コンペロリショタバトルロワイアル@ ウィキ

勇者の挑戦

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バトルロワイアル開始から十五分。


「ククリー!!ジュジュー!!ああもうこの際オヤジやトマでもいいから助けてくれー!」


紅いバンダナに金の短髪、画風のせいで異様に幼い顔立ち。
魔法陣グルグルの主人公、勇者ニケは絶賛命の危機に瀕していた。
何故か、理由は単純である。追われているからだ。


「全く、呆れたすばしっこさね。逃げ足だけは英霊並みよ?貴方」


全速力で短い手足をしゃかしゃか動かして逃げるニケの前に、追跡者が空から降り立つ。
褐色の肌に桜色の髪、紅と黒の外套が印象的な少女。
クロエ・フォン・アインツベルンは呆れを顔に浮かべながらその手の双剣を獲物へと向けた。


「ままままま、待てって!早まるな!話せばわかる!」
「分からない。私は優勝して願いを叶える権利が必要だもの」
「落ち着けよ!こんな悪趣味なゲーム始めるボスが願い叶えるとでも思ってるのか!?」


必死に声を張り上げて、説得しようとする。
ニケから見たこの少女はきっと自分よりずっと強い。
戦ったら負けるどころではない、殺されてしまう。
だから、今は口先をフル回転させるほかなかった。
…それでも勇者かと、突っ込んではいけない。


「それでも、よ。悪いけど私の未来のための礎になって頂戴」
「ちょちょ、タンマ!タンマ!待ってくれ、お願い!
ほ、ほら。お前の願いを聞かせてくれよ!場合によっちゃ俺が協力できるかも……」
「アナタが?悪い冗談もいい所だわ」
「そう言うなって!俺はこう見えても結構すごいんだよ!」
「……一応聞いておくけど、貴女の何がどう凄いの?」


よし、釣れた。
ニケは心の中でガッツポーズをとる。
次だ、次にこの説得の全てが掛かっている。
普段は余りひけらかしたりしないけれど、この場合は緊急事態だ。仕方ない。
ずびしっ!とサムズアップして指を自分に向けて宣言する。

「実は俺……勇者なんだ」
「あっそう。遺言はそれでいい?」


あっれー?
全然効果が無かった。そりゃあもう、哀しいほど。
春先に出てくるアレな人を見る目を向けられていた。ちょっと泣きそうになった。
ショックでがくりと情けなく項垂れ、地に這いつくばる。
そんな獲物の姿を見て、弓兵の少女はどうにも気が抜けるとため息を吐いた。


「…はぁ。そうね。私も鬼じゃないし、殺される理由ぐらいは冥途の土産に教えてあげましょうか」
「そ、そうそう!冥途の土産をもっとくr…うおおおっ!!」
「調子に乗らない。言い終わったらきっちり死んでもらうんだから」


ぱぁっと何か勝手な希望を見出そうとしている少年を諫めるように剣を投げる。
慌てて上体を逸らすことで躱した自称勇者の様を醒めた瞳で眺めながら、空を切って帰ってきた剣をその手に収め、胸に手を当てる。


「さっき、貴方は私の願いに協力できるかもって言ったけど、それは無理よ」
「まぁまぁ落ち着いて。取り合えず言ってみ?言ってみなけりゃ分からない───」
「私、もう永くないの」
「………っ!?」


さっきまでおふざけの様に百面相をしていたニケの表情が強張る。
殺し合いに巻き込まれたのに緊張感の欠片も無いお気楽極楽な自称勇者様のくせに。
そんな顔もできるんだ。
そう思いながら、クロエは続けた。


「不治の病…みたいなものだと思ってくれればいいわ。
此処から生きて帰れたとして、もうあと数日も生きられればイイトコでしょうね」


そんな時にこの殺し合いに呼ばれて。
見せられたのが、二人の兄弟が殺され、そして生き返る姿だった。
死の間際に治療した、と言う話なら彼女が知る魔術と言う技術でも可能だ。
だが、首が切断され、誰が見ても即死の状態で復活させたというなら。
それは最早魔法の領域だ。



「どうせただ脱出しただけじゃ未来(さき)が無いなら…
一縷の希望に縋りたいと思うのが人情ってものでしょう?」


そう言って、少女は俯き、ふっと笑った。
諦観の色を帯びた笑いだった。
これで話せる理由は全て。
納得は出来ないだろうけど、死んでもらう以外の選択肢は無い。
せめて苦しまない様に、一撃で息の根を止めてあげなければ。
心のどこかが軋む音を聞きながら、弓兵の少女は獲物を見据える。


「───?」


だが獲物の表情は先ほどまでとは違っていた。
泣いたり謝ったり、騒がしかった顔つきは今や別人の様で。
冷や汗は垂れていたけど、この絶体絶命の窮地において、彼は不敵に笑っていた。


「……一つ聞いていいか?」
「…まぁいいわ、一つだけよ」
「殺し合いに優勝できたとして──それでめでたしめでたしになると思ってるのか?」
「え…?」


流石に、看過できない発言だった。
だって、そうだろう。
優勝者の身の安全は保障される、その前提が崩れてしまったら。


「こんなゲームを仕掛ける奴が、一回上手く行って満足すると思うか?」
「それは……」
「優勝した奴がもう一回連れてこられない、何て──誰が保証してくれるんだよ」


仮に優勝できて、願いを叶えられたとしても。
そこから暫く経って、もう一度殺し合いに拉致されない保証は、あるのか?
もし、そうなったとして、自分はまた優勝できるのか?
自称勇者の指摘にふと、考えが過ってしまった。



