異郷にてⅣ 救済の少女 [マリア 紫水 メシア]

ルプ・ウさんが入室しました
ルプ・ウ : (そうして、城壁に衛られ、覆い尽くされた街の中で、相も変わらず空は虹色の渦を巻いている
ルプ・ウ : (――王都の中心に聳え立つ、天に届かんばかりの巨大な枯聖木。
ルプ・ウ : (多くの住民の居住区となっているその樹は、数多の階層に分かれており、超高速巫術エレベーターで行き来が可能だとか。
ルプ・ウ : (が、それは平時の話。 緊急避難によりエレベーターは動作停止。
ルプ・ウ : (異国よりの来訪者は、己の脚で頂上を目指す事となる。
マリアさんが入室しました
紫水さんが入室しました
マリア : ――無事に「城」が起動したようね。(無限にも思える階段を上り続け、黙々と頂上を目指す二名
マリア : これで、「次元ごとこの街を閉じ込めた」。…何かが起こってしまっても、被害を食い止められます。
マリア : もっとも…術者が限界を迎えては元も子もありませんから。私達の為す事は変わりませんが。
紫水 : ………。次元ごと。
マリア : …えぇ。今のこの地は、言ってしまえば次元の狭間ですね。
マリア : …追っ手が来る気配もありません。下で戦う者達も、うまくやっているという事でしょう。
紫水 : (……那菜葉様…。そして皆も。
紫水 : ………。
紫水 : とにかく今は、貴方を守るのみです。———万里愛様。
マリア : …。この道中、私の敵になる者は居なかったでしょう?(ふ、と軽口叩いて
マリア : あの子の遣わしただろう兵が、何度か道を阻んできましたが。
マリア : …私達の敵ではありませんよ。…進みましょう。(ひたすらに階段を上っていくと――― ついに、か
マリア : (これまでのとは建物の雰囲気が違う、開けた場所に出てくる 最上層――…
紫水 : ……ええ。
マリア : ……王族達の居住区ですね。(石・土作りの豪奢な建造物の間を抜けて
マリア : (足取りは迷わず、目指すはその中心地。
ルプ・ウ : (天を巻く虹色の渦は、彼女の目指すその場所に向かっているようにも見える
マリア : (次期王女曰く。聖樹最上層の中央には、祷りを捧げる為の祭壇があるそうだ。
マリア : (――……彼女が現れるならば、きっと。
マリア : (やがて見えてくる。小高い丘の上、石造りの階段が四方から伸びる建造物
紫水 : (………、ここが旅の終着か。
マリア : ……(祭壇を見上げて
マリア : ……行きましょう。
紫水 : ……御意。
マリア : (そして、石段を登っていく―――……
ルプ・ウ : (石段の頂上。 祭壇の上。 渦の中心。
メシアさんが入室しました
メシア : ――――……(折れそうに細く、白い身体に、白金の髪が揺れて。
メシア : ……狭いわね…(次元のブレか、姿も声も、どこか儚く、ここにいないような
マリア : …………
メシア : …空が狭いわ。 ねえさま達、あたしをココに閉じ込めたの?(禍々しい色の空を仰ぎ見、2人に視線を―…向ける。
紫水 : ……、
紫水 : (万里愛の身をかばうように前にずいと出る。
メシア : (蒼を基調とし、不思議に移り変わる大きな瞳がその様子をとらえる) ふふ。
メシア : …そんなに警戒なさらないで? あたし――…
メシア : あなた達と戦いたくは無いの。
マリア : …… メシア?
紫水 : (————……何を考えているか表情から読めない。
メシア : あたしのやろうとしている事、わかっていただきたいのよ。(両手を組むように合わせて、胸元を押さえて
メシア : そうしたらきっと戦うなんて悲しい事をしなくて済むわ!(爛漫に、花のように笑んで
マリア : …。芽思愛。…お前の願う事は解っています。(コツ、とブーツを踏み出して
マリア : お前はずっと、嘆き、悲しみ、苦しんできました。あの日の喪失を憂いてきました。
マリア : お前はただ一つの個人的な願いの為に、世界を巻き込もうとしている。そうでしょう?
マリア : 『死んだ人間を生き返らせる』為に。
紫水 : (……『死んだ人間を生き返らせる』
メシア : えぇ。(目を閉じて
メシア : でもね、それだけじゃないの。
メシア : お父さまが、お母さまが、士縒が、あたし達の傍に帰ってきてくれたら。それはとても、とっても幸せな事。
メシア : けどね。 それだけじゃ足りないの。
マリア : ………
メシア : だって…… あんな悲しい事が、「また起こってしまうかもしれない」でしょう?
メシア : あたし、そうなったら耐えられない。あんな事、もう二度と起こしちゃいけない。
メシア : 起こるような世界じゃ、いけないのよ。
マリア : …… だから、■■の持ち主を殺したのですか。
マリア : ヴァール・ハイトの目的は■■■■の蒐集でしたが、それは結果的に、世界から■■を消し去る下準備ともなりました。
メシア : うん。……でもね、それはあくまで下準備。
メシア : あたしがこれから築く世界に、■■を扱うような悪い人間は要らないから。
メシア : だから、先に消しておいたの。
マリア : ………。
マリア : …死者の蘇生のみでもない。■■の排除のみでもない。更に踏み込んだ願望。
マリア : それを、世界を…多次元を用いて行う、ですか。 ……
メシア : えぇ。
メシア : あたしね、この世界から『死』をなくそうと思うの。
紫水 : 『死』を……?
メシア : ええ!そうしたら誰も悲しい想いをせずに済むでしょう?
メシア : 生きていれば、命があれば次があるわ。何度でもやりなおせる。きっと、わかっていただける。
メシア : それってとっても素敵な世界だと思わない?(ねえ、と期待に満ちた瞳で2人を見つめて
紫水 : フム。(真剣に考え込む。
マリア : ………
マリア : ……その技法に、お前は行き着いたというのかしら?
メシア : えぇ、そうよ! 「死を再生する」禁術…
メシア : 今はあたしの手ずからでしか扱えないけど、…徐々にプロトコルを広げていって…
メシア : 最終的には世界に術式を書き込めば、それは新たな世界のシステムとなる。 
メシア : つい最近も、同じやり方で世界は変えられたでしょう? 平和の為に、世界の為に。
マリア : ………(ふむ、と考える。
マリア : ……死者の蘇生には、何かしらの理屈が必要です。 …
マリア : その鍵は、『パラレルヴァース』にある。そうですね?
メシア : えぇ、流石はねえさまね!(にこにこと微笑んで
紫水 : パラレルヴァース。……やはり。
マリア : 「パラレルヴァース」に在る並行世界の同一人物を連れてくるのは、死者の蘇生とは言えないでしょう。記憶も生い立ちも似て非なる。別の存在です。
マリア : 「魂」が異なる……と言えば良いかしら。
メシア : えぇ、そうね。あたしもそう思うわ。(少し眉を下げて笑んで
メシア : あたしがするのは、もっと別の形。
メシア : ……ねぇ、2人は知っているでしょうけど…
メシア : 無数にある「パラレルヴァース」のうち、殆どは滅びの未来を辿るわ。
メシア : そこにはあたし達と同じ分だけの、沢山の命が、魂があるのに。
メシア : それってとっても悲しい事だと思うのよ。
マリア : ……、(ぁぁ、と
紫水 : 基本となる世界はあくまでこの世界であり、それ以外は…。
マリア : 滅びゆく世界の同一存在の魂を、死した肉体の「つなぎ」にする――?
紫水 : ………。(「つなぎ」?
メシア : 正解よねえさま!(ぱっと笑って
メシア : …死者の魂はとても儚いわ。肉体はどうにかなっても、そこを蘇らせるのが一番難しい。だから……
メシア : 滅びゆく別次元の魂を屍体に沢山詰め込んで、元の魂を固着させる依代にするの。
メシア : そうして『死の再生』は成し遂げられる。 あらゆる世界の死が、救われるのよ。
マリア : ………。メシア。
紫水 : ……。
メシア : ……私ね、姉様みたいに優秀じゃないし、頭も良くないわ。心だってつよくない。
メシア : でも、いっぱい頑張ったの。飛ばされた別世界でも、いっぱい…… そしてやっと見つけたの!
メシア : やっとねえさまの役に立てる。 ねえさまを救う事ができるって!
マリア : ………
マリア : (この世界の為に、別次元の数多の命を犠牲にする。 間違っていると、断じるべきだろうか。
マリア : (それが例え、いずれ滅びる定めであったとしても。それは命の私用に他ならないと。
紫水 : ……、恐ろしい話には聞こえます。
紫水 : 無理やりつないだところで結局は、基本となるこの世界の魂を歪めることにもなるのではないでしょうか。
メシア : 紅玉を見てもそう思った? 彼はイレギュラーな部分も多いのだけれど…
メシア : 生身であることに拘ったり、ね。 …でも、彼の魂は昔からああよ。少しも歪んでいない。
紫水 : …………。
マリア : …それは、彼が強固な意志を以て蘇生したからでは無いかしら。
マリア : 同一存在とはいえ、別個の魂を定着させられた肉体に、影響が無いとは――…
メシア : ねえさま。
メシア : …もう、無理しなくていいのよ。
マリア : …… メシア?
メシア : …ねえさまは、ただしく在ろうとしているのよね。「死んだ人間が生き返るのは、正しい事ではない」って。
メシア : そんな今の世界の規範に、従おうとしている。 …だから…
メシア : 「彼」の呪いを解く事ができないんでしょう?(紫水を、見て
マリア : ―――……
紫水 : ……。
紫水 : 成程。(何やら腑に落ちた様子で。
紫水 : 確かに私が今ここに在ることは、正しい事ではないのでしょう。
メシア : …ねえさまは、昔から立場があったものね。ワガママ言えないの、わかるわ。
メシア : …でも、もう、いいじゃない。 素直になったって。
メシア : おとうさまとおかあさまが戻ってきて、何がいけない事があるの?
メシア : 大切なひとの命を救う事の、何が間違っていると思うの?
マリア : ………、、 メシア…!
メシア : ねえ、もう、認めましょうよ。今までこんなに、つらい思いをしたんだもの。
メシア : …あたし達だって、救われていい筈でしょう……?
マリア : ……………、、(頭を、抱える 陰になった貌は、今までに見せた事がない表情をしている
紫水 : ……。…万里愛様。
マリア : (私は――…あの船で――、この旅で―――… この戦いで――……
マリア : (隣にいるこの男に、すくわれていた。 ――…それこそが、己の矛盾となる。
マリア : 、っ(声に、紫水を見遣って
紫水 : …。大丈夫です。(落ち着いた声で。
紫水 : ———貴方は、貴方の思うままに成せばいい。
紫水 : ………私はそれに従うだけです。
紫水 : (たとえこの身が滅びようとも。
マリア : ―――――
マリア : ………――――(……そう、か。 (俯き、口元を手の甲で押さえる
マリア : 。(ガリ。
マリア : 芽思愛。(面を上げて、はっきりとした声で目の前を見据えて
マリア : 私は――お前の救いを受け入れません。
メシア : 。 姉様…?(目を見開いて
マリア : 私を育んだ倫理が、私の中に在る魂が、それを良しとしないからです。
メシア : ―― そんな、なら……!(紫水の方を見て
メシア : その騎士を棄てるって言うの? 今まで共に歩んで来たんでしょう…?
メシア : それが、ねえさまの「正しさ」なの…!?
マリア : …。
マリア : お前を止めます。
メシア : ……! ねえさま…!
マリア : (―――ですが、今の私に、そんな力は無いのです。 メシア。
マリア : (次元を渉り、禁忌を得て、死を克服し。 最早「超常」と化したお前を止める手段を―――…
マリア : (今の私は、一つしか知りません。
マリア : 紫水。(隣を向いて
マリア : ――― 命令です。(片手を伸ばして
紫水 : …御意に。
紫水 : (奪うための剣ではなく、それが守るための剣ならば、
マリア : (その頬に触れて、此方を向かせて
紫水 : ……。
マリア : ―――世界を救いなさい。(唇を奪う
マリア : (――マリアの舌に乗った自身の血液が、口の中を通して紫水に交換される
紫水 : ……!!(刀を振るえという命令であるとばかり。なすすべなく唇を奪われ、
マリア : (―――【治療警察・交】。
メシア : ―――へ???
マリア : (―――そうでした。 私は最初から、そうでした。
マリア : (――「お前は私に直々に乞われて、今ここに居るのよ。」
マリア : (―― お前だけは唯一、私が自ら選びました。 …お前なら成すべき事を成してくれると。それを出来る、力と心を持っていると。
紫水 : (紫水の体の崩壊がはたと止む。「祝福」が体に満ち、記憶に基づく身体の修復術式は完成する。
紫水 : ………、
マリア : (私は、只の私情と感傷のみで、お前を此処に連れて来たのではありません。
紫水 : 我が剣は…、
マリア : (――――「本気」で、来たのです。
紫水 : 『不義なる御敵を誅す剣』。
メシア : ………、ぇ、………(頭が、追い付かない だって、あたしの事は拒むのに、なんで。彼を、
メシア : なんで。
紫水 : 唸れ我が剣、不御誅〈フオンチュウ〉……!!!!!!!
メシア : なんでなんでなんで。 あたし、ずっと、ねえさまの為に、ねえさまの役に立ちたくて――…(大地が、揺れる、 彼女の精神に呼応するかのように次元が歪む
マリア : …この旅で少し丸くなったようなの、私。
紫水 : (抜刀。『対超常』。第十属性『冥』。上位天使、神性、精霊、幻獣、選ばれし者に対する特攻は勿論、人知を超えた存在や能力に対して強力な特攻を持つ。
マリア : 人に頼る事を覚えました。(それは、結局の所只の理論武装かもしれないけれど。
紫水 : (その『冥』属性をあらん限り込めた全力での抜刀とともに周囲を漆黒の奔流が飲み込む。
メシア : ――― そんな、、、 そんな!(夥しい漆黒を前に
メシア : (歪んだ次元が裂け、ぞろぞろ零れるように屍体が迫って来る―――が、瞬く間に漆黒に呑み込まれて
メシア : そんなの、 ズルい―――――!!(抜刀の鋭い一撃がメシアの身体を呑み込む
メシア : (メシアに組み込まれた――この祭壇に、街に組み込まれた超常が―――祝福により超強化された『冥』に斬り飛ばされていく
メシア : ―――――――――
紫水 : ……御免。(チャキンと刀を鞘に収める
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メシアさんが退室しました
紫水さんが退室しました
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最終更新:2021年02月13日 03:00