コンペロリショタバトルロワイアル@ ウィキ

剥がれ落ちた羽にも気付かずに

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集



(一々煽らなきゃ気が済まねぇのかよあのクソガキ)

放送を聞き終えたばかりのリルが真っ先に思ったのは乃亜への呆れ。
既に数人の脱落者が出た、放送毎に増える禁止エリアの存在、参加者名簿の追加。
説明されたのはどれも重要な情報である。
尊大な口調で参加者を小馬鹿にする茶々をわざわざ入れるという、何の得にもならないおまけ付きだが。
殺し合いを開いた時点で既にお察しだが、アレの性根は相当ロクでもない。
そのような悪ガキに目を付けられた己の不運につい舌打ちが零れるも、現状を良い方向に変える効果は期待出来ない。
今しがた与えられた情報を整理する方が建設的だと切り替える。
箱からドーナツを一つ摘まんで口に放る、あれこれ考えるのに糖分接種は最適だ。
取引で提供された菓子の箱は現在リルが持っており、元々支給された者の承諾も得ている。

禁止エリアが機能するのはまだ先の話。
現段階ではそう深刻に受け止める必要も無い。
開始から一時間足らずで10人以上もの死者が出たのにも、そう大きな驚きは皆無。
殺し合いをさせるならば、当然参加者の排除に積極的な血の気盛んな輩が複数人いるだろう。
死んでいった者達は赤の他人、動揺は無く強いて言えば首輪解除に必要だろう人材が死んでいなければ良いと思った程度。
ついでに小恋から聞いた知り合いの名前も、「コイビトのみのりちゃん」を始め呼ばれなかった。
参加者名簿が見れるのも当分先だ。
見れたとしても自分の知る中で参加条件を満たす者はほとんどいない為、無意味かもしれないが。

タブレットを起動しマップを確認するも、知っている施設などは見当たらなかった。
一応小恋にも画面を見せ確認させる。

「おねえちゃん、どうしよう……」

その小恋はタブレットを見つめながらガタガタ震えていた。
青褪めた顔といいこうも分かり易い反応を見せれば、大体は察しが付く。
自分が知っている施設の名前があり、馴染み深い場所が悪いことに巻き込まれて不安になった。
そんな所だろうと結論付け、

「かんじがいっぱいでよめない…!」
「……」

返って来た間抜けな答えに暫し沈黙する他無い。
ああそう言えばこいつはガキだもんな、そりゃ平仮名くらいしか読めねぇよなと納得。
難しい顔でタブレットとにらめっこする小恋へ向け、さも面倒くさそうにため息を吐く。
地図の確認という基本的な事すらままならないとは。
仕方なしに施設の名前を一つ一つ教えてやれば、その全部に首を横に振った。

基本的な確認を終え、これからどう動くかを考える。
首輪の解除に脱出ルートの確保、優勝以外で生き延びる為に必要な事は多くリル一人では手が回らない。
小恋を連れて他の参加者と接触し情報を集め、脱出のプランを練るしかあるまい。

尤も、歩き回らなくとも他参加者との接触は叶ったようだ。

「おねえちゃん?」

小恋から掛けられた声に構わず視線は宙に固定したまま。
異変に気付いた小恋もリルに倣い、同じ方向へと目を向ける。
瞳に映るのは星々が輝く夜空。

そこに一点、夜の黒とは別の黒が見えた。

徐々に大きさを増し、二人の前にソレが降り立つ。

「我ながら運が良いですね、新しい供物(おんなのこ)をこんなに早く見つけるなんて♪」

砂金のような美しい髪を靡かせた少女。
身体を隠す黒衣はほんの僅かにずらせば小振りな双丘を曝け出し兼ねない程に、心許ない。
形の良い臍を露わにした腹部、スラリと伸びた太腿と指の一本一本まで均整の整った素足、全てが少女の魅力を引き立てる。
秘部こそ隠してはいても食い込みの激しさ故に、軽く身動ぎしただけで白い桃尻がぷるりと揺れた。

(何だこのガキ、痴女か?)

とてもじゃないが年頃の少女がするとは思えない格好。
内心の呟きは偶然にも、リルより先に少女と遭遇した少年と同じ内容。
そうとは知らないリルは出会う参加者が揃ってロクでもない女で頭が痛くなりそうだった。
一桁の年齢でレズってるガキに続き、今度は露出趣味の痴女。
こんな女ばかりを集めるとは、大物ぶっておきながら乃亜は単なるエロガキじゃあないのか。
何度目になるか分からない乃亜への呆れもそこそこに、目の前の痴女の一挙一動を冷静に見極める。

「彼への手向けに相応しい、美味しそうな女の子♡」
「おいしそう…?おねえちゃんもおなかすいてるの?じゃあ小恋がドーナツあげる!」
「フフ、ありがとう。でも残念、私が食べたいのはお菓子なんかじゃなくて…」

これがただの露出魔なら適当にあしらって早々に離れるつもりだった。
しかし違う、感知した霊圧からハッキリと分かったのだ。
少女は頭のおかしい変態ではなく、非常に面倒極まりない厄ネタだと。

「えっちぃことに目覚めたあなたたち♡」
「寝言は寝て言えビッチ」

ぐいと引っ張られる感覚。
小恋に理解出来たのはそれだけ。
少女が何かを言った直後にリルも何かを口にし、気が付いたら足が地面から離れている。
一体全体何が起きたか分からず見上げると、相も変わらぬ涼しい顔でリルが少女へ視線をぶつけるのが見えた。
けど何故だろうか、同じ顔でもさっきより少し恐いと感じてしまうのは。

小恋は気付いていない、されどリルは少女の動きを全て捉えた。
頬を赤らめた少女の髪が一瞬で変化し、巨大な手となり小恋を掴もうとしたのを。
少女の髪が手に変わり切るより早く小恋を引っ掴んで後退。
自分が助けてやったと恩着せがましい説明は抜きに、小恋を下ろして淡々と告げる。

「チビ、邪魔だからどっかに隠れてろ」
「おねえちゃん…?えっと…」
「早く行け。めんどいから二度も言わせんじゃねぇよ」

語気を荒げずとも有無を言わさぬ声色。
戸惑いながらも頷き小恋が離れるのを見送らず、少女へ固定した視線は外さない。

「もう、素直に身を委ねた方が気持ち良いのに…」

ぷぅっと頬を風船のように膨らませる、まるで拗ねた子どものような仕草。
それもすぐ楽し気な笑みへと変わった。
抵抗するならそれはそれで良い。
敵わないと体に教えてやり、それから快楽を味合わせてやる。
まだまだ知らないえっちぃことをもっと探求するのに、丁度良い実験台となってもらおう。
さっきの二人と違って男の子じゃないけど、女の子なら「彼」への手向けとして最適だ。

「あなたたちの体で、私にもっとえっちぃことを教えて♡」
「盛りてぇなら自分で慰めてろ色ボケが」

片や淫靡に舌なめずりをし、片やポーカーフェイスで毒を吐く。
生物兵器と滅却師。
金色の闇とリルトット・ランパード。

黒の色欲と白の殺意が交差し、弾丸のように炸裂。
それが戦闘開始の合図だ。



リルとヤミ、両者共通の方針として相手を殺すつもりだ。
ただヤミの方は即座に殺すのではなく、まずはたっぷりとえっちぃことをしてから、改めて命を奪う。
なので初撃はあくまで拘束、変身(トランス)能力で触手に変えた右手を伸ばす。

支給品をディオに奪われ、装備した物と言えば帝具一つのみだが何の問題も無い。
何せヤミにとっては己の肉体こそが最大の武器であり防具。
変身を用いれば全身のあらゆる箇所を刃にも盾にも変えられる。
対するリルはハート型のポシェットを叩き弓を出現。
迫る触手へ照準を合わせ矢を放つも、ヤミの目には無駄な行動としか映らない。
最初に遭遇した少年、キウルも弓矢を使ったが難なく弾き落とせた。
矢を真っ向から蹴散らし触手をリルの元に到達。
後は隠れた幼女共々、更なるえっちぃことへの探求に役立ってもらう。

己の優位を疑わない考えは、触手が射抜かれた現実にあっさり崩れ去った。

リルを絡め取り、服の下へ潜り込ませ、素肌を嬲る筈の触手。
それがたった一本の矢を叩き落とせず千切れたのである。
触手を貫いて尚も矢の勢いは健在。
先端には鏃ではなく鮫に似た歯を剥き出しにした口。

食い千切らんと迫る矢はしかし、ヤミへ傷一つ付けること叶わず斬り落とされた。
金色の長髪を刃に変え防ぐ、キウル相手に取ったのと同じ方法。
違うのは、矢の速度が桁外れに高い事か。
一本防いだかと思えば二本三本四本五本と、次から次へと放たれる。
狙いを定めて弦を引き絞り、手を放したら次の矢を装填とこの繰り返し。
銃とは違い連射不可能な武器であるにも関わらず、マシンガンもかくやという勢いだ。

リルが使うのは現世で知られる弓矢とは違う。
虚を滅ぼす滅却師の霊子兵装、神聖弓(ハイリッヒ・ボーゲン)。
放つのもまた自身の霊子を固めた神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)。
只人の尺度で計れる威力ではない。

何より霊子兵装を扱うリル本人も、星十字騎士団に名を連ねた滅却師の一人。
有する能力は一般の聖兵(ゾルダート)よりも上。
神聖滅矢の猛射くらい訳無い。
容赦も加減も最初(ハナ)から頭には皆無、確実に死ぬまで矢を放つのみ。

「凄い凄い♪」

殺意は十分、されどそれだけで勝てる舞台を乃亜は用意してはいない。
この場において捕食者はリル単独にあらず。
雪のように白い素肌が赤く染まるより早く、矢は全て斬り落とされる。
黄金色の刃はヤミの体に触れる不埒者を認めない、愛撫(セクハラ)が許されるのは結城リトただ一人。

「……」

自身の攻撃が防がれる光景に動揺を見せず、矢の勢いを一段階引き上げる。
連射速度は勿論、一発に籠める霊力も増加。
低級の虚なら十数体は纏めて消し飛ばせる程だ。

「おっと、危ないですね」

言葉とは裏腹に危機感の宿らぬ呑気な声色。
ダークネスになる前、元の自分なら少しは緊張感を滲ませたかもしれない。
今は違う、変わったのはえっちぃことが大好きになっただけではない。
扱う能力全てが爆発的に強化され、滅却師の神聖滅矢だろうと対処は実に簡単。
とはいえ刃一本ではほんの少し手間か。

「まだ増えんのかよ、それ」

ポツリと小さな呟きは誰に聞かれるでも無く描き消えた。
聞かせたくて言ったのでは無いので、別に構わないが。
長髪を変身させた刃を三本増やし、計四本が縦横無尽に振るわれる。
手数の多さはリルだけの専売特許ではない。
むしろ変身能力のレパートリーの豊富さを考えれば、ヤミの方が遥かに上だろう。

このまま矢を放ち続けて消耗を狙うか、別の動きに出るか。
思案するリルが答えを出すのを待たずに、ヤミが先に行動に移る。
棒立ちとなり矢を斬り落とすだけでは時間の無駄。
自分がしたいのは火花を散らす戦闘ではなく、嬌声が響くえっちぃことなのだから。

「そーれっ!」

刃を振るうのはそのままに、リルへと真っ直ぐ突撃。
矢の嵐など何のその、涼しい顔で凌ぎ瞬く間に急接近。
えっちぃことに野蛮な暴力は不要、まずは邪魔な武器を奪う。
赤い爪の生え揃った五指で神聖弓を握りつぶすべく手を伸ばす。
間近に迫ったヤミを前にしてもやはりと言うべきか、リルは無表情。
敵の接近に認識が追い付いていないのではなく、脅威と感じてはいないからだ。
証明するかの如く神聖弓を掴みかけた所でリルの姿が消えた。

