをやっていく必要がある。 お恥ずかしながら、最近ちょっとだけ手が震えるんだ。それを収めるためにも是非血を飲まねばならない。つまり薬だね。”
”さて、ぼくは食事をしなければならない。 南米原産のもふもふした生き物の血をすするという、極めて健康的な。”
” 朝1匹分吸ったので、夜も1匹。 これをやっていく必要がある。 お恥ずかしながら、最近ちょっとだけ手が震えるんだ。それを収めるためにも是非血を飲まねばならない。つまり薬だね。”
コンビニ製人間(35)
徒歩一分のコンビニで三食購入。お酒のつまみとアルパカ。本人はグルメで充実した食事であり、自分はこれが好きなんだと主張。お店にアルパカの在庫が増えたことを自分の購入によるものとして、ぼくは誇らしく思っている。以前部下に話したところ、「見えなーい」「意外ー」との反応を受けた。さすがにやりすぎで栄養失調なのか、コンビニに行くのもおっくうになり、最近アルパカのみから栄養補給している。
”ぼくの食生活は結構充実している。 我が家は駅前にあるのでコンビニも徒歩1分。素晴らしい立地だ。ゆえにぼくの肉体の細胞は全てそのコンビニによって形成されているといっても過言ではない。もはやぼくはコンビニ製人間だ。”
” 買うものは大体決まってる。 唐揚げ棒っていう、唐揚げを3つか4つ串刺しにしたおつまみみたいなヤツ。それと和風竜田揚げ弁当、あるいはカルボナーラ。 ぼくはちょっとしたグルメなので、時々カレーを買ったり、おにぎり三種を大人買いして食べ比べとかもする。 最後にいつものアルパカ。 一ヶ月ずっとこれ。”
”そのコンビニ、アルパカの在庫が最近妙に増えた。全然買われない不人気商品で、ぼくが買い出す前は瓶に埃が積もってたのに、最近ピカピカのやつがビシッと並んでるからね。ぼくは個人で1商店の仕入れを左右した。誇らしいね。”
”昔、部下の皆さんと仲良くなろうと、こういうしょうもないネタを話したことがあるんだ。そのときは「見えなーい」「意外ー」とか笑ってくれてた皆さん。”
”ぼくはコンビニご飯が好きなんだ。何かのポーズで食べてるわけじゃない。前職の時はそれがごく普通の日常だった。時々同僚とラーメン食べに行ったりしたけど、基本コンビニ。自炊? そんな時間はない。”
”明らかによろしくない食生活を送る中年男。孤独死カウントダウンと見られてる。”
”ぼくの食生活は結構充実している。 我が家は駅前にあるのでコンビニも徒歩1分。素晴らしい立地だ。ゆえにぼくの肉体の細胞は全てそのコンビニによって形成されているといっても過言ではない。もはやぼくはコンビニ製人間だ。”
” 買うものは大体決まってる。 唐揚げ棒っていう、唐揚げを3つか4つ串刺しにしたおつまみみたいなヤツ。それと和風竜田揚げ弁当、あるいはカルボナーラ。 ぼくはちょっとしたグルメなので、時々カレーを買ったり、おにぎり三種を大人買いして食べ比べとかもする。 最後にいつものアルパカ。 一ヶ月ずっとこれ。”
”そのコンビニ、アルパカの在庫が最近妙に増えた。全然買われない不人気商品で、ぼくが買い出す前は瓶に埃が積もってたのに、最近ピカピカのやつがビシッと並んでるからね。ぼくは個人で1商店の仕入れを左右した。誇らしいね。”
”昔、部下の皆さんと仲良くなろうと、こういうしょうもないネタを話したことがあるんだ。そのときは「見えなーい」「意外ー」とか笑ってくれてた皆さん。”
”ぼくはコンビニご飯が好きなんだ。何かのポーズで食べてるわけじゃない。前職の時はそれがごく普通の日常だった。時々同僚とラーメン食べに行ったりしたけど、基本コンビニ。自炊? そんな時間はない。”
”明らかによろしくない食生活を送る中年男。孤独死カウントダウンと見られてる。”
テレビ(37)
以前は忙しくほとんど見なかったぼくだが、私物をほとんど処分してしまい、残った哲学書を読むのもしんどいため視聴。『この人を見よ』のCMを目にする。
”本もほとんど処分してしまった。読むものもない。残った哲学書の類いも実は過去の思い出から手放せないだけだ。今のぼくにはもう、複雑な論理を追うことが難しくなってしまった”
”で、最近テレビを見るようになった。”
”本もほとんど処分してしまった。読むものもない。残った哲学書の類いも実は過去の思い出から手放せないだけだ。今のぼくにはもう、複雑な論理を追うことが難しくなってしまった”
”で、最近テレビを見るようになった。”
刃物(31)
不思議な魅力がある、何かを切るための道具。包丁は食事を作るためのごく日常的な道具だが、そのラベルを外すと不気味な何かに変わる。
”これは食事を作るための純然たる器具だ。そうであるように決まっているから。ぼくたちの世界においては。これはそのために作られた道具だと。 でも、一旦そのラベルを剥がしてみると、親しげな様態は不気味な何かに一瞬で転化する。これは日用品であると同時に非日用品でもありうる。致命的な程度に。 ぼくたちを生かすための道具はぼくたちを殺しうる。”
” 火もそうだし縄もそうだ。ぼくたちの身の回りの物は、大体ぼくたちが生きるためにも使えるし、死ぬためにも使える。ただ、刃物はそれが本当に分かりやすい形をしているからね。ついつい惹きつけられてしまう。”
”これは食事を作るための純然たる器具だ。そうであるように決まっているから。ぼくたちの世界においては。これはそのために作られた道具だと。 でも、一旦そのラベルを剥がしてみると、親しげな様態は不気味な何かに一瞬で転化する。これは日用品であると同時に非日用品でもありうる。致命的な程度に。 ぼくたちを生かすための道具はぼくたちを殺しうる。”
” 火もそうだし縄もそうだ。ぼくたちの身の回りの物は、大体ぼくたちが生きるためにも使えるし、死ぬためにも使える。ただ、刃物はそれが本当に分かりやすい形をしているからね。ついつい惹きつけられてしまう。”
携帯電話(24)
電話にでないといけないという強迫観念から、武士の刀に例えるほどぼくは使用を苦手としている気配。ぼくの私用電話はほとんど使用されない。加賀の叔父さんからは別。
”いつでもかけられて、いつでも出られる。この自由さがコミュニケーションを活発にするかと思いきや、実際は逆に振れた。”
”携帯は携帯していなければならないし、携帯していてしかるべきものである。 よって原理的にかけた電話は必ず繋がるはずなんだ。 常に手に持っているんだから。 そうなると今度は電話をしなくなる。”
”そうなると今度は電話をしなくなる。したら最後、相手は出ざるをえない。親密な間柄あるいはビジネス上の付き合いであればなおさら。 要するに武士の刀みたいな扱いだろうか。抜いた以上は斬らねばならない。”
”ぼくたち日本人は奥ゆかしいからね。そういう「出なきゃいけない」の負担を相手に与えたくない。”
”いつでもかけられて、いつでも出られる。この自由さがコミュニケーションを活発にするかと思いきや、実際は逆に振れた。”
”携帯は携帯していなければならないし、携帯していてしかるべきものである。 よって原理的にかけた電話は必ず繋がるはずなんだ。 常に手に持っているんだから。 そうなると今度は電話をしなくなる。”
”そうなると今度は電話をしなくなる。したら最後、相手は出ざるをえない。親密な間柄あるいはビジネス上の付き合いであればなおさら。 要するに武士の刀みたいな扱いだろうか。抜いた以上は斬らねばならない。”
”ぼくたち日本人は奥ゆかしいからね。そういう「出なきゃいけない」の負担を相手に与えたくない。”
社長の家の鍵(36)
在宅の時も来るし、不在の時も来る宣言。
”「鍵を預けていただかないと」
「鍵? なぜ」
「家事代行サービスでは鍵を預けるんですよね」
「ああ、うん。でもあれは前にも話したとおり、不在の時の……」
「不在の時もあるかもしれませんね?」
「あるの?」
「あります」”
”「鍵を預けていただかないと」
「鍵? なぜ」
「家事代行サービスでは鍵を預けるんですよね」
「ああ、うん。でもあれは前にも話したとおり、不在の時の……」
「不在の時もあるかもしれませんね?」
「あるの?」
「あります」”
関係と出来事/集まり・会話・出来事
| 項目 | 話数 |
|---|---|
| 21時(26) | 26 |
| 「やってやりました!」(25) | 25 |
| 「居おるかー!」(25) | 25 |
| 「日はまた昇る2」時点での午後5時(14) | 14 |
| いつもお一人でいらっしゃるのに!(18) | 18 |
| 天井の風景の崩壊(22) | 22 |
| 対峙(34) | 34 |
| 最も原始的で最も根源的な魔法(35) | 35 |
| 朝 9:30 (25) | 25 |
| 給仕の気持ち(21) | 21 |
| 隣のテーブルに座る男女(3) | 3 |
21時(26)
”シャワーを浴びて少し寝た。 目を覚ましたら21時だ。 この絶妙な時間。”
”ぼくはキッチンの端に放置した宝箱から伝説の剣を取り出す。アルパカくんだ。”
”リビングのガラス戸を開け放ち、ベランダに歩み出る。 そして瓶から赤い液体を流し込む。”
”夏の夜はぼくを急激に冷やす。”
”外気はぼくの身体を包み、眼前には星が敷き詰められている。まさに無数の。 地表には人の明かり。天頂には星の明かり。”
” ぼくは手すりに歩み寄り、世界を見た。 まさに地は人の明かり。空は星の明かり。”
”さて。ではこれからどうしようか。 アルパカの瓶を抱え、ベランダの柵に上半身を預けながら考える。”
”鼻の奥からせり上がる熱い何かに押し出されて、ぼくの瞳は水を流す。透明な水を。口からは赤い水を取り込み、目からは透明な水を排出している。”
” ——凡庸であること。それこそが素晴らしい。
この言葉だけが、ぼくの脳内に鳴り響いている。
——恥ずかしがらなくていい。堂々とやれ。
そうだね。”
”ぼくはキッチンの端に放置した宝箱から伝説の剣を取り出す。アルパカくんだ。”
”リビングのガラス戸を開け放ち、ベランダに歩み出る。 そして瓶から赤い液体を流し込む。”
”夏の夜はぼくを急激に冷やす。”
”外気はぼくの身体を包み、眼前には星が敷き詰められている。まさに無数の。 地表には人の明かり。天頂には星の明かり。”
” ぼくは手すりに歩み寄り、世界を見た。 まさに地は人の明かり。空は星の明かり。”
”さて。ではこれからどうしようか。 アルパカの瓶を抱え、ベランダの柵に上半身を預けながら考える。”
”鼻の奥からせり上がる熱い何かに押し出されて、ぼくの瞳は水を流す。透明な水を。口からは赤い水を取り込み、目からは透明な水を排出している。”
” ——凡庸であること。それこそが素晴らしい。
この言葉だけが、ぼくの脳内に鳴り響いている。
——恥ずかしがらなくていい。堂々とやれ。
そうだね。”
「やってやりました!」(25)
加賀の叔父を呼んだことを自慢げに語る茉莉。
”このいちいち得意げな顔は何なんだろうね。”
”ベッドのシーツを綺麗にぴんと張って掛け布団もいい感じでセットして、さぁ安眠を貪ろうとしたところに、猫か犬か分からないけど、とにかく小動物がやってきて全てをぐちゃぐちゃにして居座っている。そんな状況に近い。 ふざけたことに、ベッドを好き放題荒らしたくせに当の犬は(猫でもいいよ)妙に誇らしげなんだ。「やってやりましたよ!」みたいな。”
”このいちいち得意げな顔は何なんだろうね。”
”ベッドのシーツを綺麗にぴんと張って掛け布団もいい感じでセットして、さぁ安眠を貪ろうとしたところに、猫か犬か分からないけど、とにかく小動物がやってきて全てをぐちゃぐちゃにして居座っている。そんな状況に近い。 ふざけたことに、ベッドを好き放題荒らしたくせに当の犬は(猫でもいいよ)妙に誇らしげなんだ。「やってやりましたよ!」みたいな。”
「居おるかー!」(25)
ぼくにゴルフをさせるために茉莉が呼んだ加賀の叔父さん来訪時の声。
”「わたしが呼んでおきました。加賀のおじさんと楽しんできてください」「何を?」「ゴルフ」「……ゴルフ?」「はい。大人の男性のたしなみです」”
”「わたしが呼んでおきました。加賀のおじさんと楽しんできてください」「何を?」「ゴルフ」「……ゴルフ?」「はい。大人の男性のたしなみです」”
「日はまた昇る2」時点での午後5時(14)
加賀の叔父さんや茉莉が散らかした部屋を整理。広告代理店にいたころのぼくはもっとちゃんとしていたと思い起こすぼくは、アイデンティティクライシスの思いをはせる。
”夕方の5時になってもまだ外は明るい。一年で最も昼が長い時期だから当然だ。”(14)
”夕方の5時になってもまだ外は明るい。一年で最も昼が長い時期だから当然だ。”(14)
いつもお一人でいらっしゃるのに!(18)
ぼく行きつけブティック店長の台詞。
” ようするに、法的な拘束力を持つ関係性のお相手以外の方と自由恋愛をされていて、かつ、その自由恋愛中の女性とここに来る人もいる。その人は当然、法的な拘束力を持つお相手と訪れることもある。分かるね。
あとは、擬似的な自由恋愛をお仕事にされてる女性もよく来るみたいだよ。
こわいね。”
” ようするに、法的な拘束力を持つ関係性のお相手以外の方と自由恋愛をされていて、かつ、その自由恋愛中の女性とここに来る人もいる。その人は当然、法的な拘束力を持つお相手と訪れることもある。分かるね。
あとは、擬似的な自由恋愛をお仕事にされてる女性もよく来るみたいだよ。
こわいね。”
天井の風景の崩壊(22)
知子の暴言を皮切りに、平穏な会食に突如嵐が吹き荒れる。
”ぼくは黙るしかない。ぼくの目の前で突然崩れてしまった。天上の風景が。ぼくは観客席から舞台上の滅びの場を見つめる客に過ぎない。”
”ぼくは黙るしかない。ぼくの目の前で突然崩れてしまった。天上の風景が。ぼくは観客席から舞台上の滅びの場を見つめる客に過ぎない。”
対峙(34)
由理の反応に対して大人として振る舞い、自作を撤回しようかと一瞬考えたぼくだが、腹を据えた。
” ワインを半分も空けたのに、妙に頭が冴えてくる。 ぼくは久しぶりに、本当に久しぶりに、意思を剥き出しにしようとしている。”
”なんか面白い状況になっているな。『この人を見よ』の献辞捧呈式の場面みたいだ。”
”二人の私的な関係がどうあれ、周囲——場を埋める旧体制の象徴たる貴顕諸氏と、彼らを起点とする世論——は2人の立場を明白にこう認識する。 王と学生。力ある者と力なき者。”
”日本のネット上で、大ヒット作家ユリスさんと1アマチュア創作者のぼくもまた、立場を脱ぎ捨てていいだろう。先輩と後輩の立場も離れていい。 個人として対しよう。”
” ぼくはぼくの子どもを守る。 殺させはしない。二度と。”
” ワインを半分も空けたのに、妙に頭が冴えてくる。 ぼくは久しぶりに、本当に久しぶりに、意思を剥き出しにしようとしている。”
”なんか面白い状況になっているな。『この人を見よ』の献辞捧呈式の場面みたいだ。”
”二人の私的な関係がどうあれ、周囲——場を埋める旧体制の象徴たる貴顕諸氏と、彼らを起点とする世論——は2人の立場を明白にこう認識する。 王と学生。力ある者と力なき者。”
”日本のネット上で、大ヒット作家ユリスさんと1アマチュア創作者のぼくもまた、立場を脱ぎ捨てていいだろう。先輩と後輩の立場も離れていい。 個人として対しよう。”
” ぼくはぼくの子どもを守る。 殺させはしない。二度と。”
最も原始的で最も根源的な魔法(35)
料理と言えばご飯を炊くくらいしか知らないぼくにとって、家庭の手料理はまるで魔法。
”ぼくは眼下の料理——ここ何年も見たことがなかった家庭の——を眺めながら独語した。呟かざるをえない。 作るのが難しいものではないんだろう。家庭料理だし。でも、料理といったらご飯を炊くことくらいしかできないぼくからすれば魔法に近い行いだ。 最も原始的であるがゆえに最も根源的な魔法。 かつてアフリカの野原で始まり、今日本のマンションのキッチンで展開された奇跡といえるだろう。”
”ぼくたちがお店で得るのは「商品を購入する」体験だ。魔法はその商品を製造する過程で使用されるものであって、客が目にすることは出来ない。”
”でも、今、ぼくの目の前でそれは展開された。”
”「そんなことありません。作るのは簡単です。実は難しかったのは量なんですよ。男の人がどのくらい食べるのか、よく分かりませんから。——多ければ遠慮なく残してくださいね、社長」”
”「とても優しい、暖かい味がするな。青佳さん」”
”ぼくは眼下の料理——ここ何年も見たことがなかった家庭の——を眺めながら独語した。呟かざるをえない。 作るのが難しいものではないんだろう。家庭料理だし。でも、料理といったらご飯を炊くことくらいしかできないぼくからすれば魔法に近い行いだ。 最も原始的であるがゆえに最も根源的な魔法。 かつてアフリカの野原で始まり、今日本のマンションのキッチンで展開された奇跡といえるだろう。”
”ぼくたちがお店で得るのは「商品を購入する」体験だ。魔法はその商品を製造する過程で使用されるものであって、客が目にすることは出来ない。”
”でも、今、ぼくの目の前でそれは展開された。”
”「そんなことありません。作るのは簡単です。実は難しかったのは量なんですよ。男の人がどのくらい食べるのか、よく分かりませんから。——多ければ遠慮なく残してくださいね、社長」”
”「とても優しい、暖かい味がするな。青佳さん」”
朝 9:30 (25)
” 朝、ぼくはまどろみを抜け出す。 規則的な、小さな寝息が耳に届く。 ぼくは茉莉さんに抱き込まれた腕の暖かさを感じた。”
” 熱。 この部屋に残されたものはそれだけだった。”
” 9時30分。 ぼくはまだ生きてる。”
”軽くふらつきながら彼女は洗面所の方に歩き出す。 叔父さん来るからね。あんまり寝乱れた顔を見せたくないよね。 それにしても、あれだけ好き放題やってなお美人って凄いな。人体の神秘を感じる。”
” 熱。 この部屋に残されたものはそれだけだった。”
” 9時30分。 ぼくはまだ生きてる。”
”軽くふらつきながら彼女は洗面所の方に歩き出す。 叔父さん来るからね。あんまり寝乱れた顔を見せたくないよね。 それにしても、あれだけ好き放題やってなお美人って凄いな。人体の神秘を感じる。”
給仕の気持ち(21)
コースを楽しむ面々を見ながらぼくが感じた幸福。自分と世界が異なる人々を眺める感覚。
”なんと表現すればいいんだろう。とても綺麗な、理想的な姿だ。 何百年も前、まだ王様や貴族が現役だった頃、給仕をしていた人たちはこんな気持ちを抱いたのかもしれない。そこに取って代わろう、割って入ろうなんて気は起こらなかったはずだ。 良い悪いではなく上下でもなく、ただ「世界が異なる」んだ。”
”シルエットしか描かれない従僕に感情移入しているのは、何百万の読者の中ではたぶんぼくだけだろう。”
”なんと表現すればいいんだろう。とても綺麗な、理想的な姿だ。 何百年も前、まだ王様や貴族が現役だった頃、給仕をしていた人たちはこんな気持ちを抱いたのかもしれない。そこに取って代わろう、割って入ろうなんて気は起こらなかったはずだ。 良い悪いではなく上下でもなく、ただ「世界が異なる」んだ。”
”シルエットしか描かれない従僕に感情移入しているのは、何百万の読者の中ではたぶんぼくだけだろう。”
隣のテーブルに座る男女(3)
見合い後、ホテルロビーに流れていたぼくと青佳の隣の席に座った男女。”男性の方は恰幅のいい初老。年に似合わぬ若々しい格好をしている。60代で半ズボンって凄いな。Tシャツの胸元には某ブランドの巨大ロゴ。そして左腕には金無垢のデイデイト。女性の方はあれだね。女子大生っぽい。だけどバッグだけ超高そう。”
作品と創作/『この人を見よ』・関連メディア
『この人を見よ』へのブラウネの感想(15)
”『この人を見よ』の存在は福音である。自身の体験——サンテネリを生きた女が日本に存在するという——が唯一の事例ではないことの証明として。それはつまり、夫が日本に存在することの強力な傍証でもある。目の前に座る男が。”(15)
”一方で話の内容は陳腐極まる。評価できるのは2点だけだ。主人公グロワス13世の外面的な偉大さについてはとてもよく書けている。そして自身の似姿たるブラウネ姫もまた。”(15)
”の作品を書いたのは恐らく「お友達」の誰かではなかろうと彼女は確信していた。王の心情に対してこれほどの無理解があろうはずがない。”(15)
”だが、それにしては現実との整合性が高すぎる。グロワス13世という不世出の偉大な王とそれを支える貞淑で純真、有能な美姫ブラウネという二人の登場人物は全く以て現実の存在なのだから。彼女はそう考えた。
——いずれにしても、もし仮に作者にお会いすることがあればお礼を申し上げなければなりませんね。そして罰も与えねばなりません。その不敬に対して。”(15)
”一方で話の内容は陳腐極まる。評価できるのは2点だけだ。主人公グロワス13世の外面的な偉大さについてはとてもよく書けている。そして自身の似姿たるブラウネ姫もまた。”(15)
”の作品を書いたのは恐らく「お友達」の誰かではなかろうと彼女は確信していた。王の心情に対してこれほどの無理解があろうはずがない。”(15)
”だが、それにしては現実との整合性が高すぎる。グロワス13世という不世出の偉大な王とそれを支える貞淑で純真、有能な美姫ブラウネという二人の登場人物は全く以て現実の存在なのだから。彼女はそう考えた。
——いずれにしても、もし仮に作者にお会いすることがあればお礼を申し上げなければなりませんね。そして罰も与えねばなりません。その不敬に対して。”(15)
ブラウネ姫(例のマンガ)(5)
ヒロインその1。王の命を狙うフロイスブル侯爵の娘。継母に虐められていることを見抜いた主人公により救い出される。政治の天才。主人公を補佐して内政に外交に大活躍。
”「私はブラウネ殿を手放さぬ! すぐに宮殿に出仕させよ」 って言い放つ。ここ、小説の挿絵にもなっている名場面だから。(5)”
” あ、ブラウネ姫の方は実は政治の天才でね。主人公を補佐して内政に外交に大活躍。(5)”
”「逆に、ちょっと合わないのはブラウネかな。男の人ってああいうタイプ好きな人多いですけど、あれは絶対腹黒ですよ。一度取り込まれたら最後、がんじがらめにされますね。お話の中でも王が時計買うの断固阻止してましたし。束縛強そう……。あ、でも時計については同感かな。たぶんグロワス13世が完璧すぎるから、ちょっとした欠点として設定したんでしょうね」(5)”
”「私はブラウネ殿を手放さぬ! すぐに宮殿に出仕させよ」 って言い放つ。ここ、小説の挿絵にもなっている名場面だから。(5)”
” あ、ブラウネ姫の方は実は政治の天才でね。主人公を補佐して内政に外交に大活躍。(5)”
”「逆に、ちょっと合わないのはブラウネかな。男の人ってああいうタイプ好きな人多いですけど、あれは絶対腹黒ですよ。一度取り込まれたら最後、がんじがらめにされますね。お話の中でも王が時計買うの断固阻止してましたし。束縛強そう……。あ、でも時計については同感かな。たぶんグロワス13世が完璧すぎるから、ちょっとした欠点として設定したんでしょうね」(5)”
メアリ姫(例のマンガ)(5)
ヒロインその2。近衛軍を率いる家の姫。王を傀儡にするために近衛軍監に送り込まれた捨て駒。本当の能力を捧げて欲しいと主人公に説得され陥落。抜群の将才を秘めており、彼女の指揮下のサンテネリ軍は大陸最強と名高いプロザン軍と雌雄を決する。茉莉の推し(5)。現代で言うバリキャリで、仕事と恋愛のバランスに悩む(5)。
”「私は絶対メアリですね! 男社会の軍隊で頑張って結果を出して、でもそれだけじゃ満たされないんです。誰かに認めて、受け止めて欲しい気持ちをずっと隠してる。誰かといっても誰でもいいわけではなくて、やっぱり尊敬できる、好きな人に認められたい」(5)”
”「私は絶対メアリですね! 男社会の軍隊で頑張って結果を出して、でもそれだけじゃ満たされないんです。誰かに認めて、受け止めて欲しい気持ちをずっと隠してる。誰かといっても誰でもいいわけではなくて、やっぱり尊敬できる、好きな人に認められたい」(5)”
アナリースと『この人を見よ』(43)
この作品について、少女の頃より「舞台と登場人物の名前を完全に一致させ、王没後の政治変動を高精度で書き上げながら、一方で王と妻たちの関係、王の私生活の描写が事実とかけ離れすぎている」と感じていた。有楽町のレストランにおいて作者がジュール・レスパンであることを知ったことで疑問は氷解する。
ジュール・レスパン(『この人を見よ』)(44)
グロワス13世と並ぶもう一人の主人公。ごく初期から王とともに政治に携わる平民。お忍びで旧市街の酒場に視察にやってきた王に若き学生ジュールが難癖を付け、殴り合いになる。グロワス13世が宮廷で戦う一方で、ジュールは民衆の中で戦う。ともに「民が王となる世界」を生み出すという共通の目標を持った戦友。
レスパン(作家)(12)
モデル兼俳優由理・レスパンが匿名で活動。「この人を見よ」の作者。モデルとしての人気を利用せず、匿名で投稿サイトに投稿した作品が大ヒット。ぼくは嫉妬に狂いそうになる。
”マンガになって、アニメになって、映画になる。ネットの小説投稿サイトに載せたらあれよあれよとヒットしたらしい。すごいね。”(12)
” 彼がそうしてくれていたら、どれほどよかったことだろう。 ぼくの臆病な自尊心も尊大な羞恥心もダメージを受けなかっただろう。ぼくは心から祝福してあげられた。友人の成功を。 だけど彼はね、名前を伏せた。 つまり実力だけで勝ち取ったんだ。人気と評価を。”(12)
” ぼくの心の中に渦巻くこのやりきれない気持ちが分かるだろうか。粘ついたどす黒い、血のように黒い塊を。嫉妬と、もっとはっきり言えば憎悪を。”(12)
”マンガになって、アニメになって、映画になる。ネットの小説投稿サイトに載せたらあれよあれよとヒットしたらしい。すごいね。”(12)
” 彼がそうしてくれていたら、どれほどよかったことだろう。 ぼくの臆病な自尊心も尊大な羞恥心もダメージを受けなかっただろう。ぼくは心から祝福してあげられた。友人の成功を。 だけど彼はね、名前を伏せた。 つまり実力だけで勝ち取ったんだ。人気と評価を。”(12)
” ぼくの心の中に渦巻くこのやりきれない気持ちが分かるだろうか。粘ついたどす黒い、血のように黒い塊を。嫉妬と、もっとはっきり言えば憎悪を。”(12)
『この人を見よ』とぼくの物語の比較(32)
いずれも近世ヨーロッパが舞台。由理の世界は平安期以降、荘園制がモデル。ぼくのそれは18世紀フランスがモデル。前者のヒロインは王に庇護されるお姫様、ぼくのそれは同僚。
”世界設定について言えば由理くんの『この人を見よ』もぼくの作品も似通っている。どちらも近世ヨーロッパ風の世界。現代人が王に転生する。”
” 彼は仏文専攻、特に18世紀がメインだからその知識を使ったんだろう。そしてぼくも哲学ながら特にフランス現代思想がメインなんだ。
” よって、ぼくも彼も18世紀フランスを発想のモデルに据えた。 ただ、彼の作品は恐らく日本の平安期以降、荘園制とかあの辺りのネタを混ぜ込んでいる。ぼくのやつは中世フランスの諸々をエッセンスとして入れ込んだ。”
”ブラウネとブリューベルさんは共に重臣の娘。メアリとジャスミナさんは軍関係者。ただ主人公との関係性においては様相が全く異なる。ブラウネとメアリは王に庇護されるお姫様(のちに天才であることが明らかになるけど)なので、王に従属する恋人。 対するブリューベルとジャスミナは王の”同僚”なんだ。こっちは二人とも——もちろん王も——天才じゃないので、イメージとしては使えない上司とそこそこ有能な部下で構成された部署って感じ。”
”世界設定について言えば由理くんの『この人を見よ』もぼくの作品も似通っている。どちらも近世ヨーロッパ風の世界。現代人が王に転生する。”
” 彼は仏文専攻、特に18世紀がメインだからその知識を使ったんだろう。そしてぼくも哲学ながら特にフランス現代思想がメインなんだ。
” よって、ぼくも彼も18世紀フランスを発想のモデルに据えた。 ただ、彼の作品は恐らく日本の平安期以降、荘園制とかあの辺りのネタを混ぜ込んでいる。ぼくのやつは中世フランスの諸々をエッセンスとして入れ込んだ。”
”ブラウネとブリューベルさんは共に重臣の娘。メアリとジャスミナさんは軍関係者。ただ主人公との関係性においては様相が全く異なる。ブラウネとメアリは王に庇護されるお姫様(のちに天才であることが明らかになるけど)なので、王に従属する恋人。 対するブリューベルとジャスミナは王の”同僚”なんだ。こっちは二人とも——もちろん王も——天才じゃないので、イメージとしては使えない上司とそこそこ有能な部下で構成された部署って感じ。”
『この人を見よ』(11)
例のマンガの原作小説。実はレスパンが書いていた。
”「本気で答えてください。——あの話、先輩は面白いと思いますか?」「え? ああ、うん。もちろん」 すると彼は再び面白い冗談を口にした。 そう思いたかった。冗談であって欲しいと。 なぜって、由理くんの言葉が真実ならば、ぼくは彼を心の底から妬まなければならないから。 ぼくがなりたくてなりたくて、なれなくて、諦めた何者かに、彼がなったということだから。「俺が書いたんです。あの話。——『この人を見よ』を」”
”「本気で答えてください。——あの話、先輩は面白いと思いますか?」「え? ああ、うん。もちろん」 すると彼は再び面白い冗談を口にした。 そう思いたかった。冗談であって欲しいと。 なぜって、由理くんの言葉が真実ならば、ぼくは彼を心の底から妬まなければならないから。 ぼくがなりたくてなりたくて、なれなくて、諦めた何者かに、彼がなったということだから。「俺が書いたんです。あの話。——『この人を見よ』を」”
『この人を見よ』(33)
由理・レスパンがユリスというペンネームで書いた作品。
”グロワス13世は偉大な王である。 彼は政治・軍事における天才である。そして「不正を憎む気高い心」を秘めている。彼は王でありながら、全ての人々の平等と尊厳を信じている。なぜなら彼はそれらが当然のものと見做される現代日本からやってきた人格だから。 偉大な王の下には多くの有能な部下が集う。そして物語に華を添えるヒロイン達も。 そして彼は歴史に例のない業績——サンテネリ王国に空前の繁栄をもたらす——を打ちたてたのち、宿願の大業をなす。民主制への道を拓くという。”
”この物語において由理青年が伝えようと望んだことはただ一つである。 一人の人間の意思は世界を変えうる、という。”
”彼が創り出したグロワス13世は全くの虚像である。 現実の王とは似ても似つかぬ姿だ。だが表面の差異などどうでもよい。表層は大衆読者が望むものだ。政治家作者たる彼が価値を置くのは、グロワス13世というキャラクターの中心に在る一本の骨である。
” 肉を望む人々には肉を見せるべきだ。それでよい。 なぜなら、その肉の中に、骨は確かに存在するのだから。”
”思惑通り、彼の作品は瞬く間に人気をさらった。 彼は百万人に物語を届けたのだ。”
”グロワス13世は偉大な王である。 彼は政治・軍事における天才である。そして「不正を憎む気高い心」を秘めている。彼は王でありながら、全ての人々の平等と尊厳を信じている。なぜなら彼はそれらが当然のものと見做される現代日本からやってきた人格だから。 偉大な王の下には多くの有能な部下が集う。そして物語に華を添えるヒロイン達も。 そして彼は歴史に例のない業績——サンテネリ王国に空前の繁栄をもたらす——を打ちたてたのち、宿願の大業をなす。民主制への道を拓くという。”
”この物語において由理青年が伝えようと望んだことはただ一つである。 一人の人間の意思は世界を変えうる、という。”
”彼が創り出したグロワス13世は全くの虚像である。 現実の王とは似ても似つかぬ姿だ。だが表面の差異などどうでもよい。表層は大衆読者が望むものだ。政治家作者たる彼が価値を置くのは、グロワス13世というキャラクターの中心に在る一本の骨である。
” 肉を望む人々には肉を見せるべきだ。それでよい。 なぜなら、その肉の中に、骨は確かに存在するのだから。”
”思惑通り、彼の作品は瞬く間に人気をさらった。 彼は百万人に物語を届けたのだ。”
この人を見よのCM(37)
手持無沙汰にTVをつけたぼくが目にした。夜のCM。画面がどんどん切り替わってかっこいい。
”『この人を見よ』、9月からアニメ放送が始まるらしい。”
”軍服姿のグロワス13世が馬に乗って軍に号令をかけるシーンとか、大観衆に演説するシーンとか。時々ヒロインとの逢瀬が差し挟まれてね。バシバシ画面が切り替わって、最後にタイトルが浮かび上がってくる。お城を背景に。”
”『この人を見よ』、9月からアニメ放送が始まるらしい。”
”軍服姿のグロワス13世が馬に乗って軍に号令をかけるシーンとか、大観衆に演説するシーンとか。時々ヒロインとの逢瀬が差し挟まれてね。バシバシ画面が切り替わって、最後にタイトルが浮かび上がってくる。お城を背景に。”
この人を見よの内容(28)
はやりのチートもの?
