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その魔女は災厄

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「ヒョヒョヒョヒョヒョ、あの会社そろそろ本当に倒産するんじゃないのか?」

奇抜な笑い声を上げながら、インセクター羽蛾は自分の記憶を振り返っていた。

羽蛾の記憶が正しければ、最初にこの殺し合いを開いたという少年は海馬の名を名乗っていた。
自分の手元に支給された4次元ランドセルや、数十人を一度に拉致する組織力を考えるに、ほぼ間違いなくあの海馬コーポレーションの関係者ではあるのだろう。
乃亜という少年が、海馬家のどういった人物かは知らないし興味もないが、社内での権力者であることに違いはない筈だ。
恐らくだが、海馬瀬人は乃亜に社長職を追放されたのだろうと、羽蛾は推測する。
ニュースで見た程度だが、先代社長の海馬剛三郎を実質死に追いやるほどに追い詰め、社長交代を果たすような社風の会社だ。その海馬瀬人当人も同じ目に合わされてもおかしくない。

「社長交代後に、早速オレみたいな善良な一市民を捕まえて、デスゲームを強要とはねえ……バトルシティとは訳が違うよ乃亜クン」

ドーマの暗躍で、デュエルモンスターズが実体化し世間に害を与えた時、真っ先に海馬コーポレーションが疑われ株を下落させていたのは記憶に新しい。
そこを更に乃亜に付け込まれ、会社を乗っ取られ、こんなデスゲームを開催したとなれば、あの会社ももう終わりだろう、と羽蛾は結論を出した。

「ま、そんなことはどうでもいいっピョー。……真剣に、この先の事を考えなきゃ、オレが殺されるからな……」

海馬コーポレーションのゴタゴタなど、心底どうでもいい。どうせ頭のイカれた独裁者共だ。いずれ、全員刑務所入りだろう。
そんなことより、羽蛾にとっての問題はこの殺し合いだ。デュエルで勝てば生き残れるならば、話は変わってくるが、実際に生身で戦って生き延びろとなれば羽蛾とて命の保証はない。

「この日本(元)チャンピオンのオレでも、素の殴り合いは専門外なのさ。そういうのは城之内とか、そっちの連中に任せておくべきだと思うんだけどねえ。ヒョヒョー」

優勝すれば何でも願いを叶えるらしいが、それがどこまで本当か信じられたものではなかった。
最初のルフィの蘇生だって、海馬コーポレーションのソリッドビジョンを利用したトリックという可能性だってある。
あんなモノ見たからといって願いの為に、素直に殺し合いに乗る気にもなれない。

(本当に願いが叶うなら、決闘者の王国からの転落人生を、全部なかったことにして貰うけどな)

「そこの坊や。あの乃亜という少年について、何か知っている口ぶりね」

「ヒョ?」

羽蛾より、頭一つ程小柄な少女だった。
黒い薄っぺらなドレス、ゴシックデザインとでもいうのだろうか、フリルで彩った単色のドレスに、長い銀髪と雪のように透き通った白い肌が不気味なほどマッチしている。
おまえけに、目もサファイアのような蒼眼ときている。
人間離れした人形のような美貌と妖艶さに、羽蛾も一瞬見惚れた程だった。

「乃亜の苗字……海馬といえば、海馬コーポレーション絡みに決まってるだろ?」
「それは、なに?」
「童美野町を支配してる、ぶっ飛んだ会社だピョ。それくらい常識じゃないか。アメリカでも、KCグランプリを開いてたグローバルな会社さ」
「……なるほど、大体分かってきたわ」
「ヒョヒョヒョヒョ、そんな人形みたいな見た目しやがって、何処かにずっと監禁でもされてたのか? その世間知らずっぷり見てるとさぁ」
「ざっと数十年程かしら? ずっと、封じられてきたわ。当たらずも遠からずね」
「はあ~? メンヘラは見た目だけにしときなー。歳食ってから、悲惨だぜ」

ひゅっと、風を切るような音が羽蛾の耳に届いた。特に風も吹いていない無風の屋外で、妙な音が鳴るものだと疑問に思う。
そして、1秒程でその疑問は解決した。

「ぎょ、ギョエエエエエエエエ~~~~~!!!!?」

羽蛾の右腕から血が滲みだし、その緑色の服を汚していた。鋭い切り裂かれたような痛みに、奇声を発しながら羽蛾は目の前の少女が微笑んでいるのに気づく。
更に、彼女の左手の指先から血が滴っており、その爪は先程とは違う黒い刃物のように形状を変化させている。


「お前、オカルト絡みの奴か!!?」

オレイカルコスだのドーマだの名も無きファラオだの、羽蛾もそういった輩には関わったことがあるので、すぐにこの少女がそちら側の人間であることに察しが付いた。

「オカルトといえば、そうなるわね。
 名乗っておいてあげるわ。リーゼロッテ・ヴェルクマイスター、バビロンの魔女とも呼ばれたこともあるわ」

「ふ、ふざけやがってぇ……! オレの支給品でぶっ殺してやる!!」

幸い、腕の怪我は見た目ほど深くはない。動きにも支障はない為、羽蛾は即座に強気に出てこれ見よがしにランドセルを突きつける。

「ヒョヒョヒョヒョ! オレの支給品はなぁ、お前みたいな頭のおかしいイカれたアマなんて一瞬で消し飛ばす、最強のカードを支給されたのさ!
 命乞いをするなら、今の内ピョー!! まあ、どうしてもと言うなら、オレの家来になれば、許してやらなくも……あれ?」

「あら? あまりのお喋りが長くて、退屈だったものだから。つい、手が出てしまったわ」

「お、オレのランドセルを……」

羽蛾が掴んでいたランドセルが一瞬にして消え、リーゼロッテに握られていた。
リーゼロッテは驚嘆し、慌てふためく羽蛾を眺めながらそのランドセルに手を入れ、羽蛾の支給品を弄る。

「か、返してくれ~!! オレの最強カードを!!」

「良いことを教えてあげるわ。武器は構えて初めて使えるものよ。鞘に納めた剣では赤子も斬れないでしょう。
 もっとも、如何な剣であろうとも、この呪われた身を滅ぼすなど出来やしないでしょうk――――ぐ、がぁっ……!?」

「――――なんてね」

次の瞬間、リーゼロッテの胸を生々しい触手が貫く。

「な、ん……これ……ぐ、あぁ……!!」

「どうやら、ラッキーカードを引いたようだねぇ」

更に喉奥から、目玉から、腕から、臓器をねじ潰し、肉を引き裂き内側から皮を食い破りグロテスクな昆虫の触覚や足がリーゼロッテの全身から飛び出す。

「ヒョヒョヒョヒョ!! そいつは、寄生虫パラサイド! 
 所有者であるオレから、お前に所有権が渡った時、つまりオレからそいつを奪った時に強制召喚され、お前に寄生し蟲(インセクト)へと変化させたのさ!!」

両手の人差し指を立て、左手を自分の顔の横へ、右腕を伸ばし相手へと向けるポーズ。いわゆる恋ダンスのようなポージングで、リーゼロッテを煽り散らしながら、羽蛾は上機嫌で高笑いを浮かべる。

「いやぁ、リーゼロッテちゃぁん、随分と良い姿になったじゃないか、長生きした魔女様も大したことがないねぇ……。まんまと、オレの誘導にハマってくれてさあ!
 今のキミはさっきのメンヘラ魔女より、百億倍可愛いぜぇ……!!」

「フフ……そうね、こういう趣向は初めてだわ。褒めてあげるわよ、坊や」

「ひょ?」

リーゼロッテの、パラサイドに蝕まれた体から流れ出る血が黒い蛇となり、羽蛾へと飛び掛かる。
とっさに体を屈めて避けるが、今度はまた別の血が刃のとなり、鋭利な切っ先を脳天へと穿ってきた。
殆ど意識的ではなく、腰を抜かしバランスを崩したことで、血の刃は髪の毛数本を切断し、毛の残骸が空中を浮遊しながら、ゆっくりと地べたに落ちていく。

(こいつ、こんな状況でまだ……)

パラサイドに全身を寄生されて、尚も平気で笑い、あまつさえ自分の血を使役し攻撃まで仕掛けてくる。
魔女という通り名は、恐らく誇張ではなく、事実なのだろう。

「逃げるは恥だが、役に立つってね。オレみたいな優れた戦略家は引き際も弁えてるのさ。
 ヒョヒョヒョヒョ! そこで、オレの愛しいパラサイドと戯れてな!」

いくら高い生命力を誇っていようと、パラサイドに視界を潰され体を破壊されていては、羽蛾には追い付けない。
それを見越し、捨て台詞を吐いて羽蛾は逃亡した。

(全く、初っ端から、とんでもない相手に当たっちまったもんだぜ……)