「賭けてもいいね。あの乃亜って奴は何が目的なのかは知らねーけどさ。
ゲームが上手いったらもう一度殺し合いを開くよ。
そしてそうなったら前回優勝者なんて美味しいキャラ、見逃すはずがない」
「随分自信満々なのね…根拠はあるのかしら」


勿論あるさ、と。
不敵な笑みを深めて、ずびしっ!とクロエを指さしそして宣言した。



「美味しい物には2がある!後藤ヒロユキもそう言ってた!!」



こいつ、ちょいちょい訳の分からない事言うわね。
そう感じつつも、言いたい事のニュアンスは伝わってきた。
脳裏に浮かぶのは、アインツベルンによって与えられ、
実の母によって封印されてきた一つの儀式の知識。
聖杯戦争。
冬木の地にて、複数回試みた…と伝えられている魔術儀式。
それに照らし合わせて考えれば、目の前の自称勇者のセリフも一理ある…のかもしれない。


「…それで、あなたの言ってる事が本当だとして、
貴方はこの殺し合いや、私の問題を何とかする具体的なプランはあるのかしら?」
「うっ!い、いやー…それはこうご期待というか。何とかできたらご喝采というか…」


さっきまでの不敵な笑みは何処へやら。
今度は冷や汗をだらだら流しながら、しどろもどろになっている。
その様を見ているとどうにも気が抜けた。
説得と合わせて、決めていた筈の覚悟が鈍った。


「……貴女、名前は?」
「え?ニ、ニケだけど」
「そう、ニケ君ね。私はクロエ、よろしく。
貴方のバカな説得に免じて、今回は見逃してあげる」


双剣を消して、臨戦態勢を解く。
どうにも、興が削がれてしまった。
だが、自分の様を見て勘違いしかねない彼に、釘を刺しておくのは忘れない。



「言っておくけど、私は乗らないって言ってる訳じゃないわ。
今回だけ見逃すって話よ。貴女以外の参加者は襲うし、
貴方も次に会った時、このゲームを打破する計画に何も進展がなければ──」


弓兵(サーヴァント)として身体能力を使って、跳躍する。
同時ににっこりと、これまでで最高の笑顔を見せて。


「──殺しちゃうから。頑張ってね。自称勇者さん?」


その言葉だけを残し、制止する暇もなく。
クロエと名乗った少女は、夜空に吸い込まれるように消えていった。
一人残された勇者はただ、天を仰いで…盛大に頭を抱えた。


「えらい約束をしちまった……」


正直、このゲームをどうにかすることも、クロエの体の問題も。
具体的な展望は何一つとして無かった。
え?ていうかクロエの体の問題も俺何とかしなきゃいけないの?という心境だった。
そうして暫く頭を抱えて…やがてはぁ、とため息を吐きながら立ち上がる。


「……ま、担ぎ上げられただけのダメ勇者だけど、偶には勇者らしい事もしてみますか」


一人の少女も救えないで世界を救う事は出来ないだろうし。
諸々が丸く収まったらパンツ見せろ位は要求してもいいかな、と。
喜劇舞台の勇者様はそう考えながら、改めてバトルロワイアルに挑むのだった。



【勇者ニケ@魔法陣グルグル】
[状態]:健康、不安(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗っちゃダメだろ常識的に考えて…
1:とりあえず仲間を集める。でもククリとかジュジュとか…いないといいけど。
2:クロの願いに対しては…どーすんべこれ……
※四大精霊王と契約後より参戦です。




「見逃すつもり無かったのに、どうしてかしら」


私の体には未来がない。
この殺し合いからうまく抜け出せたして、生きていられるのはせいぜい数日。
だから、優勝以外に道は無いと思っていた。
でも、ニケ君と出会って。
只のバカのだと見ていた彼が、意外な視点からこのゲームの前提を揺らがせて見せた。
きっとそれで、抑え込もうとしていた、心の贅肉って奴が出てきてしまったんだと思う。
でも、それはこれで店じまいにしなければならない。


「ごめんね、ニケ君。貴女はきっと……間に合わないわ」


ごそごそと、胸元からある物を取り出す。
それは一個の紅い宝石。
支給品の説明では賢者の石、と銘打たれていたエネルギー増幅装置。
魔力が亡くなれば消え得てしまう私にとっての生命線であり……殺すための、武器。
これを使って戦い、これを使って殺していく事になるだろう。
それを止めるには…どうあってもあの勇者様は間に合わない。
だから、一言詫びを入れた。
届くことのない、謝罪を。


「次に会う相手は、彼みたいな奴じゃないと良いけどね……」


そうでなければ、決意がまた鈍ってしまいそうだったから。
……この時、一つ思い至った事がある。
何故、彼の様な人間に、刃を振り下ろす気が鈍ってしまったのか。
あの無邪気で、騒がしい感じが、知っている相手に似ていたからだ。
そう。文字通り、魂を分けた姉妹に───



「助けてよ…イリヤ」


【クロエ・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ イリヤ ツヴァイ!】
[状態]:健康、若干自暴自棄気味
[装備]:賢者の石@鋼の錬金術師
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2
[思考・状況]
基本方針:優勝して、これから先も生きていける身体を願う
1:とりあえず、覚悟を決めたいところね。
2:ニケ君には…ほんの少しだけ期待してるわ。少しだけね。
[備考]
※ツヴァイ第二巻「それは、つまり」終了直後より参戦です。
※魔力が枯渇すれば消滅します。




018:ある名も無きあいの唄 投下順に読む 032:忍者と極道
時系列順に読む
START 勇者ニケ 012:カサブタだらけの情熱を忘れたくない
START クロエ・フォン・アインツベルン 003:俺が死ぬまで治らない

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