手を喪った、足を喪った。
その文句だけならば、最早優勝は絶望的と凡人は考えるだろう。
否、優勝どころか生存すら絶望的だとそう評するかもしれない。
だが、その時輝村照が、ガムテが。
殺しの王子様(プリンス・オブ・マーダー)が考えていたことは一つ。
あぁ、と。息を吐いて。心中で彼は口ずさむ。
その文句だけならば、最早優勝は絶望的と凡人は考えるだろう。
否、優勝どころか生存すら絶望的だとそう評するかもしれない。
だが、その時輝村照が、ガムテが。
殺しの王子様(プリンス・オブ・マーダー)が考えていたことは一つ。
あぁ、と。息を吐いて。心中で彼は口ずさむ。
(────安泰(なじ)む)
ガムテの隻脚に収まった、人間国宝(ニンコク)が鍛えし関の短刀(ドス)。
誰よりも殺したいと願い、誰よりも認めさせると誓った父親(パパ)。
彼より与えられた、聖夜の贈り物(クリスマスプレゼント)。
その刃と分ち難く一つとなって、ガムテは殺意の地平を疾走する。
生身の足よりも余程軽やかで、心底(マジ)でムカつくほどに頼もしい。
実際、駆ける速度は明確に向上しているはずだ。
怪物と化した忍者の猛攻に晒されても、未だ被弾していない現状がそれを証明している。
迫りくる激情を、振り下ろされる死神の鎌を刹那で見切り、目にも映らぬ速度で躱す。
誰よりも殺したいと願い、誰よりも認めさせると誓った父親(パパ)。
彼より与えられた、聖夜の贈り物(クリスマスプレゼント)。
その刃と分ち難く一つとなって、ガムテは殺意の地平を疾走する。
生身の足よりも余程軽やかで、心底(マジ)でムカつくほどに頼もしい。
実際、駆ける速度は明確に向上しているはずだ。
怪物と化した忍者の猛攻に晒されても、未だ被弾していない現状がそれを証明している。
迫りくる激情を、振り下ろされる死神の鎌を刹那で見切り、目にも映らぬ速度で躱す。
「キャホッ☆キャホッ☆キャホホ~イッ☆」
猿の鳴き声に似たはしゃぎ声を喚き散らし、ガムテは華麗に致死の一撃をすり抜けた。
闘牛士の様な立ち回り、しかし相手取ったのは猛獣なれど猛牛にあらず。
友を殺され猛り狂うはガムテ達極道の怨敵である忍者、うずまきナルト。
バケ狐の化生と化した彼の殺意は、現時点で一発としてガムテを捕えられていない。
闘牛士の様な立ち回り、しかし相手取ったのは猛獣なれど猛牛にあらず。
友を殺され猛り狂うはガムテ達極道の怨敵である忍者、うずまきナルト。
バケ狐の化生と化した彼の殺意は、現時点で一発としてガムテを捕えられていない。
「ん~遅漏(トロ)臭ぇ~、その変身(コスプレ)意味あったん?」
「ガアアアアアアアアアッ!!!!」
「ガアアアアアアアアアッ!!!!」
口撃(アオリ)を入れながら、向かってくる拳を半身になって躱し。
更に間髪入れず掴みかかろうと伸びる赤い気(チャクラ)の腕へその手の刀を振るった。
斬りこまれた刃は標的に実体がない事実など物ともしない。
まるで豆腐を斬るかのようにチャクラの腕を切り落とし、大気へと霧散させる。
そして、大振りで隙を晒したナルトの脇腹へ────
更に間髪入れず掴みかかろうと伸びる赤い気(チャクラ)の腕へその手の刀を振るった。
斬りこまれた刃は標的に実体がない事実など物ともしない。
まるで豆腐を斬るかのようにチャクラの腕を切り落とし、大気へと霧散させる。
そして、大振りで隙を晒したナルトの脇腹へ────
「児童内臓(ガキモツ)粉砕(トバ)しなッ!!!」
地面に突き刺した短刀(ドス)を軸に、自由(フリー)の足を敵へと叩き込む。
大砲が命中したような衝撃がナルトを襲い、ごきりと脇腹の骨が砕ける音が紡がれて。
血反吐を吐くナルトの肉体が、十メートル以上吹き飛ばされる。
だが、ナルトもタダで吹き飛ばされはしない。吹き飛ばされる最中首だけを動かし。
憎悪で染まった瞳と、獣の様に尖った歯が並ぶ口を開きながらガムテへと向けて。
大砲が命中したような衝撃がナルトを襲い、ごきりと脇腹の骨が砕ける音が紡がれて。
血反吐を吐くナルトの肉体が、十メートル以上吹き飛ばされる。
だが、ナルトもタダで吹き飛ばされはしない。吹き飛ばされる最中首だけを動かし。
憎悪で染まった瞳と、獣の様に尖った歯が並ぶ口を開きながらガムテへと向けて。
「 カ ア ッ ! ! ! 」
触れれば身を裂く妖狐の咆哮を放つ。
ただ叫ぶだけで、今の彼は破壊を導く衝撃波を生み出すことが可能なのだ。
不可視にして高速、常人であれば回避不能の一撃に他ならない。
ましてその標的は隻脚。常識で考えれば過多とすら言える攻撃であったが、しかし。
ただ叫ぶだけで、今の彼は破壊を導く衝撃波を生み出すことが可能なのだ。
不可視にして高速、常人であれば回避不能の一撃に他ならない。
ましてその標的は隻脚。常識で考えれば過多とすら言える攻撃であったが、しかし。
「雑魚(コモン)すぎィ!」
刀で一体どのように走り、その速さを出しているのか。
疑問を通り越し不条理とすら言える速度で、ガムテは不可視の衝撃波をやり過ごす。
彼にとって、ただ見えないだけの攻撃など普通の攻撃とさして変わらない。
破壊の極道の首領、輝村極道をして天才と言わしめたその殺しのセンス。
母の苛烈な虐待の日々によって得た、予知能力めいた第六感。
関の短刀を脚に埋め込んでから、ガムテの中のそれらは更なる領域に至りつつあった。
高いレベルのスポーツ選手が稀に入る、ゾーンと呼ばれる状態のように。
疑問を通り越し不条理とすら言える速度で、ガムテは不可視の衝撃波をやり過ごす。
彼にとって、ただ見えないだけの攻撃など普通の攻撃とさして変わらない。
破壊の極道の首領、輝村極道をして天才と言わしめたその殺しのセンス。
母の苛烈な虐待の日々によって得た、予知能力めいた第六感。
関の短刀を脚に埋め込んでから、ガムテの中のそれらは更なる領域に至りつつあった。
高いレベルのスポーツ選手が稀に入る、ゾーンと呼ばれる状態のように。
「姿は変わっても実力(ランク)は弱(ショボ)いねェ───死ねよ」
大地を、周辺の建物を、攻撃の余波で吹き飛んだ瓦礫を伝って。
殺しの王子は標的へと迫る。片足がないとは思えない程縦横無尽に。
一撃でも受ければ後は一方的に引き潰される数多の激情を欺き、煽り、すり抜け。
第六感がこれなら標的の心臓に届くと訴えている、隻腕に握った日本刀を閃かせた。
殺しの王子は標的へと迫る。片足がないとは思えない程縦横無尽に。
一撃でも受ければ後は一方的に引き潰される数多の激情を欺き、煽り、すり抜け。
第六感がこれなら標的の心臓に届くと訴えている、隻腕に握った日本刀を閃かせた。
「ほォら、コンコン鳴いてみたらどぉだ?お稲荷様ぁッ!!」
風斬り音とほとんど同時に、肉の斬れる音が周囲へと木霊する。
本体と一体化している最も濃い、九尾のチャクラによる装甲すら一合で切り裂かれ。
鮮血が舞った。ずるり、と切られた肉の断面から、ナルトの内臓が零れ出る。
それを目にしてやはり自分の勘は正しかったと、ガムテは冷徹に結果を見定めた。
幾ら怪物染みて居ようと、斬られれば血を流す人だ。
ならば殺しの王子たる自分が勝てない道理はない。生きているのなら神すら殺して見せる。
それを成すために、目下最大の問題は────
本体と一体化している最も濃い、九尾のチャクラによる装甲すら一合で切り裂かれ。
鮮血が舞った。ずるり、と切られた肉の断面から、ナルトの内臓が零れ出る。
それを目にしてやはり自分の勘は正しかったと、ガムテは冷徹に結果を見定めた。
幾ら怪物染みて居ようと、斬られれば血を流す人だ。
ならば殺しの王子たる自分が勝てない道理はない。生きているのなら神すら殺して見せる。
それを成すために、目下最大の問題は────
「俺のHPが保つかって所だなぁ」
その手に握る大業物、閻魔。
ひとつなぎの大秘宝を巡る世界において、四皇と恐れられた最強生物。
百獣のカイドウに消えない傷跡を刻んだ、伝説的名刀。
その刃は世界を隔ててなお、強力無比。
例え相手が一国を墜とすと謳われる九尾の妖狐であっても、相手にとって不足はない。
充分に、うずまきナルトを殺しうる武装だ───その特性を考慮に入れないのであれば。
ひとつなぎの大秘宝を巡る世界において、四皇と恐れられた最強生物。
百獣のカイドウに消えない傷跡を刻んだ、伝説的名刀。
その刃は世界を隔ててなお、強力無比。
例え相手が一国を墜とすと謳われる九尾の妖狐であっても、相手にとって不足はない。
充分に、うずまきナルトを殺しうる武装だ───その特性を考慮に入れないのであれば。
「ちぇ~っ!厄介(メンヘラ)にも程があるぜ、このポン刀」
ナルトとの戦闘開始から、ガムテはまだ閻魔を片手の指を超える数しか振るっていない。
その理由は、閻魔の異常な燃費の悪さにあった。
一振りするだけで、薬(ヤク)の影響で疲れを知らぬ身体に小さくない疲労が伸し掛かる。
閻魔の特性、それは担い手の覇気を強制的に吸い出し鋭さに比例させること。
生半可な剣士ではあっという間に衰弱する、妖刀ともいえる一刀。
闇雲に振り回せば一分と掛からず駆動限界を迎え死に至る、とんでもないじゃじゃ馬だ。
それ故に、振るえるタイミングは緊急回避や相手に重傷ないし決定打に繋がる好機のみ。
その理由は、閻魔の異常な燃費の悪さにあった。
一振りするだけで、薬(ヤク)の影響で疲れを知らぬ身体に小さくない疲労が伸し掛かる。
閻魔の特性、それは担い手の覇気を強制的に吸い出し鋭さに比例させること。
生半可な剣士ではあっという間に衰弱する、妖刀ともいえる一刀。
闇雲に振り回せば一分と掛からず駆動限界を迎え死に至る、とんでもないじゃじゃ馬だ。
それ故に、振るえるタイミングは緊急回避や相手に重傷ないし決定打に繋がる好機のみ。
(ったく……状況はキツツキになりそうなくらい死線(キチィ)な)
狂気と嘲弄に満ちた態度と所作の裏で、ガムテは彼我の戦力差を見極める。
そして、その結果、破壊の八極道である自分をしてうずまきナルトは、難敵。
そう言わざるを得ない程、閻魔を届かせる条件は渋かった。
まず、タフさは向こうの方が圧倒的に上だ。捌いた腹が既に傷跡すらないのだから。
破壊力もガムテの知る忍者を上回るソレである、一撃でも致命傷を負いかねない。
速度と立ち回りでは薬(ヤク)をキメたガムテの方が上だが、圧倒できる速度差ではなく。
更に敵が纏い装甲の役目を果たしている橙色のエネルギーが曲者だった。
これのせいで消耗が激しい閻魔の一撃以外にロクに攻撃を通せないのだ。
そして、その結果、破壊の八極道である自分をしてうずまきナルトは、難敵。
そう言わざるを得ない程、閻魔を届かせる条件は渋かった。
まず、タフさは向こうの方が圧倒的に上だ。捌いた腹が既に傷跡すらないのだから。
破壊力もガムテの知る忍者を上回るソレである、一撃でも致命傷を負いかねない。
速度と立ち回りでは薬(ヤク)をキメたガムテの方が上だが、圧倒できる速度差ではなく。
更に敵が纏い装甲の役目を果たしている橙色のエネルギーが曲者だった。
これのせいで消耗が激しい閻魔の一撃以外にロクに攻撃を通せないのだ。
「ほんと、違う空の下でも、最悪(クソゲー)だよなァ、忍者って奴は」
「ぐがああああああッ!!」
「ぐがああああああッ!!」
ははっ、と笑いながら口ずさむ。
怒り狂う獣の一撃を躱す度に思い知らされる。戦力差は、歴然だと。
使える手札の量と強さが違い過ぎる。不公平過ぎて思わず笑ってしまう程だ。
だが、ガムテの表情に絶望は無かった。
彼我の力の差は歴然なれど、それは勝機が存在しない事を意味しない。
ガムテの第六感が、その事を強く訴えていた。
だから、その勘に従いただ目指す場所へ突き進むと、強い使命感だけが眼差し中で燃える。
怒り狂う獣の一撃を躱す度に思い知らされる。戦力差は、歴然だと。
使える手札の量と強さが違い過ぎる。不公平過ぎて思わず笑ってしまう程だ。
だが、ガムテの表情に絶望は無かった。
彼我の力の差は歴然なれど、それは勝機が存在しない事を意味しない。
ガムテの第六感が、その事を強く訴えていた。
だから、その勘に従いただ目指す場所へ突き進むと、強い使命感だけが眼差し中で燃える。
────とは言え、そろそろ好機(ワンチャン)が何なのか分かんねーと……
────窮地(ぴえん)超えて絶望(ぱおん)だなァ。
────窮地(ぴえん)超えて絶望(ぱおん)だなァ。
もうすぐその好機が来るのは直感的に感じる。
だが、この人の形をした怪物を仕留めるに足る好機が一体如何様にして訪れるのか。
ガムテ自身にも見当がつかず、ジリジリと追い詰められるジリ貧の状況でガムテは舞う。
勝利の二文字の為に勝機の見えぬ戦いをじっと伏して耐え、ひたすらに舞い続ける。
そして、転機はガムテがナルトの37度目の拳を凌いだ時にやって来た。
だが、この人の形をした怪物を仕留めるに足る好機が一体如何様にして訪れるのか。
ガムテ自身にも見当がつかず、ジリジリと追い詰められるジリ貧の状況でガムテは舞う。
勝利の二文字の為に勝機の見えぬ戦いをじっと伏して耐え、ひたすらに舞い続ける。
そして、転機はガムテがナルトの37度目の拳を凌いだ時にやって来た。
───んだよ王子(プリンス)の奴、敗けたのか。
殺し屋として研鑽を積み、それから更に薬(ヤク)で研ぎ澄ませた知覚機能。
聴覚、嗅覚、そして第六感が、此方へと向かってくる足音を捕えた。
その数は単独にあらず、恐らくだが四人の参加者が此方に向かってきているのだ。
恐らく足運びからして、同盟者であるゼオンが目を付けた連中だろう。
ガムテはゼオンとの競合を避け、怨敵を最悪の病気にしてブッ殺すことを優先した。
その為どんな戦闘が繰り広げられたのかは、彼は知らない。
だがそれでも、ナルトの元へ赴くまでに一瞥した連中がゼオンを退けたのは。
ガムテにとって、俄かに衝撃を覚える事態だった。これでもう、彼の支援は期待できない。
それはつまり、ガムテは更に窮地に立たされた事を意味する。
聴覚、嗅覚、そして第六感が、此方へと向かってくる足音を捕えた。
その数は単独にあらず、恐らくだが四人の参加者が此方に向かってきているのだ。
恐らく足運びからして、同盟者であるゼオンが目を付けた連中だろう。
ガムテはゼオンとの競合を避け、怨敵を最悪の病気にしてブッ殺すことを優先した。
その為どんな戦闘が繰り広げられたのかは、彼は知らない。
だがそれでも、ナルトの元へ赴くまでに一瞥した連中がゼオンを退けたのは。
ガムテにとって、俄かに衝撃を覚える事態だった。これでもう、彼の支援は期待できない。
それはつまり、ガムテは更に窮地に立たされた事を意味する。
────が。来たぜ、僥倖(ビッグ・サクセス)………!