”いわゆる典型的な勧善懲悪の戦記物だ。優秀なリーダーが優秀な部下とともに敵を倒す話。随所に読者がスカッとする場面があるし、物語的にも派手に盛り上がる部分が多い。内政も戦争も快刀乱麻。内には敵を鋭い舌鋒でやり込め、外では敵を華麗な戦略で叩き潰す。現代知識を利用したオーパーツ技術を開発する場面も結構あって、読者は自分と同じ現代に生きた主人公の優位性、つまり自身の優位性を自覚して気持ちよくなれる。”
”いわゆる典型的な勧善懲悪の戦記物だ。優秀なリーダーが優秀な部下とともに敵を倒す話。随所に読者がスカッとする場面があるし、物語的にも派手に盛り上がる部分が多い。内政も戦争も快刀乱麻。内には敵を鋭い舌鋒でやり込め、外では敵を華麗な戦略で叩き潰す。現代知識を利用したオーパーツ技術を開発する場面も結構あって、読者は自分と同じ現代に生きた主人公の優位性、つまり自身の優位性を自覚して気持ちよくなれる。”
グロワス王(例のマンガ)(6)
圧倒的主人公。容姿端麗で知略と度量を兼ね備えた英雄。性格もいい。スパダリ。青佳と茉莉によるとぼくにそっくり。
”お見合い相手はぼく、つまりグロワス王と正反対のアレなやつだ。大丈夫だと思うけど比べられていないことを祈る。皆、現実を見よう。(6)”
”だって、本心からそう思っているとしたら、マンガの内容をちゃんと読めてないことになるからね。難解な小説はおろか、比較的分かりやすいマンガでも細かいニュアンスやキャラの性格、心情を読み取れない人が最近増えてるみたいだから。(6)”
”グロワス13世が無能キャラになっているような。それはそれで読んでみたいな。ただ、出落ちで終わる気がする。サンテネリは滅んだ。終了。(6)”
”お見合い相手はぼく、つまりグロワス王と正反対のアレなやつだ。大丈夫だと思うけど比べられていないことを祈る。皆、現実を見よう。(6)”
”だって、本心からそう思っているとしたら、マンガの内容をちゃんと読めてないことになるからね。難解な小説はおろか、比較的分かりやすいマンガでも細かいニュアンスやキャラの性格、心情を読み取れない人が最近増えてるみたいだから。(6)”
”グロワス13世が無能キャラになっているような。それはそれで読んでみたいな。ただ、出落ちで終わる気がする。サンテネリは滅んだ。終了。(6)”
主人公(例のマンガ)(5)
日本のとある財閥系企業の御曹司(帝王教育済み)。事故に遭ったことでサンテネリ王国なるルイ15世期、アンシャンレジーム末期フランスそっくり世界に王として転移。宰相のフロイスブル侯爵や王位継承権第1位のアキアヌ大公に命を狙われており、王権はまさに風前の灯火だったが、実務官僚たちを味方に付けて統治機構を握る。
例のマンガ(5)
数寄屋橋交差点でぼくたちが見たアニメ広告の原作。原作は全7巻の小説で、コミカライズは現在10巻でさらに連載中。スカッとする完全無欠の最強ヒーロー物。しかもハーレム。どう見ても『汝、暗君を愛せよ』だが、各所に若干以上の盛った要素が散見される。ブラウネ姫、メアリ姫が登場(5)。
” 小説は全7巻、マンガは10巻でまだ続いている様子。大人の特権を十分に生かして文字通り大人買い。届いた通販の箱が結構重かったね。(5)”
” このお話、日本のとある財閥系企業の御曹司(帝王教育済み)が事故に遭って異世界に転移するところから始まる。(5)”
” 飛んだ先はサンテネリ王国とかいう、誰が見てもアンシャンレジーム末期のフランス。恐らくルイ15世期あたりかな。(5)”
” 小説は全7巻、マンガは10巻でまだ続いている様子。大人の特権を十分に生かして文字通り大人買い。届いた通販の箱が結構重かったね。(5)”
” このお話、日本のとある財閥系企業の御曹司(帝王教育済み)が事故に遭って異世界に転移するところから始まる。(5)”
” 飛んだ先はサンテネリ王国とかいう、誰が見てもアンシャンレジーム末期のフランス。恐らくルイ15世期あたりかな。(5)”
最近流行っているマンガ(3)
原作は小説。もうすぐアニメ化される予定。お話の中に出てくる時計ブランドはぼくの行きつけのブランドをモデルにしている。”「ご存じですか? あのお話、主人公の王様がちょっと社長に似ているんです」(3)””「その王様が奥さん達の中で最も寵愛した女性が、実は私に似ているんです」(3)”
「では、全てが終わった暁には、私は声優になろうか。昔から憧れの職業だ」(5)
ボイスドラマの声と似ているといわれたぼくが冗談で発した台詞。プロザンとの激闘が終わり、議会を設立して立憲君主として歩むことになった主人公が妻達に語る名台詞。本来の台詞は「声優」じゃなくて「時計職人」。
※暗君109話、グロワス14世の台詞から。”「確かに、軒先をお借りしている分の家賃は支払わねばならないな。母と二人で時計職人になって稼ぎましょう。昔から憧れの職業だ」”
※暗君109話、グロワス14世の台詞から。”「確かに、軒先をお借りしている分の家賃は支払わねばならないな。母と二人で時計職人になって稼ぎましょう。昔から憧れの職業だ」”
ビルの壁に貼られた大きなポスター(3)
見合い後、銀座に向けてあるくぼくが目にした。”線路の高架下を抜けて数寄屋橋交差点を目指し歩く最中、ビルの壁に貼られた大きなポスターが目に入る。 闇から浮かび上がる若い男の顔を正面から描いたそれは、最近流行っているマンガのもの。”
ボイスドラマ(5)
例のマンガのボイスドラマ。主人公の声がぼくに似ている(茉莉談)。
作品と創作/『地に落ちて死なば』の人物・国・展開
| 項目 | 話数 |
|---|---|
| 茉莉はジャスミナ推し(37) | 37 |
| ぼくの物語のヒロインたち(28) | 28 |
| アントワン3世についてのぼくの評価(32) | 32 |
| アントワン3世(28) | 28 |
| アントワン3世の悩み(44) | 44 |
| アントワン3世の最期(当初の予定)(44) | 44 |
| ユニウス(44) | 44 |
| ユニウス(44) | 44 |
| ブリューベルの反応(30) | 30 |
| ブリューベルの思惑(32) | 32 |
| ブリューベルへの王の反発(32) | 32 |
| ブリューベル・ドゥ・ラ・モール公爵令嬢(28) | 28 |
| ジャスミナの反応(30) | 30 |
| ジャスミナの衝撃(31) | 31 |
| ジャスミナ・ドゥ・レナール侯爵令嬢(28) | 28 |
| アンジー公領への行幸(37) | 37 |
| サジェシア・ドゥ・アンジー大公令嬢(32) | 32 |
| サジェシア投入直後の状況(32) | 32 |
| ダンジー公領(32) | 32 |
| 物語最初の山場(31) | 31 |
| もともとのヒロインたちの予定(41) | 41 |
| アルビオン(32) | 32 |
| エリザベト(41) | 41 |
| カピア家(28) | 28 |
| カマンベールチーズ(41) | 41 |
| シベール王国(41) | 41 |
| ドゥ・ラ・モール公爵(28) | 28 |
| ドゥ・レナール侯爵(28) | 28 |
| リュテス(28) | 28 |
| 暗殺未遂をうけた王自身(31) | 31 |
| 王暗殺未遂事件の余波(32) | 32 |
| 王暗殺未遂事件の発想(31) | 31 |
| 王暗殺未遂犯の女性の素性(31) | 31 |
茉莉はジャスミナ推し(37)
デジタル民生委員の当番茉莉に『この人を見よ』CMの話題を振ったところ、唐突にジャスミナを推される。ぼくの心拍は160程度の無酸素運動ゾーンに突入。
”『そうですか。それで、話を戻しますが『地に落ちて死なば』はネット小説です。本当にいいお話なので兄さんもお暇なときに是非読んでみてください! ちなみに私のイチオシは断然ジャスミナですね。ネタバレになるのではっきりは書きませんけど、彼女がある失敗をして自責の念に苛まれているとき、王が彼女を助けるんですよ。つきっきりで。二人きりになって。本当に綺麗な場面で!”
”『気が向いたら見ます。それで、アントワン3世ってちょっととぼけた感じの主人公なんです。でも実は外から見るとキリッとしてる。そこがカッコよくて可愛くて!』”
”『早く出版されてほしいですね! そうしたら挿絵も付いて、アントワン3世とジャスミナのビジュアルを見られますから。あ、ジャスミナなんですけど、実は私の今の髪型と同じなんです。偶然! ああ、早く見たい!』”
”よく見ると茉莉さん、メッセージアプリのHN「茉莉@ジャスミナ推し」になってる”
”『そうですか。それで、話を戻しますが『地に落ちて死なば』はネット小説です。本当にいいお話なので兄さんもお暇なときに是非読んでみてください! ちなみに私のイチオシは断然ジャスミナですね。ネタバレになるのではっきりは書きませんけど、彼女がある失敗をして自責の念に苛まれているとき、王が彼女を助けるんですよ。つきっきりで。二人きりになって。本当に綺麗な場面で!”
”『気が向いたら見ます。それで、アントワン3世ってちょっととぼけた感じの主人公なんです。でも実は外から見るとキリッとしてる。そこがカッコよくて可愛くて!』”
”『早く出版されてほしいですね! そうしたら挿絵も付いて、アントワン3世とジャスミナのビジュアルを見られますから。あ、ジャスミナなんですけど、実は私の今の髪型と同じなんです。偶然! ああ、早く見たい!』”
”よく見ると茉莉さん、メッセージアプリのHN「茉莉@ジャスミナ推し」になってる”
ぼくの物語のヒロインたち(28)
魅力的でかわいいがぼくにあまり優しくないらしい。ぼくの現実の生活で関わりのある女性たちをモデルにしているので、知られたらぼくは切腹する腹積もり。
”主人公を紹介したら次はヒロイン。これが重要だよ。魅力的でかわいいヒロインは作品の人気を左右する。 でも残念なことにこのお話は思考実験なので、ヒロイン達はあまり”ぼく”に優しくない。”
”結局の所、このお話はぼくの現実の生活を核としたものだから、登場人物のモデルもまぁ……そうなった。モデルとなった当人達にこのことが知れたらぼくは潔く腹を掻っ捌くしかない。”
”普通ならこの二人と主人公はすぐ仲良くなって恋愛に発展するはずなんだけど、リュテスは”ぼく”のために創られた地獄なのでそうはならない。”
”主人公を紹介したら次はヒロイン。これが重要だよ。魅力的でかわいいヒロインは作品の人気を左右する。 でも残念なことにこのお話は思考実験なので、ヒロイン達はあまり”ぼく”に優しくない。”
”結局の所、このお話はぼくの現実の生活を核としたものだから、登場人物のモデルもまぁ……そうなった。モデルとなった当人達にこのことが知れたらぼくは潔く腹を掻っ捌くしかない。”
”普通ならこの二人と主人公はすぐ仲良くなって恋愛に発展するはずなんだけど、リュテスは”ぼく”のために創られた地獄なのでそうはならない。”
アントワン3世についてのぼくの評価(32)
”大体アントワン3世ぼくについての考察だ。それはそれでうれしいけど、こいつは嫌なヤツなので妙に読者に可愛がられてるのが苛立たしい。 辛いね。”
”本当にひねくれたヤツだ。こういうタイプのやつは本当によくない。近くにいたら絶対に友達になりたくないね。”
”本当にひねくれたヤツだ。こういうタイプのやつは本当によくない。近くにいたら絶対に友達になりたくないね。”
アントワン3世(28)
異世界リュテスでのぼくの名前。正式にはアントワーヌだが女性っぽい響きなのでアントワン。3世なのはぼくにあやかってのこと。
アントワン3世の悩み(44)
ぼくの「謎のモテ期」のせいでアントワン3世もヒロインたちに好意を寄せられる展開に。ぼくと同じく、なぜ好意を寄せられているのか分からず悩み、偉大な王という立場のせいだと結論する。結果、嫌われないために王の立場を守るべく努力するはめになると同時に、卑俗な欲望のために自分が王位につき続けることの国家への悪影響を想像して恐れ、罪悪感に悩む。
”ぼくの現し身であるアントワン3世もまた、ヒロインたちに好かれるようになりやがった。こいつ……。”
”彼は”ぼく”なので、ぼくと同じ懊悩に心をさいなまれることになる。残念でした! つまり、彼はヒロインたちに好かれる理由が全く分からないんだ。でも、好かれているという事実だけは認識できる。”
”アントワン3世はリュテス王国の王である。よって好かれている。そう認識する。”
”アントワン3世はいつも悩んでるんで、今回も通常営業です。”
アントワン3世の最期(当初の予定)(44)
ヒロインたちとも結ばれることなく別れ、孤独に王を演じるはずだったが、作者の意に反してヒロインたちが妙にやる気をだして別れてくれる気配がないため、王に引導を渡す役としてユニウスが投入された。
”物語全体における彼の存在意義は最終的に王に引導を渡す役割を担うところにあるんだ。 本当はもっとじっとりとね、ヒロインたちとも静かに別れ、孤独に王を演じ続けるアントワン3世の悲しい姿がラストのはずだった。”
”ただ一つだけ分かるのは、彼女たち、静かに去ってくれそうな気配が微塵もない。 よって話のけりを付けるためにユニウスのような敵が必要になった。 最後はどうしようか。 ここは派手にギロチンだろうか。 行くか、ギロチン!”
”まぁ、ブルータス方式にしろルイ16世方式にしろ、いずれにしてももう少し先の話だ。”
ユニウス(44)
『地に落ちて死なば』の超イケメンの新キャラ。ぼくの作品のモチーフである近世フランスを象徴する、革命の主役。王にとっては敵、ライバルの関係。モデルのベースは由理。ロベスピエールやサン・ジュストなど歴史上の人物をいろいろ混ぜたキャラ。
貴族と平民の間に生まれた私生児。父方に引き取られ貴族として育てられる。出生の秘密を知り、平民である母の悲惨な死を看取ったことで、現体制に対する憎悪を胸に秘めるように。表向き貴族家の3男坊として生きながら、自身を平民であると認識している。不平等の蔓延する世界を変革することこそが自身の生きる意味であると考えるようになった。大学生になった彼は、師である教授のお供で行った貴族の夜会で王アントワン3世と出会い、別室で熾烈な舌戦を展開する。結果、敵同士ではありながら、互いに一目置くことになり、以後折に触れて舌戦を交わしながら、徐々に相互理解を深めていく。
”アントワン3世の中身は”ぼく”——21世紀の日本に生きた存在——なので、ユニウス青年の主張する内容に心内では賛同せざるを得ない。それどころか「話の通じる相手」であるとすら思う。一方のユニウスもまた、意外にも開明的な、場合によっては自身の思想を超えるラジカルな考えを仄めかす王に対して、憎しみの中に微かな「興味」を覚えるようになるんだ。でも彼らは文字通り不倶戴天の敵同士。”
”王は自身が持ち得ない強靱な意思と活力をユニウスに感じる。ユニウスは王に静かな知性と重圧を引き受ける覚悟を見る。あ、王の中身はアレなので、実際は彼の買いかぶりなんだけどね。”
ユニウス(44)
”あくまで王の敵でありつづける。隙あらば王を吊るしてやりたいと考えている。ただし王「自身」については敬意を持ち続ける。王もまた、こいつに吊るされるのかなぁと思いつつ、いやだなぁと思いつつ、そうあるべきなのかもしれないと思っている。”
ブリューベルの反応(30)
回心後のぼくの振る舞いに対し、父との和解は評価するが働きはハンコマシーンであると認識。
”ブリューベルさん(23歳・元秘書の某女氏似)は父である首席国務卿と王が和解した——”ぼく”が転生する前、アントワン3世と彼の仲は険悪だったんだよ——ことを喜んで、王をちょっとだけ見直す。だけど、実際に王がやっていることがただ許可を出すだけ、要するに判子マシーンであることも見てる。秘書なので。というか秘書ゆえにその部分ばかり見えてしまうというべきかな。よってやっぱり評価は低い。「自分の父さんの頑張りに乗っかってるだけの盆暗」的なね。”
”ブリューベルさん(23歳・元秘書の某女氏似)は父である首席国務卿と王が和解した——”ぼく”が転生する前、アントワン3世と彼の仲は険悪だったんだよ——ことを喜んで、王をちょっとだけ見直す。だけど、実際に王がやっていることがただ許可を出すだけ、要するに判子マシーンであることも見てる。秘書なので。というか秘書ゆえにその部分ばかり見えてしまうというべきかな。よってやっぱり評価は低い。「自分の父さんの頑張りに乗っかってるだけの盆暗」的なね。”
ブリューベルの思惑(32)
落ち込む王を慰める体で取り入るブリューベルだが、同時に王を憐れむ気持ちもある。
”ブリューベルさんは、お父さんというか、実家ドゥ・ラモール家のために王と接近することを意図している。観察眼に優れた彼女はぼく彼が弱っている瞬間を見抜き、あえてそこに楔を打ち込もうとしてくるんだ。”
”政治的動機のみから起こした行動というわけでもない。そこには憐憫の情もある。何はともあれ目の前で人が苦しんでいたらかわいそうだと思う。そういう普通の心情を彼女もまた備えている。”
”ブリューベルさんは、お父さんというか、実家ドゥ・ラモール家のために王と接近することを意図している。観察眼に優れた彼女はぼく彼が弱っている瞬間を見抜き、あえてそこに楔を打ち込もうとしてくるんだ。”
”政治的動機のみから起こした行動というわけでもない。そこには憐憫の情もある。何はともあれ目の前で人が苦しんでいたらかわいそうだと思う。そういう普通の心情を彼女もまた備えている。”
ブリューベルへの王の反発(32)
すんなりメロドラマにならない。慰めに来たブリューベルに反発を覚える王。
”「他人事の綺麗事は絵空事だ」”
”「この見目麗しのご令嬢に”ぼく”の何が分かるというんだ」”
”本当にひねくれたヤツだ。こういうタイプのやつは本当によくない。近くにいたら絶対に友達になりたくないね。”
”「他人事の綺麗事は絵空事だ」”
”「この見目麗しのご令嬢に”ぼく”の何が分かるというんだ」”
”本当にひねくれたヤツだ。こういうタイプのやつは本当によくない。近くにいたら絶対に友達になりたくないね。”
ブリューベル・ドゥ・ラ・モール公爵令嬢(28)
首席国務卿、今で言う内閣総理大臣の娘。かわいい系お姫様。父の立場を考え表面上優しく演じるが内心王を軽蔑する。
”青……ではなくブリューベルさんは典型的なお姫様なんだけど、王に近侍する関係上秘書的業務をこなす。”
”ブリューベルさんは表面上優しいものの、それは実はお父さんである首席国務卿の立場を考えての演技。内心は無能な王を軽蔑してる。”
”青……ではなくブリューベルさんは典型的なお姫様なんだけど、王に近侍する関係上秘書的業務をこなす。”
”ブリューベルさんは表面上優しいものの、それは実はお父さんである首席国務卿の立場を考えての演技。内心は無能な王を軽蔑してる。”
ジャスミナの反応(30)
軍の縮小にかじを取るぼくに好意的にはなれないが、彼女の父もまたその方針に賛同する一人であることから複雑な気持ち。
”ジャスミナさん(25歳・親戚のバリキャリさん似)の方は、職場の軍が縮小され国家元帥であるお父さんの体面も傷つくわけだから、好意的になれるわけがない。 ただし彼女は有能な軍人ゆえ、軍縮が王ではなく重臣達の発想であり、その中に自分の父ドゥ・レナール侯爵も入っていることを理解している。で、複雑な気持ちを味わう。王への評価? しゃべる置物みたいな。”
”ジャスミナさん(25歳・親戚のバリキャリさん似)の方は、職場の軍が縮小され国家元帥であるお父さんの体面も傷つくわけだから、好意的になれるわけがない。 ただし彼女は有能な軍人ゆえ、軍縮が王ではなく重臣達の発想であり、その中に自分の父ドゥ・レナール侯爵も入っていることを理解している。で、複雑な気持ちを味わう。王への評価? しゃべる置物みたいな。”
ジャスミナの衝撃(31)
”自身の役割を果たせず王が傷ついた。 責任感が強い彼女は償いを望み自死を図る”
”放っておくと死のうとするので、しかたなく夜通し部屋に二人きり。王が彼女を見張るんだ。ご都合主義なのは分かってる。そんなの部下がやることでしょって。その通りなんだけど、それじゃ物語は盛り上がらない。ここは王が頑張る。”
”彼は自分が内心考えていることを彼女に語る。たとえば、責任を取って死ぬのはおかしい、みたいなね。 死が偉大な、価値のあるものに昇華するのはそれが納得の上で自発的に為された場合だ。外的要因から導かれる死は自死の形を取っても実体は他殺と変わらない。 そんなことをつらつら言いながら夜を明かす。 そして二人は眠ってしまう。”
” 朝目を覚ますと、王が寝そべるソファーの足下にジャスミナがぺたんと座り込み、王の身体に頭を預けて眠っている。王の両手——縫合処置の末包帯ぐるぐる巻き——に自身の手をそっと重ねて。”
”放っておくと死のうとするので、しかたなく夜通し部屋に二人きり。王が彼女を見張るんだ。ご都合主義なのは分かってる。そんなの部下がやることでしょって。その通りなんだけど、それじゃ物語は盛り上がらない。ここは王が頑張る。”
”彼は自分が内心考えていることを彼女に語る。たとえば、責任を取って死ぬのはおかしい、みたいなね。 死が偉大な、価値のあるものに昇華するのはそれが納得の上で自発的に為された場合だ。外的要因から導かれる死は自死の形を取っても実体は他殺と変わらない。 そんなことをつらつら言いながら夜を明かす。 そして二人は眠ってしまう。”
” 朝目を覚ますと、王が寝そべるソファーの足下にジャスミナがぺたんと座り込み、王の身体に頭を預けて眠っている。王の両手——縫合処置の末包帯ぐるぐる巻き——に自身の手をそっと重ねて。”
ジャスミナ・ドゥ・レナール侯爵令嬢(28)
国軍元帥の娘で正式な軍士官(大佐)。カッコいい系有能女性。内心では王に不安を感じている。
”ジャスミナさんはシンプルに軍人。軍からの出向で国王付武官。”
”ジャスミナさんはもう少しマイルド。軍人なので上官——この場合王だね——を極度に批判的には見ないよう教育されてる。だけど超優秀な人なので、若干「こいつで大丈夫か?」と思ってる。”
”ジャスミナさんはシンプルに軍人。軍からの出向で国王付武官。”
”ジャスミナさんはもう少しマイルド。軍人なので上官——この場合王だね——を極度に批判的には見ないよう教育されてる。だけど超優秀な人なので、若干「こいつで大丈夫か?」と思ってる。”
アンジー公領への行幸(37)
西の国境を安定させるためサジェシア姫の生国アンジー公領をリュテスに吸収することを決めたアントワン王は、ルテシアの王宮からサジェシア姫を伴ってアンジー公領まで旅をする。目的はサジェシア姫との婚姻をまとめること。知子との実体験に着想を得た。
サジェシア・ドゥ・アンジー大公令嬢(32)
人気に喜んだぼくが投入した3人目のヒロイン。モデルは知子と思われる。リュテス王国西部とアルビオン東部にまたがる家領を持つ、従属国家ダンジー公領の姫。可愛らしい見た目、快活で闊達な表層の下に、強靱な意志と知性を秘めている。
”リュテス王国西部とアルビオン(ご存じの通りイギリスの古名だね)東部にまたがる家領を持つ、ほぼ独立国に等しい従属国家ダンジー公領の姫サジェシアさん。 sagesse知恵というフランス語を適当に改造した名前なので現実にはいないね。で、モデルはね。分かるね。”
”快活で闊達、可愛らしいお姫様。でも、もちろんその表層の下には強靱な意志と知性を秘めている。自分がダンジー公領の行く末を左右する存在であるという確固とした自覚がある。つまり規模は違えどアントワン3世と同等の視野を持った——持たざるをえない姫だ。”
”彼女が加わることで、お話はリュテス王国から周辺地域へと対象を広げていくことになる。”
”サジェシア姫の描写には自信があった。これでもかと可愛い年下の女の子を描きつつ、時折ぞっとするような「ヒント」を置いた。こういうのいいでしょ。可愛い系要員が実は! みたいなの。”
”やっぱりみんな分かってる。満を持しての新キャラ登場だからね。 これは知子さんに感謝してもしきれない。”
”サジェシア姫はちゃんと幸せになるよ。物語の都合で不良品を掴ませれたりはしないから。”
”リュテス王国西部とアルビオン(ご存じの通りイギリスの古名だね)東部にまたがる家領を持つ、ほぼ独立国に等しい従属国家ダンジー公領の姫サジェシアさん。 sagesse知恵というフランス語を適当に改造した名前なので現実にはいないね。で、モデルはね。分かるね。”
”快活で闊達、可愛らしいお姫様。でも、もちろんその表層の下には強靱な意志と知性を秘めている。自分がダンジー公領の行く末を左右する存在であるという確固とした自覚がある。つまり規模は違えどアントワン3世と同等の視野を持った——持たざるをえない姫だ。”
”彼女が加わることで、お話はリュテス王国から周辺地域へと対象を広げていくことになる。”
”サジェシア姫の描写には自信があった。これでもかと可愛い年下の女の子を描きつつ、時折ぞっとするような「ヒント」を置いた。こういうのいいでしょ。可愛い系要員が実は! みたいなの。”
”やっぱりみんな分かってる。満を持しての新キャラ登場だからね。 これは知子さんに感謝してもしきれない。”
”サジェシア姫はちゃんと幸せになるよ。物語の都合で不良品を掴ませれたりはしないから。”
サジェシア投入直後の状況(32)
総合評価が20増加、ブックマークが10増加。外は土砂降りだがぼくはブックマーク増に喜んだ。
” 総合評価 122pt 評価者数 8人 ブックマーク 25件”
”生憎外は土砂降りだけど、こころは見事に日本晴れ。”
” 総合評価 122pt 評価者数 8人 ブックマーク 25件”
”生憎外は土砂降りだけど、こころは見事に日本晴れ。”
ダンジー公領(32)
サジェシアの実家。リュテス王国西部とアルビオン東部にまたがる家領を持つ、ほぼ独立国に等しい従属国家。
” ダンジー公領もちゃんと発音すると「ドゥ・アンジー」。まぁアンジュー公国がモデルです。時代的にありえないのは分かっている。でもこれは「リュテス」という謎世界なので許してほしい。”
ダンジー公国はリュテス(主人公の国ね)とアルビオン(不倶戴天の敵)の両者を天秤にかけてしぶとく生き残る公国なんだ。リュテスとしては国土をきりよく統一する観点から自分たちの方に引き込みたい。ダンジー家も家領の大半がリュテス側、つまり大陸側にあるのでこっちに寄ってきている。こういう小公領が生き残れる時代ではなくなりつつあるからね。”
” ダンジー公領もちゃんと発音すると「ドゥ・アンジー」。まぁアンジュー公国がモデルです。時代的にありえないのは分かっている。でもこれは「リュテス」という謎世界なので許してほしい。”
ダンジー公国はリュテス(主人公の国ね)とアルビオン(不倶戴天の敵)の両者を天秤にかけてしぶとく生き残る公国なんだ。リュテスとしては国土をきりよく統一する観点から自分たちの方に引き込みたい。ダンジー家も家領の大半がリュテス側、つまり大陸側にあるのでこっちに寄ってきている。こういう小公領が生き残れる時代ではなくなりつつあるからね。”
物語最初の山場(31)
『暗君』14話「無能な王の身体」か。
”リュテス王国で代わり映えのしない日々を送る我らが主人公の身に、ついに最初の試練が訪れる。暗殺未遂という。”
”リュテス王国で代わり映えのしない日々を送る我らが主人公の身に、ついに最初の試練が訪れる。暗殺未遂という。”
もともとのヒロインたちの予定(41)
それぞれアントワン1世とは別の男性と付き合う予定だったが、なぜか勝手に王と仲良くなっていくためぼくは憤慨した。
- ブリューベル
アントワン3世退位により次期国王アクイタニア大公と結婚。
- ジャスミナ
エリートサラリーマン風のデカピア公と恋に落ちる。
- サジェシア
アントワン3世の頼りなさを見抜いて婚約取りやめ。
アルビオン(32)
イギリスがモデルの国。リュテスにとって不倶戴天の敵。
エリザベト(41)
リュテスと東の国境を接する中規模の王国、シベール王国の第1王女。時計産業が盛んなお国柄を反映し、お姫様ながらに時計製作を趣味とするちょっと変わったキャラ。輿入れに際してリュテス語を学んでおり、リュテス語を話しているときはちょっと天然はいった感じの女の子だが、母語ゲルマニオン語のときは途端に「大人の女」になるという設定。
カピア家(28)
アントワン3世の家名。リュテスを支配する王家。
カマンベールチーズ(41)
スーパーに売っている国産のチーズ。8ピース個包装。アルパカのつまみにしなさいとぼくが青佳に厳命された食品。青佳が来るたびにチェックされる。
シベール王国(41)
リュテスと東の国境を接する中規模の王国。エリザベトの母国。時計産業が盛ん。言語はゲルマニオン語。
ドゥ・ラ・モール公爵(28)
首席国務卿。ブリューベルの父。
ドゥ・レナール侯爵(28)
国軍元帥。ジャスミナの父。
”彼らはいい人でね。いい人というか、”ぼく”の能力については見切って諦めてるんだけど、国家のために忠誠を尽くそうとしている。だからぼくは彼らを頼る、もっとはっきり言えば縋りながら、なんとか生き延びていく。”
”彼らはいい人でね。いい人というか、”ぼく”の能力については見切って諦めてるんだけど、国家のために忠誠を尽くそうとしている。だからぼくは彼らを頼る、もっとはっきり言えば縋りながら、なんとか生き延びていく。”
リュテス(28)
ぼくが飛ばされる異世界の名前。フランスの古名の一つ。首都ルテシア(32)。
” ”ぼく”が飛ばされる異世界地獄の名はリュテス。お気づきの通りフランスの古名の1つだね。 そこを支配するカピア家の王、アントワン3世がぼくが飛ばされた先の人間、つまり主人公になる。 それにしても、名前を考えるのって本当に面倒くさいな。悩んだ末に大好きな小説の主人公から拝借してきた。実際は「アントワーヌ」なんだけど、日本だと女性名と誤解される響きだから少し語尾を変えた。3世はほら、ぼくがその、ね。3代目なので。”(28)
”サジェシア姫がリュテスの首都ルテシアにやってきて、アントワン3世の宮廷に滞在することになるんだ。”(32)
” ”ぼく”が飛ばされる異世界地獄の名はリュテス。お気づきの通りフランスの古名の1つだね。 そこを支配するカピア家の王、アントワン3世がぼくが飛ばされた先の人間、つまり主人公になる。 それにしても、名前を考えるのって本当に面倒くさいな。悩んだ末に大好きな小説の主人公から拝借してきた。実際は「アントワーヌ」なんだけど、日本だと女性名と誤解される響きだから少し語尾を変えた。3世はほら、ぼくがその、ね。3代目なので。”(28)
”サジェシア姫がリュテスの首都ルテシアにやってきて、アントワン3世の宮廷に滞在することになるんだ。”(32)
暗殺未遂をうけた王自身(31)
”我らが主人公アントワン3世は思わぬ2度目の死に直面して心底驚くんだけど、まぁなんだかんだ一度経験済みなので、表面上は比較的冷静。”
”で、ダメージは後から来る。だから彼も暗殺直後は意外と落ち着いてる。”
”で、ダメージは後から来る。だから彼も暗殺直後は意外と落ち着いてる。”
王暗殺未遂事件の余波(32)
事件を機に王とジャスミナの距離が縮まる。
”例の事件以降、ジャスミナさんとアントワン3世の仲がちょっと縮まった。実はその余波でブリューベルさんとの関係も改善の兆しを見せている。 王は自分を暗殺しようとした者が獄中で謎の死を遂げたことを部下から聞き、強いショックを受ける。責任を感じて自分を責めるんだ。”
”落ち込んだ彼の前に秘書のブリューベルさんが現れる。 彼女は主人公を包み込み、優しく肯定してくれる。その上「問題を自分のものとして受け止めようとしているあなたは勇敢な人だ」と言ってくれる。”
”表面的には感動的な場面でありつつ心内では互いにすれ違ってる。でもどこかしら、互いにプラスの感情を秘めて。”
”そんなわけで、ジャスミナさんは「負い目」、ブリューベルさんは「打算」を秘めて王と距離を縮めた。王はというと、2人の好意を喜びながらも疑いを解くことは決してない。彼は人を信じることができない。”
”例の事件以降、ジャスミナさんとアントワン3世の仲がちょっと縮まった。実はその余波でブリューベルさんとの関係も改善の兆しを見せている。 王は自分を暗殺しようとした者が獄中で謎の死を遂げたことを部下から聞き、強いショックを受ける。責任を感じて自分を責めるんだ。”
”落ち込んだ彼の前に秘書のブリューベルさんが現れる。 彼女は主人公を包み込み、優しく肯定してくれる。その上「問題を自分のものとして受け止めようとしているあなたは勇敢な人だ」と言ってくれる。”
”表面的には感動的な場面でありつつ心内では互いにすれ違ってる。でもどこかしら、互いにプラスの感情を秘めて。”
”そんなわけで、ジャスミナさんは「負い目」、ブリューベルさんは「打算」を秘めて王と距離を縮めた。王はというと、2人の好意を喜びながらも疑いを解くことは決してない。彼は人を信じることができない。”
王暗殺未遂事件の発想(31)
やたら訪れる「好ましくない」お客への対応に疲弊したスタッフからの対応が身につまされたこと。
”元ネタは数日前に知子さんと立ち寄ったブランドブティックでの一幕だった。個人にはどうすることもできない社会の巨大な変化が、そのどうすることもできない個人の元に突如降ってくる。こんなにも酷い、そしてありふれた話もない。 こういうタイプの社会と個人、マクロとミクロを混ぜ込んだ問題に対して人はどう向き合うべきか。ぼくには分からない。創造主であるぼくが分からないんだから、物語の主人公である”ぼく”にも分からない。彼は途方に暮れる。”(31)
”「今は現場も疲弊してますから。あれだけお客様が大量にいらっしゃるとスタッフをしっかり教育する暇もなくなります。ですから、ちょっと驚くような対応をしてしまって問題になるケースもあるようです」”(30)
”こういう問題に美しい解決策はない。少なくともぼくには思いつかない。 もうその場その場で手当をしてバランスを見ていくしかできない。”(30)
”元ネタは数日前に知子さんと立ち寄ったブランドブティックでの一幕だった。個人にはどうすることもできない社会の巨大な変化が、そのどうすることもできない個人の元に突如降ってくる。こんなにも酷い、そしてありふれた話もない。 こういうタイプの社会と個人、マクロとミクロを混ぜ込んだ問題に対して人はどう向き合うべきか。ぼくには分からない。創造主であるぼくが分からないんだから、物語の主人公である”ぼく”にも分からない。彼は途方に暮れる。”(31)
”「今は現場も疲弊してますから。あれだけお客様が大量にいらっしゃるとスタッフをしっかり教育する暇もなくなります。ですから、ちょっと驚くような対応をしてしまって問題になるケースもあるようです」”(30)
”こういう問題に美しい解決策はない。少なくともぼくには思いつかない。 もうその場その場で手当をしてバランスを見ていくしかできない。”(30)
王暗殺未遂犯の女性の素性(31)
『暗君』より詳細な情報。
”王国はカジュアルにデフォルトするって前に言ったね。その煽りを喰らってとある商家が破産する。主人は自ら命を絶ち、息子達も戦争で亡くした奥さんは、当然のことながら自身も死にたいと願う。彼女は色々方法を検討した末にそのうちの一つ、最も陰惨で最も確実な方法を選んだ。 王の暗殺と、その後の刑死。”
”王国はカジュアルにデフォルトするって前に言ったね。その煽りを喰らってとある商家が破産する。主人は自ら命を絶ち、息子達も戦争で亡くした奥さんは、当然のことながら自身も死にたいと願う。彼女は色々方法を検討した末にそのうちの一つ、最も陰惨で最も確実な方法を選んだ。 王の暗殺と、その後の刑死。”
作品と創作/執筆・読者反応・SNS
| 項目 | 話数 |
|---|---|
| アナリースと『地に落ちて死なば』(43) | 43 |
| アナリースのアカウント(34) | 34 |
| モデル由理・レスパンのアカウント(44) | 44 |
| 人気急落中の『地に落ちて死なば』への由理の感想(41) | 41 |
| 出版社からの怒られを心配するぼくへの由理の返答(37) | 37 |
| 由理による『地に落ちて死なば』への言及(34) | 34 |
| 由理のファン公言に対する感想ポスト(44) | 44 |
| 由理の地に落ちて死なばコスプレ(44) | 44 |
| ぼくが用意した2種類の楽しみ方(32) | 32 |
| ぼくが許容できる「フィクション」(32) | 32 |
| ぼくによる二者の比較(32) | 32 |
| ぼくのタイムラインの選好(44) | 44 |
| ぼくの出版と挫折(23) | 23 |
| ぼくの出版経験(12) | 12 |
| ぼくの小説15話時点(32) | 32 |
| ぼくの小説の完了予定(30) | 30 |
| ぼくの小説の近況(34) | 34 |
| ぼくの書きたい真実(32) | 32 |
| ぼくの物語のビュー推移(28) | 28 |
| ぼくの物語の内容(28) | 28 |
| ぼくの物語の見た目と内容(32) | 32 |
| 創作だから主人公はモテた方がいい(30) | 30 |
| PV10000越え(32) | 32 |
| PV1012(32) | 32 |
| その後のPV推移(32) | 32 |
| 外部感想掲示板(32) | 32 |
| 『地に落ちて死なば』(33) | 33 |
| 『地に落ちて死なば』近況(37) | 37 |
| 10話まで(30) | 30 |
| あらすじ判断(33) | 33 |
| うれし泣き?(28) | 28 |
| ノベルライターになろう(28) | 28 |
| 不都合な真実(35) | 35 |
| 作品トップページあらすじの変更(31) | 31 |
| 例のweb小説(14) | 14 |
| 小説への解釈(29) | 29 |
| 精神の嘔吐(30) | 30 |
| 自立した存在としての作品(34) | 34 |
| 解釈違い(29) | 29 |
| 記録(33) | 33 |
アナリースと『地に落ちて死なば』(43)
由理・レスパンがポストにアドレスを貼り付けたことで存在を知る。聖書の一節から採られたタイトルに惹かれ、半ば語学学習の1教材として読み始めた。彼女は一読して作者がぼくであることに気づき、読み進める中でぼくがグロワスであると確信した。
アナリースのアカウント(34)
@annalise_estbourg_jpn。彼女の手によるファンアート公開時に判明。同時に投稿された4写真のラスト2枚にはぼくとアナリースの腕が親密に絡み合うシーンが写っており、さながら結婚記念。小グロワスを返しに行ったときに試着させてもらった際の写真の模様。
”@annalise_estbourg_jpn
「突然ですが新作を発表します。これは私が大好きな小説の主人公、リュテス王アントワン3世のファンアートとして作りました。彼の愛用時計をイメージしています。もちろんエストブール(アナリース)のハンドメイド。さぁ皆さん、ご覧下さい!」”
”3枚目はこの新作時計を着けた男性のリストショット。 ただし、その手のひらが女性の手と結びあっているという。 4枚目は新作を着けた男性の腕と小グロワスを着けた女性の腕の集合写真。”
”ちらもエストブール(アナリース)ブランドなのでデザインの方向性はケース、文字盤ともに統一されてる。色もWGとYGで、何となくメンズ・レディースのバリエーションっぽい。つまり、何も知らずに見たら結婚記念のペアウォッチのような……。”
”顧客に見せる着用イメージ写真にでもするのかと思ってたら、いきなり手を握られました。 そして、手を握り合った状態のまま激写された。20枚くらい。”
”同好の士が何人か集まると自慢の時計を着けて集合リストショットを撮るというのは時計界隈では常識的行動なので、全く他意はない。全く。 ごく普通の趣味活動の一環だよ。”
”「この作品は連載中のため、メインヒロインがまだ登場していません。これから読まれる方はご注意ください」”
”@annalise_estbourg_jpn
「突然ですが新作を発表します。これは私が大好きな小説の主人公、リュテス王アントワン3世のファンアートとして作りました。彼の愛用時計をイメージしています。もちろんエストブール(アナリース)のハンドメイド。さぁ皆さん、ご覧下さい!」”
”3枚目はこの新作時計を着けた男性のリストショット。 ただし、その手のひらが女性の手と結びあっているという。 4枚目は新作を着けた男性の腕と小グロワスを着けた女性の腕の集合写真。”
”ちらもエストブール(アナリース)ブランドなのでデザインの方向性はケース、文字盤ともに統一されてる。色もWGとYGで、何となくメンズ・レディースのバリエーションっぽい。つまり、何も知らずに見たら結婚記念のペアウォッチのような……。”
”顧客に見せる着用イメージ写真にでもするのかと思ってたら、いきなり手を握られました。 そして、手を握り合った状態のまま激写された。20枚くらい。”
”同好の士が何人か集まると自慢の時計を着けて集合リストショットを撮るというのは時計界隈では常識的行動なので、全く他意はない。全く。 ごく普通の趣味活動の一環だよ。”
”「この作品は連載中のため、メインヒロインがまだ登場していません。これから読まれる方はご注意ください」”
モデル由理・レスパンのアカウント(44)
フォロー数200万オーバー。
”ぼくは「ほうれん草さん」を悲しませたことが申し訳なくて情けなくて、いつも泣きそうになったよ。”
”そんな、まことに卑小な人間が、謎のモテ期を迎えようとしている。”
”ぼくの現し身であるアントワン3世もまた、ヒロインたちに好かれるようになりやがった。こいつ……。”
”でもね、残念なことに彼は”ぼく”なので、ぼくと同じ懊悩に心をさいなまれることになる。残念でした!”
”なのにヒロインたちがさ、全然仕事しない!
みんなして妙に張り切ってる。”
人気急落中の『地に落ちて死なば』への由理の感想(41)
ぼくが王とは別の男にヒロインたちをあてがおうとした結果、読者人気は低迷していたが、ヒロインに興味のない由理はひたすらアントワン3世の心内描写について論文めいた長文ポストを繰り返し、時折「王には心を許せる平民の友が必要!」みたいなことを主張した。
出版社からの怒られを心配するぼくへの由理の返答(37)
”『おれの自由を制限する権利は誰にもありません。決して、誰にも』”
”『ビジネスはおれの人権の上位に来るものですか?』”
”『ビジネスはおれの人権の上位に来るものですか?』”
由理による『地に落ちて死なば』への言及(34)
由理、無言URLポストに引き続き30連投でぼくの小説に言及。RTが5000を超えた。
”というのも、今も手に持ったスマホが震えてね、ちょっとだけ文字がブレる。”
” 自分が書いた小説が、フォロワー10万人を越える有名作家にネット上で公開処刑されてるんだから。”
” ふわっとぼかして思わせぶりなコメントとかじゃない。ぼくの作品『地に落ちて死なば』をはっきりと名指しで。”
” ユリスさん、というか由理くん、投稿30連投とかしてるんだけど……。スクロールしてもしても延々続いてる。論文かな? リアルタイムでリポストといいねの数字がガンガン増えていくのを目視できるのはちょっと面白い。リポストが5000とか行くことあるんだね。感動する。”
”というのも、今も手に持ったスマホが震えてね、ちょっとだけ文字がブレる。”
” 自分が書いた小説が、フォロワー10万人を越える有名作家にネット上で公開処刑されてるんだから。”
” ふわっとぼかして思わせぶりなコメントとかじゃない。ぼくの作品『地に落ちて死なば』をはっきりと名指しで。”
” ユリスさん、というか由理くん、投稿30連投とかしてるんだけど……。スクロールしてもしても延々続いてる。論文かな? リアルタイムでリポストといいねの数字がガンガン増えていくのを目視できるのはちょっと面白い。リポストが5000とか行くことあるんだね。感動する。”
由理のファン公言に対する感想ポスト(44)
殺意の波動を感じるポストが散見される。
”「このお話はフランスに近い世界が舞台ですけど、史実と違って大領出身のお妃様が有能なので革命は起こらないはず。であれば、このユニウスさんの末路も決まってしまいましたね。ああ、おかわいそう! おかわいそうなユニウスさん! 王に対する不敬は死をもって償われなければなりませんから!」”
”「陛下を罵る不敬な口は、いっそ縫い付けてしまいましょうか」”
由理の地に落ちて死なばコスプレ(44)
”リアルクローズ姿が多い彼には珍しく時代がかったフロックコートを着て、胸元を白い大ぶりなチーフで飾ったもの。長い金髪をなびかせて、ちょっと斜め上方を見上げる感じのポーズ。彫りの深い西欧的な顔立ちが装いとマッチして超カッコいい。”
” #最近大はまり #地に落ちて死なば #ユニウス #コスプレ #読書”
”一日で画像が消える例のシステム(ストーリーなんとか)も見てみた。そこには全身画像でね。「おれが今一番演じたいキャラ!」とか台詞付いてるわけです。”
ぼくが用意した2種類の楽しみ方(32)
”つまりぼくは2種類の楽しみ方を提供した。 外側の筋を追う楽しみと内側の筋を見る楽しみ。両者に上下はない。 メニューを増やした感じだろうか。醤油ラーメンと味噌ラーメンみたいな。店主であるぼくはどちらもお薦めしたい。両方食べて両方好きになってくれるのが理想だけど高望みはしない。片方でも好きになってくれればそれだけで最高の気分だよ。”
ぼくが許容できる「フィクション」(32)
”フィクションといえば、自殺した人間が他所の世界に転生するという前提がそもそもありえないこと(たぶんね。確認したわけではないので断言は出来ない)だし、細かい部分のご都合主義も山のように積み上げてきた。でもそれは全部物語装置に過ぎない。核心ではない。”
ぼくによる二者の比較(32)
由理の華麗な戦記、内政ものに対して、ぼくのそれは人の心理を描いた劇。
”『この人を見よ』は華麗な戦記、内政もの。世界の変化を書いてる。主人公が強靱な意志で世界を能動的に塗りつぶしていく話。 ぼくのお話は延々数人の人物がじめっとした会話を繰り返す、人の心理を描いた劇だ。その結果世界が変化することはあるけど、それはあくまでも(作中における)偶然の帰結に過ぎない。究極的には受動的な話だ。 一言で言えば、『この人を見よ』のグロワス13世は世界を変え、ぼくのアントワン3世は世界に耐える。”
”『この人を見よ』は華麗な戦記、内政もの。世界の変化を書いてる。主人公が強靱な意志で世界を能動的に塗りつぶしていく話。 ぼくのお話は延々数人の人物がじめっとした会話を繰り返す、人の心理を描いた劇だ。その結果世界が変化することはあるけど、それはあくまでも(作中における)偶然の帰結に過ぎない。究極的には受動的な話だ。 一言で言えば、『この人を見よ』のグロワス13世は世界を変え、ぼくのアントワン3世は世界に耐える。”
ぼくのタイムラインの選好(44)
美青年ではなく時計やかわいい動物が見たい。
”ぼくが見たいのは美青年ではなく時計なんだ。あと最近は羊と犬と猫とペンギン。最新のマイブームはアルパカ。 タイムラインは「時計、時計、猫、犬、時計、時計、羊、ペンギン」みたいな感じだよ。そういえば、SNSのアルゴリズムが気を利かせたのか「動物好きのあなたはこんなのも好きでしょ?」ってアザラシの動画とか出してきたときは困ったな。氷山に取り残されたアザラシを狩るシャチのやつ。なんとかジオグラフィックとかBBCとかが撮ったワイルドアニマルのやつ。超怖いので即「この投稿に興味ありません」ボタンを押したね。”
ぼくの出版と挫折(23)
大学時代にぼくが書いた小説が雑誌掲載をへて大手出版社から出版された。いわゆる「純文学」に属する幻想的な話。ささいな切っ掛けから子羊をもらい受けた青年が、1人と1匹当て所ない旅をする。ぼくは狂喜したが、全く評判を呼ばず、売れなかった。
”彼が小説を書いていることは中学時代から話に聞いていたが、それが雑誌に掲載されたという。そこからトントン拍子で依頼が来て、大手出版社から出版が決まった。雑誌に掲載された短編を加筆して一冊の本に仕上げたものだ”
”彼女は青年の歓喜を間近で見た。混じりけ無しの歓喜を。 茉莉にとってもメアリにとってもそれは初めて見る姿であった。 普段落ち着いた態度を崩すことがほとんどない彼は浮かれてこんな軽口を叩きさえした。「最初のサイン本は茉莉にあげよう! オークションで売るなよ?”
”少女は男の言いつけを忠実に守った。彼女は渡された本——サインというよりも署名というべき楷書体で彼の名前が1頁目に記された——を決して売りはしなかった。 しかし客観的に見る限り、売らないという行為を彼女の手柄とするのは難しい。 需要が存在しなかっただけなのだから。 男の本は全く評判を呼ばず、本は全く売れなかった。”
”「小説家にはなれそうもない。ままならないね」 そう苦笑交じりに語る男の姿を彼女は見た。 茉莉にとっては初めて見る「大人の男の挫折」である。そしてメアリにとっては見慣れたもの。夫が20年に及ぶ治世の中で積上げた数多くの挫折。その度に彼は言った。「ああ、ままならないものだよ」”
”だから彼女は勇気を出して言った。 黙ったまま時を過ごすことだけはしたくない。そう感じたのだ。女がかつてしたように。 10数年に渡り何も言わなかったことへの報いを受けた思い出が、女に勇気を授けた。”
”「私は好きです。兄さんの本」「茉莉はおれの大切な読者だ。だからその、聞いていいかな。どこが良かったか」「私は好きです。……羊が。かわいかったです」”
”彼は少し大げさに笑い、やがて真顔に戻って答えた。「ああ、それはうれしいな。おれの大切な子どもを、好きと言ってくれた。その言葉に救われたよ。茉莉はおれを救ってくれた」”
”茉莉は無知ゆえに、メアリは知りすぎるがゆえに、言葉は無力であった。”
”彼が小説を書いていることは中学時代から話に聞いていたが、それが雑誌に掲載されたという。そこからトントン拍子で依頼が来て、大手出版社から出版が決まった。雑誌に掲載された短編を加筆して一冊の本に仕上げたものだ”
”彼女は青年の歓喜を間近で見た。混じりけ無しの歓喜を。 茉莉にとってもメアリにとってもそれは初めて見る姿であった。 普段落ち着いた態度を崩すことがほとんどない彼は浮かれてこんな軽口を叩きさえした。「最初のサイン本は茉莉にあげよう! オークションで売るなよ?”
”少女は男の言いつけを忠実に守った。彼女は渡された本——サインというよりも署名というべき楷書体で彼の名前が1頁目に記された——を決して売りはしなかった。 しかし客観的に見る限り、売らないという行為を彼女の手柄とするのは難しい。 需要が存在しなかっただけなのだから。 男の本は全く評判を呼ばず、本は全く売れなかった。”
”「小説家にはなれそうもない。ままならないね」 そう苦笑交じりに語る男の姿を彼女は見た。 茉莉にとっては初めて見る「大人の男の挫折」である。そしてメアリにとっては見慣れたもの。夫が20年に及ぶ治世の中で積上げた数多くの挫折。その度に彼は言った。「ああ、ままならないものだよ」”
”だから彼女は勇気を出して言った。 黙ったまま時を過ごすことだけはしたくない。そう感じたのだ。女がかつてしたように。 10数年に渡り何も言わなかったことへの報いを受けた思い出が、女に勇気を授けた。”
”「私は好きです。兄さんの本」「茉莉はおれの大切な読者だ。だからその、聞いていいかな。どこが良かったか」「私は好きです。……羊が。かわいかったです」”
”彼は少し大げさに笑い、やがて真顔に戻って答えた。「ああ、それはうれしいな。おれの大切な子どもを、好きと言ってくれた。その言葉に救われたよ。茉莉はおれを救ってくれた」”
”茉莉は無知ゆえに、メアリは知りすぎるがゆえに、言葉は無力であった。”
ぼくの出版経験(12)
大学ゆかりの純文学雑誌に載せた短編が大手出版の目にとまり、大学卒業直後に1冊の本を出版。有頂天になったぼくは小説の書き方をレスパンに自慢していた。国会図書館に収蔵されたがおそらく鳴かず飛ばず。続巻は出せなかった。
” 有頂天とはまさに、あの時のぼくの心情を表す言葉だ。世界の全てが輝いていた。 編集さんは褒めてくれて、売れたら——いや、たとえ売れなくても何冊かは面倒を見てくれるという。「すごい才能だ」って。 結果はご想像の通り。 ぼくは希有の体験をした。国会図書館にぼくの本が収蔵されたんだ。 それ以外は何もない。何も。”(12)
”だから由理くんに偉そうに教えたんだよ。「小説はこう書くんだぞ!」って。”(12)
”だから由理くんに偉そうに教えたんだよ。「小説はこう書くんだぞ!」って。”(12)
ぼくの小説15話時点(32)
徐々に固定読者が増え始め、コメントが増える。ぼくは嬉しさのあまり長文レスをしそうになった。
”総合評価 102pt 評価者数 8人 ブックマーク 15件”
”3桁。ああ3桁。 見てほしい。評価者が8人。ブックマークはなんと15件だ。聞いてほしい。本当に聞いてほしい。”
”ぼくのこのお話は15人の頭の中に滑り込んだ。そしてこれからも滑り込み続ける。 なんと偉大なことだろう。”
”一行感想に2000字近い返信とかあまりにもアレだ。だから堪えた。でも内に渦巻くパッションは消えない。”
”総合評価 102pt 評価者数 8人 ブックマーク 15件”
”3桁。ああ3桁。 見てほしい。評価者が8人。ブックマークはなんと15件だ。聞いてほしい。本当に聞いてほしい。”
”ぼくのこのお話は15人の頭の中に滑り込んだ。そしてこれからも滑り込み続ける。 なんと偉大なことだろう。”
”一行感想に2000字近い返信とかあまりにもアレだ。だから堪えた。でも内に渦巻くパッションは消えない。”
ぼくの小説の完了予定(30)
『暗君』よりだいぶ短い。お話の終わりに自分の人生の終わりを重ねている気配で不穏。
””物語”は大体50〜60話くらいで完結を予定している。だから最大で見積もって後50話。 多分今年の冬には終わるだろう。”
”ゃんと終わらせることには意味があるよ。物語は始まった以上必ず終わるものだから。生み出した以上、あるいは産み落とされた以上、終わらせること、終わることは使命だ。 できる限り、美しく。”
””物語”は大体50〜60話くらいで完結を予定している。だから最大で見積もって後50話。 多分今年の冬には終わるだろう。”
”ゃんと終わらせることには意味があるよ。物語は始まった以上必ず終わるものだから。生み出した以上、あるいは産み落とされた以上、終わらせること、終わることは使命だ。 できる限り、美しく。”
ぼくの小説の近況(34)
”総合ポイントはありがたいことに1000間近。つい数日前まで100くらいだったんだけどね。1000は凄いとはいえ、有名作品は50000、100000が当たり前”
”そんな日陰のお話が、なぜか『この人を見よ』の作者に文字通り狂ったように名指しで叩かれている。そして、知る人ぞ知る超高級時計ブランドから新作をファンアートとして(写真を)送られてる。 なんだこれ……。”
”そんな日陰のお話が、なぜか『この人を見よ』の作者に文字通り狂ったように名指しで叩かれている。そして、知る人ぞ知る超高級時計ブランドから新作をファンアートとして(写真を)送られてる。 なんだこれ……。”
ぼくの書きたい真実(32)
”ぼくが書きたいのは人と人との関係なんだ。 人の心がどれほどに複雑で、矛盾していて、自己欺瞞に満ちて——そして美しいか。 それを描きたいと思っている。 だからこそ、あえて地味な心内描写を延々続ける。”
ぼくの物語のビュー推移(28)
5話までまとめて投稿。翌朝時点では評価・ブックマークともにゼロ。8PV。
”ぼくには1人か2人の読者がいるぞ。このぼくには。 つまり、ぼくの精神が生み出したものが、顔も名前も知れぬ誰かの脳裏に踏み入ったんだ。 ぼくの話が!
——これはなんと幸せで、偉大なことではないだろうか。ぼくの物語が生きるということは。”
”ぼくには1人か2人の読者がいるぞ。このぼくには。 つまり、ぼくの精神が生み出したものが、顔も名前も知れぬ誰かの脳裏に踏み入ったんだ。 ぼくの話が!