「っ!」

敵の消失に驚くのは一瞬に留め、すかさず変身を行使。
シールドに変えた左腕を背後へ翳すと即座に衝撃が来た。
少し遅れて視線を寄越せば蹴りを叩き込んだリルの姿。
硬ぇな、温度を感じさせない呟きを無視し髪を振るう。
未だ刃に変えたままの髪はリルが跳躍し回避した事で、服の端にすら届かない。

死神が瞬歩、破面が響転(ソニード)を使うように滅却師にもまた独自の歩法が存在する。
それが飛廉脚。
足元に霊子の流れを作り高速移動を可能とする高等の技術。
至近距離の相手の背後を取るくらいは、飛廉脚を駆使すれば安易に可能だ。

「へぇ…」

今の速さにはヤミも少しながら感心したと言わんばかりに笑う。
それだけで負けを認めるつもりは微塵も無いが。
頭上から降り注ぐ矢の豪雨を斬り飛ばしながら、こちらも同じく跳躍。
再度リルの眼前へ迫ると顔面狙いで蹴りが飛ぶ。
動血装で強化済みの一撃だ、当たれば美少女と呼ぶに相応しい顔も麩菓子のように砕け散る。
当然そんなのは受け入れられない、長髪を刃から巨大な掌に変えて防御。
防げはしても威力の高さ故に吹き飛ぶ、叩きつけられる前に華麗にターンを決め着地。
足元に作った霊子を蹴ってリルが急加速、動血装を使い振るった弓が剣に変えた右腕と激突。

「顔も髪も女の子の大事な部分なんですよ?」
「なら心臓で勘弁してやるよ。薄っぺらい胸の片方なら安いもんだろ」
「…あなたには言われたくないかなぁ!」

安い挑発と分かっても苛立ちを抱かない訳ではない。
怒りをそのまま刃に乗せて振るえば、飛廉脚で再度背後を取られる。
尤も既に一度見たヤミには驚きも皆無、真後ろに出現した気配へ回し蹴りを繰り出す。
スラリとした脚は変身により分厚い斧と化し、リルの細い腰を容易く両断可能。
しかしヤミが感じた手応えは明らかに人体を切り裂いたのとは別物。
斧はリルの腹部へ命中している、だというのに皮一枚すら傷付けられず止まっているのは何の冗談か。
力を込めても脚はそれ以上動かない、どんな手品か答えを弾き出す前に矢が放たれた。

「おっと」

顔面ど真ん中狙いの矢を軽く捩って躱す。
回避のみに意識を割きはしない。
斧と化した右足を振り上げ、脳天目掛けての踵落としが炸裂。
流石に頭部までは腹部と同じ硬さを保ってはいないだろう。

「遅ぇ」

ヤミが足を上げた時点ですでにリルは飛廉脚を発動。
後方に下がりながら矢を連射。
攻撃が地面を砕くだけに終わり隙を晒したヤミは、射殺すには絶好のチャンスだ。
だが速さに優れるのはヤミも同様。
空振りを完全に理解する間もなく両腕を剣に変化、矢を斬り落とし接近戦を試みる。

「チョロチョロしないでくれると嬉しいから、大人しくしてくれません?」
「知るかよ」

双剣を時には躱し、時には生身の皮膚で防ぐ。
先程斧を防いだ時と仕掛けは同じ、静血装を使い刃も通さぬ防御力を得た。

回避の僅かな合間に矢を発射。
零距離からの殺意にもヤミは冷汗すら掻かずに対処。
顔を逸らして躱しながらも双剣の猛攻は勢いが衰えない。
対するリルも動血装で攻撃力を強化、弓で剣と打ち合い時には威力を高めた矢を射る。
ヤミが数十発目の矢を回避と同時に変身を発動。
但し今度は自分の体ではなく地面に伝達、リルの足元が獣の顎に変わった。
真下からの脅威にリルは地を蹴り脱出を決行、弾丸かと言わんばかりの勢いで正面のヤミに突撃をかます。
もんどり打ったリルは背後でトラバサミのように閉じた顎には目もくれない。
代わりに視界に飛び込んだのは、ほとんど紐同然の布が食い込んだ秘部。
尻もちを付いたヤミの股が丁度近くにあったらしい。

「偶然とはいえこの体勢…結城リト程ではありませんが、あなたにもハレンチの才能が…!?」
「ふざけんなクソビッチ」

辛辣な返しもそこそこに飛び退き矢を発射。
神聖滅矢を髪の毛で斬り落とし、ふとヤミは思う。
これは非常に無駄な戦闘ではないかと。

(むぅ…えっちぃことが全然できてないな…)

ヤミの方針は優勝でも何でもいいから結城リトの元に戻り、彼を自分の手で殺すこと。
しかしその過程で参加者を使ってえっちぃことを探求し、それからリトへの手向けとして殺す。
単に相手を殺すだけでなく、えっちぃことをしてから殺すのが重要なのである。
では今行っているのは一体全体何なのだ、えっちぃこととは無縁の単なる殺し合いじゃないか。
相手の殺意に中てられてついつい殺す気で攻撃したが、えっちぃことの前に殺しては本末転倒もいいところ。
血で血を洗う戦いなんて自分の望みではない。
この無意味な戦いは早急に決着を着けるべき、判断を下しこれまで使わなかった能力を行使する。
飛廉脚で移動しながら矢を放つリルだが、次弾を放つのを唐突に中断し回避に移った。
ヤミがいるのはリルの正面、だというのに攻撃は来たのはリルの真横。
宙にぽっかり穴が開き、中から刃に変えた金髪が突き出されているのが見える。
視線を正面に戻すとヤミの近く、丁度変化させた髪の先端付近に穴が出現していた。