走りながら、先ほどの態度と打って変わり、羽蛾は内心で苛立ちと焦りを隠しきれずにいた。
あれだけ勝ち誇った態度で、リーゼロッテを挑発したものの彼女が気まぐれで、即座に羽蛾を殺していたのなら、パラサイドにハメる事も叶わず死んでいた。
やれる限り、ランドセルに意識を向けるよう、誘導こそしたが、完全な運任せにギャンブルであったことには違わない。

(それにしたって、乃亜のガキ、いくらオレが元日本チャンピオンだからって、支給品がパラサイド一枚だけってのは、ハンデがすぎるピョ。
 しかも、タブレットは何とか持ち出せたが、ランドセルごと食料も基本支給品も置いてきちまった。
 この先もあんなリーゼロッテみたいな連中がわんさか居るなら、このままじゃヤバいぜ)

完全に無防備な現状で、あんな凶悪な参加者を相手にするのは避けなければならない。
武器を補充するか、出来れば盾に出来そうな参加者を見付けて、同行するかしないと、最低限の命の保証はないだろう。

「まあ、でも……パラサイドも実体化したし、リーゼロッテみたいなのが居るんだ。この殺し合いがオカルト絡みなら、優勝すればどんな願いも叶うって話も眉唾じゃなくなってきたねぇ……。
 ヒョーヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョ!!!」






「なるほど……この不死身の体でどうやって殺し合わせるのかと思ったけれど、まさか不死性を制限されているとはね」

体の内部を蠢く、パラサイドを自らの手を体内に挿入し引き摺りだし握りつぶす。そんな作業を数回行い、ようやく体内から寄生虫を除去しリーゼロッテは不敵に笑った。
全身にパラサイドに貫通された赤黒い穴から、血を滴り流し、両目は潰れ、片腕は引き千切れる寸前のボロ雑巾のように、文字通り皮一枚で繋がっている。
だが、それらの痛ましい凄惨な傷口が、徐々に塞がりだす。
潰れた眼は時間を巻き戻すかのように、潰れた前の奇麗な状態へと修復されていく。重力に従い、皮一枚でぶら下がった腕は上向きに引っ張られるように、引き寄せられ傷口にふれたまま肉と皮膚が結合する。
虚無の魔石を、その身に埋め込まれたリーゼロッテは死ぬこともなければ、老いる事もない。本来であれば、殺し合いなど成立しない。

「不死の異能者も殺す首輪か、それにハンデも与えると言っていたわね。……今迄みたいに遊んでいると、死んでしまうということね」

数百年の悠久の時を生きてきた。今更、命は惜しくない。
むしろ終わらせてくれるのなら、リーゼロッテから歓迎したいところだが、人類鏖殺、世界を滅ぼすその時を目前に控えたこのタイミングでは、まだ死ぬには早い。
あの乃亜という少年が、どんな願いも叶えると言うのなら、些か手段は変わるが優勝し、世界の滅亡を願っても良いだろう。

「海馬乃亜と言ったわね。良いわ、予定が狂ったけれど貴方の望み通りにダンスを踊ってあげる」

世界を呪い、終焉を望む災厄の魔女は、迷うことなくこの場に呼ばれた幼い命をすべからず、滅ぼし去る事を決断した。




【インセクター羽蛾@遊戯王デュエルモンスターズ】
[状態]:右腕に切り傷(小)
[装備]:なし
[道具]:タブレット@コンペLSロワ
[思考・状況]基本方針:生き残る。もし優勝したら、願いも叶えたいぜ。
1:武器も欲しいし、利用できる参加者も見付けたいピョ。
[備考]
参戦時期はKCグランプリ終了以降です


【リーゼロッテ・ヴェルクマイスター@11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
[状態]:ダメージ(大、再生中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3、羽蛾のランドセルと基本支給品、寄生虫パラサイド@遊戯王デュエルモンスターズ(使用不可)
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:羽蛾は見つけ次第殺す。
[備考]
参戦時期は皐月駆との交戦直前です。
不死性及び、能力に制限が掛かっています。


【寄生虫パラサイド@遊戯王デュエルモンスターズ】
OCGのボロクソな性能については割愛。
出展元において、インセクター羽蛾が城之内のデッキに仕込み、城之内のカードを昆虫族に変える事で、自らのコンボに繋げたキーカード。
今ロワ内では、出展元再現としてパラサイドの所有者が変更された時、ランドセルから取り出されていた場合強制召喚され、その所有者に寄生する効果となっている。
一度実体化すると、二度と実体化できない。



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