——これはなんと幸せで、偉大なことではないだろうか。ぼくの物語が生きるということは。”
ぼくの物語の内容(28)
徹頭徹尾地味な一種の思考実験。
”基本構造はよくある「近世ヨーロッパ風異世界で王様になる」というものなんだけど、徹頭徹尾地味。 というかね、本当のことをいうと一種の思考実験なんだよね。 地方の中小企業1つ背負いきれなかった男が、いきなりその何百倍も何千倍も巨大で、かつ現代の常識が通用しない世界に責任ある立場として放り込まれたらどうなるか、という。”
”あらすじにも書いたとおり、王様は無能——当たり前だよね。現代日本人が近世ヨーロッパっぽい謎ワールドに放り込まれて何が出来る?——だから、毎日よく分からない話に引きずり回されて、どうしよう? どうしよう? って右往左往する。”
”それを表面的には優しく献身的な二人の美貌の姫がサポートしてくれるわけです。内心の侮蔑を隠しながら。”
”基本構造はよくある「近世ヨーロッパ風異世界で王様になる」というものなんだけど、徹頭徹尾地味。 というかね、本当のことをいうと一種の思考実験なんだよね。 地方の中小企業1つ背負いきれなかった男が、いきなりその何百倍も何千倍も巨大で、かつ現代の常識が通用しない世界に責任ある立場として放り込まれたらどうなるか、という。”
”あらすじにも書いたとおり、王様は無能——当たり前だよね。現代日本人が近世ヨーロッパっぽい謎ワールドに放り込まれて何が出来る?——だから、毎日よく分からない話に引きずり回されて、どうしよう? どうしよう? って右往左往する。”
”それを表面的には優しく献身的な二人の美貌の姫がサポートしてくれるわけです。内心の侮蔑を隠しながら。”
ぼくの物語の見た目と内容(32)
”表面的にはタイプの違う2人の美女から慕われる主人公だ。 肝心の仕事の方も、彼は何もしていないのにそこそこいい結果——まだ破滅していないというのは十分に素晴らしい成果だからね——を出していて、「あれ? 実は自己評価が低いだけで有能なヤツでは?」と思ってもらえる雰囲気すらある。 でも一皮剥けば結構グロテスク。”
創作だから主人公はモテた方がいい(30)
ぼくの書き始めた物語と、『暗君』の差異について。この物語では王と二人は結ばれないとの一節。全然展開が別の可能性があるとも、正妃がアナリゼであるから結ばれるわけでないと言えばそうともいえる。
”誠に残念なことに、この物語において王と二人が結ばれることはない”
”ブリューベルさんもジャスミナさんもちょっとだけ王に関心を向けるようにした。いわゆる「勘違いもの」的な。駄目なヤツに見えるけど実は? みたいなフレーバーを挟んでいく。あ、ただしこの話は「勘違いもの」ではないので、実際は純然たる二人の勘違いです。”
”誠に残念なことに、この物語において王と二人が結ばれることはない”
”ブリューベルさんもジャスミナさんもちょっとだけ王に関心を向けるようにした。いわゆる「勘違いもの」的な。駄目なヤツに見えるけど実は? みたいなフレーバーを挟んでいく。あ、ただしこの話は「勘違いもの」ではないので、実際は純然たる二人の勘違いです。”
PV10000越え(32)
由理によって貼られたリンクが原因。由理のSNSにリンクのみ貼られていたため、由理がお冠だと思い込んだ彼のファンは大挙してぼくの小説感想欄に訪れ、批判コメントを書き込んだ。
”PVが10000を超えた。 突如。”
”「ノベルライターになろう」のアクセス解析ページには、時間毎のPVを見られるところがあるんだ。それがね、毎時間400以上。 これまでは1日の最大が1000。通常で300。1日だよ? それが通常1日分のPVを1時間で超える。”
”フォロワー数10万を優に超える大ベストセラー作家が、総合評価ポイント500にも満たない1アマチュアが書いたウェブ作品のリンクをポストしたんだ。コメントも何もなしで。”
”雰囲気だけで叩く人も多い中で、ありがたいことに内容を読んでくれる人もいる。さらにその中にはぼくのお話を面白いと感じてくれる人もいる。 結果ブックマークもポイントもガンガン増えました。 感想欄? 地獄だよ。 パクリ、パクりじゃないバトルロワイヤルが開催されてる。”
”PVが10000を超えた。 突如。”
”「ノベルライターになろう」のアクセス解析ページには、時間毎のPVを見られるところがあるんだ。それがね、毎時間400以上。 これまでは1日の最大が1000。通常で300。1日だよ? それが通常1日分のPVを1時間で超える。”
”フォロワー数10万を優に超える大ベストセラー作家が、総合評価ポイント500にも満たない1アマチュアが書いたウェブ作品のリンクをポストしたんだ。コメントも何もなしで。”
”雰囲気だけで叩く人も多い中で、ありがたいことに内容を読んでくれる人もいる。さらにその中にはぼくのお話を面白いと感じてくれる人もいる。 結果ブックマークもポイントもガンガン増えました。 感想欄? 地獄だよ。 パクリ、パクりじゃないバトルロワイヤルが開催されてる。”
PV1012(32)
ぼくは続くpvチェックで1012という数字を見て驚愕。ランキングに載ったかと思ったが載っていない。
”昨日までのPVは1日平均40くらいなんだ。それが1012? ちょっとね、本当に意味が分からない。”
”「不条理」を消し去った、ぼくの「理想の世界」。にもかかわらず、それが原因で今度は現実世界のぼくが不条理に襲われている。こんなにも皮肉なことがあるだろうか。”
”昨日までのPVは1日平均40くらいなんだ。それが1012? ちょっとね、本当に意味が分からない。”
”「不条理」を消し去った、ぼくの「理想の世界」。にもかかわらず、それが原因で今度は現実世界のぼくが不条理に襲われている。こんなにも皮肉なことがあるだろうか。”
その後のPV推移(32)
穏やかに増加を続ける。
”読者数は明らかに増えたよ。PVも1000とはいかなくても300くらいは行くようになった。更新した日はね。 感想もちょこちょこもらえるようになったな。”
”読者数は明らかに増えたよ。PVも1000とはいかなくても300くらいは行くようになった。更新した日はね。 感想もちょこちょこもらえるようになったな。”
外部感想掲示板(32)
PV1012の原因。新キャラ、サジェシアがゾフィのパクリ議論で盛り上がっている。由理の作品と比較されている事実にぼくはよろこんだ。
”形式だけ抜き出すと確かに似ている。 さすがにキャラの内面が似ているとかストーリーが同じとか言う人はいなかったのは幸いだった。 で、この難癖というか考察というか、実は本心から心が躍ったよ。なんというか、光栄だった。”
”形式だけ抜き出すと確かに似ている。 さすがにキャラの内面が似ているとかストーリーが同じとか言う人はいなかったのは幸いだった。 で、この難癖というか考察というか、実は本心から心が躍ったよ。なんというか、光栄だった。”
『地に落ちて死なば』(33)
ぼくの物語のタイトル。
”画像下部の左端には小さな文字で作品のタイトルが浮き上がっていた。 黒地に白抜きの、小さな文字で。『地に落ちて死なば』 と。”
”画像下部の左端には小さな文字で作品のタイトルが浮き上がっていた。 黒地に白抜きの、小さな文字で。『地に落ちて死なば』 と。”
『地に落ちて死なば』近況(37)
コメント欄は『この人を見よ』とどちらがすごいかで炎上中。ぼくはうんざりしてあまりチェックしていない。由理は新エピソードごとに考察含みの感想を連投するため火に油。異世界ファンタジーランキングに載ったため、1時間のPV1000越え。海外からも感想が来るようになったが、アナリースの新作発表ポストの件で外国語にトラウマがあるぼくは翻訳に二の足を踏んだ。衆目を集めた結果、ぼくはストレスを感じている。
”ちなみにユリスさん由理くんもよくない。 ひっそりフェイドアウトしてくれればいいのに、ぼくが更新する度に感想を5連投とかするから。毎回。 感想というか、時々解説みたいになってる。「ここの情景描写に○○の心情の暗示がある。冒頭の表現と対になっていて……」みたいな。なんだこれ。”
”諸々あってランキングに載った。「異世界ファンタジー」の。凄いね。載ると1時間のPVが1000を超える。怖いね。”
”感想と言えばなぜか外国の方からも来るようになったよ。翻訳をかけて読んでくれたんだろう。あるいは日本語学習中の方なのかな。いずれにしても凄く光栄なことだ。 ただ、海外の人って母国語でダイレクトアタックしてくる方が多い。特にスペイン語とアラビア語。もう英語にすらせず母語”
”「うちのカルテルは既に動き出している。震えて眠れ」とか書いてあったら嫌でしょ。”
”フランス語もダイレクトに来るね。中でも凄かったのは長文の、18世紀フランスの社会統計とかを延々と解説してくれてるやつ。論文資料(フランス語)紹介も含む。 とてもありがたいし勉強になるんだけど、このお話はリュテス王国という謎ワールドが舞台であって18世紀フランスではないんだ。とてもありがたいんだけど。”
”ぼくは深海から釣り上げられた。 結果何が起こるか。分かるかな。 深海魚って深海の高圧状態に身体が最適化されてるので、急に引き上げられると気圧差で死ぬ。”
”ちなみにユリスさん由理くんもよくない。 ひっそりフェイドアウトしてくれればいいのに、ぼくが更新する度に感想を5連投とかするから。毎回。 感想というか、時々解説みたいになってる。「ここの情景描写に○○の心情の暗示がある。冒頭の表現と対になっていて……」みたいな。なんだこれ。”
”諸々あってランキングに載った。「異世界ファンタジー」の。凄いね。載ると1時間のPVが1000を超える。怖いね。”
”感想と言えばなぜか外国の方からも来るようになったよ。翻訳をかけて読んでくれたんだろう。あるいは日本語学習中の方なのかな。いずれにしても凄く光栄なことだ。 ただ、海外の人って母国語でダイレクトアタックしてくる方が多い。特にスペイン語とアラビア語。もう英語にすらせず母語”
”「うちのカルテルは既に動き出している。震えて眠れ」とか書いてあったら嫌でしょ。”
”フランス語もダイレクトに来るね。中でも凄かったのは長文の、18世紀フランスの社会統計とかを延々と解説してくれてるやつ。論文資料(フランス語)紹介も含む。 とてもありがたいし勉強になるんだけど、このお話はリュテス王国という謎ワールドが舞台であって18世紀フランスではないんだ。とてもありがたいんだけど。”
”ぼくは深海から釣り上げられた。 結果何が起こるか。分かるかな。 深海魚って深海の高圧状態に身体が最適化されてるので、急に引き上げられると気圧差で死ぬ。”
10話まで(30)
原作でいえば暗君とメアリまで書いた。総合評価 12pt 評価者数 2人。PVは一日平均20.”「ちょっと話が後ろ向きだけど、そこそこ読めるので頑張って」みたいな感じ”の感想も届く。
”大体世界の状況を説明し終えて、ヒロインそれぞれの背景を描いたところ。 形式としては主人公アントワン3世の内面独白とヒロイン視点の三人称、そして完全な神の視点としての三人称を織り交ぜる形で書いている。”
”こういう複雑な形式は読み手を混乱させる可能性が高いからあまり採用するべきじゃない。分かってはいるんだけどね。でも出し惜しみはしたくない。”
”アントワン3世はいつもぷるぷるしてる。 状況をなんとなく理解して、これはどうしたものかと頭を抱えてる。”
” リュテス王国は積年の放漫財政で金がない。というか過去には何度かカジュアルにデフォルトしてる。よってその辺りをどうにかするために緊縮財政に舵を切る。 手始めに軍をリストラする。ただこれも主人公が意図的に動いたというよりは、既に周囲が計画していて、彼は王としてその道に進むことを許可するだけなんだ。”
”実際こういうものだから仕方ない。 主人公は”ぼく”だからね。”ぼく”は賢いので、余計な口を挟んでも事態は悪化するだけだって知ってるんだ。賢いので!”
”大体世界の状況を説明し終えて、ヒロインそれぞれの背景を描いたところ。 形式としては主人公アントワン3世の内面独白とヒロイン視点の三人称、そして完全な神の視点としての三人称を織り交ぜる形で書いている。”
”こういう複雑な形式は読み手を混乱させる可能性が高いからあまり採用するべきじゃない。分かってはいるんだけどね。でも出し惜しみはしたくない。”
”アントワン3世はいつもぷるぷるしてる。 状況をなんとなく理解して、これはどうしたものかと頭を抱えてる。”
” リュテス王国は積年の放漫財政で金がない。というか過去には何度かカジュアルにデフォルトしてる。よってその辺りをどうにかするために緊縮財政に舵を切る。 手始めに軍をリストラする。ただこれも主人公が意図的に動いたというよりは、既に周囲が計画していて、彼は王としてその道に進むことを許可するだけなんだ。”
”実際こういうものだから仕方ない。 主人公は”ぼく”だからね。”ぼく”は賢いので、余計な口を挟んでも事態は悪化するだけだって知ってるんだ。賢いので!”
あらすじ判断(33)
由理がぼくの物語のあらすじを読んだ感想。あらすじを見る限り、まともな文章が書けそうだからパクリではなさそう。
”あらすじを見る限り、他者の文章を丸々コピーするタイプの作者ではないのは明らか。単純にあらすじの文章が「普通」だったからだ。ならば本文も「普通」に書けるだろう。”
”あらすじを見る限り、他者の文章を丸々コピーするタイプの作者ではないのは明らか。単純にあらすじの文章が「普通」だったからだ。ならば本文も「普通」に書けるだろう。”
うれし泣き?(28)
ぼくは自分が涙を流していることに気が付いた。
”ぼくは満面の笑みを浮かべている。 そのはずだった。 でも侭ならないね。ぼくは自分の顔の表情一つうまく操ることが出来ない。 実際にはね、泣いていた。 人は辛いときもうれしいときも泣く。 泣かないときもある。ぼくはずっと泣いてなかった。もうずっと。 そして今、泣いている。”
” 一銭にもならない手慰みの物語をネットの片隅にあげて、それが1,2人の見知らぬ人に読まれた。 そのことに対して、明確に、ぼくは泣いている。”
”ぼくは満面の笑みを浮かべている。 そのはずだった。 でも侭ならないね。ぼくは自分の顔の表情一つうまく操ることが出来ない。 実際にはね、泣いていた。 人は辛いときもうれしいときも泣く。 泣かないときもある。ぼくはずっと泣いてなかった。もうずっと。 そして今、泣いている。”
” 一銭にもならない手慰みの物語をネットの片隅にあげて、それが1,2人の見知らぬ人に読まれた。 そのことに対して、明確に、ぼくは泣いている。”
ノベルライターになろう(28)
インターネット小説の世界で最大手の投稿サイト。ぼくが物語を投稿した。『この人を見よ』もここに投稿されていた経緯がある。人気作品は出版社からの声かかりもあるらしい。
”作品が人気になると出版社から「出版しませんか」とお誘いが来ることもあるらしい。”
”だってここだけの話、一般的な枠組みで言えばぼくは元商業作家だからね。全く売れなかったとはいえ1冊本出してるからね。いわばプロだ! ああ、申し訳ないな。プロがアマチュアの世界を荒らしちゃって!”
”作品が人気になると出版社から「出版しませんか」とお誘いが来ることもあるらしい。”
”だってここだけの話、一般的な枠組みで言えばぼくは元商業作家だからね。全く売れなかったとはいえ1冊本出してるからね。いわばプロだ! ああ、申し訳ないな。プロがアマチュアの世界を荒らしちゃって!”
不都合な真実(35)
容姿に優れていると就職に有利。的な大っぴらに言えないが事実であること。
” あ、あともう一つ止とどめがある。これは大っぴらには絶対に言えないことだけど厳然たる事実。 容姿が抜群にいい。”
”絶対に言えないけど。でも、皆薄々気づいている通り、これは結構大きな判断基準になっている。絶対に言えないけど。 ぼく個人としては本当に下らない基準だと思う。ただ、営利企業の代表としてはその効果を十分理解できる。”
” 世の中にはこういうことばっかりが転がってる。恐らく地球上に存在する石ころの数よりも多く。 不都合な真実というやつだ。”
” あ、あともう一つ止とどめがある。これは大っぴらには絶対に言えないことだけど厳然たる事実。 容姿が抜群にいい。”
”絶対に言えないけど。でも、皆薄々気づいている通り、これは結構大きな判断基準になっている。絶対に言えないけど。 ぼく個人としては本当に下らない基準だと思う。ただ、営利企業の代表としてはその効果を十分理解できる。”
” 世の中にはこういうことばっかりが転がってる。恐らく地球上に存在する石ころの数よりも多く。 不都合な真実というやつだ。”
作品トップページあらすじの変更(31)
身バレを防ぐため微調整。ブラッシュアップされている。
”『父の死により地方の造園会社を引き継いだ男は、お飾り社長の無力感に心底嫌気がさして自死を選んだ。 そんな彼が何の因果か異世界に転生し、またお飾り社長(国王)をやるはめに。収支は真っ赤、国内は階級闘争寸前、周囲は敵国ばかり。独身の彼を取り巻く見目麗しの令嬢たちだけが彼の癒やし…のはずもなく。 使える現代知識なし、じんわり近づく革命の気配と始終暗闘ギスギス私生活を乗り切るべく、彼は今日も玉座で物言わぬ置物になる。』”(30)
↓
”『父から会社を引き継いだ一人の男が、自身の無能に耐えかねて死を選んだ。 そんな彼が何の因果か異世界に転生し、またお飾り社長(国王)をやるはめに。収支は真っ赤、国内は階級闘争寸前、周囲は敵国ばかり。独身の彼を取り巻く見目麗しの令嬢たちだけが彼の癒やし…のはずもなく。 使える現代知識なし、じんわり近づく革命の気配と始終暗闘ギスギス私生活を乗り切るべく、彼は今日も玉座で物言わぬ置物になる。』”(31)
”『父の死により地方の造園会社を引き継いだ男は、お飾り社長の無力感に心底嫌気がさして自死を選んだ。 そんな彼が何の因果か異世界に転生し、またお飾り社長(国王)をやるはめに。収支は真っ赤、国内は階級闘争寸前、周囲は敵国ばかり。独身の彼を取り巻く見目麗しの令嬢たちだけが彼の癒やし…のはずもなく。 使える現代知識なし、じんわり近づく革命の気配と始終暗闘ギスギス私生活を乗り切るべく、彼は今日も玉座で物言わぬ置物になる。』”(30)
↓
”『父から会社を引き継いだ一人の男が、自身の無能に耐えかねて死を選んだ。 そんな彼が何の因果か異世界に転生し、またお飾り社長(国王)をやるはめに。収支は真っ赤、国内は階級闘争寸前、周囲は敵国ばかり。独身の彼を取り巻く見目麗しの令嬢たちだけが彼の癒やし…のはずもなく。 使える現代知識なし、じんわり近づく革命の気配と始終暗闘ギスギス私生活を乗り切るべく、彼は今日も玉座で物言わぬ置物になる。』”(31)
例のweb小説(14)
ワイドショーなのかニュースなのか分からない夕方のテレビ情報番組で世間で話題のトピックとして紹介される。累計100万部を超える大ベストセラー。この秋アニメになる。
” 父親の悪行に気づき、自分は主人公に相応しくないと意気消沈する彼女を王様が抱きしめるんだ。父親なんか関係ない。きみはきみだ。って。”(14)
” カッコいいね。こういう逞しい男にぼくもなりたかった。でも残念なことになれそうもない。”(14)
”もしぼくが主人公グロワス13世だったら、ヒロインを抱きしめるその腕はきっとぶるぶる震えていただろう。だって、他者の全存在を引き受けることほどに怖い状況はないからね。”(14)
”画面を見やる彼女。その横顔はぞっとするほどに酷薄な色を湛えていたんだ。まるでなにか、心底侮蔑に値するものを見たような。”(14)
” 父親の悪行に気づき、自分は主人公に相応しくないと意気消沈する彼女を王様が抱きしめるんだ。父親なんか関係ない。きみはきみだ。って。”(14)
” カッコいいね。こういう逞しい男にぼくもなりたかった。でも残念なことになれそうもない。”(14)
”もしぼくが主人公グロワス13世だったら、ヒロインを抱きしめるその腕はきっとぶるぶる震えていただろう。だって、他者の全存在を引き受けることほどに怖い状況はないからね。”(14)
”画面を見やる彼女。その横顔はぞっとするほどに酷薄な色を湛えていたんだ。まるでなにか、心底侮蔑に値するものを見たような。”(14)
小説への解釈(29)
解釈違いという説明をうけてぼくが何かを思い出す。『リチャードと羊へ』の茉莉の感想についてか。
”マイナーな小説1つとっても読者の感想は千差万別。皆色々な解釈をしますから……本当に。”
”何かを思い出すように遠い眼で屋外を眺める男の横顔を、知子は静かに観察する。やがて彼は重ねて問いを発した。”
”マイナーな小説1つとっても読者の感想は千差万別。皆色々な解釈をしますから……本当に。”
”何かを思い出すように遠い眼で屋外を眺める男の横顔を、知子は静かに観察する。やがて彼は重ねて問いを発した。”
精神の嘔吐(30)
何かを書くことで心をいやすこと。
”アリストテレスじゃないけど、書くことは精神の嘔吐だ。吐いたらすっきりするのは当然。なんでぼくはこんな単純な解決策に気づかなかったんだろう!”
”そんなわけないよね。 少なくともぼくの場合、断じてすっきりしない。”
”ぼくは大体泥酔状態で書いてるんだ。だから、文章を書く書かない以前に思考のほとんどが霞がかっている。つまりあまり意味がない。”
”一つは何かを遺すためだろう。何でもいいから自分が存在した痕跡を。物体ではなく概念を。物質の世界ではなく精神の世界に。”
”きっと明確なゴールが欲しいんだろう。踏ん切りとでもいうべきか。 ちゃんと終わらせることには意味があるよ。物語は始まった以上必ず終わるものだから。生み出した以上、あるいは産み落とされた以上、終わらせること、終わることは使命だ。 できる限り、美しく。”
”アリストテレスじゃないけど、書くことは精神の嘔吐だ。吐いたらすっきりするのは当然。なんでぼくはこんな単純な解決策に気づかなかったんだろう!”