「また面倒くせぇもん使いやがったな」

ボヤキへの返答は言葉ではなく刃。
リルの頭上、足元、背後と次から次に穴が出現し刃が飛び出した。
ダークネスとなったヤミは非常にポテンシャルが高く、元の状態では使えなかった能力も使用可能となる。
自分の体以外、水や地面への変身能力伝達もそう。
そしてリル相手に使っているのはワームホールの生成だ。
空間をも変身させて異なる地点同士を繋げる、異次元空間。
使い勝手が良く、元の世界でも(主にえっちぃ事で)度々用いた能力。
離れた場所にも繋げられるという事はつまり、攻撃以外にも有効的な使い方は多岐に渡って存在する。

「こんな風に、ね★」
「にゃっ!?」
「なっ…」

ワームホールに手を突っ込んだヤミが引っ張り出すと、先程まではいなかった者が現れた。
見覚えのある小さな影は間違いなくリルが最初に出会った参加者。
隠れていた小恋をワームホールで引き摺り出し、腕をロープに変えてあっという間に拘束。
打算ありきとはいえ一応保護している少女を確保され、ヤミへ矢を放つ手が止まる。
悪戯が成功したような意地の悪い笑みを浮かべるヤミが、この隙を逃す筈は無い。

長髪を刃から別の物へと新たに変身。
彩南町で巻き起こるトラブルの中心的人物、結城リトの分身を作った。
計5体のリトがリルに群がり手を伸ばす。
数が増えようと分身程度敵ではないがリトの持つ天性のテクニックもある程度は再現しているのか、無駄のない動きでリルの服に手を掛け脱がしに掛かる。
露わになった素肌に手を、蛇のように伸ばした舌を這わした。

「おねえちゃん!」
「だーめ♡あなたはこっち♪」
「ひゃあっ!?」

人差し指をナイフに変えて振るえば、パラパラと小恋の衣服が切り裂かる。
間違っても素肌に傷は付けないよう加減はしてある。

「それと、これももらいますね」
「あっ!それ小恋の!とっちゃだめだよ!」

可愛らしい抗議もどこ吹く風で小恋からランドセルを剥ぎ取った。
自分に支給されたのは逃走のどさくさでディオに奪われたので、ここいらで代わりを手に入れておく。
中を漁り早速目当ての物を取り出す。
全参加者共通の支給品である飲み水、ペットボトルの口を斬り中身が零れるも通常では有り得ない動きを見せる。
意思を持ったように水がヤミの腕に絡み付いたのは、指に填めた帝具の効果。


ブラックマリンを使うのはこれが二度目だが能力使用に問題は無し。
水というのはえっちぃことをするのに最適だ、嘗てプール場にティアーユや多くの女生徒の嬌声を響かせた経験からも自信を持って言える。
ヤミの意思に従い水が小恋の全身を這い回り出した。

「ひゃんっ!?な、なにこれぇ…」
「クスクス、恐がらなくても大丈夫。すぐに気持ち良くなりますから♡」

変身能力を伝達し、スライムのようにヌルヌルした質感に変える。
凹凸の無い幼女のツルペタボディだろうとえっちぃ事をされて、理性を保つのは不可能。
えっちぃことに年齢は関係無いとヤミが誰に向けてか分からない内容を脳内で力説したのは、小恋には知る由も無い。
というか相手の考えを察せられる程の余裕などとっくに消え失せた。

「やぁっ…こ、これ…なんかへんだよ……」

ペットボトル一本分の水でも小恋の幼い肢体なら、くまなく刺激を与えられる。
あくまでゆっくりと、しかしぬめりを帯びた感触はまるでナメクジが這っているかのよう。
嫌悪感しか齎さない筈だし、実際小恋も気持ち悪さを抱いているのは確か。
だがそれだけではない、「いやなこと」以外のナニカがある。
ツルリとした腋を執拗に舐られ、くすぐったさにも似た感覚が襲う。
小さなヘソにも捻じ込み、お腹がおかしな熱を帯びる。

「もっと敏感な部分にも欲しいでしょう?」

小恋の返答を待つ気は無い。
嫌と言われても聞く耳持たずだ。
膨らみの無い平らな胸、桃色の小さな突起にふぅっと息を吹きかける。
それだけで面白いくらいに幼い体が跳ね、思わずペロリと舌なめずり。

「んっ…!そ、そこ、だめ…」

抗議は聞き入れられてもらえない。
水を操作し、狙いを桃色の突起に定める。
蛇の下のように細くなると、舌先でチロチロ舐めるように弄る。
胸の先端から伝わる電気が走ったかのような刺激、幼い体がより大きく跳ね上がった。

「ひぃんっ!?やっ、あっ、んんっ…!」

反応の一つ一つを楽しみながら、ヤミが操作する手は止まらない。
今のは片方だけ、今度はもう片方も一緒に攻めてやればさぞ良い反応をするだろう。
指先を軽く動かす。

「んあああああああああっ!!」

予想通りだ。
白い幼女の体は性的興奮で色付き、玉のような汗が浮かんでいる。
天真爛漫という言葉が似合う顔には涙が浮かび、口の端からは涎が垂れる始末。
されど頬を染めたその顔は見覚えがあるえっちぃ表情。
愛する彼にえっちぃことをされた女の子達が浮かべるのと同じ、隠し切れない性への興奮だ。
やっぱり思った通り、幼い子供だろうとえっちぃことは大好きに決まってる。
キウルの時のような発見は出来なかったけれど、リトへの手向けとしては十分だろう。
後は絶頂に導き一番の幸福に包まれたタイミングで仕留める。
水は下腹部へと這いずり、未だ触れていない未成熟な性器へと魔の手を伸ばす。

「だ、だめ…もうだめ…」
「どうして?えっちぃことはだめなんかじゃありませんよ?現に気持ち良いでしょう?」

元の自分もそうだけど、どうして皆素直になれないのかヤミには不思議でならない。
小首を傾げ訪ねれば駄々をこねるようにいやいやと首を横に振るわれた。
どんなに否定したって体の方は素直な癖に。