だが、やはりガムテの表情に絶望はない。そんな物を感じている暇はなかった。
たった今繋がったのだ。どのように目の前のバケ狐を刺して、殺せばいいのかを。
ガムテは笑っていた。窮地を転じて、これはむしろキルスコアを一気に稼ぐ千載一遇だ。
ゼオンに邪魔される事無く怨敵を消し、此方に来ている連中の何人かも始末できる。
だが、それには事前の仕込みが必要だ。ただ安穏と末だけでは達成できない。
そう考えてからのガムテの行動は迅速で、迷いのないモノだった。
たった今繋がったのだ。どのように目の前のバケ狐を刺して、殺せばいいのかを。
ガムテは笑っていた。窮地を転じて、これはむしろキルスコアを一気に稼ぐ千載一遇だ。
ゼオンに邪魔される事無く怨敵を消し、此方に来ている連中の何人かも始末できる。
だが、それには事前の仕込みが必要だ。ただ安穏と末だけでは達成できない。
そう考えてからのガムテの行動は迅速で、迷いのないモノだった。
「こっちま~でお~いでェ☆あっかんべぇ~!!!」
「っ!?」
「っ!?」
ここで、ガムテがこれまでの攻防で決して行わなかった行動に出た。
あっかんべぇと舌を出して、そのままナルトに背を向けたのだ。
気合だけで子供の身体など容易に吹き飛ばす今のナルトを相手に、それは自殺行為。
ただ逃走に専念した所で逃げられる相手であれば、彼はとっくに逃げ延びていただろう。
殺意と憎悪に支配されたナルトをして、疑念の方が先に来る一手だった。
だがすぐに、どうでも良いとナルトはガムテの選択を断じる。
例え、何か小賢しい策を考えて居ようと、今の自分を相手に本気で逃げられると思っていようと。
あっかんべぇと舌を出して、そのままナルトに背を向けたのだ。
気合だけで子供の身体など容易に吹き飛ばす今のナルトを相手に、それは自殺行為。
ただ逃走に専念した所で逃げられる相手であれば、彼はとっくに逃げ延びていただろう。
殺意と憎悪に支配されたナルトをして、疑念の方が先に来る一手だった。
だがすぐに、どうでも良いとナルトはガムテの選択を断じる。
例え、何か小賢しい策を考えて居ようと、今の自分を相手に本気で逃げられると思っていようと。
「くたばりやがれ…………!!!」
四つん這いとなり、姿勢を低く構え、獲物を仕留めようとするの肉食獣の構えを取る。
脚部の筋肉にチャクラを集中し、溜める。稼がれた距離をコンマ数秒で詰められるまで。
衝撃波では確実性に欠けるし、何より奴はこの手で殺さなければ気が済まない。
背を向けている以上反撃される恐れは少ない、此方も折角殺す事に専念できるのだ。
殴り殺してやる。統一された思考の元、面していた大地を爆ぜさせ、彼は砲弾と化す。
一直線に、一直線に、何処へ逃げようとこの拳を叩き込む。
狂った殺人鬼が何をしようと、決して止まりはしない。
一秒後までナルトは、その事を疑っていなかった。ガムテが、その場所に辿り着くまでは。
脚部の筋肉にチャクラを集中し、溜める。稼がれた距離をコンマ数秒で詰められるまで。
衝撃波では確実性に欠けるし、何より奴はこの手で殺さなければ気が済まない。
背を向けている以上反撃される恐れは少ない、此方も折角殺す事に専念できるのだ。
殴り殺してやる。統一された思考の元、面していた大地を爆ぜさせ、彼は砲弾と化す。
一直線に、一直線に、何処へ逃げようとこの拳を叩き込む。
狂った殺人鬼が何をしようと、決して止まりはしない。
一秒後までナルトは、その事を疑っていなかった。ガムテが、その場所に辿り着くまでは。
「─────ッ!?」
その場所に辿り着いて、ガムテが行ったことは実に単純。
その手の刀を背中に刺した柄に戻し、代わりに地面に横たわる別の物を掴んだ。
───今しがた自分が刺して、殺した、まだ温かい砂瀑の我愛羅の遺体の脚部を。
その手の刀を背中に刺した柄に戻し、代わりに地面に横たわる別の物を掴んだ。
───今しがた自分が刺して、殺した、まだ温かい砂瀑の我愛羅の遺体の脚部を。
「甘(チョロ)すぎだぜ、忍者」
此方を殺さんと迫っていた猛獣の疾走が止まる。
彼我の距離が一メートルを切った所で急停止を行い、無防備な身体を晒す。
もしここで吸血鬼に奪われたもう片方の手があれば、勝負は決まっていたかもしれない。
閻魔を残った手で握れていれば、今のうずまきナルトの首を間違いなく撥ねられただろう。
だがガムテは、それではこの後に来る連中をブッ殺せないかと直ぐに思いなおし。
一秒後、嘲笑を浮かべて───手に持っていた物をフルスイングした。その手の武器を。
衝撃でひしゃげてグチャグチャになるのも構わず、ボールにバットを当てるが如く。
渾身の力を籠めて、我愛羅の遺体でうずまきナルトの身体をブッ飛ばした。
───ゴッ!!!と凄まじい音を立ててナルトの身体が吹き飛んでくが、しかし。
彼我の距離が一メートルを切った所で急停止を行い、無防備な身体を晒す。
もしここで吸血鬼に奪われたもう片方の手があれば、勝負は決まっていたかもしれない。
閻魔を残った手で握れていれば、今のうずまきナルトの首を間違いなく撥ねられただろう。
だがガムテは、それではこの後に来る連中をブッ殺せないかと直ぐに思いなおし。
一秒後、嘲笑を浮かべて───手に持っていた物をフルスイングした。その手の武器を。
衝撃でひしゃげてグチャグチャになるのも構わず、ボールにバットを当てるが如く。
渾身の力を籠めて、我愛羅の遺体でうずまきナルトの身体をブッ飛ばした。
───ゴッ!!!と凄まじい音を立ててナルトの身体が吹き飛んでくが、しかし。
「ま、そーだろうなぁ………」
ガムテは、吹き飛ばされた先で立ち上がるナルトを見て、予想通りだと声を上げた。
ナルトの腕は、在らぬ方向へとひしゃげていた。
恐らく、インパクトの瞬間彼は自身を覆っていた異能(チート)の鎧を解いたのだろう。
武器にされた友の遺体を、傷つけぬために。
だからこそ、鎧を纏ってればまず受けないほどのダメージをナルトは負ったのだ。
まぁ、もっとも、負った所でと言う話ではあるが。
ナルトの腕は、在らぬ方向へとひしゃげていた。
恐らく、インパクトの瞬間彼は自身を覆っていた異能(チート)の鎧を解いたのだろう。
武器にされた友の遺体を、傷つけぬために。
だからこそ、鎧を纏ってればまず受けないほどのダメージをナルトは負ったのだ。
まぁ、もっとも、負った所でと言う話ではあるが。
「 ブ ッ 殺 す … ! 」
再び妖狐の形をとったエネルギーが、ナルトの折れた腕を包み。
ぼこぼこと音を立てて、一瞬の内に折れた腕は元通りなってしまった。
マジで怪物(バケモン)だな。ガムテは心中でそう評しながら、ナルトの様子を確かめる。
いい具合だと思った。完全に理性は吹き飛び支配されている。仇への殺意に。
肉体のみならず精神まで暴走しつつあると、ナルトの臀部で増える尾から推察を行う。
今の尾の数は2。あともう一本か二本尾が増えれば、敵も味方も見境が無くなるはずだ。
ガムテはナルトの内に眠る九尾を知らないが、第六感がその事を教えていた。
あともう一押しだと、ガムテは最後の詰めにかかる。
うずまきナルトが、自分を殺す事を全てにおいて優先する様に。
それ以外の全てが、路傍の石くれと同じと見える様に。
ぼこぼこと音を立てて、一瞬の内に折れた腕は元通りなってしまった。
マジで怪物(バケモン)だな。ガムテは心中でそう評しながら、ナルトの様子を確かめる。
いい具合だと思った。完全に理性は吹き飛び支配されている。仇への殺意に。
肉体のみならず精神まで暴走しつつあると、ナルトの臀部で増える尾から推察を行う。
今の尾の数は2。あともう一本か二本尾が増えれば、敵も味方も見境が無くなるはずだ。
ガムテはナルトの内に眠る九尾を知らないが、第六感がその事を教えていた。
あともう一押しだと、ガムテは最後の詰めにかかる。
うずまきナルトが、自分を殺す事を全てにおいて優先する様に。
それ以外の全てが、路傍の石くれと同じと見える様に。
「この屑(ゴミ)ど~~~しよっかにゃ~~~~☆」
第六感と研ぎ澄まされた知覚能力がここだ、と彼に告げる。
勝利の為には、このタイミングが最適だと彼は決断を下し。
ひしゃげた我愛羅の遺体を持ったまま、背中に背負った刀を揺らして再び回れ右。
ずるずるとわざと見せつける様にして、ナルトの前から走り去ろうと───
勝利の為には、このタイミングが最適だと彼は決断を下し。
ひしゃげた我愛羅の遺体を持ったまま、背中に背負った刀を揺らして再び回れ右。
ずるずるとわざと見せつける様にして、ナルトの前から走り去ろうと───
「───────」
その瞬間、轟!と周辺数十メートルに暴風が吹き荒れた。
それを発端として、黒く変色した橙色のエネルギーが、ナルトを中心に渦を巻く。
そのままナルトへ纏わりつくと、鈍い速度で三本目の尾として輪郭を描いた
凄まじい威容。さしもの破壊の八極道、殺しの王子様でも緊張を覚えるが、しかし。
それでも尚、目の前の人智を超えた力に対してガムテは微笑んだ。
刹那の間を置いて、彼は直感に命じられるままに大地を蹴り、迫りくる死と踊る。
それを発端として、黒く変色した橙色のエネルギーが、ナルトを中心に渦を巻く。
そのままナルトへ纏わりつくと、鈍い速度で三本目の尾として輪郭を描いた
凄まじい威容。さしもの破壊の八極道、殺しの王子様でも緊張を覚えるが、しかし。
それでも尚、目の前の人智を超えた力に対してガムテは微笑んだ。
刹那の間を置いて、彼は直感に命じられるままに大地を蹴り、迫りくる死と踊る。
「───────ッ!!!」
声にならぬ絶叫と共に、最早獣そのものの様相でナルトは追跡を開始する。
凄まじい威圧感。他の破壊の八極道でも相対すれば戦慄を禁じ得ない怪物。
それに追跡され、薬をキメてなお速度差から距離は縮まっていくが、恐れるには足らず。
何故なら死体を盾にしている限り、敵は死体を巻き込む様な攻撃はできないのだから。
狂戦士と化してなお、仲間の遺体を気にするだけ理性の残りカスの様なモノはあるらしい。
好都合だとガムテはほくそ笑む。後は自分を狙ったピンポイント攻撃を封じるだけ。
そしてその為の盾は、今向こうからやって来てくれている。
凄まじい威圧感。他の破壊の八極道でも相対すれば戦慄を禁じ得ない怪物。
それに追跡され、薬をキメてなお速度差から距離は縮まっていくが、恐れるには足らず。
何故なら死体を盾にしている限り、敵は死体を巻き込む様な攻撃はできないのだから。
狂戦士と化してなお、仲間の遺体を気にするだけ理性の残りカスの様なモノはあるらしい。
好都合だとガムテはほくそ笑む。後は自分を狙ったピンポイント攻撃を封じるだけ。
そしてその為の盾は、今向こうからやって来てくれている。
「キャホッ☆キャホッ☆キャホホ~~~イ!!!」
残った足に力を籠めて、相も変わらず猿のようなはしゃぎ声と共に跳躍を行う。
勿論その手に握った我愛羅の遺体と一緒に。
これがあるだけで、どれだけ隙があったとしてもナルトは下手な行動は撃てない。
その一手の遅れに、存分にガムテは付け込む。
丁度タイミングよく、勝つための踏み台たちもノコノコやってきれくれた。
勿論その手に握った我愛羅の遺体と一緒に。
これがあるだけで、どれだけ隙があったとしてもナルトは下手な行動は撃てない。
その一手の遅れに、存分にガムテは付け込む。
丁度タイミングよく、勝つための踏み台たちもノコノコやってきれくれた。
「ナルト!!ぶ、じ─────!?」
ガムテが目指していた進路方向。
その先から、現れる四人の少年少女たち。
ナルトの名前を呼んだことから、忍者の仲間であると見て間違いないだろう。
その渦中に、我愛羅の死体ごと分け入って降り立つ。
その先から、現れる四人の少年少女たち。
ナルトの名前を呼んだことから、忍者の仲間であると見て間違いないだろう。
その渦中に、我愛羅の死体ごと分け入って降り立つ。
「オッス!オラガムテ!夜露死苦ゥ!」
「何だこいつ」
「何だこいつ」
ハイテンションなガムテの登場に一瞬虚を突かれる四人。
ニケが思わずツッコむが、弛緩した空気は一瞬にして破られる。
ガムテが引きずる、我愛羅だったものを目にして。
真っ先に気が付いたのは、直接あったことのあるエリスだった。
無惨にひしゃげた、ナルトが救おうとしていた少年の遺体。
それを壊れた人形の様に引きずる少年を見て、血液が沸騰する。
ニケが思わずツッコむが、弛緩した空気は一瞬にして破られる。
ガムテが引きずる、我愛羅だったものを目にして。
真っ先に気が付いたのは、直接あったことのあるエリスだった。
無惨にひしゃげた、ナルトが救おうとしていた少年の遺体。
それを壊れた人形の様に引きずる少年を見て、血液が沸騰する。
「アンタ───そいつに、ナルト達に一体何をしたッ!!!」
「ン、ブッ殺しちった☆」
「ン、ブッ殺しちった☆」
自分が殺したと宣言し、悪びれもしないガムテの態度。
ナルトから聞いていた顔中に変な物を張り付けた危険人物の話がエリスの脳裏に蘇る。
話に聞いていたガムテというマーダーに間違いは無いだろう、そして。
こいつだ。こいつがナルトの救おうとしていた少年を殺したのだ。
彼の想いを、台無しにしたのだ。その事を認識した瞬間、弾ける様にエリスは刀を抜く。
ディオが反応すらできなかった速度での居合抜きで、ガムテの首を狙った。
ナルトから聞いていた顔中に変な物を張り付けた危険人物の話がエリスの脳裏に蘇る。
話に聞いていたガムテというマーダーに間違いは無いだろう、そして。
こいつだ。こいつがナルトの救おうとしていた少年を殺したのだ。
彼の想いを、台無しにしたのだ。その事を認識した瞬間、弾ける様にエリスは刀を抜く。
ディオが反応すらできなかった速度での居合抜きで、ガムテの首を狙った。
「ん~~~虚無(シャバ)~~~い!」
「……………くっ!?」
「……………くっ!?」
だが、ガムテはエリスの怒りを意に介することなく。