”そんなわけないよね。 少なくともぼくの場合、断じてすっきりしない。”
”ぼくは大体泥酔状態で書いてるんだ。だから、文章を書く書かない以前に思考のほとんどが霞がかっている。つまりあまり意味がない。”
”一つは何かを遺すためだろう。何でもいいから自分が存在した痕跡を。物体ではなく概念を。物質の世界ではなく精神の世界に。”
”きっと明確なゴールが欲しいんだろう。踏ん切りとでもいうべきか。 ちゃんと終わらせることには意味があるよ。物語は始まった以上必ず終わるものだから。生み出した以上、あるいは産み落とされた以上、終わらせること、終わることは使命だ。 できる限り、美しく。”
自立した存在としての作品(34)
ぼくによる長文ポスト返信。投稿用SNSアカウントを持たないので、投稿サイトの作者近況欄に投稿された。ぼくは歴史や文化に左右されない、どのような状況においても唯一普遍なもの、「存在すること」を描こうとしている。おそらくそれは由理がいうところのグロテスクで醜悪な状況を描くことになるだろう。
”私は自作を、何らかの目的を達成するための「道具」とは考えません。それは一個の自立した「存在」であろうと考えます。その存在は存在する以上、必然的に他者——読者に何らかの影響を与えることでしょう。その事象を私はとても好ましく、望ましく思いますが、それは結局の所、偶然がもたらした「結果」に過ぎないのです。”
”「偉大さを触発する作品」は稀な存在です。稀な存在が貴重であるがゆえに何らかの価値を持つことは事実ですが、一方でそれに「のみ」価値を置くことは選ばれた者の傲慢と感じられます”
”偉大、卑小という、歴史的、文化的文脈においていかようにも変化しうる価値観ではなく、どのような状況においても唯一普遍であるところのもの、「存在すること」を描こうと望みます。”
”私は「書くこと」自体に価値を見出します。ただ書き、作る。書かれたものは作品として「存在」になるでしょう。究極的なところでは「内容」は重要ではありません。よって、内容はこうあるべき、との主張もありません。”
”存在は我々の生の前提をなす状態であり、普段意識されることはありません。よって、その前提が常に脅かされるシチュエーションにあってのみ、我々はそれを意識することができます。誰しもが平等に持つ唯一のものである「存在」と、それに耐える人間の姿を私は描きたいと思います。それこそが全ての人にとって開かれた、唯一の普遍的なものであると感じるからです。”
”私は「存在に耐えること」を内容とした作品=存在を創り出します。そして、出来上がった作品=存在が何らかの形で読者の精神の中に生き残ることを願います。ただし、自身の作品=存在がどのような影響を他者に与えるかは私の関知するところではありません。こうなってほしいという望みはもちろんありますが、それはあくまでも私の個人的な願望に過ぎません。”
” ゆえに私は今後も、ユリス氏が評するところの「グロテスクで醜悪な状況」を書き続けるでしょう。無意味なものを、無目的に。”
”『この人を見よ』は選ばれたごく一握りの人が書いた、選ばれたごく一握りの人のための物語でうs。その他大勢の我々は観衆として英雄の姿に心躍らせ、楽しみます。そして恐らく憧れを抱くでしょう”
”『地に落ちて死なば』は普通の人が書いた、普通の人のための物語です。非凡な状況に放り込まれた凡人の姿に何を感じるかは読者の皆さん次第です。”
”生み出されたのち「作品」は自立して「存在」するのですから。作者が口を出すことではありません。”
”私は自作を、何らかの目的を達成するための「道具」とは考えません。それは一個の自立した「存在」であろうと考えます。その存在は存在する以上、必然的に他者——読者に何らかの影響を与えることでしょう。その事象を私はとても好ましく、望ましく思いますが、それは結局の所、偶然がもたらした「結果」に過ぎないのです。”
”「偉大さを触発する作品」は稀な存在です。稀な存在が貴重であるがゆえに何らかの価値を持つことは事実ですが、一方でそれに「のみ」価値を置くことは選ばれた者の傲慢と感じられます”
”偉大、卑小という、歴史的、文化的文脈においていかようにも変化しうる価値観ではなく、どのような状況においても唯一普遍であるところのもの、「存在すること」を描こうと望みます。”
”私は「書くこと」自体に価値を見出します。ただ書き、作る。書かれたものは作品として「存在」になるでしょう。究極的なところでは「内容」は重要ではありません。よって、内容はこうあるべき、との主張もありません。”
”存在は我々の生の前提をなす状態であり、普段意識されることはありません。よって、その前提が常に脅かされるシチュエーションにあってのみ、我々はそれを意識することができます。誰しもが平等に持つ唯一のものである「存在」と、それに耐える人間の姿を私は描きたいと思います。それこそが全ての人にとって開かれた、唯一の普遍的なものであると感じるからです。”
”私は「存在に耐えること」を内容とした作品=存在を創り出します。そして、出来上がった作品=存在が何らかの形で読者の精神の中に生き残ることを願います。ただし、自身の作品=存在がどのような影響を他者に与えるかは私の関知するところではありません。こうなってほしいという望みはもちろんありますが、それはあくまでも私の個人的な願望に過ぎません。”
” ゆえに私は今後も、ユリス氏が評するところの「グロテスクで醜悪な状況」を書き続けるでしょう。無意味なものを、無目的に。”
”『この人を見よ』は選ばれたごく一握りの人が書いた、選ばれたごく一握りの人のための物語でうs。その他大勢の我々は観衆として英雄の姿に心躍らせ、楽しみます。そして恐らく憧れを抱くでしょう”
”『地に落ちて死なば』は普通の人が書いた、普通の人のための物語です。非凡な状況に放り込まれた凡人の姿に何を感じるかは読者の皆さん次第です。”
”生み出されたのち「作品」は自立して「存在」するのですから。作者が口を出すことではありません。”
解釈違い(29)
会食での口論の原因を尋ねられた知子は、解釈違いが高じてと説明。彼女らもまた登場人物であるため全くの嘘ではない。
”無理はあるがこの口実で押し通す以外に道はない。 自分たちが「物語の登場人物そのもの」であると公言したところで精神状態を疑われるのが関の山だ。しかもあの場に居た青佳ブラウネやアナリースアナリゼ、茉莉メアリも同じとなれば集団幻覚としか表現しようのない状況となる。 よって”解釈違い”の筋書きで誤魔化すしかない。だが、完全な嘘で彼を騙すわけでもない。自分はゾフィであると同時に知子なのだ。他の皆も同様に。よって登場人物そのものではありえない。”
”無理はあるがこの口実で押し通す以外に道はない。 自分たちが「物語の登場人物そのもの」であると公言したところで精神状態を疑われるのが関の山だ。しかもあの場に居た青佳ブラウネやアナリースアナリゼ、茉莉メアリも同じとなれば集団幻覚としか表現しようのない状況となる。 よって”解釈違い”の筋書きで誤魔化すしかない。だが、完全な嘘で彼を騙すわけでもない。自分はゾフィであると同時に知子なのだ。他の皆も同様に。よって登場人物そのものではありえない。”
記録(33)
ぼくの物語を読んだ由理の評価。物語文ではなく観察文である。目的がなく、語るべきものを何一つ持たない。肉があって骨がない。
”もはや物語ではない。記録だ。 彼は単純にそう理解した。 この作品は何一つ語らない。語るべき物を。”
” ただ状態だけがある。 重責に押しつぶされ、他者に怯える矮小な人間の日常記録。”
”そこには目的がない。 生き延びること自体が目的であるのならば理解できる。よくあるサバイバルもの。だが、この作品の主人公にとって自身の生存すら窮極の目的とはなりえない。なぜなら、彼は冒頭ですでに一度死んでいるのだ。つまり徹頭徹尾、何もない。”
”小説の形態をとっている以上、話の筋に多少の起伏はある。 だが骨の部分が歪。より正確に言えば「骨がない」。”
”この著者は明らかに十分な能力を備えている。文庫本1冊分の文章を一気に読ませるだけの。そしてなによりも、由理に物語の書き方を教えたのが、まさにこの著者先輩なのだ。 よって、この作品はこう在るように意図して書かれたものだ。”
”彼は読んでいるのではない。読まされている。 理由も分からぬままに。”
”「不条理が存在しない場所があるならば、私はぜひとも移住したい。たとえそこが地獄であっても気にしないよ。灼熱した血の海も心地よい温泉みたいなものだからね。意味の不在(不条理)に比べれば」”
”もはや物語ではない。記録だ。 彼は単純にそう理解した。 この作品は何一つ語らない。語るべき物を。”
” ただ状態だけがある。 重責に押しつぶされ、他者に怯える矮小な人間の日常記録。”
”そこには目的がない。 生き延びること自体が目的であるのならば理解できる。よくあるサバイバルもの。だが、この作品の主人公にとって自身の生存すら窮極の目的とはなりえない。なぜなら、彼は冒頭ですでに一度死んでいるのだ。つまり徹頭徹尾、何もない。”
”小説の形態をとっている以上、話の筋に多少の起伏はある。 だが骨の部分が歪。より正確に言えば「骨がない」。”
”この著者は明らかに十分な能力を備えている。文庫本1冊分の文章を一気に読ませるだけの。そしてなによりも、由理に物語の書き方を教えたのが、まさにこの著者先輩なのだ。 よって、この作品はこう在るように意図して書かれたものだ。”
”彼は読んでいるのではない。読まされている。 理由も分からぬままに。”
”「不条理が存在しない場所があるならば、私はぜひとも移住したい。たとえそこが地獄であっても気にしないよ。灼熱した血の海も心地よい温泉みたいなものだからね。意味の不在(不条理)に比べれば」”
時計とブランド/時計・機構・時計産業
| 項目 | 話数 |
|---|---|
| アナリースの新作時計(34) | 34 |
| アナリースの時計(小グロワス)(8) | 8 |
| 知子の腕時計(39) | 39 |
| ぼくと時計の歴史(31) | 31 |
| ぼくの好きな時計(26) | 26 |
| ぼくの普段使いの腕時計(12) | 12 |
| グロワス13世と時計(19) | 19 |
| 小グロワス(8) | 8 |
| 『東京カレンダー』(3) | 3 |
| コンプリートカレンダー(19) | 19 |
| トゥールビヨン(19) | 19 |
| ドイツの時計産業(8) | 8 |
| ドライブでのふたりの時計(38) | 38 |
| ブティックで見せてもらった時計(19) | 19 |
| 加賀巌の時計(26) | 26 |
| 時計(7) | 7 |
| 時計のリセール率(30) | 30 |
| 時計業界では知らぬもののないビッグネーム(9) | 9 |
| 時計界の公用語(7) | 7 |
| 時計趣味(7) | 7 |
| 最新話の時計の機構説明(42) | 42 |
| 有名時計ジャーナリスト(7) | 7 |
| 某時計店のイベント(6) | 6 |
| 比較的安価な機械式時計(8) | 8 |
| 腕時計のフランス語(8) | 8 |
| 金無垢の腕時計(40) | 40 |
| 銀座時計店巡回ツアー(3) | 3 |
| エボーシュ(9) | 9 |
| オートワインダー(36) | 36 |
| マジックレバー(41) | 41 |
| ロレックス(7) | 7 |
アナリースの新作時計(34)
小グロワスのムーブメントを流用した一回り大きいメンズ向け時計。ぼくの作品のファンアートとしてアナリースが発表した。銀の36mm径三針スモールセコンド。手巻きで裏から機構が見える。4桁万円近いと推測。ぼくとのリストショットと共に発表され、国際色豊かでどことなく背筋が冷えるリプライがたくさんついた。
” 1枚目は銀の36mm径三針スモールセコンドの時計の全体写真。 小グロワスが34mmなので、機械はそのままにケースを一回り大きくして素材をYGイエローゴールドからWGホワイトゴールドに変えたバリエーションになる。”
”機械を流用しているので、針位置のバランス調整のために文字盤のデザインには手を入れてある。スモールセコンドの位置が比較的中心に寄ってしまうのを目立たなくするため、各アワーマーカーを伸ばして外周を狭める視覚的効果を作りだしていた。
繊細で華奢な小グロワスに比して、新しい方は巨大化したサイズと若干存在感を増したアワーマーカーが時計全体の「メンズっぽさ」を強調している感じだね。”
”手巻きだから自動巻き用のローターもなく、各所の仕上げを鮮明に観察することができる。”
”ファンアートって、普通イラストとかマンガとかそういうのだよね。 それが作中で大した描写もされていない時計。しかも、国産クオーツの文字盤色をちょっと弄ったセミオーダーとかではなく、正真正銘のワンオフ工芸品。4桁万円近くする。 要するに、かなり前から(アナリースブランドの)新作として製作していた作品を「ファンアート」として提供した形になる。”
”英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語。アラビア語。国際色豊か。 突如発表された新作ゆえ、凄い数のコメントが付いてる。”
(スペイン語)”「とても素晴らしい時計に美しい腕だね! ところで、さっき部下に日本出張を命じておいたよ。写真の”余計な部分”を切り落としてくるようにって! lol」”
”なんかぶっとい葉巻銜えて金のネックレスした南米系の日焼けしたおじさん(上半身裸・刺青入り)の自撮りが映ってたりする。ダイヤで装飾された銃の写真とかアップしてる系の。白い粉を販売されてる団体の代表の方ですかね。”
”「”いらない部分”はうちの子が平らげてくれるだろう! HAHA」”
(アラビア語)”砂漠を背景にターバンと白い長衣を身にまとった恰幅のいいひげ面のおじさんとかがコメントしてる。おじさんの足下にお座りしてるうちの子とやらはちょっと大きめの可愛い猫でした。茶と黒の斑点模様で、やたら眼光の鋭い感じの、人間の腰よりも背が高い猫。生肉が好物っぽい。”
”時計界隈なので嫌なリアリティがあって若干怖い。普通にそういう人たちがメイン顧客になる世界なので。”
”「は?」”
” 1枚目は銀の36mm径三針スモールセコンドの時計の全体写真。 小グロワスが34mmなので、機械はそのままにケースを一回り大きくして素材をYGイエローゴールドからWGホワイトゴールドに変えたバリエーションになる。”
”機械を流用しているので、針位置のバランス調整のために文字盤のデザインには手を入れてある。スモールセコンドの位置が比較的中心に寄ってしまうのを目立たなくするため、各アワーマーカーを伸ばして外周を狭める視覚的効果を作りだしていた。
繊細で華奢な小グロワスに比して、新しい方は巨大化したサイズと若干存在感を増したアワーマーカーが時計全体の「メンズっぽさ」を強調している感じだね。”
”手巻きだから自動巻き用のローターもなく、各所の仕上げを鮮明に観察することができる。”
”ファンアートって、普通イラストとかマンガとかそういうのだよね。 それが作中で大した描写もされていない時計。しかも、国産クオーツの文字盤色をちょっと弄ったセミオーダーとかではなく、正真正銘のワンオフ工芸品。4桁万円近くする。 要するに、かなり前から(アナリースブランドの)新作として製作していた作品を「ファンアート」として提供した形になる。”
”英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語。アラビア語。国際色豊か。 突如発表された新作ゆえ、凄い数のコメントが付いてる。”
(スペイン語)”「とても素晴らしい時計に美しい腕だね! ところで、さっき部下に日本出張を命じておいたよ。写真の”余計な部分”を切り落としてくるようにって! lol」”
”なんかぶっとい葉巻銜えて金のネックレスした南米系の日焼けしたおじさん(上半身裸・刺青入り)の自撮りが映ってたりする。ダイヤで装飾された銃の写真とかアップしてる系の。白い粉を販売されてる団体の代表の方ですかね。”
”「”いらない部分”はうちの子が平らげてくれるだろう! HAHA」”
(アラビア語)”砂漠を背景にターバンと白い長衣を身にまとった恰幅のいいひげ面のおじさんとかがコメントしてる。おじさんの足下にお座りしてるうちの子とやらはちょっと大きめの可愛い猫でした。茶と黒の斑点模様で、やたら眼光の鋭い感じの、人間の腰よりも背が高い猫。生肉が好物っぽい。”
”時計界隈なので嫌なリアリティがあって若干怖い。普通にそういう人たちがメイン顧客になる世界なので。”
”「は?」”
アナリースの時計(小グロワス)(8)
ぼくがエストブールのシークレット発表作と勘違いした。彼女の左手に巻かれた直径34mmくらいの金無垢三針スモールセコンド。アナリースのフルハンドメイド。ナンバーはない。彼女の手から外されてぼくに預けられた。市場に出せば4桁はくだらないとぼくは予想(9)。
” ぼくが勝手に納得していると、彼女がおもむろに左腕を差し出してきた。手首に巻かれているのは直径34mmくらいの無垢三針スモールセコンド。波打つギヨシェ文字盤の繊細な模様が店内の弱光さえ拾い、柔らかく浮かび上がる。(8)”
”「最高に好みだ……。まさかこんなサプライズがあるとは思わなかった」(8)”
” 彼女の右手が突然ぼくの右手を掴む。そして、あまりにも自然に自身の左手にそれを導いた。ぼくの手を。そして彼女の左手の指は、ぼくの右手指を捕食した。(8)”
”「アナリース、です。——こうすれば、もっとしっかりと見られますから」(8)”
” アナリースさんが瞼を閉じる。長い睫毛が揺れている。そんな錯覚すら覚える。 ほんの一瞬の瞑目を経て、彼女は再び目を見開いた。何かを決意したように。「シークレットでもありません。これは、私が作りました」(8)”
”作った? 機械を? 設計して、部品を加工して、装飾して、組んだということ?(8)”
”アナリースさんの無表情がほんの一瞬歪んだ。唇が引き締まる。完全にぼくの思い込みだろうけど、その顔は少し悲しそうに見えたんだ。辛そうに。不思議なことに。(8)”
”エストブール博士の一番弟子がハンドメイドした一点物(おそらく一部お父さんの手も入ってる)、しかもエボーシュ(出来合)の機械ではなくワンオフ。これはもう言い値の世界。一応4桁は覚悟してるよ。”(9)
”金無垢はすぐ傷が入るから日常使いはできそうにない。”(9)
” ぼくが勝手に納得していると、彼女がおもむろに左腕を差し出してきた。手首に巻かれているのは直径34mmくらいの無垢三針スモールセコンド。波打つギヨシェ文字盤の繊細な模様が店内の弱光さえ拾い、柔らかく浮かび上がる。(8)”
”「最高に好みだ……。まさかこんなサプライズがあるとは思わなかった」(8)”
” 彼女の右手が突然ぼくの右手を掴む。そして、あまりにも自然に自身の左手にそれを導いた。ぼくの手を。そして彼女の左手の指は、ぼくの右手指を捕食した。(8)”
”「アナリース、です。——こうすれば、もっとしっかりと見られますから」(8)”
” アナリースさんが瞼を閉じる。長い睫毛が揺れている。そんな錯覚すら覚える。 ほんの一瞬の瞑目を経て、彼女は再び目を見開いた。何かを決意したように。「シークレットでもありません。これは、私が作りました」(8)”
”作った? 機械を? 設計して、部品を加工して、装飾して、組んだということ?(8)”
”アナリースさんの無表情がほんの一瞬歪んだ。唇が引き締まる。完全にぼくの思い込みだろうけど、その顔は少し悲しそうに見えたんだ。辛そうに。不思議なことに。(8)”
”エストブール博士の一番弟子がハンドメイドした一点物(おそらく一部お父さんの手も入ってる)、しかもエボーシュ(出来合)の機械ではなくワンオフ。これはもう言い値の世界。一応4桁は覚悟してるよ。”(9)
”金無垢はすぐ傷が入るから日常使いはできそうにない。”(9)
知子の腕時計(39)
大手企業サラリーマンの年収に近い額。普段宝飾に興味を示さない知子が母に誕生日プレゼントの前借りとしてねだった。
ぼくと時計の歴史(31)
大学生の頃に軍用時計に憧れ、社会人になって数十万円代の時計を手にし、会社を継いでからは有名ブランドの時計を網羅。そして今回、エストブールのワンオフの新作をアナリースに返しに行く。
”ぼくが時計を好きになったのはまだ大学生の頃だ。特に理由があったわけじゃない。美容院で待ち時間に読んだガジェット系の雑誌に紹介されてた軍用時計を見て、かっこいいと思った。”
”当然のことながら高いものなんて買えなかった。だから銀座に来ることもなかったかな。 上野とか御徒町とか、あの辺りにあるお店で逆輸入の国産品を漁ってね。年季の入った店員さんに色々聞いて初歩的な知識を教えてもらったり。思えば悪くない時間だった。”
”一応社会人なので、頑張って二桁万円の時計を手に入れた。学生の頃から憧れていたドイツの軍用時計ブランドのもの。”
”銀座をうろつくようになったのは会社を継いでから。まだ10年も経たない。有名なブランドは大体手にしたし、中には結構なプレミアがつくものも買った。”
”ビジネスの観点からは各社のブランディング戦略が興味深かったし、物自体を見るならやっぱり「工芸品」の存在感がぼくを惹きつけた。”
”そんな一つの趣味が今死のうとしている。 最後を飾るのが、これからまさに花開いていこうとするブランドのお店というのは感慨深いね。”
”ぼくは今日、まだオープンしていないエストブールのブティックに来たよ。 預かっていた物を、返しに来たんだ。”
”ぼくが時計を好きになったのはまだ大学生の頃だ。特に理由があったわけじゃない。美容院で待ち時間に読んだガジェット系の雑誌に紹介されてた軍用時計を見て、かっこいいと思った。”
”当然のことながら高いものなんて買えなかった。だから銀座に来ることもなかったかな。 上野とか御徒町とか、あの辺りにあるお店で逆輸入の国産品を漁ってね。年季の入った店員さんに色々聞いて初歩的な知識を教えてもらったり。思えば悪くない時間だった。”
”一応社会人なので、頑張って二桁万円の時計を手に入れた。学生の頃から憧れていたドイツの軍用時計ブランドのもの。”
”銀座をうろつくようになったのは会社を継いでから。まだ10年も経たない。有名なブランドは大体手にしたし、中には結構なプレミアがつくものも買った。”
”ビジネスの観点からは各社のブランディング戦略が興味深かったし、物自体を見るならやっぱり「工芸品」の存在感がぼくを惹きつけた。”
”そんな一つの趣味が今死のうとしている。 最後を飾るのが、これからまさに花開いていこうとするブランドのお店というのは感慨深いね。”
”ぼくは今日、まだオープンしていないエストブールのブティックに来たよ。 預かっていた物を、返しに来たんだ。”
ぼくの好きな時計(26)
繊細で壊れやすい。
”ぼくが好きなB社の時計とかアナリースさんが贈ってくれた小グロワスとか、ああいうやつを着けてフルスイングしたら衝撃で確実に針が取れる。でもそこがいいんだ。工芸品の雰囲気がある。”
”ぼくが好きなB社の時計とかアナリースさんが贈ってくれた小グロワスとか、ああいうやつを着けてフルスイングしたら衝撃で確実に針が取れる。でもそこがいいんだ。工芸品の雰囲気がある。”
ぼくの普段使いの腕時計(12)
”ぼくが好きなB社の時計。日常使い用に金無垢のブレスレットをラバーストラップに換装できるようになってる。金は重いからね。あと傷がつきやすい。だから買ってからずっとラバーストラップのままにしてる。”
” 酔いが回ると手首がむくむ。 ぼくは左腕の時計を外した。”
”拘束を解かれたぼくは自由だ。”
”さて、ぼくは自由だ。”
” 酔いが回ると手首がむくむ。 ぼくは左腕の時計を外した。”
”拘束を解かれたぼくは自由だ。”
”さて、ぼくは自由だ。”
グロワス13世と時計(19)
王はぜいたく品としての時計にはよい感情を持っていなかったが、軍事技術向上に繋がる点から時計技術を推進し、ブレゲ創業者をモデルとした市井の時計師を協力者とする。その動きは他の優秀な平民との関わりも生み、終生の同志となる平民の青年ジュール・レスパンとの関係につながる。また、軍事への肩入れは近衛の姫メアリとの距離を縮めることになった。
”民の悲惨な生活に心を痛め、世界の「不正」を糺そうと決意していた王は、当然のことながら当時贅沢品の極みであった時計のこともよく思っていなかった。でも、現代からの転生者であり万能に近い才能を持っていた彼は、精密時計製造の技術が軍事力の向上に繋がることをよく分かっている。そこで平民の優秀な時計師(明らかにこのB社の創業者をモデルとした)を呼び出し、自身が持つ現代知識を伝えて協力者にする。そして、その動きを皮切りに彼は他の優秀な平民達とも心を通わせていくことになる。特に作中もう一人の主人公、王の終生の同志となる平民の青年ジュール・レスパンと。
同時に、軍事技術の向上を目指す王は必然的に近衛軍のメアリ姫と距離を縮めることになるわけだ。
あ、話の後半には、敵国エストビルグ人でありながら彼の愛に惹かれて王妃となったアナリゼ姫に、王が時計の重要性を講義する場面もあるよ。”
”民の悲惨な生活に心を痛め、世界の「不正」を糺そうと決意していた王は、当然のことながら当時贅沢品の極みであった時計のこともよく思っていなかった。でも、現代からの転生者であり万能に近い才能を持っていた彼は、精密時計製造の技術が軍事力の向上に繋がることをよく分かっている。そこで平民の優秀な時計師(明らかにこのB社の創業者をモデルとした)を呼び出し、自身が持つ現代知識を伝えて協力者にする。そして、その動きを皮切りに彼は他の優秀な平民達とも心を通わせていくことになる。特に作中もう一人の主人公、王の終生の同志となる平民の青年ジュール・レスパンと。
同時に、軍事技術の向上を目指す王は必然的に近衛軍のメアリ姫と距離を縮めることになるわけだ。
あ、話の後半には、敵国エストビルグ人でありながら彼の愛に惹かれて王妃となったアナリゼ姫に、王が時計の重要性を講義する場面もあるよ。”
小グロワス(8)
プティ・グロワス。アナリースのハンドメイド時計。アナリースの時計を参照。
”「とてもいい名前だ。では、小プティを作った以上、将来大グラングロワスも作らなければなりませんね」「ええ。……いつか作ります。必ず」(8)”
” サファイアガラスの蓋を通して見える機械を観察しようと動き出したぼくを、彼女は再び遮った。決定的に異常な言葉を以て。「あなたに差し上げます。——彼を愛してくださった方に」(8)”
”「わたしは子どもを手放しません。どれほどの大金を積まれても。どれほどの名誉、どれほどの偉大さと引き換えにしても。もう。決して。——だからこれは取引ではありません。ただ、あなたに贈ります」”(9)
”「なぜ私に?」
「——あなたのために、作りましたから。あなたの腕に巻かれるべき”証”として」”(9)
”「ああ、それはうれしいな。ではお預かりします。あなたが時計師として踏み出された、その”証”を」”(9)
”「とてもいい名前だ。では、小プティを作った以上、将来大グラングロワスも作らなければなりませんね」「ええ。……いつか作ります。必ず」(8)”
” サファイアガラスの蓋を通して見える機械を観察しようと動き出したぼくを、彼女は再び遮った。決定的に異常な言葉を以て。「あなたに差し上げます。——彼を愛してくださった方に」(8)”
”「わたしは子どもを手放しません。どれほどの大金を積まれても。どれほどの名誉、どれほどの偉大さと引き換えにしても。もう。決して。——だからこれは取引ではありません。ただ、あなたに贈ります」”(9)
”「なぜ私に?」
「——あなたのために、作りましたから。あなたの腕に巻かれるべき”証”として」”(9)
”「ああ、それはうれしいな。ではお預かりします。あなたが時計師として踏み出された、その”証”を」”(9)
『東京カレンダー』(3)
”美人OLと東銀座の隠れ家シチュー屋さんでディナー。 全国の中年の夢だね。凄い。ちなみにぼくは独身なので何一つ後ろ暗いところはないよ。(3)”
コンプリートカレンダー(19)
月日と曜日、さらに月齢を表示できる腕時計。パーペチュアルカレンダーと違って月末の日数不揃いは自分で直す必要あり。ぼくはこれの色違いを持っているが、調整が面倒であまり使ってはいない。
”「まぁ! 可愛らしい! あなたがお持ちの物と同じですね。色は違うから、これはホワイトゴールドかしら」”
”「ああ……その、確かに私も持っているけど、青佳さんに見せたことは」”
”「ありますよ。月に何度か着けてらっしゃいました」”
”「青佳さんは男性のそういう所をしっかり見られてるんですね。私には真似できないので尊敬します」”
”「は? ……あなた、誤解しないでくださいね? 私が見ているのはあなたの持ち物だけです。茉莉さんのように経験豊富ではありませんから」”
”「これ、これを見てください! この文字盤の真珠、真珠なのに細かい模様が彫られてますよ!」”
”「まぁ! 可愛らしい! あなたがお持ちの物と同じですね。色は違うから、これはホワイトゴールドかしら」”
”「ああ……その、確かに私も持っているけど、青佳さんに見せたことは」”
”「ありますよ。月に何度か着けてらっしゃいました」”
”「青佳さんは男性のそういう所をしっかり見られてるんですね。私には真似できないので尊敬します」”
”「は? ……あなた、誤解しないでくださいね? 私が見ているのはあなたの持ち物だけです。茉莉さんのように経験豊富ではありませんから」”
”「これ、これを見てください! この文字盤の真珠、真珠なのに細かい模様が彫られてますよ!」”
トゥールビヨン(19)
アナリースが見つめていた時計。彼女の父が設計した。思い出の品。
”「ああ、それはあなたのお父様が設計した作品です。本当に綺麗だ。——私はそれを見せて貰う度に、なんといえばいいか、その……意志を感じるんです。ブランドの創業者が断固とした意志で作りあげた機構は時代を超えました。そして何百年も経て、あなたのお父様がそれを引き継いだ。一人の人間が何を遺せるかという問いへの答えかもしれません」”
”「——彼と、そしてあなたのお父様は時計界の王だ。その証をこうして残された」”
”アナリースさんがゆっくりと顔を上げ、ぼくと視線を合わせる。 そこには真っ赤に充血した両の瞳があった。 繊細な宝玉を包み込むように水の膜さえも纏わせて。 多分このトゥールビヨンはお父さんとの思い出の品なんだろう。”
”「ずっと昔、同じ言葉を伺ったことがあります。ある方から。私はその場にいて、隣で聞いていました。ある方と彼の会話を。——ずっと、ずっと昔のことです」”
”「彼がどう思ったかは分かりません。ですが、彼は作りました。その方の言葉ゆえに」
「ああ、それは……凄いな。では私はその方に感謝しなければなりません。希代の時計師エストブール氏にこの傑作を創造せしめた方に」”
”「ああ、それはあなたのお父様が設計した作品です。本当に綺麗だ。——私はそれを見せて貰う度に、なんといえばいいか、その……意志を感じるんです。ブランドの創業者が断固とした意志で作りあげた機構は時代を超えました。そして何百年も経て、あなたのお父様がそれを引き継いだ。一人の人間が何を遺せるかという問いへの答えかもしれません」”
”「——彼と、そしてあなたのお父様は時計界の王だ。その証をこうして残された」”
”アナリースさんがゆっくりと顔を上げ、ぼくと視線を合わせる。 そこには真っ赤に充血した両の瞳があった。 繊細な宝玉を包み込むように水の膜さえも纏わせて。 多分このトゥールビヨンはお父さんとの思い出の品なんだろう。”
”「ずっと昔、同じ言葉を伺ったことがあります。ある方から。私はその場にいて、隣で聞いていました。ある方と彼の会話を。——ずっと、ずっと昔のことです」”
”「彼がどう思ったかは分かりません。ですが、彼は作りました。その方の言葉ゆえに」
「ああ、それは……凄いな。では私はその方に感謝しなければなりません。希代の時計師エストブール氏にこの傑作を創造せしめた方に」”
ドイツの時計産業(8)
機械式時計は9割スイス、日本とドイツがそのあとに半々で続く。
”ドイツの時計産業はその歴史ゆえに、スイス的スタンダードとはちょっと趣の異なる独自性を墨守してきたという。(8)”
”ドイツの時計産業はその歴史ゆえに、スイス的スタンダードとはちょっと趣の異なる独自性を墨守してきたという。(8)”
ドライブでのふたりの時計(38)
高級ブランドB社製の(比較的)雑に扱えるラグジュアリー・スポーツ。ぼくはPGピンクゴールドにスレートグレーの文字盤、知子はWGホワイトゴールドブルー文字盤。知子はあえてメンズサイズのもの。ブレスレットまで金無垢なので、今の金相場だと素材の価格だけで相当な額になる。母に買ってもらったと聞いたぼくは、「換金性の高い、税金のかからない生活動産」による節税かと邪推した。
ブティックで見せてもらった時計(19)
基本の手巻き三針、コンプリートカレンダー、パーペチュアルカレンダー、レディースライン、トゥールビヨン。総額は地方で二軒、都内でも一軒家が建つ額。
”基本の手巻き三針。 創業者が作った過去の傑作デザインを腕時計用にリファインしたコンプリートカレンダー。極薄で繊細極まるパーペチュアルカレンダー。あとは、昔イタリアの王妃様のために作られたというレディースラインを一つ。 そして最後に、このブランド創業者の代名詞とも言えるトゥールビヨン。 事もなげにトレーに並べられたこの5本、総額にすると地方なら確実に家が2軒建つ。都内でも1軒建つ。”
”基本の手巻き三針。 創業者が作った過去の傑作デザインを腕時計用にリファインしたコンプリートカレンダー。極薄で繊細極まるパーペチュアルカレンダー。あとは、昔イタリアの王妃様のために作られたというレディースラインを一つ。 そして最後に、このブランド創業者の代名詞とも言えるトゥールビヨン。 事もなげにトレーに並べられたこの5本、総額にすると地方なら確実に家が2軒建つ。都内でも1軒建つ。”
加賀巌の時計(26)
タフなことで有名。ぼくは超高級工具みたいと感想を述べている。
”叔父さんの着けてるその時計はタフなことで有名だからね。 ぼくも同じメーカーのやつは何本か持ってるけど、どうもワクワク感が無い。なんと表現すればいいだろうか。超高級工具みたいな感じ。精度完璧で頑強なんだけど、工具にそこまで興味が無いぼくからする”
”叔父さんの着けてるその時計はタフなことで有名だからね。 ぼくも同じメーカーのやつは何本か持ってるけど、どうもワクワク感が無い。なんと表現すればいいだろうか。超高級工具みたいな感じ。精度完璧で頑強なんだけど、工具にそこまで興味が無いぼくからする”
時計(7)
実用性が低い割に装飾品としてはよくできているため、昔から富の象徴として使われてきた。現代風に言い換えるならマウントツール。
時計のリセール率(30)
他の宝飾品に比べて高い。ことにロレックスが高い模様。ブレゲはそれほどでもないがそれでも高い。
”時計は他の宝飾品に比べてリセール率が抜群に高い。たとえば叔父さんが愛用する例のブランドなんて、何年も酷使したやつが新品定価以上で売れたりする。すごいね。 翻って、残念ながらぼくが大好きなBのつくブランドとかはまぁ、ね。 定価の5割行けば御の字だろう。ただ、この5割って数字も宝石とかに比べれば全然いいらしい。”
”時計は他の宝飾品に比べてリセール率が抜群に高い。たとえば叔父さんが愛用する例のブランドなんて、何年も酷使したやつが新品定価以上で売れたりする。すごいね。 翻って、残念ながらぼくが大好きなBのつくブランドとかはまぁ、ね。 定価の5割行けば御の字だろう。ただ、この5割って数字も宝石とかに比べれば全然いいらしい。”
時計業界では知らぬもののないビッグネーム(9)
エストブールのローンチパーティに参加。
”業界のリファレンスといっても過言ではないあの雑誌の編集長も、世界的に有名なあのニュースサイトのディレクターも。”
”業界のリファレンスといっても過言ではないあの雑誌の編集長も、世界的に有名なあのニュースサイトのディレクターも。”
時計界の公用語(7)
フランス語。最近は英語も普通に使う。
時計趣味(7)
世間的には誠に鼻持ちならない、アレな感じのぼくの趣味。
最新話の時計の機構説明(42)
あくまでしらを切り続けるぼくにアナリースが行ったカマかけ。目をそらしてウーロン茶を飲んでいたと思しきぼくは見事に引っかかった。
”「あ、そういえば、最新話の時計の機構説明の記述に、1箇所間違いを発見しましたよ」
「え? どこ?!」”
”「(^^)」
「\(^o^)/」”
有名時計ジャーナリスト(7)
ぼくが知っている有名ジャーナリスト。エストブールイベントに参加。
某時計店のイベント(6)
ぼくが懇意にしている時計師さんが立ち上げる、新ブランドのローンチパーティ。再来週水曜日19時から、会場は銀座並木の路面店。ドレスアップした男女の他、芸能人っぽいひとも何人か。PRの撮影入るパターンとぼくは予想した。
”「まぁ! 社長、なにかうれしいことが?」(7)” ”兄さん。幸せは分かち合ってこそですよ」(7)”
”「陛下! そのエストビルグのお披露目パーティー、どなたと行かれるんですか?」(7)”「陛下。それは常識と異なります。夜会に殿方一人とあっては格好がつきません」(7)”
”「では共に行こうか。かくもお美しい姫君方のお供をできるとは、これに勝る幸せはない!」(7)” ”「はい。陛下。ブラウネがお供いたしますね。侍女として」” ”「私も参ります。陛下をお守りする使命がございます。侍女として」(7)”
”業界では知らぬ者のないビッグネームが何人も来てる。業界のリファレンスといっても過言ではないあの雑誌の編集長も、世界的に有名なあのニュースサイトのディレクターも。”(9)
”「まぁ! 社長、なにかうれしいことが?」(7)” ”兄さん。幸せは分かち合ってこそですよ」(7)”
”「陛下! そのエストビルグのお披露目パーティー、どなたと行かれるんですか?」(7)”「陛下。それは常識と異なります。夜会に殿方一人とあっては格好がつきません」(7)”
”「では共に行こうか。かくもお美しい姫君方のお供をできるとは、これに勝る幸せはない!」(7)” ”「はい。陛下。ブラウネがお供いたしますね。侍女として」” ”「私も参ります。陛下をお守りする使命がございます。侍女として」(7)”
”業界では知らぬ者のないビッグネームが何人も来てる。業界のリファレンスといっても過言ではないあの雑誌の編集長も、世界的に有名なあのニュースサイトのディレクターも。”(9)
比較的安価な機械式時計(8)
中の機械に汎用品を使うのがほとんど。大量生産品のためサイズは売れ筋の直径36〜40mm用が大半を占め、小さなサイズで安価なものは珍しい。プゾーなど小さい時計用の汎用機械もある。
腕時計のフランス語(8)
une montre。女性名詞。
金無垢の腕時計(40)
知子とのドライブデートにぼくがつけてきた。表面も中身も金でずっしりとした重みがある。表面も中身も同質な金無垢に比べ、自分自身の金の装いはメッキですぐはがれると独白。しかし知子が彼のメッキを剥ぐために、なかば煽るような振る舞いが必要だった。
銀座時計店巡回ツアー(3)
見合いに際しぼくの心を占拠していた予定。”まず並木で「○○○&○○○ブティック」。その後「○○○○○センター」に流れて、と妄想が止まらない。(1)”
エボーシュ(9)
下書き、草稿。時計的な意味ではムーブメント(動力部分)専門メーカーが製造したムーブメントを指し、各時計メーカーはこれに装飾や調整を加えて自社製品として完成させる。
オートワインダー(36)
自動巻き時計を自動で巻くための装置。
”自動巻きの時計を止めないように、時計をセットした台座をモーターが回す。すると、時計内部の錘ローターが回転し、着用していなくてもゼンマイが巻き上がる装置だという。 初めて見る不思議なチェスト。 ざっと眺める限りでも20本以上の時計が格納されていた。”
”自動巻きの時計を止めないように、時計をセットした台座をモーターが回す。すると、時計内部の錘ローターが回転し、着用していなくてもゼンマイが巻き上がる装置だという。 初めて見る不思議なチェスト。 ざっと眺める限りでも20本以上の時計が格納されていた。”
マジックレバー(41)
S社が開発したゼンマイの自動巻き上げ機構のこと。シンプルで部品点数が少なく巻き上げ効率も高い画期的なシステム。
ロレックス(7)
みんなが知ってる高級時計だが、値段だけで位置づけするならば安い方。消耗品に近い扱い。物としては外装も機械も凄く、現代時計の極北。最近はマネーゲームの商材で偏見が付いて回るものの、物としては最高。ぼくの第一のお薦め。
時計とブランド/エストブール・商品・ブランド理念
アナリース・エストブール(7)
エストブール博士の娘。エストブール日本直営店のCMO。ぼくがイベントで紹介された。艶やかなダークブラウンの髪。白い肌と鳶色の瞳が顔の無表情と相まって人工物のような雰囲気。若干の幼さが感じられる(7)。西欧人にしては表情表現が抑制的。流暢に扱う日本語は独学で始め、大学では日本のK大学(9)に交換留学した(8)ため、いわばぼくの後輩。子供のころから時計を作っていた(8)。フランス最高峰の学府Sciences-Po出身(9)。
”人体が為しうる限りの優雅な足取りで、人混みを見事にさけてしなやかに歩いてくる。まるで高貴な猫のように。(7)”
”「エストブールのCMO(最高マーケティング責任者)をしております、アナリース・エストブールです。以降よしなにお願いいたしますね」”
”「はい。全体の方向性はわたしが定めました。細部はスタッフの皆さんです」(8)”
”「ありがとうございます。わたしは子どもの頃から日本が好きでした。ずっと自分で勉強して、大学時代は交換留学をしました。だから、わたしの子ども時代は時計作りと日本語学習の思い出ばかりです」(8)”
”「アナリースと。お呼びください」「いいえ。——ただ、そう呼んで欲しいのです。あなたに」(8)”
”「アナリースと、お呼びください」(8)”
”彼女の大きな瞳が一瞬見開かれ、満足げに弛緩した。(8)”
”『日本に住みたいと思っていたんです。子どもの頃からずっと。なぜでしょうね。きっとアリストファネスの言うように”片割れ”を探して(Chacun cherche sa moitié)かしら。”そこにいる”って勘が働いたんです。——片割れではないけれど今は友達も見つけました。大切なお友達』”(9)
”人体が為しうる限りの優雅な足取りで、人混みを見事にさけてしなやかに歩いてくる。まるで高貴な猫のように。(7)”
”「エストブールのCMO(最高マーケティング責任者)をしております、アナリース・エストブールです。以降よしなにお願いいたしますね」”
”「はい。全体の方向性はわたしが定めました。細部はスタッフの皆さんです」(8)”
”「ありがとうございます。わたしは子どもの頃から日本が好きでした。ずっと自分で勉強して、大学時代は交換留学をしました。だから、わたしの子ども時代は時計作りと日本語学習の思い出ばかりです」(8)”
”「アナリースと。お呼びください」「いいえ。——ただ、そう呼んで欲しいのです。あなたに」(8)”
”「アナリースと、お呼びください」(8)”
”彼女の大きな瞳が一瞬見開かれ、満足げに弛緩した。(8)”
”『日本に住みたいと思っていたんです。子どもの頃からずっと。なぜでしょうね。きっとアリストファネスの言うように”片割れ”を探して(Chacun cherche sa moitié)かしら。”そこにいる”って勘が働いたんです。——片割れではないけれど今は友達も見つけました。大切なお友達』”(9)
アナリース・エストブール(16)
オーストリア人の父とフランス人の母を持つオーストリア人。フランス国籍も所持する才媛。明るいブラウンの髪に鳶色の瞳。伸びやかで細い四肢に女性としては高めの身長。表情は優美ながらどこか隙があり、無垢な神聖を感じさせる。級友達は彼女を「ラ・プランセス(王女さま)」と呼んだ。
物心ついてからのほとんどをフランスで過ごす。明るいながらも少し物静かな平凡な少女であったが、小学校4年生(9歳)のとき雰囲気がほんの少し変わる。勉強熱心になり、時計に興味を持つように。小学校、コレージュ(中学校)では特異な勉学の才能を示し、飛び級を繰り返した。コレージュ中学校の最終年、級友から日本のweb小説に固有名詞「グロワス13世(Gloice XIII)」が登場することを聞きつけ、一夜で読了。以後、彼女の勉強メニューに日本語が加わると共に、父に時計作りの教授を乞う。頭脳を使うことと共に手を動かすことを好む彼女は、ブレゲの再来と賞される父に師事して一番弟子となる。彼女に最高の環境を与えるべく一家は居をパリに移し、アナリースは5区にあるフランス最高峰の名門リセ(高校)、アンリ4世校に進学。同校においても彼女は飛び級を重ね、2年前倒しの16歳でバカロレア高卒・大学入学資格を取得。ストレートでグランゼコール準備学級、続いて国立政治学院に進んだ。彼女と親しくしたいと願う少年達は絶えず、リセ・アンリ4世校からは少年達の中でも選りすぐりの者達、国務大臣の息子、例えば著名な作家の息子、世界的ファッションブランドグループ総帥の息子などが彼女の周りに集まったが、アナリースは彼らに関心を示すことはなかった。国立政治学院の2年次、日本のK大学に1年間の交換留学を行い、島津知子と知己を得る。
”連投された次のメッセージを見たとき、アナリースはその瞳を細め、そしてふわりと見開いた。それは世界で最も美しく、高貴な猫の仕草。あるいは獅子の。
『これがグロワス13世Gloice XIIIの話なら、すぐに覚えられるのにね』”
”普段茫洋と揺蕩う、ともすれば焦点の合わぬ両の瞳は、今や獲物を発見した猫科の大型肉食獣のように鋭い視線を発していた。”
”当然のことだ。 彼女はよく知っていた。 幸せな女とは、どのようなものであるかを。”
物心ついてからのほとんどをフランスで過ごす。明るいながらも少し物静かな平凡な少女であったが、小学校4年生(9歳)のとき雰囲気がほんの少し変わる。勉強熱心になり、時計に興味を持つように。小学校、コレージュ(中学校)では特異な勉学の才能を示し、飛び級を繰り返した。コレージュ中学校の最終年、級友から日本のweb小説に固有名詞「グロワス13世(Gloice XIII)」が登場することを聞きつけ、一夜で読了。以後、彼女の勉強メニューに日本語が加わると共に、父に時計作りの教授を乞う。頭脳を使うことと共に手を動かすことを好む彼女は、ブレゲの再来と賞される父に師事して一番弟子となる。彼女に最高の環境を与えるべく一家は居をパリに移し、アナリースは5区にあるフランス最高峰の名門リセ(高校)、アンリ4世校に進学。同校においても彼女は飛び級を重ね、2年前倒しの16歳でバカロレア高卒・大学入学資格を取得。ストレートでグランゼコール準備学級、続いて国立政治学院に進んだ。彼女と親しくしたいと願う少年達は絶えず、リセ・アンリ4世校からは少年達の中でも選りすぐりの者達、国務大臣の息子、例えば著名な作家の息子、世界的ファッションブランドグループ総帥の息子などが彼女の周りに集まったが、アナリースは彼らに関心を示すことはなかった。国立政治学院の2年次、日本のK大学に1年間の交換留学を行い、島津知子と知己を得る。
”連投された次のメッセージを見たとき、アナリースはその瞳を細め、そしてふわりと見開いた。それは世界で最も美しく、高貴な猫の仕草。あるいは獅子の。
『これがグロワス13世Gloice XIIIの話なら、すぐに覚えられるのにね』”
”普段茫洋と揺蕩う、ともすれば焦点の合わぬ両の瞳は、今や獲物を発見した猫科の大型肉食獣のように鋭い視線を発していた。”
”当然のことだ。 彼女はよく知っていた。 幸せな女とは、どのようなものであるかを。”
アナリース・エストブール(42)
24歳。フランス人女性。
エストブールと由理・レスパンとのコラボ(19)
ブレゲが『この人を見よ』とのコラボを検討していないと聞いたぼくが思いついた。新進気鋭のアナリースのブランドと、アート系モデルに近い由理の親和性を評価。
”『この人を見よ』の原作者であり、かつ、恐らく製作されるであろう実写版の主役を演じることになる人物だ。 その彼が「エストブール」のアンバサダーになるとしたら。 彼はアイドルではなく、どちらかといえばアート系のモデルに近いから、ブランドイメージも庶民的には寄らない。逆にスタイリッシュで現代的、高踏的なイメージを付けられる。「エストブール」も新進気鋭、つまり現代的なインディペンデントブランドだからコンフリクトは起きづらいだろう。”
”なんて素晴らしいことだろう! 皆喜ぶはずだ。”
”彼以上の配役はない。だって彼が書いた作品なんだからね。”
” ぼくにも使える部分が残っていた。 ぼくにはまだ使い道があった。最後の。 これほどにうれしいことはない。魚だって豚だってそうだ。肉は人が食べ、骨は砕いて家畜の肥料にする。無駄なところはどこにもない。それこそが生き物の最上の姿だと思う。 虎は死して皮を残し、人は死して名を残す。そしてぼくは皆に楽しみを残す。 思いついたらすぐ動くべきだ。 些細なことかもしれないけど、ぼくだって皆を喜ばせることができる。”
”『この人を見よ』の原作者であり、かつ、恐らく製作されるであろう実写版の主役を演じることになる人物だ。 その彼が「エストブール」のアンバサダーになるとしたら。 彼はアイドルではなく、どちらかといえばアート系のモデルに近いから、ブランドイメージも庶民的には寄らない。逆にスタイリッシュで現代的、高踏的なイメージを付けられる。「エストブール」も新進気鋭、つまり現代的なインディペンデントブランドだからコンフリクトは起きづらいだろう。”
”なんて素晴らしいことだろう! 皆喜ぶはずだ。”
”彼以上の配役はない。だって彼が書いた作品なんだからね。”
” ぼくにも使える部分が残っていた。 ぼくにはまだ使い道があった。最後の。 これほどにうれしいことはない。魚だって豚だってそうだ。肉は人が食べ、骨は砕いて家畜の肥料にする。無駄なところはどこにもない。それこそが生き物の最上の姿だと思う。 虎は死して皮を残し、人は死して名を残す。そしてぼくは皆に楽しみを残す。 思いついたらすぐ動くべきだ。 些細なことかもしれないけど、ぼくだって皆を喜ばせることができる。”
ぼくがエストブール氏に言い放った言葉(31)
あなたは意味がないものを作った。切れられてもおかしくない台詞。
”『創業者は意味のあるものを作ったが、あなたは意味のないものを作った。それこそが偉大なことだ』”
”改めて他人から聞くと相当にアレな台詞だな……。確かに言った覚えがある。エストブール氏と最初に会ったときだね。もう5年以上前。 憧れたブランドを率いる憧れの時計師と会えてちょっと舞い上がってしまった。それでね。シャンパンもちょっと入っていたので。”
”B社の創業者が数百年前にトゥールビヨン機構を作った時、時計の形状はまだ懐中だった。ゆえに重力の均一化を図る機構には精度向上という意味があった。でも、腕時計の時代にトゥールビヨンを新たに作ることには意味がない。この辺り説明が複雑になるから省くけど、原理的にトゥールビヨンは精度向上に寄与しないことだけ理解しておいてほしい。”
”エストブール氏は完全新設計でそれを作った。 トゥールビヨンは機構として派手だから、今でこそ毎年各社色々なモデルを出すようになった。でも、B社がリ・ブランディングを始めたばかりのころ——もう何十年も前だ——にはまだかなり珍しい、一般にあまり知られていない機構だった。だって極言すればあれは「無意味な装飾」に過ぎないものだからね。 ”
”それを若き日のエストブール氏は全身全霊を込めて作ったんだ。 無意味なものを。”
”『創業者は意味のあるものを作ったが、あなたは意味のないものを作った。それこそが偉大なことだ』”
”改めて他人から聞くと相当にアレな台詞だな……。確かに言った覚えがある。エストブール氏と最初に会ったときだね。もう5年以上前。 憧れたブランドを率いる憧れの時計師と会えてちょっと舞い上がってしまった。それでね。シャンパンもちょっと入っていたので。”
”B社の創業者が数百年前にトゥールビヨン機構を作った時、時計の形状はまだ懐中だった。ゆえに重力の均一化を図る機構には精度向上という意味があった。でも、腕時計の時代にトゥールビヨンを新たに作ることには意味がない。この辺り説明が複雑になるから省くけど、原理的にトゥールビヨンは精度向上に寄与しないことだけ理解しておいてほしい。”
”エストブール氏は完全新設計でそれを作った。 トゥールビヨンは機構として派手だから、今でこそ毎年各社色々なモデルを出すようになった。でも、B社がリ・ブランディングを始めたばかりのころ——もう何十年も前だ——にはまだかなり珍しい、一般にあまり知られていない機構だった。だって極言すればあれは「無意味な装飾」に過ぎないものだからね。 ”
”それを若き日のエストブール氏は全身全霊を込めて作ったんだ。 無意味なものを。”
K社の汎用機械(42)
業界の絶対王者R社とファッションの絶対王者C社を中心に独立系ブランドが出資して作った、少し高級な機械を製作する企業。K社の機械自体をブランド化しようとする動きがあるのか、一部のブランドにしか機械を提供してくれない。アナリースの父が話をつけ、エストブールのセカンドラインに搭載されることになった。
エストブール(6)
”再来週水曜日19時から。会場は銀座並木のあそこね。OK。行くよ。必ず行く。ローンチモデルを肉眼で見られる機会を逃すわけにはいかない。今後時計業界で台風の目になるであろう新鋭ブランド。(6)”
エストブールでの会話(31)
”「ブランド立ち上げでお忙しいところ、お時間をいただいて恐縮です。アナリースさん」”
”「こちらこそ、わざわざご足労いただいてしまって……」”
”「短い間でしたが本当に楽しませていただきました。何度も機械を見てはその美しさに見とれました。ですから名残惜しいのは事実です。そして光栄でもあった。——でも、これは私が持っていてよいものではありません」
「それはあなたのためのものです。あなたのために私は作りました」
「ああ、そう言っていただけることがどれほど幸せなことか。ですが、メールでも申し上げたとおり私はこれに見合う対価を提供できない。『エストブール』が日本に進出するための市場調査をお手伝いできればと思いましたが、やはり私では力不足ですから」”
”「私は小グロワスを売りません。ですから、それは市場調査の対価ではありません”
”「それは光栄です。本当に。だが納得はできません。もう一度お聞きしますね。——なぜ私なんですか? アナリースさん。あなたとわたしは先日エストブールのパーティーで会ったばかりだ。接点も何もない。見ず知らずの私にこの貴重な時計を下さる理由が見いだせない」
「理由ですか? 理由はあります。……私は何年も前からあなたを知っています」”
”「なぜ? どうやって? フランスにいたあなたが、なんで有名人でもなんでもない日本の一個人を知ることが出来るんですか? 世界的に名の知れたコレクターの方ならそれもありうるでしょうが、生憎私は違う」
「父から聞きました。あなたのことを」”
”「ああ、なるほど。その……お父様はなんと?」”
”「あなたは父がB社で昔作ったトゥールビヨンをこう表現しました。『創業者は意味のあるものを作ったが、あなたは意味のないものを作った。それこそが偉大なことだ』と。私は父からそう聞きました。これは正しいですか?」”
”「確かに私が言いました。今振り返れば失礼な物言いかもしれません。ただ、貶める意図は無かった……」
「父は言いました。『おれのトゥールビヨンを精度や設計の点で褒める顧客は山ほどいるが、無意味なものに取り組むことの真の意味を理解して賛辞を寄越した客は初めてだ』と。うれしそうに言いました」
「本当に? それはよかった。私の言いたいことがちゃんと伝わったわけですから。なにせ私のフランス語は本当に酷い」”
”「私はそれを聞きました。父の言葉を。そして驚きました。私が心から尊敬する人と、同じ考えを持つ人がいたことに。日本に。そして私は知りました。——あなたを」”
”「ああ、なるほど。理解しました。そうするとやはり私の考えは間違っていなかった。この小グロワスはアナリースさん、あなたが持つべき物です。あなたがかつて思い描いた私は実際の私とは大きく異なります。残念ながら悪い方に。——もうお気づきかも知れませんが」”
”「こちらこそ、わざわざご足労いただいてしまって……」”
”「短い間でしたが本当に楽しませていただきました。何度も機械を見てはその美しさに見とれました。ですから名残惜しいのは事実です。そして光栄でもあった。——でも、これは私が持っていてよいものではありません」
「それはあなたのためのものです。あなたのために私は作りました」
「ああ、そう言っていただけることがどれほど幸せなことか。ですが、メールでも申し上げたとおり私はこれに見合う対価を提供できない。『エストブール』が日本に進出するための市場調査をお手伝いできればと思いましたが、やはり私では力不足ですから」”
”「私は小グロワスを売りません。ですから、それは市場調査の対価ではありません”
”「それは光栄です。本当に。だが納得はできません。もう一度お聞きしますね。——なぜ私なんですか? アナリースさん。あなたとわたしは先日エストブールのパーティーで会ったばかりだ。接点も何もない。見ず知らずの私にこの貴重な時計を下さる理由が見いだせない」
「理由ですか? 理由はあります。……私は何年も前からあなたを知っています」”
”「なぜ? どうやって? フランスにいたあなたが、なんで有名人でもなんでもない日本の一個人を知ることが出来るんですか? 世界的に名の知れたコレクターの方ならそれもありうるでしょうが、生憎私は違う」
「父から聞きました。あなたのことを」”
”「ああ、なるほど。その……お父様はなんと?」”
”「あなたは父がB社で昔作ったトゥールビヨンをこう表現しました。『創業者は意味のあるものを作ったが、あなたは意味のないものを作った。それこそが偉大なことだ』と。私は父からそう聞きました。これは正しいですか?」”
”「確かに私が言いました。今振り返れば失礼な物言いかもしれません。ただ、貶める意図は無かった……」
「父は言いました。『おれのトゥールビヨンを精度や設計の点で褒める顧客は山ほどいるが、無意味なものに取り組むことの真の意味を理解して賛辞を寄越した客は初めてだ』と。うれしそうに言いました」
「本当に? それはよかった。私の言いたいことがちゃんと伝わったわけですから。なにせ私のフランス語は本当に酷い」”
”「私はそれを聞きました。父の言葉を。そして驚きました。私が心から尊敬する人と、同じ考えを持つ人がいたことに。日本に。そして私は知りました。——あなたを」”
”「ああ、なるほど。理解しました。そうするとやはり私の考えは間違っていなかった。この小グロワスはアナリースさん、あなたが持つべき物です。あなたがかつて思い描いた私は実際の私とは大きく異なります。残念ながら悪い方に。——もうお気づきかも知れませんが」”
エストブールのセカンドライン(42)
アナリースが企画している安価なセカンドライン。エストブールのイメージを受け継いだデザイン。ステンレスケースの中にK社の汎用機械を搭載したドレスウォッチ。サイズは40mmで価格帯は50万円代。
エストブールのパーティ会場しつらえ(8)
アナリースが方向性を決め、細部はスタッフに任せた。
”照明の輝度を落とした店内。深緑を基調にしたインテリア。エイジングを施した分厚い黒革のソファ。なんと表現すればいいだろう。深い森の中にいるような、そんな錯覚を感じさせる上品さだった。”
”「エストブールのブランドイメージにぴったりだ。お父様の時計の真髄は軽やかな文字盤ではなくて、その下に眠る重厚な機械ですから」(8)”
”照明の輝度を落とした店内。深緑を基調にしたインテリア。エイジングを施した分厚い黒革のソファ。なんと表現すればいいだろう。深い森の中にいるような、そんな錯覚を感じさせる上品さだった。”
”「エストブールのブランドイメージにぴったりだ。お父様の時計の真髄は軽やかな文字盤ではなくて、その下に眠る重厚な機械ですから」(8)”
エストブールのブティック(31)
まだオープンしていない。
”並木通りの一角、比較的小規模ながら一階の路面店。”
” 内装の外形だけは一通り揃った店内でアナリースさんが出迎えてくれた。一人で。”
”並木通りの一角、比較的小規模ながら一階の路面店。”
” 内装の外形だけは一通り揃った店内でアナリースさんが出迎えてくれた。一人で。”
エストブール博士(6)
白髪の混じったひげ面が似合うイケオジ(7)。ぼくが懇意にしている、大好きな時計ブランドの主任時計師さん。独立して自分のブランド「エストブール」を立ち上げた。以前所属していた「マニア界のメジャー的ブランド」からの独立前、当ブランドのプロモーションイベントでその人が来日した際にぼくと知り合う。オーストリアの貴族の出身、ドイツの有名ブランドを経てフランスのブランドへ転職、主任技師兼設計者として名声を博していた(8)。フランス語しか話さない。
エストブール博士の時計(8)
機械はドイツ製、文字盤はフランス風。エストブール博士のフルハンドメイド。ライトファンでは手に入れるのは困難。
”「エストブールのブランドイメージにぴったりだ。お父様の時計の真髄は軽やかな文字盤ではなくて、その下に眠る重厚な機械ですから」(8)”
”文字盤意匠は例のB社が代表するようなアンシャン・レジーム期由来のザ・クラシックながら、裏は重厚極まる4分の3プレート。つまりドイツとフランスのいいとこ取り。融合。(8)”
”「エストブールのブランドイメージにぴったりだ。お父様の時計の真髄は軽やかな文字盤ではなくて、その下に眠る重厚な機械ですから」(8)”
”文字盤意匠は例のB社が代表するようなアンシャン・レジーム期由来のザ・クラシックながら、裏は重厚極まる4分の3プレート。つまりドイツとフランスのいいとこ取り。融合。(8)”
エストブール博士の経てきたブランド(8)
ドイツの超有名ブランド(二度組みで有名)→フランスの超有名ブランド(工房はスイスにある)→独立しエストブール立ち上げ
”ドイツの某超有名ブランド(組み上げた時計を一度全部ばらして再び組み上げる”二度組み”で有名なところだよ)で頭角を現して、その後ぼくの大好きなBのつくフランスブランド(残念なことに工房はスイスにある……)に転職。(8)”
”ドイツの某超有名ブランド(組み上げた時計を一度全部ばらして再び組み上げる”二度組み”で有名なところだよ)で頭角を現して、その後ぼくの大好きなBのつくフランスブランド(残念なことに工房はスイスにある……)に転職。(8)”
エストブール家の家訓(9)
”『よく手放そうと思いましたね』
『アナの望みならしかたがない。"人の意思は何より尊い!" 我が家の家訓だよ』”
『アナの望みならしかたがない。"人の意思は何より尊い!" 我が家の家訓だよ』”
エストブール立ち上げで発表される時計(8)
38mmの三針とパーペチュアルカレンダーの2タイプ。受注生産で年産は多く見積もって三針が10〜20本くらい、トゥールビヨンが3〜5本程度、発表時点で予約が数百本は入ってるパターン。
”三針は時針、分針、秒針という時計の基本機能のみのやつ。パーペチュアルカレンダーはゼンマイさえ巻いておけば、毎月の末日不揃いはおろか閏年の2月も日付調整が必要ないという複雑機構のこと。(8)”
”三針は時針、分針、秒針という時計の基本機能のみのやつ。パーペチュアルカレンダーはゼンマイさえ巻いておけば、毎月の末日不揃いはおろか閏年の2月も日付調整が必要ないという複雑機構のこと。(8)”
セカンドラインのイメージキャラクター(42)
ぼくの提案した『この人を見よ』のグロワスを偽りの英雄として却下し、『地に落ちて死なば』のアントワン3世を使いたいというアナリース。彼の偉大さ、耐えることが自らのブランドの理念にふさわしいという。
”「エストブールは、そしてアナリースは英雄を望みません。偽りの英雄を。我々のブランドが考える偉大さと例の作品の主人公は大きくかけ離れています」
「ではお聞きしますが、あなた方が考える偉大とはどんなものです?」
「耐えること」”
”「機械式時計の偉大さはその耐久性にあります。大量の歯車を精密に組み込みながら、ずっと動き続ける。どんな時も常に変わらず。たとえ壊れても修理すれば蘇ります。部品がなくなったら新しく作ればいいんです。だから、特殊な工場でしか作れないシリコンのような新素材を我々は採用しません。作られ、治され、そうしてずっと在る。それこそがエストブールの理念です」”
”「私はこれからも複雑機構を作ります。パーペチュアルもトゥールビヨンも。前はそれこそが全てだと思っていました。終わってしまった時代への追憶の品として。でも今は、私は平凡な三針を愛します。今の私にはその価値がわかります。未来に向けて生きることの意味が」”
ブランドビジネス(43)
1年、2年のスパンで行うものではなく、長い歴史の中で「生き残っていく」ことを目指す。ブランドイメージとマッチしない広報は短期的な利益をいかにあげようとも、究極的にはブランドを毀損する。
社会と世界設定/サンテネリの政治・地理・信仰
| 項目 | 話数 |
|---|---|
| グロワス13世回心当時のサンテネリ情勢(27) | 27 |
| グロワス13世(回心後)(27) | 27 |
| 偉大なる王妃の会(27) | 27 |
| 偉大なる王妃達(27) | 27 |
| 「サンテネリ第一の市民」にして「枢密院主催者」(2) | 2 |
| 「正教の守護者たる地上唯一の王国」(2) | 2 |
| やんごとなき系(18) | 18 |
| アングラン(2) | 2 |
| グロワス14世の別れの言葉(43) | 43 |
| サンテネリ(2) | 2 |
| サンテネリ共和国(2) | 2 |
| サンテネリ語(27) | 27 |
| シュトロワ(2) | 2 |
| デルロワズ領(2) | 2 |
| フロイスブル屋敷(2) | 2 |
| フローリア(2) | 2 |
| ロベル(2) | 2 |
| ロワイユ・グローエ(15) | 15 |
| 伝説の宝剣(26) | 26 |
| 年金(2) | 2 |
| 献辞捧呈式(22) | 22 |
| 王の証(27) | 27 |
| 王冠の台座(29) | 29 |
| 王国の母(16) | 16 |
| 王妃(2) | 2 |
| 王権移譲(2) | 2 |
グロワス13世回心当時のサンテネリ情勢(27)
非常にまずい。
”国政を取り仕切る宰相たる父とは衝突し、財政は大きく傾き、軍すらも忠誠を惜しみ様子見の雰囲気を漂わせていた。国内には国の中の国とも言える大領が残り、その片方の当主は虎視眈々と玉座を狙っていた。”
”「私たちはここで苦しみましたね? この意識に。皆さんがどうかは分かりませんが、少なくとも私は苦しみました。ただ、私がどうなったところでこの世界に大した影響はありません。ごく普通の中学生でしたから。責任も何もない、代わりのきく存在です。ですが彼は……」”
”そう。グロワス・エネ・エン・ルロワは中央大陸随一の大国サンテネリ至尊の存在だ。”
”彼はつまり滅びゆく専制君主国家、しかも不徹底な専制国家の主人となった”
” ——うまくやる。夫の口癖であった言葉に秘められた意味を理解した時、彼女は全身総毛立つほどの恐怖を覚えた。”
”国政を取り仕切る宰相たる父とは衝突し、財政は大きく傾き、軍すらも忠誠を惜しみ様子見の雰囲気を漂わせていた。国内には国の中の国とも言える大領が残り、その片方の当主は虎視眈々と玉座を狙っていた。”
”「私たちはここで苦しみましたね? この意識に。皆さんがどうかは分かりませんが、少なくとも私は苦しみました。ただ、私がどうなったところでこの世界に大した影響はありません。ごく普通の中学生でしたから。責任も何もない、代わりのきく存在です。ですが彼は……」”
”そう。グロワス・エネ・エン・ルロワは中央大陸随一の大国サンテネリ至尊の存在だ。”
”彼はつまり滅びゆく専制君主国家、しかも不徹底な専制国家の主人となった”
” ——うまくやる。夫の口癖であった言葉に秘められた意味を理解した時、彼女は全身総毛立つほどの恐怖を覚えた。”
グロワス13世(回心後)(27)
所与の世界に拘束されていない、明らかに特異な存在。周囲は彼の発想に困惑し、ときには嫌悪した。
”サンテネリ人を装う異邦人のごとき言動を時折漏らしてきた。サンテネリ人の中のサンテネリ人、サンテネリの王が、である。”
”サンテネリの常識——魔力の多寡に基礎を持つ社会階層の存在を夫は誠に慎重に、しかし明らかに否定した。”
”『では、ブラウネが例えば……劇場の踊り子であったとしても、グロワス様はブラウネをお選びくださいますか?』『踊り子のきみを選ぶことができる社会になってほしいと、ぼくは切に願うよ』”
”それは明らかにブラウネという一人の女を求める一人の男の欲望だ。下男と下女の、と言い換えてもよい。”
”サンテネリ人を装う異邦人のごとき言動を時折漏らしてきた。サンテネリ人の中のサンテネリ人、サンテネリの王が、である。”
”サンテネリの常識——魔力の多寡に基礎を持つ社会階層の存在を夫は誠に慎重に、しかし明らかに否定した。”
”『では、ブラウネが例えば……劇場の踊り子であったとしても、グロワス様はブラウネをお選びくださいますか?』『踊り子のきみを選ぶことができる社会になってほしいと、ぼくは切に願うよ』”
”それは明らかにブラウネという一人の女を求める一人の男の欲望だ。下男と下女の、と言い換えてもよい。”
偉大なる王妃の会(27)
茉莉の主導で4妃が集められた典雅な夕食会。話は盛り上がり、閉店時まで続いた。
”「いつ以来でしょうね。わたくしたちが一所ひとところに集うのは」”
”「メアリ姉様エネ・メアリが宮殿をお下がりになる直前でしょうか」”
”「懐かしいですね。思えば私たちは娘時代からずっとこうして集い、お話をしてきました」”
”「陛下の足下において。陛下のお部屋で。確かに懐かしいものです」”
”「いつ以来でしょうね。わたくしたちが一所ひとところに集うのは」”
”「メアリ姉様エネ・メアリが宮殿をお下がりになる直前でしょうか」”
”「懐かしいですね。思えば私たちは娘時代からずっとこうして集い、お話をしてきました」”
”「陛下の足下において。陛下のお部屋で。確かに懐かしいものです」”
偉大なる王妃達(27)
ロワイユ・グローエ。サンテネリ国王グロワス13世の4人の妻に対する後世の? 敬称。
「サンテネリ第一の市民」にして「枢密院主催者」(2)
ロベルの持つ称号。
「正教の守護者たる地上唯一の王国」(2)
サンテネリの別称。
やんごとなき系(18)
商談スペース利用者の中にはやんごとなき血筋もいる、という話からぼくが連想した。
”そういえば知子さん、名字が島津だったな。つまり世が世なら公爵令嬢で皇室とも縁続き。やんごとなき方代表のような存在だね。”
”逆に冗談抜きでやんごとなき系なのはアナリースさんだ。エストブール家はオーストリア王室の分家由来らしいので。とはいえさすがに今は21世紀、エストブール氏ご本人も全く気にしてない模様。気さくな人だよ、彼。”
”そういえば知子さん、名字が島津だったな。つまり世が世なら公爵令嬢で皇室とも縁続き。やんごとなき方代表のような存在だね。”
”逆に冗談抜きでやんごとなき系なのはアナリースさんだ。エストブール家はオーストリア王室の分家由来らしいので。とはいえさすがに今は21世紀、エストブール氏ご本人も全く気にしてない模様。気さくな人だよ、彼。”
アングラン(2)
グロワス13世とブラウネの娘フローリアが嫁いだ国。
グロワス14世の別れの言葉(43)
新大陸に旅立つ前日の台詞。
”「母上。おれは父上の魂を継ぎます。地位ではなく」
彼女は息子を優しく抱きしめ、「そうなさいませ」と答えた。”
” 息子の死の報に接して彼女は少し涙を流した。そして思った。「神の御裾の元、世界はかく在るように在るのだ」と。”
サンテネリ(2)
ブラウネの住む国家。中央大陸随一の大国。
サンテネリ共和国(2)
サンテネリ王国国王ロベル3世が王権を移譲したことにより成立。共和制。
サンテネリ語(27)
偉大なる王妃の会における思い出話の言語。
”大シュトロワ世界の中心の言葉、サンテネリの言葉、世界で最も美しい言葉である。”
”大シュトロワ世界の中心の言葉、サンテネリの言葉、世界で最も美しい言葉である。”
シュトロワ(2)
光の宮殿、フロイスブル屋敷が立地。
デルロワズ領(2)
「大改革」中、ブラウネが息子ロベルと共に避難した地名。ロベルの政界復帰に伴い彼女らがシュトロワに戻るまで滞在。
フロイスブル屋敷(2)
シュトロワに立地するブラウネの実家。彼女が娘時代を、また彼女が没するまでの日々を過ごした、こぢんまりとした邸宅。
※ガイユール館などに比較してこじんまり。(暗君68話)
※ガイユール館などに比較してこじんまり。(暗君68話)
フローリア(2)
アングラン王正妃。グロワス13世とブラウネの娘。
ロベル(2)
サンテネリ国王。グロワス13世とブラウネの息子。彼が国王大権を手放したことで王制は廃止。サンテネリを共和制に移行させた人物。
ロワイユ・グローエ(15)
偉大なる王妃。
伝説の宝剣(26)
キッチンの端に放置された宝箱(箱買いした箱?)に入っているアルパカ。コルクじゃなくキャップなので開栓の手間が省けると言いながらぼくはラッパ飲みする。
年金(2)
夫グロワス13世の死後、彼の遺言によりサンテネリ王妃に対して国庫から支払われる。
献辞捧呈式(22)
【暗君』77話~80話に相当。『この人を見よ』では内容が少々異なる。
”グロワス13世の終生の友にして相棒になるジュール・レスパンが、世界に存在する「不正」を暴く論文を王の前で披露する中盤の名シーン。”
”王に近侍するガイユール大公(ヒロインの一人ゾフィ姫の父であり、国家の重職にありながら、敵国アングランと裏で手を結んでサンテネリ王国から自領の分離独立を図る悪役だ)は怒りのあまりジュール青年を切り捨てようとするんだけど、グロワス王がそれを咄嗟に自身の剣で受け止める。そしてその場で大公との決別を宣言するんだ。”
”グロワス13世の終生の友にして相棒になるジュール・レスパンが、世界に存在する「不正」を暴く論文を王の前で披露する中盤の名シーン。”
”王に近侍するガイユール大公(ヒロインの一人ゾフィ姫の父であり、国家の重職にありながら、敵国アングランと裏で手を結んでサンテネリ王国から自領の分離独立を図る悪役だ)は怒りのあまりジュール青年を切り捨てようとするんだけど、グロワス王がそれを咄嗟に自身の剣で受け止める。そしてその場で大公との決別を宣言するんだ。”
王の証(27)
サンテネリのぼくが欲したもの。
”「王の証……。グロワス様はそうおっしゃいました」”
”「グロワス様がもし……私たちと同じであるならば、証は統治に絶対に必要なものです。王であると自認できる根拠が必要です」”
”つまり彼は王たる正統性を持たない存在だったのだ。”
”「ゆえなくサンテネリ王となった彼を僭称者であると感じる方はいますか? この日本で、この常識の中に生きた1人の男性。自身を殺してサンテネリの重荷を背負った男性を。独り異世界で苦闘し、善きものを残そうとされた方を。——サンテネリの女私たちを受け入れてくださった方を。いらっしゃるなら、それは悲しいことです。私は長年の友を失うことになるのですから」
「メアリさん。……それは全て、全部、推測ですね」”
”「王の証……。グロワス様はそうおっしゃいました」”
”「グロワス様がもし……私たちと同じであるならば、証は統治に絶対に必要なものです。王であると自認できる根拠が必要です」”
”つまり彼は王たる正統性を持たない存在だったのだ。”
”「ゆえなくサンテネリ王となった彼を僭称者であると感じる方はいますか? この日本で、この常識の中に生きた1人の男性。自身を殺してサンテネリの重荷を背負った男性を。独り異世界で苦闘し、善きものを残そうとされた方を。——サンテネリの女私たちを受け入れてくださった方を。いらっしゃるなら、それは悲しいことです。私は長年の友を失うことになるのですから」
「メアリさん。……それは全て、全部、推測ですね」”
王冠の台座(29)
”外からは王冠の台座と見做される夫だが、実のところ彼は台座ではないのだ。自身の父ガイユール大公を含むサンテネリ最有力の貴族達が関心と畏れをもってその一挙手一投足を気にかける程度に、台座ではない。 彼は明らかに王である。”
王国の母(16)
アナリゼの死後、サンテネリと連邦共和国が個別に彼女に贈った称号。偶然にも同義。
”数ヶ月後、旧大陸と新大陸の二つの国家は女に称号を追贈した。それは偶然にも同義のものであった。「王国の母」と。”
”彼女はまことに幸せな女であった。”
”数ヶ月後、旧大陸と新大陸の二つの国家は女に称号を追贈した。それは偶然にも同義のものであった。「王国の母」と。”
”彼女はまことに幸せな女であった。”
王妃(2)
ロワイユ。ここではグロワス13世の妃。ブラウネ。
王権移譲(2)
ロベル3世が行った。サンテネリは王政から共和制に移行し、サンテネリ共和国が成立。
社会と世界設定/会社・仕事・ビジネス
| 項目 | 話数 |
|---|---|
| ブランド(39) | 39 |
| OB訪問(17) | 17 |
| お給料現金手渡しの個人事業(12) | 12 |
| ご紹介いただいても?(18) | 18 |
| ちょっとした副業(7) | 7 |
| ビジネス(18) | 18 |
| 副業(18) | 18 |
| 大改革(4) | 4 |
| 本社内のささいないざこざ(4) | 4 |
| 社会的立場の調査(18) | 18 |
| 社内の会話(26) | 26 |
| 紹介(18) | 18 |
ブランド(39)
知子というブランドについて。
”彼女にとってブランドは意味を持たない。自身の存在そのものがブランドなのだから。”
”ブランドであるとはつまり、その在り方が先天的に「定まっている」ことを意味する”
”「何者でもない」一人の普通の女が、何者かになろうとする自由を彼女は決して得ることができない。”
”彼女にとってブランドは意味を持たない。自身の存在そのものがブランドなのだから。”
”ブランドであるとはつまり、その在り方が先天的に「定まっている」ことを意味する”
”「何者でもない」一人の普通の女が、何者かになろうとする自由を彼女は決して得ることができない。”
OB訪問(17)
ぼくとの接点を作り出そうとした知子の口実。友人である私も経営者であるというアナリースの横やりも捌いて強引に押し切った。
”「凄い! 社長さんだったんですね。わたしもそろそろ就活の時期なんですけど、よく分からないことが多くって……。色々アドバイスをいただけたら嬉しいな。——そうだ! OB訪問させてください!」”
”「知子? 知子? アドバイスでしたら私がしますよ。忘れていませんか? 今年から私も経営者です」”
”「もちろん覚えてます! でもアナは私と近すぎるから。やっぱり客観的に見てもらった方がいいと思ったの。私のことを」”
”「凄い! 社長さんだったんですね。わたしもそろそろ就活の時期なんですけど、よく分からないことが多くって……。色々アドバイスをいただけたら嬉しいな。——そうだ! OB訪問させてください!」”
”「知子? 知子? アドバイスでしたら私がしますよ。忘れていませんか? 今年から私も経営者です」”
”「もちろん覚えてます! でもアナは私と近すぎるから。やっぱり客観的に見てもらった方がいいと思ったの。私のことを」”
お給料現金手渡しの個人事業(12)
高級ブティックでの青佳の慣れたふるまいに感心したぼくはいぶかしんだ。
”普通こういうところで3桁近い服を進められたら、よほど慣れていない限り腰が引けるものだけど、彼女は全く動じる気配が無い。ごく当たり前、日常の一コマみたいな感じ。なんといえばいいんだろう。傅かれ慣れてる。”
” これはやっぱり、お昼の仕事の後にお給料現金手渡しの個人事業をなさってる系なんですかね。”
”普通こういうところで3桁近い服を進められたら、よほど慣れていない限り腰が引けるものだけど、彼女は全く動じる気配が無い。ごく当たり前、日常の一コマみたいな感じ。なんといえばいいんだろう。傅かれ慣れてる。”
” これはやっぱり、お昼の仕事の後にお給料現金手渡しの個人事業をなさってる系なんですかね。”
ご紹介いただいても?(18)
ブティック店長がぼくに尋ねた。おまえが連れてきた美人たちは客なのか。自慢なのか。
”「ご紹介いただいても?」の問いとぼくの「もちろん」という答えは、この女性陣は顧客になることが可能なのか、という超婉曲な問いであり、その答えでもある。”
”可能かどうかでいえば、茉莉さんとアナリースさんは可能。 茉莉さんはバリキャリだし、アナリースさんはそもそもお父さんが最近までこのブランドの主任技師だった。そして今は経営者。 一方で青佳はるかさんは厳しい。 もちろん中型の国産車くらいの金額のものもあるから貯金をはたけば買えるだろうけど、恐らく本人が欲しがらない。勘だけどね。 で、知子ちかこさんは確実に無理だ。 女子大生だからね。でも優秀な学生さんだろうから、茉莉さんルートに乗れば将来的には可能。”
”「ご紹介いただいても?」の問いとぼくの「もちろん」という答えは、この女性陣は顧客になることが可能なのか、という超婉曲な問いであり、その答えでもある。”
”可能かどうかでいえば、茉莉さんとアナリースさんは可能。 茉莉さんはバリキャリだし、アナリースさんはそもそもお父さんが最近までこのブランドの主任技師だった。そして今は経営者。 一方で青佳はるかさんは厳しい。 もちろん中型の国産車くらいの金額のものもあるから貯金をはたけば買えるだろうけど、恐らく本人が欲しがらない。勘だけどね。 で、知子ちかこさんは確実に無理だ。 女子大生だからね。でも優秀な学生さんだろうから、茉莉さんルートに乗れば将来的には可能。”
ちょっとした副業(7)
源泉徴収表出ないタイプの主に女性がする副業。相づちや酔ったふりが上手くなるような。
ビジネス(18)
アナリゼからの度が過ぎた好意についてぼくは怯えた末、これは「日本市場の調査の水先案内人」の依頼の見返りであると解釈した。好意ではなくビジネス。
”自分で言うのもなんだけど、ぼくは人よりほんのちょっとだけ趣味の品にお金を使うタイプだ。”
”そのぼくが銀座を案内する。行きつけのお店の人に彼女とそのブランドを紹介しながら。”
”ぼくはその不可視の輪っかの中に彼女を紹介する。”
”仕事が好きとは口が裂けても言えないけど、不条理系ホラーの対象になるよりはよっぽどマシだよ。”
”つまり明日は仕事の日ということになる。”
”自分で言うのもなんだけど、ぼくは人よりほんのちょっとだけ趣味の品にお金を使うタイプだ。”
”そのぼくが銀座を案内する。行きつけのお店の人に彼女とそのブランドを紹介しながら。”
”ぼくはその不可視の輪っかの中に彼女を紹介する。”
”仕事が好きとは口が裂けても言えないけど、不条理系ホラーの対象になるよりはよっぽどマシだよ。”
”つまり明日は仕事の日ということになる。”
副業(18)
領収書が出ないタイプ。
”皆さんその、仕事(学校)が終わった後に、「姫」とか呼ばれて誕生日にはワイングラスのピラミッドにシャンパンを流す形で祝われるタイプの副業をなさってらっしゃるんですかね……。”
”偶然知り合ったお友達全員に同じブランドの同じ型番のバッグをおねだりするタイプの副業”(19)
”皆さんその、仕事(学校)が終わった後に、「姫」とか呼ばれて誕生日にはワイングラスのピラミッドにシャンパンを流す形で祝われるタイプの副業をなさってらっしゃるんですかね……。”
”偶然知り合ったお友達全員に同じブランドの同じ型番のバッグをおねだりするタイプの副業”(19)
大改革(4)
ブラウネが経験した未曾有の荒波。
本社内のささいないざこざ(4)
青佳入社間もないころの事件。ある役員が特定の女性職員へ度を過ぎた接触が原因。ぼくがおこなった明確な是正指示によりセクハラは解決したものの、社内に居心地の悪くなった被害者は退職。「部下としては社長との関係進展は望めない」と青佳が判断した根拠。
”でも、○○さんの気持ちもあるよね。あれはちょっとかわいそうだったな。わたしなら無理”(4)
”でも、○○さんの気持ちもあるよね。あれはちょっとかわいそうだったな。わたしなら無理”(4)
社会的立場の調査(18)
ハイブランドが自らのブランド価値の棄損を防ぐため、またその商品によるマネーロンダリングを防ぐために行う顧客の身元調査。
”ある程度換金性の高い商品を買う場合、社会的立場を聞かれる(そして裏で審査される)ことは多い。というか大体される。何も彼らがお高くとまってるとかそういう問題じゃない。”
”その「幻想」にそぐわない人に持たれると幻想は脆くも崩れ去ってしまう。持ってる人の属性にブランドのイメージが上書きされてしまうからね。”
”もう一つ。こっちはかなり深刻な問題。換金性の高い商品はある種の犯罪に利用されることが多い。直接ではなく、犯罪が行われた後、その証拠隠滅のために。それを規制するための法律もある。
この二つの理由はその対象が結構近接している。要するに、ブランドのイメージを上書きしてしまうタイプの人がいて、その人はお金を持ってる。そのお金をどうやって手に入れたのか、という話だね。前者は目をつぶれるけど後者は明確に駄目。”
”ある程度換金性の高い商品を買う場合、社会的立場を聞かれる(そして裏で審査される)ことは多い。というか大体される。何も彼らがお高くとまってるとかそういう問題じゃない。”
”その「幻想」にそぐわない人に持たれると幻想は脆くも崩れ去ってしまう。持ってる人の属性にブランドのイメージが上書きされてしまうからね。”
”もう一つ。こっちはかなり深刻な問題。換金性の高い商品はある種の犯罪に利用されることが多い。直接ではなく、犯罪が行われた後、その証拠隠滅のために。それを規制するための法律もある。
この二つの理由はその対象が結構近接している。要するに、ブランドのイメージを上書きしてしまうタイプの人がいて、その人はお金を持ってる。そのお金をどうやって手に入れたのか、という話だね。前者は目をつぶれるけど後者は明確に駄目。”
社内の会話(26)
茉莉との関係を加賀の叔父に問い詰められるぼく。
”「で、茉莉ちゃんとはどうなんだ」
「どうって、どうもないですよ」
「ないわけないな。それはない。分かってるな?」”
”「いや、分からないです。実際にないものはないんだから。昨日もあれですよ。一緒にワイン飲んでただけで」”
”「そうかそうか。分かった。おまえ、下川の姉さんにそれを言えるな? 堂々と」”
”「言えますよ」「よし。おれは信じよう。ねえさんがどう思うかは知らないが。——で、茉莉ちゃんはどうなんだ」”
”「だから、どうもないです」
「そういう意味じゃない。分かってるな。茉莉ちゃんはかわいいな?」
「まぁ、それは認めますよ」
「あの子も28だ。その28の女の子がおれに切羽詰まった声で電話してきて、おまえを連れ出してくれって頼んできたわけだ。分かるな?」”
”「ああ、まぁ、その。彼女は私が元気なかったから心配してくれたみたいです。昨日も突然来て、私を元気づけてくれた。優しい人だ」
「……」”
”「その痣、何かあったのか?」
「ああ、昨日時計着けたまま寝ちゃって」”
”「その割には今日は時計着けてないな」「ゴルフでしょう? 着けませんよ。一発で壊れる」「三代目は物の善し悪しが分かってらっしゃらないなぁ! おれのこれを見ろ。ゴルフだろうがなんだろうがいつも着けてるが、壊れたことは一度もない。それをおまえはあれだけ色々持ってるくせに、貧弱なやつばかりだ」”
”「否定はしません。でも、それが趣味ってものでしょう」
「そういうものか、おまえの趣味は」”
”「で、茉莉ちゃんとはどうなんだ」
「どうって、どうもないですよ」
「ないわけないな。それはない。分かってるな?」”
”「いや、分からないです。実際にないものはないんだから。昨日もあれですよ。一緒にワイン飲んでただけで」”
”「そうかそうか。分かった。おまえ、下川の姉さんにそれを言えるな? 堂々と」”
”「言えますよ」「よし。おれは信じよう。ねえさんがどう思うかは知らないが。——で、茉莉ちゃんはどうなんだ」”
”「だから、どうもないです」
「そういう意味じゃない。分かってるな。茉莉ちゃんはかわいいな?」
「まぁ、それは認めますよ」
「あの子も28だ。その28の女の子がおれに切羽詰まった声で電話してきて、おまえを連れ出してくれって頼んできたわけだ。分かるな?」”
”「ああ、まぁ、その。彼女は私が元気なかったから心配してくれたみたいです。昨日も突然来て、私を元気づけてくれた。優しい人だ」
「……」”
”「その痣、何かあったのか?」
「ああ、昨日時計着けたまま寝ちゃって」”
”「その割には今日は時計着けてないな」「ゴルフでしょう? 着けませんよ。一発で壊れる」「三代目は物の善し悪しが分かってらっしゃらないなぁ! おれのこれを見ろ。ゴルフだろうがなんだろうがいつも着けてるが、壊れたことは一度もない。それをおまえはあれだけ色々持ってるくせに、貧弱なやつばかりだ」”
”「否定はしません。でも、それが趣味ってものでしょう」
「そういうものか、おまえの趣味は」”
紹介(18)
お客としての価値をそれぞれ紹介。
”「こちらは三沢青佳さん。私の会社で働いてくれていた方です」
「それで、こちらは島津知子さんです。まだ学生さんですけど、とても優秀な方で美術に造形が深い。私の大学の後輩でもあります」
「そして、三沢さんのお隣の方は下川茉莉さん。遠縁の親戚ですが、私と違って彼女は凄い優秀で。○○不動産の、あ、日本橋にお勤めです」”
”「最後に、そちらがアナリース・エストブールさんです。——あ、店長さんのお考えの、そのエストブールさんです」「ということは、エストブール氏の?」「はい。ご息女です」”
”「こちらは三沢青佳さん。私の会社で働いてくれていた方です」
「それで、こちらは島津知子さんです。まだ学生さんですけど、とても優秀な方で美術に造形が深い。私の大学の後輩でもあります」
「そして、三沢さんのお隣の方は下川茉莉さん。遠縁の親戚ですが、私と違って彼女は凄い優秀で。○○不動産の、あ、日本橋にお勤めです」”
”「最後に、そちらがアナリース・エストブールさんです。——あ、店長さんのお考えの、そのエストブールさんです」「ということは、エストブール氏の?」「はい。ご息女です」”
場所と装い/場所・住居・店・移動
| 項目 | 話数 |
|---|---|
| ぼくのマンション(5) | 5 |
| ぼくのマンションの近隣(25) | 25 |
| ぼくのマンションの間取り(36) | 36 |
| ぼくの行きつけのブティック(18) | 18 |
| ぼくの部屋(12) | 12 |
| ぼくはタクシーが苦手(35) | 35 |
| 大学でのぼくの専攻(29) | 29 |
| 大学時代のぼくの好み(23) | 23 |
| 広告代理店時代のぼくのアパート(23) | 23 |
| ブティックでの席順(18) | 18 |
| ブティックのVIPスペース(18) | 18 |
| ブティック一階の棚(30) | 30 |
| ブランドの銀座離れ(18) | 18 |
| 日本が世界に誇るあるコレクションブランドの直営セレクトショップ(17) | 17 |
| 某イタリアブランドの路面店(12) | 12 |
| 水曜19時の銀座の光景(7) | 7 |
| 銀座(3) | 3 |
| オシャレバル(12) | 12 |
| フレンチレストランでの着座順(21) | 21 |
| 有楽町の某フレンチレストラン(21) | 21 |
| K大学(9) | 9 |
| K大学(16) | 16 |
| Sciences-Po(9) | 9 |
| コリドー街、神楽坂(6) | 6 |
| ベランダのガラス戸(12) | 12 |
| モール6階の書店(17) | 17 |
| ルー・サントル(9) | 9 |
| ヴェノンのアパルトマン(16) | 16 |
| 上野(41) | 41 |
| 上野の老舗洋食屋(42) | 42 |
| 光の宮殿(2) | 2 |
| 六本木の高級コンドミニアム(43) | 43 |
| 女子会会場(27) | 27 |
| 学校の近くにある大盛りで有名なラーメン屋さん(6) | 6 |
| 帝国ホテル(1) | 1 |
| 恩賜公園(42) | 42 |
| 松濤(41) | 41 |
| 洗面所の歯ブラシ置いてるあたりとかお風呂のシャンプー置き場(5) | 5 |
| 自動車(38) | 38 |
| 表参道(12) | 12 |
| 駅前のスーパー(36) | 36 |
| 高級ショッピングモール(17) | 17 |
| 黒塗りの高級車(26) | 26 |
ぼくのマンション(5)
茉莉の会社の物件。最新の免震構造。
ぼくのマンションの近隣(25)
駅を挟んで商業地区となっており、色々なお店が軒を連ねる。駅ビル、ドラッグストア、銀行、個人商店街安、安さの殿堂。
ぼくのマンションの間取り(36)
茉莉の家庭教師をしていた大学3年時に当時の彼女と別れて(「死と変容」)以来、女の影はなさそうなので、何を思ってこんなに広い家を選んだのか気になる。
”リビング、ダイニング。この二つは以前招かれたときに通されて記憶にある。 今回はそれ以外の部屋——寝室と書斎、そして物置として使われているらしき多目的の部屋までも見て回った。 3LDKの間取りは恐らく家族用のもの。 男はそこに独りで住んでいた。”
”寝室に目立つ物はベッドしかない。少し乱雑に、しかし見苦しくならない程度に覆われた掛け布団。枕。壁に設えられた扉の向こうは恐らくウォークインクローゼットになっているのだろう。”
”書斎には大きな机とノートパソコン。そしてメモ帳といくらかの筆記用具。読みさしの本が数冊。そしてオフィスチェア。 机の背後の壁は一面が本棚になっているが、立派な建て付けに比して中身はほとんど空だ。 数百冊はゆうに収納可能なスペースに5〜6冊の本がポツリと置かれている。空のスペースが広すぎるため、本はもはや直立せずドミノ倒しの体で横たわっていた。”
”物置部屋には、彼女の肩幅ほどの一辺を持つ直方体の、あるいは立方体の箱が大量に、几帳面に、ある種のパズルのように積上げられていた。上面に描かれたブランドのロゴからそれが時計の化粧箱であろうことが分かる。 壁面には彼女の胸元まで届くほどの高さの不思議な収納家具が置かれている。ガラス張りの両開き扉の向こうに何かが等間隔に並んでいるのが見えた。「オートワインダーだよ」と男は説明した。”
”リビング、ダイニング。この二つは以前招かれたときに通されて記憶にある。 今回はそれ以外の部屋——寝室と書斎、そして物置として使われているらしき多目的の部屋までも見て回った。 3LDKの間取りは恐らく家族用のもの。 男はそこに独りで住んでいた。”
”寝室に目立つ物はベッドしかない。少し乱雑に、しかし見苦しくならない程度に覆われた掛け布団。枕。壁に設えられた扉の向こうは恐らくウォークインクローゼットになっているのだろう。”
”書斎には大きな机とノートパソコン。そしてメモ帳といくらかの筆記用具。読みさしの本が数冊。そしてオフィスチェア。 机の背後の壁は一面が本棚になっているが、立派な建て付けに比して中身はほとんど空だ。 数百冊はゆうに収納可能なスペースに5〜6冊の本がポツリと置かれている。空のスペースが広すぎるため、本はもはや直立せずドミノ倒しの体で横たわっていた。”
”物置部屋には、彼女の肩幅ほどの一辺を持つ直方体の、あるいは立方体の箱が大量に、几帳面に、ある種のパズルのように積上げられていた。上面に描かれたブランドのロゴからそれが時計の化粧箱であろうことが分かる。 壁面には彼女の胸元まで届くほどの高さの不思議な収納家具が置かれている。ガラス張りの両開き扉の向こうに何かが等間隔に並んでいるのが見えた。「オートワインダーだよ」と男は説明した。”
ぼくの行きつけのブティック(18)
”行きつけというか、もはや喉が渇いたら喫茶店代わりに利用しているほどによく来るこのブティックは銀座中央通りの新橋側、さっきぼくが知子ちかこさんと偶然出会ったあのショッピングモールのすぐ近くにある。
あるスイスのブランドグループが保有しているブランドをひとまとめに展示している、いわばそのブランドグループの日本本社だね。
地下1階から4階までがブランドブティックになっていて、その上はメンテナンス受付と工房。さらに上階はオフィス。最上階がイベントスペースになってる。結構良い景色だよ。銀座の美味しいところがそこそこ見える。
で、ぼくがよく行くのは3階。まぁ2階も4階もよく行くといえば行くけど、一番付き合いが長くて波長があうのが3階。Bで始まるブランドのブティックだ。”
あるスイスのブランドグループが保有しているブランドをひとまとめに展示している、いわばそのブランドグループの日本本社だね。
地下1階から4階までがブランドブティックになっていて、その上はメンテナンス受付と工房。さらに上階はオフィス。最上階がイベントスペースになってる。結構良い景色だよ。銀座の美味しいところがそこそこ見える。
で、ぼくがよく行くのは3階。まぁ2階も4階もよく行くといえば行くけど、一番付き合いが長くて波長があうのが3階。Bで始まるブランドのブティックだ。”
ぼくの部屋(12)
マンションの31階。ベランダには木製のアウトドアテーブルが置いてある。
”こういうタイプの建物には珍しく、ベランダがしっかりあるんだ。 部屋の電気を消して外に出ると、階下に、永遠に、途切れることなく、光の粒が広がってる。”
” 夏の初めの夜はとても過ごしやすい。高いところは地表よりもちょっとだけ気温が低い。そしてなんといっても虫が来ない。蚊とか。すばらしいね。”
”こういうタイプの建物には珍しく、ベランダがしっかりあるんだ。 部屋の電気を消して外に出ると、階下に、永遠に、途切れることなく、光の粒が広がってる。”
” 夏の初めの夜はとても過ごしやすい。高いところは地表よりもちょっとだけ気温が低い。そしてなんといっても虫が来ない。蚊とか。すばらしいね。”
ぼくはタクシーが苦手(35)
無駄遣いしている感覚がすごいらしい。
” 思えば新卒からの数年間はぼくの生活習慣に意外と強烈な痕跡を残しているね。たとえばタクシー。ぼくはとても苦手なんだ。乗るとひどく後ろめたい気分になる。無駄遣いの極地みたいな。うちの会社の若手の皆さんの方がよっぽど乗り慣れてる。”
” 思えば新卒からの数年間はぼくの生活習慣に意外と強烈な痕跡を残しているね。たとえばタクシー。ぼくはとても苦手なんだ。乗るとひどく後ろめたい気分になる。無駄遣いの極地みたいな。うちの会社の若手の皆さんの方がよっぽど乗り慣れてる。”
大学でのぼくの専攻(29)
文学部哲学科。当時はヤバい人たちの巣扱いされていたが、現在でも変わらないらしい。
”「専攻はどこですか? 美美美術美学科かな?」
「正解です! 分かりやすい感じですよね、私。——先輩は……あ、言わないでください。当てますから。たぶん哲学!……か、仏文フランス文学科!」
「ああ、ずるいな、答えを二つも。私は哲学ですね。あそこ、今も”ヤバい人たちの巣”扱いされてるのかな」”
”事実を事実と肯定できず一瞬目を逸らすも、気を取り直した彼女は一際声高く、強く、男に語りかける。”
”「専攻はどこですか? 美美美術美学科かな?」
「正解です! 分かりやすい感じですよね、私。——先輩は……あ、言わないでください。当てますから。たぶん哲学!……か、仏文フランス文学科!」
「ああ、ずるいな、答えを二つも。私は哲学ですね。あそこ、今も”ヤバい人たちの巣”扱いされてるのかな」”
”事実を事実と肯定できず一瞬目を逸らすも、気を取り直した彼女は一際声高く、強く、男に語りかける。”
大学時代のぼくの好み(23)
クラシック音楽、特にオペラと哲学。前者はにわか程度、後者は学問として修めていた。
”青年がクラシック音楽、特にオペラを好むことを知ったのはまだ彼女が高1の頃だった。雑談の最中、彼はお気に入りの作家について彼女に語った。いかにもかぶれた文学部生の仕草で。 そして当時読んでいた哲学書についても語った。こちらは意外にも分かりやすく、半ば現代文の授業のような調子で。 大学生となった今振り返れば、それは当時の彼の音楽と哲学に対する解像度の差であろう。半可通とすらいえないクラシック音楽と本格的に勉強していた哲学では理解度が異なる。そして理解が深ければ深いほど、他者への説明は分かりやすくなる。”
”青年がクラシック音楽、特にオペラを好むことを知ったのはまだ彼女が高1の頃だった。雑談の最中、彼はお気に入りの作家について彼女に語った。いかにもかぶれた文学部生の仕草で。 そして当時読んでいた哲学書についても語った。こちらは意外にも分かりやすく、半ば現代文の授業のような調子で。 大学生となった今振り返れば、それは当時の彼の音楽と哲学に対する解像度の差であろう。半可通とすらいえないクラシック音楽と本格的に勉強していた哲学では理解度が異なる。そして理解が深ければ深いほど、他者への説明は分かりやすくなる。”
広告代理店時代のぼくのアパート(23)
”地方の私鉄駅から10分ほど歩いたところにある単身者用アパート”
”男が就職したのは小さな広告代理店。仕事が相当な忙しさであろうことは生活感の無い部屋の様子からすぐに分かった。たぶん家に帰っても寝るだけなのだと。その忙しさゆえ、特定の親密な異性が存在しないであろうことも。”
”フローリングに置かれたローテーブルの上には小難しい本が何冊も積み上げられている。『園芸』『建築』『流通』『経営』『リーダーシップ』『組織』『財務』 視界が捉える表紙から読み取れる単語は、そのどれもが男の未来を暗示していた。 輝かしい未来を。”
”男が就職したのは小さな広告代理店。仕事が相当な忙しさであろうことは生活感の無い部屋の様子からすぐに分かった。たぶん家に帰っても寝るだけなのだと。その忙しさゆえ、特定の親密な異性が存在しないであろうことも。”
”フローリングに置かれたローテーブルの上には小難しい本が何冊も積み上げられている。『園芸』『建築』『流通』『経営』『リーダーシップ』『組織』『財務』 視界が捉える表紙から読み取れる単語は、そのどれもが男の未来を暗示していた。 輝かしい未来を。”
ブティックでの席順(18)
四人掛けの椅子と一人用の椅子を寄せて、横並びに座った。アナリース・知子・ぼく・青佳・茉莉。
” 店長さんを対面に、ぼく達が長い腰掛け椅子にずらっと並んで座った。4人掛けなので、単座の一脚を寄せて。 本当はぼくがその単座に行きたかったんだけど、残念なことに茉莉さんに取られた。彼女は小学校のレクリエーション強かったタイプだな。椅子取りゲーム。 そんなわけで、不思議なくらい自然にぼくが真ん中に誘導されている。 右隣には青佳はるかさん、左隣にはなぜか知り合ったばかりの知子ちかこさん。その向こうにアナリースさん。 青佳さんのさらに向こう、単座の椅子に茉莉まりさん。”
” 店長さんを対面に、ぼく達が長い腰掛け椅子にずらっと並んで座った。4人掛けなので、単座の一脚を寄せて。 本当はぼくがその単座に行きたかったんだけど、残念なことに茉莉さんに取られた。彼女は小学校のレクリエーション強かったタイプだな。椅子取りゲーム。 そんなわけで、不思議なくらい自然にぼくが真ん中に誘導されている。 右隣には青佳はるかさん、左隣にはなぜか知り合ったばかりの知子ちかこさん。その向こうにアナリースさん。 青佳さんのさらに向こう、単座の椅子に茉莉まりさん。”
ブティックのVIPスペース(18)
ぼく行きつけのブティックの隠し扉の裏にある商談スペース。他人の目にさらされたくない立場の顧客向け。宮殿風の豪華なしつらえにも女性陣は特に驚きを示さなかった。
”ここのお店、通常の接客スペースの奥、一見壁としか見えないシークレットドアがあって、その先に結構大きな商談部屋がある。”
”ヴェルサイユ宮殿? プチトリアノン? 分からないけど、その辺りの時代を模した白基調のインテリアで、薄暗い黒基調のウッディーな通常スペースとはまさに別世界。”
”誰とまでは聞かなかったけど、政治家の方とかやんごとなき血筋の方とか来るみたいだから。”
”ここのお店、通常の接客スペースの奥、一見壁としか見えないシークレットドアがあって、その先に結構大きな商談部屋がある。”
”ヴェルサイユ宮殿? プチトリアノン? 分からないけど、その辺りの時代を模した白基調のインテリアで、薄暗い黒基調のウッディーな通常スペースとはまさに別世界。”
”誰とまでは聞かなかったけど、政治家の方とかやんごとなき血筋の方とか来るみたいだから。”
ブティック一階の棚(30)
バッグとか飾ってある。可愛い動物モチーフの鞄など。
”布地の模様に色々な動物が描かれてて牧歌的だ。寝そべってるライオンとかね。”
”布地の模様に色々な動物が描かれてて牧歌的だ。寝そべってるライオンとかね。”
ブランドの銀座離れ(18)
アナリースをビジネスとして案内するために僕が懸念した事項。
”そうと決まればお店の選定はやり直さなければならない。場合によっては青山辺りも連れて行くべきかも。最近各ブランド、若干銀座離れ進んでるからね。超高級系ブランドでも。
渋谷は駄目だ。あそこは価格帯の桁が二つ低い。表参道と新宿は悩ましいところだけど、上品系で行くなら新宿はちょっと。
あ、そういえば住宅街のど真ん中に突如ブティック建てた高級ブランドあったな。ドイツの。あそこモノは最高だしコンセプトも分かるけど、アクセス悪すぎ。
やっぱり銀座が鉄板か。”
”そうと決まればお店の選定はやり直さなければならない。場合によっては青山辺りも連れて行くべきかも。最近各ブランド、若干銀座離れ進んでるからね。超高級系ブランドでも。
渋谷は駄目だ。あそこは価格帯の桁が二つ低い。表参道と新宿は悩ましいところだけど、上品系で行くなら新宿はちょっと。
あ、そういえば住宅街のど真ん中に突如ブティック建てた高級ブランドあったな。ドイツの。あそこモノは最高だしコンセプトも分かるけど、アクセス悪すぎ。
やっぱり銀座が鉄板か。”
日本が世界に誇るあるコレクションブランドの直営セレクトショップ(17)
新しいブランド好きの知子が銀座に来れば必ず立ち寄る場所。ショップ最上階のカフェで軽食を食べ、名物の「にんじんケーキ」を楽しむ。
某イタリアブランドの路面店(12)
青佳とのデートでぼくが訪れた。クリエイティブディレクターが蛇の意匠好き。男物ではドカンとリアルな蛇の絵が描かれたバッグとか財布を展開。
”ブティックのセールスって実はすごい特殊技能職だよ。 関係性が定かではない男女の素性をごく自然に、相手の気分を害さないように暴きながら物を売る。これは名人芸だ。二人は夫婦かもしれないし友人かもしれない。場所柄を考慮するとそのどちらでもない期間限定の関係性である可能性も大いにある。”
”特に男の方がいい年した、一歩間違うとセンシティブな可能性を秘めた男女が放り込まれるのは大体服売り場だ。利益率高いからね、アパレル。”
”店員さん、わざとらしい小声で冗談めかして、三沢さんに「彼氏さん、カッコいいですね」みたいに囁いてる。ぼくたちが指輪をしてないところからの推測かな。 無難な「彼氏さん」。全方位角が立たない魔法の言葉。 三沢さんは曖昧な笑みを浮かべつつも否定しない。「そんなことないですー」とか言わない。彼女は優しい人だからね。”
”ブティックのセールスって実はすごい特殊技能職だよ。 関係性が定かではない男女の素性をごく自然に、相手の気分を害さないように暴きながら物を売る。これは名人芸だ。二人は夫婦かもしれないし友人かもしれない。場所柄を考慮するとそのどちらでもない期間限定の関係性である可能性も大いにある。”
”特に男の方がいい年した、一歩間違うとセンシティブな可能性を秘めた男女が放り込まれるのは大体服売り場だ。利益率高いからね、アパレル。”
”店員さん、わざとらしい小声で冗談めかして、三沢さんに「彼氏さん、カッコいいですね」みたいに囁いてる。ぼくたちが指輪をしてないところからの推測かな。 無難な「彼氏さん」。全方位角が立たない魔法の言葉。 三沢さんは曖昧な笑みを浮かべつつも否定しない。「そんなことないですー」とか言わない。彼女は優しい人だからね。”
水曜19時の銀座の光景(7)
ぼくは二人の美女を伴って並木通りを歩いた。
”海外からお越しの観光客の皆さんがいなくなって、代わりにサラリーマンとかサラリー出す側マンとかが出没し出す。大体サラリー出す側マンの方が多いね。あと、夜モードでイカ釣り漁船みたいに電飾を煌めかせて空ぶかしするランボルギーニ。”
”海外からお越しの観光客の皆さんがいなくなって、代わりにサラリーマンとかサラリー出す側マンとかが出没し出す。大体サラリー出す側マンの方が多いね。あと、夜モードでイカ釣り漁船みたいに電飾を煌めかせて空ぶかしするランボルギーニ。”
銀座(3)
見合い後、ぼくが青佳と徒歩デートした。東銀座まで10,000歩を優に超えて歩いた模様。
オシャレバル(12)
メインの通りを一つ外れた路地裏に立地。ぼくが青佳と昼ご飯を食べた。
” 無農薬栽培の青菜をミキサーで混ぜたジュースとかが出てくる感じのお店。我々は芋虫の雌雄かな。”
” 三沢さんはちょっと物珍しげにメニューを眺めた後、果敢に挑戦してたね。勇気ある。それとも女の人の本能がうずくのかな。 一方男の本能は葉っぱのジュースなんかには反応しない。男の場合はそのね、葡萄をちょっと発酵させた感じの液体に反応するようにできてる。 ご想像通り、ぼくはシャンパンを頼みそうになったけど、そこはぐっとこらえたよ。さすがに。 代わりに麦を発酵させた液体にしておいた。”
” 無農薬栽培の青菜をミキサーで混ぜたジュースとかが出てくる感じのお店。我々は芋虫の雌雄かな。”
” 三沢さんはちょっと物珍しげにメニューを眺めた後、果敢に挑戦してたね。勇気ある。それとも女の人の本能がうずくのかな。 一方男の本能は葉っぱのジュースなんかには反応しない。男の場合はそのね、葡萄をちょっと発酵させた感じの液体に反応するようにできてる。 ご想像通り、ぼくはシャンパンを頼みそうになったけど、そこはぐっとこらえたよ。さすがに。 代わりに麦を発酵させた液体にしておいた。”
フレンチレストランでの着座順(21)
アナリースと由理の面通しという目的、支払いがぼくであるという理由による配置。由理はぼくと食べるときはなぜか断固おごられたがる。
”ぼくが長テーブル、部屋最奥の一片。つまりいわゆる上座に鎮座している。で、出口側の対面、下座には由理くん。ぼくから見て右側、手前に青佳さん、続いて知子さん、左側には茉莉さん、アナリースさんと続く。”
”ぼくが上座の理由はここの支払いがぼくだから。大体上座か下座の人が払うからね。別に由理くんが上座でもいいんだけど、彼はぼくと食べるときに限って断固奢って欲しがるから。その割にはこういう高い店に来るとワイン頼むとき「いい?」ってチラ見してくる。普段遠慮がないくせに肝心の所で繊細なやつだ。”
”ぼくが長テーブル、部屋最奥の一片。つまりいわゆる上座に鎮座している。で、出口側の対面、下座には由理くん。ぼくから見て右側、手前に青佳さん、続いて知子さん、左側には茉莉さん、アナリースさんと続く。”
”ぼくが上座の理由はここの支払いがぼくだから。大体上座か下座の人が払うからね。別に由理くんが上座でもいいんだけど、彼はぼくと食べるときに限って断固奢って欲しがるから。その割にはこういう高い店に来るとワイン頼むとき「いい?」ってチラ見してくる。普段遠慮がないくせに肝心の所で繊細なやつだ。”
有楽町の某フレンチレストラン(21)
ぼくがアナリースたちと由理を引き合わせるためにセッティングしたフレンチのお店。有名人である由理と女性陣への配慮から選択。ビジネス用途として最上に近く、極めて複雑な芸術的物体と芸術的液体を提供してくれる。
”急遽の客用にリザーブされてる個室、6人が一堂に会することができる長テーブル。壁には等間隔にこぢんまりした油絵が飾られてる。作者は美術の教科書に出てくる系のビッグネームだ。あ、直筆真作だからね。”
※”あの人達”のバトル会場:有楽町「アピシウス」
https://x.com/kentaro_honjo/status/1961649794855964703
”急遽の客用にリザーブされてる個室、6人が一堂に会することができる長テーブル。壁には等間隔にこぢんまりした油絵が飾られてる。作者は美術の教科書に出てくる系のビッグネームだ。あ、直筆真作だからね。”
※”あの人達”のバトル会場:有楽町「アピシウス」
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K大学(9)
ぼくの母校。アナリースが大学時代交換留学で滞在しチカコと知り合った。経済、文学、特にフランス文学に強い(9)。
K大学(16)
アナリースが交換留学生として1年滞在した。フランスのグランゼコールが二重単位協定(双方の留学生が留学先で取得した単位を本校の単位と認定する制度)を結ぶ数少ない大学の一つ。
Sciences-Po(9)
シアンス・ポ。フランスの最高学府。
”フランスでは大学よりも上(エリート養成機関という意味で)に「グランゼコール」という括りがある。 Grandes Écoles。日本語に訳すと「高等専門学校」。 この中でも政治経済系のトップがさっき言った Sciences-Po。正式名称は「パリ政治学院」。日本だとどこだろう。東大法学部かな。実際はそれより全然狭き門だけどね。 ヨーロッパ、特にフランスの場合、政財界の上級ポストに就くためにはこのグランゼコール出身であることがほぼ必須条件になっている。学閥社会の完成形みたいなところなんだ。 よってアナリースさん、本当ならばマイナー時計ブランドのローンチとかやってる場合じゃない。ヨーロッパ中の超大手企業を選り取り見取りだし、行こうと思えば政治家も官僚も狙える。 つまり彼女、ヤバい才媛だ。”(9)
”フランスでは大学よりも上(エリート養成機関という意味で)に「グランゼコール」という括りがある。 Grandes Écoles。日本語に訳すと「高等専門学校」。 この中でも政治経済系のトップがさっき言った Sciences-Po。正式名称は「パリ政治学院」。日本だとどこだろう。東大法学部かな。実際はそれより全然狭き門だけどね。 ヨーロッパ、特にフランスの場合、政財界の上級ポストに就くためにはこのグランゼコール出身であることがほぼ必須条件になっている。学閥社会の完成形みたいなところなんだ。 よってアナリースさん、本当ならばマイナー時計ブランドのローンチとかやってる場合じゃない。ヨーロッパ中の超大手企業を選り取り見取りだし、行こうと思えば政治家も官僚も狙える。 つまり彼女、ヤバい才媛だ。”(9)
コリドー街、神楽坂(6)
ケーキ会の際、ぼくが想像した茉莉が行きそうな盛り場。”相手はたぶん丸の内の商社に勤めるエリサー。仕事は超優秀で出世頭。実家も極太。知的で思いやりがあって、女性のエスコートもそつが無い。あ、帰国子女とかそういう設定も付け加えておこう。三カ国語くらいネイティブレベルでしゃべれるんだきっと。そして趣味はフットサルだろ。(6)”
ベランダのガラス戸(12)
あけ放たれている。
” 綺麗な夜景を目に焼き付けるぼくの耳が、開け放った背後のガラス戸の向こうに起こる異変を捉えた。”
” 綺麗な夜景を目に焼き付けるぼくの耳が、開け放った背後のガラス戸の向こうに起こる異変を捉えた。”
モール6階の書店(17)
ショッピングモール6階の半分を占有した大型書店。
”小説、評論、技術書、新書など定番のものから、実店舗にはあまり置いていない画集や美術書に至るまで、胸を張って「書店である」と名乗るに足る在庫を誇っている。”
”中でも知子ちかこが好むのは美術書と画集のコーナーだった。
古典から現代美術に至るまで、幅広い、人類の感性が持ちうる多様性の展覧会といったところ。”
”画集には美麗な表紙のものが多い。軽く眺めるだけならば小説や評論よりも少しはましであるといえる。退屈であることには変わりがないが、少しだけましな退屈なのだ。”
”小説、評論、技術書、新書など定番のものから、実店舗にはあまり置いていない画集や美術書に至るまで、胸を張って「書店である」と名乗るに足る在庫を誇っている。”
”中でも知子ちかこが好むのは美術書と画集のコーナーだった。
古典から現代美術に至るまで、幅広い、人類の感性が持ちうる多様性の展覧会といったところ。”
”画集には美麗な表紙のものが多い。軽く眺めるだけならば小説や評論よりも少しはましであるといえる。退屈であることには変わりがないが、少しだけましな退屈なのだ。”
ルー・サントル(9)
Rue Centrale。直訳すると「中央の通り」。小グロワスの対価を渡すことを断られ、代わりにできることはないかと聞いたぼくにアナリースが伝えたデート先。要するに銀座「中央通り」であろうとぼくは理解した。ここ並木通りから歩いて2分くらい。
”「では、今度わたしを連れて行ってください」
「いいえ。——ルー・サントルの、あなたの行きつけのお店へ」”(9)
”「では、今度わたしを連れて行ってください」
「いいえ。——ルー・サントルの、あなたの行きつけのお店へ」”(9)
※暗君98話を参照
”「ああ、残念だ。あなたのような美しい方をお連れできれば、私はどこの店でも鼻高々だったろうに」
「では、いずれ参りましょう。ルー・サントルに」”(暗君98話)
”「ああ、残念だ。あなたのような美しい方をお連れできれば、私はどこの店でも鼻高々だったろうに」
「では、いずれ参りましょう。ルー・サントルに」”(暗君98話)
ヴェノンのアパルトマン(16)
宮廷を追われたアナリースが暮らした住居。エストビルグ王国の首都ヴェノン、王宮から離れた閑静な居住区に立地。今だ数少ない中産階級の上澄みと貴族の子弟の別宅として好まれた三階建ての集合住宅の一列。
”それは「正教の威光のもと諸王を束ねる権威を与えられた人界の君主が領する地」の第一皇女が住むには少々手狭な住処だった。”
”それは「正教の威光のもと諸王を束ねる権威を与えられた人界の君主が領する地」の第一皇女が住むには少々手狭な住処だった。”
上野(41)
行ったことのないアメ横周辺を散策したいと言われたぼくがアナリースとデートした。ぼくとってはに大学時代に授業をサボって上野公園でおにぎり食べたり、アメ横に掘り出し物探索ツアーしたりしたのが青春の思い出。
上野の老舗洋食屋(42)
上野デートでぼくとアナリースがちょっと早い夕食をとった、明治ごろからある洋食屋。洋食と銘打ちながらもはや完全な日本食。アナリースは微かに物珍しげに、かつ美味しそうに食べた。ぼくはビールを我慢した。
光の宮殿(2)
パール・ルミエ。サンテネリ王城。ブラウネが人生の大半を過ごした。
六本木の高級コンドミニアム(43)
ブランド立ち上げまでの仮住居としてアナリースが一室を借り上げた。窓の向こうには夜景が広がる。
女子会会場(27)
ぼくの会食の2日後、月曜夜19時から開催された「偉大なる王妃の会」会場。円座に座った。
”白と金を基調としたインテリアに高い天井から垂れるシャンデリア。至るところに設置された間接照明は抑制されて、漆喰を模した——あるいは本物の——壁こそが光源となっている。
それは燭台の灯がもたらす光によく似ている。彼女がかつて慣れ親しんだものに。”
” 初夏の六本木、絶品のトリュフを比較的手頃な価格で提供することで定評のあるフレンチレストランの一室に4人の女が集った。”
※偉大なる王妃の会の会場:東京ミッドタウン「アルティザン・ドゥ・ラ・トリュフ」
https://x.com/kentaro_honjo/status/1961649794855964703
”白と金を基調としたインテリアに高い天井から垂れるシャンデリア。至るところに設置された間接照明は抑制されて、漆喰を模した——あるいは本物の——壁こそが光源となっている。
それは燭台の灯がもたらす光によく似ている。彼女がかつて慣れ親しんだものに。”
” 初夏の六本木、絶品のトリュフを比較的手頃な価格で提供することで定評のあるフレンチレストランの一室に4人の女が集った。”
※偉大なる王妃の会の会場:東京ミッドタウン「アルティザン・ドゥ・ラ・トリュフ」
https://x.com/kentaro_honjo/status/1961649794855964703
学校の近くにある大盛りで有名なラーメン屋さん(6)
ぼくの大学の近くにあった大盛りで有名なラーメン屋さん。鍋持参で行くとテイクアウトをしてくれるので、友達と一緒に食べていた。
帝国ホテル(1)
東京の格式あるホテル。日比谷駅近く。ぼくが青佳とお見合いをした。
”「まぁ、緊張なさっていらっしゃいますの? この会は少々肩肘張っておりますかしら。——陛下」”
※『暗君』4話”「この茶会はちょっと肩肘はっているね」”
”「まぁ、緊張なさっていらっしゃいますの? この会は少々肩肘張っておりますかしら。——陛下」”
※『暗君』4話”「この茶会はちょっと肩肘はっているね」”
恩賜公園(42)
上野駅の脇に広がる広大な空間。美術館や博物館、コンサートホール、動物園などがある。ぼくが大学時代、落ち込むたびにとぼとぼ歩いた思い出の土地。密閉型ヘッドホンで爆音のワーグナーを流し、現実の視界と脳内で繰り広げられる理想の世界の同時摂取でトリップしていた。彼女に振られた時も来た。
松濤(41)
しょうとう。渋谷区の高級住宅街らしい。知子の家がある。怖いね。
洗面所の歯ブラシ置いてるあたりとかお風呂のシャンプー置き場(5)
久しぶりにぼくのマンションにやってきた茉莉が真っ先にチェックした。
”「何か捜し物かな?」「いいえ。兄さんのこのお部屋、うちの物件ですよね。最近結構大きな地震があったので不具合がないか確認です」(5)”
”「それで、この建物は大丈夫そうかな?」「ええ。今のところ異常無さそうです。よかった」(5)”
”「何か捜し物かな?」「いいえ。兄さんのこのお部屋、うちの物件ですよね。最近結構大きな地震があったので不具合がないか確認です」(5)”
”「それで、この建物は大丈夫そうかな?」「ええ。今のところ異常無さそうです。よかった」(5)”
自動車(38)
ぼくは2シーターのスポーツカーも大きなSUVも豪勢なセダンも、国産車も外車も乗った経験あり。乗り心地や運転の快感のみならず、威圧と富の誇示も含めてかつてのぼくは好きだったが、事故を起こして他者を傷つけることへの不安からあまり乗らなくなった。現在ゴールド免許を保持し、愛車は一般的にはラグジュアリーセダン扱いのイギリス製SUV。東京のど真ん中に映える姿はどう見てもアウトドア向きじゃないのに高いアウトドア性能を誇るらしい。エンジンも大きくスピードも出る。運転席のメーターのところが全面液晶になっていて、そこにナビの地図を写すことができる。
表参道(12)
由理くんと会った週の日曜、一人でいるのがつらかったぼくが三沢さんを誘って繰り出した。アウェーらしい。
※暗君大逆未遂事件後の焼き直しか
” ぼくがね、切実に欲していたんだ。
彼女を——あるいは、一緒にいてくれる誰かを。”(12)
※暗君大逆未遂事件後の焼き直しか
” ぼくがね、切実に欲していたんだ。
彼女を——あるいは、一緒にいてくれる誰かを。”(12)
駅前のスーパー(36)
”品揃えはいいが値付けはそこそこ高い。”
” 彼女は肉、野菜、米、その他副菜の状態と値段を吟味しながら、釣り合いの取れたものを手早くカートに放り込んでいく。 一方男は全く役立たずだ。カートを押しながら彼女の後を機械的について回るのみ。”
”「お菓子も買いますか? お好きなものを入れていいですよ」「いや、ぼくは別に……」”
” 食料品の支払いは彼なのだから、青佳に「カートに入れることを許す」権利はない。しかしこの場において彼女は王妃ロワイユである。下男は従わなければならない。
”「ちゃんと選んでください」 反論を許さない口調で厳命されて、男はきょろきょろと棚を見渡し、ポテトチップスの袋を一つ手に取った。”
” 菓子と茶は絶対に確保しておくべき物資である。 茶を飲み菓子を食べるようになれば酒量が減る可能性がある。たとえ変わらないにしても、つまみとともに飲む方がいくらかはマシと考えた。”
” 彼女は肉、野菜、米、その他副菜の状態と値段を吟味しながら、釣り合いの取れたものを手早くカートに放り込んでいく。 一方男は全く役立たずだ。カートを押しながら彼女の後を機械的について回るのみ。”
”「お菓子も買いますか? お好きなものを入れていいですよ」「いや、ぼくは別に……」”
” 食料品の支払いは彼なのだから、青佳に「カートに入れることを許す」権利はない。しかしこの場において彼女は王妃ロワイユである。下男は従わなければならない。
”「ちゃんと選んでください」 反論を許さない口調で厳命されて、男はきょろきょろと棚を見渡し、ポテトチップスの袋を一つ手に取った。”
” 菓子と茶は絶対に確保しておくべき物資である。 茶を飲み菓子を食べるようになれば酒量が減る可能性がある。たとえ変わらないにしても、つまみとともに飲む方がいくらかはマシと考えた。”
高級ショッピングモール(17)
銀座中央通りの新橋側に立地する、一際大きな高級ショッピングモール。古き良きデパートを改装した建物の中には世界中の様々なブランドがテナントとして入居している。ほとんど百貨店だが、デパート固有の売り場が存在しないために「ショッピングモール」。モール6階フロア半分を占有する書店は知子のお気に入り。
黒塗りの高級車(26)
加賀巌の自動車。とてもいかつい現行型のAMG。黒塗りのセダン(フラッグシップモデル)。シートオプションのマッサージ機能があり、ちょっと昔に流行ったR&Bが上質のスピーカーから流れる。
”一分の隙もなく洗い上げられた漆黒のドイツ製高級車。現行型。決して200万とかで買える型落ちじゃない。もう一度言う。現行型。 後部トランクにはAMGとかいう凶悪なバッヂとSの文字。ロングボディ。 後部座席とリアのウィンドウには一応合法のスモーク。あ、これはディーラーオプションだよ。たぶん。ホイールも車体色に合わせて艶あり黒の20インチ。 とっても上品な車だね。 前をこの車が走ってたらできる限り車間距離を空けるタイプの。”
”このまま山奥に連れて行かれて、そのまま産業廃棄物処理場に……みたいな、ね。こういうステレオタイプのイメージを勝手に膨らませるのはよくない。それは分かってるんだけど、運転席に座るのはイエローゴールド無垢のデイデイトをじゃらっと緩く着けたツーブロックのおじさんだからね。超怖い。”
”とんでもなく音響のいいステレオから流れてくるのがちょっと昔に流行ったR&Bだったりするのがまた。これがコテコテの演歌だったりするとイメージ通り過ぎて笑えるんだけど、絶妙にリアリティがある選曲。超怖い。”
”変な圧をかけるのはやめて欲しい。 愛娘に手を出したチンピラを埋めに行く、みたいな雰囲気を出すのは。 茉莉さんは叔父さんの娘じゃないし、ぼくはコンプラ意識の高い叔父さんの会社の社員でもないんだから。”
”無言になる叔父さん。 映画とかだとこの後、リアシートに潜む配下のチンピラに突然後頭部打ち抜かれたりするパターン。ぼくが。 でも、ありがたいことにこの車にはぼくと叔父さんしか乗ってない。だから安心。……乗ってないよね? 若干不安になってチラッと後ろを確認してしまった。”
”一分の隙もなく洗い上げられた漆黒のドイツ製高級車。現行型。決して200万とかで買える型落ちじゃない。もう一度言う。現行型。 後部トランクにはAMGとかいう凶悪なバッヂとSの文字。ロングボディ。 後部座席とリアのウィンドウには一応合法のスモーク。あ、これはディーラーオプションだよ。たぶん。ホイールも車体色に合わせて艶あり黒の20インチ。 とっても上品な車だね。 前をこの車が走ってたらできる限り車間距離を空けるタイプの。”
”このまま山奥に連れて行かれて、そのまま産業廃棄物処理場に……みたいな、ね。こういうステレオタイプのイメージを勝手に膨らませるのはよくない。それは分かってるんだけど、運転席に座るのはイエローゴールド無垢のデイデイトをじゃらっと緩く着けたツーブロックのおじさんだからね。超怖い。”
”とんでもなく音響のいいステレオから流れてくるのがちょっと昔に流行ったR&Bだったりするのがまた。これがコテコテの演歌だったりするとイメージ通り過ぎて笑えるんだけど、絶妙にリアリティがある選曲。超怖い。”
”変な圧をかけるのはやめて欲しい。 愛娘に手を出したチンピラを埋めに行く、みたいな雰囲気を出すのは。 茉莉さんは叔父さんの娘じゃないし、ぼくはコンプラ意識の高い叔父さんの会社の社員でもないんだから。”
”無言になる叔父さん。 映画とかだとこの後、リアシートに潜む配下のチンピラに突然後頭部打ち抜かれたりするパターン。ぼくが。 でも、ありがたいことにこの車にはぼくと叔父さんしか乗ってない。だから安心。……乗ってないよね? 若干不安になってチラッと後ろを確認してしまった。”