コンペロリショタバトルロワイアル@ ウィキ

二分後に君が来なくとも

最終更新:

compels

- view
だれでも歓迎! 編集
見下ろすのは星と月。伴うのは無機質で冷たい首輪。
上げられた舞台は、ファンが集う夢のような舞台(ステージ)ではなく。
何処かもわからない片田舎の小島で、しかも殺し合いなんて強いられている。
間違いなく、少女の夢見ていた場所とは違う世界だった。
正直な話をすると、怖かった。膝を抱えて、蹲ってしまいたかった。
でも、それでも、彼女は偶像(アイドル)だった。
その手に握るのは、一枚のDISC。
頭に入れなければならない、という覚悟を要求されるその武器を。
彼女は、迷うことなく差し込む。
そのあと両足に力を籠めて立ち上がり。精一杯の虚勢をかき集めて、笑みを形作る。
そうして少女は、踊る様に駆けだした。
全ては、一人の少年の勇気に応えるために。





「態々首を突っ込まねば生きて居られたものを、馬鹿じゃのう、小僧」


そう言って、金の髪に不思議の国のアリスの様なロリータドレスを纏った少女。
『帝国』の錬金術師ドロテアは嘲笑の声を上げた。
その声の矛先は、少年だった。
ドロテアと比べてもなお幼い…十歳程の少年。
その総身は、深い傷こそないものの血まみれだ。
全て、ドロテアの手によって負った傷だった。
彼は今、路地の行き止まりに追い詰められ、ずるずるとへたり込んでいる。


「勘違いするでないぞ?妾だって、積極的に殺し合いに乗ろうという訳ではない。
………少なくとも、今のところはな」


ドロテアにとっては出会った少年と少女、どちらでも良かった。
その首と胴体を切り離して、首輪のサンプルとするのは。
狙ったのは、少女の方だった。
理由は、殺し合いに乗っていないという体で行った情報交換に会った。
少年の口から出た、『学園都市』や『能力開発』などの話に興味を惹かれた。
対する少女はアイドルだの愛を届けるだの、ドロテアにとって眠たくなるような程平和ボケした話しか吐かなかったからだ。
この瞬間、断頭する対象は決定した。
二人とも殺しても良かったが、ゲーム開始から一時間も立たずに首輪を二つも持っていたら、殺し合いに乗った参加者と勘違いされる恐れがある。
ドロテアは自分さえ生きていれば誰が何人生きて居ようとどうでもいい人間だったが、自分に不利益が出るのは好ましくない。
故に、感謝しつつ偶像の少女に生贄になってもらう腹積もりだった。
少年が、少女を自分の攻撃から庇わなければ。


「あの女を逃がさなければ、お前の方は助けてやったんじゃがなぁ」




ドロテアは、人体を弄繰り回すことに長けた錬金術師だった。
彼女の幼い少女と言っていい若々しい肉体がその証明だ。
当然の事、全身の筋力をも改良済みの改造人間だ。
そんなドロテアだからこそ分かる。
目の前の少年は、特段鍛えた体という訳でもない。
ただの、年相応の少年の肉体だった。
そんな少年が、野生の豹をも凌駕する自分の敏捷性から放たれる攻撃を致命傷を裂けたうえで、少女を庇う事に成功して見せた。
実に、奇妙な話だった。
だが、その降ってわいたその疑念も今しがた解消された。


「戦場で生き残るのは強者と臆病者。勇者というものは九割死ぬものじゃ。
まぁ、安心せい、お前のその首輪と帝具は妾が責任を持って有効活用してやる」


くるくると、指先で少年がついさっきまで被っていた児童用の帽子を弄ぶ。
出会った時は帽子を被っていたから分からなかったが。
少年の額には、瞳の様なヘッドギア―が装着されていた。
帝都の守備隊『ワイルドハント』のメンバー人抜擢されていたドロテアは、そのヘッドギア―に見覚えがあった。
五視万能・スペクテッドという、視る事に特化した兵装だ。
適性の高い者が装備すれば、未来を見通す事すら可能になるという。
それを装備していたのなら、ただの少年が自分の攻撃をここまで回避出来たのも頷ける。
まぁもっとも、それもここまでの話。
こうやって路地の行き止まりに追い詰めてしまえば、所詮はただの子供。
見えていても、体が避けられなければ何の意味も無いのだから。


「さて…ここまでようやったのう、褒美に死と、
この妾の絢爛たる生涯の礎になる栄誉を与えてやろう…のう、シャエイ」


ドロテアには野望があった。
死と老いを克服し、その叡智と美貌を永遠に輝かせるという野望が。
その為なら、誰だって踏み躙る事ができる。
殺し合いに乗っていないのも、現時点ではと言う話でしかない。
もしそれしかないと彼女のその優秀な頭脳が悟れば、即刻優勝に向けて乗り出すだろう。
そんな人間と行き遭ってしまったが故に。
今しがたドロテアに写影と呼ばれた少年──学園都市の予知能力者、美山写影は順当に詰んだ。



「………最後に一つ聞いてもいいか?その帝具の力があったなら…
妾との実力の差も分かった筈、何故死に急いだ?」


くるくると淵を指で回していた帽子を、写影に投げ返し、尋ねる。
ほんの気まぐれの様な問いかけだった。
ドロテアの観察眼では、目の前の少年はそんな正義感に燃えるような少年とは思えなかったからだ。
だから、己の知識欲を満たすため、最後に尋ねておこうと思ったのだ。
と言っても、そこまで興味のない事項ではあったのだが。
問われた少年は、当初は何某かを口にしようとしたものの、



「……君には、教えてあげない」



それが、彼の答えだった。
それを聞いたドロテアはふんっと短く鼻から息を吐いて写影を見下ろして。
では、殺す。そう告げた。
元より、そこまで興味のない問いかけだった。
黙秘するというのなら、それでもよかった。
にぃ…と口の端を三日月型に歪に歪めて、鋭い犬歯を晒す。
彼女が有する牙の帝具、血液徴収アブゾディックだった。
一度乃亜の手によって没収されていたが、初期支給品の中にあり、再び彼女の手に戻った。
これで吸血されれば、人間の子供など簡単に木乃伊になる。
そして、実際にそうするべくつかつかと写影へと歩み寄り…足が止まる。


「何じゃ……?」


影が、無かった。
先ほどまで月が出ていたというのに、今はそれがない。
否、突然ドロテアの頭上周りだけを、黒雲が覆っているのだ。
それに気づいた時にはもう遅かった。
写影とドロテアのちょうど中間の位置に、小規模なハリケーンが発生したのはその直後の事だった。
人外の筋力を持つドロテアも、自然の暴威に勝てるほど極端な物ではなく。
突風に押し戻され、後退せざる得なかった。





「その方から、離れなさい」



決然とした声が響く。
その声の主を見て、ドロテアは訝し気に眉を顰めた。
声の主は、先ほどドロテアが少年の横やりのせいで仕留めそこなった少女だった。
さっきまで、本当に単なるガキだったはずの、その女児が。
トカゲのしっぽを切る様にさっさと逃げた、その少女が。
何かの人形のような物に抱きかかえられ、宙に浮いていたからだ。
もう一度風が吹くと同時に、ふわりと。
少女が、少年を庇うように地へと降り立つ。


「貴女がこれ以上彼を傷つけるなら、わたくしも貴方に手袋を投げる事を迷いませんわ」


咲き誇る赤薔薇のような風体の少女だった。
金の髪に整った肢体を紅いドレスとカチューシャで彩り、同じく人形のように整った顔立ちは決意に引き絞られている。
櫻井桃華は、押し寄せる恐怖を必死に堪えながら、堂々たる名乗りを上げた。


「…はっ、妾を笑い殺させるつもりか?何かの帝具を得た様じゃが、その程度で──」


ドロテアの言葉は最後まで紡がれなかった。
砲弾の様な音を立てて、彼女のすぐ隣を雷廟が貫いたからだ。
直撃していれば、如何なドロテアであっても肉塊になるのは免れない攻撃だ。
ついさっきまで震えて逃げるだけだった少女とは、おおよそ思えない力だった。


「アイドルが、ファンを置いて逃げるわけにはいきませんもの。
……どうしてもと仰るなら、此処からは私と、この『ウェザーリポート』さんがお相手致します」


桃華は、ドロテアの圧力に屈さなかった。
緊張と恐怖で上ずりそうになる声帯を、日々のボイストレーニングの成果で調整する。
ここで臆していては、助かる命も助からない。





「クク、妾も舐められたものじゃな──帝具を持っていようと、
お前ら二人、殺す事ぐらい訳はないわっ!!!」



凶暴に笑い、脅すように吠えるドロテア。
すると、予想通り──先ほどまで確固たる態度で対峙していた少女の顔に脅えが混じる。
何のことはない、この通り、所詮は鉄火場に慣れていないガキだ。
少し脅かせば簡単に主導権を握ることができる。
少々危険ではあるが、二人とも殺し、帝具ごと首輪を頂くこととする。
そう決定して、襲い掛かるべく脚力に力を籠めた。


「………本当にそうかな?」


声は、背後から聞こえた。
眼を見開いて、バッと振り向く。
すると、そこには目の前に対峙していた筈の二人の少年少女の姿があった。
自分は明後日の方向を向いて、二人と話しているつもりになっていたのだ。



「このまま勝負するなら、僕たちだって全力で抵抗する。こんな序盤に、雷に撃たれるのはあまりお勧めしないね」

(・……そうか!スペクテッドの能力には相手に幻覚を見せる幻視の能力があったと聞く…!それで妾の目を欺いたのか……!)


先ほど少女が落とした雷も幻覚かと思ったが、すぐさまその可能性を切って捨てる。
先ほど感じた雷の熱と轟音は、間違いなく本物だった。
視覚に働きかけるスペクテッドだけでは、説明がつかない。
つまり、天候操作の帝具とスペクテッド、両方が敵に回っているに等しい状況だ。
そこまで思考が行きつけば、ドロテアの次のセリフは決まっていた。



「………………分かった、悔しいが妾に分が悪いようじゃ。
今一度言っておくが妾は殺し合いに乗り気ではない。お前達と命懸けで勝負する気も無い。
もっと別の手に入れやすい相手を探すとしよう」



その判断はドロテアにとって必然だった。
態々抵抗されれば厄介な二人の首輪に固執する必要はない。
写影がいなければ最初の奇襲で少なくとも一つは手に入っていたのだから、出会った当初の桃華の様な参加者の首輪をいただけばいいだけの話。
ドロテアは悪辣な性格ではあったが、損得勘定ができない人間ではなかった。


「…言っておくが妾の悪評をばら撒いたりしてみろ、絶対に殺してやる。
逆に妾は信頼できる相手だと風評を広めていてくれれば、次会った時既に首輪を外しているであろう妾の知恵を貸してやってもいいぞ」


心にもないリップサービスであった。
ドロテアは確かに殺し合いに乗り気ではなかったが、首輪を外したとしても八割がた何らかの対策が行われ、殺し合いは続く事になるだろうと読んでいたからだ。
だから、目の前の二人は多分どの道殺すことになるが、一応今の段階から悪評を広められれば都合が悪い。
それ故のリップサービス兼釘刺しだった。


「ではな──次に会った時敵対しない事を願っておるぞ……お前たちも、その方がよいじゃろう?」


その言葉を最後に、ドロテアはまた再び獰猛な笑みを浮かべた。
突然氷点下のブリザードの中に放り込まれたような本能的な恐怖が、二人を包む。
写影と桃華が怖気る表情を浮かべるのを見てニィ…と更に笑みを浮かべて。
そのまま超人的な脚力で大きく跳躍し、邪悪なる錬金術師は姿を消した。
ドロテアの姿が消えるのを見届けて。
そこからたっぷり十秒ほど間隔をあけて。
写影と桃華は顔を見合わせ、そして、脱力。


「「こ…怖かった………」」



【ドロテア@アカメが斬る!】
[状態]健康
[装備]血液徴収アブゾディック
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:手段を問わず生き残る。優勝か脱出かは問わない。
0:とりあえず適当な人間を殺して首輪を得る。
1: 首輪のサンプルを三つほど手に入れれば暫くは殺しを控える。
2:妾の悪口を言っていたらあの二人(写影、桃華)は殺す。
[備考]
※参戦時期は11巻。









嵐が去った後で。
暫く少年と少女は、背中合わせでへたり込んでいた。
獰猛なグリズリーを今しがたやり過ごしたようなものだ。
緊張の糸が切れるのも無理は無いだろう。


「助けてくれてありがとう…助けようとしたのに。逆に助けられるなんて、情けないな」


少し沈んだ声で、写影は助ける筈が逆に助けられてしまった少女に、感謝の言葉を述べた。
だが、そんな感謝の言葉は少女にとっては不服だったらしい。
お礼なんて必要ない。先ず彼女はそう切り出した。


「美山さんがあの時助けてくれなければ、私はもうこの世にはいなかったでしょうから。
ですから…お礼を言うのはわたくしの方です」


そう返された写影の心中に、どこか後ろめたさが生まれる。
紡ぐ言葉のトーンは、やはり低いままだった。


「いやその…ごめん、実は、最初から迷いなく君を助けようと出来たわけじゃないんだ」
「正直、追い詰められたときは後悔だってしてた」


確かに自分は助けることを選んだけれど。
躊躇も迷いもなく、という訳にはいかなかった。
少し前までの自分なら、保身を優先していただろうとも思う。
けれど。



──貴女、わたくしに似ていますもの。私も小さい頃は憧れていたんですのよ。
───ヒーローって奴に。


そんな時に浮かんだのが、かつて自分を助けてくれた、風紀委員の少女の言葉だった。
今ここで桃華を見捨てたら、彼女が…白井黒子がかつて自分にかけてくれた言葉が嘘になってしまうような気がしたから。
だから、少年はほんの少しの勇気を奮った。それだけの話だった。
結果は御覧の通り、助けようとした少女に助けられるという不様を晒してしまった訳だが。


「……それでも」


写影の言葉を受けて。
桃華も、僅かに押し黙る。
だけれど、その後紡ぐ言葉は清流のように澄んで穏やかな物だった。



「それでも、わたくしを助けに来てくださったのは写影さん、貴方です」
「もっとスマートに助けられた方はいらっしゃっても、
…あの時のわたくしを実際に助けてくださったのは、貴方だけですわ」
「その事実は変わりません」


ですから、と桃華は言葉を綴り、尋ねる。
もし、美山さんがそれでも気になさって、埋め合わせが欲しいというならば。
二つほど、お願いがある。
桃華はそう告げた。


「……お願いって?」


写影が尋ねると、ふふふ、と。背中で笑みが零れる音がして。



「一つは、美山さんではなく、写影さんと呼ばせてほしい、ということですわ」
「そして、もう一つ」
「わたくしの事は、どうか桃華と呼んで欲しいのです」




特に断る理由もなく二つ返事で了承した後。
写影はふと思った。
女性を名前で呼ぶのは、これで二人目だな、と。


「……分かった、写影でいい」
「ボクも、君の事は桃華って呼ぶよ」


──でも、こんな状況でも名前を呼びあえる相手がいるのは、悪くない。



そうして二人は、少しの間無言のままに、背中合わせで夜空を眺めた。
見通しは、ハッキリ言って暗い。
ドロテアの様な強くて人を殺すことに躊躇のない参加者はまだまだいるだろう。
首輪を外す算段も立たない。
一時間後にはどうなっているかも分からない。
でも、それでも。この背中に俄かに伝わる体温があれば。
ゲームは始まったばかり、諦めるにはまだ早すぎる。
そう思えたから。



「……そろそろ、行こうか」
「──えぇ、そうですわね」



【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]疲労(中)、あちこちに擦り傷や切り傷(小)、血が滲んでいる。
[装備]五視万能『スペクテッド』
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:ドロテアの様な危険人物との対峙は避けつつ、脱出の方法を探す。
1:桃華を守る。…そう言いきれれば良かったんだけどね。
2:……黒子はいないよね、多分
[備考]
※参戦時期はペロを救出してから。


【櫻井桃華@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]疲労(小)
[装備]ウェザー・リポートのスタンドDISC
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:写影さんや他の方と協力して、誰も犠牲にならなくていい方法を探しますわ。
1:写影さんを守る。
2:この場所でも、アイドルの桜井桃華として。
[備考]
※参戦時期は少なくとも四話以降。




【五視万能スペクテッド@アカメが斬る!】
美山写影に支給。目の意匠が施されたヘッドギア。
装備する事で望遠の役目を果たす「遠視」、透視能力を付与する「透視」、相手の動作や表情を読み取り読心を行う「洞視」、
相手の筋肉の機微から未来を見通す「未来視」、そして相手に幻覚を見せる幻視の「五視」の能力を持つ。
写影は自己の「己だけの現実」により、未来視の適性が特に高く、相手の筋肉の機微に関わらず、最大まで集中すれば最大で十秒ほど先の未来を見通すことができる。
ただし全力の集中力が求められるため常時発動は不可能。
半面洞視は本来の持ち主ほど適正は無く、読心クラスの芸当をしようとすればかなりの集中力を要求される。


【スタンドDISC『ウェザーリポート』@ジョジョの奇妙な冒険】
櫻井桃華に支給。徐倫の手によってエンポリオに託された、天候操作のスタンド『ウェザーリポート』が内包されたスタンドDISC。
本来のスタンドの持ち主ではないため操作できる天候は桃華の半径50メートル以内に限られ、当然ながら『ヘビー・ウェザー』は使用できない。


【血液徴収アブゾディック@アカメが斬る!】
ドロテアに本人支給。吸血鬼の牙のような帝具。口の中に装着して使用する。
対象に噛みついて血を吸い、ミイラのようにしてしまうだけでなく怪我の治療や一時的なステータスアップもできる。




154:The beginning of darkness~恥辱~ 投下順に読む 161:絶対強者
時系列順に読む
START ドロテア 002:解体し統合せよ
START 美山写影 010:トリックルーム
START 櫻井桃華

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー