ライト・バース・シャドウ/シャドウ・バース・ライト [アルド オウル かすか]

――さんが入室しました
―― : (――子どもの泣き声というのは、どうしてああも耳に響くのだろう。
―― : (…理屈は、何処かで聞いた事がある。 まだ幼く弱い命は、周囲の大人に助けを求める為に泣いてサインを送る。
―― : (だからこそ、それを聞いた周囲の大人の耳に、心に強く引っ掛かる。生物の仕組みとして、そういう風に出来ていると。
―― : (なら――… あの時、自分は――――
―― : (―― 「お願い、します、、 どうか、この子だけは―――」
―― : (助けを、 求めていた、あの声を――――
―― : (――「オレは、、 どうなったって、構わないから――……」
―― : ――――
―― : (…………今にして思えば。
―― : (生殺与奪を相手に握らせた時点で、もう手はなかった。
―― : (自分は、抗わなくてはならなかった。
―― : (そうだ――― あの、
―― : (後に【狂犬】と呼ばれる事となった、あの男のように。
――さんが退室しました
アルドさんが入室しました
アルド : ――――   (はた、と両目を開く。
アルド : (視界に飛び込む蛍光灯の明かり。 …どことなく薄暗いのは、電灯が切れかけているからか。
アルド : ……、…………(ソファからのそりと身を起こすと、掛けた覚えの無い毛布がずり落ちかけて
アルド : (――ココドバイ警察署 某特務室。
アルド : ……はぁ。(随分な寝付きであった。 ぐしゃりと前髪を押さえて
アルド : (……ブリッドウェル誘拐事件より、✕✕時間後。
アルド : (事件の諸々の処理を終え、各担当部署に引き渡した後。
アルド : (早速の予後調査……の前に、少しばかり仮眠を取らせて貰った所。
オウルさんが入室しました
アルド : ……(ここの所事件続きだ。…警察が忙しいのはまんま良い事ではない。
アルド : (立ち上がり、毛布をソファの背に掛けて…) ん。
オウル : (丁度同じタイミングで、扉を開けて入ってくるトレンチコート。
オウル : (くぁ、と欠伸をして) おー、起きたかアルド。
アルド : ……ぁー、ハイ。 おかえりなさいセンパイ。(だが髪も結んでおらず。寝起き感がありありと
オウル : ブリッドウェルんとこの坊も容態は安定したようだな(おつかれさん、と書類をテーブルに置いて
アルド : あぁ、 ………そうですか。(抑揚薄いが、声に安堵が滲んで
アルド : (長い髪を後ろでまとめながら、テーブルに置かれた書類に視線を向ける
オウル : だが、ホシの方は駄目だな。 何時間も前に街を出ちまってる。
アルド : ………。
アルド : …やはり、アルグレンの線が濃そうですか。
オウル : 恐らくな。 だが氏も憎まれ役だからな。誰が逆恨みしたっておかしくはねぇ。
オウル : どっちの上層部もお冠でよ。 マスコミ対応は二階の連中に任せとけば良いんだが……(懐からタバコを取り出し
アルド : …(ねじってまとめて、バレッタでバチン、と
アルド : …ま、何にせよ追って調査が必要スね。(ソファの縁に雑に掛けてあった外套を取り、羽織って
アルド : …ブリッドウェル氏とも約束しましたし。 …じゃ、オレはまた出ます。
オウル : ――シャドウダイバー、か。(火を付けて一息。
アルド : …。 えぇ。
アルド : 現場で遭遇しました。…調べない訳にぁ行きません。(言って、扉へと歩く
オウル : ……アルド。
アルド : ……何スか、センパイ。
オウル : 世の中ってのはクソだ。 ホシがアルグレンっつーなら、まさにその事だろう。
オウル : お偉方インテリ連中が、一生懸命勉強しなさって、今度は自分を守るためにそいつを総動員する。
オウル : クソじゃねぇわけがねぇ。
アルド : ……。
オウル : でもよ、それでもルールはルールだ。 理不尽でも、ゼロよりはずっと良い。
アルド : ……えぇ。
