句読点(くとうてん)
英punctuation, 仏ponctuation, 独Interpunktion
『言語学大辞典術語』
英punctuation, 仏ponctuation, 独Interpunktion
『言語学大辞典術語』
[総論]
音声言語の場合,音声連続の中で,それを休止したり中絶したり,また高低や強弱によってアクセントをつけたり,また抑揚を示すことができるが,文字言語の場合は,そのような微妙なニュアンスを同時に示すことはできない.一般に,文字言語では,せいぜい分節音素(segmental phoneme)を表わすだけである.そこで,休止とか中絶,あるいは抑揚などいわゆる超分節音素(suprasegmental phoneme)を示そうとすれば,何らかの補助的記号を用いなければならない.句読点は,そのような補助記号の一つである.
音声言語の場合,音声連続の中で,それを休止したり中絶したり,また高低や強弱によってアクセントをつけたり,また抑揚を示すことができるが,文字言語の場合は,そのような微妙なニュアンスを同時に示すことはできない.一般に,文字言語では,せいぜい分節音素(segmental phoneme)を表わすだけである.そこで,休止とか中絶,あるいは抑揚などいわゆる超分節音素(suprasegmental phoneme)を示そうとすれば,何らかの補助的記号を用いなければならない.句読点は,そのような補助記号の一つである.
句読点という言葉は,元来,漢文を読む場合の休止を示す句点(。)と,休止に至るその中間の段落を表わす読点(、)を合わせた言い方であって,漢文の白文に振って文の理解に資するものであった.漢文の本文は,ただ四角い字が羅列するだけであるから,それを読むには意味をとって段落をつけていかなければならない.その段落の印が,句点であり読点である.したがって,それは統語論的機能を担うものである.
欧米の句読点も,ほぼ同様の機能をもつ.ピリオド(period),コンマ(カンマとも,comma)などがそれである.しかし,欧米の句読点には,疑問符(interrogation mark,question mark)や感嘆符(exclamation mark)などもある.これらも,統語論的働きをもつ.そして,疑問や感嘆の抑揚を補足的に示す.日本でも,現代では,多分に欧米の句読点にならって句読点を用いているが,昔はそのようなものは使わなかった.それは,日本語という言語が,形態論的にその必要がなかったからである.というのは,日本語では,文の終わりや句の終わりに用言がくるのが統語の原則であり,しかもその用言の形態が,終止とか連体とか連用といった語の接続を顕在的に形の上で示しえたからである.用言の形態が,いわば句読点の役をするのである.中国語や欧米の諸言語には,こういうことはない.したがって,句読点を必要とするようになったのである.
[日本語の句読点]
日本語の句読点も,正確で迅速な読み取りを可能にするために加えられる区切り符号といえる.上述のように漢文の訓読に早くから使用されたが,日本語の韻文や散文は,句読点を使用しない書記文体として発達した.平安時代の仮名文は,句節の関係が柔軟な書記文体であり,切れ続きは文章のリズムに依存している.文の切れ目を明示する場合には係り結び掌が臨機に使用されている.また,他の書記文体でも,文末に「也」や「候」が画かれるなど,符号によらずに切れ続きが示されている.その原理は,中国古典文(漢文)と共通である.
日本語の句読点も,正確で迅速な読み取りを可能にするために加えられる区切り符号といえる.上述のように漢文の訓読に早くから使用されたが,日本語の韻文や散文は,句読点を使用しない書記文体として発達した.平安時代の仮名文は,句節の関係が柔軟な書記文体であり,切れ続きは文章のリズムに依存している.文の切れ目を明示する場合には係り結び掌が臨機に使用されている.また,他の書記文体でも,文末に「也」や「候」が画かれるなど,符号によらずに切れ続きが示されている.その原理は,中国古典文(漢文)と共通である.
日本語の表記に句読点を体系的に使用したのは16世紀末に出版されたキリシタンのローマ字文献が最初である.ピリオドやコンマだけでなく,セミコロンや疑問符などが導入されている.疑問符のあとの語が小文字で書きはじめられているなど,文章の切れ続きを日本語の表現に即してとらえようとした努力のあとが認められる.ただし,日本語一般の表記に影響を与えることはなかった.
日本語の文章に句読点を付ける習慣が浸透したのは,明治期以後の学校教育の結果であるが,付け方は一定していない.文末に句点を置くことは習慣化しているが,読点については個人の判断や好みに委ねられているのが実情である.規則化の試みはあるが,日本の書記文体にその伝統がなく,また,漢字か仮名かの選択によって,「ここに,はいれない」「ここには,いれない」の場合には読点が不可欠でも,「ここには入れない」なら不要である,というたぐいの判断が随所に要求されるので,規則化するとしたら,正書法車の確立が前提になる.なお,横書きでは,ピリオドとコンマとが句点と読点とに代えて使用されることがある.