ただ我愛羅だったモノを目の前に掲げ、盾にして見せる。
反射的に、エリスの手が止まる。もしこれが、知らない人間ならばそのまま切り裂けたが。
たった今盾にされた少年を救おうとしていたナルトの顔が浮かび、止まってしまった。
その制止の隙を縫って、ガムテは不敵に笑いながら距離を取る。
ただ我愛羅だったモノを目の前に掲げ、盾にして見せる。
反射的に、エリスの手が止まる。もしこれが、知らない人間ならばそのまま切り裂けたが。
たった今盾にされた少年を救おうとしていたナルトの顔が浮かび、止まってしまった。
その制止の隙を縫って、ガムテは不敵に笑いながら距離を取る。
「この……っ!クズ………ッ!」
「待てエリスッ!!」
「待てエリスッ!!」
こめかみに青筋を立てながら、和道一文字を握り締め追撃に移ろうとするエリスだったが。
それを彼女の傍らに控えていたニケが体当たりの勢いで突き飛ばす。
何をするのか、とエリスが問う事は出来なかった。
ニケの体の向こうに、輪郭が辛うじて見える速度で駆けぬけていく影を見たからだ。
そして、絶句する。
それを彼女の傍らに控えていたニケが体当たりの勢いで突き飛ばす。
何をするのか、とエリスが問う事は出来なかった。
ニケの体の向こうに、輪郭が辛うじて見える速度で駆けぬけていく影を見たからだ。
そして、絶句する。
「ナルトくん……なの………?」
視界に飛び込んできたナルトの様相は、獣そのものだった。
言葉を失うエリスの傍らで、ディオと共に退避していたイリヤが呆然と呟く。
莫大な獣の如き魔力に包まれ、憎悪と殺気を体中から放出した威容。
一目見ただけで濃密な“死”の戦慄が、エリス達を包み、身体が強張る。
だが、彼女達が感じたショックなど置き去りにして、状況は進む。
言葉を失うエリスの傍らで、ディオと共に退避していたイリヤが呆然と呟く。
莫大な獣の如き魔力に包まれ、憎悪と殺気を体中から放出した威容。
一目見ただけで濃密な“死”の戦慄が、エリス達を包み、身体が強張る。
だが、彼女達が感じたショックなど置き去りにして、状況は進む。
「───この猿の脳みそにも劣るマヌケ共がッ!さっさと僕を奴から逃がせッ!!!」
「………っ!イリヤ!!」
「うん……っ!エリス!」
「………っ!イリヤ!!」
「うん……っ!エリス!」
声を張り上げて真っ先に叫んだのはディオだった。
幾度目になるか分からぬ鉄火場に、猫を被る余裕もなく。
常軌を逸した化け物になったナルトから自分を逃がせと罵倒と共に要求する。
忌憚のない直球の悪罵。しかしこの時においてそれは最も効果的に作用した。
ディオの保身第一の叫びを聞いて、イリヤとエリスの思考が戦慄より帰還したのだから。
しかし、それはあくまで死線の開幕に過ぎない。
幾度目になるか分からぬ鉄火場に、猫を被る余裕もなく。
常軌を逸した化け物になったナルトから自分を逃がせと罵倒と共に要求する。
忌憚のない直球の悪罵。しかしこの時においてそれは最も効果的に作用した。
ディオの保身第一の叫びを聞いて、イリヤとエリスの思考が戦慄より帰還したのだから。
しかし、それはあくまで死線の開幕に過ぎない。
「きゃあああああああああっ!?」
「ぐぅああぁああああああっ!?」
「ぐぅああぁああああああっ!?」
凄まじい圧力が二人の少女を襲い、枯葉の様に吹き飛ばされる。
吹き飛ばされる最中、マーダーらしきガムテから攻撃を受けたのだと錯覚するが。
実際の所は違っていた、ガムテは何もしていない。
ただ彼は踊る様にエリス達の周りを跳ね回り、攻撃を回避しているだけだ。
───正気を失っている様子の、ナルトを相手に。
吹き飛ばされる最中、マーダーらしきガムテから攻撃を受けたのだと錯覚するが。
実際の所は違っていた、ガムテは何もしていない。
ただ彼は踊る様にエリス達の周りを跳ね回り、攻撃を回避しているだけだ。
───正気を失っている様子の、ナルトを相手に。
「ぐ、ぉ……ッ!!」
被害を受けたのはイリヤとエリスだけではない。
この場において肉体的には最も常人に近いディオもまた、吹き飛ばされようとしていた。
イリヤが咄嗟にディオを庇っていたにも関わらず、風圧で身体が浮き上がる。
不味い、また落下死の恐怖を味わうなど御免だ。
そう考えるが踏みとどまる事は出来ず、二人の少女の目の前で彼は宙を舞おうとする。
この場において肉体的には最も常人に近いディオもまた、吹き飛ばされようとしていた。
イリヤが咄嗟にディオを庇っていたにも関わらず、風圧で身体が浮き上がる。
不味い、また落下死の恐怖を味わうなど御免だ。
そう考えるが踏みとどまる事は出来ず、二人の少女の目の前で彼は宙を舞おうとする。
「オレの剣!!」
だが、それを勇者は許さない。
離れていくディオの足へと片手を伸ばし、光魔法キラキラの行使を行う。
言葉と共にニケの掌に光は収束し、ニケそっくりの刀身を持つ光の剣が現れ。
オレの剣と名付けられたその剣はびゅーんと刀身を伸ばし、巻き付いてみせる。
離れていくディオの足へと片手を伸ばし、光魔法キラキラの行使を行う。
言葉と共にニケの掌に光は収束し、ニケそっくりの刀身を持つ光の剣が現れ。
オレの剣と名付けられたその剣はびゅーんと刀身を伸ばし、巻き付いてみせる。
「フィィイイイイイッシュッ!!!」
「何ィイイイイイイイッ!?」
「何ィイイイイイイイッ!?」
釣り上げた。ニケは表情に笑みを湛えてその手の剣を振り回す。
当然それに合わせて手の中の剣も弧を描き、釣り上げられた魚の様にディオの身体は踊り。
そして、イリヤ達の方へと落下してきたので慌てて二人はディオの身体を受け止めた。
当然それに合わせて手の中の剣も弧を描き、釣り上げられた魚の様にディオの身体は踊り。
そして、イリヤ達の方へと落下してきたので慌てて二人はディオの身体を受け止めた。
「GUAAAAAAAAAッ!!」
「ディオさんっ!」
「ディオッ!」
「ディオさんっ!」
「ディオッ!」
「二人とも、ディオを頼むっ!!空に逃げろっ!」
ディオの身体をしっかりと捕え受け止める二人を尻目に、ニケはアヌビスを抜いた。
偶然今しがたの衝撃の影響が少なかった彼には分かっていたからだ。
今、三人が吹き飛ばされた衝撃の元凶が何なのかを。
だからこそ、イリヤらと比べて迅速に動く事ができた。本人的には動きたくはなかったが。
普段と違う真剣な態度で行ったニケの要請は、イリヤに異論を挟む余地を封殺した。
ニケの指示に従い、ディオとエリスの手を取って一旦空へと避難を行う。
飛び上がる三人を一瞥し俄かに安堵するニケだったが、安堵は一瞬でかき消される。
状況は逼迫していた。
偶然今しがたの衝撃の影響が少なかった彼には分かっていたからだ。
今、三人が吹き飛ばされた衝撃の元凶が何なのかを。
だからこそ、イリヤらと比べて迅速に動く事ができた。本人的には動きたくはなかったが。
普段と違う真剣な態度で行ったニケの要請は、イリヤに異論を挟む余地を封殺した。
ニケの指示に従い、ディオとエリスの手を取って一旦空へと避難を行う。
飛び上がる三人を一瞥し俄かに安堵するニケだったが、安堵は一瞬でかき消される。
状況は逼迫していた。
「キャフフフフフフフフフハハハハハハハハッ☆!!!」
「ブッ殺すッ………!」
「ブッ殺すッ………!」
ニケの目の前を猛スピードで駆ける、二つの人影。
ガムテとナルトが、すぐ目の前で戦端を開いている。
それだけでも最低なのに、ガムテの立ち回りはニケにとって最低を超える最悪なものだった。
何故ならガムテはまず間違いなく意図的に、ニケ達を巻き込む形で戦っていたからだ。
自分は我愛羅という盾を振りかざし、ニケらを盾にする様にさっきから跳ね回っている。
今の、殆どガムテしか見ていないのではないかと思えるナルトを前にして。
ガムテとナルトが、すぐ目の前で戦端を開いている。
それだけでも最低なのに、ガムテの立ち回りはニケにとって最低を超える最悪なものだった。
何故ならガムテはまず間違いなく意図的に、ニケ達を巻き込む形で戦っていたからだ。
自分は我愛羅という盾を振りかざし、ニケらを盾にする様にさっきから跳ね回っている。
今の、殆どガムテしか見ていないのではないかと思えるナルトを前にして。
「こっちまァでおいでェ~~~!!」
「いっ!?お、お前───ざけんなぁあああああっ!!」
「いっ!?お、お前───ざけんなぁあああああっ!!」
ぴょんと兎の様に軽快な跳躍で、ガムテはニケの背後へと降り立つ。
手は我愛羅の遺体で塞がっており、攻撃はできない。
だが、どちらにせよニケにとってはたまった物では無かった。
ガムテが後ろに来ることは、憎悪に染まったナルトが突撃してくる事を意味するのだから。
その危惧の通り、ナルトが気絶しそうな程の迫力で迫ってきたのは直後の事だった。
手は我愛羅の遺体で塞がっており、攻撃はできない。
だが、どちらにせよニケにとってはたまった物では無かった。
ガムテが後ろに来ることは、憎悪に染まったナルトが突撃してくる事を意味するのだから。
その危惧の通り、ナルトが気絶しそうな程の迫力で迫ってきたのは直後の事だった。
「うおおおおおおッ!?どうしちまったんだよナルトッ!しっかりしろっ!!」
猛スピードで真後ろのガムテ目掛けて迫って来るナルトを、アヌビスの峰で受け止める。
ドン!と大砲が命中したような轟音と衝撃だった。
仮面を付けて居なければ、そのままボーリングのピンの様に跳ね飛ばされていただろう。
しかし、ともすれば鎧袖一触で蹴散らされた方がよかったかもしれない。
間近で現在のナルトの顔を見て、ニケは強く強くそう感じた。ちょっと泣きそうだった。
ドン!と大砲が命中したような轟音と衝撃だった。
仮面を付けて居なければ、そのままボーリングのピンの様に跳ね飛ばされていただろう。
しかし、ともすれば鎧袖一触で蹴散らされた方がよかったかもしれない。
間近で現在のナルトの顔を見て、ニケは強く強くそう感じた。ちょっと泣きそうだった。
「邪魔だ………!」
「……っ、うあああああああああっ!」
「……っ、うあああああああああっ!」
仮面の力を持ってしても、拮抗は一瞬。
横合いから無造作にナルトが腕を振るうだけで、ニケの五体は跳ね飛ばされた。
不快な浮遊感を数秒感じた後、強かに全身を打って痛烈な痛みにのたうち回る。
横合いから無造作にナルトが腕を振るうだけで、ニケの五体は跳ね飛ばされた。
不快な浮遊感を数秒感じた後、強かに全身を打って痛烈な痛みにのたうち回る。
「ニケくん……っ!」
「ニケ……ッ!」
「ニケ……ッ!」
「……ッ!バカ、来るなイリヤ!エリス達と一緒に巻き込まれるぞッ!!」
地面に叩き付けられるニケの姿を見て、イリヤが思わず下降しようとする。
それを感じ取ったディオがぎょっとした表情で叱責しようとするが。
彼が憤りを口にするより早く、ニケが静止の声を上げた。
今ここで自分を助けさせれば、敵(ガムテ)の思うつぼでしかない。
奴の狙いはここまでくれば明白。自分達をナルトとぶつけて消耗させたいのだろう。
ゼオンと名乗ったちびっ子との戦いで見せた夢幻召喚とやらは既に切れてしまっている。
そんなイリヤが、肉体は人間のエリスやディオを今のナルトやガムテから守るのは無理だ。
だから、迂闊に近づけさせるわけにはいかなかった。
しかし、それの意味する所はつまり。
それを感じ取ったディオがぎょっとした表情で叱責しようとするが。
彼が憤りを口にするより早く、ニケが静止の声を上げた。
今ここで自分を助けさせれば、敵(ガムテ)の思うつぼでしかない。
奴の狙いはここまでくれば明白。自分達をナルトとぶつけて消耗させたいのだろう。
ゼオンと名乗ったちびっ子との戦いで見せた夢幻召喚とやらは既に切れてしまっている。
そんなイリヤが、肉体は人間のエリスやディオを今のナルトやガムテから守るのは無理だ。
だから、迂闊に近づけさせるわけにはいかなかった。
しかし、それの意味する所はつまり。
「うおおおおおおおおお!!!!死ぬぅううううううううううっ!!!!」
ニケ自身が、ガムテとナルトの攻防に“単独で“巻き込まれる事を意味している。
アヌビス神の力でガムテを狙った攻撃の余波を何とかいなすが、ジリ貧でしかない。
今のナルトは同士討ちを避けるべく戦えるような精神状態ではとてもないからだ。
今はアヌビス神と仮面の力と、ナルトがニケを敵と見なしていない為何とか凌げているが。
それでも彼が復讐心に憑りつかれ、ガムテへの攻撃を辞めない限り。
勇者が仲間に殺される最悪の未来の到来までもはや時間の問題だった。
アヌビス神の力でガムテを狙った攻撃の余波を何とかいなすが、ジリ貧でしかない。
今のナルトは同士討ちを避けるべく戦えるような精神状態ではとてもないからだ。
今はアヌビス神と仮面の力と、ナルトがニケを敵と見なしていない為何とか凌げているが。
それでも彼が復讐心に憑りつかれ、ガムテへの攻撃を辞めない限り。
勇者が仲間に殺される最悪の未来の到来までもはや時間の問題だった。
「さぁさぁ死力(ガンバ)れ?死力(ガンバ)れ?頑張らねェとおっ死(ち)ぬぞォ~☆」
「お前後でその顔中に張ったガムテ、勢いよく剥がしてやっからな!」
「お前後でその顔中に張ったガムテ、勢いよく剥がしてやっからな!」
煽りながらも、ガムテがニケに手を出す様子は無い。
我愛羅と並ぶ肉の盾兼、イリヤ達に対する人質だからだ。
ナルト、ニケ、そしてイリヤ達全ての一挙手一投足を把握しながら立ち回る。
正しく天才の御業と言う他なく、その立ち回りを突き崩すのは限りなく困難で。
我愛羅と並ぶ肉の盾兼、イリヤ達に対する人質だからだ。
ナルト、ニケ、そしてイリヤ達全ての一挙手一投足を把握しながら立ち回る。
正しく天才の御業と言う他なく、その立ち回りを突き崩すのは限りなく困難で。
「おいっアヌビス、ビームはいいからエネルギー吸収アリーナとか使えたりしないの?
