「ネタ@うぃき」それは唯一神「電光」を崇拝し、必要とあらばどんな卑劣・卑怯な手でも使い目的を達成する新興宗教団体…などと
ボーダーの間で噂にはなっているが(一部を除き)そのようなことは無い。ただマグメル内でも異色の奇人変人粒揃いなのである。
チェーンソーや電磁加速砲に偏愛を注ぐ者、自らの妄想をだだ漏れにする者、それを具現化してしまう者等々数え上げればきりがない。
フィオナはある筋から「ネタうぃきの連中がまた変な黒魔術使うヤツを引き入れたらしい」という情報を手に入れ、望駄阿神社に来てい
た。ここへは何度かマグメルの仕事で来たことはあるが、やはり変人集団という色眼鏡は拭えない。
「ほんっとここのヤツらってどういう魔法使ってるかわからないわね…物理法則もなにもあったもんじゃないわ。」
演習場や社務所と称した施設など1クランとしては異色の施設数を誇る。恐らくマグメルの管理下でない組織としては最大ではないかと言
われている。演習場では妙な軌道の弾丸や青や赤に光るニュード弾など出自不明な魔法…いやもはや能力かという滅茶苦茶さだった。
「さて…ここでも召喚呪文は分からずか…厳しいわね…」
結局変人奇人に絡まれただけのフィオナはどっと疲れ、ホテルに帰る前に街のカフェテラスでコーヒーを飲んでいた。
そこへ美男美女の二人…兄妹であろうか…が目の前に席に座る。
「失礼、お時間頂けないでしょうか」
そう身長の高い男が聞いてくる。フィオナは無言で頷き返す。兄妹二人は似た銀髪を翻し、紅茶とコーヒーを頼む。その仕草にウェイト
レスだけでなく周りの客も少しざわつく。夕暮れのオープンテラスにほのかな緊張感のようなモノが感じられるようになってきた。
「ミスター、お名前をお伺いしても?」フィオナは当然のように聞く。はにかんだ兄の方は
「ミノル・ホワイトストンです、こちらはサト・ブライトウェイです。」
フィオナは少し怪訝な顔をする。確かそのような名前を最近聞いたような覚えがあった気がするが…と無言だったがとりあえず会話を続
ける。そもそも恋人と言うより兄妹のような雰囲気に疑問も覚えた。
「そうね…フライング・ダッチマンとでも名乗っておきましょうか。」
そう言い放った時、兄は吹き出したが妹のほうは理解できていなかったようだ。スベったかな…と思いつつ質問を続ける。
「貴方達恋人には見えないけどファミリーネームも違うわよね?もしかして…」
「お察しの通りですよ、ミス・ゴースト。それにしてもいい国ですね、ここは」
話題の切り替えが上手い男…と聞き流しつつ会話を続ける。どうやら観光目的で日本に来たようだ、二人で楽しくやっているらしい。
二人の名前と大体の話をメモし、フィオナは席を立つ。
「ではお二人さん良い旅を。」
背中に刺さる視線は明らかに好意のそれでは無かった。フィオナはそれにある種の恐怖感すら覚え、背中の毛が逆立つ感覚に襲われた。
フィオナが去った後、移動を始めた兄妹はフィオナとは別のホテルにいた。
「あてつけか…あの女…俺たちのことを知ってて…」
そんなことを思いつつ、妹がシャワーから上がるのを待っていた。
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