コンペロリショタバトルロワイアル@ ウィキ

未来を盗み描く、捻りのないストーリーを

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返す返す、生きているのが不思議な程の損傷だった。
左腕は元々喪失していたが、それも肩からごっそりと削り取られ。
それだけでなく、脇腹の辺りも喪失している。
明らかに、人間が生存していられる状態ではない。
それでも先ほどニケらを襲ったガムテープの少年は、現実としてそこにいた。
夢幻や幽霊の類ではない。そうであれば、ニケ達はとっくに死んでいる。



「……お前、さっきの…ガムテープの奴、だよな………?」
「………ガムテ、だ」



ニケが声を掛けると、ガムテは冷たい声色で名乗る。
先ほどまでのお道化た様子は、今の彼からは見られなかった。
鋭利な視線で一瞥し、短くガムテはニケへと続けた。
失せろ、と。




「テメ~らは後回しだ。今は……あの黒年増(ババア)をブッ殺す」



だから、お前らにうろちょろされたら鬱陶(ウザ)い。
ガムテが述べたのは、それだけだった。
それだけ口にして、もうニケ達の方へは振り返らない。
敵意も感じなかった。後ろから刺すつもりではないのだろう。
彼の身体の先では、リーゼロッテが炭化させた身体を再構成しようとしているのが見える。
もう後一分もかからず、元の瑞々しい肢体を取り戻すだろう。
そうなれば手遅れだ。今度こそ本当に終わる。



「あの子供大人(ババア)、始末(シ)めたら、次はテメ~らだ。
皆纏めて全殺しキメてやっから期待してろって、忍者(ナルト)にも言っとけ」
「………………………………………………………………………………」



ガムテは振り返らない。
ただ、その手に握っていた日本刀を放り捨てる様に地面へ落とし。
代わりに彼が纏う黒いパーカーの袖から、一本の短刀が現れた。
それを握って、後はもう話すことは無いと言わんばかりに無言で佇む。
そんなガムテに対し、ニケは。



「やだね」



少しの黙考の後。
いつかの頃、どこぞのやった様に王様にあっかんべぇと舌を出す。
勇者ニケには、ガムテの言う事を聞くつもりがまるでなかった。



「なんで俺がここまで好き放題やった奴の言う事聞かなきゃいけないんだよ」
「おい、ニケ!!」
「ディオ。お前はさっさとナルト達連れて逃げとけ。俺もう少し後から行く
後でこのガムテープ野郎みんなでボコろう。なんせ戦いは数だからな」




ニケの選択に、思わずディオが食って掛かるが。
ニケの態度は取り付く島もないと言わんばかりに塩気の強い物だった。
ひらひらと掌を振るって、さっさといけとディオに促す。
彼はいい加減ムカついていたのだ。シリアスの供給過多な現状に。
乃亜の奴は何を考えて俺を呼んだんだ。せめてチート能力の一つも寄越して見せろ。
いい加減乃亜の耳元でデカい声で言ってやりたい気持ちだった。
その矢先に散々好き放題暴れた相手からの偉そうな言葉だ。ツッコまずにはいられない。
おかしい事におかしいとツッコめる。それこそ彼の世界における勇者の資質なのだから。



「おっ死(ち)ぬぞ」
「生憎俺は魔王ギリを倒して一生左団扇な人生を送るんだ。
銅像とか作られて千年先まで讃えられる予定なのに、こんな変な島で死ぬなんて御免被る。
心配するな、俺の相棒アヌビスが一分後位に覚醒して何とかする」
『ラリってんのか?』
「んだよ、お前だってリーゼロッテ何とかしないと一緒にぶっ飛ぶだろーが!」



ぎゃあぎゃあと言い争うニケと喋る刀。
その光景は逼迫しているのに、何か力が抜ける緩い雰囲気だった。
それを冷めた目で視界の端に捉えながら、ディオは無言でナルトを背負う。
さっきまでは肉の盾にするつもりだったが、今ならば恩を売れる。
ともすれば、気絶している内に始末してドミノを稼ぐのもいいかもしれない。
そう考えているのだろうなと、ガムテは表情から読み取り内心で笑う。
彼の第六感が告げていたからだ。その思惑が果たされることは無いと。



「……何でだ?」
「ん?」
「さっき、俺を何で助けた。俺に怒(キレ)てたんじゃないのか?」



そして、ニケの想いもまた果たされることは無い。
それが分かっていたからガムテは特段何もせず、折角なので気になっていた事を尋ねた。
尋ねられたニケは今そんな事聞いてる場合かよ…と零すが、あっけらかんとした態度で。



「────それは………俺が勇者だから、かな」



親指と人差し指を顎に添えて。
決まった…!と言わんばかりの顔でニケは応えは述べた。
隣のディオは殴りたそうな顔をしていたが、ガムテは腹を立てなかった。
何故なら、彼の第六感が告げていたからだ。これが最後のやり取りとなると。
その答え合わせと言わんばかりに直後、ニケの身体が浮かび上がる。



「何……!?」
「え…?ちょちょ、何だよこれ、おいっ」



ニケとディオ。そしてイリヤ達の身体をも宙に浮かぶ。
浮かんでいないのはガムテだけだ。
この事からニケはガムテが何かやったのか尋ねるが、返事が返って来る事はなかった。
リーゼロッテの仕業ではない。彼女の攻撃なら、ガムテだけを省く理由がないからだ。
じゃあ、一体だれが。浮かんだ疑問の答えを求め、ニケはじたばたと藻掻くが。
それを横目で眺めるガムテは沈黙を保ち、残った方の肩を竦めるのみだった。



「くそ、待てよガムテ───おいっ!お前も────うおおおおおおおお!?」
「何だこれは……っ!く、くそっ!待て、このディオがまたしても───おおおおっ!?」




勇者は手を伸ばすが、当然その手が殺し屋の手を取る事はなく。
成すすべなく、幸せな子供達は空へと打ち上げられていった。
それを最後まで見届けて、最後まで騒がしい奴らだったと思う。
特にニケとかいう馬鹿は、本当にガムテの知る道理の外から来たような馬鹿だった。
自分の様にイカレてお道化ているのではない。素でああいう奴がいるのだな。
そう考えて、ガムテはフッと笑った。心の底からの、笑みだった。
そして、道理から外れた奇縁は、あのニケだけではない。
ガムテが握った短刀も、それを知らしめる。



「本当……全部遅いんだよ」



その短刀は、深い砂の下に埋まった筈だった。
ガムテが、その凶刃を振るい他者を殺める事が無い様に一度は封じられた刃。
だがガムテが目を醒ました時。小さな砂の塊が、彼の前にその短刀を運んできたのだ。
無言で受け取ると、短刀の柄の部分に纏わりついて浮かんでいた砂は崩れた。
まるで、役目を終えたと言わんばかりに。
戦えと言われた気がした。自分が殺した少年の顔が、脳裏に浮かんだ。
そうして気づいたら、ガムテはここへ来ていた。



「さ…最後の祭りだ。派手に特攻(ブッコ)むか」




視界の先では、炭化していた肌がぺりぺりと再生し。
瑞々しく艶めかしい肌を取り戻した魔女がはっきりと像を結ぶ。
忍者を超える異能(チート)の持ち主。だが、ガムテに恐怖は無かった。
破壊の八極道に、敵を前に臆する者は一人として存在しないのだから。
だから────さぁ、征こう。



「見せてやるよ───極道流、超越者退治(チートスレイヤー)」




          ■     ■     ■




柔らかい砂浜とは言え、地面に思いきり叩き付けられて。
んがっと声を上げてから、ニケは身体を起こす。
傍らでは、ディオもまた側頭部を抑えて身体を起こしていた。
きょろきょろと辺りを見回す。周囲にいたのはナルトと、エリスと、イリヤの三人。
やはり、ガムテの姿はなかった。



「くそ………」



その事を確かめてから、やっぱりニケはこの世界が嫌いだと思う。
簡単に人が死んでいくこの世界は狂っている。
はかネタをやっても不謹慎だと怒られないのはトマくらい影薄じゃないといけないのに。
本当、乃亜の奴にはいい加減にしろと言ってやりたかった。



「………辛気臭い顔を晒すより先に、やるべきことがあるだろう」




心底鬱陶しいといった表情で、ディオが指摘を飛ばしてくる。
彼の言う通りだった。危ないのは、ガムテだけではないのだ。
エリスもまた、早く治療してやらなければ命が危ない。
だから、項垂れている暇はないのだ。
ディオの言葉を予想して、とりあえず今差し当たってするべきことは───



「お前が今やるべきは、地に頭をこすりつけて、このディオの慈悲を乞うこと───」
「エリス達を治してやってくだせぇディオ様」
「早いなお前」




【一日目/日中/B-8 海岸線】

【うずまきナルト@NARUTO-少年編-】
[状態]:チャクラ消費(大)、気絶
[装備]:自来也の封印札。
[道具]:基本支給品×3、煙玉×2@NARUTO、ファウードの回復液@金色のガッシュ!!、
城之内君の時の魔術師@DM、エニグマの紙×3@ジョジョの奇妙な冒険、
マニッシュ・ボーイの首輪
[思考・状況]
基本方針:乃亜の言う事には従わない。
0:──────
1: シカマルを探す。
2: 仲間を守る。
3:殺し合いを止める方法を探す。
4: 逃げて行ったおにぎり頭を探す。
5:ドラゴンボールってのは……よくわかんねーってばよ。
6:セリム、我愛羅…すまねぇ
[備考]
※螺旋丸習得後、サスケ奪還編直前より参戦です。
※セリム・エリスと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました。

【エリス・ボレアス・グレイラット@無職転生 ~異世界行ったら本気だす~】
[状態]:疲労(絶大)、全身にダメージ(絶大)、精神疲労(大)、気絶、インクルシオと同化(大)、決意
沙都子とメリュジーヌに対する好感度(高め)、シュライバーに対する恐怖
[装備]:旅の衣装、和道一文字@ONE PIECE、悪鬼纏身インクルシオ@アカメが斬る!(相性高め)
[道具]:基本支給品一式、賢者の石(憤怒)@鋼の錬金術師
[思考・状況]
基本方針:ナルト達を守って、乃亜に勝って、ルーデウスにもう一度会いに行く。
0:────
1:もう殺し合いには絶対に乗らない。ナルト達を守る。命に代えても。
2:首輪と脱出方法を探す。もう、ルーデウスには頼れないから。
3:殺人はルーデウスが悲しむから、半殺しで済ますわ!(相手が強大ならその限りではない)
4:ドラゴンボールの話は頭の中に入れておくわ。悟空って奴から直接話を聞くまではね。
5:私の家周りは、沙都子達に任せておくわ。あの子達の姿を騙ってる奴は許さない。
6:ガムテの少年(ガムテ)とリボンの少女(エスター)は危険人物ね。斬っておきたいわ
[備考]
※参戦時期は、デッドエンド結成(及び、1年以上経過)~ミリス神聖国に到着までの間
※ルーデウスが参加していない可能性について、一ミリも考えていないです
※ナルト、セリムと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました
※沙都子から、梨花達と遭遇しそうなエリアは散策済みでルーデウスは居なかったと伝えられています。
例としてはG-2の港やI・R・T周辺など。
※インクルシオとの適合率が向上しました。エリスの精神に合わせて進化を行います。


【勇者ニケ@魔法陣グルグル】
[状態]:全身にダメージ(中)、疲労(大)、仮面の者(アクルトゥルカ)
[装備]:アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険、ヴライの仮面@うたわれるもの 二人の白皇
[道具]:基本支給品、丸太@彼岸島 48日後…、シャベル@現地調達、約束された勝利の剣@Fate/Grand Order、龍亞のD・ボード@遊戯王5D's、沙耶香の首輪
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗っちゃダメだろ常識的に考えて…
0:やっぱ、この島最悪だわ。取り合えずイリヤ達の目が覚めるまで隠れるか…
1:とりあえず仲間を集める。ナルトとエリスに同行する。
2:クロエを探して病状を聞き出す。
3:マヤ、おじゃる、銀ちゃん………
4:DBの事は俺の考えが間違ってるとは思わないけど、あんまり後ろ向きになっても仕方ないか。
5:取り合えずアヌビスの奴は大人しくさせられそうだな……
6:フランはあいつ本当に大丈夫なのか?
※四大精霊王と契約後より参戦です。
※アヌビス神と支給品の自己強制証明により契約を交わしました。条件は以上です。
ニケに協力する。
ニケが許可を出さない限り攻撃は峰打ちに留める。
契約有効期間はニケが生存している間。
※アヌビス神は能力が制限されており、原作のような肉体を支配する場合は使用者の同意が必要です。支配された場合も、その使用者の精神が拒否すれば解除されます。
『強さの学習』『斬るものの選別』は問題なく使用可能です。
※アヌビス神は所有者以外にも、スタンドとしてのヴィジョンが視認可能で、会話も可能です。
※仮面(アクルカ)を装着した事で仮面の者となりました。仮面はもう外れません。

【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]顔面にダメージ(中)、精神的疲労(中)、疲労(中)、怒り、メリュジーヌに恐怖、強い屈辱(極大)、乃亜やメリュジーヌに対する強い殺意
[装備]『黄金体験』のスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険、
こらしめバンド@ドラえもん、バシルーラの杖[残り回数1回]@トルネコの大冒険3
[道具]基本支給品、光の護封剣@遊戯王DM
[思考・状況]
基本方針:手段を問わず生き残る。優勝か脱出かは問わない。
0:馬鹿共を利用し生き残る。さっさと頭の輪は言いくるめて外させたい。
1:メリュジーヌが現れた場合はナルト達を見捨ててさっさと逃げる。
2:先ほどの金髪の痴女やメリュジーヌに警戒。奴らは絶対に許さない。
3:ゴールドエクスペリエンスか…気に入った。
4:キウルの不死の化け物の話に嫌悪感。
5:海が弱点の参加者でもいるのか?
6:ドロテアとは今はもうあまり会いたくない。
[備考]
※参戦時期はダニーを殺した後


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:全身にダメージ(中)、疲労(大)、決意と覚悟、気絶
[装備]:カレイドステッキ・サファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1、雪華綺晶の支給品×1、クラスカード『バーサーカー』(午後まで使用不能、『アサシン』、『セイバー』(夕方まで使用不能)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、
タイム風呂敷(残り四回、夕方まで使用不能)@ドラえもん
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから脱出して───
0:皆を助けるために、目の前の人たちと協力したい。
1:雪華綺晶ちゃん……。
2:美遊、クロ…一体どうなってるの……ワケ分かんないよぉ……
3:殺し合いを止める。まず紗寿叶さん達を助けに行きたい。
4:サファイアを守る。
5:美遊、ほんとうに……
[備考]
※ドライ!!!四巻以降から参戦です。
※雪華綺晶と媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。

※クラスカードは一度使用すると二時間使用不能となります。
※バーサーカー夢幻召喚時の十二の試練のストックは残り2つです。これは回復しません。
のび太、ニンフ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました。





          ■     ■     ■




かつて、始めて忍者をブッ殺すべく相対した自分の父(パパ)も。
こんな気分だったのだろうか。ふと、ガムテはらしくなくそんな事を考えた。
恐怖は一欠けらほどもなかった。見切れれば殺れる、見切れねば死ぬ。ただそれだけ。
ならば怯える要素など欠片ほどもない。
物理的な圧力すら感じる威圧感を放つ魔女を前に、ガムテの心はどこかでも穏やかに。
何時でも疾走(はし)れる態勢で、魔女の前に立つ。



「………そう、貴方だけ逃げなかったの。まぁ…逃げた所で結果は同じか」



肉体は元より黒のゴシックドレスすら元通りの姿で、リーゼロッテが言う。
何方も常人なら死んでいる損傷を負った二人だが、現在の姿は哀しい程対照的だった。
破けほつれた人形の様な有様のガムテ。傷一つないリーゼロッテ。
勝敗など最初から論ずるまでも無い。結果は同じという言葉は、そういう意味だ。
勝とうと敗けようと、ガムテの命はここで潰える。もう絶対に助からない。
それでも刃を握って歯向かおうとするガムテの姿は、愚かを通り越し哀れですらあった。



「言ってろ年増(ババア)二号。ゲロ吐いてのたうち回らせてやっから」



そう言ってガムテは上体を沈み込ませ、構えを取る。
安全装置を外した拳銃の様な、引き絞られた弓矢の様な、鋭利な殺意がそこにはあった。
対するリーゼロッテは構えない。虫が何をしようと自分には痛痒にならぬと確信している。
だから構える代わりに、彼女は問いを投げた。「どうして、そこまでするの?」と。



「聞かなくても分かるわ。貴方、マーダーだったんでしょう?
それなのに何であの子達を助けようとするの?最後に善い子ぶりたくなったのかしら?」



そんな事しても、貴方は地獄へ行くわ。
嘲笑と、侮蔑が入り混じった声と表情で、リーゼロッテはそう告げた。
何をやった所でお前の罪が消えることは無い。
否、人類全てが、自分の人類鏖殺という大望以外でその罪を雪ぐ事はできない。
それこそ、今のリーゼロッテが掲げる信仰だった。



「───はっ!超嘲笑(ウケ)るゥ~w!
的外れな上に主語がでけェよこの年増(ババア)二号!」



ゲラゲラゲラ。ゲラゲラゲラ。
残った方の腕で、腹を抱えてガムテは即、爆笑した。
どこにそんな力を残しているのか、どうやって笑っているか。
怒りよりも先にそんな疑問が沸くほど重症の身体で少年は笑い続ける。
そして、丁度三十秒がたった頃にぴたりと笑うのをやめて、そしてリーゼロッテに告げた。



「年増(ババア)の次にあいつらもブッ殺す。単なる順番だ。
あと…一号といいテメェら加齢臭(クセ)ェんだよ、子供大人(フリークス)がァ!」




今のガムテは王の責務から解き放たれている。
これは最早、ガムテによるガムテの為の殺しだ。
だから、殺す相手は選ぶ。ガムテは大義の為ならば割れた子供でも殺せるけれど。
普通の幸せに生きられた子供も勿論抹殺対象ではあるけれど。
それでも目の前の年増(ババア)の様な主語のデカい子供大人(フリークス)こそ。
ガムテが最も嫌いで、殺したい相手だった。だから殺す。ただ、それだけの話だった。



「……そう、存外つまらない理由だったわね」



嘲笑を嘲笑で返されて、リーゼロッテの顔に既に愉悦は無かった。
かといって怒りもまた、ない。こいつはここで自分が殺すと言う。
今すぐ死ぬ虫けらに腹を立てる事はないという、冷徹な態度だけがそこにあった。
腕を左右に少しだけ広げ構えを取る事もなく、リーゼロッテは囁く様に開戦の号砲を綴る。



「来なさい。人類よりも先に貴方の罪を雪いであげるわ───死を以てね」



その言葉が言い終わるよりも早く、ガムテは地を蹴った。
最早言葉は要らない。最後の時を迎えるまで踊るのみ。
最も憎み最も尊敬した父親(パパ)のように。
いざ、とだけ口に出して、明日なき暴走へ身を委ねる。
ここからが、殺し屋ガムテの全てを賭けた、本気(マジ)の本気(マジ)だ。




          ■     ■     ■



敵からはみずぼらしい程の魔力しか感じない。
人間を超えた身体能力を見れば何某かの外法に手を染めているのは明らかだが。
魔道を極めたリーゼロッテからすれば鼻で笑える程度の代物でしかない。
そう敵を評価すると、リーゼロッテはつまらなそうに指を弾いた。
嫋やかな指がすり合わされると共に、火花が生まれる。
そしてその火花は形を変え、数十の食人蟲へと存在すら変貌させる。



「醜悪(キッショ)!」



ガムテの肉を食いちぎろうと迫る蟲たちのレギオンを見て、思わず悪罵を吐く。
しかし、藤木茂が竦んだその光景は、ガムテにとってただ不快感を与えるだけに留まり。
虫たちが到達するよりも早く、ガムテは道に沿って設置されていたポストの前へ駆ける。
同時に強化された肉体と感覚で、射抜くべき敵手の位置を割り出し。



────極道技巧(スキル)



ポストと虫たちの正面に位置取り、短刀を袖に引っ込めて握りこぶしを作る。
薬によって超人にまで上り詰めた膂力を残った腕に籠め、歯を食いしばり。
そして、生まれたエネルギーの全てを、ポストへと解き放つ。



────箱庭覗聴(ブラックボックス・プロビデンス)!
────剛拳巨砲主義(ごうけんきょほうしゅぎ)!




正しく巨砲が唸りを上げた様に轟音が響き渡り。
凄まじい運動エネルギーを叩きつけられたポストが一瞬で支柱ごと空へと打ちあがる。
その軌道の先に居るのは、リーゼロッテの生み出した蟲達だ。
突如として発生した砲弾の前に成すすべなく、発生した蟲の何割かが殲滅される。
そして、ガムテの攻勢はそれだけに留まらない。
ポストの次は看板、その次はナルトとの戦闘で発生した瓦礫。
次々と巨砲の砲弾として打ち出し、虫たちを撃墜していく。



────極道技巧(スキル)



ガムテの第六感が早期警戒を呼び掛ける。
今直ぐに攻勢を止めなければ、死滅(くたば)ると。
その指令が下った瞬間攻勢を中断し、ガムテは身を翻す。


───妖精通信(ムシノシラセ)


0.1秒で加速を行い離脱すると、その一秒後に背後で爆炎が上がった。
先ほどまでガムテが立っていた場所だ。あと一秒留まっていたら炭になっていただろう。
めまぐるしく状況を認識し、思考しながら駆けるガムテを、尚も蟲達が追う。
物量も破壊力も、残酷に過ぎる戦力差がそこにあった。
ガムテはリーゼロッテに近づく事すらできない。
ガムテはリーゼロッテの攻撃を受ければ、それで終わる。
だがリーゼロッテはガムテの攻撃を受けても何も問題なく復活する。
勝ち目など皆無。結末の決まりきったカードだ。
しかし、それでもガムテはどこまでも大地を駆ける。



────極道技巧(スキル)



駆けた先にあるのは、先ほど地面に落とした日本(ポン)刀。
それが位置する一歩手前の距離で、足から生えた関の短刀を地面へ突き刺し軸足とする。
再びを歯を食いしばり、残った片足で僅かに横たわる日本刀を浮かせて。
そして───日本刀の柄を目掛けて、引き金を引いた。



───蹴球地獄変(ビバ・ラ・ファンタジスタ)!

「な………!?」



リーゼロッテの表情が、ここで初めて倦怠以外の物へと変わる。
ガムテが起こしたのは、それに足る不条理だった。
蹴り上げられた大業物───閻魔はその瞬間サッカーボールへと姿を変えたのだ。
彗星の如き速度。右回りに弧を描く軌道で突き進み、放たれる覇気は蟲達を殲滅する。
否、被害はそれだけに止まらない。蟲の群れに閻魔は裁きを下し、さらに突き進む。
決裁の対象は、蟲共を生み出した元凶。穢れた姦淫の魔女をおいて他にない。



「ちっ……」



不快そうに舌打ちをして、リーゼロッテはその手の爪を伸ばして刃を払う。
打ち払われた刃は運動エネルギーの八割を保ったまま、後方へと飛んでいってしまう。
あれだけは受ければほんのちょっぴり煩わしい。
自身の再生能力でも、あの刀からうけた傷だけは再生に時間がかかった。
まぁ再生に少し時間を掛けた所で、だから何だと言う話ではあるが。
雑魚に煩わしい思いをさせられるのも不愉快だ。
そう考え、彼女にしては珍しく防御の姿勢を取った。だが。




「───っ!?」



リーゼロッテの片腕が切り落とされる。
切り落とされた腕に目をやると、視界の端で何かが高速で宙を突き進んでいるのが見えた。
先ほどいなしたはずの日本刀がリーゼロッテの元へ舞い戻り切り裂いたのだ。
馬鹿な。リーゼロッテは驚愕する。
魔力は感じない。つまり、魔術によって引き起こされた現象ではないと断言できる。
では、あの少年は自分がどう初撃の刃を弾くか計算した上で蹴ったとでも言うのか?
弾かれた上でなお、この身を切り裂けるように刀を飛ばしたのか?魔術も用いず?



「認識を改めましょうか」



目の前の少年は、強い。
フリーレンや孫悟空の様な、自身の敵として対処するに値する相手だ。
魔術に精通している訳でもないのにここまでの芸当を可能とする技巧。
人間としては、正しく天才と評する他ない。
そう。あくまで、人間としては。



「───幻燈結界(ファンタズマゴリア)」



そして、人間だからこそ、勝てない。
愛を説く様に唇の花弁を滑らせ、呪いの言葉を綴る。
敵として認めたからこそ、容赦なく、遊びも無く詰めにかかる。
幻燈結界(ファンタズマゴリア)の疑似展開。
リーゼロッテが築き上げた、魔道の最奥。
乃亜のハンデにより完全開放したそれには遠く及ばない物の、ただの人間を殺すには充分。
フリーレンの様に同じく魔道の研鑽を数百年積み重ねた魔術師でもない。
孫悟空の様に桁外れのパワーと才覚で強引に突破できるだけの超人でもない。
達人なれど人間であるガムテは、此処で終わる。



「はい、お終い」



からん、と。
眼前のガムテが、握っていた日本刀を取り落とす。
リーゼロッテまで十メートル程の位置で、完全に歩みが止まる。
終わったと、リーゼロッテは油断も慢心も無く、純然たる事実として。
戦闘の終結を確信した。後はもう、手を下すまでも無い。
もう二度と醒めぬ眠りについた少年に、労うように声を掛けた。
どうか死ぬまで悪(よ)い夢を─────と。





           ■     ■     ■




今日も俺は、殺され続ける。
パパがいなくなって怖くなったママに、心を殺され続ける。
殴られ、蹴られ、焼かれ、チンチンも切り落とされて。ごみの様に扱われる。
それはとても辛くて、苦しくて、何も分からなくて。
そして、何の救済(すくい)もなかった。
俺に、俺達に手を差し伸べてくれる正義のヒーローなんていなかった。
いや、正義のヒーローもママと同じ側だ。あいつらだって、俺達を殺す。
これまでも忍者に大勢の仲間が殺された。
オレ達は人を殺しただけなのに。殺さずには生きられないだけなのに。

他人に殺された心は、他人を殺さなきゃ正気じゃいられないだけなのに。
オレ達は、そんな生き物になっちまっただけなのに。
今日もオレ達は殺され続ける。ヒーローに、忍者に、ママに。
でも、それはいう程怖くはない。だってそれはオレにとっての当たり前だから。
オレ達はいつだって運命に嫌われてきたから。慣れてる。
そうだ、そんな事よりもっと怖いのは。



「───舞踏鳥(プリマ)、黄金球(バロンドール)……」



今、俺の目の前には仲間達がいた。
一番前に三狂(トップスリー)の舞踏鳥(プリマ)と黄金球(バロンドール)。
その後ろに司令(オーダー)、攻手(アタッカー)、毒(ブス)、天使(アンジュ)。
美容師(ビュティシャン)、偶像崇拝(アイドル)、偉大(グレート)、色男(カサノバ)。
拳闘大帝(バウンフォーバウンド)、ユリリリ、勇者、姫………
オレをリーダーって崇めてくれてる、仲間達がじっと俺を見ていた。
その視線が、今のオレにとって一番怖い悪夢だった。
だって、だってオレは────、



「服薬(キメ)てしまったんだね…ガムテ」



後ろを振り返る。
そこには大臣と、死んでいった仲間達がいた。
自転車王(アルカンシェル)、大名優(アカデミー)。
菓子姫様(パティシエール)喰帝(フードファイター)
他にも忍者に殺されたり、オレが殺してきた仲間達もまた、じっとオレを見ていた。
みんなの前で、大臣が言う。俺が何をやったかを。



「地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)二枚服用(ギメ)」



そうだ。大臣の言う通り。
今、オレの目の前は真っ赤に染まっている。
怪獣医(ドクター・モンスター)に教えられた悪魔強化(オーバードーズ)。
死んでも殺したいと思った相手が現れたらヤれと言われてた最後の手段(ジョーカー)。
忍者に死にかけていたオレは、それを使って復活した。



「二枚服薬(ギメ)は肉体に偉大(パ)ない強化を与える…でも、その反動は──」
「うん大臣………俺はもう、あと一分もしない内に死ぬ」




使わなければ、間違いなくあのまま死んでいた。
でも、それは言い訳にはならない。
皆、俺に託してくれたのに。オレの為に生きて、死んで行ってくれたのに。
オレはこの島で、何も成せずに死ぬんだ。
そして舞踏鳥(プリマ)達を置いて行っちまう。



「ごめんな…大臣、ごめんな舞踏鳥(プリマ)、ごめん…ごめんよ、皆……」



悔しかった。
哀しかった。
怖かった。
でも、もうオレにはどうにもならない。
俯いて、仲間達に詫びる事しかできない。
詫びて、詫びて、詫びて───詫び続けて、やがて大臣がオレの顔のガムテに触れた。
そして、優しく言ってくる。
オレはいつだって、仲間の為に生きてくれたって。だから、もういいんだって。
そう言って、オレの顔のガムテープを外して───



「あとは、君だけの為に戦え───僕らの殺人(コロシ)の王子様!!」



そう、大臣が言うのと同時に。
オレが返事を返すよりも早く、誰かに抱きしめられる。
肩に巨大(デカ)い手が添えられる。
それが誰かは、振り返らなくても分かった。



「安心しろってガムテェ~!俺達ずっとお前の事は親友(マブ)だと思ってっから!
ここにゃお前を責める奴なんざ皆無(イネ)ェ!水臭い事言わねぇで偶には脳筋で行け!」
「そうよガムテ。私達貴方の分まで精一杯殺すから……だから何も心配しないで。
貴方は今迄私達の為に頑張っててくれた…!だから、これまでの分少し早く待っていて」



私達、貴方の分まで精一杯殺して、精一杯生きるから。
後悔なんて、しないから。
だから、だから貴方も──────



「後悔のしない、最後で最期の“悪足掻き”を───見せて頂戴」



それを聞いて。
意識が、急に冴えていく。
身体の奥から、何かが噴きあがっていく。
……そうだな。このまま終わる何て虚無(シャバ)いよな。
どうせなら屑で終わるなら、星屑みたいに殺ってやろう。
あぁ、始めてだ。こんなにも…こんなにも病って殺りたい気分になったのは!
勢いのまま、舞踏鳥(プリマ)と唇を合わせる。
そしたら、舞踏鳥(プリマ)は俺の舌に歯を立てて、“何時もの“をやってくれた。
がりっ、口の中が音を立てる。



「あぁ───殺ってくるぜ」



舌から走る痛みに心底(マジ)で感謝しながら。
オレは夢から醒めて、最後の殺人(コロシ)へ向かう。




           ■     ■     ■




その瞬間、悪夢に囚われたはずのガムテが目を開いた瞬間。
リーゼロッテ・ヴェルクマイスターはニケ達との邂逅から一番の驚愕を覚えた。
目を見開き、瞠目するのを隠せない。
まさか、不完全とは言えただの人間が幻燈結界を打ち破ったのか?



「────不愉快ね、貴方」



あり得ない。フリーレンの様な同じく魔道の高みにいる相手ならば兎も角。
自分の幻燈結界がただの人間に破られるなど、あってはならないのだ。
いささかプライドを侵害され、リーゼロッテの顔が怒りに歪む。
いい。この際どうやって退けたのかは問わない。
ただ殺す。人の身で偉業を成した誇りを抱いて死ぬがいい。
冷たい殺意に突き動かされるままに、リーゼロッテはガムテへと掌を指向。
そして、ガムテの肉を削り飛ばせるだけの魔力を集める。
この子供はすばしっこい。単発の炎では躱され可能性が高い。それ故の連射。
無粋な物量で嬲り殺し、足が止まった所を消し飛ばす。単純故に対処しにくい一手だ。
だが……リーゼロッテは、極道を知らなかった。




────視えるぞ魔女ッ!!!




ガムテにとっては、リーゼロッテの幻覚を敗れた理由などどうでもよかった。
乃亜のハンデに依るものかもしれない。
薬の覚醒作用に依るものかもしれない。
それとも彼が隠し持っていた短刀の影響かもしれない。
どちらにせよガムテがそれを理解する術はないのだ。
今の彼にあるのはただ刺す。刺して殺す、それだけだ。
だから、彼は駆け出す。
その疾走に先ほどまでの迷いは存在しない。
それ故に、隻脚ながらさっきまでとは比べ物にならない速さだった。
リーゼロッテをして、早いと感じる程の速度。
一発の砲弾となったガムテが、瞬きの間に距離を詰める。




「死になさい」



だから、どうした。
単に早いゴキブリ程度に討ち取られるほどリーゼロッテ・ヴェルクマイスターは甘くない。
早い程度の相手に討ち取られるならば。
禁書目録聖省の討伐舞台は当の昔に彼女を討滅できていただろう。
ガムテの刃が届くまで数メートル。しかしその数メートルは永遠が如き距離だ。
決して届かない断絶。ガムテを蜂の巣へと変える殺戮距離(キル・ゾーン)。
それを前にして、ガムテは。




────極道技巧(スキル)





迷いなく踏み込んだ。
玉砕がお望みか。そう吐き捨てながらリーゼロッテはガムテに照準を付けた。
これで発射すれば終わりだ。一秒かからずガムテの五体は跡形もなく吹き飛ぶ。
しかし───




────夢幻燦顕視(むげんさんけんし)




その瞬間、リーゼロッテの眼前からガムテの姿が掻き消えた。
代わりに現れるのは美しい湖岸と白鳥の群れ。
純白の翼が、漆黒の女たるリーゼロッテの視界を埋め尽くす。
突如として発生した怪現象に、炎の魔女を困惑が襲う。
一体何だこれは?幻覚?魔術に依る物か?いや違う。
この現象から魔力は感じ取れない。では一体、何が起きている?これは何だ?
魔道に傾倒し、魔術をこそ常識だと捉えている彼女だからこそ、正当に辿り着けない。
まさかこの現象が極限域まで高められた技術に依る物だとは思えない。




────極道技巧(スキル)




そして、リーゼロッテが思考に囚われた一瞬、その一瞬を駆け抜け。
遂に、ガムテがリーゼロッテの懐へとたどり着く。
永遠にも思えた距離を、踏破して。リーゼロッテの首筋に刃を奔らせる。




「残念賞ね」



しかし、届かない。
リーゼロッテの指と伸ばした爪に絡め取られ、受け止められる。
如何な二枚服薬(ギメ)と言えど、純粋な膂力ではリーゼロッテには敵わない。
そのままリーゼロッテがぶぅんと手を振うと、ガムテの手から刀は飛んでいってしまう。
背後で落ちた刀が音を立てるのを聞きながら、魔女は殺し屋にトドメを刺さんと───




「信じてたぜ」

「強靭(つえ)ぇ年増(ババア)なら見逃さねぇってな」



ガムテの袖から、短刀が現れる。
リーゼロッテはこの瞬間、次の一撃は躱せないと直感した。
だが、問題はない。どうせ、目の前の小僧では自分を殺す事は出来ない。
一太刀入れた所で、内包する虚無の石が瞬きの間に治してしまうのだから。
数百年間積み重ねてきた、強者の傲慢。
それが脳裏を過ったが故に、彼女は一手遅れた。
それを愚かとは断じない。愚弄(ナメ)たりもしない。ただガムテは突き進む。
夢幻燦顕視を発動した時にアンプルはブッ刺した。遂行に対する障害は絶無。
全ての条件はクリアーされた。この一刀に、己の生涯全てを賭す────!!




────極道技巧(スキル)




バビロンの大淫婦よ、知るがいい。
これが────人を殺すと言うことだ。




────極道技巧・"?(ヤマイダレ)




ずぶり、と肉を裂く音を立てて。
寸分の狂いなく、短刀(ドス)は。
破戒すべき全ての符(ルール・ブレイカー)は。
リーゼロッテ・ヴェルクマイスターの臓腑に突き立てられた。
それに伴い、休息にガムテの意識が白く染まっていく。
薬の効果が切れ、約束された破滅がやって来たのだ。
だけれど、その時のガムテの心は穏やかだった。



「ア、ハ……」



僅かばかりの達成感から軽く笑って。
最後に想起するのは自分が助けた子供達の事だった。
ガムテの敵たる、幸せに生きられた子供達。
狂っちまった仲間に必死に手を差し伸べて、救い出した子供達。
自分にすら手を差し伸べようとした子供達。
もしかしたら自分が狂いきる前に出会っていたら何かが変わったかもしれない、子供達。
そして、ガムテと同じ割れた子供としての素質を持ちながら、そうはならなかった。
割れた子供にはならなかった忍者に、思いを馳せて。
最期の言葉を遺す。




「よかったな………」



そうして、最後に輝村照としての心を零して。
割れた子供達の王は、冠を降ろし。
眠りについたその顔は、無念と安堵が入り混じった年相応の少年の寝顔の様だった。




【輝村照(ガムテ)@忍者と極道 死亡】
【リーゼロッテ ドミノ100ポイント獲得】




          ■     ■     ■




刃を突き立てられた瞬間から、異変は訪れた。
通常リーゼロッテ・ヴェルクマイスターに刀傷など何の痛痒にもならない。
彼女が体内に内包する虚無の石が、たちどころに治してしまうためだ。
だが、この時は違った。
その一刀を差し込まれた瞬間、ぶつり、と。
己の身体の内側で、重要な何かが断ち切られた感覚に襲われたのだ。



「あ…ぅ゛…………?」



呻き声が漏れる。
例え顔の半分を消し飛ばされようが、全身を焼かれようが。
全く動じなかった筈の、炎の魔女の表情が歪む。
久しく忘れていた苦悶という概念を、肉体が思い出したのだ。



「ああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!」



リーゼロッテの身体に起きた異変は、実に単純。
彼女の肉体と、虚無の石のリンクが強制的に初期化されたのだ。
ガムテが彼女の身体に突き立てた、破戒すべき全ての符(ルール・ブレイカー)によって。
三千年の神秘を内包した虚無の石は、地球上の力では決して破壊し得ないと謳われている。
それ故に、神域の魔女メディアが誇る宝具でも破壊する事は叶わなかった。
だが虚無の石の破壊は叶わずとも、リーゼロッテ・ヴェルクマイスターは別だ。
虚無の石と、リーゼロッテの接続を切り離す。
リーゼロッテ・ヴェルクマイスターを、リゼット・ヴェルトールの肉体へと戻す。
事情を理解して立てた策ではない。直感的な物だったがしかし。
ガムテが選んだ選択は、リーゼロッテにとってこれ以上ないほど効果的な一手だった。



「う、ぐぅ……あああッ!!」



憤怒の表情で、腹に突き立てられた短剣をへし折る。
中途でへし折られた短剣が霧散するが、再生はこれまでに比べ牛歩の速さだ。
最早同化したと言ってもいい虚無の石との接続が、完全に初期化されていた。
もし虚無の石を体内に取り込んでから百年程度しか経っていなければ。
そのまま殺しの王子は、姦淫の魔女を討ち取る事に成功していたかもしれない。




「厄介な…ことを………ッ!」



怒りのままに、ガムテの亡骸に向けて業火を放つ。
焔に包まれたガムテの遺体はごうごうを音を立てて焼けていくが、気分は晴れない。
むしろ、勝ち逃げをされた気分で実に不快だった。
リゼットだった頃とは違い、今のリーゼロッテは熟達した魔術師である事が唯一の救いか。
まず間違いなく途切れた接続を完全に修復するのは、丸一日はかかる。
その間は無尽蔵の魔力は期待できず、肉体の治癒速度もかなり落ちるだろうが。
それでも今のリーゼロッテの魔術の腕ならば、数時間とかからず虚無の石との応急処置的な接続回復は叶うだろう。



「まったく…油断、したわね」



最低の気分で毒づいて、身体を起こす。
さっきの一団への追撃は難しいだろう。
今は、まず虚無の石との接続の回復を優先しなくてはならない。
優先しなくてはならない…のだが。
そんな彼女の前に、静かに佇む影が一つあった。



「………何のつもり?お前のせいでこうなっている様なものなのだけれど」
「おいおい、お前が言えた義理じゃねーだろ」



存在自体を感じ取ったのは、一度ガムテに炎の中に叩き込まれてからだった。
自分が襲おうとした子供達を逃がしたのも、この男の仕業で相違ないだろう。
この男がいなければ、自分はあの子供達を皆殺しにできたかもしれない。
自分の背後で高みの見物を決め、背中を狙っていたであろうこの男がいなければ。
そうすれば、こんな不様は晒していなかったかもしれないのに。



「それで、どうするの?強姦魔みたいにこそこそ狙っていたみたいだけど、私を殺す?」
「人聞きが悪いな。むしろ殺すつもりだったのはお前の方だろ?」



現れたのは青いコートと紅い瞳が特徴的な、ブロンドの少年。
気配だけで分かった。彼は人ではない。
虚無の石に近い力の強大さと、禍々しさをリーゼロッテは看破していた。
少年はコートのポケットに手を突っ込み、にこやかな表情で語り掛けてくる。



「やり合う気ならそれでもいいが……今そうなったら困るのはお前の方じゃねーのか」



実際の所、お前に興味は余りないんだ。
そう言う点で言えば、さっき飛ばしたコメディアンのガキの方が面白そうだ。
あいつらのお陰で、お前がさっき殺したガキの曲芸も見られたしな。
ブロンドの髪をかき上げながら少年は芝居がかった所作でそう言葉を並べ。
最後にリーゼロッテにこう告げた。



「なに、少し無駄話でもしていこうと思ってさ。
折角お前も今は大人しくせざるえないみたいだし」




先約があるから、手短にな。
勿論、やり合うならそれでも構わない。
そう言って、少年は人を食った笑みを浮かべて、リーゼロッテの返事を待つ。
そのまま暫し時は流れ、やがてリーゼロッテは脱力したように溜息を漏らし、問う。



「……お前は一体“何”だ?」



人間ではない。確信を以て言える。
だが、邪精霊の様にも思えない。
では目の前の少年は一体なんであるのか?
話をするにしても、戦うにしても、それを明らかにさせておきたかった。
そんな考えからの問いかけに、くっくっと問われた少年は含み笑いを漏らし。
その後に返答を返した。“彼”の存在を示す答えを。



「さぁな?当ててみな」

「聞かなくても───お前はもう、俺の名前を知ってる」




それが、二人の“世界の敵”が邂逅を成した瞬間となった。




【一日目/日中/C-5 東京タワー前】

【絶望王(ブラック)@血界戦線(アニメ版)】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中 時間経過で小まで回復)、空腹
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(フラン、ジャック)
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いに乗る。
0:シカマル達を探しに行く。
1:気ままに殺す。
2:魔神王とは“四度目”はない。
3:気ままに生かす。つまりは好きにやる。
4:シカマル達が、結果を出せば───、
5:江戸川コナンは出会うまで生き伸びてたら、な。
6:シカマルと逸れたが…さて、どうしたもんかね。
[備考]
※ゲームが破綻しない程度に制限がかけられています。
※参戦時期はアニメ四話。
※エリアの境界線に認識阻害の結界が展開されているのに気づきました。

【リーゼロッテ・ヴェルクマイスター@11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(小)、虚無の石との接続不良(大 時間経過で回復)、再生能力低下、魔力出力減少
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、羽蛾のランドセルと基本支給品、寄生虫パラサイド@遊戯王デュエルモンスターズ(使用不可)
[思考・状況]基本方針:優勝する。
0:虚無の石との接続を 回復させる。
1:野比のび太、フリーレンは必ず苦しめて殺す。
2:ヴェラード、私は……。
3:目の前の少年に対処する。
[備考]
※参戦時期は皐月駆との交戦直前です。
※不死性及び、能力に制限が掛かっています。
※幻燈結界の制限について。
 発動までに多量の魔力消費と長時間の溜めが必要、更に効果範囲も縮小されています(本人確認済み)。実質、連発不可。
 具体的には一度発動すると、12時間使用不可(フリーレン戦から数えて、夕方まで使用不可)
 発動後、一定時間の経過で強制解除されます(本人確認済)。
※虚無の石との接続が初期化されました。時間経過や支給品によって回復しますが無尽蔵の魔力の制限と、再生能力が下落しています。

【自来也の封印札@-NARUTO-】
自来也がカカシに渡した九尾の力が漏れだした時の為の封印札。
額に張り付ければ即座に九尾のチャクラを抑え込むことができる。
劇中では二尾になったナルトを数秒で鎮静化させた。







126:次回「城之内死す」デュエルスタンバイ! 投下順に読む 128:迷子になった女の子
時系列順に読む
125:世界で一番暑い夏 うずまきナルト 129:SYSTEM
エリス・ボレアス・グレイラッド
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
ディオ・ブランドー
勇者ニケ
092:さすらいの卑怯者 リーゼロッテ・ヴェルクマイスター 130:終末論
122:人は大抵、何かの途中で終わってしまうものだけど/夢は夢で終われない 絶望王
125:世界で一番暑い夏 輝村照(ガムテ) GAME OVER

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