使えるんなら何とかしてくれ、このままじゃよりによって仲間(ナルト)殺されちまう」
『知らんな、今こうして攻撃を逸らせてるだけでもありがたく思え』
「おめー鼻くそほじりながらいってんじゃねーっ!どああああああああっ!?」
使えるんなら何とかしてくれ、このままじゃよりによって仲間(ナルト)殺されちまう」
『知らんな、今こうして攻撃を逸らせてるだけでもありがたく思え』
「おめー鼻くそほじりながらいってんじゃねーっ!どああああああああっ!?」
ナルトが伸ばしてきた尾の一撃をガムテ共々紙一重で躱し。
しかし衝撃は殺しきれず、泥まみれになりながらボールの様にニケは大地に転がる。
ニケやジュジュはおろか、トマやキタキタ親父の存在すら今は恋しかった。
しかし衝撃は殺しきれず、泥まみれになりながらボールの様にニケは大地に転がる。
ニケやジュジュはおろか、トマやキタキタ親父の存在すら今は恋しかった。
■ ■ ■
一体どうなっているのか。
焦燥と絶望が喉元までもたげ、青褪めた表情で。
眼下で必死の奮戦を繰り広げるニケを見つめながら、誰と言う訳でもなく呟きが漏れた。
焦燥と絶望が喉元までもたげ、青褪めた表情で。
眼下で必死の奮戦を繰り広げるニケを見つめながら、誰と言う訳でもなく呟きが漏れた。
『…今はまだ悟飯様程ではないにせよ、並みの英霊を凌ぐ密度の魔力を纏っています。
反面、漏れ出し続ける魔力に反比例して、ナルト様の意識は………」
「ナルトくん、どうして………」
反面、漏れ出し続ける魔力に反比例して、ナルト様の意識は………」
「ナルトくん、どうして………」
憎悪に支配されたナルトの様相を目にして。
イリヤが想起するのは同じく狂気に囚われ、殺し合いに乗った仲間達の顔だった。
どうして、こうなってしまうのか。何故皆、殺し合いに興じてしまうのか。
美遊も、クロも、悟飯も、みんなみんな、悪い人物でないのに。
ナルトもまた、接した時間は短いけれど、信頼できる人だと思えたのに。
イリヤが想起するのは同じく狂気に囚われ、殺し合いに乗った仲間達の顔だった。
どうして、こうなってしまうのか。何故皆、殺し合いに興じてしまうのか。
美遊も、クロも、悟飯も、みんなみんな、悪い人物でないのに。
ナルトもまた、接した時間は短いけれど、信頼できる人だと思えたのに。
「私のせい……?私と関わったから……みんなおかしくなっちゃうの………?」
思考は悪い方向へと加速していく。
自分がいるから、皆狂気に陥ってしまうのだろうか。
自分のせいで、美遊やクロが殺し合いに乗って。
自分のせいで、悟飯は皆を信じられなくなってしまったのだろうか。そして今、ナルトも。
その考えに根拠はなく、被害妄想といってしまえばそれまでだが。
だけど同時に、単なる被害妄想だと否定できるだけの精神の余力は、今の彼女になかった。
だから動かなければと分かっているのに、身体が固く硬直してしまう。
動けない。視界が狭まり、昏くなっていく。絶望と言う毒が、少女を容赦なく蝕む。
けれど、そんな最低の状況下においても、仲間の言葉は鮮明だった。
自分がいるから、皆狂気に陥ってしまうのだろうか。
自分のせいで、美遊やクロが殺し合いに乗って。
自分のせいで、悟飯は皆を信じられなくなってしまったのだろうか。そして今、ナルトも。
その考えに根拠はなく、被害妄想といってしまえばそれまでだが。
だけど同時に、単なる被害妄想だと否定できるだけの精神の余力は、今の彼女になかった。
だから動かなければと分かっているのに、身体が固く硬直してしまう。
動けない。視界が狭まり、昏くなっていく。絶望と言う毒が、少女を容赦なく蝕む。
けれど、そんな最低の状況下においても、仲間の言葉は鮮明だった。
「───九尾っていうバケ狐が彼奴の中にいるって、ナルトは言ってたわ
確か……人柱力?っていうのがどーとか、あいつもあいつの師匠から聞いたらしいけど」
確か……人柱力?っていうのがどーとか、あいつもあいつの師匠から聞いたらしいけど」
変わり果てたナルトの姿を目にしても、もう全く取り乱している様子はないままに。
エリスは、毅然とした態度でナルトから聞いていた情報を仲間へ周知した。
そして、この場で最も魔道に精通していそうなサファイアへと問いかける。
説得でも力づくで止めるのでも、漏れ出した九尾を再封印するのでも、何でもいい。
今のナルトを何とかできそうな策はないかと。
そう尋ねたエリスの言葉にサファイアが答えるより早く、ディオは怒声を発した。
エリスは、毅然とした態度でナルトから聞いていた情報を仲間へ周知した。
そして、この場で最も魔道に精通していそうなサファイアへと問いかける。
説得でも力づくで止めるのでも、漏れ出した九尾を再封印するのでも、何でもいい。
今のナルトを何とかできそうな策はないかと。
そう尋ねたエリスの言葉にサファイアが答えるより早く、ディオは怒声を発した。
「バカを言うな!ドブ鼠のクソ並みの考えしかないのかお前達はッ!
今のナルトを見ろ!どこに対話の余地がある!血に飢えたケダモノそのものだッ!
一旦大人しくできたとしても、いつまた暴れ出すか分からぬ化物など助けてどうするッ!
ニケが相手をしている内に、僕達だけでも脱出すべきだ!」
「アンタには聞いてないわ。サファイアが答えるまでにもう一回口を開いたら…
イリヤ、ナルト達の方にこいつ放り投げなさい。私が許してあげる」
今のナルトを見ろ!どこに対話の余地がある!血に飢えたケダモノそのものだッ!
一旦大人しくできたとしても、いつまた暴れ出すか分からぬ化物など助けてどうするッ!
ニケが相手をしている内に、僕達だけでも脱出すべきだ!」
「アンタには聞いてないわ。サファイアが答えるまでにもう一回口を開いたら…
イリヤ、ナルト達の方にこいつ放り投げなさい。私が許してあげる」
ディオの怒声はエリスによって一蹴され。
イリヤもまた、ディオに向かって首を横に振り、固辞の意志を示す。
それを受け更に怒声を重ねようとするディオだが、続くエリスの言葉で固まってしまう。
今ナルト達の攻防に巻き込まれれば、間違いなく屍を晒すことになるからだ。
だから黙らざるを得ず、彼が黙った事により全員の意識は再びサファイアに戻る。
イリヤもまた、ディオに向かって首を横に振り、固辞の意志を示す。
それを受け更に怒声を重ねようとするディオだが、続くエリスの言葉で固まってしまう。
今ナルト達の攻防に巻き込まれれば、間違いなく屍を晒すことになるからだ。
だから黙らざるを得ず、彼が黙った事により全員の意識は再びサファイアに戻る。
『申し訳ありませんが、私にも今のナルト様を狂気から救う方法は思いつきません。
クラスカードも大部分が使ったばかりな以上、実力で止める事も難しいでしょう』
クラスカードも大部分が使ったばかりな以上、実力で止める事も難しいでしょう』
このステッキに顔がついていれば、きっと実に苦々しい顔をしているのだろう。
そう考えてしまう程、慙愧に耐えないといった様子でサファイアは否定の言葉を述べた。
このままでは、仮にナルトが仇を討つことに成功したとしても。
きっと、憑りついた魔力の塊は、ナルトから離れる事を良しとしない。
破壊の化身として、悟飯などの更なる強者にぶつかるまで暴れまわる筈だ。
……そうイリヤ達に告げる事は、サファイアにはできなかった。
彼女は既にある意味ではディオと同じく、如何にナルトを救うのではなく。
イリヤらを死なせないためにはどうしたものか、既にその方向に思考を巡らせていた。
それ故に、風向きを変えたのは彼女では無かった。
そう考えてしまう程、慙愧に耐えないといった様子でサファイアは否定の言葉を述べた。
このままでは、仮にナルトが仇を討つことに成功したとしても。
きっと、憑りついた魔力の塊は、ナルトから離れる事を良しとしない。
破壊の化身として、悟飯などの更なる強者にぶつかるまで暴れまわる筈だ。
……そうイリヤ達に告げる事は、サファイアにはできなかった。
彼女は既にある意味ではディオと同じく、如何にナルトを救うのではなく。
イリヤらを死なせないためにはどうしたものか、既にその方向に思考を巡らせていた。
それ故に、風向きを変えたのは彼女では無かった。
「待って……じんちゅうりき………?────あっ!」
イリヤが、何かに引っかかった様にエリスの口にしたその単語を呟く。
初めて聞いたはずのそのワードに、覚えがある事に気づいたからだ。
この気付きを無視してはいけない。直感的にそう思考し、自身の記憶を辿る。
そう、あれは確か……初めてリップに襲われた後だと。
僅かな間を置いて、人柱力という言葉をどこで耳にしたか…否、目にしたかを思い出す。
それに気づいた瞬間、イリヤは即座にサファイアに指示を飛ばした。
自分に支給されたランドセルから、一枚の紙を取り出して欲しい、と。
初めて聞いたはずのそのワードに、覚えがある事に気づいたからだ。
この気付きを無視してはいけない。直感的にそう思考し、自身の記憶を辿る。
そう、あれは確か……初めてリップに襲われた後だと。
僅かな間を置いて、人柱力という言葉をどこで耳にしたか…否、目にしたかを思い出す。
それに気づいた瞬間、イリヤは即座にサファイアに指示を飛ばした。
自分に支給されたランドセルから、一枚の紙を取り出して欲しい、と。
『……此方でしょうか、イリヤ様』
「そう、それ!!雪華綺晶ちゃんに支給されてた紙!」
「そう、それ!!雪華綺晶ちゃんに支給されてた紙!」
サファイアがごそごそと漁り、取り出した一枚の紙。
それは同封されていた説明書には『自来也謹製の封印札』と銘打たれていた。
人柱力の額に張れば、漏れ出したチャクラなるエネルギーを抑え込めると言う。
それは同封されていた説明書には『自来也謹製の封印札』と銘打たれていた。
人柱力の額に張れば、漏れ出したチャクラなるエネルギーを抑え込めると言う。
「これを使えば、もしかしたら……!」
「ナルトを正気に戻せるかもしれないって事ね!!」
『確かに、見た事のない形ですがこれは封印式です、可能性はあるでしょう』
「ナルトを正気に戻せるかもしれないって事ね!!」
『確かに、見た事のない形ですがこれは封印式です、可能性はあるでしょう』
風は吹いた。
二人の少女と、一本のステッキの間の空気が湧く。
だが当然、ディオにとってはそんな危険な賭けはしたくない。
薄っぺらい紙一枚で、今のナルトをどうにかできるとは思えなかったからだ。
二人の少女と、一本のステッキの間の空気が湧く。
だが当然、ディオにとってはそんな危険な賭けはしたくない。
薄っぺらい紙一枚で、今のナルトをどうにかできるとは思えなかったからだ。
「待て!仮にその紙にそんな力が本当にあるとしても……
今の怪物の様なナルトにどうやって貼り付ける!僕は反対だッ」
「だから、最初からアンタはアテにしてないわ」
今の怪物の様なナルトにどうやって貼り付ける!僕は反対だッ」
「だから、最初からアンタはアテにしてないわ」
保身が最優先のディオの存在は、最初から勘定に入れていない。
元よりエリス単独でも、命を賭けナルトを正気に戻すと決めていたのだから。
単独で可能なのか、だとか。他に協力してくれる者がいるかだとかはどうでも良かった。
道は定めた、後は走るだけだと、エリスの瞳の奥で焔が燃える。
元よりエリス単独でも、命を賭けナルトを正気に戻すと決めていたのだから。
単独で可能なのか、だとか。他に協力してくれる者がいるかだとかはどうでも良かった。
道は定めた、後は走るだけだと、エリスの瞳の奥で焔が燃える。
「サファイア、あのカードなら………」
『はい、札を彼に貼るだけでいいのなら可能でしょう』
『はい、札を彼に貼るだけでいいのなら可能でしょう』
そして、イリヤ達もまた、この大勝負を降りるつもりは無かった。
亡き友に、雪華綺晶に、今度こそ救えと言われている気がしたからだ。
即座にサファイアと共に浮かんだナルトを救う策を全体に周知し、エリスの同意を得る。
立ちはだかる壁は大きく険しい、だが、孫悟飯の時と違い手がない訳では無い。
ならば挑もう。今度こそ、取りこぼし続けた仲間を救うために。
これまでは対峙する事しかできなかった。けれど、今回は───更に、先へ!
亡き友に、雪華綺晶に、今度こそ救えと言われている気がしたからだ。
即座にサファイアと共に浮かんだナルトを救う策を全体に周知し、エリスの同意を得る。
立ちはだかる壁は大きく険しい、だが、孫悟飯の時と違い手がない訳では無い。
ならば挑もう。今度こそ、取りこぼし続けた仲間を救うために。
これまでは対峙する事しかできなかった。けれど、今回は───更に、先へ!
「………っ!!こ、の、阿呆共がァ……ッ!」
「心配しないでディオくん、ディオ君はちゃんと安全な場所に下ろすから……」
「心配しないでディオくん、ディオ君はちゃんと安全な場所に下ろすから……」
この場で唯一撤退を提言していたディオが、二人を見て吐き捨てる。
最早猫を被っているのも馬鹿らしい。
どうしてこいつらは、こんなにも人の言う事を聞かないのか。
異常者だ。どうかしている。そんなにもこの島で会ったばかりの他人が大事か?
理解できない。俺にとって大事なのは俺だけだ。
この俺が栄光を手にし、生きながらえる……ッ!それだけが満足感だ………ッ!!
それなのに……!
最早猫を被っているのも馬鹿らしい。
どうしてこいつらは、こんなにも人の言う事を聞かないのか。
異常者だ。どうかしている。そんなにもこの島で会ったばかりの他人が大事か?
理解できない。俺にとって大事なのは俺だけだ。
この俺が栄光を手にし、生きながらえる……ッ!それだけが満足感だ………ッ!!
それなのに……!
「ここでディオ君は隠れてて、大丈夫、後は私達が何とかするから」
「生き残りたいならここで大人しくしてる事ね」
「生き残りたいならここで大人しくしてる事ね」
ディオ・ブランドーは一番が好きだ。
反面ナメられる事が、反吐が出る程嫌いだった。
その彼にとって、現在の状況は屈辱と言う他なかった。
自分がもっとも賢明な判断をしているハズなのに、びっくりするほど誰も乗ってこない。
それどころかまるで臆病者のように扱われ、情勢の中心から追いやられようとしている。
集団のリーダーになるどころか、路傍の石ころの様に扱われようとしている。
あのジョジョと懇意だったエリナとかいう愚民と同じ───生意気な女如きに!
そう思ってしまった時点で、プライドの高い彼が黙っていられる筈もなかった。
反面ナメられる事が、反吐が出る程嫌いだった。
その彼にとって、現在の状況は屈辱と言う他なかった。
自分がもっとも賢明な判断をしているハズなのに、びっくりするほど誰も乗ってこない。
それどころかまるで臆病者のように扱われ、情勢の中心から追いやられようとしている。
集団のリーダーになるどころか、路傍の石ころの様に扱われようとしている。
あのジョジョと懇意だったエリナとかいう愚民と同じ───生意気な女如きに!
そう思ってしまった時点で、プライドの高い彼が黙っていられる筈もなかった。
「────待て!」
ナルト達が戦う場所から300メートル程離れた東京タワーの陰にディオを降ろし。
再び戦場に赴こうとする二人を、ディオは呼び止めた。
これまでの様に止めようとしていると思われれば、放置されて行ってしまう。
だから矢継ぎ早にディオは「勘違いするな、止めようとしている訳じゃない」と続ける。
その言葉を聞いてもエリスは止まらず出発してしまったが、イリヤの方が反応を示した。
振り返った彼女の目の前で、ディオはスタンドを出現させる。
再び戦場に赴こうとする二人を、ディオは呼び止めた。
これまでの様に止めようとしていると思われれば、放置されて行ってしまう。
だから矢継ぎ早にディオは「勘違いするな、止めようとしている訳じゃない」と続ける。
その言葉を聞いてもエリスは止まらず出発してしまったが、イリヤの方が反応を示した。
振り返った彼女の目の前で、ディオはスタンドを出現させる。
「ゴールド・エクスペリエンス………!」
女如きに舐められてたまるものか。
誰にも自分の存在を無視などさせるものか。
このディオ・ブランドーが端役の様に扱われてたまる物かッ!
彼の胸にあるのはプライドだけだ。そこに黄金の精神などありはしない。
けれど、それでも。
誰にも自分の存在を無視などさせるものか。
このディオ・ブランドーが端役の様に扱われてたまる物かッ!
彼の胸にあるのはプライドだけだ。そこに黄金の精神などありはしない。
けれど、それでも。
「生まれろ……生命よ………ッ!」
黄金体験の能力を発動し、確固たる意志に従い手の中に命を生み出すその様には。
凡俗や石ころ等では断じてない、見る者に畏敬の念を抱かせる“スゴ味”が備わっていた。
凡俗や石ころ等では断じてない、見る者に畏敬の念を抱かせる“スゴ味”が備わっていた。
■ ■ ■
俺の出てる漫画のジャンル知ってる?ファンタジーギャグ漫画だよ?
なのに何でここまで必死こいて戦わないといけないんだ。ジャンルが違うだろがっ!
そう言いたい気持ちを必死に堪えて、アヌビス神を支えにしながら必死に立ち上がる。
なのに何でここまで必死こいて戦わないといけないんだ。ジャンルが違うだろがっ!
そう言いたい気持ちを必死に堪えて、アヌビス神を支えにしながら必死に立ち上がる。
「もう限界(ギブ)ゥ?仲間(ダチ)が大変な事になってんのにそんなんアリィ?」
誰のせいでこんな事になってんだよ。
憎たらしいガムテ野郎にそう言ってやりたかったけど、そんな暇はない。
あちこちぶつけて血が滲む身体に喝を入れて、飛びのきながらアヌビスを構える。
憎たらしいガムテ野郎にそう言ってやりたかったけど、そんな暇はない。
あちこちぶつけて血が滲む身体に喝を入れて、飛びのきながらアヌビスを構える。
「くっ………!」
「死にやがれェエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!」
「死にやがれェエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!」
俺に言ってるんじゃないのは分かってる。
でも、それでも俺の立ってる方向目掛けて突っ込んでくるナルトの姿は。
泣きそうになるくらい、おっかねーもんだった。
ナルトの身体に巻き付いてる魔力…?みたいなもんとぶつかったら死ぬ。
ダメ勇者の俺だってそれくらいわかる。だから着けてる仮面の力を全力で引き出した。
例え頼ってたら塩の塊になっちまう仮面でも一秒後に死ぬよりはましだ。
でも、それでも俺の立ってる方向目掛けて突っ込んでくるナルトの姿は。
泣きそうになるくらい、おっかねーもんだった。
ナルトの身体に巻き付いてる魔力…?みたいなもんとぶつかったら死ぬ。
ダメ勇者の俺だってそれくらいわかる。だから着けてる仮面の力を全力で引き出した。
例え頼ってたら塩の塊になっちまう仮面でも一秒後に死ぬよりはましだ。
「お前もいー加減正気に戻れよナルトーっ!」
ガツン!と。
実体は無いはずなのにとても硬い物とぶつかった様な感触が手に響いてきて。
俺の全力で振った刀は、あっけなくぶっ飛ばされた。
あちこち擦りむいて打ち付けて、地面にごろごろと転がる。
さっきからこれの繰り返しだ。
実体は無いはずなのにとても硬い物とぶつかった様な感触が手に響いてきて。
俺の全力で振った刀は、あっけなくぶっ飛ばされた。
あちこち擦りむいて打ち付けて、地面にごろごろと転がる。
さっきからこれの繰り返しだ。
「ハ~~~イ!またまた大爆死(スカ)~~~☆」
俺がぶっ飛ばされるのに合わせて、ガムテも手に持った死体をナルトの前に突き付けて。
ナルトの勢いが一瞬止まったのを見計らって死体を叩きつけたり、蹴り飛ばしたりしてる。
そして、ナルトから少し離れた瞬間、また俺のいる方へ走って来る。
もう五分くらい、これの繰り返しだった。
ナルトの勢いが一瞬止まったのを見計らって死体を叩きつけたり、蹴り飛ばしたりしてる。
そして、ナルトから少し離れた瞬間、また俺のいる方へ走って来る。
もう五分くらい、これの繰り返しだった。
(クソ……こいつ、俺が死んだらどうするつもりだ?)
ナルトの友達の死体を利用して、俺も利用して。
今んとこ、ガムテはずっと強いナルトを相手に有利に立ち回ってる。
きっと俺なんか直ぐに殺せる位には強いんだと思う。
そのガムテ野郎が未だに俺を殺さないのは、まだ俺に死なれたら困るからだ。
ガムテの奴は俺よりずっと強いけど、今のナルト程じゃない。
今は余裕そうに振舞っているけど、実際は大分綱渡りの筈だ。
でなきゃ、何時でも後ろから刺せる俺を生かしておく理由なんかないもんな。
乃亜の追加ルールのせいでナルトに殺させるより自分が殺したいと思ってるだろうし。
そのあいつが、何なら俺が何とかナルトの攻撃を躱せる様立ち回っている節さえあるのは。
俺を殺して、盾がナルトの友達の死体だけになったら負けるって分かってるからだ。
今んとこ、ガムテはずっと強いナルトを相手に有利に立ち回ってる。
きっと俺なんか直ぐに殺せる位には強いんだと思う。
そのガムテ野郎が未だに俺を殺さないのは、まだ俺に死なれたら困るからだ。
ガムテの奴は俺よりずっと強いけど、今のナルト程じゃない。
今は余裕そうに振舞っているけど、実際は大分綱渡りの筈だ。
でなきゃ、何時でも後ろから刺せる俺を生かしておく理由なんかないもんな。
乃亜の追加ルールのせいでナルトに殺させるより自分が殺したいと思ってるだろうし。
そのあいつが、何なら俺が何とかナルトの攻撃を躱せる様立ち回っている節さえあるのは。
俺を殺して、盾がナルトの友達の死体だけになったら負けるって分かってるからだ。
(……けど、俺だってもうあと何分も保たねーぞ!)
体中痛いし、そろそろナルト達の速さについていけなくなってきてる。
もう少しで、死にはしないかもしれないけど、きっと動けなくなる。
そうなったら、俺っていう盾が彼奴だって困る筈だ。一体どうするつもりなのか。
いくら考えても、全然分からなかった。
そして、考え事をしていたせいでヘマをかましたのは、そのすぐ後のこと。
もう少しで、死にはしないかもしれないけど、きっと動けなくなる。
そうなったら、俺っていう盾が彼奴だって困る筈だ。一体どうするつもりなのか。
いくら考えても、全然分からなかった。
そして、考え事をしていたせいでヘマをかましたのは、そのすぐ後のこと。
「ぁ……っ!?しま………っ!」
カツン、と戦いのせいで荒れた道に足を取られて、つんのめる。
目の前にはまた俺の後ろのガムテ目掛けて迫って来るナルト。
このままじゃ正面衝突だ。あ、終わった。
今のナルトにぶつかられたら、俺は二秒後にはミンチに変わってると思う。
その時俺が考えたのは────
目の前にはまた俺の後ろのガムテ目掛けて迫って来るナルト。
このままじゃ正面衝突だ。あ、終わった。
今のナルトにぶつかられたら、俺は二秒後にはミンチに変わってると思う。
その時俺が考えたのは────
「───本当、かっこよくてファンになっちまいそうだエリ、ぶべぉっ!?」
「生憎!ルーデウス以外は御断りよッ!!」
「生憎!ルーデウス以外は御断りよッ!!」
横合いからエリスが現れ。
ナルトにドロップキックをかまして怯ませた後、俺も蹴り飛ばして射線から逃がす。
げしっと蹴り飛ばされた時、正気に戻った。
うん、エリスは可愛いけど、付き合ったら身が保たないわ。
白い鎧に包まれたエリスの姿を見て、頼もしく感じながらもそう思った。
ルーデウス、もう少し仲間は大切に扱えとお前の彼女に言ってやれ。
ナルトにドロップキックをかまして怯ませた後、俺も蹴り飛ばして射線から逃がす。
げしっと蹴り飛ばされた時、正気に戻った。
うん、エリスは可愛いけど、付き合ったら身が保たないわ。
白い鎧に包まれたエリスの姿を見て、頼もしく感じながらもそう思った。
ルーデウス、もう少し仲間は大切に扱えとお前の彼女に言ってやれ。
「今、イリヤ達がナルトを元に戻そうとしてるわ。だから私達でナルトを一旦止めるわよ」
「お、俺、今迄戦ってたんだけど」
「アンタまでディオみたいな事言ってんじゃないわよ」
「……そういやディオは?」
「あいつは赤い塔みたいな場所に置いてきたわ」
「お、俺、今迄戦ってたんだけど」
「アンタまでディオみたいな事言ってんじゃないわよ」
「……そういやディオは?」
「あいつは赤い塔みたいな場所に置いてきたわ」
成程東京タワーか。ディオの奴、楽しやがって羨ましい。
と言っても、ナルトを元に戻す方法は見つけたみたいだから良しとするか。
そう考えながらエリスに背中を預けて、周りを見渡す。
そしたら、既に此方に向かって位置取りを行っている最中のガムテと目が合った。
と言っても、ナルトを元に戻す方法は見つけたみたいだから良しとするか。
そう考えながらエリスに背中を預けて、周りを見渡す。
そしたら、既に此方に向かって位置取りを行っている最中のガムテと目が合った。
(………………?)
その時のガムテの顔は、気味が悪かった。
表情その物はさっきまでと同じ、どうかしてるって感じの顔だったけど。
でも、何か…何となく、全部計算通りってそんな顔をしてる気がした。
エリスやイリヤ達が来たら、あいつだって困る筈なのに一体どうするつもりなのか。
考えて見ても、当然表情だけじゃ彼奴の考えは分からない。
そして、エリスが来たと言っても、ぼうっと突っ立って推理してる暇もない。
表情その物はさっきまでと同じ、どうかしてるって感じの顔だったけど。
でも、何か…何となく、全部計算通りってそんな顔をしてる気がした。
エリスやイリヤ達が来たら、あいつだって困る筈なのに一体どうするつもりなのか。
考えて見ても、当然表情だけじゃ彼奴の考えは分からない。
そして、エリスが来たと言っても、ぼうっと突っ立って推理してる暇もない。
「来るわよ、ニケッ!」
エリスの言葉を聞いて、俺は応えるよりも先に飛び上がった。
1人の時じゃミスったら死ぬからできなかったけど、やっと試せる。
あれだけ禍々しい魔力(モン)着こんでるんだ、今ならイケるだろッ!
1人の時じゃミスったら死ぬからできなかったけど、やっと試せる。
あれだけ禍々しい魔力(モン)着こんでるんだ、今ならイケるだろッ!
「どっせい!光魔法!かっこいいポーズ!!」
飛び上がって、かっこいいポーズの体勢を取る。
今迄のナルトは人間だったから、多分使っても止められなかっただろうけど。
でも、何かヤベー物が身体から噴き出してる今なら通じるかもしれない。
そんな俺の見立ては、見事にハマった。
かっこいいポーズで出した光がナルトに届いた瞬間、ぴたりと動きが止まったからだ。
今迄のナルトは人間だったから、多分使っても止められなかっただろうけど。
でも、何かヤベー物が身体から噴き出してる今なら通じるかもしれない。
そんな俺の見立ては、見事にハマった。
かっこいいポーズで出した光がナルトに届いた瞬間、ぴたりと動きが止まったからだ。
「シッ!!」
動きが止まったナルトの顔に、容赦ないエリスの右ストレートが突き刺さる。
いや、マジで容赦ない。だってミシミシ言わせたあと、そのまま殴りぬいたもん。
流石のナルトも完全にストップした所を殴られて、ぶっ飛んでいく。
いける。さっきまでは何とか躱して逃げる事しかできなかったけど。
エリスが来てくれたから、今は攻める事もできる。
勿論ナルトは半端な攻撃程度じゃビクともしないから、俺達だけで止めるのは無理だけど。
それでも、何か準備してるっぽいイリヤが動くまで、持ち堪えられそうな気はした。
そして、ガムテもまだ俺達を盾にしようとしてるせいか、手を出してくる様子は無い。
いや、マジで容赦ない。だってミシミシ言わせたあと、そのまま殴りぬいたもん。
流石のナルトも完全にストップした所を殴られて、ぶっ飛んでいく。
いける。さっきまでは何とか躱して逃げる事しかできなかったけど。
エリスが来てくれたから、今は攻める事もできる。
勿論ナルトは半端な攻撃程度じゃビクともしないから、俺達だけで止めるのは無理だけど。
それでも、何か準備してるっぽいイリヤが動くまで、持ち堪えられそうな気はした。
そして、ガムテもまだ俺達を盾にしようとしてるせいか、手を出してくる様子は無い。
────このまま、押し切る!
ガムテが大人しくて、ナルトを何とかする目途はたった。
けどそのお陰で気が緩んで、この時の俺は見逃してたんだ。
───俺がさっき考えた通り、此処まで全部、ガムテの筋書き通りで。
アイツがさっきまでのふざけた笑い方じゃなくて、冷たい笑いを浮かべてた事に。
けどそのお陰で気が緩んで、この時の俺は見逃してたんだ。
───俺がさっき考えた通り、此処まで全部、ガムテの筋書き通りで。
アイツがさっきまでのふざけた笑い方じゃなくて、冷たい笑いを浮かべてた事に。
■ ■ ■
そろそろだなァ。
視線を向けるのは激しい戦闘の最中、抉れた大地に生み出された窪み。
ナルトの動きをコントロールし、ニケが殺されない様に立ち回った。
その裏でガムテがナルトの攻撃を利用して作り上げた、天然の塹壕。
周囲を縦横無尽に駆けながら、それが概ね完成した事を確認しながら。
ガムテは、今一度戦況を検める。
視線を向けるのは激しい戦闘の最中、抉れた大地に生み出された窪み。
ナルトの動きをコントロールし、ニケが殺されない様に立ち回った。
その裏でガムテがナルトの攻撃を利用して作り上げた、天然の塹壕。
周囲を縦横無尽に駆けながら、それが概ね完成した事を確認しながら。
ガムテは、今一度戦況を検める。
「かっこいいポーズ!mk-4!」
「らああああああッ!!」
「らああああああッ!!」
さっきまで満身創痍だった筈の勇者(ボケ)の全身が光り輝き。
その光を浴びて、忍者(ナルト)の動きが止まる。
そして動きが止まった所を、白い鎧を纏った狂犬(バカ)がナルトを殴りつける。
勇者単独でジリ貧だった時とは違い、戦いの形にはなっている。
無論何千発殴ろうと、今の忍者(ナルト)が倒れる事はないだろうけど。
連中も恐らくは倒そうとして動いている訳では無い。攻撃に殺意がない。
だが同時に、その所作や眼差しは確固たる希望を抱いた者の目だ。
恐らくは、今のナルトを何とかする何らかの算段を立てたのだろう。
その光を浴びて、忍者(ナルト)の動きが止まる。
そして動きが止まった所を、白い鎧を纏った狂犬(バカ)がナルトを殴りつける。
勇者単独でジリ貧だった時とは違い、戦いの形にはなっている。
無論何千発殴ろうと、今の忍者(ナルト)が倒れる事はないだろうけど。
連中も恐らくは倒そうとして動いている訳では無い。攻撃に殺意がない。
だが同時に、その所作や眼差しは確固たる希望を抱いた者の目だ。
恐らくは、今のナルトを何とかする何らかの算段を立てたのだろう。
「────さて」
だが、ガムテの表情から余裕は消えない。
今なお全く追い詰められたとガムテは考えていなかった。
確かに、このままいけばガムテに勝機はない。
まだナルトが激情に駆られている為、周りの子供(ジャリ)共を戦闘に巻き込めているが。
もう少しクールダウンされれば、状況はあっと言う間にガムテを孤立させる。
そうなれば待っているのは消耗した自分に対するリンチだ。
だから、そうなる前にガムテは少なくともナルトにだけはチェックを掛けねばならない。
今なお全く追い詰められたとガムテは考えていなかった。
確かに、このままいけばガムテに勝機はない。
まだナルトが激情に駆られている為、周りの子供(ジャリ)共を戦闘に巻き込めているが。
もう少しクールダウンされれば、状況はあっと言う間にガムテを孤立させる。
そうなれば待っているのは消耗した自分に対するリンチだ。
だから、そうなる前にガムテは少なくともナルトにだけはチェックを掛けねばならない。
(手ぶらで逃げても、王子(プリンス)の奴に消されるだろうしなァ)
プライドの高いゼオンの事だ、元々獲苛立っている所に獲物を逃がし油を注がれただろう。
そんな時に、ボロボロの自分の姿を晒せばドミノ目当てに切り捨てられる恐れがある。
ここで少なくとももう一人、可能なら二人は殺して、ドミノを獲得しておく必要がある。
ドミノさえ獲得していれば、放送まで身を隠して体を治す事ができるのだから。
その頃にはゼオンも頭が冷えているだろうし、合流するならその時だ。
ここまで稼いだキルスコアは2つ。今更に稼げれば後は隠れていても上位に入れるだろう。
だから、ガムテにとってもこの局面は正念場だった。
この戦いに勝つか死滅(くたば)るかで、今後の趨勢が決まる。
そんな時に、ボロボロの自分の姿を晒せばドミノ目当てに切り捨てられる恐れがある。
ここで少なくとももう一人、可能なら二人は殺して、ドミノを獲得しておく必要がある。
ドミノさえ獲得していれば、放送まで身を隠して体を治す事ができるのだから。
その頃にはゼオンも頭が冷えているだろうし、合流するならその時だ。
ここまで稼いだキルスコアは2つ。今更に稼げれば後は隠れていても上位に入れるだろう。
だから、ガムテにとってもこの局面は正念場だった。
この戦いに勝つか死滅(くたば)るかで、今後の趨勢が決まる。
「そんじゃあ、始めるか」
短く呟いて、残った片足に力を籠めて跳躍。
盾である筈のエリス達から、少し距離を取る。
今迄の立ち回りを考えれば、愚行でしかない一手であるが。
余りにエリス達と入り混じりすぎてしまうと、これから行う事をナルトへ見せられない。
だからガムテは、危険を承知でわざと少し離れ、首根っこを掴んだ我愛羅の死体を掲げた。
そして、輝くような笑顔で、ナルトに呼びかける。
盾である筈のエリス達から、少し距離を取る。
今迄の立ち回りを考えれば、愚行でしかない一手であるが。
余りにエリス達と入り混じりすぎてしまうと、これから行う事をナルトへ見せられない。
だからガムテは、危険を承知でわざと少し離れ、首根っこを掴んだ我愛羅の死体を掲げた。
そして、輝くような笑顔で、ナルトに呼びかける。
「おお~い☆ノリマキアナゴッ!!これ、そんなに欲ちい~~~?」
ガムテに今にも飛び掛かろうとしていた、ナルトの身体が硬直する。
やめろ。何をしようとしている、と。悪寒が前進を駆け巡り、四肢が強張りを見せ。
動かなければ、そう思う。それなのに、動けない。
今ここで動けば、駆け巡った悪寒が、現実の物となってしまう気がしたから。
やめろ。何をしようとしている、と。悪寒が前進を駆け巡り、四肢が強張りを見せ。
動かなければ、そう思う。それなのに、動けない。
今ここで動けば、駆け巡った悪寒が、現実の物となってしまう気がしたから。
「やめろッ!」
「…………っ!!」
「…………っ!!」
硬直したナルトとは対照的に。
勇者(ボケ)と狂犬(バカ)が、ガムテを止めようと突撃してくる。
ガムテが何をしようとしているか、薄々察して。
未だ荒れ狂うナルトに無防備な背中を晒してまで、止めようとしているのだ。
美しい仲間意識。実に感動的だろう。
まぁ無意味なのだが。
勇者(ボケ)と狂犬(バカ)が、ガムテを止めようと突撃してくる。
ガムテが何をしようとしているか、薄々察して。
未だ荒れ狂うナルトに無防備な背中を晒してまで、止めようとしているのだ。
美しい仲間意識。実に感動的だろう。
まぁ無意味なのだが。
「────やるよ、欲ちいならな」
ニィィィィィィイ……と狂った笑みをこれ見よがしに披露した後。
ぼそりと、或いは同胞と成れたかもしれない死体に何かを呟いてから。
その死体を振りかぶり───ガムテ目掛けて迫ってきている二人目掛けて投げつけた。
ぼそりと、或いは同胞と成れたかもしれない死体に何かを呟いてから。
その死体を振りかぶり───ガムテ目掛けて迫ってきている二人目掛けて投げつけた。
「────ッ!?」
「くそ、この───バカ────!」
「くそ、この───バカ────!」
投げるまでのモーションが大きかったため、二人は飛びのく事ができた。
しかし結果として、投擲された我愛羅の肉体は標的を失い。
更に振り下ろす形で投擲されていたため、そのまま隕石の如く突き進んだ。
硬い硬い、コンクリートの地面へと。
しかし結果として、投擲された我愛羅の肉体は標的を失い。
更に振り下ろす形で投擲されていたため、そのまま隕石の如く突き進んだ。
硬い硬い、コンクリートの地面へと。
ぐちゃっ。
そんな、何かが潰れる音が響いて。
丁度、ナルトの立つ場所から1メートル先の地面に。
我愛羅の遺体が、朽ち果てていた。
グチャグチャに潰れた頭部と眼窩から零れた、光を喪った瞳が、ナルトを見る。
丁度、ナルトの立つ場所から1メートル先の地面に。
我愛羅の遺体が、朽ち果てていた。
グチャグチャに潰れた頭部と眼窩から零れた、光を喪った瞳が、ナルトを見る。
──── ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ! ! !
直後、びりびりと肌を裂くような絶叫を轟かせて。
ナルトの姿が、更なる変貌を遂げる。
尾の数は更にもう一本増え、四本となり。
全身を包んでいた茜色のチャクラが、黒っぽく変色してしまい。
その後ナルトの総身を飲みこんで、頭部からチャクラでできた狐耳が生える。
最早完全にチャクラの衣に覆われて、表情を伺うことはできない。
輪郭も人から妖狐へ。憎しみに、ナルトそのものが塗りつぶされようとしていた。
ナルトの姿が、更なる変貌を遂げる。
尾の数は更にもう一本増え、四本となり。
全身を包んでいた茜色のチャクラが、黒っぽく変色してしまい。
その後ナルトの総身を飲みこんで、頭部からチャクラでできた狐耳が生える。
最早完全にチャクラの衣に覆われて、表情を伺うことはできない。
輪郭も人から妖狐へ。憎しみに、ナルトそのものが塗りつぶされようとしていた。
────■■■■■■■■■……!!
変貌を遂げたのとほとんど同時に、ナルトの顔の前で何かが収束する。
黒一色の、莫大なエネルギー。
それを見た瞬間、エリス達の血液が凍り付いた。
同時に、察する。何故ガムテが、敵の増援を目にしても余裕を保っていたのかを。
ナルトが“こう”なれば、最早敵の数など問題ではない。
だって、もう既に敵味方を区別するナルトの理性は失われているのだから。
さっきまでは辛うじてニケやエリスを殺さない様にナルトも戦っていたけれど。
今となっては完全にタガが外れている。“あんなもの”を撃とうとしているのが良い証拠だ。
黒一色の、莫大なエネルギー。
それを見た瞬間、エリス達の血液が凍り付いた。
同時に、察する。何故ガムテが、敵の増援を目にしても余裕を保っていたのかを。
ナルトが“こう”なれば、最早敵の数など問題ではない。
だって、もう既に敵味方を区別するナルトの理性は失われているのだから。
さっきまでは辛うじてニケやエリスを殺さない様にナルトも戦っていたけれど。
今となっては完全にタガが外れている。“あんなもの”を撃とうとしているのが良い証拠だ。
「ちっきしょぉおおおおおおッ!」
半ばヤケと言った様相で、ニケが飛び上がる。
あれを撃たせてはいけない。撃たせれば、ガムテは愚か自分達も吹き飛ぶだろう。
そして、撃たせないための一手を撃てるのは、この場でニケだけだった。
空中に浮かび上がってポーズを取り、かつてないほど全身全霊で勇者の力を発動する。
あれを撃たせてはいけない。撃たせれば、ガムテは愚か自分達も吹き飛ぶだろう。
そして、撃たせないための一手を撃てるのは、この場でニケだけだった。
空中に浮かび上がってポーズを取り、かつてないほど全身全霊で勇者の力を発動する。
─────光魔法キラキラ!かっこいいポーズ!
果たして、それはニケの狙い通りの効果を発揮した。
光魔法キラキラは、憎悪に支配されたナルトだからこそ覿面の効果を発揮した。
小さな九尾の妖狐と化したナルトの動きが、一瞬止まる。だけれど。
勇者の行った一手は、今この時に関して言えば、間違いではないが正解でもなかった。
光魔法キラキラは、憎悪に支配されたナルトだからこそ覿面の効果を発揮した。
小さな九尾の妖狐と化したナルトの動きが、一瞬止まる。だけれど。
勇者の行った一手は、今この時に関して言えば、間違いではないが正解でもなかった。
─────抑え、きれねっ………!?
余りにも相手が膨大なエネルギーの持ち主だったが故か。
それとも、九尾の妖狐の出自と存在が、真に邪な物だと言い難かったためか。
完全にナルトを止めるには至らなかった。“中途半端に”止めてしまったのだ。
そして、今のナルトは手榴弾のピンを抜いて投げつけようとしていた状態に等しい。
そんな相手の動きを突然止めて、手の中から手榴弾を取りこぼさせてしまえばどうなるか。
答えは、ナルトの顔面の前で収縮していたエネルギーの塊。
発生源が硬直した影響で予期せぬ臨界を遂げようとする“尾獣玉”が、解答を導く。
凡そニケ達にとって、最悪の形で。
それとも、九尾の妖狐の出自と存在が、真に邪な物だと言い難かったためか。
完全にナルトを止めるには至らなかった。“中途半端に”止めてしまったのだ。
そして、今のナルトは手榴弾のピンを抜いて投げつけようとしていた状態に等しい。
そんな相手の動きを突然止めて、手の中から手榴弾を取りこぼさせてしまえばどうなるか。
答えは、ナルトの顔面の前で収縮していたエネルギーの塊。
発生源が硬直した影響で予期せぬ臨界を遂げようとする“尾獣玉”が、解答を導く。
凡そニケ達にとって、最悪の形で。
「────ニケッ!!!」
かっこいいポーズで作られた五秒程の猶予に食い込む様に、ニケをエリスが回収。
ナルトの顔から回り込む様に弧を描く軌道で全力疾走。少しでも距離を稼ぐ。
ニケもエリスの疾走に報いようと、抱きかかえられながら何とかかっこいいポーズを保つ。
その最中、これまでの戦いの余波で作られた塹壕。
そこへ飛び込むガムテの姿を視界の端に捉えるが、それを気にしている余裕はとてもない。
何故なら、この時遂にナルトが尾獣玉の制御を完全に失い、臨界を迎えた為だ。
ナルトの顔から回り込む様に弧を描く軌道で全力疾走。少しでも距離を稼ぐ。
ニケもエリスの疾走に報いようと、抱きかかえられながら何とかかっこいいポーズを保つ。
その最中、これまでの戦いの余波で作られた塹壕。
そこへ飛び込むガムテの姿を視界の端に捉えるが、それを気にしている余裕はとてもない。
何故なら、この時遂にナルトが尾獣玉の制御を完全に失い、臨界を迎えた為だ。
世界が光ったのは、その一秒後の事だった。
■ ■ ■
手負いの獣の、唸り声が響く。
うずまきナルトは、今しがたの自爆によって負ったダメージに呻いていた。
至近距離での、予期せぬ尾獣玉の暴発。
それはあろうことか、尾獣玉を作り出したナルト本人に一番の被害をもたらした。
放たれた尾獣玉は、ナルトの半身を消し飛ばしていた。
うずまきナルトは、今しがたの自爆によって負ったダメージに呻いていた。
至近距離での、予期せぬ尾獣玉の暴発。
それはあろうことか、尾獣玉を作り出したナルト本人に一番の被害をもたらした。
放たれた尾獣玉は、ナルトの半身を消し飛ばしていた。
「■■■■■■■■■……」
しかし、九尾のチャクラに包まれたナルトにはそれすら致命傷にはならない。
ボコボコと音を立てて己の寿命を犠牲にした超再生によって修復していく。
それでも、乃亜のハンデに依る物か、再生速度はかなり鈍く。
身動きも覚束ない、と言った状態に陥っていた。
ボコボコと音を立てて己の寿命を犠牲にした超再生によって修復していく。
それでも、乃亜のハンデに依る物か、再生速度はかなり鈍く。
身動きも覚束ない、と言った状態に陥っていた。
──── ■ ■ ■ … ! ! !
再生の中途で、妖狐が啼く。
汲み尽くせぬ怒りと悲しみを籠めた咆哮が、大気に木霊する。
そして、忍者が再起動に至るまでの僅かな間隙。それを縫う様に。
極道は、その一瞬を狙った。
汲み尽くせぬ怒りと悲しみを籠めた咆哮が、大気に木霊する。
そして、忍者が再起動に至るまでの僅かな間隙。それを縫う様に。
極道は、その一瞬を狙った。
─────よう、待望(おまた)だぜ、忍者。
五月雨の様に異能(チート)の尾がガムテを貫き、蹂躙しようと降り注ぐ。
だが、その全てをガムテは天才的なセンスで掻い潜った。
恐らく次の成功はない難行を成し遂げ、ここまで温存していた切り札。
この刻に至るまで迎撃では決して抜かなかった大業物・閻魔を振りかざし、振り下ろす。
殺しの王子様(プリンス・オブ・マーダー)の正真正銘の全霊。
その速度は、最早乃亜のハンデが科された状況下でなお。
常人の目には残像すら映らぬ速度で、ナルトの頸へと迅った。
だが、その全てをガムテは天才的なセンスで掻い潜った。
恐らく次の成功はない難行を成し遂げ、ここまで温存していた切り札。
この刻に至るまで迎撃では決して抜かなかった大業物・閻魔を振りかざし、振り下ろす。
殺しの王子様(プリンス・オブ・マーダー)の正真正銘の全霊。
その速度は、最早乃亜のハンデが科された状況下でなお。
常人の目には残像すら映らぬ速度で、ナルトの頸へと迅った。
ざくり。
無音になった世界の中で、音が響く。
肉を裂き、骨を発つ音だ。
ブッ殺した。片手に伝わる感触から、ガムテは確信する。
纏っていた衣の防御も、地獄の沙汰を退けられる程ではなく。
刃はそのまま突き進み、ずるり、とナルトの頸が落ちる──────、
肉を裂き、骨を発つ音だ。
ブッ殺した。片手に伝わる感触から、ガムテは確信する。
纏っていた衣の防御も、地獄の沙汰を退けられる程ではなく。
刃はそのまま突き進み、ずるり、とナルトの頸が落ちる──────、
「……真実(マジ)、か………!」
輝村照(ガムテ)は天才だ。
圧倒的戦力差、隻腕隻脚という劣悪なコンディションでありながら。
うずまきナルトの首から上を見事に切り裂いた。
疑いようもなく致命傷。首を九割落とされた所から生存できる人類など存在しない。
例え彼が未来で殺しあう多仲忍者であっても、それは例外では無いだろう。
だがしかし────その不条理は、今この時形を成す。
圧倒的戦力差、隻腕隻脚という劣悪なコンディションでありながら。
うずまきナルトの首から上を見事に切り裂いた。
疑いようもなく致命傷。首を九割落とされた所から生存できる人類など存在しない。
例え彼が未来で殺しあう多仲忍者であっても、それは例外では無いだろう。
だがしかし────その不条理は、今この時形を成す。
「 死 ね 」
首が落ちようとする瞬間うずまきナルトの肩から胸部分にかけて。
うずまきナルトの上半身が現れたのだ。まるで、生えてきたかのように。
本当に生えたのか、或いは元々チャクラの衣を二人羽織の様に纏ったハリボテだったのか。
それは定かではないが、確かに言える事は。
ガムテは人を殺す事にかけては天才であったが、怪物を殺した経験は未だかつてなかった。
それ故に、選択を迫られる。彼にとって、どうしようもない程に絶望の選択を………
うずまきナルトの上半身が現れたのだ。まるで、生えてきたかのように。
本当に生えたのか、或いは元々チャクラの衣を二人羽織の様に纏ったハリボテだったのか。
それは定かではないが、確かに言える事は。
ガムテは人を殺す事にかけては天才であったが、怪物を殺した経験は未だかつてなかった。
それ故に、選択を迫られる。彼にとって、どうしようもない程に絶望の選択を………
(薬(ヤク)、を、二枚服用(ギメ)、なら………)
第六感に従い、閻魔の柄と掌に挟む形で備えていた地獄の回数券(ヘルズ・クーポン)。
悪魔に選ばれし“身体(カラダ)”と“精神(ココロ)“の持ち主にのみ許される。
禁断の二枚服用(ギメ)であれば、まだ可能性はあるのかもしれない。
ともすれば輝村極道に迫る怪物殺しを、成し遂げられるのかもしれない。
だが、それは、ガムテに約束された破滅をもたらす選択だ。
悪魔に選ばれし“身体(カラダ)”と“精神(ココロ)“の持ち主にのみ許される。
禁断の二枚服用(ギメ)であれば、まだ可能性はあるのかもしれない。
ともすれば輝村極道に迫る怪物殺しを、成し遂げられるのかもしれない。
だが、それは、ガムテに約束された破滅をもたらす選択だ。
────俺は、
明日なき暴走に、身を任せられたなら。
ガムテは地獄の回数券(ヘルズ・クーポン)二枚服用(ギメ)を成し遂げていただろう。
例え死んでも忍者を殺す。ただ、この戦いの勝利だけを求めて片道切符を握った筈だ。
だが、ガムテはこの時、今迄の生の中でおよそ初めて。
初めて、ただ殺す為ではなく。救うために、生み出すために戦っていた。
全ての参加者を殺しきった先に与えられる覇者の王冠。願いを叶える力。
その力で以て、救われぬ子供達に。自分が地獄へ導いてしまった、割れた子供達に。
破滅以外の結末を与える為に、今の彼は刃を振るっていた。
そして、だからこそ。
ガムテは地獄の回数券(ヘルズ・クーポン)二枚服用(ギメ)を成し遂げていただろう。
例え死んでも忍者を殺す。ただ、この戦いの勝利だけを求めて片道切符を握った筈だ。
だが、ガムテはこの時、今迄の生の中でおよそ初めて。
初めて、ただ殺す為ではなく。救うために、生み出すために戦っていた。
全ての参加者を殺しきった先に与えられる覇者の王冠。願いを叶える力。
その力で以て、救われぬ子供達に。自分が地獄へ導いてしまった、割れた子供達に。
破滅以外の結末を与える為に、今の彼は刃を振るっていた。
そして、だからこそ。
────割れた子供達(アイツラ)の、
ほんの一瞬、迷いが生じてしまった。
だってここで二枚服用(ギメ)という選択肢を取ってしまえば。
どう転んでも、ガムテの戦いは此処で終わってしまう。
例え勝ったとしても、優勝という玉座へ至る道程は完全に閉ざされてしまうのだ。
割れた子供達(グラス・チルドレン)の王としての責務を果たす事も。
ガムテが認めた最強の父親(パパ)、輝村極道に最高の笑顔で自分を認めさせる夢も。
責務も、夢も、両者ともここで完全に断たれてしまう。
それ故に、未来無き捨て身の凶行をこそ力とする割れた子供達(グラス・チルドレン)が。
未来を望んでしまった。生きようとしてしまった。
だってここで二枚服用(ギメ)という選択肢を取ってしまえば。
どう転んでも、ガムテの戦いは此処で終わってしまう。
例え勝ったとしても、優勝という玉座へ至る道程は完全に閉ざされてしまうのだ。
割れた子供達(グラス・チルドレン)の王としての責務を果たす事も。
ガムテが認めた最強の父親(パパ)、輝村極道に最高の笑顔で自分を認めさせる夢も。
責務も、夢も、両者ともここで完全に断たれてしまう。
それ故に、未来無き捨て身の凶行をこそ力とする割れた子供達(グラス・チルドレン)が。
未来を望んでしまった。生きようとしてしまった。
────ヒーローにならなきゃ、
だからこそ、ここで輝村照(ガムテ)は敗北する。
憎悪に染まった本能か、或いは冷徹な殺意から来る策か。
反撃の尾の一撃が鞭の様にしなり。
薬をキメる選択が一手遅れたガムテの左半身を粉砕し、かちあげた。
血しぶきを上げて吹き飛んでいくガムテの姿は、大輪の花火の様だった。
憎悪に染まった本能か、或いは冷徹な殺意から来る策か。
反撃の尾の一撃が鞭の様にしなり。
薬をキメる選択が一手遅れたガムテの左半身を粉砕し、かちあげた。
血しぶきを上げて吹き飛んでいくガムテの姿は、大輪の花火の様だった。
■ ■ ■
くすんで霞んだ視界の中で、考える。
これは致命傷だ。沢山沢山殺してきたから分かる。
流石に薬の効果がまだ残っていたとしても。
肩から腹にかけて、左半身がほぼ千切られたら、もう立てない。
失血で目の前ももう良く見えない。感覚も、何も感じない。
これは致命傷だ。沢山沢山殺してきたから分かる。
流石に薬の効果がまだ残っていたとしても。
肩から腹にかけて、左半身がほぼ千切られたら、もう立てない。
失血で目の前ももう良く見えない。感覚も、何も感じない。
「やっぱりな……」
哀しくはなかった。
これが俺の、俺達(グラス・チルドレン)のいつも通り。
肝心な所で、運命に嫌われる。
若くして心を殺された。
何も分からぬ子供のまま、何の救済(すくい)もなく。
ただただ、心を殺された。
他人(ひと)に殺された心は、他人(ひと)を殺さなきゃ、正気ではいられない。
何も殺さずには、生きられない。
オレ達はそんな生き物になっちまった。なっちまったのに。
これが俺の、俺達(グラス・チルドレン)のいつも通り。
肝心な所で、運命に嫌われる。
若くして心を殺された。
何も分からぬ子供のまま、何の救済(すくい)もなく。
ただただ、心を殺された。
他人(ひと)に殺された心は、他人(ひと)を殺さなきゃ、正気ではいられない。
何も殺さずには、生きられない。
オレ達はそんな生き物になっちまった。なっちまったのに。
――――地獄行きの誘導(てつだい)をしてる自覚、ある?
なのに、何で今更、救えるかもなんて思っちまったんだろうな?
生れて初めて、救うために殺すんだと息巻いて。
その結果がこれだ。嘲笑(くさ)だぜ、全く。
パパを認めさせることもできねェで。割れた子供達(アイツラ)残して逝っちまう。
ヘンゼルの時と同じだ。
英雄(ヒーロー)は、割れた子供達(オレタチ)を救わない。
正義の味方は真っ当に生きられた幸運者(シアワセモノ)の味方にしかならない。
だから俺は泥の棺桶(ここ)で冷たく死滅(くたば)っていくしかない。
生れて初めて、救うために殺すんだと息巻いて。
その結果がこれだ。嘲笑(くさ)だぜ、全く。
パパを認めさせることもできねェで。割れた子供達(アイツラ)残して逝っちまう。
ヘンゼルの時と同じだ。
英雄(ヒーロー)は、割れた子供達(オレタチ)を救わない。
正義の味方は真っ当に生きられた幸運者(シアワセモノ)の味方にしかならない。
だから俺は泥の棺桶(ここ)で冷たく死滅(くたば)っていくしかない。
「……………?」
そう、疑いようもなく。
そのはず、だった。
もう目も見えない。感触も死んで、自分が立ってるのか、寝てるのかさえ分からない。
それでも冷たくはなかった。俺は温もりを感じていた。
それに気づいた時、まだ生存(いき)てた第六感が伝えてくる。
俺は今誰かに、おぶわれているんだって事に。
その誰かはそっとバラバラになりそうな俺の身体を横たえて。
一緒にいるらしい誰かに向けて言った。
そのはず、だった。
もう目も見えない。感触も死んで、自分が立ってるのか、寝てるのかさえ分からない。
それでも冷たくはなかった。俺は温もりを感じていた。
それに気づいた時、まだ生存(いき)てた第六感が伝えてくる。
俺は今誰かに、おぶわれているんだって事に。
その誰かはそっとバラバラになりそうな俺の身体を横たえて。
一緒にいるらしい誰かに向けて言った。
─────こいつさ、治してやってくれよ。
もう、全部遅いのに。
もう何も見えないのに、感じないのに。
声だけは、不思議な程鮮明に聞こえた。
都合のいい幻聴かとも思ったけれど。
───何より信用する第六感が、現実だと俺に告げていた。
もう何も見えないのに、感じないのに。
声だけは、不思議な程鮮明に聞こえた。
都合のいい幻聴かとも思ったけれど。
───何より信用する第六感が、現実だと俺に告げていた。
■ ■ ■
突然の轟音を聞いて隠れながら慎重に近づいてみれば。
いよいよ以て、僕には目の前の阿呆が何を言っているのか理解できなかった。
このディオを探して来たというニケが抱える、死体。
顔中に何か布の様な物を張り付けた不気味な糞餓鬼。
イリヤはいい。エリスであっても、渋々ながら治療しただろう。
度し難いとは言えナルトも治療を乞われれば、それが下らぬ情から来ていると理解できた。
だが、目の前の確か…ガムテと名乗っていた餓鬼は何だ?
状況から察するに、ナルトを怪物に変えた元凶だろう。つまり、徹頭徹尾敵だ。
思わず聞き間違いかと、ニケに確認を試みる。
いよいよ以て、僕には目の前の阿呆が何を言っているのか理解できなかった。
このディオを探して来たというニケが抱える、死体。
顔中に何か布の様な物を張り付けた不気味な糞餓鬼。
イリヤはいい。エリスであっても、渋々ながら治療しただろう。
度し難いとは言えナルトも治療を乞われれば、それが下らぬ情から来ていると理解できた。
だが、目の前の確か…ガムテと名乗っていた餓鬼は何だ?
