『王道』(おうどう、原題:La Voie royale)は、1930年に発表されたアンドレ・マルローの第二長編小説で、アジア革命三部作の第二作。1920年代後半のインドシナ(現在のカンボジア・ラオス)と中国を舞台に、冒険と破滅の物語を展開する。
マルローが実際にアンコールワット周辺でクメール遺跡の盗掘に関わった経験を基にした半自伝的小説であり、革命よりも「個人の運命」と「死の美学」が強く前面に出る。主人公ペルケンは、古代クメール王国の王道(王の道)を求めてジャングル深くに分け入り、象牙や遺跡の財宝を狙う冒険家。フランス人の青年クロード(マルローの分身)は、ペルケンと出会い、彼の狂気じみた情熱に引き込まれる。遺跡の盗掘、密林での闘病、マラリアと幻覚、裏切りと暴力が交錯し、最終的にペルケンは毒矢で死に、クロードは孤独に帰還する。物語は革命ではなく「王道」=絶対的な自己実現の追求を描き、死の淵で人間が到達する「王者のような孤独」を象徴的に表現する。マルローの文体は『征服者』より詩的で、ジャングルの描写や死の予感が幻想的に描かれる。行動を通じてのみ人間が「王」になるというテーマは、後の『人間の条件』に繋がる重要な橋渡し作品だ。新潮文庫(小松清訳)で読めるが、冒険小説としても、哲学小説としても味わい深い。