Mi-COUGAR
開発背景
TSUMOIインダストリ
大汚染後、ニュード除去作業用に開発されたブラスト・ウォーカー“ミュール”
GRFからニュードドライブの技術提供を受けると、これを全面的に改修し世界初の二足歩行型戦闘機械ブラスト・ランナー(以降BRと略す)“クーガーⅠ型”を完成させる。
ニュード汚染地域での高速戦闘と汎用性を兼ね備えたクーガーⅠ型は瞬く間に普及し、TSUMOIインダストリのBR市場独占に見えた。
しかし、作業用ブラスト・ウォーカー“ターマイト”を開発しながらもTSUMOIインダストリに遅れをとったエアロン・ハート社が、局地戦用のBR“ヘヴィーガード”シリーズと“シュライク”シリーズを開発。
拠点防衛用に重装甲と高い重量耐性を施したヘヴィーガードシリーズ、偵察用に高機動・軽量化したシュライクシリーズ。
この二つのシリーズはBRを駆るボーダー達の要望を掻き立てる結果となり、また間接やマウント部の規格をTSUMOIインダストリのものと共通化することにより、機体の一部を採用し、アセンブリに加えることも可能にした。
これに引き続く形で長年兵器開発に携わってきたベンノ社がそのノウハウを活かし、狙撃・射撃戦に重きを置いた“ツェーブラ”シリーズ、対弾性とBRの挙動を精査した“ケーファー”シリーズをリリース。
従来のBRと比べて高価な価格帯であったが、そのカタログスペックはボーダーたちをうならせ、歓迎を持って実戦に迎え入れられた。
また新興BRメーカー、ナクシャトラが“E.D.G”をリリース。驚くべきスペックと一部のボーダーのニッチな要求を満たしたそれは、異色な意匠でありながらも狂信的なファンを獲得することに成功した。
BRのスタンダードを築いたTSUMOIインダストリであったが、後発のBRメーカーにそのシェアを奪われつつあった。
すぐさまⅠ型の改良型、Ⅱ型を提供するも多種多様なボーダー達の要求にあまり応えることはできなかったようである。
局地戦仕様のBRが出て以来偏った性能のものがあふれる中、TSUMOIインダストリはあくまでも兵器としてのバランスを維持し、クーガーのような汎用性に富んだ新たなBR、“エンフォーサー”シリーズを開発。
その高性能な中量機はBR開発の第一人者としての意地を見せつけた形となった。
激化するBR開発。
その最中、もはや旧型の烙印を押されたクーガーは忘れ去られようとしていた……。
クーガー再生計画
エンフォーサーシリーズをリリースしたTSUMOIインダストリであったが、今もなお他BRメーカーから追われる立場であった。さらに激化が予想される開発競争を鑑み、新たなBR開発に向けてTSUMOI社内でいくつものプロジェクトチームが結成された。
いくつものプロジェクトチームが結成されたというのは、半ば噂話のようなもだであり、TSUMOIインダストリから正式なアナウンスがあった訳ではない。しかし、昨今のBR開発のシェア争奪戦を見ていればこのような噂が流れても、なんらおかしくは無いのも頷ける話である。
TSUMOIインダストリ内の情報は驚くほど明かされず、正式なアナウンスや記者会見での発表を除き、謎の多い企業である。その同社でBRの運用データを持ち出したがために消されてしまった社員がいるとの話もある。
「その場で消すことも出来たそうだが、あえてニュードに汚染された前線へ放り込まれたそうだ……。ニュード耐性が無ければ死んじまうし、あったとしてもいつかは蜂の巣かローストチキンになっちまう。かわいそうな話だ……」
その筋に詳しい報道記者の話だがその記者曰く、疑惑の日系社員の安否は現在も確認されていないそうだ。
その中でクーガーを再生し、既存のBRとは一線を画すコンセプトを打ち出していたものが……我々特捜班の手元に届いた。
情報の入手先は取引の契約上明かせないが、資料の作成された時期、関係者のリストの照らし合わせ等からある程度信頼のおけるものと判断した。改ざんの可能性も考えたが今時珍しい紙媒体で作られた資料であり、作成されてからの改ざんはないと判断したことも併記しておく。
ディーヴァ計画
件のクーガー再生計画はチーム内ではディーヴァ計画と呼称されていたようだ。
このディーヴァが意味するところは何も書かれておらず、我々もただの愛称的なサムシングであると判断した。
このディーヴァ計画が目指すもの、新たなBRの開発コンセプト……それはアイドル性であった。
昨今のBRの外見は、あくまで機能から生まれる必然的な外観結果であって、初めから外観デザインありきで開発されているわけではない。しかし将来的にBRの性能は頭打ちになり、商品価値を付加するためには自然と外見に移行するのは明白、とこのプロジェクトチームは主張している。
戦場での外見がもたらす影響は敵のみならず味方にも与えるとされ、その心理効果を最大限に引き出したのがこのディーヴァ計画が生み出した新型BRである。敵には恐怖を、味方には士気高揚を与えるアイドルとして戦場を駆ける。
そのバリエーションは多彩であり、またボーダー達の趣味・趣向にそうように今までのBR開発とは別アプローチで企画されることも記されている。
我々はこれを、カスタマイズ性に富んだ指揮官用BR、もしくは後方用のものでメディア露出を前提としたBRなのではないかと推測する。ニュード汚染の拡大は止まるところを知らない。それはBRの拡大も止まらないということだ。BRの活躍が広がればそれだけ今までありえなかったような需要が生まれるのも頷ける。
いたずらに機体バリエーションが増えることを懸念し、まず骨子となる基本BRを用意し、後はオプションで外見を変えていくようだ。この骨子となるBRは我々が手に入れた資料には数種類確認されたが、いずれもコードネームの記載のみで詳細は不明。しかし1stSNDと名づけられたそれは、いくつかの資料と共にその姿が明らかになった。
Mi-COUGAR
コードネーム:1stSND 正式作用時呼称案:Mi-COUGAR
既存のクーガーⅡ型を改修し、ディーヴァ計画の骨子BRとして再設計したBR。
各パーツを小型化し、クーガーの意匠を男性的とするならば、このMi-COUGARは女性的と呼べる意匠だ。
正式採用に至っていないためマグメルが測定した実戦スペック(*)は記載されておらず、また出力やセンサー類等のスペックは元から不鮮明であり実際のスペックは未知数であるとも併記しておく。
(*)マグメルが測定した実戦スペック
本来各BRメーカーが発表したカタログスペックがあってもいいはずだが、カタログスペックとはメーカーが考えうる最適な環境下での測定であり、実践の過酷な環境下は想定されていないことが多い。それを嫌ったマグメルは斡旋会社の立場を利用し、独自に測定し、スペックをE~A+までのアルファベット表記で評価している。この独自評価は一定の賞賛を現地のボーダーから受けており、信頼性は高いとされている。
頭部パーツ
クーガーⅡ型が元とされているが、そのフォルムは似ても似つかないほど変わっている。平面を基調とした直線的なフォルムから曲面と平面を使い女性アンドロイドを髣髴とさせる面持ちへと改良されている。単眼カメラは変わらないがバイザーが被さっており、その印象は大きく異なる。
最大の特徴は人体で言うこめかみ後方部に、Ha.I.R.システムと書かれたパーツが計二つ備わっている。
このHa.I.R.システムは新型のニュードドライブを使用し、ニュードを電荷させ一定の可視光線を発するシステムである。後方へニュードを放出し、その略称のとおり頭髪のようにニュードをたなびかせる、既存のBRには無い画期的な機能だ。
この可視光線の波長を調節することで髪の色を変えることも出来、また放出するニュードの電荷状態・量を調節し髪の長さも調節できるようだ。これは前述した機体コンセプトに沿ったものといえる。
このHa.I.R.システムは取り外しが可能で、片方にひとつ、あるいは後頭部に移設することも可能。
味方コア残量が敵コア残量と比較した場合で60%以上の劣勢の場合、バイザーをはじめとした前面装甲をパージできるようになる。
装甲パージを行なった場合、以降の防弾性能は非常に下がるものの、折り畳まれていた吸気ダクトが拡張展開される為、ニュードドライブの冷却効率アップに伴い最大出力の向上が行なわれる。
但し、吸気ダクトを展開した場合従来の女性アンドロイド的な面持ちは一切失われてしまい、ネコ科動物が吼えている様な形状になってしまう。
胴体パーツ
元になったクーガーⅡ型と比べてすっきりとしたデザインになっている。前面を曲面にし追加装甲を装備することで対弾性を確保しているものと思われる。
味方コア残量が敵コア残量と比較した場合で60%以上の劣勢の場合、各部装甲がせり上がりできた隙間からニュード噴霧が行なわれるようになる。
これにより、リペアほどではないが常時耐久が回復するようになり、生存性能がアップする。
但し、女性的なフォルムは失われ筋肉質な印象になってしまう。
腕部パーツ
全体的に細身になり、どちらかというとエアロン・ハート社のシュライクシリーズを思わせる意匠になっている。
肩部の装甲は取り外され、代わりにに曲面で構成された追加装甲が施されている。これによりなで肩な印象になっている。
味方コア残量が敵コア残量と比較した場合で60%以上の劣勢の場合、腕の各部に隠されていたマイクロシールドが発動し、筋肉質に見えるようになると同時に腕部に対するダメージが一切なくなる。
脚部パーツ
こちらも
腕部パーツと同様に細身の印象だ。そのため重量耐性に不安を感じる外見になっているが、実際のところは不明。
特筆すべきは腰回りにある。腰前後に可動式の装甲が追加されている点だ。直立時にはスカートを連想させるような外見になり、これがこのMi-COUGARを女性的と表現せざるを得ない一因となっている。
味方コア残量が敵コア残量と比較した場合で60%以上の劣勢の場合、この可動式装甲が前面のみに移動集中し、歩行性能・ダッシュ性能が格段にアップ。
シュライクシリーズに勝るとも劣らない機動性を発揮するようになる。
同時に腕部と同様にマイクロシールドの展開でガッチリした印象になり脚部に対するダメージが発生しなくなる。
但し、スカートを連想させていた装甲がどう見てもフンドシにしか見えないようになるのはご愛嬌。
腰左右にあるブースターはこの資料では決定されておらず、どのブースターを採用するか検討中のようだ。
専用武器
驚くべきことにこのディーヴァ計画では専用の武器を作ることも考えられていた。
しかしあくまでBRメーカーである同社がどうやって武器製作のノウハウを得るのか疑問だが、アサルトライフルを改造できるようにあらかじめ設計し汎用性を持たせていた歴史があり、それを参考にしBR用に開発したのがNextGimmickWeapon、略称NeGiWである。
機関部とグリップを基本とし、短機関銃、長バレルの機関銃、マークスマンライフル(軽量の狙撃銃)、マルチランチャー、フルオート形式のショットガン、馬型の自走式セントリーガン、不死鳥型の偵察機など、多岐にわたる用途が構想されている。また装飾用かつ止め具としての部品も多く、カスタマイズ性に幅を持たせていることも記載されている。
最後に
我々BR開発特捜班は引き続きこの謎のBRに迫っていく所存だ。
お世辞にも戦闘用とは思えないこのBRが本当に戦場に必要なのか、それともBRが戦場を変えていくのか。
その顛末を我々は見届けていきたい。
週間ジーアールエフ 第二編集部 BR特捜班 |
激戦のBR開発の闇に迫る!TSUMOIインダストリが隠すその驚くべき計画とは!? 関係者が語る衝撃の内容!!もはや今のBRに価値は無い!! |
音声ファイルを再生する
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... |
「差出人の名前は……セ……セージ?」
「セージ……英語で賢人を意味する単語だ。当然偽名だろうが」
「しかし……手書きだが何故こんな書き方をしてるんだ?」
S∀G∃
「何故AとEが逆さまになっているのだろうか?」
「ちっ、今どき紙かよ!……まぁ荒らされる心配は無いが」
ザーッ
「……データ化終わり、鍵付きで発送と」
ザザーッ
「ん?誰だこんな時間に……」
……音声ファイルはここで終わっている。
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続報 Mi-COUGAR 音響兵装
概要
その後の調査の結果、Mi-COUGARには「音響兵装」と呼ばれる、四大兵装とは別の新たな兵装が装備される予定である事が分かった。
現時点では試作機でのテスト段階ではあるが、将来的には量産配備されるようである。
この「音響兵装」には、戦闘能力は殆ど無い。攻撃装備の代わりに、音響装置を備えているのが特徴である。
それ故装備は軽く、Mi-COUGARの機動力を最大限に生かす事が出来る。
強襲兵装より軽い為、一説によれば少しの時間ならば飛行出来るほどの機動力さえ得ると言う。
ただし戦闘能力は一切無い為、後方支援が主になるはずだ。前線で立ち回るなら、その過剰なまでの機動力を最大限に生かせなければ生存は厳しい。
無重力下の戦闘も考慮されているという噂。だが、ブラスト間で宇宙戦闘を行う必要があるというのだろうか……?
まさか、これを地球外生命体に使う気じゃないだろうな…… まさかな……
また、「超AI」と呼ばれる、心を持つ特殊AIによる制御が可能である。
この特殊AIによる制御でのみ、「サウンドディスク」と呼ばれる音響兵器を用いる事が出来る。
ただし、この「超AI」は量産不可の為、量産時にはこの機能はオミットされる。
人間による操作の場合は、基本的にパイロットの歌を戦場に垂れ流す事になる。
高い歌エネルギーを保有している人間でないと性能は引き出せない為、通常のBRよりも更に乗る人を選ぶじゃじゃ馬である。
「俺(ハロー大豆)の歌を聞けぇ!」
主武器
ショットガンに良く似た形状のランチャーポッド。
とは言っても敵に攻撃する為の物ではなく、敵にスピーカーを打ち込む為のものである。
これを打ち込まれると、装甲板が共鳴し、機体内部に音が伝わる。
その威力は強力で、HGの装甲にもしっかりとスピーカーを打ち込む事が出来る。
副武器
大型のスピーカーが装備される。基本的にはこのスピーカーから音声を垂れ流すのが主となる。
「超AI」による操作の場合、ここにサウンドディスクが装備される。
ディスクP
ニュードを活性化させる事が出来るディスク。
BRは、この音を聞いている間、全体的な性能がアップする。また、装甲表面のニュードを活性させることによるリペア効果もある。
ディスクM
特別装備全般の動きを麻痺させる音を発生するディスク。
実は特別装備以外の装備の麻痺も行う事が出来るが、味方誤射への影響力も鑑みた結果、特別装備のみという事になった。
ディスクX
物質の固有振動周波数に対応した破壊音波を発生させるディスク。
破壊したい物質の固有振動周波数さえ知っていれば、無制限に破壊する事が出来る為、非常に危険である。
ただし、ニュードに関しては、固有振動周波数が存在しない為、破壊は出来ない。如何なる衝撃でも熱に変換してしまうのがニュードの特性だからである。
このサウンドディスクは非常に危険であると同時に、BRに大きな負担を与える為、多用は出来ない。
ディスクF
ディスクXの物質破壊効果は単一の物質、基本的には一種類のブランドのパーツしか破壊することは出来ない。
これはある程度傾向があるとはいえ、扱うボーダー個人やそのときの戦場などにより毎回変化する各部の内、運が悪ければ一カ所しか効果が発生しないことになる。
これをふまえニュードに熱を加え装甲に使われる金属を熱疲労及び軟化させ、さらに音波を重力波に変換した物をぶつけその力により加速し、「光にしてしまう」ディスクである。
しかしディスクX以上の負荷がBRにかかり、また破壊能力も指向性が高いとはいえいかなる物質をも光に出来るため、一日一度しか発動が承認されず、BRに耐久力の1/4ほどのダメージを受けてしまう。
補助武器
軽量化の為、この部位には基本的に装備を行わない。
ただ、強力な歌エネルギーが必要である時などにはサウンドブースターが装備される。
また、「超AI」の「ディスク」を使用する場合は、サウンドディスクに必須であるサウンドウェーブ増幅装置が装備される。
この増幅装置は指向性を持つ為、敵味方を選り分けてサウンドディスクを使用する事が出来る。
サウンドブースター
高い歌エネルギーを撃ち出す事によって、宇宙空間でも歌を相手に届ける事が出来る装備。
普段は装備されない。
ギラギラーンVV&ドカドカーンV
肩から口元に向けて差し出される二本のマイク「ドカドカーンV」と、ギターとキーボードが融合したような「ギラギラーンVV」の一組のサウンドウェーブ増幅装置。WではなくV Vである。
指向性と効果を大きく高める装備であるためサウンドディスクを装備する際には必須とも言える装備である。
「俺の歌を聴け!だっぜ!」
特別武器
アサルト・チャージャーは、機体への負担や操作性を重視した結果、若干下ベクトルの力が働いているのは周知の事実である。
だが、このMi-COUGARはHa.I.R.システムを利用してAC起動中の機体への負担を減らし、操作性の劣悪さをパイロットの技量に任せる事によって、下ベクトルの力を無くす事に
成功した。
即ち、慣性飛行が出来るのである。これにより、素早く前線に駆けつけ、歌を聞かせる事が可能になった。
ただし、並のパイロットが操縦すると機体バランスを失っての転倒事故が多発する為、量産型では通常ACに変更されるのではないかという噂もある。
また、ホバー程度の揚力を持ち、内部に各種ディスクを格納出来るライドボードの開発も噂されている。
最終更新:2010年09月27日 18:46