状況から察するに、ナルトを怪物に変えた元凶だろう。つまり、徹頭徹尾敵だ。
思わず聞き間違いかと、ニケに確認を試みる。
「あぁ、こいつさ、助けてやってくれって、そう言ったんだ」
単なるバカかと思っていたが、それを飛び越えて気狂いの類だったか。
誰も彼も助けようとか、鼠の糞の大きさの脳みそには蛆が沸いているらしい。
そう考えながら、ディオはニケの真意を問いかけた。
無論のこと、ニケの真意がどうあれNOと言う答えは決まっている。
これは選択の為の問答ではなく、こてんぱんにニケを言い負かすための問いだった。
誰も彼も助けようとか、鼠の糞の大きさの脳みそには蛆が沸いているらしい。
そう考えながら、ディオはニケの真意を問いかけた。
無論のこと、ニケの真意がどうあれNOと言う答えは決まっている。
これは選択の為の問答ではなく、こてんぱんにニケを言い負かすための問いだった。
「だってさ。俺達が苦労して、元凶のこいつがこのまま死ぬなんてムカつくじゃん?
ナルトを元に戻すために囮でも何でもやってもらってからじゃないと割に合わないんだよ」
ナルトを元に戻すために囮でも何でもやってもらってからじゃないと割に合わないんだよ」
むっ……
正直、一理あると思ったが騙されはしない。
この馬鹿がそんな役に立つだとか立たないだとかを考えて物を言う筈がない。
僕を丸め込もうとする方便でしかない筈だッ!
正直、一理あると思ったが騙されはしない。
この馬鹿がそんな役に立つだとか立たないだとかを考えて物を言う筈がない。
僕を丸め込もうとする方便でしかない筈だッ!
「ちっ、バレたか」
僕の鋭い指摘に対し、ニケはバツが悪そうにそっぽを向いた。
当然だ、いつまでもふざけた調子に乗せられてたまるものか。
貴様は下で僕が上ッ!この馬鹿との関係性にそれ以上の物は不要だ。
大体、このマーダーのガキに肩入れする理由が重ね重ね分からない。
協力体制を築いていたエリスやナルトを下らぬ情で助けようとするのはかろうじて分かる。
僕が利用していたキウルとて、同じ選択をするだろう。
だが、このガムテと言うガキを何故助ける?
会話の余地もなく化け物になったナルトに対し、僕らを当て馬にしようとした奴を。
極めつけはガムテの状態だ。半身が吹き飛び、息は止まっている。
誰がどう見ても死んでいる。手の施しようがない事等、一瞥だけで分かる筈だ。
当然だ、いつまでもふざけた調子に乗せられてたまるものか。
貴様は下で僕が上ッ!この馬鹿との関係性にそれ以上の物は不要だ。
大体、このマーダーのガキに肩入れする理由が重ね重ね分からない。
協力体制を築いていたエリスやナルトを下らぬ情で助けようとするのはかろうじて分かる。
僕が利用していたキウルとて、同じ選択をするだろう。
だが、このガムテと言うガキを何故助ける?
会話の余地もなく化け物になったナルトに対し、僕らを当て馬にしようとした奴を。
極めつけはガムテの状態だ。半身が吹き飛び、息は止まっている。
誰がどう見ても死んでいる。手の施しようがない事等、一瞥だけで分かる筈だ。
「ま、一番の理由はさ。恨みを晴らしても今ン所、ナルトが元に戻る気配ないし。
このままこいつが死んだら、それこそナルトは戻れなくなっちまいそうだって思うんだ」
このままこいつが死んだら、それこそナルトは戻れなくなっちまいそうだって思うんだ」
それに、とニケは続けた。
「此奴(ガムテ)もこいつなりに何か、色々あって殺し合いに乗ったみたいだしさ。
ナルトはこいつを許せないかもしれないけど、せめて事情だけは知ってて欲しいって、
あいつがこのままこいつの事を何も知らずに死ねってやるのは……何か、嫌だったんだよ」
ナルトはこいつを許せないかもしれないけど、せめて事情だけは知ってて欲しいって、
あいつがこのままこいつの事を何も知らずに死ねってやるのは……何か、嫌だったんだよ」
俄かには信じがたい話だった。
この異常者めいた格好のガキに事情だと?
そんな事、あり得る筈がない。どう考えてもシリアルキラーと言う奴だろう。
見込み違いもいい所だと考えて、僕はニケを強く睨む。
そして、否定と追及の言葉を吐こうとした時、それに先んじて奴は続けた。
この異常者めいた格好のガキに事情だと?
そんな事、あり得る筈がない。どう考えてもシリアルキラーと言う奴だろう。
見込み違いもいい所だと考えて、僕はニケを強く睨む。
そして、否定と追及の言葉を吐こうとした時、それに先んじて奴は続けた。
「まぁ言いたい事は分かるよ……でもこいつ、ナルトに負ける前にさ。
俺があいつ等の味方(ヒーロー)にならなきゃって………そう言った気がしたんだ」
俺があいつ等の味方(ヒーロー)にならなきゃって………そう言った気がしたんだ」
悪い奴だし、許されない事をしたのは確かだけど。それでも悪いだけの奴じゃないなら、
このまま見捨てるのも乃亜の言いなりみたいで気に入らなかった。それがニケの言い分で。
実に下らない。「後味の良くない物を残す」だとか「人生に悔いを残さない」だとか。
便所の鼠のクソにも匹敵する下らない考えだと断じ、気づけばニケを詰っていた。
このまま見捨てるのも乃亜の言いなりみたいで気に入らなかった。それがニケの言い分で。
実に下らない。「後味の良くない物を残す」だとか「人生に悔いを残さない」だとか。
便所の鼠のクソにも匹敵する下らない考えだと断じ、気づけばニケを詰っていた。
「もし、お前の言う通り治したとして…だ。こいつがマーダーを辞めるとでも?
このディオに心の底から感謝し、悔い改めて対主催に転向する……いや、そもそも。
この死体がもう一度、瞼を開くとでも、お前は本気で思っているのか?」
このディオに心の底から感謝し、悔い改めて対主催に転向する……いや、そもそも。
この死体がもう一度、瞼を開くとでも、お前は本気で思っているのか?」
馬鹿の馬鹿な考えをあげつらって論破するのは実に楽しかった。
ニケも言い返せず、俯いて沈黙するばかりだ。
叶うならば趣味の悪い仮面を剥ぎ取って、消沈した顔を拝んでやりたかった。
もっとも、そんな事をすれば頭に嵌められた輪が締め付けてくるのでやらないが。
とにかく、今の僕は、ニケが何を言って来ようと言い負かせる自信に満ちていた。
そんな僕に対して、ニケは。
ニケも言い返せず、俯いて沈黙するばかりだ。
叶うならば趣味の悪い仮面を剥ぎ取って、消沈した顔を拝んでやりたかった。
もっとも、そんな事をすれば頭に嵌められた輪が締め付けてくるのでやらないが。
とにかく、今の僕は、ニケが何を言って来ようと言い負かせる自信に満ちていた。
そんな僕に対して、ニケは。
「………確かに、お前の言う通りなのかもしれないけど」
意外にも、僕の言い分が正しいと食い下がる事無く認め。
ぽりぽりと頭を掻き、短く息を吐いて。
一呼吸おいてから僕の追及に対して、ニケは絞り出すように反論を述べた。
ぽりぽりと頭を掻き、短く息を吐いて。
一呼吸おいてから僕の追及に対して、ニケは絞り出すように反論を述べた。
「でも……お前は少なくとも、ヤな奴のまま、俺達に協力してくれてるじゃん?」
……は?と声が漏れる。
意味が分からなかった。
すぐさまどういう意味だと問いかけるが、ニケがその問いに答えることは無かった。
ただ、悪い、と。それだけを告げ。
意味が分からなかった。
すぐさまどういう意味だと問いかけるが、ニケがその問いに答えることは無かった。
ただ、悪い、と。それだけを告げ。
「エリスとイリヤが待ってるからさ、もう行くわ」
待て、と引き留める。
今しがた言い放った言葉の真意を吐かせるまでは、行かせる訳にはいかない。
即座にスタンドを呼び出し掴みかかろうとするが、ニケは羽毛の様にひらりと躱して。
そして、ゴールド・エクスペリエンスの射程外にかけて行く。
今しがた言い放った言葉の真意を吐かせるまでは、行かせる訳にはいかない。
即座にスタンドを呼び出し掴みかかろうとするが、ニケは羽毛の様にひらりと躱して。
そして、ゴールド・エクスペリエンスの射程外にかけて行く。
「………ッ!!」
待て、質問に答えてから行けと言う物の、ニケがそれを聞き入れることは無く。
それを見て咄嗟に僕は治さないぞ、と。改めて走り去ろうとする背中に叫んだ。
こう言えば、止まる筈だと思ったからだ。しかし、あいつは止まらなかった。
駆けながら、一度くるりと振り返って、そいつの事は任せたと宣った。
俺は助けて欲しいけれど。どの道俺じゃそいつを治せない。
だから、実際にそいつを助けてやれるお前が決めてくれ。
それを見て咄嗟に僕は治さないぞ、と。改めて走り去ろうとする背中に叫んだ。
こう言えば、止まる筈だと思ったからだ。しかし、あいつは止まらなかった。
駆けながら、一度くるりと振り返って、そいつの事は任せたと宣った。
俺は助けて欲しいけれど。どの道俺じゃそいつを治せない。
だから、実際にそいつを助けてやれるお前が決めてくれ。
「……できる事なら、助けてやって欲しいけどな。
ただでさえシリアスの供給過多とユーモア欠乏症で、息が詰まって死にそうだし俺」
ただでさえシリアスの供給過多とユーモア欠乏症で、息が詰まって死にそうだし俺」
じゃ、と最後に敬礼の様に平手を顔の隣に添えてそう言い残すと。
ニケは今度こそ、振り返らなかった。
僕からは目もくれず、ナルトの元へと走り去っていく。
それを見て、言い知れぬ激情が腹の底から湧き上がって来る。
ニケは今度こそ、振り返らなかった。
僕からは目もくれず、ナルトの元へと走り去っていく。
それを見て、言い知れぬ激情が腹の底から湧き上がって来る。
───お前は少なくとも、ヤな奴のまま、俺達に協力してくれてるじゃん?
何度もニケからかけられた言葉が、頭の奥で木霊する。
「ふざけ……やがって………!!」
僕が奴らと一緒にいるのは、奴らを利用するためだ。
このディオが、生き残るためにな。
それを、何を勘違いしている。実に不愉快だ。
分かっている、信用を勝ち取るのはむしろ都合がいい。
遠くない内に、自分の頭は忌々しい戒めから解放されるだろう。
だが…それでもどうしようもなく肌は泡立ち、苛立ちは腹の底から湧き上がってくる。
このディオが、生き残るためにな。
それを、何を勘違いしている。実に不愉快だ。
分かっている、信用を勝ち取るのはむしろ都合がいい。
遠くない内に、自分の頭は忌々しい戒めから解放されるだろう。
だが…それでもどうしようもなく肌は泡立ち、苛立ちは腹の底から湧き上がってくる。
「僕が立ちたいのは…集団という輪の中心だ。一緒に間抜けな輪を作りたいわけじゃない」
殆ど無意識のうちに口から出たその言葉が、苛立ちの正体だろう。
だが、それが分かった所で苛立ちが消える筈もない。
否定したかった、どうしようもなく、ニケの言葉を否定してやりたかった。
その苛立ちに突き動かされて、きっと横たえられた死体を睨みつける。
だが、それが分かった所で苛立ちが消える筈もない。
否定したかった、どうしようもなく、ニケの言葉を否定してやりたかった。
その苛立ちに突き動かされて、きっと横たえられた死体を睨みつける。
「………貴様のせいだ」
万が一に備え、油断なく。
残った左拳を即座に獲物に叩き込んで沈黙させられるように構えながら。
右の拳にスタンドパワーを籠める。
ニケの言葉に従う訳じゃない。
ただ、奴の言葉がやはり戯言だと、確かめるための試みだ。
残った左拳を即座に獲物に叩き込んで沈黙させられるように構えながら。
右の拳にスタンドパワーを籠める。
ニケの言葉に従う訳じゃない。
ただ、奴の言葉がやはり戯言だと、確かめるための試みだ。
「貴様がいなければ……このディオがこんなゲロの様な怒りを感じる事も無かった」
死体が生き返ったりはしない。
茶化す事もふざける事もできぬ現実を、奴に突き付けてやる。
救いたいと願った所で、お前では誰も救えないのだと、否定してやる。
お前の言う事は、綺麗事で戯言(たわいごと)で戯言(ざれごと)だと教えてやるのだ。
茶化す事もふざける事もできぬ現実を、奴に突き付けてやる。
救いたいと願った所で、お前では誰も救えないのだと、否定してやる。
お前の言う事は、綺麗事で戯言(たわいごと)で戯言(ざれごと)だと教えてやるのだ。
「────責任を取れッ!!」
湧き上がった怒りに忠実に、スタンドの拳を振るう。
着弾した右拳から、スタンドパワー…即ち生命のエネルギーが流し込まれる。
流し込むのは最小限。立てるほどのエネルギーは与えない。
そこまでする義理はないし、万が一復活されて、僕に襲い掛かられれば困るからだ。
だから、精々息を吹き返すか否かのエネルギーを与え、僕はその様を見つめた。
着弾した右拳から、スタンドパワー…即ち生命のエネルギーが流し込まれる。
流し込むのは最小限。立てるほどのエネルギーは与えない。
そこまでする義理はないし、万が一復活されて、僕に襲い掛かられれば困るからだ。
だから、精々息を吹き返すか否かのエネルギーを与え、僕はその様を見つめた。
「───フッ」
そして、導かれた答えを見て、満足げに嗤った。
結果は当然、死体は死体のままだ。生き返ったりはしない。
それを見て、腹の底からスッキリした。
やはりニケの言う救いだとか絆だとかは存在しない幻だと、証明された気がしたからだ。
どんなスタンドでも、命が終わったモノは戻らない。当たり前だ。
結果は当然、死体は死体のままだ。生き返ったりはしない。
それを見て、腹の底からスッキリした。
やはりニケの言う救いだとか絆だとかは存在しない幻だと、証明された気がしたからだ。
どんなスタンドでも、命が終わったモノは戻らない。当たり前だ。
「フフッ!フフフハハハハハハ!!ハーハッハッハ!!!」
一しきり、腹を抱えて笑った後。
僕は再びニケ達の状態が確認できて、身を隠せる場所を求めて走り出した。
死体は死体のままだったと、そう伝えて落胆した時の奴の顔が実に楽しみだった。
あのお気楽馬鹿に、残酷な現実を一刻も早く突き付けてやりたかった。
気分の高揚により、腕を振り上げて叫ぶ。
僕は再びニケ達の状態が確認できて、身を隠せる場所を求めて走り出した。
死体は死体のままだったと、そう伝えて落胆した時の奴の顔が実に楽しみだった。
あのお気楽馬鹿に、残酷な現実を一刻も早く突き付けてやりたかった。
気分の高揚により、腕を振り上げて叫ぶ。
「───ニケ、貴様がナルトの奴をどうにかした後…
これを聞いたらどんな顔をするか、愉しみにしておいてやるぞッ!」
これを聞いたらどんな顔をするか、愉しみにしておいてやるぞッ!」