オウル : 手前だってその世の中に二本足突っ立ててんのによ。そのルールまで全否定しちゃ話にならねぇ。
オウル : 世の中もルールもクソだが、そいつを否定するそいつ(シャドウダイバー)ってのも、大概な無法モンだ。
オウル : ……検挙率に貢献するから逮捕しねぇでいたが……(半分嘘。かの存在が一種の抑止力にもなると考えている
アルド : ………
オウル : (それは、アルドとの共通認識だが――)……お前の好きにしな。別に、アイツで世の中守られてるわけでもねぇ。
アルド : …… とにかく、話をしておきたいですね。 …できるかは判りませんけど。
アルド : …今回の件に"彼女"がどう絡んだのかも不明ですから。 …ま、行ってきます。(瞑目して
オウル : おー。
アルド : (扉を開け、特務室の外へ出て行く
アルドさんが退室しました
オウル : ……(ふー、と煙を吐いて
オウル : ……おめぇはよくやってるよ。
オウル : (伸びをして)さーて、俺はお上さんの相手をしてくるか――
オウルさんが退室しました
かすかさんが入室しました
かすか : (ココドバイ某所――シクニ自然公園。
かすか : (緑化と称して広々と作られたこのエリアではランニングから散歩、要所に散らばる遊具エリアから民間人が多く出入りする。
かすか : (が、それも疎らになってきたか。時刻は既に夕方過ぎ。
かすか : (木々で阻まれて見えないが、ここからだとシモノセキ・ターミナルが近いか。
かすか : ……(まぁ、その視線を上げようとも、しないが。
かすか : ――、(微かに目を開けて、ため息をつく
アルドさんが入室しました
かすか : (瞼を閉じると、ついぞ何時間か前の凄惨がフラッシュバックする。
アルド : (そんなかすかの視界に映り込む人影。正面に立つ姿
かすか : ――……。
かすか : (上向くわけでもなく、僅かに目を細める。
アルド : …こんばんは。 (どーぞ、と缶コーヒーをかすかに差し出して
かすか : …、。
かすか : ……どうも。(素直に受け取る
アルド : …。(手を下ろして) ……まー、幾らか、
アルド : 聞きたい話があるもんで。…(少し時間を貰う、という事か
かすか : ………。
アルド : …。(かすかの座るベンチの端に、一人分の隙間を開けて腰掛ける
アルド : …(さて、何処から切り出したものか、だが…
アルド : …… ブリッドウェル氏のご子息ですが、容体は落ち着いたようですよ。
アルド : …指の接合も間に合うとの事です。…完治には時間が掛かるでしょうが。
かすか : ……昼間、ニュースでも持ち切りでしたね。
アルド : …あぁ、そうなんですね。(何せあれからテレビ見てない
アルド : …アンタが着いた時、犯人は現場に居ましたか。
かすか : …………。何のことです。
アルド : ……… (はぁ、と嘆息して
アルド : アンタを署に連行して、吐くまで問い詰める事も可能ですが。
アルド : そうする利点はどっちにも無いでしょう。 …まどろっこしい真似はナシにしませんか。
かすか : ……スパイの次は脅迫、ですか ……。(深く、ゆっくり、息を吐く
かすか : (――悲痛な、心をえぐる、小さな体では到底受け止めきれない痛みと絶望が振り絞られた幼い悲鳴。
アルド : ……見咎められたのが運の尽きでしょう。(ボソッと
かすか : (瞼を閉じるとフラッシュバックするそれらは、未だに胸の中で木霊している。……正直、かなりまいっている。
アルド : (もっと問答無用の措置なんて幾らでも有り得るのだ。…あの応援の若者になんて知られてみろ。…と言いたくなる所だが。
アルド : (まあ、それはこちらにしてみれば、の話か。 …横目に、かすかの様子を窺う
かすか : ……(状況としては詰みに近い。知らぬふりにも限界がある。ともなれば徹底抗戦か、あるいは――
かすか : ……、っふ、(自嘲する。 わかっている、公僕に、街に反すればどうなるかなど
かすか : ……それを訊いて、どうするつもりですか。 犯人を、追いますか?
アルド : …追いますよ。 そういう規範で、職業で、集団です。オレ達は。
アルド : ……ま、 アンタがとっちめず、状況を明言もせず…って事は、
アルド : …そういう事なんだろう、と予測はできますけどね。
かすか : ……。
アルド : ……「犯人」が追われる事を、良しとしませんでしたか。
かすか : …………
かすか : ……解決しない…(ポツリと
アルド : …。(ん、と
かすか : ……何も、解決しない。
アルド : ………。
かすか : アルグレンを斃しても、彼を知る人の遺恨が残る。
かすか : 逮捕すれば。 今日のように”暴力”をチラつかせて自白させて、そうして、彼は一方的なルールで裁かれる。
かすか : ……結局、燻りは消えない。 数年前そうだったように、胸を焦がして、誰かを焼き払わずには居られない。
かすか : ……彼に情状があった訳じゃない。(思い起こすのは、ナイフと、黒い牙のような自らの手。
かすか : ……あそこに、答えなんか、なかった。
アルド : ………。
かすか : 息子さんの件、良かった、です。 ……ありがとうございました。(ベンチを立って
アルド : ……こうすれば正解、なんてモノは無かったかもしれませんね。
アルド : けど。(立ち上がる背に
アルド : …ブリッドウェル氏の子息は、何も罪を犯してはいません。
アルド : あんな目に遭う謂れは無かった筈です。
アルド : ……「復讐者」の心理を、オレは理解できますよ。 子々孫々根絶やしにしたいと願う存在もあります。
アルド : ……けれどね、それはやはり、どうしたって「正しくないこと」なんです。
アルド : ……そうやって抑え込む枠組みは… 法<ルール>や、秩序は、必要です。
かすか : ――――。
かすか :  (途端、空間がピリついて
かすか : (ドン!! ――と黒い炎が彼女から上がる!
アルド : ―― … ッ!?
かすか : なるほど、貴方の言っていることは、きっと、正しい。
かすか : 道理で、正論で、人の道でしょう。
かすか : 正義の味方と言っていい。
かすか : 彼を囚えて、厚生させる。そんな美学があっても良い。
アルド : …………(立ち上がって、黒炎を見据えて
かすか : それでも。 それは「正しい」だけの「言葉」だ。
かすか : 正しくない? ルール?  そんな事を、彼の前で、言ってみろ。
かすか : (黒い炎越しに、金色の瞳がアルドを睨む
かすか : ――その時こそ、私は貴方達を赦しはしない。
アルド : ……オレは正しくありたいだけです。 …ですけど、そうですね。
アルド : オレは敢えて断言しますよ。 アレグレン氏は間違いを犯したと。
かすか : ――許される行為ではない。(そんなことは、何度だって、血が出るほど噛み締めた
かすか : (なら、何故、彼は、彼らは、ルールとやらに、殺されたのか。
アルド : ……オレが正義の味方なら、アンタは何の味方ですか。
かすか : ―――……。
アルド : …昨夜のアンタの行いで、「アレグレン氏を救った」とでも思ってるんですか。
かすか : ……違う(ギリ、と食い縛る
かすか : (私は、 何も できなかった
かすか : (幼子が凶器にかかる前に辿り着くことも
かすか : (復讐に駆られた彼を咎めることも、更生させることも、捉えることも
かすか : (治療に漕ぎ着けたのは、目の前の彼の功績だ。 何故、いの一番に駆けつけた自分がそうできなかったのか。
かすか : (――代わりに犯人となる誰かが必要だった。でなければ、怒りと悲しみの鎖は続く。
かすか : (もう誰にも泣いて欲しくなかった。あの時、漠然とそう思うと、それ以上の思考が止まってしまった。
かすか : ……ッ、、(アルグレンは到底釈されるべきではない。だが、今の司法に突き出すのとどうなるかなど、目に見えていた。
アルド : ……… アンタの私刑に助けられた人間は多いでしょう。警察<オレ達>もその一部です。
アルド : ……けども、割り切れないモノに答えを出す事から逃げているようでは、私刑は私刑でしかありません。
アルド : …警察も司法も、そりゃまるで完璧じゃーない。…悪し様に言われる事は避けられないし、実際クソな所も多い。
アルド : …でも、それでも。それは何かで定めなければ、…誰かがやらなければならない事です。
かすか : …………。(ギリ
アルド : ……法も秩序も無い街は、こんなもんじゃない地獄だ。
かすか : ……上からの立場でなら、何とでも言えます。
かすか : 答えを出すことから逃げているのは、そちらも一緒ではないですか。
アルド : …規範に従ってるだけ、ですか?(ハッと
かすか : ……信号を守るのとは話が違う。 自分の行動に責任を持たなくなる。責任を転嫁するだけです。
アルド : …自分の判断がいついかなる時も絶対的に正しいと、信じられる程には思い上がってないだけです。
かすか : ……行くべきで無い所に行けと命じられたら? 行くべき所に行くなと禁じられたら?
アルド : その時にどうするかの答えを聞いて、アンタは納得しないでしょうね。
アルド : …水掛け論ですよ、コレ。 ……オレとアンタ、決定的に考え方が違います。
かすか : ……そうですね。(すう、と炎が引いていく
アルド : ……ま、それが解っただけ、会話した意味はあったってトコか。(ふぅ、と
かすか : ……何しに来たんですか(よくわからない、といった顔で
アルド : …どーも。聞き込みにご協力、ありがとうございました。(無表情で
アルド : …ブリッドウェル氏と約束があったもので。アンタの事はちゃんと調べる、とね。
かすか : ……だとすると、そろそろ潮時、ですか。
アルド : …えぇ、そーゆートコですね。
アルド : …… 捜査線上の関係者の情報は、基本的に明かせないルールになっていますから。
アルド : アルグレン氏の情報がブリッドウェル氏に伝わる事はありません。 …ま、警察からは、になりますけどね。(言いつつ、歩き出す
かすか : …………
アルド : …… そんじゃ、どうもお手数かけました。(片手をひら、として 歩き去っていく
アルドさんが退室しました
かすか : ――――、
かすか : (すっかり、あたりは暗くなっていて
かすか : (冷めたコーヒー缶を握りながら、地べたに座り込む
かすか : ぁ、、ぁぁぁ、、っ………!!
かすか : (くやしさと、かなしみがまざった嗚咽が漏れる
かすか : (じゃあ、どうすれば、 安易に浮かぶ言葉を噛み殺しては何度も呑み込んだ。
かすか : (そんな言葉を吐く資格は無い。 自分は、誰も救えていないし、何もなし得ていない。
かすか : っぅ、、ぁ、、、ぁぁ、ぁ ぅっ……!
かすか : (額を石畳にこすりつけても、まるで悪化するばかりで
かすか : (「……けれどね、それはやはり、どうしたって「正しくないこと」なんです。」
かすか : (わかっている。わかっているのに、許せない。 では息子を失った彼は、相手が悪かったと、運が悪かったと認めることになるんじゃないかと
かすか : (彼が二度も法に殺されてほしくなかった。そう思うのは、傲慢を通り越していて
かすか : (「……オレが正義の味方なら、アンタは何の味方ですか。」
かすか : (「…昨夜のアンタの行いで、「アレグレン氏を救った」とでも思ってるんですか。」
かすか : (「……けども、割り切れないモノに答えを出す事から逃げているようでは、私刑は私刑でしかありません。」
かすか : ぁあ、、ぁっ、、、ぅ、、、ぁぁ、、っ………!!
かすか : (何も、返せなかった。 事実彼の言う通りで
かすか : (思い上がりも甚だしい正義感とやらに浸っていただけで、 私、 は
かすか : ――――、、、っ
かすか : (そうして暮れる日に、沈んでいく――
かすかさんが退室しました
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最終更新:2021年02月14日 05:07