「小恋が…いっぱいスキスキするのは…みのりちゃんと、いっしょのときだけなの…!ちゅーも、デートも、ぜんぶみのりちゃんとだけなの…!えっちなことだって、みのりちゃんとしかしたくないもん…!」
「!?」

未知の快楽に身を苛まれ、呂律が回らないながらも必死に言葉を紡ぐ。
絶頂へと持って行くはずの水は動きを止め、ヤミも目を見開き暫し何も言えずにいた。
幼い少女の真摯な声に胸を打たれたからか?
否、断じて否である。
その程度で止まるくらいなら、正史においてリト達はダークネスを止める決死の作戦なんぞに出ていない。

言われた内容を一字一字咀嚼し、己のナカに溶け込ませる。
小恋は自分にえっちぃことをされるのを嫌がっている、それは何故か。
単に羞恥心があるからだけではなく、彼女には既に心に決めた相手がいるから。
その「みのりちゃん」なる者の手でえっちぃことをされるならまだしも、他の者から与えられた快楽などノーセンキュー。
体は歓喜を露わに、されど心は堕ちていない。
それは、それはなんて、

「最高にえっちぃじゃないですかぁ…♡♡♡」

好きな相手がいるにも関わらず、好きじゃない相手から気持ち良くされる。
心は必死に抵抗しても、体は正直に反応してしまう。
いつも真正面から健全なえっちぃことをしてくれたリトとは違う、背徳的なえっちぃこと。
ヤミ自身はリト以外の相手からのラッキースケベなど断じてお断りだが、他の相手にするのは悪くない。
何せリトを好いている者は多い。
中には素直になれずツンツンした態度を取る少女もいるが、リトへの好意は隠せていない。
そういった者達にリトではなくヤミがえっちぃことをし、絶頂へ導いてやったら?
大好きな彼には触れて貰えずに果てて、命を奪われるとしたら?
あまつさえ、その様子をリトに全て見られてしまったら?

「結城リトの元へ戻ったら、早速実践しないと♪」

まずは練習台として小恋を蹂躙してから、他の参加者にも同じ事をする。
例えば最初に逃げられた二人の少年。
彼らにだって心に決めた相手、或いはあられもないえっちぃ姿を断じて見られたくない存在くらいはいるだろう。
それをダシに弄ってやれば、きっとより素敵な表情を見せてくれるに違いない。

興奮の余り思わず涎を垂らしながら、最初の標的を終わらせに掛かる。
中断された秘部への刺激で以て、10にも満たない青い体を染め上げるのだ。

「絶頂の瞬間にサクッと殺してあげる♡」
「ひっ…」

パチンと指を鳴らすと水は目的地に到達。
瞳を潤わせる小恋へ向ける満面の笑みに宿るのは、色欲では覆い隠せない残虐性。

「たすけて……みのりちゃん……」

鍵のかかった扉をこじ開けるように。
ぴったり閉じた小さな口を強引に開こうとし――






「んなガキ犯すとかマジで終わってんな、クソッタレのアバズレが」






猛烈な悪寒が全身を駆け巡った。

細胞全てが悲鳴を上げるこれは、リトにえっちぃことをされたのとは別の感覚。
銀河の殺し屋として活動していた際に幾度となく味わった、生命の本能による訴え。
このままでは殺されると言う警告。

危機感に押し出されるまま飛び退けば、立っていた場所が大きく削り取られた。
違う、削られたのではなく喰われたのだ。
ヘタクソな落書きのように巨大化させた、リトの分身を5体全て丸ごと飲み込んだ口が。
乱れた衣服を戻しながら立ち上がり、小恋を抱きとめたリルの口がだ。

「なっ…!?」
「クソ甘ぇ。ゲロ吐きそうなくらいに甘いのなんざ初めてだぜ」

文句を言いつつ口を元のサイズに戻し、飛廉脚で少し離れた場所へ移動。
小恋を適当な場所に降ろすとすぐさまヤミへと向き直る。
今は一々声をかけてやる時間すら惜しい。
これまでと同じく神聖滅矢放てば、はっと意識を引き戻したヤミが髪を再び刃に変身。
振るいかけたそのタイミングで見た、自身へ向かって来る矢が触手に変化したのを。

「っ!?」

絡め取る、というよりは絞め殺す勢い。
首へ巻き付く前に全て斬り落とすとリルが至近距離へ接近、蹴りを繰り出す。
ただの蹴りではない、細い脚がハンマーに変化しヤミを叩き潰さんと襲い掛かった。
両手を前に着き出し盾に変身、ダメージこそゼロだが衝撃までは殺し切れない。
後方へ吹き飛ばされるも髪の先を杭に変え地面に突き刺す。

踏み止まったヤミへの追撃は正面からではなく背後から。
飛廉脚で高速移動の後、間髪入れずに矢を連射。
先端の口がヤミを噛み殺す役目は果たせない。
矢は再び形を変え、今度は回転するドリル状の刃と化す。
柔肌を貫き骨を砕く矢、両腕を伸ばした体勢からの回転切りで対処。
放たれた数は10本、しかし7本目を斬り落とした直後に残りの三本が消失。
ヤミが何かしたのではない、矢の方から勝手に消えたのだ。

「――っ!!」

否、宙に出現した穴に吸い込まれたのである。
アレが何を意味するのかヤミが知らない訳が無い。
頭上からヤミ目掛けて振るのは残る三本の矢。
右手を振り回して防ぎダメージゼロで凌ぐも、ヤミの表情は自然と強張る。
リルが今見せた能力の数々が何なのか、ヤミが一番よく知っていた。

「どうしてあなたが変身(トランス)を…?」

星十字騎士団(シュテルンリッター)のメンバーが一般の聖兵と大きく違うのは二つ。
一つは滅却師としての単純な能力の高さ。
もう一つはメンバー全員がユーハバッハから聖文字(シュリフト)を分け与えられている事にある。
聖文字とはアルファベットから連想される特殊能力の総称で、それぞれ異なる力を持つ。
たとえばユーハバッハの側近だったハッシュヴァルトは幸運と不運の操作。
たとえば狩猟部隊(ヤークトアルメー)の隊長を務めたキルゲは脱出不可能な檻の作成。
たとえばリルと腐れ縁のジジは浴びた者をゾンビに変化させる血液。
滅却師の基本能力の他に聖文字を振るい、星十字騎士団は護廷十三隊を幾度も苦戦させた。

リルもまた、星十字騎士団の一人として聖文字を有する。
彼女がユーハバッハより与えられたのは「G」。
「食いしんぼう(ザ・グラタン/The Glutton)」、それがリルの持つ聖文字の能力名。
ザ・グラタンはリトの分身を食らったように、口を巨大化させ飲み込む破壊力に特化した力。
十一番隊の隊士達を纏めて喰い殺したのもこの能力だが、ザ・グラタンはただ敵を喰うだけではない。

この能力の真価は、食らった対象が持つ特有の力を『消化し終えるまでの間だけ』自由自在に使えるというもの。
リトの分身に変身させたとはいえ元々はヤミの髪の毛。
ヤミの一部分を食い千切ったリルはザ・グラタンの効果により、ヤミの持つ変身能力を一時の間のみ使えるようになった。
能力の発動方法も食った時点で本能的に理解する、副次的な効果付きでだ。

「種明かしなんざ期待すんなよ。精々ガキを犯すしかねぇ頭で考えとけ」

聖文字の詳細を誰が馬鹿正直に伝えてやるものか。
ヤミの血肉を全て喰らったならまだしも、髪の毛だけではそう長い時間変身能力は使えない。
地面に伝達させ巨大な柱に変化、そこから更に別の物質へと変える。

「テメェの猿真似だが文句は言うなよ」

大木が枝を生やすように柱からも無数に管が生え、徐々に姿が別の形へと変わっていく。
それは先程ヤミが自分の髪の毛を変身させたのと同じ、何十人もの少年が姿を現わす。
ヤミの最愛の標的(ターゲット)、リトの分身が一斉に襲い掛かった。
但しヤミが生み出した分身がえっちぃこと目的だったのに対し、リルが生み出した分身は数の暴力で相手を殺す目的。
その証拠に服を脱がし素肌へタッチするはずの手は拳を作り、一体残らずヤミを殴り殺さんとする。

少し前に虚圏で一戦交えた破面、ルドボーン・チェルートの能力を参考にし変身能力をこのように使った。
あの時は空っぽの軍隊相手にバンビがビビり散らしていたか。
どうでもいい記憶へ思いを馳せるのは瞬きの間に留め、リトの分身を片っ端から向かわせる。

「は?」

口から出たのはヤミ自身も驚くくらいに低い声。
たった一言、いや一文字には明確な怒りが籠められている。
敵は何をした?そんなもの見れば分かる。
結城リトの分身を大量に作って、自分を殺そうとしているのだ。
瞳に映るそのままの光景、それが無性に腹立たしい。

自分の能力を使っている、それは別に良い。
変身能力は自分のみならず妹(メア)だって使うのだ。
今更別の誰かが使った所で、それは私だけのものだなんて言う気は無い。

でも彼は別だ。

所詮は分身に過ぎないと分かっていても。
自分に襲い来るのは決して本人ではないと理解していても。

彼のことを全く知らない癖に。
彼にえっちぃことを一度もされていない癖に。
彼のことを、大好きな訳でもない癖に。

「あなたなんかが、私の結城リト(モノ)を勝手に作らないで」

ハレンチへの喜びではなく、純粋な怒りによる変身。
髪を両腕に巻き付け巨大な光線銃を二丁作る。
銃口から放たれた閃光は分身を一体残らず焼き払い、分身を生み出した柱をも木端微塵に破壊。
リル本人にも迫るが静血装を使って防御力を強化、比較的軽症で済ませられた。

しかしこの程度でヤミの怒りは収まらない。
リトの事を知りもしない輩が勝手に彼の姿を作り利用した。
彼はの手はえっちぃことをする為にあり決して誰かを傷付けたりなんかしないのに、よりにもよってリトの姿で殺そうとした。
自分の恋路を邪魔どころか唾を吐きかけられた気分だ。
許せない、断じて許しおくものか。

「よく分かりました。あなたは私にとっての敵。ううん、最低の害虫だってことが」
「惚れた野郎の人形作っただけでこれかよ。ソイツに同情するぜ」

淡々とした毒舌だがこれでも相応に危機感は感じているつもりだ。
リルの全身を照らす輝きは、ヤミが掲げた右手によるもの。
天を突き雲を切り裂く勢いの巨大な光剣。
ヤミが使える最大規模の攻撃に、さてどうするかとリルは冷静に思案する。
変身能力は残り僅かな時間だが使える、ならアレと同じ規模の攻撃をこちらも放てる筈。
同等の威力だろうと自分には動血装がある分、攻撃強化で勝負を有利に動かせるだろう。
使い方は考えずとも本能で理解しているのだ、ヤミが光剣を生み出したのと同じ要領で矢を生成し――

「おねえちゃん…」

視界の端に小さな体躯を捉えた。

「……」

自分一人なら、生き残る算段は幾らでも組み立てられる。
強化した矢で相手を殺すだけではない。
こっちが押し負けても飛廉脚を駆使しての回避、静血装を使っての防御。
変身能力やワームホールの生成だって今ならまだ間に合う。

だがこの少女は?

霊圧も一般人並、戦う力は皆無。
ユーハバッハが神で星十字騎士団が首輪を付けられた猛獣なら、こいつは黒蟻。
抗う術を何も持たない虫けら一匹、直接手に掛けなくとも巻き添えを食らえば余りに呆気なく死ぬ。

「……クソうぜぇ」

それは誰に向けての毒だったか。
ヤミか、小恋か、それとも乃亜か。
或いは、こんな反吐が出る程に甘い行動へ走った自分自身へか。
生成した矢を放り投げ、霧散するのを見送らず小恋の方へと駆ける。
飛廉脚を使えば一瞬、抱きかかえられ素っ頓狂な声を上げられても無視。

「逃がすと…」
「思ってねーよ」

逃がしてくれる甘ちゃんなら、そもそも最初から襲って来ない。
ヤミが右手を振り下ろし、だがリルもランドセルから取り出した支給品を振り被る。
巨大な光剣と真っ向からやり合える威力を期待しちゃあいない。
ただ逃げるのには打ってつけの道具だ。
動血装で右腕の腕力を強化、ミニィの聖文字程では無くとも今はこれで十分。

「あばよロリコンクソビッチ。二度とオレらに会わないで勝手にくたばっとけ」

右手で持った団扇を渾身の力で振るい、爆風が巻き起こる。

「なぁああああっ!?」
「ふにゃああああああああっ!?」

光剣を振り下ろし掛けたヤミのみならず、発生させたリル本人も小恋諸共吹き飛ばされる。
それぞれが違う方向へ木の葉のように飛んで行き、夜空には素っ頓狂な悲鳴が木霊するのみ。
あれだけの喧噪が響いた戦場跡に誰も残らず、やがて静けさを取り戻した。

◆◆◆


「――――ぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああっ!!」
「うるせぇ」

最低なお空の移動中ずっと叫んでいた小恋をぴしゃりと黙らせ華麗に着地。
足元に霊子で足場を作り出し激突を防ぐくらい、多少心得のある滅却師でも出来る。
暫く待ってみてもヤミが追いかけてくる気配は無い。
ワームホールを使えばもっと簡単に逃走出来ただろうが、相手だって同じくワームホールで追跡するだろう。
だからヤミを引き離しつつ大きく距離を稼ぐ為に、少々荒っぽい方法を取った。

去り際にヤミへぶつけたのは紛れも無い本心。
面倒な能力と脳内がピンクに染まり切った淫乱な本性、正直言って殺し合い関係なしに関わりたくない。
今後アレと遭遇し殺される参加者は気の毒だが、反対に殺してくれる者がいたら拍手の一つくらいは送ってやらんでもない。
再び自分達と会う可能性も否定できないのが新たな頭痛の種であるが。

「おねえちゃん…」

か細く自分を呼ぶ声に視線を下げる。
最初に会った時が嘘のように暗い顔の小恋へ、まぁ当然かと事情を察する。
自分とヤミの殺し合いを間近で見ただけでなく、凌辱されかけたのだ。
殺し合いをまともに理解していない年齢一桁の幼女だろうと、猛烈な恐怖を感じても不思議ではない。
かく言う自分もあの分身共に服を脱がされかけ、体をまさぐられたのだ。
ゾワゾワとした感触には思わずポーカーフェイスが崩れかかったものの、どうにか危機は脱した。
分身共を食い千切った時に多少の怒りが含まれていたのは、気のせいではあるまい。
静血装で幾らかリトのボディタッチを防げたのが幸いし、再度戦闘に臨めたが。
生憎と自分に慰めの言葉を期待されても困る。何を言うべきか考えた所で、

「小恋…さっきのひとのあかちゃんうんじゃうのかな…?」
「……はぁ?」

斜め上にも程がある質問が飛び出した。

「だ、だって、さっきおっぱいさわられたりして、それですごくぶわーってして…。みのりちゃんはまだおしえてくれなかったけど、もしかしてああするとあかちゃんできるの!?」
「……」
「ど、どうしよう…!小恋はもう、みのりちゃんのあかちゃんうむってやくそくしたのに…!うわきしちゃった……」
「…………」

顔を青くしガクガク震えながらとんでもない事を口走る幼女を見ていると、リルは真面目に考えるのが馬鹿らしくなるばかり。
小恋本人は大真面目だが傍から聞いてれば、さっきの痴女とどっこいどっこいな気がしてならない。
案外、殺し合いに乗ってさえいなければ気が合うのではないだろうか。

「産まれる訳ねぇだろ」
「ほんと!?ほんとにあかちゃんできてない?」

面倒くささ全開で頷くとこれまでの不安はどこへやら。
パァッと花が開いた笑みで胸を撫で下ろす姿は年相応のあどけなさがあるが、恰好がほぼ裸なのはどうしたものか。
ヤミに下着ごと衣服を割かれ、身に着けているのと言えば髪を結うリボン、それにソックスと靴。
後は参加者共通の首輪のみ。
小恋を連れ歩くならどこかで彼女の服の調達が必須。
こんなあられもない姿の幼女を連れ回していたらどんな誤解をされるか分かったもんじゃない。
さっきの痴女の同類と思われるのは勘弁して欲しかった。

短時間でこうもいらん苦労ばかりさせられるなら、やはり早々に他の参加者に押し付けるべきか。
薄情とも取れる事を考えるリルだが、不意に言われた言葉には中断を余儀なくされる。

「おねえちゃん、さっきはたすけてくれてありがとう!」
「……」

さっきとはどれのことだろうか。
最初にヤミの伸ばした手を払い除けた時か。
危うく犯される寸前で阻止した時か。
彼女が巻き添えを食らう可能性を考慮し、戦闘続行ではなく逃走を選んだ時か。
それら全部をひっくるめてか。

「ただの取引だ、礼はいらねぇってさっき言っただろ」

出会った時と何一つ変わらない無愛想な物言い。
それ以上何かを口にする気は無いのか歩き出すリルを、待ってよーと小さな影が追いかけた。

◆◆◆


「ムカつく……」

面白くなさそうな顔でヤミは不満を口にする。
吹き飛ばされた挙句にまんまと逃げられた。
相手の逃走を許してしまったのはこれが二度目だが、一度目と違って苛立ちが大きい。
念の為にワームホールを生成するも、案の定無駄に終わる。

