ギャルゲ・ロワイアル2nd@ ウィキ

小さな疑問がよぎる時

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小さな疑問がよぎる時 ◆HlLdWe.oBM


そこには所謂クレーターと呼ばれるものが存在していた。
おそらく重火器による砲撃か、時限式の爆弾か、または人外による一撃か。
一見しただけでは分からないが、これを作った者が要注意人物であるという事は分かる。
九鬼耀鋼一乃谷刀子。
彼らは人を探していた。
九鬼は有望な戦力であるアル・アジフと羽藤桂、そして莫迦弟子である如月双七を。
刀子は自身の愛すべき人である如月双七を。


          ▼


刀子の着衣が済むと、九鬼と刀子は連れ立って九鬼がアル達と別れた場所に向かった。
急ぐならば電車を使うほうがいいのかもしれないが、それは避けた。
数時間前、九鬼はアル達と共に電車で移動中に遠距離から襲撃された経験がある。
同じ事が二度あるとは言い切れないが、無いとも言い切れない。
だからこそ多少の時間はかかるが、自身の足を使う事にした。
電車という狭い箱では如何せん襲撃された時の対応が取りづらい。
そのような理由で九鬼と刀子は電車での移動を見合わせる事にして、移動を開始したのだった。

そしてその途上、二度目の放送が行われた。
だが今回は一度目とは違い、神崎という人物が要点だけを言って簡潔に終わった。
だからといって告げられた内容を軽視していいという事など全くない。
この6時間で新たに命を失ったのは14人、前回の放送より多い。
やはりこの殺人遊戯は着実に進行している。
それを望もうが望むまいに関係なしに、人の思惑を越えて進んでいく。
幸いな事に九鬼と刀子の知り合いは名前を呼ばれる事はなかった。
しかし安心はできない。
今この瞬間にも自分達の探し人が命を落としているとも限らない。
だからこそ二人は急いだのだ。

結果、探し人の行方は杳として知れなかった。
一応その周辺も探してみたが、結果は同じだった。
それも無理のない事だ。
九鬼がアル達と別れてから既に4時間以上は経過している。
双七に至っては6時間も前に別れている。
さすがに別れた場所から既に遠くへ移動していて当然であった。
捜索しようにも行く当てが思いつかないのでどうしようもない。
ここは一度腰を落ち着けて今後の身の振り方を決めようと、九鬼は近くにある最初に訪れた居酒屋に向かう事にした。
同じく探す当てがない刀子ももうしばらく九鬼と同行する事にした。

しかしここでちょっとした事件が起こった。
きっかけは刀子が九鬼から居酒屋での行いを聞いた事だった。
九鬼の持っている酒は主催者からの支給品ではなく、居酒屋から現地調達したもの。
「酒は別だろう」と思ったからこそ九鬼は何も言わなかったのだが、刀子としては九鬼が故意にその事実を伏せていたと若干の勘繰りを入れてしまう。
そしてこの事実を聞いた刀子はある希望を見出した。
つまり衣服の類もどこかにあるのではないかと思ったのだ。
その考えに至るや否や、刀子は勢い勇んで九鬼を説得し始めた。
さすがにうら若き年の乙女、このままウエディングドレスで行動するのはやはり恥ずかしいのだ。

「……分かった。30分だけだぞ。俺はあそこの居酒屋にいるからな」
「はい、では後ほど」

九鬼もとりあえず一休みして今度の方策を考えたかったので、時間つきで刀子の衣服捜索を認めてやった。
同意を得ると、刀子はすぐさま手短な民家へと滑りこんで行った。
今の刀子の姿はウエディングドレスにブルマという通常ならありえない異色のコラボレーションだ。
さらにそのドレスの丈は驚くほど短く、自然と急いで走った刀子は気付かぬうちに九鬼にその躍動感溢れるナイスブルマを惜しみなく披露する事になっていた。
それを見た九鬼は――

「――――――」

――何か言ったようだが、それは風の音にかき消されたのだった。


          ▼


「さてと……」

数時間前、九鬼がこの地に来てから立ち寄った建物、居酒屋。
そこは以前と何ら変わらない姿でそこに存在していた。
そしてカウンターには九鬼が用意したグラスと中身が減った酒の一升瓶。
もちろん減った分の酒瓶は抜け目なくデイパックの中に補充しておいた。
あまり長居は望ましくないが、適度な休息が必要なのもまた事実。
九鬼の考えでは30分ほどしたら、また移動を開始する気だった。
とりあえずそれまでに今度の身の振り方を決めておきたい。

まず優先して探したいのはアル・アジフと羽藤桂、それに如月双七。
3人とも放送では名前を呼ばれなかったからその時点で無事という事は分かった。
加えてアル達はどうやら窮地を脱したようだ。
別れた時は引け目なしで最悪と言っても過言ではない状態だった。
その状態で4時間生き延びられたという事は襲撃を逃れて適切な治療を施せた可能性が高い。
だがあの襲撃では当初の予定通り病院へ無事に辿りつけたとは考え難い。
そうだとすれば何か別の要因で助かったという事になるが、これ以上は推測しようがなかった。
双七に関してもどこにいるのか皆目見当もつかなかった。

「……佐倉霧か」

実は九鬼にとって聞き覚えのある名前が一つ先程の放送で呼ばれていた。
その者の名は佐倉霧。
九鬼がここに来て最初に出会った参加者だ。
いくらか情報交換をした、ただそれだけの関係だ。
だがそこでふと思い出すのは彼女を探していたあの少年――電車を狙撃してきた少年だ。
彼が放送を聞いて何を思うかは容易に想像できた。
あれほど必死に探していたのだ。
もし彼自身の知らない所で佐倉が死んだと知れば……その先は自ずと見えてくる。

「……俺には関係ないか」

もしかしたら恨まれているかもしれないと思いつつ、九鬼の思考は次の議題に移る。
九鬼はデイパックに手を入れ、共通支給品の地図を取り出した。
もちろん禁止エリアの情報は書き込み済みだ。
今度の行き先をどこにするべきか考えているのもあるが、それとは別に九鬼には引っ掛かる事があった。
それはほんの小さな疑問だった。
しばらくそれについて考えていると、不意に居酒屋の扉が開く音が聞こえてきた。
後ろを振り返ると、案の定一乃谷刀子だった。

「その様子だと、やっぱり衣服はなかったみたいだな」

刀子がウエディングドレスの代わりを見つけられたかどうかは、今の彼女の服装が雄弁に物語っていた。
目に映るのは30分程前と何ら変わりない出で立ち――ミニウエディングドレスにブルマという出で立ち。
この辺りの民家に衣服の類がなかった事は明白だった。
「やはり酒は別か」と九鬼が思っていると、刀子はおもむろにデイパックから意外なものをカウンターの上に置いた。
クッキー一箱、シーツ1枚、それに包丁2本。
九鬼の記憶では刀子のデイパックにはこのようなものはなかったはずだ。

「これは?」
「この辺りの民家にあったものです。衣服はありませんでしたが、使えそうなので拝借してきました。
 どういうつもりなのでしょうか、主催者は?」

少し前に九鬼は現地調達など無理だと言ったが、それをあっさりと否定される結果となった。
これはどういう事か。
九鬼はしばらく考え、そして答えを出した。

「考えられる可能性の一つに『救済』というものがあるな。
 包丁なら武器に、食料なら空腹を解消できる」

つまりこういう事だ。
この島には殺し合いに乗った者が何人かいる。
だがその一方で自分達のように殺し合いを良しとしない者もいる。
そこで対立が起こるのは必定である。
その時に決着がつけばよいが、そう上手くはいかないだろう。
荷物を捨てて撤退する事もあるかもしれない。
それが殺し合いに乗った者ならその者は牙を抜かれたも同然だ。
殺し合いをしてもらいたい主催者にとって、それは好ましくない状況である。
それを救済するための処置。
牙を抜かれた者が訪れるのはとりあえず休息ができる目立たない場所だろう。
その点、町中の民家なら周辺にいくつも点在していて隠れるのには適している。
そこに食料や武器になりそうなものを置いておけば、殺し合いに乗った者にとって大きなメリットになるだろう。

「これが可能性の一つだ」
「なるほど。では私達が事前にそれらを回収できたのは僥倖なのですね」
「まあ、そうでもないかもしれん。
 もしかしたら殺し合いに乗った者が仕掛けた罠かもしれないしな」
「――ッ!?」

今の仮説は主催者側が設置したという場合のものだ。
もしこれを設置した者が殺し合いに乗った者なら話は違ってくる。
自分の荷物の中で訪れた者が取っていきそうな物に毒や罠を仕掛けて何気なく置いておけば、何も知らない者が拾って比較的労せず参加者を減らせる。
そう考える者がいるかもしれない。
殺し合いに乗った者にとって自分の手を汚さずに参加者を減らす手段の一つだが――

「言っておいてなんだが、この可能性は低いな」
「やはり、非効率だからでしょうか」
「ああ、そうだ」

仮にその罠を仕掛けたとして、掛からなければそれに意味はない。
地図に載っている場所ならともかく、載っていない民家に仕掛けるなど非効率すぎる。
この辺りでも民家は数多く建っている、島全体ならその数はさらに膨れるだろう。
その中で人が来ると予想して仕掛けるにはどう考えても無謀だ。
不確定要素が多すぎるからだ。
訪れるかも分からない、訪れたとしても手に取るか分からない、まだまだ他にも不確定要素はある。
こんな状態ならわざわざ自分の持ち物を手放してまで罠を仕掛けるメリットはほとんど無いと言っていいだろう。
だから――

「この辺りで調達してきたものに然して問題はないだろう。
 まあ、実は単に主催者側が回収し損ねたという可能性もあるがな」

カウンターの上にはいつのまにか空になった酒瓶と中身が無くなったクッキーの箱があった。
話しているうちに軽い食事代わりに頂かせてもらった。
休息も十分取ったのでそろそろ行動を開始しようかとした時、九鬼はふと刀子に声をかけた。

「なあ、お嬢さんは『廃屋』と聞いて何を想像する?」
「廃屋、ですか? そうですね。やはり荒れ果てた家屋が思いつきますが、それがどうかしたのですか」

刀子が答えると九鬼はカウンターに広げていた自分の地図のある部分を指し示した。
その場所はF-5とF-6の中間、若干南寄りのその位置に『廃屋』の文字があった。

「おかしいと思わないか」
「どういう事でしょうか?」
「お嬢さんも言った通り、廃屋なんて普通は荒れ果てて無人になった家屋を思い浮かべるよな。
 つまりは用済みのものだ。なら、なんでそんなものをわざわざ地図に載せる必要があるんだ」

病院、博物館、神社、遺跡、教会、カジノ、温泉旅館、発電所、他にも地図上には参加者にとって有益そうな場所が明記されている。
その中で『廃屋』は異質だった。
どう考えても普通の民家の方がまだ利用価値はあるのに、わざわざ廃屋を載せる意味。

「……つまり『廃屋』はなにかしら特別な場所である可能性があると」

刀子の答えは九鬼の考えとほぼ同じものだった。
そうでなければ、わざわざ載せる意味が見当たらない。
主催者側の気紛れという可能性もあるが、ここまで大がかりな準備を整える事実からそれはいささか考え難かった。
同じような理由で廃校も挙げられるが、廃校と廃屋では建造物としての規模が違い過ぎる。
廃校なら校内を探せば使える箇所もあるだろう。
だが廃屋の中を探ったところで使えるものが見つかるとは思えない。

(むしろこの島がどういったものなのかが問題だな)

今までの経緯から主催者側が並行世界や時間軸に干渉できるという九鬼の考えはほぼ確かだろう。
この島も主催者側にとって都合のいい世界の、都合のいい時間軸のものを用意した可能性が高い。
その方が安全に殺し合いをさせられるし、何よりそれだけの力がありながら自分達にとって不利な世界・時間軸で執り行う理由などない。
そしてこの島の由来。
普通に考えれば既存の島を流用しているという考えを抱く。
当然これだけの建造物が点在している島だ、以前は人がいただろう。
その彼らがどこに行ったかは定かではないが、主催者側の力を考えれば人を消すぐらい造作もない事だろう。
だがそこで腑に落ちない事がある――この島はあまりに雑多過ぎる。
例えば宗教にしても、仏教の寺に神道の神社、キリスト教の教会や大聖堂、イスラム教のモスク。
島ならある程度1つか2つの宗教で固まるはずだが、ここは3つ厳密には4つの宗教が同居している。
それにここは島の面積に対して施設の数が多いように思われる。
つまり推測される島の人口と施設の配置がそぐわないのだ。
島を丸ごと一から作ったという可能性もあるが、それなら施設の数にも多少は納得がいく。
地図に記載されていれば人はそこへ行こうと無意識に考えるだろう。
そして参加者同士が遭遇して、自然と殺し合いが起こる確率が高まる。
先の現地調達できたものといい、これなら殺し合いを促進させるという理由で一括りにできる。
だがそれなら尚更『廃屋』はわざわざ主催者側が設置したという事になる。
果たして『廃屋』に如何ほどの意味があるのか。

「何にしても結論を出すのには情報が足らないな。そろそろ行くぞ」
「はい、廃屋へ行くんですか?」
「いや、さっきも言ったが只のブラフの可能性もある。
 だからまずはそれぞれの探し人だ。なるべく早く再開したいところだが、さてどうなるかな」

九鬼耀鋼は探し求める――魔道書とその契約者、そして莫迦弟子を。
一乃谷刀子は探し求める――愛すべき者を。
一乃谷愁厳は眠る――大切な妹とその恋人を想って。

探し人の無事を祈る中、彼らが向かう先は果たして――



【G-6 歓楽街の居酒屋/1日目 日中】

【九鬼耀鋼@あやかしびと-幻妖異聞録-】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、不明支給品×1、日本酒数本
【状態】:健康、肉体的疲労小
【思考・行動】
基本方針:このゲームを二度と開催させない。
0:アル達と合流。とりあえず都合が変わるまでは刀子と同行。
1:首輪を無効化する方法と、それが可能な人間を探す。
2:制限の解除の方法を探しつつ、戦力を集める。
3:自分同様の死人、もしくはリピーターを探し、空論の裏づけをしたい。
4:如月双七に自身の事を聞く。
5:主催者の意図に乗る者を、場合によっては殺す。
6:いつか廃屋に行ってみるか。

【備考】
※すずルート終了後から参戦です。
 双七も同様だと思っていますが、仮説に基づき、数十年後または、自分同様死後からという可能性も考えています。
※自身の仮説にかなり自信を持ちました。
※今のところ、悪鬼は消滅しています。
※主催者の中に、死者を受肉させる人妖能力者がいると思っています。
 その能力を使って、何度もゲームを開催して殺し合わせているのではないかと考察しています。
黒須太一支倉曜子の話を聞きました。が、それほど気にしてはいません。
※アルとの情報交換により、『贄の血』、『魔術師』、『魔術』、『魔導書』の存在を知りました。
 情報交換の時間は僅かだった為、詳細までは聞いていません。
※首輪には『工学専門』と『魔術専門』の両方の知識が必要ではないか、と考えています。


【一乃谷刀子@あやかしびと-幻妖異聞録-】
【装備】:古青江@現実、ミニウエディング@THEIDOLM@STER、ナイスブルマ@つよきす-MightyHeart-
【所持品】:支給品一式×2、ラジコンカー@リトルバスターズ!、不明支給品×1(渚砂)、愁厳の服、シーツ、包丁2本
【状態】:健康
【思考・行動】
基本方針:殺し合いには乗らない。兄の愚かな行いを止める。
1:双七の捜索。とりあえず都合が変わるまでは九鬼と同行。
2:主催者に反抗し、皆で助かる手段を模索する。
3:兄の犯した罪を償いたい。

【備考1】
【一乃谷愁厳@あやかしびと-幻妖異聞録-】
【状態】:疲労(中)、右肩に裂傷、腹部に痣、白い制服は捨てた状態、精神体
【思考】
基本方針:刀子を神沢市の日常に帰す。
0:気絶中。
1:生き残りの座を賭けて他者とより積極的に争う。
2:今後、誰かに名を尋ねられたら「黒須太一」を名乗る。

【備考2】
一乃谷刀子・一乃谷愁厳@あやかしびと-幻妖異聞録-は刀子ルート内からの参戦です。しかし、少なくとも九鬼耀鋼に出会う前です。
※サクヤを人妖、尾花を妖と警戒しています。(愁厳のみ)

※二人がどこへ向かうかは後続の書き手にお任せします。


165:日ハ沈ム、駒ハ踊ル 投下順 167:know
158:キャル・ディヴェンス 時系列順 151:羊の方舟
135:Do-Dai 九鬼耀鋼 178:めぐり、巡る因果の果てで(大人編)
135:Do-Dai 一乃谷刀子・一乃谷愁厳

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