神は、いつも沈黙している。
なぜ民を救わぬのか、なぜ苦痛を強いるのか、なぜ貧困を蔓延らせるのか。
あらゆる声と祈りが星空に満ちている。しかし神とはそれらを聞いてなお、沈黙するものである。
ルーガルーはふとそんなことを思いながら、黄色のフィルメザフレームに向けていたショットガンを静かに降ろした。
なぜ民を救わぬのか、なぜ苦痛を強いるのか、なぜ貧困を蔓延らせるのか。
あらゆる声と祈りが星空に満ちている。しかし神とはそれらを聞いてなお、沈黙するものである。
ルーガルーはふとそんなことを思いながら、黄色のフィルメザフレームに向けていたショットガンを静かに降ろした。
『………なんのつもりだ? 情けをかけたつもりか?』
雑音交じりの男の声は怒りを孕んでいる。
エルカノが拾い上げた原石、類稀な操縦適性を見込まれ何度も前線を任された男、グンケイ。
武装もニードルガンとニードルミサイル、フレームはフィルメザというエルカノ色の強い人材。
彼は正義感の強い青年だった。正義のために人殺しを躊躇わず、正義のために邪道に憤る。そんな青年だった。
その正義感が味方に銃口を向けさせた時、なんの躊躇もなく引き金を引くほどに、その正義感は強かった。
その正義感が複数の独断行動に加えて現場での血生臭い粛清を是としたとなれば、いくら未来があろうとも、その行動は容認することはできない。
エルカノが拾い上げた原石、類稀な操縦適性を見込まれ何度も前線を任された男、グンケイ。
武装もニードルガンとニードルミサイル、フレームはフィルメザというエルカノ色の強い人材。
彼は正義感の強い青年だった。正義のために人殺しを躊躇わず、正義のために邪道に憤る。そんな青年だった。
その正義感が味方に銃口を向けさせた時、なんの躊躇もなく引き金を引くほどに、その正義感は強かった。
その正義感が複数の独断行動に加えて現場での血生臭い粛清を是としたとなれば、いくら未来があろうとも、その行動は容認することはできない。
「つもりではありません。情けをかけているんです」
静かに、ルーガルーは告げる。
ボナデア砂丘の砂が風に舞い、装甲とか擦れ合ってちりちりと音を立てている。
横たわった武装採掘艦ストライダーの残骸が陽光を遮り、影の中でフィルメーザの複列カメラアイがぼうっと光っていた。
両足は損傷し両手は武器ごと破壊され、両肩のニードルミサイルも動作しないほどに破壊され、大破寸前の機体は跪いている。
それを、ルーガルーは見下ろしている。軽量逆関節ACのソラフィデが、黄色のフィルメザをじっと見つめている。
ボナデア砂丘の砂が風に舞い、装甲とか擦れ合ってちりちりと音を立てている。
横たわった武装採掘艦ストライダーの残骸が陽光を遮り、影の中でフィルメーザの複列カメラアイがぼうっと光っていた。
両足は損傷し両手は武器ごと破壊され、両肩のニードルミサイルも動作しないほどに破壊され、大破寸前の機体は跪いている。
それを、ルーガルーは見下ろしている。軽量逆関節ACのソラフィデが、黄色のフィルメザをじっと見つめている。
『ハッ……!! そうやって敵にも情けをかけてきたんだな、お前の正義は必要な殺しすら躊躇うわけか!!』
「これが必要な殺しだと私は思っていません。あなたの民間人の殺害も必要だとは思っていません」
『奴らは星外企業どもに抗わなかった! 唯々諾々と首を垂れた臆病者どもだ!』
「誰もがあなたのように血を見る覚悟を持っているわけではありません。無意味な味方撃ちについてもです」
『無意味だと……? 俺はただ捕虜を取るなんて馬鹿げたことを言った奴を殺しただけだ。奴らに食わせる飯などない』
それが当然だ、というような声音でグンケイは言った。
ルーガルーは沈黙し、自分の内側で渦巻く感情を丁寧に処理しながら、考え、言った。
ルーガルーは沈黙し、自分の内側で渦巻く感情を丁寧に処理しながら、考え、言った。
「剣に貫かれ死んだ者は、飢えに貫かれて死んだ者より幸いであり、刺し貫かれ血を流す方が、畑の実りを失うより幸いだと言います。故に、あなたの義憤は理解できます」
『また説教か、ふざけやがって。ルビコニアンでもないお前が、ボス面して指図できる立場かよ!』
「人を人たらしめるのは、その産まれではない。あなたはもっと学ぶべきだ」
『邪道の悪党が正道ぶるんじゃねえ!! 殺せよ、俺をここで殺せ!!』
グンケイの叫びに合わせてフィルメザがブースターを吹かし、残った腕でソラフィデを殴ろうと踏み込む。
ルーガルーは表情を変えることなく、ショットガンの銃口を巡らせ、フィルメザの両腕部に散弾を叩き込み接合部を破壊、逆関節の足で向かってくる鉄塊を蹴り飛ばす。
ACS負荷限界を迎えたフィルメザはもはや機体を制御することすら難しく、両腕を亡くした鉄の巨人は砂の大地に横たわった。
ルーガルーは表情を変えることなく、ショットガンの銃口を巡らせ、フィルメザの両腕部に散弾を叩き込み接合部を破壊、逆関節の足で向かってくる鉄塊を蹴り飛ばす。
ACS負荷限界を迎えたフィルメザはもはや機体を制御することすら難しく、両腕を亡くした鉄の巨人は砂の大地に横たわった。
『っ、ぐ………』
「―――余力と翼があるのなら、どこへなりとも飛んでいくと良い」
『て、てめ……ぇ……』
殺すべきだろうか、とルーガルーは己以外の存在に問いかける。
答えはない。沈黙だ。神はいつも沈黙している。何も指図しない。
答えはない。沈黙だ。神はいつも沈黙している。何も指図しない。
「私はあなたを殺さない。情けをかける。長く生きるがいい」
ルーガルーはそれだけ言って、通信を切りアサルトブーストで飛び去る。
飛び去る騎士に、青年の叫びは聞こえない。
飛び去る騎士に、青年の叫びは聞こえない。
投稿者 | 狛犬えるす |