「余計な細工をされたみたいですね…」

キウルとディオに逃げられた時もそうだ。
本来のヤミならワームホールを使えば追い付くのは簡単なのに、殺し合いにおいてはそう上手く事は運ばない。
ワームホールが作れるのは近い距離のみ、離れた場所と繋ぐのは不可能。
間違いなく乃亜が余計な真似をしたに違いない。
少なくとも性懲りも無く自分に飛び掛かった校長(へんたいおやじ)を南極に放り込んだ時のような、長距離移動は無理だろう。

とはいえ収穫はゼロではない。
自分の知らなかったえっちぃ事をまた一つ知れたし、ディオに奪われた代わりの支給品も手に入った。
ランドセルから地図を取り出し現在地と施設を確認。
その最中にチラと自分の指に填められた帝具を見やる。
水を操る能力自体は確かに強力だが、これに水そのものを生み出す力は備わっていない。
十分な水場を確保しなくては宝の持ち腐れ、それがブラックマリンという帝具だ。
ならば大量の水がある場所へ赴き、そこを狩り場とするのも悪くは無いかもしれない。
変身能力だけでなくブラックマリンも合わされば、きっと学校のプールでティアーユ達にした時以上のえっちぃことが実現可能な筈。

「そういえば、後で名簿も見れるんでしたっけ」

乃亜の言う参加者の選定基準にリトは入っていない為、恐らく彼は未参加だろう。
だが自分の知る者で参加資格を持つ人間ならばいる。

「……あなたもいるんですか?美柑」

結城美柑。
リトの妹で自分にとっては友人と呼べる少女。
小学生である美柑なら乃亜に参加者として選ばれてしまってもおかしくはない。

「結城リトと離れた場所で死ぬのはあなたも嫌でしょうけど…でも仕方ないですよね?」

リトの元に帰るのに手段を選ぶつもりはない。
もし本当に彼女も参加しているなら、残念だが美柑だろうと殺すしかあるまい。
せめて彼女の友だちとして、目一杯えっちぃことをしてあげてよう。
恐怖を忘れさせるくらいの気持ち良さと共に死ねば、それは美柑にとっても幸福に決まっている。
もしかすると既に殺し合いと言う異常下で、恐ろしい目に遭っているのかもしれない。
それなら余計に自分の手でたっぷりと気持ち良くしてから、この手で美柑を――。

「ころ…す……?美柑を……?」

何故だろうか、自分の行いに疑問が生まれた。
リトの元へ帰る為に、他の誰かに殺される前に自分が美柑を殺す。
そこに何も間違いはないではないか。
なのにどうしてだろう、何となくそれが間違っている様に感じられたのは。

「ちょっと疲れちゃったのかな…?あ~!そう考えるとさっきの女の子、やっぱりムカつく!」

きっと変身能力の連発で体力を消耗し、疲れて頭が回らないだけだろう。
大丈夫、自分は何も間違っていない。
結城リト恋路は誰にも邪魔させないと言い聞かせた。

正史において、ヤミをダークネスから引き戻した結城リトはこの場にいない。
ダークネス化の切っ掛けになり、ヤミを助ける作戦を思い付いた黒咲芽亜もいない。
救われる道(レール)を外れた金色の闇の行く末は、きっと乃亜にだって知り得ないだろう。

【E-6/1日目/深夜】

【リルトット・ランパード@BLEACH】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、若干の敏感状態
[装備]:可楽の団扇@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一式、トーナツの詰め合わせ@ONE PIECE、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]
基本方針:脱出優先。殺し合いに乗るかは一旦保留。
1:チビ(小恋)と行動。機を見て適当な参加者に押し付ける。
2:首輪を外せる奴を探す。
3:チビの服も探すねぇとな、めんどくせぇ。
4:ジジ達は流石にいねぇだろ、多分。
5:あの痴女(ヤミ)には二度と会いたくない、どっかで勝手にくたばっとけ。
[備考]
※参戦時期はノベライズ版『Can't Fear Your Own World』終了後。
※静血装で首輪周辺の皮膚の防御力強化は不可能なようです。

【鈴原小恋@お姉さんは女子小学生に興味があります。】
[状態]:精神的疲労(中)、敏感状態、ほぼ裸
[装備]
[道具]:
[思考・状況]
基本方針:みのりちゃんたちをさがす。
1:おねえちゃん(リル)といっしょにいる。
2:さっきの…すごくへんなきもち……。
3:はだかにされちゃった、さむいよぉ…。
[備考]
※参戦時期は原作6巻以降。



【金色の闇@TOLOVEる ダークネス】
[状態]:疲労(中)、興奮、ダークネス状態
[装備]:帝具ブラックマリン@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~2(小恋の分)
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから帰還したら結城リトをたっぷり愛して殺す
1:えっちぃことを愉しむ。脱出の為には殺しも辞さない。もちろん優勝も。
2:えっちぃのをもっと突き詰める。色んな種類があるんだね...素敵♡
3:さっきの二人(ディオ、キウル)は見つけたらまた楽しんじゃおうかな♪
4:あの女の子(リル)は許せない。次に会ったら殺す。
5:もしも美柑がいるならえっちぃことたくさんしてあげてから殺す。これで良い…はず。
6:水が大量にある場所に行くのもありかな?
[備考]
※参戦時期はTOLOVEるダークネス40話~45話までの間
※ワームホールは制限で近い場所にしか作れません。

【可楽の団扇@鬼滅の刃】
半天狗の分裂体の一体、可楽が使う団扇。
振れば突風を放ち、より強く振れば爆風を発生させる。

004:重曹 投下順に読む 006:友よ~この先もずっと…
時系列順に読む
136(候補作採用話):LOVE OR EAT リルトット・ランパード 053:KC Sleep
鈴原小恋
152(候補作採用話):The beginning of darkness~恥辱~ 金色の闇 060:Escape~楽園の扉~

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー